説明

光フィルター

【課題】チャンネルの阻止帯域を縮減することが可能な光フィルターを提供する。
【解決手段】光フィルター1は、ガラス基板10およびろ過膜20を備える。ろ過膜20は、ガラス基板10に配置され、高屈折率フィルムと低屈折率フィルムとが交互に積層して構成した複数のファブリペロー共振器22を有する。高屈折率フィルムおよび低屈折率フィルムは、基本の光学的厚さが入射光の中心波長の四分の一(即ちλ0/4)である。ファブリペロー共振器22は、順によってガラス基板10に重なり、二層の高反射フィルム221と、二層の高反射フィルム221の間に位置する一層の隔離層222とを有する。これにより、光フィルター1は、チャンネルの阻止帯域を縮減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光フィルターに関し、詳しくは低密度波長分割多重化(Coarse Wavelength Division Multiplexing,CWDM)に適用可能な光フィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピューターの大量普及およびインターネット技術の迅速な発展に伴い、インターネットによってデータを迅速に取得し、サービスを提供する。光電気通信によって大量データ情報伝送を迅速に提供することができるようになるため、光電気産業はそれに関連する産業およびあらゆる階層の人々に注目されている。現在急成長してきた光電気産業は、電子工学(Electronics)と光学(Optics)とを相互に結合させて生じた応用領域であり、そのうち特に光学ネットワーク技術(optical networking)が人々に注目され、広汎に応用されている。
【0003】
光学ネットワーク技術は、光ファイバー(optical fiber)をデータ伝送媒体として使用する通信技術である。光学ネットワーク技術により、複数の異なる処理システム(例えばコンピューターシステムまたは通話システム)の間にレーザービームによってアナログ信号またはデジタル信号を伝送することができる。レーザービームは、周波数が電波より高く、光ファイバーの中での損耗が極めて小さいため、伝送速度および伝送効率が従来の有線および無線式通信システムよりはるかに大きい。
【0004】
光学ネットワーク技術では、最もよく使用されているのは低密度波長分割多重化(Coarse Wavelength Division Multiplexing,CWDM)である。低密度波長分割多重化は、光フィルター(Filter)および多重化装置(multiplexer)によって波長が異なる複数のチャンネルを同一の光ファイバーに統合し、かつ受信端上の多重分離装置(demultiplexer)によってあらゆる波長を分離させ、異なる光ファイバーに伝送する。低密度波長分割多重化に使用される光フィルターのろ過膜は、高屈折率フィルムと低屈折率フィルムとが交互に積層して構成した複数のファブリペロー共振器(Fabry-Perot resonator)を有する。ろ過膜上の空気端(Air)からガラス基板(Ns)までの構成の一つは下記の通りである。
【0005】
Air
H(LH)2 2L(HL)3
H(LH)3 4L(HL)3
H(LH)4 6L(HL)4
H(LH)3 6L(HL)3
H(LH)4 6L(HL)4
H(LH)3 6L(HL)3
H(LH)4 6L(HL)4
H(LH)3 4L(HL)3
H(LH)3 2L(HL)2
S
【0006】
Hは光学的厚さがλ0/4の高屈折率フィルムである。Lは光学的厚さがλ0/4の低屈折率フィルムである。λ0は入射光の中心波長である。
上述した光フィルターの構成および多重化装置によって波長が異なる複数のチャンネルを同一の光ファイバーに統合する。
図1に示すように、上述した光フィルターは、チャンネル統合の目的を達成することができる。
なお、低密度波長分割多重化に適用可能な光フィルターは例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−30996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した光フィルターは、チャンネルの阻止帯域(stopband)を縮減することはできない。それぞれのチャンネルは、帯域幅(band width)が一定である。阻止帯域が大き過ぎる場合、隣り合うチャンネルが相互に干渉し、光学ネットワーク技術による情報通信の品質に影響を与えてしまう。
【0009】
上記問題を解決するため、本発明は、チャンネルの阻止帯域(stopband)を縮減することが可能な光フィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明による光フィルターは、ガラス基板およびろ過膜を備える。ろ過膜は、ガラス基板に配置され、高屈折率フィルムと低屈折率フィルムとが交互に積層して構成した複数のファブリペロー共振器(Fabry-Perot resonator)を有する。高屈折率フィルムおよび低屈折率フィルムは、基本の光学的厚さが入射光の中心波長の四分の一(即ちλ0/4)である。ファブリペロー共振器は、順によってガラス基板に重なり、かつ二層の高反射フィルムと、二層の高反射フィルムの間に位置する一層の隔離層とを有する。
【0011】
ろ過膜において、ガラス基板に最も近いファブリペロー共振器の隔離層およびガラス基板から最も遠いファブリペロー共振器の隔離層は、光学的厚さが基本の光学的厚さの4倍以上14倍以下である。
【0012】
ろ過膜中のガラス基板に最も近いファブリペロー共振器の隔離層は、光学的厚さが基本の光学的厚さの4倍、6倍、8倍、10倍、12倍、および14倍のいずれか一つであることが好ましい。
【0013】
ろ過膜中のガラス基板から最も遠いファブリペロー共振器の隔離層は、光学的厚さが基本の光学的厚さの4倍、6倍、8倍、10倍、12倍、および14倍のいずれか一つであることが好ましい。
本発明は、上述した構成によってチャンネルの阻止帯域を縮減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の光フィルターのチャンネルの波形を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態による光フィルターを示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態による光フィルターのチャンネルの波形を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による光フィルターを図面に基づいて説明する。
(一実施形態)
図2に示すように、本発明の一実施形態による光フィルター1は、低密度波長分割多重化(Coarse Wavelength Division Multiplexing,CWDM)に適用され、かつガラス基板10およびろ過膜20を備える。本実施形態において、例として入射光の中心波長を1530nmに設定して説明を進める。
【0016】
ガラス基板10は、シリカ、バリウム、リチウム、およびナトリウムから組成される。
ろ過膜20は、ガラス基板10に配置され、高屈折率フィルムと低屈折率フィルムとが交互に積層して構成した九つのファブリペロー共振器(Fabry-Perot resonator)22を有する。ファブリペロー共振器22は、二層の高反射フィルム221と、二層の高反射フィルム221の間に位置する一層の隔離層222とから構成される。高屈折率フィルムおよび低屈折率フィルムは基本の光学的厚さがλ0/4(即ち382.5nm)である。低屈折率フィルムは、シリカ材質から構成され、屈折率が1.38以上1.44以下である。高屈折率フィルムは、酸化タンタル材質から構成され、屈折率が2.1以上2.7以下である。
【0017】
ろ過膜20において、九つのファブリペロー共振器22の順は、下記に示した通りである。
H(LH)2 4L (HL)3
H(LH)3 4L (HL)3
H(LH)4 6L (HL)4
H(LH)3 6L (HL)3
H(LH)4 6L (HL)4
H(LH)3 6L (HL)3
H(LH)4 6L (HL)4
H(LH)3 4L (HL)3
H(LH)3 4L (HL)2
S
【0018】
Hは光学的厚さがλ0/4の高屈折率フィルムである。Lは光学的厚さがλ0/4の低屈折率フィルムである。Nsはガラス基板である。
従来の光フィルターとの違いは、光フィルター1のろ過膜20にガラス基板10に最も近い第一ファブリペロー共振器22およびガラス基板10から最も遠い第九ファブリペロー共振器22を配置することである。
【0019】
上述した構成により、第一ファブリペロー共振器22は、H(LH)3 4L (HL)2 Hである。H(LH)3および(HL)2 Hは、第一ファブリペロー共振器22の高反射フィルム221である。H(LH)3および(HL)2 Hの間の4Lは、第一ファブリペロー共振器22の隔離層222である。第九ファブリペロー共振器22は、H(LH)2 4L (HL)3である。H(LH)2および(HL)3は、第九ファブリペロー共振器22の高反射フィルム221である。H(LH)2および(HL)3の間の4Lは、第九ファブリペロー共振器22の隔離層222である。
【0020】
図3に示すように、本発明は、第一ファブリペロー共振器22および第九ファブリペロー共振器22の隔離層222の光学的厚さを基本の光学的厚さの4倍まで増やす。これにより、チャンネルの阻止帯域(stopband)を縮減することができるだけでなく、チャンネルが隣り合う別のチャンネルを妨害することがなく、光学ネットワーク技術による情報通信の品質を向上させることができる。
【0021】
一方、本発明において、チャンネルの波形が歪まないという条件下で、ガラス基板に最も近いファブリペロー共振器の隔離層の光学的厚さと、ガラス基板から最も遠いファブリペロー共振器の隔離層の光学的厚さとを、環境または需要に応じて基本の光学的厚さの4倍以上14倍以下に変更することができる。特に、需要に応じて隔離層の光学的厚さを基本の光学的厚さの6倍、8倍、10倍、12倍または14倍に変更することが好ましい。
【0022】
以上、本発明は、上述した実施形態に限定されない。ガラス基板に最も近いファブリペロー共振器の隔離層の光学的厚さと、ガラス基板から最も遠いファブリペロー共振器の隔離層の隔離層の光学的厚さとを増加させることによってチャンネルの阻止帯域を縮減する目的を達成することができる方法でさえあれば、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 :光フィルター、
10 :ガラス基板、
20 :ろ過膜、
22 :ファブリペロー共振器、
221:高反射フィルム、
222:隔離層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、
前記ガラス基板に配置され、高屈折率フィルムおよび低屈折率フィルムが交互に積層して構成した複数のファブリペロー共振器(Fabry-Perot resonator)を有するろ過膜と、
を備え、
前記高屈折率フィルムおよび前記低屈折率フィルムは、基本の光学的厚さが入射光の中心波長の四分の一であり、
前記複数のファブリペロー共振器は、前記ガラス基板に重なり、二層の高反射フィルム、および前記二層の高反射フィルムの間に位置する一層の隔離層を有し、
前記ろ過膜は、前記ガラス基板に最も近いファブリペロー共振器の隔離層および前記ガラス基板から最も遠いファブリペロー共振器の隔離層の光学的厚さが前記基本の光学的厚さの4倍以上14倍以下であることを特徴とする光フィルター。
【請求項2】
前記ろ過膜中の前記ガラス基板に最も近い前記ファブリペロー共振器の前記隔離層は、光学的厚さが前記基本の光学的厚さの4倍、6倍、8倍、10倍、12倍、および14倍のいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の光フィルター。
【請求項3】
前記ろ過膜中の前記ガラス基板から最も遠い前記ファブリペロー共振器の前記隔離層は、光学的厚さが前記基本の光学的厚さの4倍、6倍、8倍、10倍、12倍、および14倍のいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の光フィルター。
【請求項4】
前記入射光の中心波長は、1530nmであることを特徴とする請求項1に記載の光フィルター。
【請求項5】
前記低屈折率フィルムは、屈折率が1.38以上1.44以下であることを特徴とする請求項1に記載の光フィルター。
【請求項6】
前記低屈折率フィルムは、シリカ材質から構成されることを特徴とする請求項5に記載の光フィルター。
【請求項7】
前記高屈折率フィルムは、屈折率が2.1以上2.7以下であることを特徴とする請求項1に記載の光フィルター。
【請求項8】
前記高屈折率フィルムは、酸化タンタル材質から構成されることを特徴とする請求項7に記載の光フィルター。
【請求項9】
前記ろ過膜は、九つの前記ファブリペロー共振器が積層して形成され、配列方式が、
H(LH)2 AL(HL)3
H(LH)3 4L(HL)3
H(LH)4 6L(HL)4
H(LH)3 6L(HL)3
H(LH)4 6L(HL)4
H(LH)3 6L(HL)3
H(LH)4 6L(HL)4
H(LH)3 4L(HL)3
H(LH)3 BL(HL)2
S
であり、
λ0は、前記入射光の中心波長であり、
Hは、光学的厚さがλ0/4の高屈折率フィルムであり、
Lは、光学的厚さがλ0/4の低屈折率フィルムであり、
Nsは、ガラス基板であり、
Aは、4以上14以下であり、
Bは、4以上14以下であることを特徴とする請求項1に記載の光フィルター。
【請求項10】
前記配列方式において、前記Aは、4、6、8、10、12または14のいずれか一つであり、
前記Bは4、6、8、10、12または14のいずれか一つであることを特徴とする請求項9に記載の光フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−252311(P2012−252311A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176528(P2011−176528)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(500335011)亞洲光學股▲分▼有限公司 (5)
【Fターム(参考)】