説明

光ヘッド装置

【課題】 ダイナミックスキューを従来より抑えることができる光ヘッド装置を提供する。
【解決手段】 光ヘッド装置は、対物レンズを保持するレンズホルダ80と、ワイヤ101〜103によってレンズホルダ80をトラッキング方向、矢印Foで示すフォーカシング方向およびチルト方向に移動可能に支持するホルダ支持部材110とを有し、ホルダ支持部材110は、ワイヤ101〜103が埋設されるゲル状緩衝材117を収納するゲルポット113を有し、ゲル状緩衝材117は、フォーカシング方向に沿って配設された3本のワイヤ101〜103のうちフォーカシング方向における中央に位置するワイヤ102を他の2本のワイヤ101、103より矢印10bで示す突出方向における後方から突出させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)などの光記録ディスクの再生や記録などに用いられる光ヘッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光ヘッド装置として、対物レンズを保持するレンズホルダと、所定のバネ定数を有する6本のワイヤと、ワイヤによってレンズホルダをトラッキング方向、フォーカシング方向およびチルト方向に移動可能に支持するホルダ支持部材とを有する光ヘッド装置であって、6本のワイヤは、トラッキング方向およびフォーカシング方向の双方に直交する方向にそれぞれ延在してトラッキング方向におけるレンズホルダの両側にフォーカシング方向に沿って3本ずつ配設され、ホルダ支持部材は、ワイヤが埋設されるゲル状緩衝材を収納するゲルポットを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ここで、光ヘッド装置は、ノート型パソコンなどの光ドライブ装置に搭載される薄く小さいスリム型である場合、対物レンズおよびレンズホルダからなる可動部の質量mが小さいので、「数1」で示す主共振周波数fが大きくなり易い。「数1」において、kは、6本のワイヤの全体のバネ定数である。主共振周波数fが大きくなると、光記録ディスクの回転数に同期した周波数で外乱が発生し易く可動部の制御性が低下する。したがって、可動部の制御性の低下を抑えるために、「数1」によれば、バネ定数kは、小さい方が良い。
【数1】

【0004】
また、可動部のトラッキング方向の変位xは、「数2」で示すようにトラッキング方向の推力Fと、6本のワイヤの全体のバネ定数kとで表わされる。「数2」によれば、変位xを大きくするためには、推力Fを大きくすれば良いが、光ヘッド装置がスリム型である場合、少ない電力で推力Fを大きくする構造を寸法の制約から採用することができないので、単位電圧当たりの移動量であるDC感度が低く、消費電力が大きくなる。したがって、消費電力が大きくなることを抑えるために、「数2」によれば、バネ定数kは、小さい方が良い。
【数2】

【0005】
ここで、バネ定数kを小さくするためには、ワイヤの径を小さくすれば良い。しかしながら、ワイヤの剛性が径の3乗に比例して低下するので、ワイヤの径が小さ過ぎると、ワイヤの剛性が小さくなり過ぎて半田作業などのワイヤの取り扱いが困難になる。したがって、一般に、性能や量産性などを考慮して、ワイヤは、直径0.05mm〜直径0.15mm程度のものが利用される。
【0006】
6本のワイヤのバネ定数は、全て同じというわけではない。図11は、従来の光ヘッド装置の可動部をワイヤ911〜913の延在方向と同じ方向に見た模式図である。ここで、図11に示すように、ワイヤ911は、最も対物レンズ920に近いワイヤであり、ワイヤ912は、ワイヤ911の次に対物レンズ920に近いワイヤであり、ワイヤ913は、最も対物レンズ920から遠いワイヤである。可動部のローリング共振を低減するために、トラッキング方向の推力Fの中心は、可動部の重心Gと一致させられている。対物レンズ920の存在によって可動部の重心Gがレンズホルダ930の中心より対物レンズ920側に位置しているため、トラッキング方向の推力Fの中心も、レンズホルダ930の中心より対物レンズ920側に位置している。ここで、対物レンズ920をトラッキング方向に駆動するときの傾きであるダイナミックスキューを改善するため、可動部の支持中心Sは、可動部に加わるトラッキング方向の推力Fの中心と近い方が良い。可動部の支持中心Sは、ワイヤ911の中心およびワイヤ912の中心の間の距離Z1と、ワイヤ912の中心およびワイヤ913の中心の間の距離Z2とを互いに異ならせることによって、レンズホルダ930の中心からずらすことができる。しかしながら、スリム型の光ヘッド装置においては、半田作業性を考慮すると、距離Z1と、距離Z2とが同じである方が好ましい。したがって、6本のワイヤのバネ定数は、可動部の支持中心Sをレンズホルダ930の中心から推力Fの中心側にずらすために、全て同じというわけではない。
【0007】
ここで、ワイヤ911のバネ定数をk1、ワイヤ912のバネ定数をk2、ワイヤ913のバネ定数をk3とすると、フォーカシング方向におけるワイヤ913の中心の高さを原点としたときの支持中心Sの位置は、原点からの距離Z3によって「数3」に示すように表わされる。
【数3】

【0008】
仮に距離Z1および距離Z2がともに1mmであるとすると、「数3」は、「数4」に示すようになる。
【数4】

【0009】
上述したように、トラッキング方向の推力Fの中心は、レンズホルダ930の中心より対物レンズ920側に位置している。また、可動部の支持中心Sは、トラッキング方向の推力Fの中心と近い方が良い。したがって、可動部の支持中心Sは、レンズホルダ930の中心より対物レンズ920側に位置している方が良い。「数4」において可動部の支持中心Sが対物レンズ920側に位置しているためには、距離Z3が1mmより大きい必要がある。つまり、バネ定数k1がバネ定数k3より大きい必要がある。したがって、図11に示すように、ワイヤ911の径がワイヤ913の径より大きくなっていると良い。もちろん、ワイヤ911、913は、上述したように、直径0.05mm〜直径0.15mm程度のものが利用される。ここで、バネ定数k2が小さいほど、「数4」の右辺の分母に対する分子の影響が大きいので、可動部の支持中心Sは、レンズホルダ930の中心より更に対物レンズ920側に位置することができる。したがって、ワイヤ912の径は、小さい方が良い。もちろん、ワイヤ912も、上述したように、直径0.05mm〜直径0.15mm程度のものが利用される。
【特許文献1】特開2004−326913号公報(特に、第3頁、第8図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の光ヘッド装置においては、可動部の支持中心Sと、可動部に加わるトラッキング方向の推力Fの中心とが十分に近づいていないため、ダイナミックスキューが発生するという問題がある。
【0011】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、ダイナミックスキューを従来より抑えることができる光ヘッド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光ヘッド装置は、対物レンズを保持するレンズホルダと、所定のバネ定数を有する6本のワイヤと、前記ワイヤによって前記レンズホルダをトラッキング方向、フォーカシング方向およびチルト方向に移動可能に支持するホルダ支持部材とを有する光ヘッド装置であって、前記6本のワイヤは、前記トラッキング方向および前記フォーカシング方向の双方に直交する方向にそれぞれ延在して前記トラッキング方向における前記レンズホルダの両側に前記フォーカシング方向に沿って3本ずつ配設され、前記ホルダ支持部材は、前記ワイヤが埋設されるゲル状緩衝材を収納するゲルポットを有し、前記ゲル状緩衝材は、前記フォーカシング方向に沿って配設された3本の前記ワイヤのうち前記フォーカシング方向における中央に位置するワイヤを他の2本のワイヤより突出方向における後方から突出させることを特徴とする。
【0013】
この構成により、本発明の光ヘッド装置は、フォーカシング方向に沿って配設された3本のワイヤのうちフォーカシング方向における中央に位置するワイヤが他の2本のワイヤよりゲル状緩衝材から長く突出しており、中央に位置するワイヤのバネ定数が他の2本のワイヤのバネ定数より小さくなっているので、可動部の支持中心と、可動部に加わるトラッキング方向の推力の中心とを十分に近づけることができ、ダイナミックスキューを従来より抑えることができる。
【0014】
また、本発明の光ヘッド装置の前記ホルダ支持部材は、前記フォーカシング方向に沿って配設された3本の前記ワイヤを1つの前記ゲルポットに収納されたゲル状緩衝材に一緒に埋設させ、前記ゲル状緩衝材は、前記ゲルポットの容積より少ない量が前記ゲルポットに充填されることによって前記ワイヤが突出される表面が表面張力によって擂り鉢状に形成され、前記フォーカシング方向に沿って配設された3本の前記ワイヤのうち前記フォーカシング方向における中央に位置するワイヤを他の2本のワイヤより前記擂り鉢の底側から突出させることを特徴とすることが好ましい。
【0015】
また、本発明の光ヘッド装置の前記ゲルポットは、前記ゲル状緩衝材に対して前記ワイヤの延在方向のみが開口していることを特徴とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ダイナミックスキューを従来より抑えることができる光ヘッド装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0018】
まず、本実施の形態に係る光ヘッド装置の構成について説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る光ヘッド装置10の斜視図である。図2は、光ヘッド装置10の分解斜視図である。図3は、光ヘッド装置10の斜視図であって、一部の部品が取り除かれた状態での図である。
【0020】
図1に示す光ヘッド装置10は、波長が650nm帯のレーザ光と、波長が780nm帯のレーザ光とを用いてCD系ディスクやDVD系ディスクなどの図示していない光記録ディスクに対する情報の再生や記録などが可能な2波長光ヘッド装置である。
【0021】
図1〜図3に示すように、光ヘッド装置10は、マグネシウムや亜鉛などのダイカスト品からなる金属製の装置フレーム11と、装置フレーム11に対して光記録ディスク側に配置されて装置フレーム11上の各種の部品を覆う金属カバー12および金属カバー13と、波長が650nm帯のレーザ光を出射するAlGaInP系の半導体レーザを備えたレーザ光源としてのレーザ光源装置21と、波長が780nm帯のレーザ光を出射するAlGaAs系の半導体レーザを備えたレーザ光源装置22と、レーザ光源装置21およびレーザ光源装置22によって出射されたレーザ光を受光するためのモニタ用受光素子23と、光記録ディスクの記録面で反射されたレーザ光を受光するための信号検出用受光素子24と、レーザ光源装置21およびレーザ光源装置22によって出射されたレーザ光を光記録ディスクの記録面に収束させる対物レンズ31を含む光学系30と、装置フレーム11に搭載されて対物レンズ31の位置をサーボ制御するための対物レンズ駆動機構40と、レーザ光源装置21、レーザ光源装置22、モニタ用受光素子23、信号検出用受光素子24および対物レンズ駆動機構40などに電気的に接続されたフレキシブル回路基板50とを備えている。
【0022】
装置フレーム11は、光記録ディスクを駆動する図示していないディスク駆動装置のガイド軸や送りねじ軸が係合する軸受11aおよび軸受11bと、金属カバー12の位置決め用の突起11cと、金属カバー12を留めるための爪11dとを備えている。
【0023】
金属カバー12は、装置フレーム11の突起11cに嵌まる穴部12aと、装置フレーム11の爪11dに係合する溝部12bとを備えている。
【0024】
金属カバー13は、対物レンズ31から出射されるレーザ光を通過させる穴部13aを有しており、対物レンズ駆動機構40を覆っている。
【0025】
レーザ光源装置21、レーザ光源装置22およびモニタ用受光素子23は、装置フレーム11に搭載されており、金属カバー12によって覆われている。
【0026】
光学系30は、レーザ光源装置21から出射されたレーザ光を透過しレーザ光源装置22から出射されたレーザ光を反射する光路合成用の偏光プリズム32と、レーザ光源装置21および偏光プリズム32の間に配置されて1/2波長板が一体に構成された回折素子33と、レーザ光源装置22および偏光プリズム32の間に配置された回折素子34およびリレーレンズ35と、モニタ用受光素子23および偏光プリズム32の間に配置されて偏光プリズム32から出射されたレーザ光を部分反射するハーフミラー36と、偏光プリズム32から出射されてハーフミラー36によって反射されたレーザ光に1/4波長の位相差を生じさせる1/4波長板37と、1/4波長板37を透過したレーザ光を平行光にするコリメートレンズ38と、コリメートレンズ38によって平行光にされたレーザ光を光記録ディスクに向けて立ち上げる立ち上げミラー39とを含んでいる。
【0027】
偏光プリズム32、回折素子33、回折素子34、リレーレンズ35、ハーフミラー36、1/4波長板37、コリメートレンズ38および立ち上げミラー39は、装置フレーム11に搭載されている。偏光プリズム32、回折素子33、回折素子34、リレーレンズ35、ハーフミラー36および1/4波長板37は、金属カバー12によって覆われている。コリメートレンズ38および立ち上げミラー39は、対物レンズ駆動機構40によって覆われている。
【0028】
フレキシブル回路基板50は、レーザ光源装置21と電気的に接続される図示していない端部と、レーザ光源装置22と電気的に接続される端部50bと、モニタ用受光素子23と電気的に接続される端部50cと、信号検出用受光素子24と電気的に接続される端部50dと、対物レンズ駆動機構40と電気的に接続される図示していない端部とを備えており、部分的に折り曲げられて立体的に装置フレーム11に搭載されて金属カバー12によって覆われている。
【0029】
図4は、対物レンズ駆動機構40の斜視図である。図5(a)、(b)は、それぞれ対物レンズ駆動機構40の平面図、右側面図である。図6(a)〜(c)は、それぞれ対物レンズ駆動機構40の正面図、背面図、底面図である。図4および図6(a)においては、後述するゲル状緩衝材の図示を省略している。
【0030】
図4〜図6に示すように、対物レンズ駆動機構40は、矢印Trで示すトラッキング方向において略対称であるので、片側については説明を省略する。対物レンズ駆動機構40は、装置フレーム11(図2参照。)に固定された磁性体のヨーク60と、ヨーク60に取り付けられた駆動マグネット71、72と、対物レンズ31を保持するレンズホルダ80と、レンズホルダ80に取り付けられて駆動マグネット71、72とともに矢印Trで示すトラッキング方向における駆動用の磁気回路を構成するトラッキング駆動コイル91、92と、レンズホルダ80に取り付けられて駆動マグネット71、72とともに矢印Foで示すフォーカシング方向における駆動用の磁気回路を構成するフォーカシング駆動コイル93と、レンズホルダ80に連結されたワイヤ101〜103と、ヨーク60に固定されてワイヤ101〜103を介してレンズホルダ80を矢印Trで示すトラッキング方向、矢印Foで示すフォーカシング方向および矢印Tiで示すチルト方向に移動可能に支持するホルダ支持部材110と、フレキシブル回路基板50(図2参照。)の図示していない端部およびワイヤ101〜103と電気的に接続されてホルダ支持部材110に固定された基板120と、ヨーク60に対してレンズホルダ80および基板120を固定するネジ130とを備えている。
【0031】
図7(a)は、ヨーク60、ホルダ支持部材110および基板120の平面図である。図7(b)は、ヨーク60、ホルダ支持部材110および基板120の右側面図である。図8(a)、(b)は、それぞれ図7(a)のA−A矢視断面図、B−B矢視断面図である。図8(b)においては、後述するゲル状緩衝材の図示を省略している。
【0032】
図7および図8に示すように、ヨーク60は、駆動マグネット71が固定される壁部61と、壁部61と平行に配置されて駆動マグネット72が固定される壁部62と、壁部61および壁部62を連結して装置フレーム11(図2参照。)に設置される設置部63と、設置部63から立ち上げられてフォーカシング駆動コイル93(図5(a)参照。)に挿入される挿入部64と、壁部62に対して壁部61とは反対側で壁部62と平行に配置された壁部65と、壁部62および壁部65を連結して壁部62に対して壁部65を支持する支持部66とを有している。壁部61は、駆動マグネット71の矢印Tr(図5(a)参照。)で示すトラッキング方向の位置決めに使用される円柱状の突起61a、61bと、駆動マグネット71の矢印Fo(図5(b)参照。)で示すフォーカシング方向の位置決めに使用される円柱状の突起61cとを有している。壁部62は、駆動マグネット72の矢印Trで示すトラッキング方向の位置決めに使用される円柱状の突起62a、62bと、駆動マグネット72の矢印Foで示すフォーカシング方向の位置決めに使用される円柱状の突起62cとを有している。壁部65は、ネジ130が螺合されるネジ穴65aと、ネジ穴65aの両側に開けられてホルダ支持部材110の位置決めに使用される穴65b(図4参照。)とを有している。
【0033】
駆動マグネット71、72は、ヨーク60の挿入部64側がN極になっている。
【0034】
図4〜図6に示すように、トラッキング駆動コイル91は、矢印Foで示すフォーカシング方向に延在する2辺のうち1辺が駆動マグネット71と、ヨーク60の挿入部64との間に配置されている。ここで、駆動マグネット71と、ヨーク60の挿入部64との間には、矢印Foで示すフォーカシング方向と、矢印Trで示すトラッキング方向との双方に直交する矢印10aで示す方向に磁界が発生している。したがって、トラッキング駆動コイル91は、電流が流されることによって矢印Trで示すトラッキング方向の電磁力を受け、レンズホルダ80に固定された対物レンズ31を矢印Trで示すトラッキング方向に移動させる。トラッキング駆動コイル91と、駆動マグネット71およびヨーク60の挿入部64との位置関係について説明したが、トラッキング駆動コイル92と、駆動マグネット72およびヨーク60の挿入部64との位置関係についても同様である。なお、トラッキング駆動コイル91、92の配線は、トラッキング駆動コイル91、92に電流が流されたときにトラッキング駆動コイル91、92に発生する電磁力によって対物レンズ31が矢印Trで示すトラッキング方向のみに移動するように適切に設定されている。
【0035】
フォーカシング駆動コイル93は、矢印Trで示すトラッキング方向に延在する2辺のうち1辺が駆動マグネット71と、ヨーク60の挿入部64との間に配置され、残りの1辺が駆動マグネット72と、ヨーク60の挿入部64との間に配置されている。ここで、駆動マグネット71およびヨーク60の挿入部64の間と、駆動マグネット72およびヨーク60の挿入部64の間とには、矢印10aで示す方向であって互いに逆向きの磁界が発生している。したがって、フォーカシング駆動コイル93は、電流が流されることによって矢印Foで示すフォーカシング方向の電磁力を受け、レンズホルダ80に固定された対物レンズ31を矢印Foで示すフォーカシング方向に移動させる。なお、2つのフォーカシング駆動コイル93に矢印Foで示すフォーカシング方向であって互いに逆向きの電磁力が発生するようにフォーカシング駆動コイル93に流される電流が制御されることによって、対物レンズ31は、矢印Tiで示すチルト方向に移動することができる。
【0036】
ワイヤ101〜103は、所定のバネ定数を有するワイヤであって、矢印10aで示す方向にそれぞれ延在して、矢印Trで示すトラッキング方向におけるレンズホルダ80の両側に矢印Foで示すフォーカシング方向に沿って配設されている。ワイヤ101〜103は、レンズホルダ80側の端部でレンズホルダ80上の基板81を介してそれぞれトラッキング駆動コイル91、92およびフォーカシング駆動コイル93の何れかに電気的に接続されており、基板120側の端部で基板120に電気的に接続されている。「背景技術」に記載したように、ワイヤ101〜103は、直径0.05mm〜直径0.15mm程度のものが利用されており、ワイヤ101の径がワイヤ103の径より大きくなっていると良い。すなわち、ワイヤ101の径は、ワイヤ103の径の1〜3倍である。ワイヤ101〜103は、互いに径が異なるワイヤであっても良いが、作業において識別の煩雑さがあるため、2種類が好ましい。2種類である場合、「背景技術」に記載したようにワイヤ101のバネ定数がワイヤ103のバネ定数より大きい方が良いことと、ワイヤ102のバネ定数が小さいほど良いことを考慮すると、ワイヤ101〜103のうちワイヤ101の径が最も大きく、ワイヤ102、103の径が互いに等しい構成が好ましい。
【0037】
ホルダ支持部材110は、中央に形成されてネジ130を通す図示していない中央穴と、中央穴の両側に形成されて位置決めのためにヨーク60の穴65bに挿入される突起111と、中央穴の両側に形成されて基板120の位置決めのために使用される突起112と、突起111に対して中央穴とは反対側に形成されレンズホルダ80側に開口してワイヤ101〜103が挿入されたゲルポット113と、ゲルポット113に連通し基板120側に開口してそれぞれワイヤ101、102、103が挿入された穴114、115、116とを有している。
【0038】
図9は、図6(b)のC−C矢視断面図である。
【0039】
図9に示すように、ホルダ支持部材110のゲルポット113には、ワイヤ101〜103が埋設されるゲル状緩衝材117が封入されている。ゲル状緩衝材117は、ワイヤ101〜103が埋設されることによって、ワイヤ101〜103に対して固定されたレンズホルダ80に発生しがちな共振現象を抑制するものである。
【0040】
ゲルポット113は、ゲル状緩衝材117に対してワイヤ101〜103の延在方向である矢印10aで示す方向のみが開口している。ゲル状緩衝材117は、ゲルポット113の容積より少ない量がゲルポット113に充填されることによってワイヤ101〜103が突出されるレンズホルダ80側の表面117aが表面張力によって擂り鉢状に形成されている。ここで、ゲル状緩衝材117の容積は、UV照射作業やゲル状緩衝材117の塗布作業の作業性からゲルポット113の容積の1/2倍程度でも良いが、好ましくは5/6倍〜2/3倍程度であると良い。この構成により、3000mPa・s〜10000mPa・s程度の適度のゲル状緩衝材117がゲルポット113に塗布されることによって、ゲル状緩衝材117の表面117aが表面張力によって必ず擂り鉢状に形成される。そして、ゲル状緩衝材117は、矢印Foで示すフォーカシング方向に沿って配設された3本のワイヤ101〜103のうちフォーカシング方向における中央に位置するワイヤ102を他の2本のワイヤ101、102より擂り鉢の底117b側から突出させることによって、矢印10bで示す突出方向における後方から突出させている。
【0041】
図4〜図6に示すように、基板120は、中央に形成されてネジ130を通す図示していない中央穴と、中央穴の両側に形成されて位置決めのためにホルダ支持部材110の突起112が挿入される穴121と、穴121に対して中央穴とは反対側に形成されてそれぞれワイヤ101〜103が挿入される貫通穴122〜124とを有している。
【0042】
以上に説明したように、光ヘッド装置10は、矢印Foで示すフォーカシング方向に沿って配設された3本のワイヤ101〜103のうち矢印Foで示すフォーカシング方向における中央に位置するワイヤ102が他の2本のワイヤ101、102よりゲル状緩衝材117から長く突出しているので、中央に位置するワイヤ102のバネ定数が他の2本のワイヤ101、102のバネ定数より小さくなっている。したがって、光ヘッド装置10は、対物レンズ31およびレンズホルダ80などからなる可動部の支持中心と、可動部に加わるトラッキング方向の推力の中心とを十分に近づけることができ、ダイナミックスキューを従来より抑えることができる。
【0043】
図10は、ゲルポット113の側面図であって、図9に示す例とは異なる例の図である。
【0044】
図9に示す例では、矢印Foで示すフォーカシング方向に沿って配設された3本のワイヤ101〜103を1つのゲルポット113に収納されたゲル状緩衝材117に一緒に埋設させているが、ワイヤ102を他の2本のワイヤ101、102より矢印10bで示す突出方向における後方から突出させていれば、図10に示すように、ワイヤ101〜103を別々のゲルポットに収納された別々のゲル状緩衝材に埋設させていても良い。
【0045】
また、図9に示す例では、ゲルポット113は、ゲル状緩衝材117に対してワイヤ101〜103の延在方向である矢印10aで示す方向のみが開口しているが、ゲル状緩衝材117に対して矢印Foで示すフォーカシング方向や矢印Trで示すトラッキング方向に開口していても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態に係る光ヘッド装置の斜視図である。
【図2】図1に示す光ヘッド装置の分解斜視図である。
【図3】図1に示す光ヘッド装置の斜視図であって、一部の部品が取り除かれた状態での図である。
【図4】図1に示す対物レンズ駆動機構の斜視図であって、ゲル状緩衝材の図示を省略した図である。
【図5】(a)図1に示す対物レンズ駆動機構の平面図である。 (b)図1に示す対物レンズ駆動機構の右側面図である。
【図6】(a)図1に示す対物レンズ駆動機構の正面図であって、ゲル状緩衝材の図示を省略した図である。 (b)図1に示す対物レンズ駆動機構の背面図である。 (c)図1に示す対物レンズ駆動機構の底面図である。
【図7】(a)図2に示すヨーク、ホルダ支持部材および基板の平面図である。 (b)図2に示すヨーク、ホルダ支持部材および基板の右側面図である。
【図8】(a)図7(a)のA−A矢視断面図である。 (b)図7(a)のB−B矢視断面図であって、ゲル状緩衝材の図示を省略した図である。
【図9】図6(b)のC−C矢視断面図である。
【図10】図1に示すホルダ支持部材のゲルポットの側面図であって、図9に示す例とは異なる例の図である。
【図11】従来の光ヘッド装置の可動部をワイヤの延在方向と同じ方向に見た模式図である。
【符号の説明】
【0047】
10 光ヘッド装置
31 対物レンズ
80 レンズホルダ
101〜103 ワイヤ
110 ホルダ支持部材
113 ゲルポット
117 ゲル状緩衝材
117a 表面
117b 底

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズを保持するレンズホルダと、所定のバネ定数を有する6本のワイヤと、前記ワイヤによって前記レンズホルダをトラッキング方向、フォーカシング方向およびチルト方向に移動可能に支持するホルダ支持部材とを有する光ヘッド装置であって、
前記6本のワイヤは、前記トラッキング方向および前記フォーカシング方向の双方に直交する方向にそれぞれ延在して前記トラッキング方向における前記レンズホルダの両側に前記フォーカシング方向に沿って3本ずつ配設され、
前記ホルダ支持部材は、前記ワイヤが埋設されるゲル状緩衝材を収納するゲルポットを有し、
前記ゲル状緩衝材は、前記フォーカシング方向に沿って配設された3本の前記ワイヤのうち前記フォーカシング方向における中央に位置するワイヤを他の2本のワイヤより突出方向における後方から突出させることを特徴とする光ヘッド装置。
【請求項2】
前記ホルダ支持部材は、前記フォーカシング方向に沿って配設された3本の前記ワイヤを1つの前記ゲルポットに収納されたゲル状緩衝材に一緒に埋設させ、
前記ゲル状緩衝材は、前記ゲルポットの容積より少ない量が前記ゲルポットに充填されることによって前記ワイヤが突出される表面が表面張力によって擂り鉢状に形成され、前記フォーカシング方向に沿って配設された3本の前記ワイヤのうち前記フォーカシング方向における中央に位置するワイヤを他の2本のワイヤより前記擂り鉢の底側から突出させることを特徴とする請求項1に記載の光ヘッド装置。
【請求項3】
前記ゲルポットは、前記ゲル状緩衝材に対して前記ワイヤの延在方向のみが開口していることを特徴とする請求項2に記載の光ヘッド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−99164(P2009−99164A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267104(P2007−267104)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】