説明

光ポインティング装置、電子機器、光ポインティング装置の製造方法

【課題】イジェクト工程に起因するバリが発生したとしても、バリによる悪影響を可及的に回避することのできる光ポインティング装置、電子機器及び光ポインティング装置の製造方法を提供する。
【解決手段】光ポインティング装置1は、光源2により照明された被写体からの反射光を撮像素子7の撮像面に結像する光学カバー3を備え、前記光学カバー3は、当該光学カバー3のうち撮像素子封止体6と接合する接合面に形成されたバリ回避用凹部D2と、当該光学カバー3の製造工程のうち該光学カバー3のイジェクト工程により、前記バリ回避用凹部D2を構成する壁面に形成されたイジェクト凹部D1とを有し、前記バリ回避用凹部D2及びイジェクト凹部D1には、前記撮像素子封止体6との接合用の接着剤が貯留されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指などの被写体の動きを光学的に検出する光ポインティング装置、及び、これを備えた電子機器、並びに光ポインティング装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話及びPDA(Personal Digital Assistants)を含む携帯情報端末では、キーパッドを利用したユーザーインターフェースを採用している。このようなキーパッドは、数字及び文字を入力するための複数個のボタンと方向ボタンとで構成されている。
【0003】
近年では、携帯情報端末のディスプレイ部にグラフィックを表すことができるようになり、このディスプレイ部を2次元で用いることができるようになっている。したがって、このように、携帯情報端末の機能が、コンピューターの機能に近づいて、操作が複雑化している昨今では、上記メニューキーおよびその他の機能キーを方向キーとして用いて所望の機能の動作を行う方法は、操作を容易に行うことができないから、携帯情報端末の入力方法として、採用しにくくなっている。このため、コンピューターに用いられているマウスやタッチパッドのような操作を可能とするポインティング装置が、携帯情報端末に所望されるようになっている。
【0004】
このような背景において、例えば携帯電話機やPDA等の携帯情報端末や装置に接触する指先等の模様を撮像素子で観察することで、接触面の変化(被写体(例えば指)の動きの量と方向)を抽出することで、所定の入力操作を行うための光ポインティング装置が提案されている。また、光源により接触面を照明し、接触面の模様を撮像素子に結像させて、模様の変化を検出することで、指先の動きを入力信号に変換する方法が例えば下記特許文献1に提案されている。
【0005】
具体的には、光源から出力されたLED光がプリズムの傾斜面を透過屈折して接触面を照明し、この接触面に接触している被写体によって散乱反射した照明光(反射光)の一部がプリズムを透過して前記傾斜面で光路変換された後、レンズにより結像するとともに、この結像された像を撮像素子により画像データとして取り込み、この画像データから画像処理によって前記接触面の変化を抽出して被写体の動きの量と方向の情報を得る構成が下記特許文献1に開示されている。
【0006】
下記特許文献1の他、下記特許文献2〜4にも、光源により接触面を照明し、接触面の模様を撮像素子に結像させて、模様の変化を検出することで、指先の動きを入力信号に変換する技術が開示されている。
【0007】
ところで、この種の光ポインティング装置においては、いかに光のロスや光軸のずれ無く光を伝達するかが重要である。しかし、各部品の成型時にバリが発生すると、そのバリの発生箇所によっては光学部品間にずれが生じ、各部品を組み立てる際に光のロスや光軸のずれが発生し得る。部品成型時に発生し得るバリに関して言及している文献として例えば下記特許文献5,6がある。
【0008】
下記特許文献5には、複数の金型を用いて撮影レンズを成型する場合に、隣接する金型同士の境界部分によって成型時にバリが生じ得る点が記載されている。そして、下記特許文献2には、この点に鑑み、成型された撮影レンズの組み付け時に他の部材と当接しない位置にバリが形成される様、前記金型同士の境界部分の位置を設計する点が開示されている。
【0009】
下記特許文献6には、互いに反対方向に突出する2つの凸状光学面と前記両光学面の境界部分に形成されるフランジとを有するピックアップ装置用の対物レンズを、一対の金型を用いた射出成型により形成する点が記載されている。また、前記対物レンズの製造工程に関し、前記一方の金型から取り外した前記レンズを他方の金型から取り外すべく、イジェクトバーで金型内部を介して前記フランジを突くイジェクト工程についての記載がある。
【0010】
さらに、下記特許文献6には、前記2つの凸状光学面のうちイジェクトバーの当接側に位置する方の光学面の先端部と前記フランジの表面との間に段差を有することで、イジェクトバーと金型とのクリアランスに因るバリが突き出し跡に発生しても、前記対物レンズがピックアップ装置に組み込まれた場合のワーキングディスタンスが短くならないという点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−165138号公報(2010年07月29日公開)
【特許文献2】特表2008−507787号公報(2008年03月13日公表)
【特許文献3】特表2008−510248号公報(2008年04月03日公表)
【特許文献4】特表2007―528554号公報(2007年10月11日公表)
【特許文献5】特開2002−350608号公報(2002年12月04日公開)
【特許文献6】特開2007−196665号公報(2007年08月09日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、隣接する金型同士の境界位置を工夫する前記特許文献5の技術では、前記特許文献6で言及されている突き出し跡に発生し得るバリの悪影響を回避することはできない。
【0013】
その点、前記特許文献6の技術では、イジェクト工程により発生し得るバリの悪影響を回避することはできる。
【0014】
しかしながら、前記特許文献6の技術は、他の部材との接合に関わらない部位(フランジ)が存在することを前提として、その部位をイジェクトバーでの突き出し位置とすることでバリに因る悪影響を回避するという技術である。そのため、他の部材との接合に関わらない部位が無い部材の場合には、前記特許文献3の技術では対応することができない。
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、他の部材との接合に関わらない部位が存在しない光学部品において、前記イジェクト工程に起因するバリが発生したとしても、バリによる悪影響を可及的に回避することのできる光ポインティング装置、電子機器及び光ポインティング装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る光ポインティング装置は、光源により照明された被写体からの反射光を撮像素子の撮像面に結像する光学部材を備え、前記光学部材は、当該光学部材のうち、当該光学部材を支持する所定の部材と接合する接合面に形成されたバリ回避用凹部と、当該光学部材の製造工程のうち該光学部材のイジェクト工程により、前記バリ回避用凹部を構成する壁面に形成されたイジェクト凹部とを有し、前記バリ回避用凹部及びイジェクト凹部には、前記所定の部材との接合用の接着剤が貯留されていることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明に係る光ポインティング装置の製造方法は、光源により照明された被写体からの反射光を撮像素子の撮像面に結像する光学部材を備えた光ポインティング装置の製造方法であって、前記光学部材のうち、当該光学部材を支持する所定の部材と接合する接合面にバリ回避用凹部が形成されるように一対の金型を用いて前記光学部材の成型体を作成する成型工程と、前記一対の金型のうち一方の金型を他方の金型に対して離すことにより前記一方の金型を前記成型体から取り外す第1の取り外し工程と、前記他方の金型の内部を挿通可能なイジェクトピンで前記成型体に形成されている前記バリ回避用凹部の壁面を突くことにより、前記他方の金型を前記成型体から取り外す第2の取り外し工程と、前記バリ回避用凹部と、前記イジェクトピンによって前記成型体を突くことにより形成されたイジェクト凹部とに接着剤を充填する接着剤充填工程と、前記光学部材の接着剤が充填された側の面と前記所定の部材における接合面とを接合する接合工程とを有することを特徴とするものである。
【0018】
これらの発明によれば、光学部材のうち所定の部材と接合する接合面にバリ回避用凹部を形成し、このバリ回避用凹部を構成する壁面を前記イジェクト工程で突き出して前記イジェクト凹部が形成されるようにした。
【0019】
ここで、本発明に係る光ポインティング装置においては、イジェクト凹部を規定する縁部のうち接合面側の縁部にバリが形成され得るが、該バリは、前記接合面からバリ回避用凹部の内方へ遠ざけられた位置に形成される。
【0020】
そのため、形成され得るバリの長さを考慮して前記バリ回避用凹部の形状や深さ、或いはイジェクト凹部の形成位置等を適切に設定することで、光学部材を前記所定の部材と接合しても、バリと前記所定の部材との接触が回避される。
【0021】
よって、光学部材と前記所定の部材との接合時に、両接合面間にバリが入り込み、それによって前記両部材の接合の密着性が低下するという不具合が発生するのを可及的に回避することができる。
【0022】
また、光学部材と前記所定の部材との高い密着性を確保できることに加え、光学部材のバリ回避用凹部及びイジェクト凹部に、前記所定の部材との接合に用いる接着剤が貯留され、接着剤を貯留する部位として、イジェクト凹部だけの場合に比し広い領域の部位が設けられる。これにより、光学部材と前記所定の部材とをより強固に接合することができる。
【0023】
本発明に係る光ポインティング装置において、前記所定の部材は、前記撮像素子を封止する封止体とし得る。
【0024】
本発明に係る光ポインティング装置において、前記所定の部材は、当該光ポインティング装置に備えられる各部材を支持するフレキシブル基板とし得る。
【0025】
本発明に係る光ポインティング装置においては、連通する一対の前記イジェクト凹部と前記バリ回避用凹部との組み合わせが複数組設けられていてもよい。
【0026】
この発明によれば、連通する一対の前記バリ回避用凹部と前記イジェクタ凹部との組み合わせを複数組設けることで、1組の場合に比して、前記光学部材と前記所定の部材又は接合体とがより多くの部位で接着剤により接合される。これにより、前記光学部材と前記所定の部材又は接合体とがより強固に接合され得る。
【0027】
本発明に係る光ポインティング装置は、光源により照明された被写体からの反射光を撮像素子の撮像面に結像する光学部材と、前記光学部材と接合された、前記撮像素子を封止するための封止体とを備え、前記光学部材は、当該光学部材の製造工程のうち該光学部材のイジェクト工程により、当該光学部材のうち前記封止体と接合する接合面に形成されたイジェクト凹部を備え、前記封止体は、前記イジェクト凹部と連通するバリ回避用凹部を備え、前記イジェクト凹部を規定する縁部のうち前記接合面に位置する縁部が前記バリ回避用凹部に臨み、前記イジェクト凹部及びバリ回避用凹部には、前記光学部材と前記封止体との接合用の接着剤が貯留されていることを特徴とするものである。
【0028】
また、本発明に係る光ポインティング装置の製造方法は、光源により照明された被写体からの反射光を撮像素子の撮像面に結像する光学部材と、前記光学部材により接合される、前記撮像素子を封止するための封止体とを備えた光ポインティング装置の製造方法であって、一対の金型を用いて前記光学部材の成型体を作成する光学部材成型工程と、前記一対の金型のうち一方の金型を他方の金型に対して離すことにより前記他方の金型を前記成型体から取り外す第1の取り外し工程と、前記一方の金型の内部を挿通可能なイジェクトピンで前記成型体の所定の位置を突くことにより、前記一方の金型を前記成型体から取り外す第2の取り外し工程と、前記光学部材と前記封止体とを接合したときに前記イジェクトピンで突くことにより形成されたイジェクト凹部と連通するバリ回避用凹部であって、前記イジェクト凹部を規定する縁部のうち前記光学部材の接合面上に位置する縁部が臨むバリ回避用凹部が形成されるように金型を用いて前記封止体を作成する封止体成型工程と、前記イジェクト凹部と前記バリ回避用凹部とに接着剤を充填する接着剤充填工程と、接着剤が充填された前記イジェクト凹部と前記バリ回避用凹部とを対向させた状態で前記光学部材と前記封止体とを接合する接合工程とを有することを特徴とするものである。
【0029】
これらの発明によれば、光学部材は、当該光学部材のイジェクト工程によって当該光学部材のうちの前記封止体と接合する接合面に形成されたイジェクト凹部を備えるとともに、前記封止体は、イジェクト凹部と連通するバリ回避用凹部を備え、イジェクト凹部を規定する縁部のうち前記接合面に位置する縁部がバリ回避用凹部に臨むように構成した。
【0030】
ここで、本発明に係る光ポインティング装置においては、前記イジェクト工程によって、前記イジェクト凹部を規定する縁部のうち前記接合面に位置する縁部にバリが形成され得るが、前記バリに対向する前記封止体の表面が、前記バリから遠ざけられた位置に形成される。
【0031】
そのため、形成され得るバリの長さを考慮して前記バリ回避用凹部の形状や深さ、或いはイジェクト凹部の形成位置等を適切に設定することで、前記のようにバリが形成されていても、前記光学部材を前記所定の部材と接合した状態では、前記バリと前記所定の部材との接触が回避される。
【0032】
よって、光学部材と封止体との接合時に、両者との間にバリが入り込み、これによって前記両部材の接合の密着性が低下するのを可及的に回避することができる。
【0033】
また、光学部材と封止体との高い密着性を確保できることに加え、バリ回避用凹部及びイジェクタ凹部に、前記封止体との接合に用いる接着剤が貯留され、接着剤を貯留する部位としてイジェクト凹部だけの場合に比し広い領域の部位が設けられるため、封止体と光学部材とがより強固に接合される。
【0034】
本発明に係る光ポインティング装置は、前記イジェクト凹部及びバリ回避用凹部は、円柱形状をなし、前記バリ回避用凹部は、前記イジェクト凹部より大径とすることができる。
【0035】
この発明によれば、イジェクト工程時に形成されるイジェクト凹部に比して大径の円柱形状を有する凹部を前記バリ回避用凹部として形成するという比較的簡単な方法で、前述したバリによる影響を回避することができる。
【0036】
本発明に係る電子機器は、請求項1〜6の何れか一項に記載の光ポインティング装置を備え、前記撮像素子は、前記光学部材により結像された被写体からの反射光を撮像し、前記撮像素子から出力される画像データが示す撮像画像に基づき、前記被写体の動きを検出する処理を行う処理部をさらに備えたことを特徴とする電子機器である。
【0037】
この発明によれば、前記各発明により得られる効果を有する電子機器を実現することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る光ポインティング装置によれば、光源により照明された被写体からの反射光を撮像素子の撮像面に結像する光学部材を備え、前記光学部材は、当該光学部材のうち、当該光学部材を支持する所定の部材と接合する接合面に形成されたバリ回避用凹部と、当該光学部材の製造工程のうち該光学部材のイジェクト工程により、前記バリ回避用凹部を構成する壁面に形成されたイジェクト凹部とを有し、前記バリ回避用凹部及びイジェクト凹部には、前記所定の部材との接合用の接着剤が貯留されているものである。
【0039】
また、本発明に係る光ポインティング装置によれば、光源により照明された被写体からの反射光を撮像素子の撮像面に結像する光学部材を備えた光ポインティング装置の製造方法であって、前記光学部材のうち、当該光学部材を支持する所定の部材と接合する接合面にバリ回避用凹部が形成されるように一対の金型を用いて前記光学部材の成型体を作成する成型工程と、前記一対の金型のうち一方の金型を他方の金型に対して離すことにより前記一方の金型を前記成型体から取り外す第1の取り外し工程と、前記他方の金型の内部を挿通可能なイジェクトピンで前記成型体に形成されている前記バリ回避用凹部の壁面を突くことにより、前記他方の金型を前記成型体から取り外す第2の取り外し工程と、前記バリ回避用凹部と、前記イジェクトピンによって前記成型体を突くことにより形成されたイジェクト凹部とに接着剤を充填する接着剤充填工程と、前記光学部材の接着剤が充填された側の面と前記所定の部材における接合面とを接合する接合工程とを有するものである。
【0040】
これらにより、光学部材と前記所定の部材との接合時に、両部材間に前記バリが入り込み、それによって前記両部材の接合の密着性が低下するという不具合を可及的に回避することができる。また、前記バリ回避用凹部及びイジェクト凹部に、前記所定の部材との接合に用いる接着剤が貯留され、接着剤を貯留する部位として、前記イジェクト凹部だけの場合に比し広い領域の部位が設けられるため、前記光学部材と前記所定の部材とをより強固に接合することができる。
【0041】
本発明に係る光ポインティング装置は、光源により照明された被写体からの反射光を撮像素子の撮像面に結像する光学部材と、前記光学部材と接合された、前記撮像素子を封止するための封止体とを備え、前記光学部材は、当該光学部材の製造工程のうち該光学部材のイジェクト工程により、当該光学部材のうち前記封止体と接合する接合面に形成されたイジェクト凹部を備え、前記封止体は、前記イジェクト凹部と連通するバリ回避用凹部を備え、前記イジェクト凹部を規定する縁部のうち前記接合面に位置する縁部が前記バリ回避用凹部に臨み、前記イジェクト凹部及びバリ回避用凹部には、前記光学部材と前記封止体との接合用の接着剤が貯留されているものである。
【0042】
本発明に係る光ポインティング装置の製造方法は、光源により照明された被写体からの反射光を撮像素子の撮像面に結像する光学部材と、前記光学部材により接合される、前記撮像素子を封止するための封止体とを備えた光ポインティング装置の製造方法であって、一対の金型を用いて前記光学部材の成型体を作成する光学部材成型工程と、前記一対の金型のうち一方の金型を他方の金型に対して離すことにより前記他方の金型を前記成型体から取り外す第1の取り外し工程と、前記一方の金型の内部を挿通可能なイジェクトピンで前記成型体の所定の位置を突くことにより、前記一方の金型を前記成型体から取り外す第2の取り外し工程と、前記光学部材と前記封止体とを接合したときに前記イジェクトピンで突くことにより形成されたイジェクト凹部と連通するバリ回避用凹部であって、前記イジェクト凹部を規定する縁部のうち前記光学部材の接合面上に位置する縁部が臨むバリ回避用凹部が形成されるように金型を用いて前記封止体を作成する封止体成型工程と、前記イジェクト凹部と前記バリ回避用凹部とに接着剤を充填する接着剤充填工程と、接着剤が充填された前記イジェクト凹部と前記バリ回避用凹部とを対向させた状態で前記光学部材と前記封止体とを接合する接合工程とを有するものである。
【0043】
これらにより、前記接合時に、前記光学部材と前記封止体との間に前記バリが入り込み、これによって前記両部材の接合の密着性が低下するのを可及的に回避することができる。また、前記バリ回避用凹部及びイジェクタ凹部に、前記封止体との接合に用いる接着剤が貯留され、接着剤を貯留する部位として前記イジェクト凹部だけの場合に比し広い領域の部位が設けられるため、前記封止体と前記光学部材とをより強固に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る光ポインティング装置の第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、光学カバーの製造工程を示す断面図である。
【図3】イジェクタピンがピン挿通孔から突出する突出口周辺の拡大図である。
【図4】(a)及び(b)は、従来のイジェクト工程で形成される凹部周辺の拡大図である。
【図5】(a)及び(b)は、第1の実施形態に係る光ポインティング装置の製造工程のうちイジェクト工程で形成される凹部周辺の拡大図である。
【図6】光学カバーの接合面及び撮像素子封止体の接合面の外観を示した斜視図である。
【図7】本発明に係る光ポインティング装置の第2の実施形態を示す断面図である。
【図8】(a)及び(b)は、第2の実施形態に係る光ポインティング装置の製造工程のうちイジェクト工程で形成される凹部周辺の拡大図である。
【図9】光学カバーの接合面及び撮像素子封止体の接合面の外観を示した斜視図である。
【図10】本発明に係る光ポインティング装置の他の変形形態を示す図である。
【図11】本発明に係る光ポインティング装置の他の変形形態を示す図である。
【図12】本発明に係る光ポインティング装置の他の変形形態を示す図である。
【図13】本発明に係る光ポインティング装置の他の変形形態を示す図である。
【図14】本発明に係る光ポインティング装置の他の変形形態を示す図である。
【図15】(a)〜(c)は、本発明に係る光ポインティング装置が搭載される電子機器の一例である携帯電話機の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明に係る光ポインティング装置の実施形態を、図面を用いて説明する。
【0046】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る光ポインティング装置の第1の実施形態を示す断面図である。
【0047】
(光ポインティング装置の全体構成)
図1に示すように、本実施形態に係る光ポインティング装置1は、光源2と、光学カバー(光学部材)3と、基板4と、光源封止体5と、撮像素子封止体(所定の部材)6と、撮像素子7とを備える。
【0048】
光源2は、基板4上の適所に設置されている。光源2は、光学カバー3の後述する接触面8に接触した被写体である指先fを照明するためのものであり、例えばLED(Light Emitting Diode)を用いて構成されている。光源2は、光学カバー3の下部に配置されており、基板4と電気的に接続された後、光源封止体5により封止されている。
【0049】
撮像素子7は、基板4上の光源2と異なる所定の位置に設置されている。撮像素子7は、入射してきた光像を光電変換して画像データを生成するイメージセンサであり、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Device)で構成されている。撮像素子7は、基板4と電気的に接続された後、撮像素子封止体6により封止されている。
【0050】
光学カバー3は、光源2、基板4、光源封止体5、撮像素子封止体6及び撮像素子7を覆うように、当該光ポインティング装置に備えられる各部材を支持するフレキシブル基板9に設置された断面略凹形状の光学素子である。光学カバー3は、光源2から出力される光を接触面8上の指先fに向けて導き、且つ、指先fにより反射された光を撮像素子7の撮像面に導くために、プリズム部10及び結像部(本実施形態では反射型レンズ)11を有している。接触面8は、光学カバー3におけるプリズム部10の垂直方向上側の面である。
【0051】
光学カバー3の上面(以下、カバー上面という)12a及び下面(以下、カバー下面)12bと結像部11とは、光を反射するために金属蒸着処理(例えばアルミ、金等)が施されている。
【0052】
光学カバー3のうち光源2の上方に位置する部位は、光源2から出力される光を接触面8に導くための照明光学系として機能する。
【0053】
(光ポインティング装置における光路の説明)
次に、光源2から出力される光の光路について説明する。
【0054】
光源2から出力された光は、前記照明光学系の裏面13を透過屈折する。該照明光学系の光軸Mは、垂直方向に対して所定の傾斜角度θで傾斜している。
【0055】
そのため、光源2から照射された光(照明光)が前記照明光学系で透過屈折されると、この照明光は、斜め上方へ前記傾斜角度θで接触面8に導かれる。これにより、接触面8は、斜め下方から傾斜角度θで照明される。
【0056】
このとき、接触面8上に指先fが接触していると、指先fは、斜め下方から傾斜角度θで照明される。このように指先fが照明されると、該照明光が指先の裏側で散乱反射する。
【0057】
指先fからの反射光(指先fの光像)の一部は、接触面8を介してプリズム部10に入射する。プリズム部10に入射した指の光像は、前記照明光学系の裏面(傾斜面)13で全反射する。さらに、光学カバー3のカバー上面12a及び結像部11で反射し、カバー上面12a、カバー下面12b、カバー上面12aで順次反射された後、撮像素子7の撮像面上で結像する。
【0058】
撮像素子7の撮像面上で結像された光像は、撮像素子7により光電変換され、その画像データが図略のデータ処理部(例えばDSP(Digital Signal Processor)など;処理部)により取り込まれる。
【0059】
撮像素子7は、接触面8の光像を一定の時間間隔で撮像する。そのため、被写体が移動すると、指先fの画像が直前の撮像画像における指先fの画像と所定量だけずれる。前記データ処理部は、撮像画像における同一画像(指先の画像)のずれ量を比較し、前記指先fの移動量と移動方向を検出する。
【0060】
これにより、撮像素子7から得られた画像データから接触面8に写る指先f(指紋)の動きが抽出され、指先fの動きの量と方向を得ることができる。その情報はフレキシブル基板9を通じて当該光ポインティング装置1を搭載する電子機器の本体システム(図略)へ信号として出力される。
【0061】
ところで、本出願人は、光ポインティング装置の技術に関し、特願2009−227526号(出願日2009年9月30日)において、部品点数、および、各部品の組み立てまたは貼り付け等の工程数が少ない、薄型の光ポインティング装置を実現することを目的として、入射部より入射した光源光を導光方向へ導光すべく反射する反射部と、該反射光をさらに前記導光方向に対して反対方向に反射して結像する結像反射部とを備え、該結像反射部にて結像した光を出射部より出射する導光体を提案した。
【0062】
また、本出願人は、特願2009−194372号(出願日2009年8月25日)において、外乱光及び迷光が受光素子に入射することを防止し、かつ、部品点数の少ない光ポインティング装置を実現することを目的として、基板上に配置した発光素子と受光素子とを透光性樹脂によって樹脂封止し、前記透光性樹脂によって覆われた発光素子及び受光素子を、さらに、発光素子から被写体への光の経路及び被写体から受光素子への光の経路を除き遮光性樹脂によって樹脂封止し、光学ユニット及びレンズユニットを一体成型する技術を提案した。
【0063】
本件においては、光学カバー3の製造過程で該光学カバー3に発生し得るバリによる悪影響を可及的に回避することを目的として、次のような技術を提案する。
【0064】
(従来の光学カバーの成型方法及びその問題点の説明)
本実施形態における光学カバー3は、例えば、可視光吸収タイプの熱可塑性樹脂(例えばポリカーボネート、ナイロン等)を用いインジェクション方式によって成型されるが、従来では、このような光学カバー3を組み付けて光ポインティング装置1を製造する製造工程の中で次のような問題があった。図2(a)〜(d)は、光ポインティング装置1の製造工程のうち光学カバー3の製造工程を示す図である。
【0065】
図2(a)〜(d)に示すように、本実施形態に係る光学カバー3は、上下一対の金型を用いたインジェクション方式により前記熱可塑性樹脂を素材として成型される。
【0066】
具体的には、図2(a)に示すように、まず、製造しようとする光学カバー3の一部分(上面)の形状に対応した型を有する上側の金型(以下、上型という)201と、製造しようとする光学カバー3の残りの部分(下面)の形状に対応した型を有する下側の金型(以下、下型という)202とが対接される。そして、この状態で、図2(b)に示すように、上型201と下型202との間に形成されている樹脂注入孔203から、溶融状態の前記熱可塑性樹脂が注入される。これにより、上型201と下型202との間に形成されているスペース204に光学カバー3(成型体)が形成される。
【0067】
次に、光学カバー3が上型201及び下型202から順に外される(離型される)。なお、本実施形態では、上型201が固定されており、下型202が移動可能に構成されているものとする。
【0068】
この場合、まず、図2(c)に示すように、下型202が上型201から離間する方向(図2(c)では下方)に移動される。これにより、光学カバー3が下型202に密着したまま上型201から取り外される。
【0069】
次に、図2(d)に示すように、イジェクタピン205を用いて光学カバー3が下型202から突き出される。具体的には、イジェクタピン205は、下型202に形成されたピン挿通孔206内を挿通可能に構成されており、イジェクタピン205がピン挿通孔206を介して下型202の表面から突出されることで、光学カバー3が下型202から突き出される。これにより、光学カバー3が下型202から取り外される。
【0070】
ここで、イジェクタピン205の先端周辺の構造に着目する。図3は、イジェクタピン205がピン挿通孔206から突出する突出口周辺の構造を示す拡大図である。図4(a)及び(b)は、従来のイジェクト工程を示す図である。
【0071】
図3に示すように、イジェクタピン205がピン挿通孔206内でスムーズに挿通できるようにするため、イジェクタピン205と、ピン挿通孔206を形成する壁面との間には、所定のクリアランスCLが設けられている。そのため、次のような状態が発生し得る。
【0072】
すなわち、図4(a)に示すように、イジェクタピン205が光学カバー3を突き出したときに、光学カバー3のうちイジェクタピン205が突いた部分が凹んで凹部(以下、イジェクタ凹部という)D1が形成される。ここでは、前記イジェクタピン205として円柱形状の部材を用いているので、イジェクタ凹部D1の形状も円柱形状となる。
【0073】
ここで、図3に示すように、イジェクタピン205の突き出し動作によって溢れた完全には硬化していない樹脂がそのクリアランスCLに入り込む。そして、光学カバー3が硬化すると、クリアランスCLに入り込んだ樹脂がバリBとして形成されることとなる。このバリBは、光学カバー3の接合面21から突出したものとなる。
【0074】
このようなバリBが形成されると、図4に示すように、前記光学カバー3の組み付け時、具体的には光学カバー3と撮像素子封止体6とが接合されるときに、光学カバー3の接合面21と撮像素子封止体6の接合面22との間にバリBが入り込む。
【0075】
このバリBの存在によって両部材3,6における接合面21,22の密着性が低下し、光学カバー3の接合面21と撮像素子封止体6の接合面22との間に、図4(b)に示すバリBに起因する間隙Xが発生する。
【0076】
そして、図4(b)に示すように、イジェクト凹部D1を、光学カバー3と撮像素子封止体6との接合用の接着剤を貯留する凹部として用いた場合、間隙Xの発生によって一旦凹部D1に貯留された接着剤が、両接合面21,22間の間隙Xに流れ出す(広がる)。図4(b)の矢印Cは、流れ出した接着剤を示している。
【0077】
このように光学カバー3と撮像素子封止体6との間の間隙Xが形成される所謂浮きが生じることによって、製品の歩留りに大きく影響を及ぼすとともに各部品が正常に動作しなくなる可能性がある。
【0078】
また、出荷時には問題なくても出荷後において振動等の外部からの衝撃によって、部材間の間隙にばらつきが生じ、光の消失によって光学特性が劣化し、良好に指の変位を検出できないという可能性がある。また空隙にごみや異物などが付着することも考えられる。
【0079】
このような問題を考慮して、本実施形態では、バリBが発生しても、光学カバー3と撮像素子封止体6とを接合したときに、バリBが光学カバー3の接合面21と撮像素子封止体6の接合面22との間に入り込まないように次のような構成を採用している。
【0080】
(本実施形態における光学カバーの成型方法の説明)
図5は、本実施形態に係る光ポインティング装置1の製造工程のうちイジェクト工程によって形成される凹部周辺の拡大図である。図6は、光学カバー3の接合面21及び撮像素子封止体6の接合面22の外観を示した図である。
【0081】
まず、上型201と下型202との間に形成されるスペースに樹脂を注入したときに、接合面方向にイジェクト凹部D1より広い領域を有する凹部(以下、バリ回避用凹部という)D2が光学カバー3の接合面21に形成されるような型をもつ下型202を構成する。
【0082】
そして、この下型202と上型201とを対接させた状態で、下型202と上型201との間に形成されるスペースに樹脂を注入する。これにより、前記スペースには、接合面21の適所にバリ回避用凹部D2を有する光学カバー3が形成される。
【0083】
その後、光学カバー3のイジェクト工程において、バリ回避用凹部D2の底面がイジェクタピン205によって突き出されるようにする。これにより、図5(a)に示すように、バリ回避用凹部D2の底面の適所に前記凹部(以下、イジェクト凹部という)D1が形成される。
【0084】
このとき、バリBが、イジェクト凹部D1を規定する縁部T1,T2(図5(a)参照)のうち接合面21側の縁部T1からバリBが突出した状態で形成され得る。
【0085】
しかしながら、イジェクタピン205によるイジェクト工程時に形成され得るバリBは、従来に比べると、バリ回避用凹部D2の深さの分だけ接合面21から遠ざけられた位置に形成されることになる。
【0086】
したがって、形成され得るバリBの長さを考慮してバリ回避用凹部D2の深さを適切に設定することで、バリBが形成されても、光学カバー3と撮像素子封止体6とを接合したときに、バリBが撮像素子封止体6の接合面22に接触せず、バリBが撮像素子封止体6と接触して光学カバー3と撮像素子封止体6との間の間隙Xに入り込むという事態が回避される。
【0087】
これにより、接着剤がイジェクタ凹部D1及びバリ回避用凹部D2の外部に流出するのを可及的に回避することができ、製品の歩留り低下を防止又は抑制することができる。
【0088】
また、製品出荷後に、振動等の外部からの衝撃により、部材間の間隙にばらつきが生じ、光の消失により光学特性が劣化し、良好に指の変位を検出することができないという不具合や、ごみや異物などが光学カバー3と撮像素子封止体6との間に入り込むという不具合も生じなくなる。
【0089】
また、本実施形態では、光学カバー3と撮像素子封止体6との高い密着性を確保できることに加え、従来に比して接合面21方向に広い領域を有する凹部(バリ回避用凹部D2)を接着剤溜り部として使用することが可能となったので、従来に比してより広い領域を接着面とすることができ、光学カバー3と撮像素子封止体6とを強固に接合することができる。その結果、外圧に対して強度の大きな光ポインティング装置1を実現することができる。
【0090】
なお、ここでは、光学カバー3と撮像素子封止体6との接合に着目して説明したが、光学カバー3のイジェクト工程で、光学カバー3のうちフレキシブル基板9と接合する部位にイジェクタピン205の突き出しによってバリBが形成される場合を考慮して、図1に示すように、光学カバー3のうちフレキシブル基板9と接合する部位に前記と同様のイジェクタ凹部D1及びバリ回避用凹部D2を形成してもよい。
【0091】
(第2の実施形態)
本実施形態では、光学カバー3及び撮像素子封止体6の構造が主に前記第1の実施形態と異なる。ここでは、第1の実施形態との相違点のみを説明することとし、第1の実施形態と共通する点については説明を省略するものとする。また、前記第1の実施形態と同一の部材については同一の番号を付するものとする。
【0092】
本実施形態に係る光ポインティング装置においても、光学カバーと撮像素子封止体とを接合したときに、バリBが光学カバーの接合面と撮像素子封止体の接合面との間に入り込まないように構成されているが、その手段が前記第1の実施形態と異なる。具体的には、次の通りである。
【0093】
図7は、本発明に係る光ポインティング装置の第2の実施形態を示す断面図である。図8(a)及び(b)は、本実施形態に係る光ポインティング装置1’の製造工程のうちイジェクト工程によって形成される凹部周辺の拡大図である。図9は、光学カバー3’の接合面21’及び撮像素子封止体6’の接合面22’の外観を示した図である。
【0094】
図7,図8(a)に示すように、本実施形態における光学カバー3’には、前記第1の実施形態のようなバリ回避用凹部D2は設けられておらず、光学カバー3’の接合面21’には、イジェクタピン205によるイジェクト動作によって形成されるイジェクト凹部D1’のみが形成されている。
【0095】
一方、図8(a)に示すように、撮像素子封止体6’においては、第1の実施形態におけるバリ回避用凹部D2に相当するバリ回避用凹部D2’が形成されている。
【0096】
ここで、このバリ回避用凹部D2’とイジェクト凹部D1’とは、次のような関係を有している。すなわち、光学カバー3’と撮像素子封止体6’とが接合されたときに、光学カバー3’のイジェクト凹部D1’を規定する縁部T1’,T2’のうち接合面22’上の縁部T1’がバリ回避用凹部D2’に臨む態様で、イジェクト凹部D1’とバリ回避用凹部D2’とが連通するような相対位置関係を有する。
【0097】
例えば、イジェクタピン205として円柱形状の部材を用いた場合には、イジェクタ凹部D1’の形状も円柱形状となるが、このとき、バリ回避用凹部D2’の形状をイジェクタ凹部D1’より大径の円柱形状とし、且つ、図8(b)に示すように、イジェクタ凹部D1’内の空間全体がバリ回避用凹部D2’内の空間に連通する形態が考えられる。
【0098】
これにより、イジェクト凹部D1’を規定する縁部T1’,T2’(図8(a)参照)のうち接合面21’側の縁部T1’からバリBが突出した状態で形成されても、バリBは、従来に比べると、バリBと対向する撮像素子封止体6’の部位がバリ回避用凹部D2’の深さの分だけ光学カバー3’の接合面22’から遠ざけられた位置に形成されることになる。
【0099】
したがって、形成され得るバリBの長さを考慮してバリ回避用凹部D2’の深さを適切に設定することで、図8(b)に示すように、バリBが形成されても、光学カバー3’と撮像素子封止体6’とを接合したときに、バリBはバリ回避用凹部D2’内に収容される態様となり、バリBが撮像素子封止体6’と接触して光学カバー3’と撮像素子封止体6’との間の間隙Xに入り込むという事態が回避される。
【0100】
これにより、接着剤がイジェクタ凹部D1’及びバリ回避用凹部D2’の外部に流出するのを可及的に回避することができ、製品の歩留り低下を防止又は抑制することができる。
【0101】
また、製品出荷後に、振動等の外部からの衝撃により、部材間の間隙にばらつきが生じ、光の消失により光学特性が劣化し、良好に指の変位を検出することができないという不具合や、ごみや異物などが光学カバー3’と撮像素子封止体6’との間に入り込むという不具合も生じなくなる。
【0102】
また、本実施形態では、光学カバー3’と撮像素子封止体6’との高い密着性を確保できることに加え、従来に比して接合面21’方向に広い領域を有する凹部(バリ回避用凹部D2’)を接着剤溜り部として使用することが可能となったので、従来に比してより広い領域を接着面とすることができ、光学カバー3’と撮像素子封止体6’とを強固に接合することができる。その結果、外圧に対して強度の大きな光ポインティング装置1’を実現することができる。
【0103】
なお、本実施形態(図7に示す光ポインティング装置1’)では、光学カバー3’と接合されるフレキシブル基板9は表面に凹凸を形成することはできない。そのため、本実施形態では、光学カバー3とフレキシブル基板9との接合については、第1の実施形態における接合態様を採用している。
【0104】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0105】
例えば、前記各実施形態においては、バリ回避用凹部D2,D2’として円柱形状の凹部を想定したが、これに限定されるものではない。
【0106】
例えば、前記第1の実施形態のように、バリ回避用凹部D2”を光学カバー3”側に設ける場合においては、バリ回避用凹部D2”の形状は円柱形状の他、図10に示すように円錐形状でもよい。この場合、光学カバー3”の接合面21”上に前記円錐の底面が位置するように形成される。バリ回避用凹部D2”の形状は、前記円錐形状の他、図11に示すように半球面形状でもよい。
【0107】
この場合、光学カバー3”と撮像素子封止体6”との接合時に、イジェクタ凹部D1”を規定する縁部T1”に形成され得るバリBと撮像素子封止体6”の接合面22”とが接触しないように、バリ回避用凹部D2”の壁面にイジェクト凹部D1”が形成されるようにすればよい。
【0108】
また、前記第2の実施形態のように、バリ回避用凹部D2”を撮像素子封止体6”側に設ける場合においても、バリ回避用凹部D2”の形状は円形形状の他、図12に示すように円錐形状でもよい。この場合、撮像素子封止体6”の接合面22”上に前記円錐の底面が位置するように形成される。バリ回避用凹部D2”の形状は、前記円錐形状の他、図11に示すように半球面形状でもよい。
【0109】
さらに、光学カバー3”のイジェクト凹部D1”を規定する縁部T1”,T2”のうち接合面21”上に位置する縁部T1”がバリ回避用凹部D2”に臨むという条件を満たしていれば、例えば図14に示すように、バリ回避用凹部D2”の内部において撮像素子封止体6”の肉部が光学カバー3”側に突出形成されていてもよい。
【0110】
以上のような光ポインティング装置1,1’が搭載される電子機器の一例を説明する。図15(a)は、前記各実施形態に係る光ポインティング装置1,1’が搭載された電子機器の一例である携帯電話機100の構成を示す正面図、(b)はその背面図、(c)はその側面図である。なお、図15では、前記電子機器として携帯電話機である例を示しているがこれに限定されるものではなく、例えば、PC(特にモバイルPC)、PDA、ゲーム機、テレビ等のリモコンなどであってもよい。
【0111】
図15(a)〜(c)に示すように、携帯電話機100は、モニター側筐体101と操作側筐体102とを備える。モニター側筐体101は、モニター部105及びスピーカー部106を含む。操作側筐体102は、マイク部103、テンキー104及び光ポインティング装置1又は光ポインティング装置1’を含む。
【0112】
なお、本実施形態において、光ポインティング装置1,1’は、図15(a)に示すように、テンキー104の上側に配置されているが、光ポインティング装置1,1’の配置方法及びその向きについては、これに限定されるわけではない。
【0113】
スピーカー部106は、音声情報を外部に出力するものであり、マイク部103は音声情報を携帯電話機100に入力するものである。モニター部105は、映像情報を出力するものであり、本実施形態においては、光ポインティング装置1又は光ポインティング装置1’からの入力情報を表示するものである。
【0114】
なお、本実施形態の携帯電話機100は、図15(a)〜(c)に示すように、上部の筐体(モニター側筐体101)と下部の筐体(操作側筐体102)とがヒンジを介して接続されている、いわゆる折りたたみ式の携帯電話機100を例として挙げている。携帯電話機100として、折りたたみ式が主流であるため、本実施形態では折りたたみ式の携帯電話機を一例として挙げているのであって、光ポインティング装置1を搭載することができる携帯電話機100は、折りたたみ式に限るものではない。
【0115】
近年、折りたたみ式の携帯電話機100において、折りたたんだ状態で厚みが10mm以下のものも登場してきている。携帯電話機100の携帯性を考慮するならば、その厚みは極めて重要な要素となっている。図15に示す操作側筐体102において、図示されない内部の回路基板等を除いて、その厚みを決定する部品は、マイク部103、テンキー104、光ポインティング装置1,1’である。この中で、光ポインティング装置1の厚さが最も厚く、光ポインティング装置1,1’の薄型化は、携帯電話機100の薄型化に直接繋がる。よって、上述のように外圧に対して強度の大きな本発明の光ポインティング装置は、携帯電話機100のような薄型化を必要とする電子機器に対して好適な発明である。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、ポインティング装置及びこれを備えた電子機器に利用することができ、より詳細には携帯電話等の携帯情報端末に搭載可能なポインティング装置及びこれを備えた電子機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0117】
1,1’ 光ポインティング装置
2 光源
3,3’,3” 光学カバー(光学部材)
6,6’,6” 撮像素子封止体(所定の部材,接合体)
7 撮像素子
8 接触面
9 フレキシブル基板(接合体)
21,21’,22,22’,22” 接合面
100 携帯電話機(電子機器)
201 上型(金型)
202 下型(金型)
205 イジェクタピン
206 ピン挿通孔
D1,D1’,D1” イジェクタ凹部
D2,D2’、D2” バリ回避用凹部
T1,T1’,T1”,T2,T2’,T2” 縁部
B バリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源により照明された被写体からの反射光を撮像素子の撮像面に結像する光学部材を備え、
前記光学部材は、
当該光学部材のうち、当該光学部材を支持する所定の部材と接合する接合面に形成されたバリ回避用凹部と、
当該光学部材の製造工程のうち該光学部材のイジェクト工程により、前記バリ回避用凹部を構成する壁面に形成されたイジェクト凹部と
を有し、
前記バリ回避用凹部及びイジェクト凹部には、前記所定の部材との接合用の接着剤が貯留されていることを特徴とする光ポインティング装置。
【請求項2】
前記所定の部材は、前記撮像素子を封止する封止体であることを特徴とする請求項1に記載の光ポインティング装置。
【請求項3】
前記所定の部材は、当該光ポインティング装置に備えられる各部材を支持するフレキシブル基板であることを特徴とする請求項1に記載の光ポインティング装置。
【請求項4】
連通する一対の前記イジェクト凹部と前記バリ回避用凹部との組み合わせが複数組設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光ポインティング装置。
【請求項5】
光源により照明された被写体からの反射光を撮像素子の撮像面に結像する光学部材と、
前記光学部材と接合された、前記撮像素子を封止するための封止体と
を備え、
前記光学部材は、当該光学部材の製造工程のうち該光学部材のイジェクト工程により、当該光学部材のうち前記封止体と接合する接合面に形成されたイジェクト凹部を備え、
前記封止体は、前記イジェクト凹部と連通するバリ回避用凹部を備え、
前記イジェクト凹部を規定する縁部のうち前記接合面に位置する縁部が前記バリ回避用凹部に臨み、
前記イジェクト凹部及びバリ回避用凹部には、前記光学部材と前記封止体との接合用の接着剤が貯留されていることを特徴とする光ポインティング装置。
【請求項6】
前記イジェクト凹部及びバリ回避用凹部は、円柱形状をなし、
前記バリ回避用凹部は、前記イジェクト凹部より大径であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の光ポインティング装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の光ポインティング装置を備え、
前記撮像素子は、前記光学部材により結像された被写体からの反射光を撮像し、
前記撮像素子から出力される画像データが示す撮像画像に基づき、前記被写体の動きを検出する処理を行う処理部をさらに備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
光源により照明された被写体からの反射光を撮像素子の撮像面に結像する光学部材を備えた光ポインティング装置の製造方法であって、
前記光学部材のうち、当該光学部材を支持する所定の部材と接合する接合面にバリ回避用凹部が形成されるように一対の金型を用いて前記光学部材の成型体を作成する成型工程と、
前記一対の金型のうち一方の金型を他方の金型に対して離すことにより前記一方の金型を前記成型体から取り外す第1の取り外し工程と、
前記他方の金型の内部を挿通可能なイジェクトピンで前記成型体に形成されている前記バリ回避用凹部の壁面を突くことにより、前記他方の金型を前記成型体から取り外す第2の取り外し工程と、
前記バリ回避用凹部と、前記イジェクトピンによって前記成型体を突くことにより形成されたイジェクト凹部とに接着剤を充填する接着剤充填工程と、
前記光学部材の接着剤が充填された側の面と前記所定の部材における接合面とを接合する接合工程と
を有することを特徴とする光ポインティング装置の製造方法。
【請求項9】
光源により照明された被写体からの反射光を撮像素子の撮像面に結像する光学部材と、前記光学部材により接合される、前記撮像素子を封止するための封止体とを備えた光ポインティング装置の製造方法であって、
一対の金型を用いて前記光学部材の成型体を作成する光学部材成型工程と、
前記一対の金型のうち一方の金型を他方の金型に対して離すことにより前記他方の金型を前記成型体から取り外す第1の取り外し工程と、
前記一方の金型の内部を挿通可能なイジェクトピンで前記成型体の所定の位置を突くことにより、前記一方の金型を前記成型体から取り外す第2の取り外し工程と、
前記光学部材と前記封止体とを接合したときに前記イジェクトピンで突くことにより形成されたイジェクト凹部と連通するバリ回避用凹部であって、前記イジェクト凹部を規定する縁部のうち前記光学部材の接合面上に位置する縁部が臨むバリ回避用凹部が形成されるように金型を用いて前記封止体を作成する封止体成型工程と、
前記イジェクト凹部と前記バリ回避用凹部とに接着剤を充填する接着剤充填工程と、
接着剤が充填された前記イジェクト凹部と前記バリ回避用凹部とを対向させた状態で前記光学部材と前記封止体とを接合する接合工程と
を有することを特徴とする光ポインティング装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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