説明

光ポインティング装置及びそれを備えた電子機器

【課題】組み立て性の向上を図ることにより高精度化及び低コスト化を図ると共に、遮光性能の優れた光ポインティング装置及びそれを備えた電子機器を提供する。
【解決手段】光ポインティング装置1Aでは、光学カバー30には、被写体2が接触する接触面31と、導光される光を撮像素子13に導く結像用レンズ33とが一体に形成されている。光源12及び撮像素子13は、光学カバー30の接触面31とは反対側に配設されている。遮光カバー20には、結像用レンズ33から撮像素子13への光に対して絞りとして作用するアパーチャー21と、迷光のうち光源12から撮像素子13への入射光を遮光する遮光カバー第1突起20eと、迷光のうち光学カバー30の外部から撮像素子13への入射光を遮光する遮光カバースカート部22とが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器としての携帯電話等の携帯情報端末に搭載可能な光ポインティング装置及びそれを備えた電子機器に関するものであり、詳細には、迷光による影響の少ない光ポインティング装置及びそれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やPDA(Personal Digital Assistants)等の携帯情報端末に代表される小型の電子機器では、一般的に、情報を入力するユーザーインターフェースとしてキーパッドが採用されている。キーパッドは、通常、数字及び文字を入力するための複数個のボタンと方向ボタン(十字キー)とで構成されている。また、近年では、携帯情報端末のディスプレイ部にグラフィック等の表現が可能となることに伴い、ユーザに対する情報の表示方式として、主に、ディスプレイ部を2次元で用いるGUI(Graphical User Interface)が採用されるようになってきている。
【0003】
このように、携帯情報端末が高機能化し、コンピュータと同等の表示機能を備えることにより、メニューキー及びその他の機能キーを方向キーとして用いる従来の携帯情報端末の入力手段では、GUIで表現されたアイコン等の選択には適しておらず、不便であった。そのため、携帯情報端末においても、コンピュータに用いられているボール式マウス若しくは光学式マウス等のマウスやタッチパッド又はタブレットのように、直感的な操作を可能とするポインティング装置が求められるようになってきている。
【0004】
しかし、携帯情報端末は携帯することを前提とするため、本体と分離した別途のポインティング装置を携帯情報端末のポインティング装置として採用するには支障を来たす。また、例えばトラックボール型(Track Ball-Type)のポインティング装置は、物理的に一定以上の3次元空間を占有するため、薄型かつ小型の携帯情報端末に採用し難いという問題があった。
【0005】
そこで、携帯情報端末に搭載可能なポインティング装置として、ポインティング装置に接触する被写体としての指の指紋を撮像素子で観察し、接触面における被写体の指紋の移動変化を抽出することによって、被写体の動きを検知する光ポインティング装置が提案されている。例えば特許文献1に開示された光ポインティング装置では、接触面上の被写体をLED等の光源によって照射し、被写体から散乱された光を集光レンズにて撮像素子に集光し、被写体の像をイメージセンサ等の撮像素子で連続的に撮像し、撮像した画像データにおける直前に撮影した画像データに対する変化量を抽出し、変化量に基づいて被写体の動きを算出し、被写体の動きを電気信号として出力する。この光ポインティング装置を用いることによって、ディスプレイ上に示されたカーソル等を被写体の動きに合わせて移動させることができる。
【0006】
上記特許文献1に開示された携帯端末機用の光ポインティング装置100の光学系は、高精度の組み立てを行うため、図11に示すように、収容ホールが備えられたホルダー110と、ホルダー110の収容ホール111に設けられた図示しない発光手段と、収容ホール111に設けられ、発光手段の光を集光するように一体型からなる一対のプリズム121と、一対のプリズム121の間に配される集光レンズ122で構成された集光部材120と、集光部材120を通過した光を撮像して変位値で演算する図示しないイメージセンサとを含んでいる。集光部材120は、集光レンズ122が一対のプリズム121内で安定した設置状態を維持できるように集光レンズ122と結合され、雑光(迷光)をフィルタリングする雑光遮断ホール(アパーチャー)123aを含んだレンズ固定ホルダー123を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−226224号公報(2008年9月25日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の特許文献1に開示された光ポインティング装置100では、以下の問題点を有している。
【0009】
まず、集光レンズ122とレンズ固定ホルダー123及びプリズム121とは別個に設けられており、組み立て性が悪く、精度の向上を図ることが困難であり、かつ高コストになるという問題点を有している。
【0010】
また、特許文献1に開示された光ポインティング装置100では、光源とセンサとを1枚の基板にマウントするLGA構造を採用していないため問題は無いが、組み立て性・耐環境性を向上させるためにLGA構造を採用する場合には、光源とセンサの間を遮光する必要がある。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、組み立て性の向上を図ることにより高精度化及び低コスト化を図ると共に、遮光性能の優れた光ポインティング装置及びそれを備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光ポインティング装置は、上記課題を解決するために、被写体に光を照射する光源と、上記被写体からの反射光を内部で導光させる光学カバーと、上記光学カバーによって導光された光を受光する撮像素子と、上記撮像素子に対して上記被写体からの反射光以外の光である迷光を遮光する遮光カバーとを備えた光ポインティング装置であって、上記光学カバーには、上記被写体が接触する接触面と、導光される光を上記撮像素子に導く結像素子とが一体に形成されており、上記光源及び撮像素子は、上記光学カバーの上記接触面とは反対側に配設されていると共に、上記遮光カバーには、上記結像素子から撮像素子への光に対して絞りとして作用する絞り開口部と、上記迷光のうち光源から撮像素子への入射光を遮光する第1の遮光壁と、上記迷光のうち光学カバーの外部から撮像素子への入射光を遮光する第2の遮光壁とが形成されていることを特徴としている。尚、本発明では、結像素子として例えば結像反射鏡又は結像レンズを用いることが可能である。
【0013】
上記の発明によれば、光ポインティング装置は、被写体に光を照射する光源と、上記被写体からの反射光を内部で導光させる光学カバーと、上記光学カバーによって導光された光を受光する撮像素子と、上記撮像素子に対して上記被写体からの反射光以外の光である迷光を遮光する遮光カバーとを備えている。
【0014】
そして、本発明では、光学カバーには、被写体が接触する接触面と、導光される光を撮像素子に導く結像素子とが一体に形成されている。このため、結像素子と光学カバーとが互いに別個ではないので、光学カバー内を導光される光が撮像素子に導かれるように結像素子を光軸調整して配置するという作業が省略できる。この結果、組み立て性の向上を図り、延いては高精度化及び低コスト化を図ることができる。
【0015】
ここで、本発明では、光源及び撮像素子は、上記光学カバーの接触面とは反対側に配設されている。この結果、光源と撮像素子との間を遮光する必要がある。また、外部から撮像素子に入射する光も遮光する必要がある。
【0016】
そこで、本発明では、上記遮光カバーには、迷光のうち光源から撮像素子への入射光を遮光する第1の遮光壁と、上記迷光のうち光学カバーの外部から撮像素子への入射光を遮光する第2の遮光壁とが形成されている。このため、第1の遮光壁及び第2の遮光壁によって、撮像素子に対して被写体からの反射光以外の光である迷光を遮光することができる。また、遮光カバーには、結像素子から撮像素子への光に対して絞りとして作用する絞り開口部が形成されているので、光学カバーによって導光された光を結像素子を介して撮像素子に導いて受光することが可能である。
【0017】
したがって、組み立て性の向上を図ることにより高精度化及び低コスト化を図ると共に、遮光性能の優れた光ポインティング装置を提供することができる。
【0018】
本発明の光ポインティング装置では、前記光学カバーには、導光される前記被写体からの反射光を前記撮像素子に導く結像素子である結像用レンズと、前記光源からの光を被写体に導く第1照明用レンズとが一体に形成されているとすることができる。
【0019】
これにより、光学カバーに一体に形成された結像素子としての結像用レンズを用いて、導光される被写体からの反射光を撮像素子に導くことができる。また、本発明では、光学カバーに光源からの光を被写体に導く第1照明用レンズが一体に形成されている。このため、第1照明用レンズにて、光源からの光を被写体に集光して導くことができる。また、結像用レンズ及び第1照明用レンズは、光学カバーに一体に形成されているので、組み立て性に優れ、高精度化及び低コスト化を図ることができる。
【0020】
本発明の光ポインティング装置では、前記光源及び撮像素子を基板上に搭載して封止樹脂にて封止したパッケージが設けられていると共に、上記パッケージの封止樹脂には、上記光源からの光を被写体に導く第2照明用レンズが一体に形成されているとすることができる。
【0021】
これにより、パッケージの封止樹脂には、上記光源からの光を被写体に導く第2照明用レンズが一体に形成されているので、第2照明用レンズにて、光源からの光を被写体に集光して導くことができる。また、第2照明用レンズは、パッケージの封止樹脂に一体に形成されているので、組み立て性に優れ、高精度化及び低コスト化を図ることができる。
【0022】
本発明の電子機器は、上記課題を解決するために、前記光ポインティング装置を備えていることを特徴としている。
【0023】
上記の発明によれば、組み立て性の向上を図ることにより高精度化及び低コスト化を図ると共に、遮光性能の優れた光ポインティング装置を備えた電子機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の光ポインティング装置は、以上のように、光学カバーには、被写体が接触する接触面と、導光される光を撮像素子に導く結像素子とが一体に形成されており、光源及び撮像素子は、上記光学カバーの上記接触面とは反対側に配設されていると共に、遮光カバーには、上記結像素子から撮像素子への光に対して絞りとして作用する絞り開口部と、迷光のうち光源から撮像素子への入射光を遮光する第1の遮光壁と、迷光のうち光学カバーの外部から撮像素子への入射光を遮光する第2の遮光壁とが形成されているものである。
【0025】
本発明の電子機器は、以上のように、前記光ポインティング装置を備えていることを特徴としている。
【0026】
それゆえ、組み立て性の向上を図ることにより高精度化及び低コスト化を図ると共に、遮光性能の優れた光ポインティング装置及びそれを備えた電子機器を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は本発明における光ポインティング装置の実施の一形態を示すものであって、光ポインティング装置の構成を示す図3のA−A線断面図であり、(b)は上記光ポインティング装置の構成を示す図3のB−B線断面図である。
【図2】(a)は上記光ポインティング装置の上側から見た構成を示す斜視図であり、(b)は上記光ポインティング装置の構成を示す分解斜視図である。
【図3】上記光ポインティング装置の構成を示す平面図である。
【図4】上記光ポインティング装置におけるLGAの構成を示す斜視図である。
【図5】(a)は遮光カバーの上側から見た構成を示す斜視図であり、(b)は遮光カバーの底面側から見た構成を示す斜視図である。
【図6】(a)は光学カバーの上側から見た構成を示す斜視図であり、(b)は光学カバーの底面側から見た構成を示す斜視図である。
【図7】(a)はLGA側に設けられた第2照明用レンズのみを用いて接触面の検出エリアを照明した場合の照射光を示す断面図であり、(b)はそのときの検出エリアの強度分布を示す平面図である。
【図8】(a)はLGA側に設けられた第2照明用レンズに加えて、光学カバーに設けられた第1照明用レンズも使用して検出エリアを照明したときの照射光を示す断面図であり、(b)はそのときの検出エリアの強度分布を示す平面図である。
【図9】本発明における光ポインティング装置の他の実施の形態を示すものであって、光ポインティング装置の構成を示す断面図である。
【図10】(a)は本発明における光ポインティング装置を備えた電子機器の実施の一形態を示すものであって、携帯電話機の外観を示す正面図であり、(b)は上記携帯電話機の外観を示す背面図であり、(c)は上記携帯電話機の外観を示す側面図である。
【図11】従来の光ポインティング装置の構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態について、光源としてLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を用いた光ポインティング装置を例として説明する。本発明の光ポインティング装置は、指先等の被写体に対して光を照射し、該被写体から反射された光を受光することによって、被写体の動きを検知するものである。以下、各実施形態の光ポインティング装置の構成について具体的に説明する。尚、同一の機能及び作用を示す部材については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0029】
〔実施の形態1〕
本実施の形態の光ポインティング装置の構成について、図1〜図8に基づいて説明する。図1(a)は本実施の形態における光ポインティング装置1Aの構成を示すものであって図3のA−A線断面図であり、図1(b)は上記光ポインティング装置1Aの構成を示すものであって図3のB−B線断面図である。図2(a)は上記光ポインティング装置1Aの構成を示す斜視図であり、図2(b)は上記光ポインティング装置1Aの構成を示す分解斜視図である。図3は上記光ポインティング装置1Aの構成を示す平面図である。図4はLGAの上側から見た構成を示す斜視図である。図5(a)は遮光カバーの上側から見た構成を示す斜視図であり、図5(b)は遮光カバーの底面側から見た構成を示す斜視図である。図6(a)は光学カバーの上側から見た構成を示す斜視図であり、図6(b)は光学カバーの底面側から見た構成を示す斜視図である。
【0030】
(光ポインティング装置の概略構成)
本実施の形態の光ポインティング装置1Aは、図2(a)(b)及び図3に示すように、下から順に、後述する光源及び撮像素子を基板上にマウントして樹脂封止したLGA(Land Grid Array)半導体パッケージ10(以下、「LGA10」という。)と、遮光カバー20と、光学カバー30とを備えている。ここで、LGA(Land Grid Array)半導体パッケージとは、半導体パッケージにおいて、外部への接続端子として、パッケージ底面に平面電極パッドを格子状に並べたランドと称される実装用端子を備えたものをいう。
【0031】
上記LGA10は、図4に示すように、基板11、光源12、撮像素子13、封止樹脂14、及び封止樹脂14にて形成された第2照明用レンズ15からなっている。
【0032】
上記遮光カバー20は、光源12からの光を特定方向以外の方向に対して遮光するものであり、図2(b)に示すように、LGA10の上側を覆っている。
【0033】
上記光学カバー30は、図2(b)に示すように、遮光カバー20を覆い、かつ光ポインティング装置1Aの筐体として機能すると共に、表面に当接された被写体に対して上記光源12の光を該被写体に導き、被写体からの反射光を表面に被写体を上記撮像素子13に導く光学部材となっている。このため、光学カバー30は、図6(a)(b)に示すように、表面に被写体が接触する接触面31と、裏面において第1照明用レンズ32及び結像用レンズ33を含んでいる。
【0034】
上記遮光カバー20及び光学カバー30は、図5(a)(b)及び図6(a)(b)に示すように、組み立て性を向上させる観点から、遮光カバー20の遮光カバー外側斜面壁20A・20B・20Cと、これら遮光カバー外側斜面壁20A・20B・20Cに外嵌する光学カバー30の光学カバー内側斜面壁30a・30b・30cとによって、オートアライメントされるように、XY方向の位置決めが高精度になされている。尚、遮光カバー20とLGA10とは、当て決めを決めてマウントしてもよく、又は後述する結像光が撮像素子13に対して最大限の受光するように調整してマウントしてもよい。
【0035】
(光ポインティング装置における各部の構成)
上記の外観を有する光ポインティング装置1Aにおける各部の構成について、以下に説明する。最初に、LGA10の構成について、図1(a)(b)に基づいて説明する。尚、図1(a)に示すように、光ポインティング装置1Aの奥行き方向(図1(a)の左右方向)をY軸とし、光源12から撮像素子13に向かう方向をY軸の正方向とする。また、図1(b)に示すように、光ポインティング装置1Aの幅方向(図1(b)の左右方向)をX軸とし、光ポインティング装置1Aの左側から右側に向く方向をX軸の正方向とする。さらに、図1(a)(b)に示すように、光ポインティング装置1Aの厚み方向(図1(a)(b)の縦方向)をZ軸とし、光ポインティング装置1Aの下部から上部に向かう方向をZ軸の正方向とする。ここで、Z軸の正方向を垂直方向と称すると共に、Y軸の正方向を水平方向とも称する。
【0036】
また、図1(a)(b)において、光学カバー30の接触面31に接触している被写体2は、指先等の被写体であり、光ポインティング装置1Aが指の指紋の動きを検知する対象物である。尚、ここでは、光ポインティング装置1Aに対する被写体2の状態を分かり易くするために、被写体2を光ポインティング装置1Aに対して便宜的に小さく記載している。
【0037】
(LGAの構成)
まず、上記LGA10は、図1(a)(b)に示すように、1つの基板11上に光源12と撮像素子13とを搭載している。光源12及び撮像素子13は、ワイヤボンド又はフリップチップ実装にて基板11と電気的に接続されている。基板11には、回路が形成されている。当該回路は、光源12の発光タイミングを制御したり、撮像素子13から出力された電気信号を受けて、被写体2の動きを検知したりするものである。基板11は、同一材料からなる平面状のものであり、例えば、プリント基板やリードフレーム等からなっている。
【0038】
上記光源12は、光学カバー30の接触面31に向けて光を照射するものである。光源12から照射された照射光は、LGA10の封止樹脂14にて形成された第2照明用レンズ15、及び光学カバー30に形成された第1照明用レンズ32を介して、光源12の拡散光を検出エリア31aに均一かつ高強度に集光されて接触面31に到達する。このように、光源12からの照射光L1は、接触面31に対して斜め方向から、つまり接触面31に対して或る入射角で入射する。
【0039】
光学カバー30は、後述するように、空気よりも屈折率が大きい材質であるため、接触面31に到達した照射光L1は、接触面31上に被写体2が無い場合、その一部が接触面31を透過し、残りの一部が接触面31にて反射する。このとき、照射光L1の接触面31に対する入射角が全反射の条件を満たす場合、照射光L1は、接触面31を透過せず、全て接触面31で反射して光学カバー30内に向かう。
【0040】
一方、接触面31上に被写体2が存在する場合、照射光L1は、接触面31と接している被写体2の表面で反射し、光学カバー30に入射される。光源12は、例えばLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等の光源で実現され、特に高輝度の赤外発光ダイオードで実現されることが好ましい。
【0041】
撮像素子13は、光源12が照射した、被写体2で反射された反射光L2を受光し、受光した光に基づいて接触面31上の像を結像し、画像データに変換するものである。具体的には、撮像素子13は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補形金属酸化膜半導体)やCCD(Charge Coupled Device :電荷結合素子)等のイメージセンサからなっている。撮像素子13は、図示しないDSP(Digital Signal Processor:算出部)を含み、受光した反射光L2をDSPに画像データとして取り込む。撮像素子13は、基板11の指示にしたがって、接触面31上の像を一定の間隔で撮影し続ける。
【0042】
接触面31上に接している被写体2が移動した場合、撮像素子13が撮影する画像は、その直前に撮影した画像とは異なる画像となる。撮像素子13は、DSPにおいて、撮影した画像データとその直前の画像データとの同一箇所の値をそれぞれ比較し、被写体2の移動量及び移動方向を算出する。すなわち、接触面31上の被写体2が移動した場合、撮影した画像データは、その直前に撮影した画像データに対して所定量ずれた値を示す画像データである。撮像素子13は、DSPにおいて、該所定量に基づいて被写体2の移動量及び移動方向を算出する。撮像素子13は、算出した移動量及び移動方向を電気信号として基板11に出力する。尚、DSPは、撮像素子13内ではなく、基板11に含まれるものであってもよい。その場合、撮像素子13は、撮像した画像データを順番に基板11に送信する。
【0043】
撮像素子13の処理をまとめると、撮像素子13は、接触面31上に被写体2が無い場合、接触面31の像を撮像する。次に、接触面31上に被写体2が接触すると、撮像素子13は、接触面31と接している被写体2の表面の像を撮像する。例えば、被写体2が指先の場合、撮像素子13は、指先の指紋の像を撮像する。ここで、撮像素子13が撮像した画像データは、接触面31上に被写体2が無いときの画像データと異なる画像データとなっているため、撮像素子13のDSPは、接触面31上に被写体2が接触していることを示す信号を基板11に送信する。そして、被写体2が移動すると、DSPが直前に撮像した画像データと比較して、被写体2の移動量及び移動方向を算出し、算出した移動量及び移動方向を示す信号を基板11に送信する。
【0044】
上記光源12及び撮像素子13は、透光性樹脂である封止樹脂14によって周囲が樹脂封止されている。封止樹脂14の形状は、略直方体である。封止樹脂14の底面は、基板11の上表面と密着して接しており、光源12及び撮像素子13にそれぞれ密着する凹部が形成されている。封止樹脂14を構成する透光性樹脂として、例えば、シリコーン樹脂若しくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、又はアクリルやポリカーボネート等の熱可塑性樹脂が用いられる。
【0045】
このように、基板11上に搭載された光源12及び撮像素子13がそれぞれ封止樹脂14によって樹脂封止されているため、基板11、光源12、撮像素子13及び封止樹脂14が一体となっているLGA10が形成されている。そのため、光ポインティング装置1Aの部品点数を減らすことができ、組み立て工程数も減らすことができる。したがって、光ポインティング装置1Aの製造コストを削減することができると共に、被写体2の検知精度の高い光ポインティング装置1Aを実現することができる。
【0046】
(光学カバーの構成)
次に、光ポインティング装置1Aを構成する光学カバー30の構成について、図1(a)(b)、及び図6に基づいて詳述する。
【0047】
光学カバー30は、光源12及び撮像素子13等を含む光ポインティング装置1Aを構成する各部・各素子を保護するものである。
【0048】
光学カバー30は、図1(a)(b)及び図6(a)(b)に示すように、遮光カバー20の上側に位置し、図5(a)(b)に示す遮光カバー20の遮光カバー外側斜面壁20A・20B・20C及び遮光カバー上表面20Dに密着して接している。尚、本実施の形態において、光学カバー30におけるZ軸の負側の表面であって、遮光カバー20上に搭載され光ポインティング装置1Aとして形成されているときの外部に露出していない表面部分を、光学カバー30の裏面と称する。
【0049】
また、光学カバー30のフランジ底面30fは、LGA10の基板11の底面と略同一平面を形成している。さらに、光学カバー30の接触面31と、基板11の底面と、光学カバー30のフランジ底面30fとは互いに平行となっており、光学カバー30の両側面が光学カバー30の接触面31、及び光学カバー30のフランジ底面30fに対してある角度を持つ面で形成されている。すなわち、図1(a)(b)に示すように、光ポインティング装置1Aの断面図において、光学カバー30は台形状となっている。ただし、光学カバー30は、この形状に限るものではなく前記側面がフランジ底面30fに対して垂直になっていても構わない。
【0050】
光学カバー30における側面の底部の付近にはフランジ34が設けられており、本実施の形態の光ポインティング装置1Aが電子機器に搭載され、指等の被写体2により光学カバー30の接触面31からZ軸の負方向側に押された場合に、LGA10の基板底面に設けられる図示しない板バネ状の接点スイッチによるZ軸の正方向側へ生じる力をある位置で規制して、押ボタンスイッチとして必要な一定のストローク量を確保するために使用される。
【0051】
光学カバー30における接触面31の検出エリア31aは、被写体2が光ポインティング装置1Aと接する面である。接触面31の検出エリア31aは、光学カバー30の上表面における光源12の上方に位置する。
【0052】
光学カバー30の裏面には、結像用レンズ33及び第1照明用レンズ32が形成されている。上記結像用レンズ33は、接触面31における被写体2の像を撮像素子13に投影するために、特定の曲率を有するZ軸対称の光学面が形成されており、その光学面の略有効径外の部分は、上記被写体像を撮像素子13に対して投影できない面とすることによって、アパーチャーつまり結像用レンズに対して絞りとして作用する効果を持たせたレンズとなっている。
【0053】
また、第1照明用レンズ32は、X軸及びY軸に対して曲率が異なるトロイダル面が形成されており、後述する第2照明用レンズ15と相互作用して、光源12からの光を、被写体2の検出エリア31aに対してなるべく均一にかつ照射エリアを検出エリア外に拡がらせないように照射する作用を有している。
【0054】
上記の作用を、図7(a)(b)及び図8(a)(b)に基づいて詳述する。図7(a)はLGA10側に設けられた第2照明用レンズ15のみを用いて接触面31の検出エリア31aを照明した場合の照射光L3を示す断面図であり、図7(b)はそのときの検出エリア31aの強度分布を示す平面図である。また、図8(a)はLGA10側に設けられた第2照明用レンズ15に加えて、光学カバー30に設けられた第1照明用レンズ32も使用して検出エリア31aを照明したときの照射光L1を示す断面図であり、図8(b)はそのときの検出エリア31aの強度分布を示す平面図である。
【0055】
まず、図7(a)に示すように、光学カバー30に第1照明用レンズ32が設けられていない場合、照射光L3は検出エリア31a外まで拡がる。その結果、検出エリア31a上の強度分布は、図7(b)に示すように、光の強度が主にY軸方向マイナスからY軸方向プラスに亘ってグラデェーションしており、光源12から放射される光の利用効率が劣る。
【0056】
一方、図8(a)に示すように、LGA10側に設けられた第2照明用レンズ15に加えて、光学カバー30に設けられた第1照明用レンズ32も使用して検出エリア31aを照明した場合には、照射光L1は検出エリア31aの外まであまり拡がっていない。この結果、検出エリア31a上の強度分布は、図8(b)に示すように、光の強度が同心円状に分布しており、光源12から放射される光の強度中心が検出エリア31a内に入射している。このため、光の利用効率が高く、より明るく照明できている。したがって、光源12にLEDを使用している場合、LEDへの入力電流を低くできることから、本装置を携帯機器に搭載する場合のバッテリーの使用時間を延ばすことができる。また、加えて、照射光L1は強度中心部分が略平行光化されて斜めから検出エリア31aに照射される。このため、検出対象となる指の指紋等の凹凸が照明された場合、凹凸の明暗が鮮明になるので、撮像素子13での検出感度も向上する。
【0057】
ところで、光学カバー30を構成する材料としては、光源12が照射する光の波長が可視波長外の赤外波長(例えば、800nm以上)の場合、光学カバー30の材質は赤外光のみを透過する可視光吸収型のポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂にすればよい。このような材質にて光学カバー30を形成することによって、光学カバー30の外部から侵入してくる不要光のうち、可視光成分を光学カバー30によって遮断することができる。そして、光ポインティング装置1Aの表面である、光学カバー30の表面にデザイン上の色目を付ける場合、例えば、光学カバー30の接触面31に、例えば緑色等の所定の色における波長帯のみを反射し、それ以外の波長を透過する特性を有する材料でコートすればよい。このような特性を有する材料にて光学カバー30の接触面31をコートすることによって、光ポインティング装置1Aの光学特性を損ねることなく、光ポインティング装置1Aの表面に所望の色を付けることができる。
【0058】
(遮光カバーの構成)
次に、光ポインティング装置1Aを構成する遮光カバー20の構成について、図1(a)(b)及び図5(a)(b)に基づいて詳述する。
【0059】
遮光カバー20は、光源12からの光を特定方向以外の方向に対して遮光し、かつ上記結像用レンズ33に対して絞り(アパーチャー)として作用すると共に、撮像素子13に対して、光ポインティング装置1Aの外部から入射する太陽光や街灯・室内灯等の迷光成分を遮光するものである。そのために、遮光カバー20は、黒色の顔料や染料を含んだポリカーボネートや不透明の樹脂といった遮光性能を有する材料で構成されることが望ましい。遮光性能があれば、金属に黒色塗装されていても構わないが、反射光が迷光となって撮像素子13に到達することを避けるためにも、光を吸収出来る素材であれば最も好ましい。
【0060】
遮光カバー20は、図1(a)(b)、図4及び図5(a)(b)に示すように、LGA10の上側に位置し、LGA10の封止樹脂14の樹脂外側面14A・14B・14Cに対してわずかな隙間を残しつつ、かつ樹脂上表面14Eに対しては略密着して接している。遮光カバー20の遮光カバー上表面20Dと、LGA10の樹脂上表面14Eと略密着するように接する遮光カバー裏底面20dとは略平行となっており、また、遮光カバー20の遮光カバー外側斜面壁20A・20B・20Cとそれぞれ対面する遮光カバー裏斜面20a・20b・20cにて形成された第2の遮光壁としての遮光カバースカート部22をも含めて、光ポインティング装置1Aの外から入射する迷光、及び光源12からの光であって、光学カバー30の接触面31を含む光学カバー30の表面で反射した、主に被写体2の像を信号成分として含まない迷光を遮光するために設けられている。尚、LGA10の封止樹脂14の樹脂外側面14Dに相当する遮光カバー20上には、上記遮光カバースカート部22が形成されていない。しかし、この部分は、被写体2の指の付け根部分がくるように、光ポインティング装置1Aを使用することによって、指の付け根や人の体が外光(太陽光・街灯光・室内灯光)起因の迷光をカットすること、及び光源12から光学カバー30を介してくる迷光の伝搬距離が一番長くなるため、大部分が減衰されて撮像素子13に入射することから、形成しなくても問題ない。この部分を形成しないことによって、光ポインティング装置1AのXY方向の投影面積を小さくすることができる。ただし、光源12から光学カバー30を介してくる迷光は、ゼロではなくまた光源12で発する光の強度によっては、影響が無視できないこともあることから、投影面積に制限が無ければ、遮光カバースカート部22を形成しても構わない。
【0061】
また、遮光カバー20の裏面に設けられた第1の遮光壁としての遮光カバー第1突起20eは、LGA10の封止樹脂14に設けられた遮光カバー窪み14Fに入り込み、光源12から主に封止樹脂14の樹脂斜面14Gを通して、直接撮像素子13に入射する迷光を遮光する。さらに、図5(b)に示す遮光カバー20の裏面に設けられた遮光カバー第2突起20fは、光源12から第2照明用レンズ15を通過して出射する照射光の内、遮光カバー20に設けられた遮光カバー孔20Eを通過して、光学カバー30に設けられた第1照明用レンズ32に入射する以外の光が迷光として、光学カバー30に入射しないように遮光する。
【0062】
また、図1(a)(b)に示す絞り開口部としてのアパーチャー21は、被写体2の像を撮像素子13に投影する結像用レンズ33に対して、絞りつまりレンズ口径として作用する。本来、結像用レンズ33は、上述したように結像に作用する曲面におけるある有効径外の部分に結像作用を持たない面を有し、その部分が絞りとして作用するが、光が遮光する訳ではないため、迷光となる恐れがあるが、このアパーチャー21は遮光能力を持つため、迷光をカットできる。
【0063】
(光ポインティング装置の組み立て方法)
次に、本実施の形態の光ポインティング装置1Aの組み立て方法について、説明する。
【0064】
まず、光学カバー30と遮光カバー20とは、上述したように、それぞれの斜面同士をコンタクトさせることによって、オートアライメントでの組み立てを行う。この場合、光学カバー30の光学カバー底面30dと遮光カバー20の遮光カバー上表面20Dとは完全に密着せず、0〜50μm程度の隙間のある構成にしないと、オートアライメントされない。また、この隙間に接着剤を入れておくことによって、オートアライメント後、硬化させて光学カバー30と遮光カバー20とを固定することと同時に、隙間を無くすことによって、光学カバー30の接触面31が被写体2の指で押されて光学カバー30が撓み、割れが発生することを防ぐことができる。尚、この斜面同士をコンタクトさせる方法以外にも、斜面を垂直面にし、光学カバー30にスリットを設け、かつ遮光カバー20に突起を設け、さらに、スリットに突起を入れ込むことによって、オートアライメントする方法でも構わない。その場合、光学カバー底面30dと遮光カバー上表面20Dとは完全に密着させることができるため、接着剤による隙間を埋めなくても、光学カバー30の接触面31が被写体2の指で押されて光学カバー30が撓み、割れが発生することを防ぐことができる。
【0065】
その後、LGA10の封止樹脂14の樹脂上表面14Eと、遮光カバー20の遮光カバー上表面20Dとがコンタクトするようにマウントして、光学カバー30におけるフランジ34のフランジ底面30fと図示しないFPCとを接着するか、又は封止樹脂14の樹脂外側面14A・14B・14Cと遮光カバー20の遮光カバー裏斜面20a・20b・20cとで形成させる隙間に接着剤を入れることによって固定する。この固定の際、LGA10の封止樹脂14に形成された樹脂孔14Fと遮光カバー20の裏面に形成された遮光カバー第1突起20eとに当たり面を設けて当て決めしても構わない。或いは、LGA10の位置を仮固定しておき、遮光カバー20が固定された光学カバー30の位置を、XY方向にスライドさせ、撮像素子13から出力される信号をモニターしながら撮像素子13上に被写体2の像が一番投影される位置に調整しても構わない。
【0066】
このように、本実施の形態の光ポインティング装置1Aは、被写体2に光を照射する光源12と、被写体2からの反射光を内部で導光させる光学カバー30と、光学カバー30によって導光された光を受光する撮像素子13と、撮像素子13に対して被写体2からの反射光以外の光である迷光を遮光する遮光カバー20とを備えている。
【0067】
そして、本実施の形態では、光学カバー30には、被写体2が接触する接触面31と、導光される光を撮像素子13に導く結像用レンズ33とが一体に形成されている。このため、結像用レンズ33と光学カバー30とが互いに別個ではないので、光学カバー30内を導光される光が撮像素子13に導かれるように結像用レンズ33を光軸調整して配置するという作業が省略できる。この結果、組み立て性の向上を図り、延いては高精度化及び低コスト化を図ることができる。
【0068】
ところで、本実施の形態では、光源12及び撮像素子13は、光学カバー30の接触面31とは反対側に配設されている。この結果、光源12と撮像素子13との間を遮光する必要がある。また、外部から撮像素子13に入射する光も遮光する必要がある。
【0069】
そこで、本実施の形態では、遮光カバー20には、迷光のうち光源12から撮像素子13への入射光を遮光する遮光カバー第1突起20eと、迷光のうち光学カバー30の外部から撮像素子13への入射光を遮光する遮光カバースカート部22とが形成されている。このため、遮光カバー第1突起20e及び遮光カバースカート部22によって、撮像素子13に対して被写体2からの反射光以外の光である迷光を遮光することができる。また、遮光カバー20には、結像用レンズ33から撮像素子13への光に対して絞りとして作用するアパーチャー21が形成されているので、光学カバー30によって導光された光を、アパーチャー21を介して撮像素子13に導いて受光することが可能である。
【0070】
したがって、組み立て性の向上を図ることにより高精度化及び低コスト化を図ると共に、遮光性能の優れた光ポインティング装置1Aを提供することができる。
【0071】
また、本実施の形態の光ポインティング装置1Aでは、光学カバー30には、導光される被写体2からの反射光を撮像素子13に導く結像素子である結像用レンズ33と、光源12からの光を被写体2に導く第1照明用レンズ32とが一体に形成されている。
【0072】
これにより、光学カバー30に一体に形成された結像素子としての結像用レンズ33を用いて、導光される被写体2からの反射光を撮像素子13に導くことができる。また、本実施の形態では、光学カバー30に光源12からの光を被写体2に導く第1照明用レンズ32が一体に形成されている。このため、第1照明用レンズ32にて、光源12からの光を被写体2に集光して導くことができる。また、結像用レンズ33及び第1照明用レンズ32は、光学カバー30に一体に形成されているので、組み立て性に優れ、高精度化及び低コスト化を図ることができる。
【0073】
また、本実施の形態の光ポインティング装置1Aでは、光源12及び撮像素子13を基板11上に搭載して封止樹脂14にて封止したLGA10が設けられていると共に、LGA10の封止樹脂14には、光源12からの光を被写体2に導く第2照明用レンズ15が一体に形成されている。
【0074】
これにより、LGA10の封止樹脂14には、光源12からの光を被写体2に導く第2照明用レンズ15が一体に形成されているので、第2照明用レンズ15にて、光源12からの光を被写体2に集光して導くことができる。また、第2照明用レンズ15は、LGA10の封止樹脂14に一体に形成されているので、組み立て性に優れ、高精度化及び低コスト化を図ることができる。
【0075】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図9に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
前記光ポインティング装置1Aは、結像用レンズ33、並びに第2照明用レンズ15及び第1照明用レンズ32を備えていた。しかし、本実施の形態の光ポインティング装置1Bは、導光型光学系を持つ光学カバー60を用いており、第2照明用レンズ15に相当するレンズが存在しない点が異なっている。
【0077】
本実施の形態の光ポインティング装置1Bは、図9に示すように、LGA40はLGA10での第2照明用レンズ15に相当するレンズが無い以外は同じである。光ポインティング装置1Bでは、Z方向の厚みを薄くする目的で構成されているため、上記レンズを無くしているが、あっても問題は無い。
【0078】
光学カバー60は、実施の形態1の光学カバー30と構成が大きく異なっている。接触面61は、被写体2が光ポインティング装置1Bと接する面である。接触面61の検出エリア61aは、光学カバー60の上表面における光源12の上方に位置する。また、光学カバー30の第1照明用レンズ32の代わりに、折り曲げ素子62が設けられている。折り曲げ素子62は、プリズムにてなっており、光源12の上方、かつ接触面61の下方に位置し、光学カバー60の裏面のLGA40と接しない部分に位置する、光学カバー60の裏面の凹部を形成している。折り曲げ素子62には、折り曲げ素子傾斜面62aが形成されており、該折り曲げ素子傾斜面62aと光学カバー60の上表面とがなす狭角を傾斜角度θとする。折り曲げ素子62は、光源12から照射された照射光L1を折り曲げ素子傾斜面62aにて屈折させて、被写体2に向かうように照射光L1の経路を変換するものである。また、折り曲げ素子62は、被写体2から反射された反射光L2を折り曲げ素子傾斜面62aにて全反射させて、光学カバー60の内部におけるY軸の正方向に反射光L2の経路を変換するものである。折り曲げ素子傾斜面62aにて全反射された、被写体2から反射された反射光L2は、後述する反射面63に向かう。このように、折り曲げ素子傾斜面62aは、照射光L1を透過し、反射光L2を全反射するものである。そのため、光学カバー60には、光源12の上方における、光学カバー60とLGA40との間の空間の屈折率よりも大きい屈折率を有する材質が用いられる。
【0079】
例えば、光学カバー60には屈折率が1.5程度の可視光吸収タイプのポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂を用いると共に、上記空間は空気層とすればよい。つまり、折り曲げ素子傾斜面62aには、反射光L2を全反射するために、アルミ反射膜等を蒸着していない。
【0080】
次に、本実施の形態では、実施の形態1の結像用レンズ33に代えて結像素子としての結像反射鏡64が設けられている。
【0081】
上記結像反射鏡64は、被写体2からの反射光L2を反射して、撮像素子13上に被写体2の像を結像するものである。結像反射鏡64は、撮像素子13の上方、かつ撮像素子13よりもY軸の正方向側に位置し、光学カバー60の裏面におけるLGA40とは接しない部分に位置する、光学カバー60の裏面の凹部を形成している。結像反射鏡64には、直交する2方向の曲率が異なる例えばトロイダル面が形成されている。結像反射鏡64は、このトロイダル面で反射光L2を撮像素子13に結像するように反射している。結像反射鏡64において効率的に反射光L2を反射させるために、結像反射鏡64のトロイダル面には、例えば、アルミ、ニッケル、金、銀、誘電体ダイクロ膜等の金属の反射膜を蒸着させる。
【0082】
尚、上記の説明では、結像反射鏡64には例えばトロイダル面が形成されているとしているが、必ずしもこれに限らず、例えば、球面、非球面等の反射体であって、撮像素子13に結像できるものであれば使用することが可能である。
【0083】
上記反射面63は、折り曲げ素子傾斜面62aで全反射された反射光L2を結像反射鏡64に入射させ、結像反射鏡64から反射された反射光L2を撮像素子13に入射させるために、反射光L2を反射するものである。反射面63は、撮像素子13の上方であって、光学カバー60の上表面に位置する。反射面63は、光学カバー60の上表面に反射膜を蒸着させて形成される。反射面63を形成する反射膜は、外部に露出しており使用者によく見えるため、外観上、できるだけ目立たない膜とすることが望ましい。例えば、光源12が照射する光の波長が可視波長外の赤外波長(例えば、800nm以上)の場合、反射面63を形成する反射膜は、光源12から照射された800nm以上の波長帯の赤外光を反射し、800nm以下の可視波長帯の光を透過するものであればよい。このように、光源12が照射する光の波長と、反射面63を形成する反射膜の反射率及び透過率の特性を適宜設定することによって、被写体2からの反射光L2を効率的に反射し、かつ外観上は目立たない反射面63を形成することができる。
【0084】
また、光源12が照射する光の波長が可視波長外の赤外波長(例えば、800nm以上)の場合、光学カバー60の材質は赤外光のみを透過する可視光吸収型のポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂にすればよい。このような材質で光学カバー60を形成することによって、光学カバー60の外部から進入してくる不要光のうち、可視光成分を光学カバー60にて遮断することができる。そして、上述のように、赤外光を反射する反射面63を形成することによって、上記不要光のうち、赤外光成分を反射面63で遮断することができる。光ポインティング装置1Bに入射する不要光を遮断することによって、該不要光による誤動作を防ぐことができる。
【0085】
さらに、光ポインティング装置1Bの表面である、光学カバー60の表面に色目を付ける場合、例えば、光学カバー60の上表面及び反射面63の上表面に、例えば緑色等の所定の色の波長帯のみを反射し、それ以外の波長を透過する特性を有する材料でコートすればよい。このような特性を有する材料にて光学カバー60の上表面及び反射面63の上表面をコートすることによって、光ポインティング装置1Bの光学特性を損ねることなく、光ポインティング装置1Bの表面に所望の色を付けることができる。
【0086】
反射面65は、結像反射鏡64から反射されて反射面63で反射された反射光L2を再度反射面63に向けて反射するものである。反射面65は、撮像素子13の上方、かつ撮像素子13よりもY軸の正方向側に位置し、光学カバー60の裏面に位置する。反射面65は、光学カバー60の裏面に反射膜を蒸着させて形成される。反射面65を形成する反射膜は、効率的に光を反射するものが好ましい。反射面65は、例えば、アルミ、ニッケル、金、銀、誘電体ダイクロ膜等の金属を蒸着して形成される。
【0087】
LGA40の封止樹脂44の側面及び上表面を基準として、LGA40の上方に、遮光カバー50が配置されている。遮光カバー50は前記遮光カバー20と比べてアパーチャー21が無く、反射光L2が反射面63に反射して撮像素子13に到達するための絞り開口部としての遮光カバー孔51が設けられている以外は、必要な範囲の照射光L1を光学カバー60の検出エリア61aに遮光せず到達させるために設けられた遮光カバー孔51や、光源12から封止樹脂44を通過して直接撮像素子13に入射する迷光をカットする第1の遮光壁としての遮光カバー第1突起50e、及び第2の遮光壁としての遮光カバースカート部52等の、光ポインティング装置1Aの遮光カバー20と同様の作用を持つ構造が設けられている。
【0088】
光ポインティング装置1Bは、光ポインティング装置1Aと同様のアライメント方法により組み立てを行っているため、説明を省略する。
【0089】
本実施の形態の光ポインティング装置1Bは、被写体2に光を照射する光源12と、被写体2からの反射光を内部で反射させて導光する導光板型光学部材としての光学カバー60と、光学カバー60によって導光された光を受光する撮像素子13と、不必要な照射光や外光による迷光をカットする遮光カバー50とを備えている。そして、光学カバー60には、被写体2が接触する接触面61と、導光される光を撮像素子13に導く結像反射部としての結像反射鏡64と、被写体2からの反射光の方向を変換させて結像反射鏡64に導く光路変換手段としての折り曲げ素子62とが一体に形成されている。したがって、このような光学カバー60を採用することによって、光学系の光路長を長く取り、収差を抑えるようにしても光学カバー60の垂直方向の長さを光路長に比較して小さくすることができ、小型化を図ることができる。また、接触面61、折り曲げ素子62及び結像反射鏡64を一体に形成することによって、部品点数も削減することができ、組み立て工程数も減らすことができる。また、光学カバー60を成形する金型を高精度で作成することにより、折り曲げ素子傾斜面62a及び結像反射鏡64を高精度に製造することができ、接触面61、折り曲げ素子62、結像反射鏡64の位置関係も金型精度で配置することができる。したがって、光ポインティング装置1Bの製造コストを削減することができると共に、被写体2の検知精度の高い光ポインティング装置1Bを実現することができる。
【0090】
このように、本実施の形態の光ポインティング装置1Bは、被写体2に光を照射する光源12と、被写体2からの反射光を内部で導光させる光学カバー60と、光学カバー60によって導光された光を受光する撮像素子13と、撮像素子13に対して被写体2からの反射光以外の光である迷光を遮光する遮光カバー50とを備えている。
【0091】
そして、本実施の形態では、光学カバー60には、被写体2が接触する接触面61と、導光される光を撮像素子13に導く結像素子としての結像反射鏡64とが一体に形成されている。このため、結像反射鏡64と光学カバー60とが互いに別個ではないので、光学カバー60内を導光される光が撮像素子13に導かれるように結像反射鏡64を光軸調整して配置するという作業が省略できる。この結果、組み立て性の向上を図り、延いては高精度化及び低コスト化を図ることができる。
【0092】
ここで、本実施の形態では、光源12及び撮像素子13は、光学カバー60の接触面61とは反対側に配設されている。この結果、光源12と撮像素子13との間を遮光する必要がある。また、外部から撮像素子13に入射する光も遮光する必要がある。
【0093】
そこで、本実施の形態では、遮光カバー50には、迷光のうち光源12から撮像素子13への入射光を遮光する遮光カバー第1突起50eと、迷光のうち光学カバー60の外部から撮像素子13への入射光を遮光する遮光カバースカート部52とが形成されている。このため、遮光カバー第1突起50e及び遮光カバースカート部52によって、撮像素子13に対して被写体2からの反射光以外の光である迷光を遮光することができる。また、遮光カバー50には、結像反射鏡64から撮像素子13への光に対して絞りとして作用する遮光カバー孔51が形成されているので、光学カバー60によって導光された光を結像反射鏡64を介して撮像素子13に導いて受光することが可能である。
【0094】
したがって、組み立て性の向上を図ることにより高精度化及び低コスト化を図ると共に、遮光性能の優れた光ポインティング装置1Bを提供することができる。
【0095】
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施の形態について図10に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1及び実施の形態2と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1及び実施の形態2の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0096】
本実施の形態では、前記実施の形態1及び実施の形態2にて説明した光ポインティング装置1A・1Bを搭載した電子機器について、図10(a)(b)(c)を用いて説明する。図10(a)(b)(c)は、光ポインティング装置1A・1Bのいずれか搭載した電子機器としての携帯電話機70の外観を示す図であって、図10(a)は携帯電話機70の正面図であり、図10(b)は携帯電話機70の背面図であり、図10(c)は携帯電話機70の側面図である。尚、図10(a)(b)(c)においては、電子機器として携帯電話機70である例を示しているがこれに限定されるものではない。電子機器として、例えば、PC(特にモバイルPC)、PDA(Personal Digital Assistant:携帯情報端末)、ゲーム機、テレビ等のリモコン等であってもよい。
【0097】
図10(a)(b)(c)に示すように、携帯電話機70は、モニター側筐体71及び操作側筐体72を備えている。モニター側筐体71は、モニター部75及びスピーカー部76を含み、操作側筐体72は、マイク部73、テンキー74及び例えば光ポインティング装置1Aを含んでいる。携帯電話機70に搭載される光ポインティング装置1Aは、必ずしもこれに限らず、光ポインティング装置1Bも適用可能である。
【0098】
尚、本実施の形態において、光ポインティング装置1A・1Bは、図10(a)に示すように、テンキー74の上部に配置されているが、光ポインティング装置1A・1Bの配置方法及びその向きについては、これに限定されるわけではない。
【0099】
スピーカー部76は、音声情報を外部に出力するものであり、マイク部73は音声情報を携帯電話機70に入力するものである。モニター部75は、映像情報を出力するものであり、本実施形態においては、光ポインティング装置1A・1Bからの入力情報を表示するものである。
【0100】
尚、本実施の形態の携帯電話機70は、図10(a)(b)(c)に示すように、上部の筐体(モニター側筐体71)と下部の筐体(操作側筐体72)とがヒンジを介して接続されている、いわゆる折りたたみ式の携帯電話機70を例として挙げている。携帯電話機70として、折りたたみ式が主流であるため、本実施の形態では折りたたみ式の携帯電話機を一例として挙げているのであって、光ポインティング装置1A・1Bを搭載することができる携帯電話機70は、折りたたみ式に限るものではない。
【0101】
このように、組み立て性の向上を図ることにより高精度化及び低コスト化を図ると共に、遮光性能の優れた光ポインティング装置1A・1Bを備えた携帯電話機70を提供することができる。
【0102】
尚、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、本発明は、PCや携帯電話機等の入力装置に利用することができ、特に小型、薄型を要求される携帯機器に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0104】
1A・1B 光ポインティング装置
2 被写体
10 LGA
11 基板
12 光源
13 撮像素子
14 封止樹脂
15 第2照明用レンズ
20 遮光カバー
20e 遮光カバー第1突起(第1の遮光壁)
21 アパーチャー(絞り開口部)
22 遮光カバースカート部(第2の遮光壁)
30 光学カバー
31 接触面
31a 検出エリア
32 第1照明用レンズ
33 結像用レンズ
34 フランジ
40 LGA(パッケージ)
50 遮光カバー
50e 遮光カバー第1突起(第1の遮光壁)
51 遮光カバー孔(絞り開口部)
52 遮光カバースカート部(第2の遮光壁)
60 光学カバー
61 接触面
61a 検出エリア
62 折り曲げ素子
62a 折り曲げ素子傾斜面
63 反射面
64 結像反射鏡(結像素子)
65 反射面
70 携帯電話機(電子機器)
71 モニター側筐体
72 操作側筐体
75 モニター部
76 スピーカー部
L1 照射光
L2 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に光を照射する光源と、
上記被写体からの反射光を内部で導光させる光学カバーと、
上記光学カバーによって導光された光を受光する撮像素子と、
上記撮像素子に対して上記被写体からの反射光以外の光である迷光を遮光する遮光カバーとを備えた光ポインティング装置であって、
上記光学カバーには、上記被写体が接触する接触面と、導光される光を上記撮像素子に導く結像素子とが一体に形成されており、
上記光源及び撮像素子は、上記光学カバーの上記接触面とは反対側に配設されていると共に、
上記遮光カバーには、
上記結像素子から撮像素子への光に対して絞りとして作用する絞り開口部と、
上記迷光のうち光源から撮像素子への入射光を遮光する第1の遮光壁と、
上記迷光のうち光学カバーの外部から撮像素子への入射光を遮光する第2の遮光壁とが形成されていることを特徴とする光ポインティング装置。
【請求項2】
前記光学カバーには、
導光される前記被写体からの反射光を前記撮像素子に導く結像素子である結像用レンズと、
前記光源からの光を被写体に導く第1照明用レンズとが一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載の光ポインティング装置。
【請求項3】
前記光源及び撮像素子を基板上に搭載して封止樹脂にて封止したパッケージが設けられていると共に、
上記パッケージの封止樹脂には、上記光源からの光を被写体に導く第2照明用レンズが一体に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光ポインティング装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の光ポインティング装置を備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図7】
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【図8】
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