説明

光ポインティング装置及び該装置を搭載した電子機器

【課題】外乱光および迷光が受光素子に入射することを防止し、かつ、部品点数の少ない光ポインティング装置を実現すること。
【解決手段】被写体に光を照射する発光素子2と、被写体からの反射光を受光する受光素子5と、被写体が接触する撮像面21と、発光素子2から照射された光を被写体に向けて屈折させる光学ユニット3と、発光素子2から照射されて、被写体から反射した光を集光するレンズユニット4と、受光素子5において発生する受光電流に基づいて被写体の動きを検知する回路が形成された基板7とを備える光ポインティング装置1において、発光素子2および受光素子5は、基板7上に配置されて、透光性樹脂によって樹脂封止されているものであり、さらに、光透過箇所9を除いて遮光性樹脂によって樹脂封止されているものであり、光学ユニット3およびレンズユニット4は、一体成型されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指先等の被写体の動きを検知する光ポインティング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やPDAなどの小型携帯情報機器の入力インターフェースには、一般的にキーパッドが用いられており、キーパッドは、数字、文字等を入力するためのボタンと方向を指示するためのボタンとから構成されている。そのなかで方向を指示するための手段として前述したボタンによる入力以外に、装置に接触する指先等の映像をイメージセンサへ取り込み、その映像の変化により方向を指示する手段である光ポインティング装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、発光素子を中心としてその周囲を囲むように複数の受光素子が配されたホルダーと、ホルダーの上方を覆う半球状の透光体とで構成され、透光体の表面に沿って移動する物体の移動位置を検出するコンピュータ用入力装置が開示されている。特許文献2には、2次元方向の加重により変位する可動体と、発光素子と、可動体の変位に連動して移動する発光素子からの光の像を受光する受光素子とを備えている、凸形状で平面視T字形のポインティングデバイスが開示されている。
【0004】
光ポインティング装置では、発光素子からの迷光、あるいは太陽光等の外乱光が受光素子に入射すると、指先等の動きを検知するための本来の映像光に対するSN比が悪くなり、誤動作を招くこととなる。そのため、一般的に、光ポインティング装置には、迷光および外乱光が受光素子に入射することを防止する手段が設けられる。ここで、外乱光とは、外部の照明または太陽光による光、つまり発光素子以外のものからの光を指す。また、迷光とは、発光素子から照射されて、受光素子に入射する光のうち、指先等の被写体から反射された光以外の光を意味する。発光素子から照射された光はある程度の出射角度(指向角)を有しているので、全てが指先等の被写体に照射されるとは限らない。
【0005】
例えば、特許文献1に記載のコンピュータ用入力装置では、発光素子からの光が直接受光素子に入射するのを防ぐために、発光素子を取り囲むように環状の遮光壁が形成されている。また、外乱光による誤動作を防止するために、発光素子をパルス駆動し、受光素子に入射する際に発光素子のパルスに同期した信号であるかを判断する同期検出手段が設けられている。特許文献2に記載のポインティングデバイスでは、発光素子および受光素子を透光性のエポキシ樹脂等でそれぞれモールドした1次モールド部を形成し、さらに両1次モールド部を遮光性のエポキシ樹脂等でモールドした2次モールド部を形成することによって、発光素子から受光素子に光が直接入射することを防ぐことができる。また、特許文献2に記載のポインティングデバイスは、発光素子および受光素子の上方にレンズを配し、受光素子に対する外乱光の影響を防ぐために、レンズを成形する際に樹脂に可視光カット剤を混入する方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のコンピュータ用入力装置では、野外など常に強い外乱光に晒される環境で使用する場合、常時受光素子に外乱光が入射し、同期検出手段において物体からの反射光と外乱光とを区別することができず、正常に物体を検出することができない。また、特許文献2に記載のポインティングデバイスでは、2次モールド部が受光素子の側面に設けられているため、発光素子から照射されレンズで反射して受光素子に入射する迷光を遮ることができない。そのため、一般的な光ポインティング装置では、図9に示すように、外乱光および迷光が受光素子に入射するのを防ぐために、発光素子から被写体への光路および被写体から受光素子への光路を除いて、発光素子および受光素子の周囲に遮光体を設けている。以下、遮光体が設けられた光ポインティング装置について、図9に基づいて説明する。
【0007】
図9に示すように、光ポインティング装置50は、光源52、光学ユニット53、レンズユニット54、イメージセンサチップ55、遮光体57およびカバー56から構成される。光源52は、指先等の被写体51に光を照射するものである。光学ユニット53は、光源の光を屈折させたり、被写体51から反射された光を反射したりするものである。レンズユニット54は、被写体51から反射された光をイメージセンサチップ55に結像するためのものである。イメージセンサチップ55は、結像した光を受けて、光信号を電気信号に変換するものであり、中には信号処理用DSPを内蔵している場合もある。遮光体57は、外乱光および迷光がイメージセンサチップ55に入射することを防止するためのものである。カバー56は、これらの部品を包括し指先等が接触する撮像面を有するものである。
【0008】
従来の光ポインティング装置50では、外乱光あるいは迷光による誤動作を防止する手段として、遮断膜等の遮光体57によってイメージセンサチップ55に外乱光および迷光が入射するのを防いでいる。その他、外乱光あるいは迷光による誤動作を防止する手段として、光学フィルタによる遮光やマスクによる遮光等が提案されている。以下、具体例として特許文献3〜7を挙げて、遮光体等を用いて外乱光あるいは迷光による誤動作を防止する手段を説明する。
【0009】
特許文献3には、操作面を指で動かし、その操作面の動きを格子又は認識可能なパターンによって検出する2次元ポインティングデバイスが開示されている。特許文献3に記載の2次元ポインティングデバイスでは、イメージセンサの上部に光学フィルタを設けて不要な光(迷光)を遮断している。また、特許文献3に記載の2次元ポインティングデバイスでは、マスクを用いて外乱光を除去している。
【0010】
特許文献4には、アパーチャを通過した、ガラス等の基板の表面および裏面からの反射光を検出器において相互に重ね合わせて、ガラス等の基板上であっても正確に動作する光学式マウス等のポインティングデバイスが開示されている。特許文献4に記載のポインティングデバイスでは、迷光についてはアパーチャで検出器に入射するのを防ぎ、外乱光については光学フィルタを挿入して防ぐことができる。
【0011】
特許文献5には、集光レンズ、一対のプリズムおよびレンズ固定ホルダーから成る集光部材と発光手段とがホルダーと分離しないように配置されている光ポインティング装置が開示されている。特許文献5に記載の光ポインティング装置では、レンズ固定ホルダーによって、分散された雑光をフィルタリングしている。
【0012】
特許文献6には、水平の光経路を形成して光学系の厚さを最小化しながら焦点距離を十分に提供できるようにする光ポインティング装置が開示されている。特許文献6に記載の光ポインティング装置では、正常な光以外のノイズ光を遮断するために遮断膜を設置している。
【0013】
特許文献7には、反射面と平凸レンズ部とを一体形成した第1導波管および第2導波管を有する超薄型の光学式ジョイスティックが開示されている。特許文献7に記載の光学式ジョイスティックでは、第1導波管と第2導波管との間にノイズ光を遮断する遮断部を設けている。
【0014】
このように、光ポインティング装置が遮光体等を備えることによって、外乱光または迷光が受光素子に入射することを防ぐことができるので、外乱光または迷光による誤動作を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平8−179878号公報(1996年7月12日公開)
【特許文献2】特開平8−263198号公報(1996年10月11日公開)
【特許文献3】特表2007−528554号公報(2007年10月11日公表)
【特許文献4】特開2008−3650号公報(2008年1月10日公開)
【特許文献5】特開2008−226224号公報(2008年9月25日公開)
【特許文献6】特表2008−507787号公報(2008年3月13日公表)
【特許文献7】特表2008−510248号公報(2008年4月3日公表)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上述のような従来技術は、遮光体等を単独部品として備えているので、光ポインティング装置の製造工程において遮光体の組み立てまたは貼り付け等の工程を要する。組み立てまたは貼り付け等の工程において、部品の位置ずれが発生する可能性があるため、組み立てまたは貼り付け等の工程数が増加すると、光ポインティング装置の検知精度を高く維持することが困難になる。
【0017】
また、光ポインティング装置の部品点数が増加すると、光ポインティング装置のコストが高くなるという問題がある。
【0018】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、外乱光および迷光が受光素子に入射することを防止し、かつ、部品点数の少ない光ポインティング装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る光ポインティング装置は、上記課題を解決するために、被写体に光を照射する発光素子と、上記被写体からの反射光を受光する受光素子と、上記被写体が接触する撮像面と、発光素子から照射された光を被写体に向けて屈折させる光学ユニットと、発光素子から照射されて、被写体から反射した光を集光するレンズユニットと、上記受光素子において発生する受光電流に基づいて、上記被写体の動きを検知する回路が形成された基板とを備える光ポインティング装置において、上記発光素子および上記受光素子は、上記基板上に配置されて、透光性樹脂によって樹脂封止されているものであり、上記透光性樹脂によって覆われている上記発光素子および上記受光素子は、さらに、上記発光素子から上記被写体への光の経路および上記被写体から上記受光素子への光の経路を除いて、遮光性樹脂によって樹脂封止されているものであり、上記光学ユニットおよび上記レンズユニットは、一体成型されているものであることを特徴としている。
【0020】
上記の構成によれば、上記発光素子および上記受光素子が同じ上記基板上に配置されて、上記透光性樹脂によって樹脂封止され、さらに、上記遮光性樹脂によって樹脂封止されている。そのため、上記基板、上記発光素子および上記受光素子とそれらを覆う上記遮光性樹脂が一体成型され、1つの部品となっている。また、上記光学ユニットおよび上記レンズユニットが一体成型され、上記光学部品として1つの部品となっている。よって、外乱光および迷光が上記受光素子に入射することを防止し、かつ、部品点数の少ない光ポインティング装置が実現できるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明に係る光ポインティング装置は、上記発光素子と上記受光素子との間に、厚みが0.4mm以上の遮光性樹脂によって形成された遮光壁を有しており、上記遮光壁は、当該遮光壁の下端と上記基板の表面との距離が上記発光素子の高さ以下であることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、上記発光素子と上記受光素子との間に、遮光壁を有しているので、上記発光素子から上記受光素子へ直接光が入射することを防ぐことができる。よって、より迷光の影響を受けない高性能の光ポインティング装置を実現することができる。
【0023】
また、本発明に係る光ポインティング装置は、上記光学ユニットおよび上記レンズユニットを一体成型した光学部品は、上記発光素子および上記受光素子を覆う上記遮光性樹脂の外表面に沿って配置されているものであり、上記光学部品の外表面および上記光学部品と接している上記遮光性樹脂の外表面を除く上記遮光性樹脂の外表面に沿って、上記撮像面を有するカバーを配置することが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、上記光学部品を上記遮光性樹脂の外表面に沿って配置し、上記カバーを上記光学部品の外表面および上記光学部品と接している上記遮光性樹脂の外表面を除く上記遮光性樹脂の外表面に沿って配置するので、組み立て時に発生する各部品の位置ずれ等の組み立て誤差を防ぐことができる。よって、各部品を精度良く組み立てることができるので、被写体の検知精度が高い光ポインティング装置を実現することができる。
【0025】
また、本発明に係る光ポインティング装置は、上記透光性樹脂は、波長が750nm以下である可視光をカットする特性を有することが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、上記透光性樹脂は、波長が750nm以下である可視光をカットする特性を有するので、受光素子に入射する、波長が750nm以下の外乱光をより防ぐことができる。よって、より外乱光の影響を受けない高性能の光ポインティング装置を実現することができる。
【0027】
また、本発明に係る光ポインティング装置は、上記発光素子および上記受光素子は、それぞれ個別に上記透光性樹脂によって樹脂封止されているものであり、上記発光素子を覆う透光性樹脂の外表面と上記受光素子を覆う透光性樹脂の外表面との距離が少なくとも0.4mmであることが好ましい。
【0028】
上記の構成によれば、上記発光素子および上記受光素子がそれぞれ個別に、少なくとも0.4mmの距離をおいて、上記透光性樹脂によって樹脂封止されて、さらに遮光性樹脂によって樹脂封止されている。そのため、上記発光素子と上記受光素子との間に遮光性樹脂による、少なくとも0.4mmの厚みを有する壁が形成されている。この壁によって、上記発光素子から上記受光素子へ直接光が入射することを防ぐことができる。よって、より迷光の影響を受けない高性能の光ポインティング装置を実現することができる。
【0029】
また、本発明に係る光ポインティング装置は、上記発光素子および上記受光素子を覆う上記透光性樹脂の上記遮光性樹脂と接する面は、梨地加工されているものであることが好ましい。
【0030】
上記の構成によれば、上記透光性樹脂の上記遮光性樹脂と接する面は、梨地加工されているので、発光素子から照射された光が被写体に向かわない場合であっても、遮光性樹脂と接する透光性樹脂の表面で散乱するため、受光素子に入射する迷光を低減することができる。よって、より迷光の影響を受けない高性能の光ポインティング装置を実現することができる。
【0031】
また、本発明に係る光ポインティング装置は、上記遮光性樹脂の上記光学部品と接する面に凹部または凸部が成型され、上記光学部品の上記遮光性樹脂と接する面に凸部または凹部が成型され、上記遮光性樹脂に成型された凹部または凸部に、上記光学部品に成型された凸部または凹部を嵌め込んで、上記光学部品を配置することが好ましい。
【0032】
上記の構成によれば、上記遮光性樹脂に成型された凹部または凸部に、上記光学部品に成型された凸部または凹部を嵌め込んで、上記光学部品を配置するので、発光素子、受光素子および基板に対して光学部品を正確に配置することができる。よって、被写体の検知精度が高い光ポインティング装置を実現することができる。
【0033】
また、本発明に係る光ポインティング装置は、上記透光性樹脂の上記遮光性樹脂と接する面であって、上記発光素子から上記被写体への光の経路上および上記被写体から上記受光素子への光の経路上の上記透光性樹脂の表面上に、少なくとも0.15mm以上の厚みであり、上記透光性樹脂で形成された金型押さえ部を有していることが好ましい。
【0034】
上記の構成によれば、上記透光性樹脂の上記遮光性樹脂と接する面であって、上記発光素子から上記被写体への光の経路上および上記被写体から上記受光素子への光の経路上の上記透光性樹脂の表面上に、少なくとも0.15mm以上の厚みであり、上記透光性樹脂で形成された金型押さえ部を有している。そのため、遮光性樹脂を樹脂封止する際に、遮光性樹脂の成型に使用する金型の、上記発光素子から上記被写体への光の経路上および上記被写体から上記受光素子への光の経路上に遮光性樹脂を形成しないようにするための部分を上記金型押さえ部に合わせることによって、上記金型と上記透光性樹脂の表面との間から、遮光性樹脂が漏れ込むことを防ぐことができる。
【0035】
また、本発明に係る光ポインティング装置は、上記透光性樹脂で覆われた上記発光素子および上記受光素子を遮光性樹脂によって樹脂封止する際に、遮光性樹脂の注入口に形成される突起部を、上記カバーの位置決めに使用することが好ましい。
【0036】
上記の構成によれば、上記突起部を上記カバーの位置決めに使用するので、上記撮像面を有する上記カバーを正確に配置することができる。よって、被写体の検知精度が高い光ポインティング装置を実現することができる。
【0037】
また、本発明に係る電子機器は、上記光ポインティング装置を搭載していることが好ましい。
【発明の効果】
【0038】
以上のように、本発明に係る光ポインティング装置は、上記課題を解決するために、被写体に光を照射する発光素子と、上記被写体からの反射光を受光する受光素子と、上記被写体が接触する撮像面と、発光素子から照射された光を被写体に向けて屈折させる光学ユニットと、発光素子から照射されて、被写体から反射した光を集光するレンズユニットと上記受光素子において発生する受光電流に基づいて、上記被写体の動きを検知する回路が形成された基板とを備える光ポインティング装置において、上記発光素子および上記受光素子は、上記基板上に配置されて、透光性樹脂によって樹脂封止されているものであり、上記透光性樹脂によって覆われている上記発光素子および上記受光素子は、さらに、上記発光素子から上記被写体への光の経路および上記被写体から上記受光素子への光の経路を除いて、遮光性樹脂によって樹脂封止されているものであり、上記光学ユニットおよび上記レンズユニットは、一体成型されているものであることを特徴としている。
【0039】
したがって、外乱光および迷光が上記受光素子に入射することを防止し、かつ、部品点数の少ない光ポインティング装置が実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すものであり、光ポインティング装置の断面構造を示す模式図である。
【図2】本発明の第3の実施形態を示すものであり、光ポインティング装置の断面構造を示す模式図である。
【図3】本発明の第4の実施形態を示すものであり、光ポインティング装置の断面構造を示す模式図である。
【図4】(a)および(b)は、本発明の第5の実施形態を示すものであり、光ポインティング装置の断面構造を示す模式図である。(c)および(d)は、遮光性樹脂層または光学部品に形成された凸部および凹部の形状を示す図である。
【図5】(a)は、本発明の第6の実施形態を示すものであり、光ポインティング装置の断面構造を示す模式図である。(b)〜(d)は、遮光性樹脂層を形成する金型成型フローを示す模式図である。
【図6】本発明の第7の実施形態を示すものであり、光ポインティング装置の概略斜視図である。
【図7】第7の実施形態を示すものであり、光ポインティング装置に使用するカバーの概略斜視図である。
【図8】光ポインティング装置を搭載した携帯電話機の概観を示す図であり、(a)は携帯電話機の正面図であり、(b)は携帯電話機の背面図であり、(c)は携帯電話機の側面図である。
【図9】従来技術を示すものであり、光ポインティング装置の断面構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図1に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態の光ポインティング装置1の概略断面構造図である。図示のように、光ポインティング装置1は、基板7、発光素子2、受光素子5、透光性樹脂層8、遮光性樹脂層10、光学部品11、カバー6および撮像面21を備える。
【0042】
本発明では、1つの基板7上に発光素子2および受光素子5を搭載している。発光素子2および受光素子5は、ワイヤボンドまたはフリップチップ実装にて基板7と電気的に接続されている。基板7には、不図示の回路が形成されている。当該回路は、発光素子2の発光タイミングを制御したり、受光素子5から出力された受光電流を受けて、被写体の動きを検知したりするものである。基板7は、同一材料からなる平面状のものであり、例えば、プリント基板やリードフレーム等から成る。
【0043】
発光素子2は、光学ユニット3に光を照射するものである。発光素子2から照射された光は、光学ユニット3により屈折されて進行方向が変換されて撮像面21に到達する。発光素子2は、例えばLED等の光源で実現され、特に高輝度の赤外発光ダイオードで実現されることが好ましい。受光素子5は、被写体から反射された、発光素子2が照射した光を受光し、受光した光に基づいて基板7に受光電流を出力するものである。
【0044】
発光素子2および受光素子5は、透光性樹脂によって樹脂封止されており、周囲に透光性樹脂層8が形成されている。透光性樹脂層8の形状は、略直方体である。透光性樹脂層8の底面は、基板7の上表面と密着して接しており、発光素子2および受光素子5にそれぞれ密着する凹部が形成されている。透光性樹脂層8の天面には、後述する遮光壁22を形成するために、発光素子2と受光素子5との間に凹部が形成されていてもよい。透光性樹脂として、例えば、シリコーン樹脂もしくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂またはABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)等の熱可塑性樹脂が用いられる。
【0045】
また、透光性樹脂層8は、発光素子2から被写体への光の経路および被写体から受光素子5への光の経路を除いて、遮光性樹脂によって樹脂封止されており、周囲に遮光性樹脂層10が形成されている。ここで、発光素子2から被写体への光の経路である、遮光性樹脂層10が形成されていない孔を光透過箇所91と称し、被写体から受光素子5への光の経路である、遮光性樹脂層10が形成されていない孔を光透過箇所92と称する。光透過箇所91および92を総称して光透過箇所9と称する。遮光性樹脂層10の内表面は、透光性樹脂層8の天面および側面と密着して接している。遮光性樹脂層10の底面は、基板7の上表面と密着して接している。遮光性樹脂層10の外表面である側面は垂直な面であり、天面は水平な面である。すなわち、基板7、発光素子2、受光素子5、透光性樹脂層8および遮光性樹脂層10は、一体成型されており、略直方体の形状である。なお、遮光性樹脂層10の外表面である側面は、垂直な面でなくてもよい。例えば、遮光性樹脂層10の断面の形状が台形状であってもよい。つまり、遮光性樹脂層10の側面が平面であれば、天面および底面の長さが異なっていてもよい。
【0046】
また、遮光性樹脂層10の内表面には、発光素子2と受光素子5との間に遮光壁22が形成されていてもよい。遮光壁の厚みは、光を遮光するために、できるだけ大きいことが好ましい。遮光壁22の厚みが0.4mm以上の場合、発光素子2から照射される光を完全に遮断することができる。遮光壁22は、図示のように、基板7にまで達していなくてもよく、当該遮光壁22の下端と基板7の表面との距離が発光素子2の高さ以下であればよい。遮光性樹脂として、透光性樹脂と同様に、例えば、シリコーン樹脂もしくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂またはABS等の熱可塑性樹脂が用いられる。ただし、遮光性樹脂は、透光性樹脂と異なり、カーボンブラックを含む。なお、迷光の影響を考慮しない場合は、遮光性樹脂層10に遮光壁22が形成されていなくても良い。
【0047】
撮像面21は、図1に示すように、受光素子5の上方に位置し、カバー6の外表面に配置されているものである。
【0048】
光学部品11は、光学ユニット3およびレンズユニット4を有し、光学ユニット3およびレンズユニット4を一体成型したものである。光学ユニット3は、発光素子2が照射した光を被写体に当たるように屈折させるものである。レンズユニット4は、被写体から反射された、発光素子2が照射した光を受光素子5に入射するように集光するものである。光学部品11は、略直方体の形状であり、遮光性樹脂層10の上に配置されている。
【0049】
カバー6は、光ポインティング装置1の外装であり、内部の基板7、発光素子2、受光素子5、透光性樹脂層8、遮光性樹脂層10および光学部品11を外部からの衝撃等から保護するものである。カバー6は、板状の凹状の形状であり、光学部品11の天面の上に設けられた長方形状の天板と、この天板の四つの辺から光学部品11の側面および遮光性樹脂層10の側面に沿って基板7の表面に到達する四枚の側板を有する。カバー6の内表面および外表面ともに、側面は垂直な面であり、天面は水平な面である。つまり、カバー6は、直方体の物体に対して密着して覆うことができる形状である。カバー6は、遮光性樹脂層10およびその上に配置されている光学部品11を覆うように配置されている。カバー6の底面は、基板7の上表面と密着して接している。
【0050】
次に、光ポインティング装置1の製造工程について説明する。まず、基板7上に搭載された発光素子2および受光素子5を透光性樹脂によって樹脂封止して透光性樹脂層8を形成する。透光性樹脂層8は、上述のように、略直方体の形状で形成される。このとき、後に遮光性樹脂で遮光壁22が形成できるように、発光素子2と受光素子5の間に凹部を有するように透光性樹脂層8を形成する。透光性樹脂層8に形成する凹部は、幅が少なくとも0.4mm以上であり、凹部の底面の位置が発光素子2の天面より低い位置になるように形成される。次に、光透過箇所9を除いて、透光性樹脂層8の上から遮光性樹脂によって樹脂封止して、透光性樹脂層8を覆うように遮光性樹脂層10を形成する。ここで、先ほど形成した透光性樹脂層8の凹部に遮光性樹脂を流し込むことによって、遮光壁22を形成する。封止方法としては、トランスファーモールドによる熱硬化性樹脂による成型が一般的であるが、インジェクションモールド、ポッティングなどによる成型であってもよい。
【0051】
そして、遮光性樹脂層10の外表面である天面44を基準として、光学ユニット3が光透過箇所91に、レンズユニット4が光透過箇所92にそれぞれ収まるように、光学部品11を搭載組み立てする。このとき、遮光性樹脂層10の外表面である側面と、光学部品11の外表面である側面とが一致して1つの面45になるように組み立てる。さらに、光学部品11の外表面である天面46、および、上記面45を基準としてカバー6を組み立てる。
【0052】
第1の実施形態に係る光ポインティング装置1は、発光素子2および受光素子5の周囲に形成される透光性樹脂層8を覆う遮光性樹脂層10を有しているので、外乱光および迷光が受光素子5に入射することを防ぐことができる。特に、遮光性樹脂層10が遮光壁22を有していることによって、発光素子2から受光素子5へ直接光が入射することを防ぐことができる。よって、外乱光および迷光の影響を受けない高性能の光ポインティング装置が実現できる。すなわち、本発明では、出射角度が広い発光素子2を使用した場合であっても、迷光の影響を受けない高性能の光ポインティング装置を実現することができる。
【0053】
また、光ポインティング装置1では、遮光性樹脂層10を金型(モールド)によって成型しているため、部品点数を少なくすることができる。部品点数を少なくすることによって、部品の組み立て工程数を減らすことができ、組み立て時に生じる部品の位置ずれ等の誤差が発生する可能性を小さくすることができる。その他にも、1つの基板7上に発光素子2および受光素子5を搭載することによって、ダイボンド、ワイヤボンド等の工程が1工程で行うことができる。また、光学ユニット3およびレンズユニット4が一体成型された光学部品11を用いることによって、組み立て工数を減らすことができる。
【0054】
光ポインティング装置1では、部品点数を少なくすることだけではなく、部品の組み立て時に、遮光性樹脂層10の外表面である天面44を基準として光学部品11を組み立てることや、光学部品11の外表面である天面46、および、面45(遮光性樹脂層10の外表面である側面および光学部品11の外表面である側面)を基準としてカバー6を組み立てている。そのため、光学部品11およびカバー6を組み立てるときに、各部品の位置ずれ等の組み立て誤差が発生することを防ぐことができる。従って、被写体の検知精度が高い光ポインティング装置を実現することができる。それゆえ、高い検知精度が求められる小型・薄型の光ポインティング装置を実現することができる。
【0055】
さらに、光ポインティング装置1では、1つの基板7上に発光素子2および受光素子5を搭載することによって、金型が1つで発光素子2および受光素子5を透光性樹脂または遮光性樹脂によって樹脂封止することができる。そのため、金型面数を少なくすることができ、光ポインティング装置の製造コストを抑えることができる。また、遮光性樹脂層10を、金型を用いて成型するため、材料コストも抑えることができる。
【0056】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、光ポインティング装置の透光性樹脂層を形成する際に、750nm以下の可視光をカットする特性を有する透光性樹脂を使用している。そのため、発光素子から照射される光以外の、太陽光や蛍光灯、白熱灯などの外乱光が受光素子に入射することを防ぐことができる。よって、より外乱光による影響を受けない高性能の光ポインティング装置を実現することができる。第2の実施形態に係る光ポインティング装置は、透光性樹脂層以外の構成は、第1の実施形態に係る光ポインティング装置1と同様である。
【0057】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について図2に基づいて説明する。図2は、第3の実施形態の光ポインティング装置23の概略断面構造図である。第3の実施形態に係る光ポインティング装置23は、第1の実施形態に係る光ポインティング装置1と透光性樹脂層および遮光性樹脂層の構造が異なる。それ以外は、第1の実施形態と同様であるので、ここでは第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0058】
第3の実施形態では、発光素子2および受光素子5を透光性樹脂で樹脂封止する際に、図2に示すように、発光素子2と受光素子5とをそれぞれ個別に樹脂封止する。このとき、後に遮光性樹脂によって遮光壁24を形成するために、発光素子2を覆う透光性樹脂層12の外表面と受光素子5を覆う透光性樹脂層13の外表面との間を少なくとも0.4mm程度空けておく。そして、透光性樹脂層12および13の上から、透光性樹脂層12および13を覆うように、遮光性樹脂で樹脂封止して、遮光性樹脂層25を形成する。また、透光性樹脂層12と透光性樹脂層13との間に遮光性樹脂を流し込むため、少なくとも厚みが0.4mm程度の遮光壁24が形成される。
【0059】
このように発光素子2と受光素子5を分断するように遮光壁24が設けられているので、第3の実施形態では、第1の実施形態と比べて、発光素子2から受光素子5へ直接入射する迷光をより遮断することができる。
【0060】
なお、第3の実施形態でも、第2の実施形態のように、透光性樹脂層12および透光性樹脂層13に750nm以下の可視光をカットする特性を有する透光性樹脂を用いてもよい。
【0061】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態について図3に基づいて説明する。図3は、第4の実施形態の光ポインティング装置26の概略断面構造図である。第4の実施形態に係る光ポインティング装置26は、第1の実施形態に係る光ポインティング装置1と透光性樹脂層および遮光性樹脂層の構造が異なる。それ以外は、第1の実施形態と同様であるので、ここでは第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0062】
第4の実施形態では、図3に示すように、透光性樹脂層27は、遮光性樹脂層28と接する面に、梨地部14を有している。梨地部14は、透光性樹脂層27を成型する際に、表面を荒らした金型を用いて成型する。梨地加工を施した梨地部14の表面粗さの値は、Rz:1μm以上であることが好ましい。また、第4の実施形態では、第1または第3の実施形態の遮光性樹脂層10または25と異なり、遮光性樹脂層28は、発光素子2と受光素子5との間に遮光壁を有していない。
【0063】
発光素子2から照射された光は、ある指向角を有するため、光透過箇所91に向かわず、遮光性樹脂層28で反射する成分がある。遮光性樹脂層10で反射した光は迷光として受光素子5に入射し、光ポインティング装置の誤動作を引き起こす可能性がある。そのため、透光性樹脂層27の光透過箇所9以外に梨地部14を設けることによって、迷光を散乱させることができ、受光素子5への迷光による影響を低減させることができる。換言すると、透光性樹脂層27の遮光性樹脂層28と接する面に梨地加工を施す。
【0064】
なお、第1〜3の実施形態でも、第4の実施形態に示すように、透光性樹脂層が遮光性樹脂層と接する面に梨地部を有していてもよい。
【0065】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態について図4に基づいて説明する。図4(a)および(b)は、第5の実施形態の光ポインティング装置29の概略断面構造図である。第5の実施形態に係る光ポインティング装置29は、第1の実施形態に係る光ポインティング装置1と遮光性樹脂層および光学部品の構造が異なる。それ以外は、第1の実施形態と同様であるので、ここでは第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0066】
光ポインティング装置としての機能を満足させるために、撮像面21を有するカバー6、光学ユニット3、レンズユニット4、発光素子2および受光素子5は、精度良く配置する必要がある。光学設計にもよるが、各部品は、通常±20μm程度の精度をもって配置されることが要求される。
【0067】
光ポインティング装置の部品の中で、光学ユニット3およびレンズユニット4については、光学部品11として一体成型しており、発光素子2および受光素子5についても、同じ基板7上に一体成型しているため、各々の配置精度は確保できる。しかし、光学部品11と発光素子2・受光素子5とは別部品となるため、組み立て時における配置精度の向上が必要となる。
【0068】
そこで、第5の実施形態では、図4(a)に示す例では、遮光性樹脂層30の光学部品31と接する面に凸部15を形成し、凸部15に係合する凹部を光学部品31の遮光性樹脂層30と接する面に形成している。そのため、遮光性樹脂層30の凸部15と光学部品31の凹部とを結合して組み立てることによって、遮光性樹脂層30に覆われた発光素子2および受光素子5と光学部品31とを精度良く配置することができる。
【0069】
なお、図4(b)に示すように、遮光性樹脂層32の光学部品33と接する面に凹部16を形成し、凹部16に係合する凸部を光学部品33の遮光性樹脂層32と接する面に形成しても良い。
【0070】
また、図4(c)に示すように、光学部品31の凹部40に、誘い込みのテーパー41を設けてもよい。誘い込みのテーパー41は、光学部品31の表面側に形成されており、凹部の奥側に比べて開口部が広がっている形状である。図4(d)に示すように、遮光性樹脂層30の凸部42の先端43にC面カット処理を行ってもよい。先端43は、凸部42の先端にある角が削り取られて、凸部42の根元に比べて細くなっている形状である。なお、図示していないが、遮光性樹脂層32の凹部16に、誘い込みのテーパーを設けてもよいし、光学部品33の凸部の先端にC面カット処理を行ってもよい。このように凹部または凸部の形状を加工することによって、遮光性樹脂層と光学部品とを嵌めこみやすくすることができる。
【0071】
また、第5の実施例では、第1の実施例に対して適用する例を示したが、第2〜4の実施例に対しても適用可能である。
【0072】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態について図5に基づいて説明する。図5(a)は、第6の実施形態の光ポインティング装置34の概略断面構造図である。第6の実施形態に係る光ポインティング装置34は、第1の実施形態に係る光ポインティング装置1と透光性樹脂層の構造が異なる。それ以外は、第1の実施形態と同様であるので、ここでは第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0073】
遮光性樹脂層10を形成する際に、光透過箇所9に遮光性樹脂が少しでも漏れこむと、被写体を検知するための、発光素子2から被写体への光または被写体から受光素子5への光が遮られてしまう。その結果、被写体を正常に検知することができなくなってしまう。
【0074】
そこで、光透過箇所9に遮光性樹脂が漏れこまないように、透光性樹脂層35を形成する際に、透光性樹脂層35の光透過箇所9に相当する表面上に、金型押さえ部36を、透光性樹脂を使用して形成する。金型押さえ部36は、後述する遮光性樹脂層10を成型する金型17が備える孔成型部18の内側の側面と金型押さえ部36の側面が嵌め合うように形成される。この金型押さえ部36を透光性樹脂層35に形成することによって、光透過箇所9に遮光性樹脂が漏れこむことを防ぐことができる。なお、金型押さえ部36は、厚みが少なくとも0.15mm程度あることが好ましい。金型押さえ部36の厚みが0.15mm以上の場合、光透過箇所9に遮光性樹脂が漏れこむことを完全に防ぐことができる。
【0075】
第6の実施形態における、遮光性樹脂層10の金型成型フローを図5(b)〜(d)に基づいて説明する。図5(b)は、金型押さえ部36を有する透光性樹脂層35に、遮光性樹脂層10を成型する金型17を合わせる前の状態を示す図である。図示のように、金型17は、遮光性樹脂層10に光透過箇所91である孔を成型するための孔成型部18を有する。金型17を透光性樹脂層35に合わせた状態を図5(c)に示す。図示のように、孔成型部18の間に金型押さえ部36が嵌め合うように金型17を透光性樹脂層35に合わせる。図5(d)は、遮光性樹脂を注入した後の状態を示す図である。図示のように、金型押さえ部36があるため、孔成型部18の間に遮光性樹脂が漏れ込むことを防ぐことができる。
【0076】
なお、図5に示す例では、発光素子2の上方の光透過箇所91に関して説明したが、受光素子5の上方の光透過箇所92についても、透光性樹脂層の表面に金型押さえ部36を形成することによって、同様に、遮光性樹脂が漏れこむことを防ぐことができる。
【0077】
また、第6の実施例では、第1の実施例に対して適用する例を示したが、第2〜5の実施例に対しても適用可能である。
【0078】
(第7の実施形態)
本発明の第7の実施形態について図6および図7に基づいて説明する。図6は、第7の実施形態の光ポインティング装置39の概略斜視図である。第7の実施形態に係る光ポインティング装置39は、第1の実施形態に係る光ポインティング装置1と遮光性樹脂層およびカバーの構造が異なる。それ以外は、第1の実施形態と同様であるので、ここでは第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0079】
透光性樹脂層および遮光性樹脂層を成型する際に、樹脂を注入するゲート(注入口)が必要となる。そのため、金型に樹脂を注入し、樹脂を硬化して金型を外すと、樹脂層が形成されると共に、ゲートの形状で形成された、余分な突起部も形成される。通常、この突起部は、光学部品やカバーを組み立てる際に邪魔になるので、金型を外した後に、削り取られる。
【0080】
そこで、第7の実施形態では、遮光性樹脂層を成型した際に遮光性樹脂の注入口に形成される突起部を、カバーの配置を決定する基準として利用している。図6(a)は、遮光性樹脂層37を成型した後、突起部19を残したままの状態を示す図である。図示のように、遮光性樹脂層37が突起部19を有している。具体的には、遮光性樹脂層37は、第1の実施例と同様に、略直方体の形状である。突起部19は、略直方体の形状であり、遮光性樹脂層37の外表面である側面および基板7の上表面に密着して接している。図6(b)は、図6(a)に示す状態から、光学部品およびカバー38を取り付けた後の状態を示す。図示のように、カバー38は、突起部19を基準として取り付けられている。カバー38は、第1の実施例と同様に、板状の凹状の形状である。カバー38の内表面および外表面ともに、側面は垂直な面であり、天面は水平な面である。カバー38は、遮光性樹脂層37およびその上に配置されている光学部品11を覆うように配置されている。カバー38の底面は、基板7の上表面と密着して接している。
【0081】
第7の実施形態では、突起部に係合するようにカバー38に凹部である位置決め部20が形成されている。その位置決め部20の形状を図7に示す。図7(a)は、カバー38の裏面の斜視図である。また、図7(b)は、図7(a)に示す位置決め部20の部分を拡大した図である。図示のように、カバー38の底面の部分に、突起部19と係合する凹状の位置決め部20が形成されている。
【0082】
突起部19をカバー38の位置決めに使用することによって、突起部19を削り取る作業が必要なくなると共に、カバー38を正確に配置することができる。従って、被写体の検知精度が高い光ポインティング装置39を実現することができる。
【0083】
なお、本実施の形態では、突起部19および位置決め部20を1箇所設けた例を示したが、本発明はこれに限定されない。この突起部19および位置決め部20は、必要に応じて1箇所ではなく数箇所設けても構わない。また、本実施の形態では、突起部19が直方体状であり、位置決め部20が直方体に対応する形状の例を示したが、本発明はこれに限定されない。カバー38を正確に配置できることができるのであれば、突起部19および位置決め部20は、どのような形状であってもよい。
【0084】
また、第7の実施例では、第1の実施例に対して適用する例を示したが、第2〜6の実施例に対しても適用可能である。
【0085】
最後に、光ポインティング装置を搭載した電子機器について、図8を用いて説明する。図8は、光ポインティング装置107を搭載した携帯電話機100の概観を示す図である。図8(a)は携帯電話機100の正面図であり、(b)は携帯電話機100の背面図であり、(c)は携帯電話機100の側面図である。図8では、電子機器として携帯電話機である例を示しているがこれに限定されるものではない。電子機器として、例えば、PC(特にモバイルPC)、PDA、ゲーム機、テレビ等のリモコンなどであってもよい。
【0086】
図8に示すように、携帯電話機100は、モニター側筐体101および操作側筐体102を備える。モニター側筐体101は、モニター部105およびスピーカー部106を含み、操作側筐体102は、マイク部103、テンキー104および光ポインティング装置107を含む。携帯電話機100に搭載される光ポインティング装置107は、上述の第1〜7の実施例で説明した光ポインティング装置の何れも適用可能である。
【0087】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、PCや携帯電話機などの入力装置に利用することができ、特に小型、薄型を要求される携帯機器に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1、23、26、29、34、39、107 光ポインティング装置
2 発光素子
3 光学ユニット
4 レンズユニット
5 受光素子
6、38 カバー
7 基板
8 透光性樹脂層(透光性樹脂)
9、91、92 光透過箇所
10 遮光性樹脂層(遮光性樹脂)
11、31、33 光学部品
14 梨地部
15、42 凸部
16、40 凹部
19 突起部
20 位置決め部
21 撮像面
22、24 遮光壁
36 金型押さえ部
100 携帯電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に光を照射する発光素子と、
上記被写体からの反射光を受光する受光素子と、
上記被写体が接触する撮像面と、
発光素子から照射された光を被写体に向けて屈折させる光学ユニットと、
発光素子から照射されて、被写体から反射した光を集光するレンズユニットと、
上記受光素子において発生する受光電流に基づいて、上記被写体の動きを検知する回路が形成された基板とを備える光ポインティング装置において、
上記発光素子および上記受光素子は、上記基板上に配置されて、透光性樹脂によって樹脂封止されているものであり、
上記透光性樹脂は、さらに、上記発光素子から上記被写体への光の経路および上記被写体から上記受光素子への光の経路を除いて、遮光性樹脂によって樹脂封止されているものであり、
上記光学ユニットおよび上記レンズユニットは、一体成型されているものであることを特徴とする光ポインティング装置。
【請求項2】
上記発光素子と上記受光素子との間に、遮光性樹脂によって形成された遮光壁を有しており、上記遮光壁は、当該遮光壁の下端と上記基板の表面との距離が上記発光素子の高さ以下であることを特徴とする請求項1に記載の光ポインティング装置。
【請求項3】
上記光学ユニットおよび上記レンズユニットを一体成型した光学部品は、上記発光素子および上記受光素子を覆う上記遮光性樹脂の外表面である天面に沿って、当該遮光性樹脂の上に配置されているものであり、
さらに、光学部品は、光学部品の外表面である側面と、遮光性樹脂の外表面である側面とが一致して1つの面が形成されるように配置されているものであり、
上記光学部品の外表面である天面、および上記光学部品および上記遮光性樹脂の外表面である側面で形成された上記面に沿って、上記撮像面を有するカバーを配置することを特徴とする請求項1に記載の光ポインティング装置。
【請求項4】
上記透光性樹脂は、波長が750nm以下である可視光をカットする特性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ポインティング装置。
【請求項5】
上記発光素子および上記受光素子は、それぞれ個別に上記透光性樹脂によって樹脂封止されているものであり、
上記発光素子を覆う透光性樹脂の外表面と上記受光素子を覆う透光性樹脂の外表面とが離れていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ポインティング装置。
【請求項6】
上記発光素子および上記受光素子を覆う上記透光性樹脂の上記遮光性樹脂と接する面は、梨地加工されているものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光ポインティング装置。
【請求項7】
上記遮光性樹脂の上記光学部品と接する面に凹部または凸部が成型され、
上記光学部品の上記遮光性樹脂と接する面に凸部または凹部が成型され、
上記遮光性樹脂に成型された凹部または凸部に、上記光学部品に成型された凸部または凹部を嵌め込んで、上記光学部品を配置することを特徴とする請求項3に記載の光ポインティング装置。
【請求項8】
上記透光性樹脂の上記遮光性樹脂と接する面であって、上記発光素子から上記被写体への光の経路上および上記被写体から上記受光素子への光の経路上の上記透光性樹脂の表面上に、上記透光性樹脂で形成された金型押さえ部を有しており、
上記金型押さえ部は、遮光性樹脂を成型する金型が備える、上記両光の経路を除いて遮光性樹脂を形成するために用いる孔成型部に係合する形状であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光ポインティング装置。
【請求項9】
上記透光性樹脂で覆われた上記発光素子および上記受光素子を遮光性樹脂によって樹脂封止する際に、遮光性樹脂の注入口に形成される突起部を、上記カバーの位置決めに使用するものであり、
上記突起部は、上記遮光性樹脂の側面に位置し、かつ、上記基板の上表面に位置する、略直方体の形状であることを特徴とする請求項3に記載の光ポインティング装置。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光ポインティング装置を搭載した電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−48468(P2011−48468A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194372(P2009−194372)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】