説明

光メモリ及び光入出力制御方法

【課題】モードギャップ型共振器の屈折率を変調することによって、断熱的な波長変換を実現し、その結果導波路との結合が変化することを利用することで、光メモリ、可変な光遅延線、及び高効率な波長変換素子を実現する。
【解決手段】本発明は、波長選択性を持つ反射ミラーによって形成された光共振器を用いた光メモリ、光遅延性、波長変換素子において,共振器の屈折率を変化させる機構を設け、共振器部分の屈折率を共振器の光子寿命よりも早く変化させることによって,共振器に閉じ込められた光を断熱的に変化させ、光の波長を波長選択性を持つ反射ミラーの透過帯域に合わせることによって、共振器内の光の導波路との結合を強め、光の波長を変換しつつ、光を導波路に素早く取り出す。またはその逆の操作を行うことで、光を共振器に閉じ込める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光メモリ及び光入出力制御方法に係り、特に、光通信、光信号処理回路や光量子情報処理で用いられる、全光メモリの光の蓄積及び取り出し、光遅延線の光の遅延及び解放、光波長変換素子からの光の効率的な取り出しを行うための光メモリ及び光入出力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
共振器の光の閉じ込めを表す量としてQ値(QT)が定義されているが、これは導波路に結合しない光損失に起因するQ値(Qv)及び光導波路との結合によって決まるQ値(Qh)の2つの成分に分解することができる。Qvは光の損失に起因するものであり、共振器自身の性能を示す。Qhは共振器と入出力導波路の結合に関するものであり、一般的に共振器と導波路間の距離などのパラメータで制御可能である。これらはQT-1=Qv-1+Qh-1の関係にあり、Qhが低いということは共振器と導波路との結合が強いということである。
【0003】
特にシリコン2次元フォトニック結晶を用いて作成された微小光共振器では、高度なシリコンの作成プロセスを用いることもできるため、非常に高性能なものを実現できるようになっている。例えば、光の閉じ込めの度合いを示すQT (~ Qv) 値が120万の共振器が示されている(例えば、非特許文献1参照)。高Q値共振器は共振器内に捕捉される光子の寿命も長く、QT値が120万の共振器の光子寿命は1nsに対応する。ここで、Q値と光子寿命の関係式をQ=2×π×f(共鳴周波数)×τ(光子寿命)とする。この共振器からの光の入出力はフォトニック結晶導波路を介してチップ面内で行うことができる。さらに共振器のモード体積は極めて小さい(λ/n)3。ここでλは光の波長、nはシリコンの屈折率である。
【0004】
そのため、フォトニック結晶微小光共振器は、小型でチップ上に集積可能な、光子の保持時間が長い光バッファメモリとして用いることが可能である。さらに、高Q値フォトニック結晶微小光共振器を連結することによって、低群速度伝搬による光遅延線が実現できることが知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
共振器を光メモリまたは光遅延線として利用するためには、光子の保持時間や光パルスの遅延量を可変できる必要がある。そのためには高Qv値共振器のQh値を可変できる必要がある。そのための方法として、1つのフォトニック結晶微小光共振器と途中で空気穴の格子定数を変えた導波路を用いた素子の一部の屈折率を変化させて動的にQh値を制御する方法がある(例えば、非特許文献3参照)。
【0006】
一方、動的なQ値制御と物理的に密接に関連する現象として光の波長の断熱的な遷移が挙げられる。共振器ではその共鳴波長に一致した光のみが共振器の内部に存在できる。しかし、光は光子寿命の時間内には共振器の外に漏れ出すことが出来ない。これらを利用して、光が共振器に閉じ込められている光子寿命の時間内に共振器の共鳴波長を変化させると、共振器に閉じ込められている光の波長は共振器の共鳴波長の変化に追随して変化する(例えば、特許文献1参照)。
【非特許文献1】T. Tanabe, M. Notomi, E. Kuramochi, A. Shinya、 and H. Taniyama、 "Trapping and delaying photons for one nanosecond in an ultrasmall high-Q photonic-crystal nanocavity," Nature Photon., Vol. 1, No. 1, 49-52 (2007).
【非特許文献2】E. Kuramochi, T. Tanabe, T. Taniyama, M. Kato, and M. Notomi, "Low loss long coupled resonator optical waveguides realized using ultrahigh-Q photonic crystal resonators," Photonic & electromagnetic Crystal Structures, (PECS VII), A-84、 Montrey, April 8-10, (2007).
【非特許文献3】Y. Tanaka, J. Upham、 T. Nagashima, T. Sugiya, T. Asano、 and S. Noda, "Dynamic control of the Q factor in a photonic crystal nanocavity," Nature Mat. Vol. 6, 862 (2007).
【特許文献1】特開2006−234965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光共振器を光メモリとして用いる場合には、光子寿命が長い高QT値のモード(閉モード)と、光子寿命の短い低QT値のモード(開モード)を、Qhを変えることで切り替える必要があるが、メモリの保持時間は閉モードにおいてどれだけ高QT値が実現できるかによって、動作速度は開モードにおいてどれだけ低QT値が実現できるかによってそれぞれきまる。非特許文献3では動的なQT値制御を実現するために、導波路に隣接する空気穴を3点開けない点欠陥型フォトニック結晶共振器と途中で空気穴の格子定数を変えたフォトニック結晶導波路を組み合わせた構成の素子を用いた方法が示されている。Qhが無限大の場合、QT=Qvとなるので、理想的にQh を無限大にできた場合でも最長保持時間はQv、すなわち、共振器自体の性能によって決まる。非特許文献3に示されている方法では3点欠陥フォトニック結晶共振器のQv によって上限が決まり、実現できている閉モードのQT値は約12,000である。そのため、最長メモリ保持時間は9.9 ps以下に限定されるという問題点がある。逆に開モードでの低QT値は、どこまでQh を低くできるかによって決まるが、導波路に隣接する3点欠陥フォトニック結晶光共振器の導波路との結合距離の構造によって決まっているQh 値以下には下げられないという問題点がある。
【0008】
さらに非特許文献2で示されているデバイスでは、出力光はスラブ上面から取り出しており、全光信号処理を面内で行う用途には適していないという問題点がある。加えて、1つのフォトニック結晶共振器と格子定数を途中で変化させたフォトニック結晶導波路を組み合わせる必要があり、構成も複雑でデバイスサイズも大きいという問題点がある。
【0009】
一方、波長変換デバイスとしては、特許文献1で示されている方法を用いると、非常に微弱な光であっても断熱的に波長を変換可能である。波長を変えるときには光は共振器内に閉じ込められている必要があるので、高い効率で波長変換を実現するためには共振器の光子寿命が長い必要がある。すなわち、なるべく高いQT値をもつ共振器を用いる必要がある。しかし、高QT値共振器を用いると、変換した光はそのまま共振器内に捕捉され続け、素早く導波路に取り出せない問題がある。波長変換後には共振器が自動的に低Qh値となることが望ましい。
【0010】
さらに、非特許文献3で示されている、高Qv値共振器を連結した結合共振器光導波路を用いると、光パルスの伝搬速度を非常に遅くできるため光遅延線として用いることができる。しかし、遅延量は作成時に決まっているので、動的に制御することが出来ないという問題点がある。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、フォトニック結晶において理論でも実験でも最も高いQT値が得られているモードギャップ型微小光共振器を直線状に入出力導波路に結合させる簡潔なデバイス構成にて、動的にQh値を制御可能な光メモリ及び光入出力制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
図1は、本発明の原理構成図である。
【0013】
本発明(請求項1)は、波長選択性のある波長選択性ミラーを全方向または一部方向に配置することによって光を閉じ込めている光共振器を用いた光メモリであって、
光共振器の共鳴波長を該共振器の光子寿命よりも早く変化させる機構を有し、
光共振器101は、
波長選択性ミラー103を介して光導波路102または他の光共振器に結合している光メモリである。
【0014】
また、本発明(請求項2)は、上記の光共振器において、
当該光共振器に共鳴して閉じ込められた光の波長を、断熱的な波長変換手段を機能させることで、波長選択性ミラーの透過波長へ変化させ、該光共振器から導波路に素早く取り出す光読み出し手段を有する光メモリである。
【0015】
また、本発明(請求項3)は、上記の光共振器において、
当該光共振器の共鳴波長を波長選択性ミラーの透過波長に合わせた状態で光を入射し、断熱的波長変換手段を機能させることで、光の波長を該ミラーの禁制帯域へと変化させることによって微小光共振器に光を閉じ込める、光の保持手段を有する光メモリである。
【0016】
また、本発明(請求項4)は、上記の断熱的波長変換手段が、
熱光学効果またはキャリアプラズマ効果または光カー効果または電気光学効果によって、
光共振器の共鳴波長を、該光共振器の光子寿命よりも早く変化させ、該光共振器に共鳴して閉じ込められた光の光波長を変える機能を有する光メモリである。
【0017】
また、本発明(請求項5)は、上記の波長選択性ミラーによって光を閉じ込める光共振器が、光ファイバ、光ファイバグレーティング、細線導波路、または、フォトニック結晶のモードギャップ、または、フォトニックバンドギャップを用いて実現される光メモリである。
【0018】
本発明(請求項6)は、光メモリにおける光入出力制御方法であって、
光共振器の屈折率変化を用いた光メモリにおいて、
波長選択性を有する波長選択性ミラーの透過帯域に一致または近いモードを持つ導波路または共振器の屈折率を高速に変化させ、当該領域を通過する光の波長をモードの波長シフトに伴って断熱的に変化させ、該波長選択性ミラーの禁制帯域に合わせることによって光共振器を形成することにより、光を光共振器に閉じ込める。
【0019】
また、本発明(請求項7)は、光メモリにおいて、
光共振器部分の屈折率を共振器の光子寿命よりも早く変化させ、該光共振器内に閉じ込められている光の波長を、該光共振器の共鳴波長の変化に伴って断熱的に変化させ、波長選択性ミラーの透過帯域に合わせ、該共振器から光を導波路に素早く取り出す。
【0020】
また、本発明(請求項8)は、共振器を直列に連結して低群速度結合共振器光導波路を形成し、
一部の共振器の屈折率を変化させ、該共振器を伝搬中の光パルス波長を、該共振器の共鳴波長の変化に伴って断熱的に変換させることによって、光の波長を低群速度モードから速い群速度モードに変えることで遅延量を可変にする。
【発明の効果】
【0021】
モードギャップ型共振器をシリコンフォトニック結晶中で作成すると、非特許文献1に示すようにQT値が120万の共振器を作製できる。また、理論上はQT値が1億以上のものを作製できる。QT値120万に対応する光子寿命は約1 nsであり、QT値1億以上になると、サブμs程度の光子寿命になる。そのため、本共振器を用いれば閉モードで非常に高いQT値が実現できる。一方、開モードにおいては屈折率変化を十分に大きくとれば、導波路方向への閉じ込め効果は完全に失われるために、低Qh値が元の共振器の構造に制限されることはない。光の入出力はモードギャップ型共振器に直線状に配置した導波路を介して行う。そのため、光はすべて面内を伝播し素子をチップ上に集積可能である。また微小光共振器とそれに直線状に配置した導波路のみで構成されるために、デバイスサイズも小さい。
【0022】
共振器の共鳴波長とバリア層のモードギャップ端のエネルギー差を所望の波長変換量と一致させた状態で、共振器の屈折率を変化させると、波長変換中の光は導波路に漏れだすことができないので非常に高QT値の状態を維持するため波長変換効率が非常に高く、波長変換終了時には共振器の波長がバリアの透過帯域と一致するために光が導波路に結合しやすくなり、低QT値の状態が作り出され、波長変換した光は効率的に導波路に取り出すことができる。
【0023】
モードギャップ型共振器を連結すると結合光共振器導波路が形成され低群速度導波路が実現できる。伝搬中の光パルスの位置に一致するモードギャップ型共振器の屈折率を変化させることによって、バリアの透過帯域に一致させるようにパルスの光波長を変化させると、その波長の光に対しては結合光共振器モードが形成されないので、低群速度モードとならないため、屈折率を変える共振器とタイミングを変えることによって、可変遅延線が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面と共に本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
(1)最初に光メモリの基本構成について説明する。
【0026】
図2は、本発明の光メモリの基本構成図を示す。
【0027】
同図(a)は、光共振器101に入出力導波路102を、バリアとなる波長選択性を持つミラーを介して結合した光メモリまたは光波長変換素子であり、光共振器101の屈折率を変化させる機構を有する。波長選択性を持つ反射ミラーはモードギャップ、または、フォトニックバンドギャップによって実現させる。
【0028】
また、同図(b)に示すように、入出力導波路102は、入力と出力を兼ねても良い。その場合モードギャップ型微小光共振器の反対側の端には全反射ミラーまたは部分反射ミラー、または、バリア103とは透過帯域をずらした波長選択性のあるミラー104を配置する特徴を有する。
【0029】
また、同図(c)に示すように、複数の光共振器101を薄い層の波長選択性ミラー103を介して直列に結合して光遅延線を形成しても良い。
【0030】
(2)光メモリ(または、光遅延線、または光波長変換素子)の構成について説明する。
【0031】
また、さらに、光共振器は、図2(a)(b)で示すように微小光共振器領域101を波長選択性を持つ反射ミラー103で挟み込むか、バリア103とそれとは異なる波長選択性を持つミラーまたは全反射ミラー104の両方を用いて挟み込む光メモリ、または、光遅延線、または、光波長変換素子である。図2(a)の構成でバリア層103がハイパスフィルタの場合の周波数バンド図を図3に示す。バリア層103はハイパスフィルタなので、当該波長の光が存在できない禁制帯aは低エネルギー側に存在する。バリア層103の禁制帯の位置が共振器部分101のそれよりも高い場合、凹型のポテンシャルが形成されるため、光共振器101が形成され、その領域に存在する波長の光はバリア層103に挟まれて閉じ込められる。これは、共振器の共鳴波長に合致した波長を導波路に入力すると、一定時間後入力した光は光共振器内に蓄積されるからである。バリア層103がバンドパスフィルタの場合及びローパスフィルタの場合のポテンシャル図をそれぞれ図3(c)、(d)に示す。モードギャップ型微小光共振器の場合、禁制帯aはモードギャップによって実現させ、フォトニックバンドギャップを用いて光の閉じ込めを実現する光共振器の場合、禁制帯aはフォトニックバンドギャップによって実現させる。
【0032】
(3) 屈折率の変調について説明する。
【0033】
また、本発明では、光メモリ、または、光遅延線、または、光波長変換素子における、共振器部分の熱光学効果、キャリアプラズマ効果又は光カー効果による屈折率変調は、外部から制御光を共振器101に照射することで実現する。キャリアプラズマ効果においては、モードギャップ共振器を挟み込む形で電極を作り、電流注入によってキャリアを注入することによっても実現できる。電極を電気光学効果を実現するために用いても良い。なお、光カー効果、熱光学効果は、キャリアプラズマ効果と同様に、光を共振器に当てることで発現される。キャリアプラズマ効果と熱光学効果は、時間スケールの違いであり、発生したキャリアが屈折率変化を誘発する時間帯ではキャリアプラズマ効果と呼び、キャリアがやがて熱緩和して発生する熱により屈折率変化が誘発される時間帯では熱光学効果と呼ぶ。熱光学効果を高速に生じさせるためにイオン注入による欠陥準位を導入する方法を用いてもよい。
【0034】
(4)共振器から光を導波路に素早く取り出す方法について説明する。
【0035】
光メモリにおいて、波長選択性を持つミラーの透過帯域から異なる波長の共鳴モードを持つ共振器の屈折率を高速に変化させることにより、共振器に捕捉されている光の波長を、共鳴モードのシフトに伴って断熱的に変換させ、波長選択性を持つミラーの禁制帯域に合わせることによって共振器から光を導波路に素早く取り出す。
【0036】
図2(a)の構成でバリア層103がハイパスフィルタの場合の周波数バンド図を図4に示す。共振器の屈折率を変化させる前の周波数バンド図が図4(b)であり、共振器101部分のポテンシャルがバリア層のポテンシャルに比べて低いため、凹型ポテンシャルが形成される。その深さが深いため、光は強く共振器に閉じ込められ、導波路102への光の漏れは小さい。その結果高Qh状態が形成される。共振器の屈折率をキャリアプラズマ効果、または、熱光学効果、または、光カー効果、または、電気光学効果を、強めるかまたは弱めるかによって低下させることにより、共振器の共鳴波長が短波長側(高周波数側)にシフトする。その際に共振器に閉じ込められていた光は共振器の共鳴波長の変化に伴って、断熱的に短波長(高周波数側)にシフトする。
【0037】
その結果、図4(c)に示すように、共振器101に閉じ込められている光の波長(エネルギー)と波長選択制を持つ反射ミラー103の禁制帯(モードギャップ、または、フォトニックバンドギャップ)端の位置の差が小さくなり、光はバリア103を容易に超えられるようになる。その結果共振器101と光導波路102の結合が強くなり、共振器101が低Qhの状態が作り出される。さらに大きな波長シフトを加えていくと、共振器101内の光の共鳴波長はバリア103の禁制帯(モードギャップ、または、フォトニックバンドキャップ)端よりも高くなるので、共振器101の導波路方向への光の閉じ込め効果は完全に失われる。
【0038】
バリア層にハイパスフィルタを用いた場合には、共振器101の屈折率をキャリアプラズマ効果、または、熱光学効果、または、光カー効果、または、電気光学効果を、強めるかまたは弱めることによって上げることにより、光の波長を低周波数側に断熱的に変換させて低Qhの状態を作り出す。
【0039】
バリア層にバンドパスフィルタを用いた場合には、共振器101の屈折率をキャリアプラズマ効果、または、熱光学効果、または、光カー効果、または、電気光学効果を、強めるかまたは弱めることによって、減少させるか上げるかにより、光の波長をバリア層103の透過帯域まで断熱的に変換させることによって低Qhの状態を作り出す。
【0040】
(5)光を共振器に閉じ込める方法について説明する。
【0041】
光共振器の屈折率変化を用いた光メモリにおいて、波長選択性を持つミラーの透過帯域に一致または、近いモードを持つ導波路または共振器の屈折率を高速に変化させることによって、当該領域を通過する光の波長をモードの波長シフトに伴って断熱的に変換させ、波長選択性を持つミラーの禁制帯域に合わせることによって、光共振器を形成し、光を共振器に閉じ込める。
【0042】
バリア層が図4(b)のローパスフィルタの場合、光メモリにおいて、共振器の屈折率を熱光学効果、または、キャリアプラズマ効果、または、光カー効果、または、電気光学効果を用いて、予め低Qhの状態を作り出した状態にて、光を導波路104から共振器部分101に入射させ、光が共振器101に存在するタイミングで、熱光学効果または、キャリアプラズマ効果、または、電気光学効果による方法を用いて共振器部分101の屈折率を上げる。なお、共振器101に当てる光の入射方向は、共振器101を形成したフォトニック結晶スラブに垂直な方向のみでなく、斜め方向でもよく、また、フォトニック結晶面内でもよい。また、当該共振器101に当てる光の波長帯域は、共振器の材料に依存して変える。共振器101の領域に存在した光は、断熱的な波長変換によって低エネルギー(長波長)にシフトし、バリア103が凹型ポテンシャルを形成することによって、共振器101の領域に閉じ込められ、高Qhの状態を作り出す。
【0043】
また、バリア層103にローパスフィルタを用いた場合には、上記に示す方法を用いて予め低Qhを作り出した状態にて、屈折率を低下させることによって高Qhの状態を作り出す。バリア層にバンドパスフィルタを用いた場合には、上記に示す方法を用いて予め低Qhを作り出した状態にて、屈折率を低下または上げることによって、共振器101の領域に存在する光の波長をバリア層103の禁制帯域から断熱的にずらすことによって高Qhの状態を作り出す。
【0044】
(6)波長変換素子の波長変換を高効率化する方法を説明する。
【0045】
共振器101の共鳴波長とバリア層103の禁制帯域の端の波長差(エネルギー差)を所望の波長変換量と一致させ、上記の(4)の方法にて高Qhから低Qhの状態に共振器を変化させる方法を用いることによって、波長変換時には共振器101に捕捉されている光の波長がバリア層103の透過帯域とずれているため高QTを保つことで高効率に波長変換が実現できる状態を作りだし、共振器101に捕捉されている光が所望の波長となったときには、バリア層103の透過帯域と一致するために、共振器101が低QTとなり、波長変換が自動的に収まる代わりに、波長変換された光が導波路104にすばやく取り出せることができる状態を作り出す。
【0046】
(7)光遅延線の遅延量可変化について説明する。
【0047】
微小光共振器を連結させた図2(c)に示す結合共振器光導波路において光パルスが低群速度伝播中に、光パルスが伝播中の箇所の光共振器106に、上記の(6)に示す方法を用いることによって、光パルスの波長を変化させて、高群速度伝播モードに切り替え、遅延量を可変化する方法を実現する。
【0048】
(8) モードギャップ型光共振器の構成について説明する。
【0049】
光メモリのモードギャップ型光共振器は、光ファイバ、光ファイバクレーティング、細線導波路、フォトニック結晶等を用いて構成することができる。
【0050】
光メモリまたは光遅延線または光波長変換素子において、光ファイバを用いて実現する場合、図5(a)に示す様にコア径の異なるファイバを直列に接続して実現する。光ファイバはコア径に依存した透過帯域を持つのでファイバ403のコア径を小さくすることによって、モードギャップを実現できる。モードギャップ共振器となるファイバ401の片の端面は金属蒸着等にて全反射ミラーとしてもよい。光ファイバ401の領域の屈折率はファイバの側面より光を照射することによって変化させる。
【0051】
次に、光ファイバグレーティングを用いて実現する場合は、図5(b)に示す様にモードギャップ光共振器を形成するために領域401の両側に波長選択性をもつ光ファイバグレーティングを形成する。領域401の片端は金属蒸着をした全反射ミラーでもよい。領域401の屈折率はファイバの側面より光を照射することによって変化させる
また、細線導波路を用いて実現する場合は、図5(c)に示すように高屈折率材料をコア406とするリッジ型、または、リブ型導波路を低屈折率材料基板408上に、空気やSiO2などの低屈折率材料をクラッド407として形成し、細線導波路の幅を変えることによってモードギャップ共振器409を実現する。モードギャップ共振器を形成するためにバリア領域の細線にグレーティング構造を形成しても良い。また基板408をモードギャップ共振器409の下部のみ選択的に除去して、下部を低屈折率材料407とする中空構造を取っても良い。モードギャップ共振器409の屈折率は、レーザー光を基板上面よりモードギャップ共振器409の部分に照射することによって変化させる。
【0052】
また、リブ型導波路による半導体素子の場合、図5(c)の部分410にモードギャップ共振器409を挟む形で電極またはP型およびN型半導体領域411を形成し、電流を流す機構を実現することによって、キャリアを注入または除去することによって屈折率を変えてもよい。
【0053】
また、誘電体材料を用いる場合には、電気光学効果を用いて屈折率を変化させても良い。
【0054】
また、フォトニック結晶を用いて実現する場合、図5(d)に示すように高屈折率材料416に周期的に空気などの低屈折率材料からなる穴417を形成したフォトニック結晶上に、1列穴を形成しない線欠陥415を形成し、導波路領域412、バリア領域413、モードギャップ共振器領域414の全部または一部の空気穴をそれぞれ異なる量だけ線欠陥の外側にシフトさせる。バリア領域413の穴シフトを最も小さくすることによって、当該領域413がハイパスフィルタとして動作し、モードギャップ共振器領域414の線欠陥領域にモードギャップ共振器が実現される。
【0055】
モードギャップ共振器領域414にモードギャップ共振器を形成するために、導波路領域412、バリア領域413、モードギャップ共振器領域414の格子定数(穴の間隔)を変える方法及び穴径を変える方法および異なる屈折率材料を用いても良い。
【0056】
また図5(e)に示すように線欠陥415は片側終端されているか、図5(d)の共振器の方側は導波路領域412の領域が無くバリア領域413だけでも良い。モードギャップ共振器領域414の屈折率は、フォトニック結晶スラブ上面より光を照射することによって実現する。
【0057】
また図5(f)に示す様に共振器の両側に電極またはPおよびN型半導体領域を形成してキャリアを注入または除去することによって屈折率を変えても良い。
【0058】
以下、各実施の形態毎に説明する。
【0059】
[第1の実施の形態]
図6は、本発明の第1の実施の形態における素子図及び周波数バンド図である。図6(a)に示すシリコンフォトニック結晶505には、幅変化型フォトニック結晶微小光共振器501、W1.05フォトニック結晶導波路502、W0.98フォトニック結晶線欠陥バリア503が設けられている。
【0060】
図6(a)は、204 nmの厚みのシリコンスラブに直径216 nmの空気穴を格子定数420 nmにて三角格子状に配置したシリコンフォトニック結晶505である。一列空気穴を開けない線欠陥を形成し、その幅を変化させた。W1.05フォトニック結晶導波502の線欠陥W1.05の線欠陥幅は882 nmであり、W0.98フォトニック結晶線欠陥バリア503の線欠陥W0.98の線欠陥幅は823 nmである。幅変化型フォトニック結晶微小光共振器501は外側の穴の列から順番に3、6、9 nmだけ空気穴を線欠陥から離れる方向にシフトさせて非特許文献1に示されている幅変化型のモードギャップ光共振器を実現している。この幅変化型のモードギャップ共振器を用いるとQ値120万を超えるものが実現できる。
【0061】
図6(b)は、共振器部分の屈折率を変化させない場合のエネルギー図であり、モードギャップによって波長選択性(この場合はハイパスフィルタ)のあるミラーによる共振器が実現できていることがわかる。バリア線欠陥W0.98によって、共振器と導波路の結合が低い高Qhの状態になっていることがわかる。ここで、幅変化型フォトニック結晶微小光共振器501の屈折率を低下させることによって、共振器の共鳴波長を短波長側、すなわち高エネルギー側にシフトさせる。すると、共振器の高QTのため共振器に捕捉されていた光の波長は断熱的に短波長シフトし、W0.98バリア導波路503のモードギャップ端に近くなるか又はそれを超える。共振器内の波長とW0.98のモードギャップ端の波長が近くなるとQhが低下する。またそれを超えると共振器の導波路方向への閉じ込め効果はなくなる。これらの状態では、光はW1.05導波路に素早く取り出すことができる。
【0062】
高効率な光書き込み読出し動作を可能にするには、高いQTが必要であり、図6の導波路503の設計によりミラー障壁エネルギーは制御可能である。高いQTにより光子寿命の長い閉じ込めが可能になり、その光子寿命時間範囲内で共振器の透過波長へ変換させ、光の読出しを行うことで、入力と出力の明確な分離操作が可能(メモリ機能が可能)になる。
【0063】
図7は、本発明の第1の形態における異なる屈折率変化を与えた場合の電界分布を示しており、図6(a)で示す構造の幅変化型共振器の電界分布である。但し、線欠陥を挟んでプロファイルは左右対称なので方側のみを示している。
【0064】
図7(a)は、W1.05導波路がなくその領域がW0.98のバリア層のみの場合の電界分布であり、Qv=QT=1.2×108である。W1.05の入出力導波路をつけた場合の電界分布が図7(b)であり、Qh =4.47×106である。共振器部分の屈折率を変化させた場合のモードプロファイルが図7(c)〜(f)であり、光がバリア層を超えてW1.05導波路に伝搬可能になっていることがわかる。
【0065】
図8は、本発明の第1の実施の形態における図7で示す電界分布となる屈折率変化を与えた時のQhを表すグラフであり、屈折率変調に対してQhをプロットしたグラフであり、0.578%の屈折率変調で共振器のQhを2.1×103まで低下可能であることを示している。
【0066】
図9は、本発明の第1の実施の形態での屈折率変化を与える方法を示す図であり、フォトニック結晶スラブの上面より800 nmのパルス光を照射することにより、図6の幅変化型フォトニック結晶微小光共振器501にキャリアを生成する方法を示している。キャリアが生成すると、キャリアプラズマ分散効果によって、共振器部分の屈折率が低下する。
【0067】
共振器のQ値を測定する手法に非特許文献1に示されているリングダウンという方法がある。これは共振器に入射している光の入力を突然切り、その後共振器からの漏れ光を観測し、減衰定数を求めることで光子寿命を時間領域で得る手法である。
【0068】
図10は、本発明の第1の実施の形態における光メモリ読出し動作を示すグラフであり、
図6(a)の構造の幅変化型共振器素子からのリングダウンの信号を測定した結果である。t=-100 psにて入力光を切っている。本共振器からのリングダウンの結果光子寿命は0.36 nsと得られ、その結果よりQT =4.3×105であることがわかった。
【0069】
ここで図9で示す方法により、光パルスを共振器部分にt=0 psのタイミングで照射した。照射直後に出力W1.05導波路における光強度が強まる特異的な現象が観測された。またその後は減衰定数が小さくなり、例えば0.91 pJの光パルスを照射した場合には光子寿命が25 psすなわちQT =2.9×104まで下がることがわかった。照射直後に出力W1.05導波路において光が強まるのは、共振器に閉じ込められていた光が、導波路に直ちに流れ出ることができるようになったためであり、Qhが低下したことを直接的に示している。
【0070】
図11は、本発明の第1の実施の形態における光メモリ読み出し動作を示すグラフである。同図は、上面からの光パルスの照射スポットを2.2 ?mとした場合にy軸を線形表示した場合の出力波形のグラフであり、屈折率を変えた場合には変化させない場合と比較して、顕著な出力光の増加現象が観測されており、Qhを途中で低下させることによる光メモリの取り出し動作が実現できていることがわかる。
【0071】
hの低下が実際に断熱的な波長変換によるものであることを確認するため、はじめに図11の実験条件における場合の透過スペクトルの変化を調べた。図12は、本発明の第1の実施の形態における断熱的波長変換を示す図である。図12(a)は、パルス照射前後の透過スペクトルの変化の様子を示したグラフである。上段はパルス照射前の共振器の透過スペクトルであり、その直下のスペクトルはパルス照射直後の透過スペクトルである。共鳴波長が約0.15 nm短波長側にシフトしていることがわかり、キャリアプラズマ効果による共振器の屈折の低下が実現できていることがわかる。その後200 ps間隔で透過スペクトルを測定するとしだいに共鳴波長が元の長波長側に戻っているが、これはキャリアが消滅するためであり、このことからも共振器の共鳴波長の短波長シフトがキャリアプラズマ分散効果によるものであることが確認された。
【0072】
次に、図11で得られた時間波形をスペクトル分解することで断熱的波長変換の様子を直接的にとらえた。具体的には時間波形を測定する前に分光器を用いてスペクトル分解してそれぞれの波長の時間波形を測定した。その結果が図12(b)と(c)であり、(b)はパルスを当てない場合、(c)はパルスを当てた場合のスペクトル分解時間波形である。このときの入射光の波長は1608.33 nmである。その結果、図12(b)の点線で囲った部分の光が、図12(c)の点線で囲った部分の光へと波長変換していることが直接的に確認できた。t=70 psでの波長軸に沿った断面を表示したのが図12(d)であり、確かに波長が短波長にシフトしている様子が確認された。
【0073】
逆に時間軸に沿って異なる波長での時間波形を示したのが図12(e)である。励起光がない場合の1608.33 nmの光のリングダウン光と比較して励起光がある場合には1608.33nmの光は励起光が照射された直後にほとんどなくなってしまう。逆にそれよりも短波長の1608.20 nmの光は励起光が照射されると直ちに導波路に出力される。その出力の速度は励起光がない場合の減衰時間よりも速い。これらの結果はいずれも、断熱的な波長変換が共振器の屈折率を低下させることによって実現されていることを示している。
【0074】
加えて図12(d)は本デバイスを波長変換素子として鑑みた場合に波長変換効率が極めて高いということを示しており、図12(e)は波長変換後にはQhが低下するため変換光は共振器の元の減衰時間よりも速く導波路に取り出せることを示している。
【0075】
なお、上記では、たまたま材料としてシリコンを用いて説明したが、共振器の波長を変化させることができれば特に材料の制限はない。例えば、Ge、 GaAs、 AlAs、 SiC、 InP、 InAs、 GaP、 GaN、 AlN、 ZnSeもしくはZnOの半導体、またはこれらの半導体のうちいずれか複数の混晶半導体を含む材料を用いても同様の効果が期待できる。
【0076】
[第2の実施の形態]
共振器の共鳴波長を変化させる方法には光パルスを上面から照射する方法以外に、図5(f)の構造を用いて電流注入でキャリアを注入しキャリアプラズマ分散効果を用いる方法を用いても良い。
【0077】
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態では波長を変えるためにキャリアプラズマ効果を用いたが、他に熱光学効果または光カー効果または電気光学効果など共振器の波長を変化させるいかなる現象を用いても同様な効果が期待される。例えば、AlGaAs材料による共振器を作成した場合には、屈折率変調として光カー効果を利用でき、屈折率の上昇と下降をキャリア寿命に制限されることなく自由に調整することができる。
【0078】
[第4の実施の形態]
モードギャップを局所的に変調することにより共振モードを形成する方法は無数にあるが、それらの全てについて同様の効果が期待できる。モードギャップは、1次元、2次元、3次元のフォトニック結晶のいずれにおいても実現可能である。
【0079】
1次元モードギャップを実現する方法の例として、SOI基板上に形成したシリコン細線による方法などがある。
【0080】
他の形態のモードギャップ共振器の例として、図5(d)の412〜414の格子定数を変えることによって形成するヘテロ接合光共振器がある。例えば、導波路領域412とモードギャップ共振器領域414の格子定数を410 nmとし、バリア領域413の格子定数を400 nmとする。さらにモードギャップ共振器領域414の線欠陥に沿った方向の幅は2周期とし、バリアとなるバリア領域413の幅は11周期を最適とするが、この周期や格子定数に限定されるわけではない。また、412〜414の空気穴を変えたり、異なる屈折率材料を使うことによってもモードギャップ共振器を形成できる。
【0081】
さらに、特に基本導波モードの無いギャップ(つまりフォトニックバンドギャップ)を局所的に変調しても共振モードが形成できるが、その場合にも同様な効果が期待できる。図13は、本発明の第4の実施の形態におけるフォトニックギャップ閉じ込めによる共振器を用いる説明図である。同図に示すように、フォトニックバンドギャップを用いる例として、フォトニック結晶線欠陥導波路領域1201の導波路をフォトニック結晶領域1202を挟んで配置する構成が挙げられる。フォトニックバンドギャップ共振器1203の屈折率を変化させることによって、フォトニックバンドギャップの帯域がシフトし、フォトニックバンドギャップ閉じ込めによる共振器が形成される。フォトニック結晶領域1202のフォトニックバンドギャップの帯域を他のフォトニック結晶領域1201から予めずらしておくために、格子定数や穴径などをフォトニック結晶領域1202の一部または全部変えておいても良い。
【0082】
結局、本効果は共振器を閉じ込めるバリア層が波長依存性を持っており、共振器の共振波長を変換することによって、バリア層の閉じ込めが強い波長から閉じ込めが弱い波長へ変換することによって、共振器の閉じ込めの強さを変えている。従って明らかにモードギャップやフォトニックバンドギャップに限らず、透過特性(または反射特性)が鋭い波長依存性やカットオフ特性を持つバリアで構成される共振器においても同様な効果が期待される。
【0083】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において種々変更・応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、光通信、光信号処理、または光量子情報処理で用いられる光メモリ、光遅延線、波長変換に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の原理構成図である。
【図2】本発明の光メモリ基本構成図である。
【図3】図2(a)の基本構成図の周波数バンド図である。
【図4】本発明の動的なQh制御の周波数バンド図である。
【図5】本発明の実施の形態の素子図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態の素子図及び周波数バンド図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の異なる屈折率変化を与えた場合の電界分布である。
【図8】図7で示す電界分布となる屈折率変化を与えた時のQhを表すグラフである。
【図9】本発明の第1の実施の形態での屈折率変化を与える方法を示した図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態での光メモリ読み出し動作を示すグラフである。
【図11】本発明の第1の実施の形態での光メモリ読み出し動作を示すグラフである。
【図12】本発明の第1の実施の形態での断熱的波長変換を示す図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態でのフォトニックバンドギャップ閉じ込めによる共振器を用いる説明図。
【符号の説明】
【0086】
101 モードギャップ共振器
102 光導波路
103 波長選択性を持つ反射ミラーまたはバリア
104 103とは異なる波長選択性を持つミラーまたは全反射ミラーまたは部分反射ミラー
204 禁制帯
401 光ファイバ
402 401及び403よりもコア径の大きい光ファイバ
403 401よりもコア径の小さい光ファイバ
404 全反射金属コーティング
405 ファイバグレーティング
406 高屈折率コア
407 低屈折率クラッド
408 低屈折率基板
409 モードギャップ光共振器
410 406と同じ屈折率をもつ高屈折率材料
411 電極またはP型・N型半導体
412 導波路領域
413 バリア領域
414 モードギャップ共振器領域
415 線欠陥
416 高屈折率スラブ
417 低屈折率穴
501 幅変化型フォトニック結晶微小光共振器
502 W105フォトニック結晶導波路
503 W0.98フォトニック結晶線欠陥バリア
505 フォトニック結晶
1201 フォトニック結晶線欠陥導波路領域
1202 フォトニック結晶領域
1203 フォトニックバンドギャップ共振器
1204 線欠陥
1205 高屈折率スラブ
1206 低屈折率穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長選択性のある波長選択性ミラーを全方向または一部方向に配置することによって光を閉じ込めている光共振器を用いた光メモリであって、
前記光共振器の共鳴波長を該共振器の光子寿命よりも早く変化させる機構を有し、
前記光共振器は、
前記波長選択性ミラーを介して光導波路または他の光共振器に結合していることを特徴とする光メモリ。
【請求項2】
前記光共振器は、
当該光共振器に共鳴して閉じ込められた光の波長を、断熱的な波長変換手段を機能させることで、前記波長選択性ミラーの透過波長へ変化させ、該光共振器から導波路に素早く取り出す光読み出し手段を有する
請求項1記載の光メモリ。
【請求項3】
前記光共振器は、
当該光共振器の共鳴波長を前記波長選択性ミラーの透過波長に合わせた状態で光を入射し、断熱的波長変換手段を機能させることで、光の波長を該ミラーの禁制帯域へと変化させることによって微小光共振器に光を閉じ込める、光の保持手段を有する
請求項1記載の光メモリ。
【請求項4】
前記断熱的波長変換手段は、
熱光学効果またはキャリアプラズマ効果または光カー効果または電気光学効果によって、
前記光共振器の共鳴波長を、該光共振器の光子寿命よりも早く変化させ、該光共振器に共鳴して閉じ込められた光の光波長を変える
請求項3記載の光メモリ。
【請求項5】
前記波長選択性ミラーによって光を閉じ込める前記光共振器は、
光ファイバ、光ファイバグレーティング、細線導波路、または、フォトニック結晶のモードギャップ、または、フォトニックバンドギャップを用いて実現される
請求項1乃至4記載の光メモリ。
【請求項6】
光メモリにおける光入出力制御方法であって、
光共振器の屈折率変化を用いた光メモリにおいて、
波長選択性を有する波長選択性ミラーの透過帯域に一致または近いモードを持つ導波路または共振器の屈折率を高速に変化させ、当該領域を通過する光の波長をモードの波長シフトに伴って断熱的に変化させ、該波長選択性ミラーの禁制帯域に合わせることによって光共振器を形成することにより、光を前記光共振器に閉じ込める
ことを特徴とする光入出力制御方法。
【請求項7】
前記光メモリにおいて、
前記光共振器部分の屈折率を共振器の光子寿命よりも早く変化させ、該光共振器内に閉じ込められている光の波長を、該光共振器の共鳴波長の変化に伴って断熱的に変化させ、前記波長選択性ミラーの透過帯域に合わせ、該共振器から光を導波路に素早く取り出す
請求項6記載の光入出力制御方法。
【請求項8】
前記共振器を直列に連結して低群速度結合共振器光導波路を形成し、
一部の共振器の屈折率を変化させ、該共振器を伝搬中の光パルス波長を、該共振器の共鳴波長の変化に伴って断熱的に変換させることによって、光の波長を低群速度モードから早い群速度モードに変えることで遅延量を可変にする
請求項6記載の光入出力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図7】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−271235(P2009−271235A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120280(P2008−120280)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】