説明

光伝送システムおよび光伝送方法

【課題】安価な構成で長距離伝送ができる光伝送システムおよび光伝送方法を提供する。
【解決手段】送信側に1.3/1.55μm帯波長変換器4を配し、受信側に1.55/1.3μm帯波長変換器5を配して、その間に敷設された既存の1.3μm帯用光ファイバ伝送路(シングルモード光ファイバ(SMF))10を介し、伝送する光パルス信号として、1.3μm帯よりも伝送損失の小さい1.55μm帯の波長を使用した光パルス信号を伝送する。こうすることで、光パルス信号の長距離伝送が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光伝送システムおよび光伝送方法に関し、特に光ファイバを使用して光パルス信号の長距離伝送を行う光伝送システムおよび光伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは大容量の通信が可能で、対ノイズ特性に優れている等の理由から、光ファイバを使用した光通信があらゆる通信分野において急速に普及しつつある。光通信における既存の設備では、通信ケーブルとして波長1.3μm帯の光パルス信号用の1.3μm帯に零分散波長のあるシングルモード光ファイバ(SMF)が多く用いられている。このような光ファイバを使用した光ファイバ伝送システムとして、例えば、1.3μm帯用光ファイバ伝送路の一端(送信端)に波長1.3μm帯の光パルス信号を発信する光源を含んでなる1.3μm帯用の光送信器を配し、伝送路の他端(受信端)に1.3μm帯用の光受信器を配した構成をとる伝送システムが構築できる。
【0003】
上述した伝送システムにおいて、さらに長距離の伝送を行うには、1.3μm帯よりも伝送損失の小さい1.55μm帯の波長を使用することで、信号の長距離伝送が可能となる。この場合の最も簡単な光ファイバ伝送システムとして、例えば、送信側に波長1.55μm帯の光パルス信号を発信する光源を含む1.55μm帯用の光送信器を配し、光信号を1.55μm帯用の光ファイバ伝送路で伝送して、受信側に設けた1.55μm帯用の光受信器でその光信号を受信する光ファイバ伝送システムが構築できる。1.55μm帯用の光ファイバ伝送路としては、例えば、1.55μm帯に零分散波長のある分散シフト光ファイバ(DSF)を使用できる。
【0004】
一方、現在一般に広く敷設されている通信ケーブルは、波長1.3μm帯用のシングルモード光ファイバ(SMF)であるため、1.55μm帯の波長を使用できるように最適化するには、1.55μm帯用の光ファイバを新たに敷設する必要がある。したがって、そのためのシステム構築には多大な時間と費用がかかることになる。
【0005】
このような問題に鑑みてなされた光伝送システムとして、例えば、特許文献1に記載のものがある。この特許文献1には、図5に示すように既存の1.3μm帯用の光ファイバ伝送路を用いて1.55μm帯の伝送を行う光伝送システムの構成が開示されている。具体的には、波長1.55μm帯の光パルス信号を発信する光源111を含む1.55μm帯用の光送信器101と、1.3μm帯用の光ファイバ伝送路103と、1.55μm帯用の光受信器104とで構成されている。この構成により、波長分散の影響による信号劣化の影響を受けるものの、1.3μm帯用の光送受信器を用いた光ファイバ伝送システムに比べて、長距離伝送が可能となる。また、これらの構成に対して各種の波長分散を補償する手段を講じることによって、さらに長距離伝送が可能となる。
【0006】
【特許文献1】特開平7−336300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の光伝送システムでは、波長1.3μm帯よりも伝送損失の低い波長1.55μm帯の光送信器と光受信器を使用しているため長距離伝送が可能となっても、1.55μm帯用の光送信器や光受信器は、既存の1.3μm帯用の光送受信器と比較して価格が高いという欠点がある。したがって、1.55μm帯用の光送信器や光受信器で構成された光ファイバ伝送システムの構築には、多額の費用を要するという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、上述の課題に鑑みてなされたもので、従来の光ファイバ伝送システムを大幅に変更することなく、安価な構成で長距離伝送ができる光伝送システムおよび光伝送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光伝送システムは、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、光パルス信号を送信する光送信器と、光パルス信号を伝送する光ファイバ伝送路と、光パルス信号を受信する光受信器とからなる光伝送システムであって、前記光送信器と前記光ファイバ伝送路との間に配置された第1の波長変換手段と、前記光ファイバ伝送路と前記光受信器との間に配置された第2の波長変換手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
例えば、前記第1の波長変換手段は、前記光送信器から送信された第1の波長の光パルス信号を第2の波長の光パルス信号に波長変換し、前記第2の波長変換手段は、前記光ファイバ伝送路を伝送された前記第2の波長の光パルス信号を前記第1の波長の光パルス信号に波長変換することを特徴とする。
【0011】
例えば、前記第1の波長は1.3μm帯であり、前記第2の波長は1.55μm帯であることを特徴とする。また、例えば、前記光ファイバ伝送路に1.3μm帯シングルモード光ファイバを使用することを特徴とする。
【0012】
例えば、前記光ファイバ伝送路に零分散波長が1.55μmの分散シフト光ファイバを使用することを特徴とする。また、例えば、前記光ファイバ伝送路に所定の物理量の検知・測定を行う検知手段を配したことを特徴とする。さらに、前記光ファイバ伝送路そのものを前記検知手段として機能させることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る光伝送方法は、上記目的を達成するために、例えば、請求項8に記載の発明は、光ファイバ伝送路の一端に光送信器が配され、他端に光受信器を配した光伝送システムにおける光伝送方法であって、前記光送信器から出力された第1の波長の光パルス信号を第2の波長の光パルス信号に波長変換してから前記光ファイバ伝送路に送出し、その光ファイバ伝送路を伝送された前記第2の波長の光パルス信号を前記第1の波長の光パルス信号に波長変換してから前記光受信器に入力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る光伝送システムおよび光伝送方法によれば、例えば、1.3μm帯よりも伝送損失の小さい1.55μm帯の波長を使用した光パルス信号を、所定の特性を有する光ファイバからなる伝送路を伝送することで、光パルス信号の長距離伝送が可能となる。
【0015】
また、本発明によれば、光信号の送信端および受信端それぞれに既存の設備としての光送信器、光受信器を配することで、安価な光パルス信号の伝送システムおよび光伝送方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
<第1の実施の形態例>
図1は、本発明の第1の実施の形態例に係る光伝送システムの全体構成を示すブロック図である。図1に示す光伝送システムにおける光パルス信号の送信側は、1.3μm帯用光送信器1と、この光送信器1の後方に配置され、光送信器1から出力される1.3μm帯の光パルス信号を1.55μm帯の光パルス信号に波長変換する1.3/1.55μm帯波長変換器4とで構成されている。そして、1.3/1.55μm帯波長変換器4で波長変換して得られた1.55μm帯の光パルス信号は、例えば、シングルモード光ファイバ(SMF)からなる1.3μm帯用光ファイバ伝送路10を伝送され、受信側へ到達する。
【0017】
本実施の形態例に係る光伝送システムの送信側に配された1.3μm帯用光送信器1は、1.3μm帯用光源2、光アンプ3、および信号発生器15を備える。この信号発生器15は、伝送しようとする所定周波数のパルス信号を発生し、1.3μm帯用光源2は、例えば、1.3μm帯のレーザ光を連続的に発振する1.3μm帯レーザダイオードからなるため、光源2からは、信号発生器15からの信号で変調された1.3μm帯の光パルス信号が出力される。また、光アンプ3は、光源2の光パルス出力である1.3μm帯の光パルス信号を光増幅する。なお、ここでの信号変調方式は、上記のように光半導体光源であるレーザダイオードの光出力を電気信号で直接変調してもよいし、あるいは、光源からの出力を別途設けた変調器(外部変調器)に導き、そこで変調を行ってもよい。
【0018】
図1に示す光伝送システムの光パルス信号の受信側には、1.3μm帯用光ファイバ伝送路10を伝送されてきた1.55μm帯の光パルス信号を1.3μm帯の光パルス信号に波長変換する1.55/1.3μm帯波長変換器5が配され、その後方には、1.3μm帯用光受信器7が設けられている。この1.3μm帯用光受信器7は、光パルス信号を光増幅する光アンプ8と、例えばレーザダイオードからなる1.3μm帯用受光部9とで構成される。よって、1.55/1.3μm帯波長変換器5で波長変換して得られた1.3μm帯の光パルス信号は、1.3μm帯用光受信器7内の光アンプ8で光増幅された後、1.3μm帯用受光部9に到達する。
【0019】
送信側に配した光アンプ3や受信側に配された光アンプ8として、例えば、コアに希土類のエルビウムを添加したエルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)、あるいは、エルビウムの代わりに同じく希土類のネオジウムを用いてなるネオジウム添加光ファイバ増幅器(NDFA)等を使用することができる。これにより、光アンプ3,8では、入射された励起レーザ(不図示)によって発生したエネルギーが入射光信号に伝達される結果、光パルス信号がそのまま増幅される。
【0020】
なお、光アンプ3,8は、入力された光パルス信号を高効率、高利得、低雑音、かつ低歪で増幅できることが理想であるが、これらの光増幅器における自然放出光による雑音等のパルス信号の劣化が避けられない場合もある。そこで、このような信号劣化を除去するため、光伝送システムの送信端や受信端で波形整形(利得等化)を行ってもよい。
【0021】
送信側に配した1.3/1.55μm帯波長変換器4、および受信側に配した1.55/1.3μm帯波長変換器5として、例えば、エルビウムを添加した光ファイバを利用した波長変換器(ファイバ型光波長変換素子を備える光波長変換器)、化合物半導体増幅器による相互利得変調を用いた波長変換器、高調波発生、和周波発生、あるいは差周波発生を利用した波長変換器等によって構成することができる。波長変換器4,5における波長変換は、これらの変換方式に限定されるものではなく、例えば、比較的低速度の光パルス信号を扱う場合、変換器の中で光パルス信号を一旦、電気信号に変換して増幅し、その電気信号を再びもとの光パルス信号に変換する方法をとってもよい。このような光−電気変換、電気−光変換方式を採用することで、波長変換器を小型化できるため光伝送システムそのものも小型、軽量化することが可能となる。
【0022】
なお、本実施の形態例に係る光伝送システムのように、光パルス信号の伝送路として、1.3μm帯に零分散波長のあるシングルモード光ファイバ(SMF)を使用し、その光ファイバに1.55μm帯の光パルス信号を伝送する場合、波長分散が累積して信号が劣化する。そこで、この分散の影響による光パルス信号の劣化を防止するため、受信側において分散補償や等化増幅等を行ってもよい。
【0023】
以上説明したように、第1の実施の形態例に係る光伝送システムでは、既設の1.3μm帯用光ファイバ伝送路(シングルモード光ファイバ(SMF))を介して、伝送する光パルス信号として、1.3μm帯よりも伝送損失の小さい1.55μm帯の波長を使用した光パルス信号を伝送することで、光パルス信号の長距離伝送が可能となる。その結果、従来の中継器を使用しない場合の光ファイバを介した長距離伝送が40〜50km程度であったのに対して、本実施の形態例に係る光伝送システムを使用することで、伝送距離が150〜200kmの光パルス信号の無中継伝送が可能になる。
【0024】
また、光信号の送信端および受信端それぞれにおける光送信器、光受信器として、既存の設備である1.3μm帯用光送信器および1.3μm帯用光受信器を採用し、この光送信器内の光源としてのレーザダイオードも既存の40km〜50km伝送用のレーザダイオードを使用するとともに、伝送路としても一般に広く敷設された1.3μm帯用光ファイバ伝送路を使用することで、システム全体の構成が安価となる光パルス信号の伝送システムを提供できる。さらには、本実施の形態例に係る光伝送システムにより、敷設されていながら稼動していない、いわゆるダークファイバの有効利用が可能となるため、通信資源・通信設備の有効活用に資することができる。
【0025】
<第2の実施の形態例>
図2は、本発明の第2の実施の形態例に係る光伝送システムの全体構成を示すブロック図であり、図2において、図1に示す第1の実施の形態例に係る光伝送システムと同一構成要素には同一符号を付してある。図2に示す第2の実施の形態例に係る光伝送システムでは、第1の実施の形態例に係る光伝送システムとは異なり、光ファイバ伝送路として1.55μm帯用光ファイバ伝送路を使用している。
【0026】
すなわち、本実施の形態例に係る光伝送システムの光パルス信号の送信側には、1.3μm帯用光送信器1と、この光送信器1からの出力光信号である1.3μm帯の光パルス信号を1.55μm帯の光パルス信号に波長変換する1.3/1.55μm帯波長変換器4とが配されている。そして、この波長変換器4で波長変換された光パルス信号(1.55μm帯の信号)は、例えば、零分散波長を1.55μmにシフトしたシングルモードファイバ(SMF)である分散シフト光ファイバ(DSF)からなる1.55μm帯用光ファイバ伝送路20を伝送された後、受信側へ到達する。
【0027】
図2に示す光伝送システムの光信号の受信側には、1.55μm帯用光ファイバ伝送路20を伝送されてきた1.55μm帯の光パルス信号を1.3μm帯の光パルス信号に波長変換するための1.55/1.3μm帯波長変換器5が設けられ、さらに、この波長変換器5で波長変換された1.3μm帯の光パルス信号を光増幅する光アンプ8と、光アンプ8で増幅された信号を受信する1.3μm帯用受光部9とで構成される1.3μm帯用光受信部7が配置されている。
【0028】
第2の実施の形態例に係る光伝送システムの送信側に配された1.3μm帯用光送信器1は、上述した第1の実施の形態例に係る光伝送システムの送信側と同じ構成、すなわち、1.3μm帯レーザダイオードからなる1.3μm帯用光源2と、1.3μm帯の光パルスを光増幅する光アンプ3と、送信信号の発生部としての信号発生器15とからなる。そのため、ここではそれらの説明を省略する。また、本実施の形態例に係る光伝送システムの受信側に配された光アンプ8と1.3μm帯用光受信器9についても、第1の実施の形態例に係る光伝送システムの受信側と同じ構成をとるため、それらの説明を省略する。
【0029】
このように第2の実施の形態例に係る光伝送システムでは、光信号の送信端と受信端それぞれにおける光送信器、光受信器として、既存の設備である1.3μm帯用光送信器および1.3μm帯用光受信器を使用し、伝送路として1.55μm帯用光ファイバ伝送路を使用して、1.3μm帯よりも伝送損失の小さい1.55μm帯の波長の光パルス信号を伝送する。こうすることで、新規に光伝送システムを構築する場合等において、新たに敷設された1.55μm帯用の光ファイバを使用した、1.55μm帯の光パルス信号の長距離無中継伝送が可能となる。
【0030】
さらには、1.55μm帯用の光送信器や光受信器が1.3μm帯用の光送受信器と比較して高価であることから、光伝送システムの伝送路として1.55μm帯用光ファイバ伝送路を採用しつつも、光伝送システムの送信端、受信端それぞれには、既存の設備である1.3μm帯用光送信器および1.3μm帯用光受信器を配することで、上述したような長距離伝送を安価なシステム構成で実現できるという利点がある。
【0031】
また、第2の実施の形態例に係る光伝送システムでは、光パルス信号の伝送路として、零分散波長を1.55μmにシフトした光ファイバ(DSF)を使用し、その光ファイバに1.55μm帯の光パルス信号を伝送させていることから、伝送路(光ファイバ)における分散の影響による光パルス信号の劣化がない。そのため、第1の実施の形態例に係る光伝送システムと比較して、より長距離伝送が可能となる。
【0032】
<第3の実施の形態例>
図3は、本発明の第3の実施の形態例に係る光センシングシステムの全体構成を示すブロック図である。この光センシングシステムは、一般的な光通信用ではなく、光ファイバを使用して、例えば、人が立ち入ることのできない遠隔地、あるいはその遠隔地に設置された設備や機器等の温度、圧力、歪み等を検知するためのものである。この光センシングシステムでは、図3に示すように、1.3μm帯用光ファイバあるいは1.55μm帯用光ファイバからなる信号伝送路30の一方の先端部に送信ユニット39が接続され、さらに、その先端部にセンサ(感知器)40が接続されている。この送信ユニット39は、1.3μm帯用光源37と、光アンプ38と、1.3/1.55μm帯波長変換器42とで構成されている。
【0033】
センサ40は、例えば、温度、圧力、歪み等の検知・測定対象に密着させるか、あるいはその近傍に配置することで、所望の検知動作を行わせる。また、センサ40の後方には、そのセンサ40から出力される、例えば1.3μm帯の検知信号(検知・測定結果を示す信号)を1.55μm帯の光パルス信号に波長変換して送信する送信ユニット39が配されている。
【0034】
上記のように波長変換されたセンサ検知信号は、波長1.55μm帯の光パルス信号として信号伝送路30を伝送されて、光センシングシステムの受信側である、例えば観測所や観測基地に配置された1.55/1.3μm帯波長変換器44に到達する。この波長変換器44は、入力された1.55μm帯の光パルス信号(センサ検知信号)を1.3μm帯の光パルス信号に波長変換する。波長変換後の信号は、1.3μm帯の光パルス信号を光増幅する光アンプ48と、増幅された信号を受信処理するための、例えばレーザダイオードからなる1.3μm帯用受光部49とで構成された1.3μm帯用光受信器41に入力される。そして最終的に、1.3μm帯用光受信器41で受信された、センサ40における検知・測定信号としての光パルス信号は、必要なデータ解析等のために光電変換部(O/E)45において所定の電気信号に変換される。
【0035】
なお、第3の実施の形態例に係る光センシングシステムにおける波長変換器42,44、光アンプ38,48、受光部49等の内部構成は、上述した第1の実施の形態例等における波長変換器、光アンプ、受光部等と同じであるため、ここではそれらの説明を省略する。
【0036】
<第4の実施の形態例>
図4は、本発明の第4の実施の形態例に係る光センシングシステムの全体構成を示すブロック図である。本実施の形態例に係る光センシングシステムは、光ファイバそのものをセンサとして利用したシステムである。すなわち、光センシングシステムの送信側には、1.3μm帯用光源32と、光アンプ33と、計測用の信号を発生する信号発生器65とからなる1.3μm帯用光送信器31が配され、この光送信器31の後方には、光送信器31から出力される1.3μm帯の光パルス信号を1.55μm帯の光パルス信号に波長変換する1.3/1.55μm帯波長変換器34を配置する。
【0037】
変換された波長1.55μm帯の光パルス信号は、光カプラ61を介して、1.3μm帯用光ファイバあるいは1.55μm帯用光ファイバ50を伝送路として伝送され、その光ファイバ50の各地点においてレーリ散乱、ラマン散乱、ブリルアン散乱等の各種の散乱光が発生する。光ファイバ50は、検知・測定対象である山岳や海底、あるいは各種の構造物に密着させたり、それらの近傍に配置される。そこで、このように配された光ファイバ50に対して、外部から物理的な圧力等が印加されると散乱光強度に変化が生じる。そして、散乱光は、再び光ファイバ50を伝送され、光カプラ61を介して受信側に到達する。
【0038】
図4に示す光センシングシステムの受信側には、光ファイバ50を伝送されてきた1.55μm帯の光パルス信号を1.3μm帯の光パルス信号に波長変換する1.55/1.3μm帯波長変換器35が設けられている。この1.55/1.3μm帯波長変換器35で波長変換して得られた1.3μm帯の光パルス信号は、その後方に設けられた1.3μm帯用光受信器51内の光アンプ53で光増幅され、増幅された信号は、光電変換部(不図示)を含む1.3μm帯用光受信器55において、信号解析等のために所定の電気信号に変換される。
【0039】
なお、第4の実施の形態例に係る光センシングシステムにおける光源32、波長変換器34,35、光アンプ33,53等の内部構成は、上述した第1の実施の形態例等における光源、波長変換器、光アンプ等と同じであるため、ここではそれらの説明を省略する。また、通常、光ファイバセンサにおける検出方式は、透過型と反射型に大別されるが、ここでは、いずれの方式であってもよい。さらには、光カプラ61の代わりに、例えば送信波を透過し、受信波を反射する機能を有するフィルタを配置してもよい。
【0040】
以上説明したように、図3に示す第3の実施の形態例に係る光センシングシステムでは、伝送路である光ファイバの先端部に配したセンサで検知した結果から、また、図4に示す第4の実施の形態例に係る光センシングシステムでは、散乱光強度の変化や光ファイバ自体の変形等による波長の変化(光の干渉現象)、あるいはその周波数スペクトルから、それぞれ観測対象の温度や歪み等を算出することができる。特に図4に示す光センシングシステムの場合、散乱光の周波数スペクトルが歪みに比例してシフトする現象を利用し、散乱光を定常的に観測することで、離れた位置にある観測地点の温度、圧力、歪み、振動等を連続的に計測することができる。例えば、散乱光の受信端への帰還時間から位置計測ができ、散乱光の周波数から歪みを計測できる。
【0041】
また、光ファイバを利用した圧力センサは、電気や磁気による影響を受けないという利点があるため、従来の電気的なセンサでは測定できなかった零囲気における温度や振動等の測定が可能となり、上述した光センシングシステムにおいて伝送路(光ファイバ)に波長変換器を配することで、150〜200km離れた観測地点のデータを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施の形態例に係る光伝送システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態例に係る光伝送システムの全体構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態例に係る光センシングシステムの全体構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態例に係る光センシングシステムの全体構成を示すブロック図である。
【図5】従来の光伝送システムの構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
1 1.3μm帯用光送信器
2,37 1.3μm帯用光源
3,8,33,38,48,53 光アンプ
4,34,42 1.3/1.55μm帯波長変換器
5,35,44 1.55/1.3μm帯波長変換器
7 1.3μm帯用光受信器
9 1.3μm帯用受光部
10 1.3μm帯用光ファイバ伝送路
15 信号発生器
30 信号伝送路
32 光源
39 送信ユニット
40 センサ(感知器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光パルス信号を送信する光送信器と、光パルス信号を伝送する光ファイバ伝送路と、光パルス信号を受信する光受信器とからなる光伝送システムであって、
前記光送信器と前記光ファイバ伝送路との間に配置された第1の波長変換手段と、
前記光ファイバ伝送路と前記光受信器との間に配置された第2の波長変換手段とを備えることを特徴とする光伝送システム。
【請求項2】
前記第1の波長変換手段は、前記光送信器から送信された第1の波長の光パルス信号を第2の波長の光パルス信号に波長変換し、前記第2の波長変換手段は、前記光ファイバ伝送路を伝送された前記第2の波長の光パルス信号を前記第1の波長の光パルス信号に波長変換することを特徴とする請求項1に記載の光伝送システム。
【請求項3】
前記第1の波長は1.3μm帯であり、前記第2の波長は1.55μm帯であることを特徴とする請求項2に記載の光伝送システム。
【請求項4】
前記光ファイバ伝送路に1.3μm帯シングルモード光ファイバを使用することを特徴とする請求項3に記載の光伝送システム。
【請求項5】
前記光ファイバ伝送路に零分散波長が1.55μmの分散シフト光ファイバを使用することを特徴とする請求項3に記載の光伝送システム。
【請求項6】
前記光ファイバ伝送路に所定の物理量の検知・測定を行う検知手段を配したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光伝送システム。
【請求項7】
前記光ファイバ伝送路そのものを前記検知手段として機能させることを特徴とする請求項6に記載の光伝送システム。
【請求項8】
光ファイバ伝送路の一端に光送信器が配され、他端に光受信器を配した光伝送システムにおける光伝送方法であって、
前記光送信器から出力された第1の波長の光パルス信号を第2の波長の光パルス信号に波長変換してから前記光ファイバ伝送路に送出し、その光ファイバ伝送路を伝送された前記第2の波長の光パルス信号を前記第1の波長の光パルス信号に波長変換してから前記光受信器に入力することを特徴とする光伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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