説明

光伝送装置及び光伝送装置を備える装置

【課題】 波長の変動を伴う光線を、光源から受光素子まで伝送する装置において、光線の波長の変動に応じて受光素子上の光線が照射される位置が変化することを抑制する。
【解決手段】 光伝送装置は、光線を受け入れ且つ光線を発射するための光学素子であり、それが受け入れる光線とそれから発射される光線との間の偏向角が、波長の変化に応じて変化する、光学素子と、光線を受け入れ且つ光線を発射するための補償光学素子であり、それが受け入れる光線とそれから発射される光線との間の補償偏向角が、波長の変化に応じて変化する、補償光学素子とを有し、光学素子と補償光学素子とは、光源と受光素子との間で光学的に直列に配置され、波長の増加に応じて偏向角は第一方向に変化し、波長の増加に応じて補償偏向角は第二方向に変化して、受光素子上の光線が照射される位置が、波長の増加に応じて変化することが抑制されるよう、偏向角の第一方向の変化は補償偏向角の第二方向の変化により補償される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、波長の変動を伴う光線を、光源から受光素子まで伝送するための光伝送装置、当該光伝送装置が組み込まれた、相対移動可能な対象物の表面と光学素子との間の距離の変化を測定するための装置、及び、当該光伝送装置が組み込まれた、対象物(例えば、記録媒体)の表面の少なくても一部を露光するための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ISOM 1998 予稿集pd−07:Deep UV mastering using an all-solid-state 266nm laser for an over 20GB/layer capacity disk は、第一光線を対物レンズを介して記録ディスクに照射し、記録ディスクにより反射された第一光線が受光素子に受け入れられる位置から、対物レンズと記録ディスクとの間の位置関係を測定しつつ、第二光線を対物レンズを介して記録ディスクに照射して記録ディスクを露光する装置を開示する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、光線の波長の変動に応じて受光素子上の光線が照射される位置が変化することが抑制されて、光線を光源から受光素子まで確実且つ効率的に伝送するための光伝送装置、光線の波長の変動に係わらず相対移動可能な対象物の表面と光学素子との間の距離の変化を正確に測定するための装置、或いは、光線の波長の変動に係わらず対象物(例えば、記録媒体)の表面の少なくても一部を確実に露光するための装置を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段とその作用】本発明によれば、波長の変動を伴う光線を、光源から受光素子まで伝送するための光伝送装置は、光線を受け入れ且つ光線を発射するための光学素子であり、それが受け入れる光線とそれから発射される光線との間の偏向角が、波長の変化に応じて変化する、光学素子と、光線を受け入れ且つ光線を発射するための補償光学素子であり、それが受け入れる光線とそれから発射される光線との間の補償偏向角が、波長の変化に応じて変化する、補償光学素子とを有し、光学素子と補償光学素子とは、光源と受光素子との間で光学的に直列に配置され(光学素子から対象物に至り、対象物により反射された後に光学素子に戻る場合を含む)、波長の増加に応じて偏向角は第一方向に変化し、波長の増加に応じて補償偏向角は第二方向に変化して、受光素子上の光線が照射される位置が、波長の増加に応じて変化することが抑制されるよう、偏向角の第一方向の変化は補償偏向角の第二方向の変化により補償される。偏向角の第一方向の変化は補償偏向角の第二方向の変化により補償されて、受光素子上の光線が照射される位置が、波長の変化に応じて変化することが抑制されるので、光線の波長の変動により光学素子の偏向角が変化しても、光線を光源から受光素子まで確実且つ効率的に伝送する。
【0005】光学素子が受け入れる光線と、光学素子から発射される光線と、補償光学素子が受け入れる光線と、補償光学素子から発射される光線とは、一つの仮想平面上を進行するよう、光学素子と補償光学素子とが配置されても良い。光学素子はレンズであっても良い。補償光学素子はプリズム、回折格子或いはレンズであっても良い。
【0006】光線が所定の角度を備えて通過する仮想平面上において、光線の波長増加(減少)に応じて偏向角が変化することに起因する光線が仮想平面を通過する位置の変化の方向(第一方向)と、光線の波長増加(減少)に応じて補償偏向角が変化することに起因する光線が仮想平面を通過する位置の変化の方向(第二方向)とは相対するよう、光学素子と補償光学素子とが配置されることが、偏向角の第一方向の変化が補償偏向角の第二方向の変化により補償されるために有効である。
【0007】補償光学素子は、光学素子から発射された光線を受け入れ、受光素子に向けて光線を発射するよう配置される、即ち、光線の進行方向において、補償光学素子は、光学素子の下流側に配置されることが、好適である。
【0008】偏向角の第一方向の変化に応じて受光素子上で光線が照射される位置が変化する方向と、補償偏向角の第二方向の変化に応じて受光素子上で光線が照射される位置が変化する方向とは、相対するよう、光学素子と補償光学素子とが配置されることが、偏向角の第一方向の変化が補償偏向角の第二方向の変化により補償されるために有効である。
【0009】光学素子が受け入れる光線と、光学素子から発射される光線と、補償光学素子が受け入れる光線と、補償光学素子から発射される光線とは、一つの仮想平面上を進行するよう、光学素子と補償光学素子とは配置され、光線の進行方向に見て、第一方向と第二方向とは相対するよう、光学素子と補償光学素子とが配置されることが、偏向角の第一方向の変化が補償偏向角の第二方向の変化により補償されるために有効である。
【0010】光学素子は、対象物に対面するようにされて、光学素子から発射された光線が、対象物により反射された後、受光素子に受け入れられても良い。光学素子がレンズである時は、レンズがその回りで対称形状である対称軸線に沿って、光線が進行することを防止するようにレンズが配置されることが、波長の変化に応じた偏向角の変化のための必要条件である。光源から発射された光線を集束光に変換するための補助レンズを有し、補助レンズから発射された集束光が光学素子に受け入れられるよう補助レンズが配置されても良い。光学素子と対象物とは相対的に移動可能である時、光学素子から対象物まで進行する光線の方向が、光学素子と対象物との間の相対移動の方向と平行であることを防止するよう、光学素子が配置されることが、光学素子と対象物との間の相対移動に応じた受光素子上の光線が照射される位置の変化のための必要条件である。
【0011】光学素子は移動可能であり、光学素子の移動に応じて受光素子上の光線が照射される位置が変化しても良い。光学素子における光線の屈折角と回折角との少なくても一方と、補償光学素子における光線の屈折角と回折角との少なくても一方とが、波長の変化に応じて変化しても良い。補償光学素子は、凸レンズと凹レンズとの対を有し、光線が凹レンズから発射された後に凸レンズに受け入れられるよう凸レンズと凹レンズとは配置され、凸レンズに対面する凹レンズの表面の曲率と凹レンズに対面する凸レンズの表面の曲率は、そこから光線が発射される凸レンズの表面の曲率より大きくても良い。
【0012】本発明による、相対移動可能な対象物の表面と光学素子との間の距離の変化を測定するための装置は、光線の波長の変動を伴って光線を発生するための光源と、対象物の表面により反射された光線を受け入れて、対象物の表面と光学素子との間の距離の変化に対応する受光素子上の光線が照射される位置の変化を測定するための、受光素子と、光線を受け入れ且つ光線を発射するための補償光学素子であり、それが受け入れる光線とそれから発射される光線との間の補償偏向角が、波長の変化に応じて変化する、補償光学素子とを有し、光学素子は、光線を受け入れ且つ光線を対象物の表面に向けて発射するように配置され、光学素子が受け入れる光線と光学素子から発射される光線との間の偏向角が、波長の変化に応じて変化し、光学素子と補償光学素子とは、光源と受光素子との間で光学的に直列に配置され、波長の増加に応じて偏向角は第一方向に変化し、波長の増加に応じて補償偏向角は第二方向に変化して、偏向角の第一方向の変化は補償偏向角の第二方向の変化により補償されて、受光素子上の光線が照射される位置が、波長の増加に応じて変化することが抑制される。偏向角の第一方向の変化は補償偏向角の第二方向の変化により補償されて、受光素子上の光線が照射される位置が、波長の変化に応じて変化することが抑制されるので、光線の波長の変動に係わらず、受光素子上の光線が照射される位置の変化は相対移動可能な対象物の表面と光学素子との間の距離の変化に正確に対応し、対象物の表面と光学素子との間の距離を正確に測定することができる。
【0013】光学素子から対象物まで進行する光線の方向が、光学素子と対象物との間の相対移動の方向と平行であることを防止するよう、光学素子が配置されることが、光学素子と対象物との間の相対移動に応じた受光素子上の光線が照射される位置の変化のための必要条件である。受光素子上の光線が照射される位置の変化は、受光素子上の所望の位置(例えば、受光素子の測定原点)と受光素子上の光線が実際に照射される位置との差であっても良い。
【0014】偏向角の第一方向の変化に応じて受光表面上で光線が照射される位置が変化する方向と、補償偏向角の第二方向の変化に応じて受光表面上で光線が照射される位置が変化する方向とは、相対すること、及び/又は、光線が所定の角度を備えて通過する仮想平面上において、光線の波長増加(減少)に応じて偏向角が変化することに起因する光線が仮想平面を通過する位置の変化の方向と、光線の波長増加(減少)に応じて補償偏向角が変化することに起因する光線が仮想平面を通過する位置の変化の方向とは相対するよう、光学素子と補償光学素子とが配置されることが、偏向角の第一方向の変化が補償偏向角の第二方向の変化により補償されるために有効である。
【0015】本発明の、対象物の表面の少なくても一部を露光するための装置は、波長の変動を伴う第一光線を発生するための第一光源と、第二光線を発生するための第二光源と、第一光線と第二光線とを受け入れ且つ第一光線と第二光線とを対象物の表面に向けて発射するための光学素子であり、対象物の表面と光学素子とは相対移動可能であり、光学素子が受け入れる第一光線と光学素子から発射される第一光線との間の偏向角が、第一光線の波長の変化に応じて変化し、光学素子から発射される第二光線の焦点を対象物の表面の少なくても一部に合わせて対象物の表面の少なくても一部を露光する、光学素子と、対象物の表面により反射された第一光線を受け入れて、対象物の表面と光学素子との間の距離の変化に対応する受光素子上の第一光線が照射される位置の変化を測定するための、受光素子と、第一光線を受け入れ且つ第一光線を発射するための補償光学素子であり、それが受け入れる第一光線とそれから発射される第一光線との間の補償偏向角が、第一光線の波長の変化に応じて変化する、補償光学素子と、測定された受光素子上の第一光線が照射される位置に応じて、光学素子を移動させるための位置決め機と、を有し、光学素子と補償光学素子とは、光源と受光素子との間で光学的に直列に配置され、第一光線の波長の増加に応じて偏向角は第一方向に変化し、第一光線の波長の増加に応じて補償偏向角は第二方向に変化して、偏向角の第一方向の変化は補償偏向角の第二方向の変化により補償されて、受光表面上の第一光線が照射される位置が、波長の増加に応じて変化することが抑制される。偏向角の第一方向の変化は補償偏向角の第二方向の変化により補償されて、受光素子上の光線が照射される位置が、波長の変化に応じて変化することが抑制されるので、光線の波長の変動に係わらず、受光素子上の光線が照射される位置の変化は相対移動可能な対象物の表面と光学素子との間の距離の変化に正確に対応し、対象物の表面と光学素子との間の距離の変化及び/又は対象物の表面と光学素子との間の距離を正確に測定することができる。従って、正確に測定された対象物の表面と光学素子との間の距離の変化に応じて光学素子を移動させて、及び/又は、正確に測定された対象物の表面と光学素子との間の距離に応じて光学素子を移動させて、対象物の表面と光学素子との間の距離を所望の程度に保持して及び/又は対象物の表面と光学素子との間の距離を所望の程度まで変化させ、光線の波長の変動に係わらず対象物(例えば、記録媒体)の表面の少なくても一部を確実に露光する
【0016】偏向角の第一方向の変化に応じて受光表面上で光線が照射される位置が変化する方向と、補償偏向角の第二方向の変化に応じて受光表面上で光線が照射される位置が変化する方向とは、相対すること、及び/又は、光線が所定の角度を備えて通過する仮想平面上において、光線の波長増加(減少)に応じて偏向角が変化することに起因する光線が仮想平面を通過する位置の変化の方向と、光線の波長増加(減少)に応じて補償偏向角が変化することに起因する光線が仮想平面を通過する位置の変化の方向とは相対するよう、光学素子と補償光学素子とが配置されることが、偏向角の第一方向の変化が補償偏向角の第二方向の変化により補償されるために有効である。
【0017】位置決め機は、受光素子上の所望の位置と受光素子上の第一光線が実際に照射される位置との差(測定された受光素子上の第一光線が照射される位置の変化)を減少させるように光学素子を移動させることが好適である。受光素子上の所望の位置は、対象物の表面と光学素子との間の所望の距離に対応しても良い。
【0018】光学素子が受け入れる第一光線と光学素子から発射される第一光線との間の偏向角の変化は、光学素子が受け入れる第二光線と光学素子から発射される第二光線との間の偏向角の変化より大きいこと、及び/又は、第一光源が発生する第一光線の波長の変動は、第二光源が発生する第二光線の波長の変動より大きいことが、第二光線の対象物表面上での焦点合わせに際しての誤差を減少させるために有効である。第二光線の波長が300nm以下である時、補償光学素子による第一光線に対する補償が重要である。
【0019】
【発明の実施の形態】〈第1実施形態例〉図1に示すように、本実施形態例に係る光ディスク原盤露光装置は、フォーカス制御用光2の入射光学系が、フォーカス制御用光源1と、補正レンズ3と、ダイクロミックミラー4と、対物レンズ5と、光ディスク原盤9とから構成され、フォーカス制御用光2(図1においては、その光軸のみが示されている)の検出光学系が、光ディスク原盤9と、対物レンズ5と、ダイクロミックミラー4と、補正レンズ3と、フォーカス制御用光2の波長変動に応じた対物レンズ5の屈折率変化による対物レンズ5における光線進行方向の変化を補償する光学補償素子としての色収差補正用プリズム7と、色収差補正用プリズム7によって波長変動に応じた進行方向変化が補償されたフォーカス制御用光2を受光する光検出器8とから構成されている。また、露光用光10の入射光学系が、露光用光源20と、ミラー11と、ダイクロミックミラー4と、対物レンズ5と、光ディスク原盤9とをもって構成されている。前記色収差補正プリズム7としては、約30度の頂角を有するものが用いられる。前記色収差補正プリズム7は、対物レンズ5の光線の波長変動に応じた屈折率変化特性と著しく異ならない光線の波長変動に応じた屈折率変化特性を有することが好適であり、株式会社オハラのBSL,FPL,FSL,APL,NSL,ZSL,BALの各シリーズのほか、石英ガラス等も用いることができる。露光用光9としては、高密度記録を実現するため、波長が300nm以下のレーザ光を用いることが特に好ましい。
【0020】光検出器8は、図2に示すように、受光面は第1の受光面8aと第2の受光面8bとを有し、第1の受光面8aが受ける受光量と第2の受光面8bが受ける受光量との差に対応する信号が差動増幅器12により出力され、当該差動増幅器12の出力信号を減少させるように、対物レンズ5に備えられたフォーカスサーボアクチュエータ6が駆動される。なお、光検出器8は、一列を成す3以上の受光面、或いは各列が2以上の受光面を有する複数列の受光面を有しても良い。
【0021】露光用光10が光ディスク原盤9の表面に塗布されたフォトレジスト樹脂9aの表面上に焦点を合わされるよう対物レンズ5がフォトレジスト樹脂9aに対して位置決めされる時、光検出器8の中心にフォーカス制御用光2が入射するようにフォーカス制御用光2の検出光学系がセットされ、第1及び第2の受光面8a,8bの受光量が等しくなって差動増幅器11からの出力信号はゼロとなり、フォーカスサーボアクチュエータ6は駆動されない。露光用光10が光ディスク原盤9の表面に塗布されたフォトレジスト樹脂9aの表面上に焦点を合わされず光ディスク原盤9の内側で焦点を合わされるよう対物レンズ5がフォトレジスト樹脂9aに対して不適切に位置決めされる時、フォーカス制御用光2が第1の受光面8a側に主として受け入れられるため、第1の受光面8aの受光量が第2の受光面8bの受光量よりも大きくなって差動増幅器12から正の値の信号が出力される。露光用光10が光ディスク原盤9の表面に塗布されたフォトレジスト樹脂9aの表面上に焦点を合わされず光ディスク原盤9の外側で焦点を合わされるよう対物レンズ5がフォトレジスト樹脂9aに対して不適切に位置決めされる時、フォーカス制御用光2が第2の受光面8b側に主として受け入れられるため、第2の受光面8bの受光量が第1の受光面8aの受光量よりも大きくなって差動増幅器12から負の値の信号が出力される。差動増幅器12の出力信号がゼロになるようにフォーカスサーボアクチュエータ6を駆動することにより、露光用光10をフォトレジスト樹脂9aの表面上に焦点を合わせることができる。
【0022】図9に示されるように、フォーカス制御用光源1により発生されたフォーカス制御用光2の波長が発光強度の変動や環境温度の変動によって変動し、対物レンズ5の屈折率が変化して、フォーカス制御用光2が光ディスク原盤9の表面上で反射する位置が移動して、実線で示されるフォーカス制御用光2の進行方向から破線で示されるフォーカス制御用光2の進行方向に、フォーカス制御用光2の進行方向がずれる時、ずれたフォーカス制御用光2の進行方向は、光検出器8に対するフォーカス制御用光2の入射位置が変化することを防止するように、フォーカス制御用光2の波長の変動に応じて屈折率が変化する色収差補正用プリズム7によって修正される。よって、フォーカス制御用光2の波長が変化するにもかかわらず、露光用光10をフォトレジスト樹脂9aの表面上に焦点を合わせることができる。
【0023】〈第2実施形態例〉図3aと図3bに示される本実施形態例に係る光ディスク原盤露光装置においては、第1実施形態例に係る光ディスク原盤露光装置においてフォーカス制御用光源1を色収差補正用プリズム7の垂直方向に離したのに対して、フォーカス制御用光源1を色収差補正用プリズム7の水平方向に離した。
【0024】〈第3実施形態例〉図4に示す本実施形態例に係る光ディスク原盤露光装置においては、第1実施形態例及び第2実施形態例に係る光ディスク原盤露光装置がフォーカス制御用光2の波長変動に起因するフォーカス位置変動の補償する補償光学素子として色収差補正用プリズム7を備えたのに対して、補償光学素子として色収差補正回折格子13を備えた。
【0025】前記色収差補正回折格子13は、必要となる回折方向におけるフォーカス制御用光2の回折効率を高めるため、ブレーズを有する回折格子を用いることが特に好ましい。色収差補正回折格子13の回折方向は、図4に示すように、色収差補正用プリズム7を用いた場合の屈折方向と反対方向にする。これは、屈折角は、通常、波長が長くなるにしたがって小さくなるのに対して、回折角は、波長が長くなるにしたがって大きくなるためである。
【0026】フォーカス制御用光源1により発生されたフォーカス制御用光2の波長が発光強度の変動や環境温度の変動によって変動し、対物レンズ5の屈折率が変化して、フォーカス制御用光2が光ディスク原盤9の表面上で反射する位置が移動して、フォーカス制御用光2の進行方向がずれる時、ずれたフォーカス制御用光2の進行方向は、光検出器8に対するフォーカス制御用光2の入射位置が変化しないように、フォーカス制御用光2の波長の変動に応じて回折率が変化する色収差補正用回折格子13によって修正される。よって、フォーカス制御用光2の波長が変化するにもかかわらず、露光用光10をフォトレジスト樹脂9aの表面上に焦点を合わせることができる。
【0027】〈第4実施形態例〉図5に示すように、本実施形態例に係る光ディスク原盤露光装置は、補償光学素子としてとして、色収差補正レンズ14を備えた。前記色収差補正レンズ14は、凸レンズ15と凹レンズ16とからなる。凸レンズ15は、屈折率が比較的小さくかつ波長変化に応じた屈折率変化が小さい硝材、例えば株式会社オハラのFPL,FSL,APLシリーズをもって形成され、凹レンズ16は、屈折率が大きくかつ波長変化に応じた屈折率変化が大きい硝材、例えば株式会社オハラのBSM、PBM、PBH、TPHシリーズをもって形成される。また、凸レンズ15の第1面15aの曲率に対して、当該凸レンズ15の第2面15bの曲率並びに前記凹レンズ16の第1面16aの曲率が大きくなっており、波長変動に応じたフォーカス制御用光2の進行方向のずれを修正する。
【0028】フォーカス制御用光源1により発生されたフォーカス制御用光2の波長が発光強度の変動や環境温度の変動によって変動し、対物レンズ5の屈折率が変化して、フォーカス制御用光2が光ディスク原盤9の表面上で反射する位置が移動して、フォーカス制御用光2の進行方向がずれる時、ずれたフォーカス制御用光2の進行方向は、光検出器8に対するフォーカス制御用光2の入射位置が変化しないように、フォーカス制御用光2の波長の変動に応じて屈折率が変化する色収差補正レンズ14によって修正される。よって、フォーカス制御用光2の波長が変化するにもかかわらず、露光用光10をフォトレジスト樹脂9aの表面上に焦点を合わせることができる。
【0029】上記光ディスク原盤露光装置において、フォーカス制御用光源1として、発振されるレーザ光の波長が640nm(定格値)のフォーカス制御用半導体レーザユニットを用い、補正レンズ3として焦点距離が100mmの凸レンズを用い、対物レンズ5として焦点距離が約2mmでレンズNAが0.9の対物レンズを用いた。感光用光源としては、任意の波長の光を発振するレーザを用いることもできるが、高密度記録を実現するため、波長が300nm以下の露光用光10を発振するガスレーザや固体レーザを用いることが特に好ましい。また、色収差補正プリズム7として、約30度の頂角を有し、株式会社オハラの硝材BSL−7をもって形成されたものを用いた。
【0030】第一実施例においては、半導体レーザユニット1から発振されたビーム径が約1.5mmのフォーカス制御用光2を、レンズ光軸からオフセットした位置で補正レンズ3に入射し、わずかに集束していく集束光に変換した。この集束光は、ダイクロミックミラー4で反射され、対物レンズ5により光ディスク原盤9上に当てられ、光ディスク原盤6で反射され、対物レンズ5、ダイクロミックミラー4を通って補正レンズ3に戻る。フォーカス制御用光2は、色収差補正プリズム7に到達し、当該色収差補正プリズム7を通過したフォーカス制御用光2は、当該色収差補正プリズム7から約100mm離された光検出器8に入射した。
【0031】図6から明らかなように、光学補償素子を備える本発明の光ディスク原盤露光装置においては、フォーカス制御用光2の波長変動を生じさせる温度変化(10℃)により、対物レンズのjust focus位置と対物レンズの実際の位置との差と光検出器8の出力信号との関係が変化することが防止されている。
【0032】図7に示すように、光学補償素子を備えない時は、温度変化(10℃)により、対物レンズのjust focus位置と対物レンズの実際の位置との差と光検出器8の出力信号との関係が変化する。
【0033】発光強度の変化に起因する光検出器8の出力信号変化は、受光面8a、8bにおける受光量の総和と受光面8a、8bの一方の受光量との比率を出力する、いわゆるAGC回路により抑制されても良い。
【0034】(第5実施形態例)図10に示す本発明の光ディスク原盤露光装置は、対物レンズ6に向かうフォーカス制御光2を集束光に変換する補正レンズ3aと対物レンズ5から戻って光検出器8により受けられるフォーカス制御光2を集束光に変換する補正レンズ3bとを有している。
【0035】本発明の露光装置に組み込まれる距離測定装置に使用される光伝送装置は、図8に示されるように、対象物上での反射を伴わずに、光源100から受光素子103まで光を伝送するための装置であっても良い。光源100が発生した光線は、光学素子101と、補償光学素子102を介して受光素子103に到達する。光学素子101の偏向角θ1は光線の波長の変化(例えば増加)に応じて第一方向に変化し、補償光学素子102の補償偏向角θ2は光線の波長の変化に応じて第二方向に変化する。受光素子103上の光線が照射される位置が、波長の変化に応じて変化することが抑制されるよう、偏向角θ1の第一方向の変化は補償偏向角θ2の第二方向の変化により補償され、偏向角θ1の第一方向の変化に応じて受光素子上で光線が照射される位置が変化する方向と、補償偏向角θ2の第二方向の変化に応じて受光素子上で光線が照射される位置が変化する方向とは、相対する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態例に係る光ディスク原盤露光装置を示す概略図。
【図2】本発明の光ディスク原盤露光装置に使用可能な光検出器の概略図。
【図3】(a)部は、第2実施形態例に係る光ディスク原盤露光装置を示す概略側面図であり、(b)部は、原盤露光装置を示す概略正面図。
【図4】第3実施形態例に係る光ディスク原盤露光装置を示す概略図。
【図5】第4実施形態例に係る光ディスク原盤露光装置を示す概略図。
【図6】補償光学素子による補償を伴った場合の、受光素子上の光線で照射される位置に応じた受光素子の出力と、対物レンズが光ディスクの表面上で光線の焦点を合わせる時の対物レンズのjust focus位置と対物レンズの実際の位置との差と、光源の温度変化(光線の波長変化)との間の関係の実験結果を示す線図。
【図7】補償光学素子による補償を伴わない場合の、受光素子上の光線で照射される位置に応じた受光素子の出力と、対物レンズが光ディスクの表面上で光線の焦点を合わせる時の対物レンズのjust focus位置と対物レンズの実際の位置との差と、光源の温度変化(光線の波長変化)との間の関係の実験結果を示す線図。
【図8】本発明による光伝送装置の概略図。
【図9】フォーカス制御用光の波長変化に応じた対物レンズの屈折率変化による、フォーカス制御用光の進行方向変化を示す概略図。
【図10】第5実施形態例に係る光ディスク原盤露光装置を示す概略図。
【符号の説明】
1 フォーカス制御用光源
2 フォーカス制御用光
3 補正レンズ
4 ダイクロミックミラー
5 対物レンズ
6 フォーカスサーボアクチュエータ
7 色収差補正用プリズム
8 光検出器
8a,8b 受光面
9 光ディスク原盤
10 露光用光
11 ミラー
12 差動増幅器
13 色収差補正回折格子
14 色収差補正レンズ
15 凸レンズ
16 凹レンズ
100 光源
101 光学素子
102 補償光学素子
103 受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 波長の変動を伴う光線を、光源から受光素子まで伝送するための光伝送装置であり、光線を受け入れ且つ光線を発射するための光学素子であり、それが受け入れる光線とそれから発射される光線との間の偏向角が、波長の変化に応じて変化する、光学素子と、光線を受け入れ且つ光線を発射するための補償光学素子であり、それが受け入れる光線とそれから発射される光線との間の補償偏向角が、波長の変化に応じて変化する、補償光学素子とを有し、光学素子と補償光学素子とは、光源と受光素子との間で光学的に直列に配置され、波長の増加に応じて偏向角は第一方向に変化し、波長の増加に応じて補償偏向角は第二方向に変化して、受光素子上の光線が照射される位置が、波長の増加に応じて変化することが抑制されるよう、偏向角の第一方向の変化は補償偏向角の第二方向の変化により補償される、光伝送装置。
【請求項2】 光学素子が受け入れる光線と、光学素子から発射される光線と、補償光学素子が受け入れる光線と、補償光学素子から発射される光線とは、一つの仮想平面に沿って進行するよう、光学素子と補償光学素子とが配置される、請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項3】 光学素子はレンズである、請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項4】 補償光学素子はプリズムである、請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項5】 補償光学素子は回折格子である、請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項6】 補償光学素子はレンズである、請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項7】 光線が所定の角度を有して通過する仮想平面上において、光線の波長増加に応じて偏向角が変化することに起因する光線が仮想平面を通過する位置の変化の方向と、光線の波長増加に応じて補償偏向角が変化することに起因する光線が仮想平面を通過する位置の変化の方向とは相対するよう、光学素子と補償光学素子とが配置される、請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項8】 補償光学素子は、光学素子から発射された光線を受け入れ、受光素子に向けて光線を発射するよう配置される、請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項9】 偏向角の第一方向の変化に応じて受光素子上で光線が照射される位置が変化する方向と、補償偏向角の第二方向の変化に応じて受光素子上で光線が照射される位置が変化する方向とは、相対する、請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項10】 光学素子が受け入れる光線と、光学素子から発射される光線と、補償光学素子が受け入れる光線と、補償光学素子から発射される光線とは、一つの仮想平面上を進行するよう、光学素子と補償光学素子とは配置され、光線の進行方向に見て、第一方向と第二方向とは相対する、請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項11】 光学素子は、対象物に対面するようにされて、光学素子から発射された光線が、対象物により反射された後、受光素子に受け入れられる、請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項12】 光学素子はレンズであり、レンズがその回りで対称形状である対称軸線に沿って、光線が進行することを防止するように配置される、請求項11に記載の光伝送装置。
【請求項13】 更に、光源から発射された光線を集束光に変換するための補助レンズを有し、補助レンズから発射された集束光が光学素子に受け入れられるよう補助レンズが配置される、請求項11に記載の光伝送装置。
【請求項14】 光学素子と対象物とは相対的に移動可能であり、光学素子から対象物まで進行する光線の方向が、光学素子と対象物との間の相対移動の方向と平行であることを防止するよう、光学素子が配置される、請求項11に記載の光伝送装置。
【請求項15】 光学素子は移動可能であり、光学素子の移動に応じて受光素子上の光線が照射される位置が変化する、請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項16】 光学素子における光線の屈折角と回折角との少なくても一方と、補償光学素子における光線の屈折角と回折角との少なくても一方とが、波長の変化に応じて変化する、請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項17】 レンズは、凸レンズと凹レンズとの対を有し、光線が凹レンズから発射された後に凸レンズに受け入れられるよう凸レンズと凹レンズとは配置され、凸レンズに対面する凹レンズの表面の曲率と凹レンズに対面する凸レンズの表面の曲率は、そこから光線が発射される凸レンズの表面の曲率より大きい、請求項6に記載の光伝送装置。
【請求項18】 相対移動可能な対象物の表面と光学素子との間の距離の変化を測定するための装置であり、波長の変動を伴う光線を発生するための光源と、対象物の表面により反射された光線を受け入れて、対象物の表面と光学素子との間の距離の変化に対応する受光素子上の光線が照射される位置の変化を測定するための、受光素子と、光線を受け入れ且つ光線を発射するための補償光学素子であり、それが受け入れる光線とそれから発射される光線との間の補償偏向角が、波長の変化に応じて変化する、補償光学素子とを有し、光学素子は、光線を受け入れ且つ光線を対象物の表面に向けて発射するように配置され、光学素子が受け入れる光線と光学素子から発射される光線との間の偏向角が、波長の変化に応じて変化し、光学素子と補償光学素子とは、光源と受光素子との間で光学的に直列に配置され、波長の増加に応じて偏向角は第一方向に変化し、波長の増加に応じて補償偏向角は第二方向に変化して、偏向角の第一方向の変化は補償偏向角の第二方向の変化により補償されて、受光素子上の光線が照射される位置が、波長の増加に応じて変化することが抑制される、装置。
【請求項19】 光学素子から対象物まで進行する光線の方向が、光学素子と対象物との間の相対移動の方向と平行であることを防止するよう、光学素子が配置される、請求項18に記載の装置。
【請求項20】 偏向角の第一方向の変化に応じて受光素子上で光線が照射される位置が変化する方向と、補償偏向角の第二方向の変化に応じて受光素子上で光線が照射される位置が変化する方向とは、相対する、請求項18に記載の装置。
【請求項21】 対象物の表面の少なくても一部を露光するための装置であり、波長の変動を伴う第一光線を発生するための第一光源と、第二光線を発生するための第二光源と、第一光線と第二光線とを受け入れ且つ第一光線と第二光線とを対象物の表面に向けて発射するための光学素子であり、対象物の表面と光学素子とは相対移動可能であり、光学素子が受け入れる第一光線と光学素子から発射される第一光線との間の偏向角が、第一光線の波長の変化に応じて変化し、光学素子から発射される第二光線の焦点を対象物の表面の少なくても一部に合わせて対象物の表面の少なくても一部を露光する、光学素子と、対象物の表面により反射された第一光線を受け入れて、対象物の表面と光学素子との間の距離の変化に対応する受光素子上の第一光線が照射される位置の変化を測定するための、受光素子と、第一光線を受け入れ且つ第一光線を発射するための補償光学素子であり、それが受け入れる第一光線とそれから発射される第一光線との間の補償偏向角が、第一光線の波長の変化に応じて変化する、補償光学素子と、測定された受光素子上の第一光線が照射される位置の変化に応じて、光学素子を移動させるための位置決め機と、を有し、光学素子と補償光学素子とは、光源と受光素子との間で光学的に直列に配置され、第一光線の波長の増加に応じて偏向角は第一方向に変化し、第一光線の波長の増加に応じて補償偏向角は第二方向に変化して、偏向角の第一方向の変化は補償偏向角の第二方向の変化により補償されて、受光表面上の第一光線が照射される位置が、波長の増加に応じて変化することが抑制される、装置。
【請求項22】 光学素子から対象物まで進行する第一光線の方向が、光学素子と対象物との間の相対移動の方向と平行であることを防止するよう、光学素子が配置される、請求項21に記載の装置。
【請求項23】 偏向角の第一方向の変化に応じて受光表面上で第一光線が照射される位置が変化する方向と、補償偏向角の第二方向の変化に応じて受光表面上で第一光線が照射される位置が変化する方向とは、相対する、請求項21に記載の装置。
【請求項24】 受光素子上の第一光線が照射される位置の変化は、受光素子上の所望の位置と受光素子上の第一光線が実際に照射される位置との差であり、位置決め機は、当該差を減少させるように光学素子を移動させる、請求項21に記載の装置。
【請求項25】 光学素子が受け入れる第一光線と光学素子から発射される第一光線との間の偏向角の変化は、光学素子が受け入れる第二光線と光学素子から発射される第二光線との間の偏向角の変化より大きい、請求項21に記載の装置。
【請求項26】 第一光源が発生する第一光線の波長の変動は、第二光源が発生する第二光線の波長の変動より大きい、請求項21に記載の装置。
【請求項27】 第二光線の波長は300nm以下である、請求項21に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2001−101705(P2001−101705A)
【公開日】平成13年4月13日(2001.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−220507(P2000−220507)
【出願日】平成12年7月21日(2000.7.21)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)