説明

光伝送路接続装置

【課題】光ファイバ同士を恒久的に接続した状態で、光ファイバの伸縮によりメカニカルスプライスとホルダとの間で光ファイバに断線や過剰撓みが生じることを防止する。
【解決手段】光伝送路接続装置10は、一対の光ファイバを互いに接続可能なメカニカルスプライス40と、一対の心線収容部材を保持する一対のホルダ42と、メカニカルスプライスを所定位置に支持するスプライス支持部44と、ホルダを所定位置に支持する一対のホルダ支持部46と、接続準備状態において、一対の光ファイバ心線の末端領域の、メカニカルスプライスとホルダとの間に延びる中間部分を、所定撓み範囲で撓ませる一対の撓み形成部84とを備える。各撓み形成部84は、各光ファイバ心線の中間部分に接触して所定撓み範囲における最小撓みを中間部分に生じさせる作用位置と、各光ファイバ心線の中間部分に接触しない非作用位置との間で移動可能な第1の可動部材86を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれに光ファイバを有する一対の光伝送路ユニットを互いに接続する光伝送路接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの接続技術において、一対の光ファイバ心線(すなわち被覆付き光ファイバ)の所定の末端領域内で被覆を部分的に除去された一対の光ファイバ同士を、それぞれの先端面を互いに同軸に突き合わせた状態で、融着や接着を行なわずに構成部品の把持力により恒久的に接続できる光ファイバ接続装置が、例えば「メカニカルスプライス」の呼称で知られている。また、光ファイバ心線を絶縁外被に収容してなる光ケーブルに適用可能な接続装置として、メカニカルスプライスと、メカニカルスプライスによって光ファイバ同士が接続されている一対の光ケーブルの絶縁外被を引張等の外力に抗して固定的に保持する一対のホルダとを備えた光伝送路接続装置が知られている。なお、光ケーブル等の、光ファイバ心線と、光ファイバ心線を少なくとも部分的に収容する心線収容部材(光ケーブルでは絶縁外被)とを有する組立体を、本願で「光伝送路ユニット」と総称する。
【0003】
例えば特許文献1は、「外被2A,2Bが外被把持部4,5で把持された光ファイバケーブルF1,F2の口出しされた光ファイバ1A,1Bの端部同士を互いに突き合わせた状態で接続する光ファイバ接続器100であって、ハウジング10、口出しされた光ファイバ1A,1Bの端部を挟持する挟持部材7、挟持部材を挟むバネ部材、外被把持部4、5を搭載しハウジング10内にガイドするガイド20、30、外被把持部4、5をハウジング10とともに拘束する拘束カバー60、70、挟持部材を離間した状態に保持しハウジング10の延在方向に沿って配置される挿入ユニット、外被把持部4がハウジング10内に収容された場合にガイド20をハウジング10にロックさせるロック手段を備える光ファイバ接続器100」を開示する。
【0004】
特許文献1には、「第1光ファイバ1Aが第2光ファイバ1Bの端部と突き合されると、図10に示すように第1光ファイバ1Aに撓み80が生じる。」、「第1光ファイバ1Aにて撓み80が生じるということは、第1光ファイバ1Aの端部と第2光ファイバ1Bの端部とが突き合されていることを意味する。このため、撓み80が生じることにより、第1光ファイバ1Aの端部と第2光ファイバ1Bの端部とが突き合されていることが確認できたことになる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−145951号公報(要約、段落0047、段落0048)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メカニカルスプライスと一対のホルダとを備えた光伝送路接続装置においては、一般に、一対の光ファイバ同士の接続が完了した後は、メカニカルスプライスと一対のホルダとの間の距離が一定に維持される。したがって、メカニカルスプライスによって光ファイバ同士を恒久的に接続した状態で、環境の温度変化等に起因して光ファイバの伸縮が生じた場合に、メカニカルスプライスと個々のホルダとの間で光ファイバに断線や過剰撓みが生じることを、未然に防止できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、光ファイバに被覆を施してなる光ファイバ心線と光ファイバ心線を少なくとも部分的に収容する心線収容部材とを各々に有する一対の光伝送路ユニットを、互いに接続する光伝送路接続装置において、一対の光ファイバを受容する開位置とそれら光ファイバを挟持して互いに接続する閉位置との間で動作可能なメカニカルスプライスと、一対の心線収容部材をそれぞれに保持する一対のホルダと、メカニカルスプライスを予め定めた位置に支持するスプライス支持部と、スプライス支持部に支持したメカニカルスプライスに対して一対のホルダが直線状に整列するように、一対のホルダのそれぞれを予め定めた位置に支持する一対のホルダ支持部と、一対の光ファイバ心線の末端領域内で被覆を部分的に除去された一対の光ファイバが、スプライス支持部に支持した開位置にあるメカニカルスプライスに先端突き合わせ状態で受容されるとともに、一対の心線収容部材が、それら光ファイバ心線の末端領域を外方へ突出させた部位で、一対のホルダ支持部に支持した一対のホルダにそれぞれ保持されているときに、それら光ファイバ心線の末端領域の、メカニカルスプライスと一対のホルダとの間に延びる中間部分を、予め定めた撓み範囲で撓ませる一対の撓み形成部とを具備し、一対の撓み形成部の各々は、一対の光ファイバ心線の各々の中間部分に接触して撓み範囲における最小撓みを中間部分に生じさせる作用位置と、中間部分に接触しない非作用位置との間で移動可能な第1の可動部材を備えること、を特徴とする光伝送路接続装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様による光伝送路接続装置では、接続準備状態にある一対の光伝送路ユニットに対し、一対の撓み形成部の第1の可動部材を、対応の光ファイバ心線の中間部分に所定撓み範囲内での最小撓みを生じさせる作用位置に配置することができる。この状態で、メカニカルスプライスを開位置から閉位置へ移行させて、両光伝送路ユニットの光ファイバ同士の接続を完了させると、一定の距離を空けたメカニカルスプライスと両ホルダとの間で、両光ファイバ心線の中間部分は、作用位置にある第1の可動部材に支持されて、それぞれに少なくとも最小撓みを維持する。その後、両可動部材を作用位置から非作用位置へ移動させることで、第1の可動部材を対応の光ファイバ心線の中間部分から離隔させて、両光ファイバ心線の中間部分を、それぞれに少なくとも最小撓みを確保しながら、メカニカルスプライスと両ホルダとの間の空間に非拘束状態で張り渡すことができる。したがって、光伝送路接続装置によれば、メカニカルスプライスが光ファイバ同士を恒久的に接続した状態で、環境の温度変化等に起因して光ファイバが長さ方向へ収縮した場合に、光ファイバ心線の中間部分に確保している最小撓みがそのような収縮を吸収するから、メカニカルスプライスと個々のホルダとの間で光ファイバが断線することを、未然に防止できる。また、メカニカルスプライスによる光ファイバ同士の接続完了後に、環境の温度変化等に起因して光ファイバが長さ方向へ伸びた場合に、少なくとも最小撓みが確保されている光ファイバ心線の中間部分が所定撓み範囲の最大撓みに至るまでさらに撓むことができるから、メカニカルスプライスと個々のホルダとの間で光ファイバに、所定撓み範囲を超える過剰撓みが生じること、及び過剰撓みによる信号伝送損失が生じることを、未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による光伝送路接続装置の斜視図である。
【図2】図1の光伝送路接続装置の分解斜視図である。
【図3】図1の光伝送路接続装置の線III−IIIに沿った概略断面図である。
【図4】図1の光伝送路接続装置を使用可能な光伝送路ユニットの一例を、ホルダと共に示す斜視図であって、(a)〜(c)は、光伝送路ユニットにホルダを取り付ける手順を示す。
【図5】図1の光伝送路接続装置を使用可能な光伝送路ユニットの他の例を、ホルダと共に示す斜視図であって、(a)〜(d)は、光伝送路ユニットにホルダを取り付ける手順を示す。
【図6】図1の光伝送路接続装置の線III−IIIに沿った断面図で、一対の光伝送路ユニットのそれぞれに取り付けた一対のホルダを分離した状態で示す。
【図7】図1の光伝送路接続装置を、一対の光伝送路ユニットのそれぞれに取り付けた一対のホルダを装着した接続準備状態で示す斜視図である。
【図8】図7の光伝送路接続装置の正面図である。
【図9】図1の光伝送路接続装置が有する第1の可動部材を示す拡大斜視図である。
【図10】図1の光伝送路接続装置を、ホルダを省略した状態で示す一部断面端面図である。
【図11】図1の光伝送路接続装置を用いた光接続方法の一ステップを示す平面図で、(a)及び(b)は、心線被覆除去及びファイバ切断ステップを示す。
【図12】図1の光伝送路接続装置を用いた光接続方法の一ステップを示す部分拡大斜視図である。
【図13】図1の光伝送路接続装置を用いた光接続方法の一ステップを示す部分拡大断面図で、第1の可動部材の機能を示す。
【図14】図1の光伝送路接続装置を用いた光接続方法の一ステップを示す部分拡大断面図で、(a)〜(c)は、第2の可動部材の機能を示す。
【図15】図1の光伝送路接続装置を用いた光接続方法の一ステップを示す斜視図で、(a)〜(c)は、光接続完了に至るスプライス操作部の動作を示す。
【図16】図1の光伝送路接続装置を用いた光接続方法の一ステップを示す部分拡大断面図で、(a)及び(b)は、光接続完了に至る第1の可動部材の動作を示す。
【図17】変形例による光伝送路接続装置を、ホルダを省略した状態で示す分解斜視図である。
【図18】図17の光伝送路接続装置を、ホルダを装着した状態で示す断面図で、(a)及び(b)は、光接続完了に至る動作を示す。
【図19】他の変形例による光伝送路接続装置を、ホルダを省略した状態で示す分解斜視図である。
【図20】図19の光伝送路接続装置を、ホルダを装着した状態で示す断面図で、(a)及び(b)は、光接続完了に至る動作を示す。
【図21】さらに他の変形例による光伝送路接続装置を、ホルダを省略した状態で示す分解斜視図である。
【図22】図21の光伝送路接続装置を、ホルダを装着した状態で示す断面図で、(a)及び(b)は、光接続完了に至る動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1〜図3は、本発明の一実施形態による光伝送路接続装置10を、接続対象の光伝送路ユニットを取り付けていない状態で示す。図4及び図5は、光伝送路接続装置10を使用可能な2種類の光伝送路ユニット12、14をそれぞれに示す。図6は、光伝送路接続装置10を、一対の光伝送路ユニット12を分離した状態で示す。図7及び図8は、光伝送路接続装置10を、一対の光伝送路ユニット12の接続準備状態で示す。光伝送路接続装置10は、光ファイバに被覆を施してなる光ファイバ心線と、光ファイバ心線を少なくとも部分的に収容する心線収容部材とを各々に有する一対の光伝送路ユニット12又は14(図4又は図5参照)を、互いに接続できるものである。
【0011】
なお本願において、「光ファイバ心線」は、光ファイバのクラッド外面に軟質の被覆を施したものを言い、「光ファイバ」は、この被覆を除去したものを言う。また「光ケーブル」は、単心又は多心の光ファイバ心線を抗張力体と共に絶縁外被に内蔵したものを言い、広義で「光コード」も含むものとする。また「光伝送路ユニット」は、例えば光ケーブル等の、光ファイバ心線と、光ファイバ心線を少なくとも部分的に収容する心線収容部材(光ケーブルの場合は絶縁外被)とを有するものを言う。
【0012】
まず、光伝送路接続装置10を使用して光接続可能な光伝送路ユニットの例として、図示の光伝送路ユニット12、14の構成を説明する。図4に示す光伝送路ユニット12は、架空引込線用のドロップ光ケーブルとして使用できる光ケーブルであって、光ファイバ16に被覆18を施してなる単心の光ファイバ心線20と、光ファイバ心線20を全長に渡って収容する心線収容部材22とを備える。光伝送路ユニット(光ケーブル)12の心線収容部材22は、可撓性を有する樹脂製の絶縁外被である。光伝送路ユニット(光ケーブル)12では、光ファイバ心線20は、図示しない抗張力体と共に、心線収容部材(絶縁外被)22に実質的に隙間無く収容される。
【0013】
図5に示す光伝送路ユニット14は、光ファイバ24に被覆26を施してなる光ファイバ心線28であって、例えば図示しない多心光ケーブル等の末端で絶縁外被から露出した1本の光ファイバ心線28と、光ファイバ心線28を予め定めた長さ部分に渡って収容する心線収容部材30とを備える。光伝送路ユニット14の心線収容部材30は、光ファイバ心線28をスリット32に受容して固定的に把持可能な心線把持部34と、心線把持部34に把持された光ファイバ心線28の被把持領域に隣接する後続領域を空洞部分36に収容可能なブーツ部38とを備えている。心線把持部34とブーツ部38とは、熱可塑性エラストマーや合成ゴム等の、それ自体に可撓性を有する材料から、互いに一体に形成できる。心線収容部材30は、心線把持部34のスリット32に光ファイバ心線28の被把持領域を受容した状態で、心線把持部34にスリット32を狭める方向への外力が加わることにより、光ファイバ心線28を心線把持部34に固定して把持できる。この状態で、光ファイバ心線28の被把持領域に隣接する後続領域は、ブーツ部38の空洞部分36に隙間を介して収容される。なお、心線収容部材30と同様の構成を有するものが、本願出願人の先願に係る特願2010−007119号明細書に「光ファイバ心線支持部材」として開示されている。
【0014】
図示の光伝送路接続装置10は、一対の光伝送路ユニット12又は14の光ファイバ16又は24を受容する開位置とそれら光ファイバ16又は24を挟持して互いに接続する閉位置との間で動作可能なメカニカルスプライス40と、一対の光伝送路ユニット12又は14の心線収容部材22又は30をそれぞれに保持する一対のホルダ42と、メカニカルスプライス40を予め定めた位置に支持するスプライス支持部44と、スプライス支持部44に支持したメカニカルスプライス40に対して一対のホルダ42が直線状に整列するように、一対のホルダ42のそれぞれを予め定めた位置に支持する一対のホルダ支持部46とを備えている。
【0015】
メカニカルスプライス40は、中空棒状の本体48と、本体48に内蔵され、光ファイバ16又は24を挟持するべく開閉動作可能な素線固定部材50と、本体48に変位可能に組み付けられ、素線固定部材を開閉動作させる作動部材52とを備える(図2、図6)。素線固定部材50は、アルミニウム等の展性材料からなる板状部材を二つ折りに畳んだ形態を有し、互いに対向する一対の翼部分50aの相互対向面の間に、光ファイバ16又は24を固定的に挟持できるようになっている。本体48は、適当な樹脂材料から作製され、その空洞部分48a(図6)に、素線固定部材50を開閉動作可能な状態で受容できるようになっている。作動部材52は、適当な樹脂材料から作製され、その溝部分52a(図6)に、本体48に受容された素線固定部材50の両翼部分50aを受容できるとともに、その状態で本体48に対し変位することにより、溝部分52aの内壁面が素線固定部材50の両翼部分50aに係合して両翼部分50aを相互接近方向へ押圧できるようになっている。
【0016】
メカニカルスプライス40が開位置にあるときは、作動部材52が本体48から突出した準備位置(図1〜図3、図6〜図8)に置かれ、本体48の空洞部分48aに受容された素線固定部材50の両翼部分50aが、それぞれの挟持面同士を離隔させた状態にある。開位置では、本体48の長手方向両端に形成されたファイバ挿入孔54を通して、素線固定部材50の両翼部分50aの間に、光ファイバ16又は24を円滑に出し入れすることができる。この開位置から、作動部材52を本体48に押し込むように変位させると、作動部材52から素線固定部材50の両翼部分50aに相互接近方向への外力が加わって両翼部分50aが閉じ、メカニカルスプライス40が閉位置に移行する。閉位置では、素線固定部材50の両翼部分50aの挟持面から光ファイバ16又は24に圧力が加わり、それにより光ファイバ16又は24が両翼部分50aの間に強固に固定して挟持される。
【0017】
ホルダ42は、光伝送路ユニット(光ケーブル)12の心線収容部材(絶縁外被)22の末端部分22a(図4)、又は光伝送路ユニット14の心線収容部材30の心線把持部34を、外側から押圧力を加えた状態で保持できる押圧保持部56と、繰返し折曲可能なヒンジ部58を介して押圧保持部56に連結される蓋部60とを備えている。押圧保持部56は、心線収容部材22の末端部分22a又は心線収容部材30の心線把持部34を受容する溝状の凹所62を有し、凹所62を画定する両側壁の相互対向面に、鋸刃状の複数の突条64が形成される(図4、図5)。心線収容部材22の末端部分22a又は心線収容部材30の心線把持部34を、ホルダ42の押圧保持部56の凹所62に嵌入すると、複数の突条64が末端部分22a又は心線把持部34を押圧し、それによりホルダ42が、光伝送路ユニット12又は14の心線収容部材22又は30に実質的に固定される。なお、光伝送路ユニット14にホルダ42を装着する場合には、押圧保持部56の突条64が心線収容部材30の心線把持部34に加える押圧力は、心線把持部34がスリット32に光ファイバ心線28を固定して把持するに十分な大きさである。
【0018】
ホルダ42の蓋部60は、押圧保持部56の凹所62の上端開口を閉じる閉位置と同開口を開放する開位置との間で、ヒンジ部58を中心に回動できる。蓋部60は、閉位置にあるときに、押圧保持部56と協働して、光伝送路ユニット12又は14の心線収容部材22又は30の末端部分22a又は心線把持部34を、凹所62にがたつき無く固定して保持するように作用する。押圧保持部56及び蓋部60には、蓋部60を閉位置にスナップ式に掛止する掛止要素66、68がそれぞれ設けられる(図4、図5)。
【0019】
ホルダ42は、押圧保持部56の凹所62の延長方向に沿って押圧保持部56から外方へ延長される延長部68をさらに備えている。延長部68は、押圧保持部56に保持された光伝送路ユニット12又は14の、心線収容部材22又は30から露出して延長される光ファイバ心線20又は28の露出部分を、予め定めた長さに渡り非接触に包囲するように作用する。上記構成を有するホルダ42は、適当な樹脂材料から全体として一体に形成できる。
【0020】
光伝送路接続装置10は、スプライス支持部44と一対のホルダ支持部46とを有するベース部材72を備える(図2)。ベース部材72は、平面視で略矩形の板状部材であり、その長手方向中央にスプライス支持部44が設けられるとともに、長手方向両端のそれぞれにホルダ支持部46が設けられる。ベース部材72は、スプライス支持部44及びホルダ支持部46の構成要素を含む全体として、適当な樹脂材料から一体に形成できる。
【0021】
スプライス支持部44は、ベース部材72の上面72aにその長手方向へ延びる中心軸線72bに沿って形成される一条の支持溝部分74と、支持溝部分74の長手方向両端に近接してベース部材72の上面72aに形成される二組の支持壁部分76とを有する(図1、図2)。支持溝部分74は、メカニカルスプライス40の本体48の底面を支持する。各組の支持壁部分76は、メカニカルスプライス40の本体48の両側面の長手方向端部領域を支持する。スプライス支持部44は、それら支持溝部分74及び支持壁部分76により、メカニカルスプライス40を、ベース部材72の軸線72bに沿った姿勢で静止支持することができる。
【0022】
一対のホルダ支持部46の各々は、ベース部材72の長手方向端部領域で上面72a側に立設される一対の側板部分78を有する(図1、図2)。それら側板部分78は、ベース部材72の上面72aの両側縁に沿って互いに略平行に配置され、それぞれの相互対向面がベース部材72の上面72aと協働して、ホルダ42をがたつき無く収容可能な凹所80を画定する。各側板部分78には、その一部分として、片持ち梁状に延長される弾性腕82が設けられる。弾性腕82の先端(自由端)には、ホルダ42の外面にスナップ式に係合可能な爪82aが形成される(図2)。ホルダ支持部46は、それら側板部分78及び弾性腕82により、ホルダ42を、スプライス支持部44に支持したメカニカルスプライス40に対して直線状に整列する姿勢で、凹所80に実質的に静止支持することができる。
【0023】
光伝送路接続装置10を使用して一対の光伝送路ユニット12(又は14)を互いに光接続する際には、接続準備状態として、光ファイバ心線20(又は28)の予め定めた末端領域20a(図4)(又は28a(図5))内で被覆18(又は26)を部分的に除去された一対の光ファイバ16(又は24)が、スプライス支持部44に支持した開位置にあるメカニカルスプライス40に先端突き合わせ状態で受容されるとともに、同光伝送路ユニット12(又は14)の一対の心線収容部材22(又は30)が、それら光ファイバ心線20(又は28)の末端領域20a(又は28a)を外方へ突出させた部位(つまり、心線収容部材22の末端部分22a(又は心線収容部材30の心線把持部34))で、一対のホルダ支持部46に支持した一対のホルダ42にそれぞれ保持される(図7、図8)。この接続準備状態では、一対の光伝送路ユニット12(又は14)は光伝送路接続装置10の上で互いに光接続可能な位置に配置されているが、メカニカルスプライス40が開位置にあるので、光ファイバ16(又は24)同士の接続は完了していない。光伝送路接続装置10は、上記接続準備状態において、一対の光ファイバ心線20(又は28)の当該末端領域20a(又は28a)の、メカニカルスプライス40と一対のホルダ42との間に延びる中間部分20b(図4)(又は28b(図5))を、予め定めた撓み範囲で撓ませる一対の撓み形成部84をさらに備えている(図1〜図3)。なお、光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)の撓み範囲は、光ファイバ16(又は24)の曲がりによる機械的損傷や温度変化による信号伝送損失を考慮して、実験等により予め定められるものである。
【0024】
一対の撓み形成部84の各々は、接続準備状態にある各光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)に接触して上記撓み範囲における最小撓みを中間部分20b(又は28b)に生じさせる作用位置と、接続準備状態にある各光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)に接触しない(したがって中間部分20b(又は28b)の撓みを拘束しない)非作用位置との間で移動可能な第1の可動部材86を備えている。第1の可動部材86は、ベース部材72の上面72a側でスプライス支持部44とホルダ支持部46との間に設置される。第1の可動部材86は、その大部分が、作用位置において非作用位置よりも、ベース部材72の上面72aからさらに上方へ離隔して配置されるように構成されている。
【0025】
図9に拡大して示すように、第1の可動部材86は、V溝状の凹部88を有する駒状部材である。第1の可動部材86は、作用位置及び非作用位置並びにそれら位置の間の中間位置において、上記接続準備状態にある一対の光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)を凹部88に受容できるように構成される。凹部88の底端には、光伝送路ユニット12(又は14)の心線収容部材22(又は30)を保持したホルダ42をホルダ支持部46に配置する作業(図12)に際し、光ファイバ心線20(又は28)の末端領域20a(又は28a)内で露出する光ファイバ16(又は24)を、スプライス支持部44に支持したメカニカルスプライス40(特に本体48のファイバ挿入孔54)に向けて案内する案内通路90が形成される。案内通路90には、そのファイバ導入端90aに近接した位置に、作用位置において光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)に当接されて、最小撓みを中間部分20b(又は28b)に生じさせる当接面92が設けられる。図10は、作用位置にある第1の可動部材86の案内通路90及び当接面92と、メカニカルスプライス40のファイバ挿入孔54との位置関係を、ホルダ42を省略した端面図で示す。
【0026】
図示構成では、第1の可動部材86は、作用位置と非作用位置との間で回転可能にベース部材72に設置される。第1の可動部材86には、案内通路90のファイバ導入端90aから離隔した側の一端に、一対の軸受溝94が形成されるとともに、案内通路90のファイバ導入端90aに近接する側の外面に、掛止溝96が形成される(図9)。他方、ベース部材72には、各ホルダ支持部46の一対の側板部分78からスプライス支持部44に向かう方向へ延長される一対の延長板部分98が設けられ、それら延長板部分98の相互対向面に、一対の支軸100がそれぞれ突設される(図2)。それら支軸100は、第1の可動部材86の回転軸線をベース部材72の上面72aに略平行に規定する。第1の可動部材86は、その軸受溝94に対応の支軸100を回動自在に嵌入して、ベース部材72の一対の延長板部分98の間に、支軸100が規定する回転軸線を中心に回転可能な姿勢で受容される。このような回転型の第1の可動部材86は、作用位置では、その底面86aがベース部材72の上面72aに対し鋭角交差するように離隔して配置され(図3)、非作用位置では、底面86aがベース部材72の上面72aに対し略平行するように近接して配置される(図16)。また、両延長板部分98の相互対向面の少なくとも一方には、支軸100から離れた位置に突起102が形成される(図2)。突起102は、第1の可動部材86の掛止溝96に脱離可能にスナップ式に嵌入されて、第1の可動部材86を作用位置に脱離可能に掛止する。
【0027】
一対の撓み形成部84がそれぞれに第1の可動部材86を有する図示の光伝送路接続装置10では、前述した接続準備状態にある一対の光伝送路ユニット12(又は14)に対し、両可動部材86を、対応の光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)に所定撓み範囲内での最小撓みを生じさせる作用位置に配置することができる。この状態で、メカニカルスプライス40を開位置から閉位置へ移行させて、両光伝送路ユニット12(又は14)の光ファイバ16(又は24)同士の接続を完了させると、一定の距離を空けたメカニカルスプライス40と両ホルダ42との間で、両光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)は、作用位置にある第1の可動部材86に支持されて、それぞれに少なくとも最小撓みを維持する。その後、両可動部材86を作用位置から非作用位置へ移動させることで、可動部材86を対応の光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)から離隔させて、両光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)を、それぞれに少なくとも最小撓みを確保しながら、メカニカルスプライス40と両ホルダ42との間の空間に非拘束状態で張り渡すことができる。
【0028】
したがって、光伝送路接続装置10によれば、メカニカルスプライス40が光ファイバ16(又は24)同士を恒久的に接続した状態で、環境の温度変化等に起因して光ファイバ16(又は24)が長さ方向へ収縮した場合に、光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)に確保している最小撓みがそのような収縮を吸収するから、メカニカルスプライス40と個々のホルダ42との間で光ファイバ16(又は24)が断線することを、未然に防止できる。また、メカニカルスプライス40による光ファイバ16(又は24)同士の接続完了後に、環境の温度変化等に起因して光ファイバ16(又は24)が長さ方向へ伸びた場合に、少なくとも最小撓みが確保されている光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)が所定撓み範囲の最大撓みに至るまでさらに撓むことができるから、メカニカルスプライス40と個々のホルダ42との間で光ファイバ16(又は24)に、所定撓み範囲を超える過剰撓みが生じること、及び過剰撓みによる信号伝送損失が生じることを、未然に防止できる。
【0029】
また、第1の可動部材86は、光ファイバ心線20(又は28)の末端で露出する光ファイバ16(又は24)をメカニカルスプライス40に向けて案内する案内通路90を有するとともに、案内通路90に設けた当接面92で光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)に最小撓みを生じさせる構成を有しているから、光伝送路ユニット12(又は14)の心線収容部材22(又は30)を保持したホルダ42をホルダ支持部46に配置する作業に伴い、作業者が意図せずとも安全かつ確実に中間部分20b(又は28b)に最小撓みを生じさせることができる。したがって、作業者の熟練を要することなく、光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)の最小撓みを再現性良く確保することができる。なお、第1の可動部材86の作用位置と非作用位置との間の動作態様は、図示の回転動作に限定されず、例えば後述する直線的な動作を採用することもできる。
【0030】
光伝送路接続装置10においては、後述するように、一対の光伝送路ユニット12(又は14)を前述した接続準備状態に置くための作業に際し、一対の光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)に、対応する第1の可動部材86の機能により少なくとも最小撓みが確保される一方で、両者の撓み量に差が生じる場合がある。この撓み量の差が大きい場合、いずれか一方の中間部分20b(又は28b)に、所定撓み範囲を超える撓みが生じることが懸念される。そこで、図示の光伝送路接続装置10は、一対の撓み形成部84の各々に、第1の可動部材86から独立して動作可能な第2の可動部材104をさらに備えることができる(図1〜図3)。
【0031】
第2の可動部材104は、接続準備状態にある一対の光ファイバ心線20(又は28)の各々の中間部分20b(又は28b)に接触して、前述した所定撓み範囲における最大撓みを中間部分20b(又は28b)に生じさせる作用位置と、接続準備状態にある各光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)に接触しない(したがって中間部分20b(又は28b)の撓みを拘束しない)非作用位置との間で移動可能となっている。第2の可動部材104は、ベース部材72の上面72a側で第1の可動部材86の上方に設置される。第2の可動部材104は、その大部分が、非作用位置において作用位置よりも、ベース部材72の上面72aからさらに上方へ離隔して配置されるように構成されている。
【0032】
第2の可動部材104は、ベース部材72の一対の側板部分78及び一対の延長板部分98を抱持するように配置可能な蓋状部材であり、作用位置においてホルダ42及び第1の可動部材86を上方から覆うように配置される上板部分106と、上板部分106からその両側縁に沿って互いに略平行に立設され、作用位置においてベース部材72の両側板部分78及び両延長板部分98の外面にそれぞれ隣接して配置される一対の側板部分108とを、一体に有する(図2)。上板部分106には、作用位置においてホルダ42と第1の可動部材86との間の空間に挿入される突壁110が形成され、突壁110の略中央に、スプライス支持部44に支持したメカニカルスプライス40とホルダ支持部46に支持したホルダ42との間での、光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)の蛇行(つまり、第1の可動部材86によって確保される所要の撓みとは異なる方向への撓曲)を防止する案内溝112が形成される(図1)。案内溝112には、作用位置において光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)に当接されて、最大撓みを中間部分20b(又は28b)に生じさせる当接面114が設けられる。図10は、作用位置にある第2の可動部材104の案内溝112及び当接面114と、作用位置にある第1の可動部材86の案内通路90及び当接面92並びにメカニカルスプライス40のファイバ挿入孔54との位置関係を、ホルダ42を省略した端面図で示す。
【0033】
図示構成では、第2の可動部材104は、作用位置と非作用位置との間で回転可能にベース部材72に設置される。第2の可動部材104の各側板部分108には、突壁110から離隔した一端に軸受孔116が形成されるとともに、軸受孔116とは反対側の他端に掛止腕118が形成される(図2)。ベース部材72には、一対の延長板部分98の外面に、一対の支軸120がそれぞれ突設される(図2)。それら支軸120は、第2の可動部材104の回転軸線をベース部材72の上面72aに略平行に(したがって第1の可動部材86の回転軸線に略平行に)規定する。第2の可動部材104は、その軸受孔116に対応の支軸120を回動自在に嵌入して、ベース部材72の一対の延長板部分98に、支軸120が規定する回転軸線を中心に回転可能な姿勢で取り付けられる。このような回転型の第2の可動部材104は、作用位置では、その上板部分106がベース部材72の上面72aに対し略平行するように近接して配置され配置され(図13)、非作用位置では、上板部分106がベース部材72の上面72aに対し略直交するように離隔して配置される(図3)。また、ベース部材72の一対の側板部分78の外面には、支軸120から離れた位置に突起122が形成される(図2)。突起122は、第2の可動部材104の対応の掛止腕118に脱離可能にスナップ式に嵌着されて、第2の可動部材104を作用位置に掛止する。
【0034】
一対の撓み形成部84がそれぞれに第2の可動部材104を有する図示の光伝送路接続装置10では、前述した接続準備状態にある一対の光伝送路ユニット12(又は14)に対し、それら第2の可動部材104を非作用位置に配置して、第1の可動部材86により光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)に所定撓み範囲内での最小撓みを確保した後に、両可動部材104を、対応の光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)に所定撓み範囲内での最大撓みを生じさせる作用位置に配置することができる。したがって、第1の可動部材86により一対の光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)に最小撓みを確保する作業により、いずれか一方の中間部分20b(又は28b)に所定撓み範囲を超える撓みが生じた場合には、両可動部材104を作用位置に配置することで、当該中間部分20b(又は28b)の撓みを所定撓み範囲の最大撓みまで低減するとともに両中間部分20b(又は28b)の撓みを所定撓み範囲内で実質的に平衡させること(つまり、一対の光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)の双方の撓み量を、いずれも所定撓み範囲に収まるように調整すること)ができる。この状態で、メカニカルスプライス40を開位置から閉位置へ移行させて、両光伝送路ユニット12(又は14)の光ファイバ16(又は24)同士の接続を完了させると、一定の距離を空けたメカニカルスプライス40と両ホルダ42との間で、両光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)は、作用位置にある第2の可動部材104により、それぞれに所定撓み範囲内の撓みを呈した状態を維持する。
【0035】
このように、図示の光伝送路接続装置10では、一対の光伝送路ユニット12(又は14)を前述した接続準備状態に置くための作業に際し、一対の光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)のいずれか一方に所定撓み範囲を超える撓みが生じた場合にも、第2の可動部材104の機能により、そのような過剰な撓みを最大撓みまで低減するとともに両中間部分20b(又は28b)の撓みを所定撓み範囲内で実質的に平衡させた状態で、メカニカルスプライス40により光ファイバ16(又は24)同士を恒久的に接続できる。したがって、光伝送路接続装置10によれば、光接続された一対の光ファイバ16(又は24)に過剰撓みによる信号伝送損失が生じることを、未然に防止できる。
【0036】
また、第2の可動部材104は、メカニカルスプライス40とホルダ42との間に延びる光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)の、所要の撓みとは異なる方向への蛇行を防止する案内溝112を有するとともに、案内溝112に設けた当接面114で光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)に最大撓みを生じさせる構成を有しているから、ホルダ支持部46に配置したホルダ42を覆うように第2の可動部材104を非作用位置から作用位置へ移動させる作業に伴い、作業者が意図せずとも安全かつ確実に中間部分20b(又は28b)に最大撓みを生じさせることができる。したがって、作業者の熟練を要することなく、光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)の最大撓みを再現性良く確保することができる。なお、第2の可動部材104の作用位置と非作用位置との間の動作態様は、図示の回転動作に限定されず、例えば後述する直線的な動作を採用することもできる。
【0037】
図示の光伝送路接続装置10は、第2の可動部材104が作用位置にあるときに、一対のホルダ42の各々を一対のホルダ支持部46の各々の上で静止状態に保持するホルダ押え部124をさらに備えている(図3)。ホルダ押え部124は、ベース部材72の長手方向端部で上面72aの略中央に設けられる第1突起125と、第2の可動部材104の上板部分106及び一対の側板部分108と、それら側板部分108の掛止腕118の間で上板部分106の略中央に設けられる第2突起126とを含んで構成される。第2の可動部材104が作用位置にあるときに、第2の可動部材104の上板部分106は、ホルダ支持部46の凹所80に収容したホルダ42の、ベース部材72の上面72aからの浮き上がりを防止して、ホルダ42の押圧保持部56に設けた窪み56aに第1突起125が受容された状態を維持するように作用する。また、第2の可動部材104が作用位置にあるときに、第2突起126は、ホルダ支持部46の凹所80に収容したホルダ42の蓋部60に設けた窪み60aに受容される。さらに、第2の可動部材104が作用位置にあるときに、第2の可動部材104の一対の側板部分108は、ベース部材72の両側板部分78の特に弾性腕82を外側から支持して、ホルダ支持部46の凹所80に収容したホルダ42の外面にそれら弾性腕82の爪82aが係合した状態を維持するように作用する。その結果、ホルダ押え部124により、ホルダ42が凹所80内でがたつくこと及び凹所80から脱落することが防止される。このように、図示の光伝送路接続装置10では、ホルダ支持部46に配置したホルダ42を覆うように第2の可動部材104を非作用位置から作用位置へ移動させる作業に伴い、ホルダ押え部124が、ホルダ42をホルダ支持部46の上で静止状態に保持することになる。
【0038】
図示の光伝送路接続装置10は、第2の可動部材104が非作用位置にあるときに、メカニカルスプライス40をスプライス支持部44の上で静止状態に保持するスプライス押え部128をさらに備えている(図1、図3)。スプライス押え部128は、第2の可動部材104の一対の軸受孔116の間で上板部分106の略中央に設けられる突起128から構成される。第2の可動部材104が非作用位置にあるときに、スプライス押え部(突起)128はその先端で、スプライス支持部44に配置したメカニカルスプライス40の本体48の上面に当接されて、メカニカルスプライス40の本体48がスプライス支持部44の支持溝部分74に支持された状態を、強制的に維持するように作用する(図1)。このように、図示の光伝送路接続装置10では、第2の可動部材104を非作用位置に配置する動作に伴い、スプライス押え部128が、メカニカルスプライス40をスプライス支持部44の上で静止状態に保持することになる。
【0039】
図示の光伝送路接続装置10は、スプライス支持部44に支持したメカニカルスプライス40を前述した開位置から閉位置へ動作させるスプライス操作部130と、メカニカルスプライス40を動作させるスプライス操作部130の操作に伴い、第1の可動部材86を作用位置から非作用位置へ移動させるように動作する可動部材駆動部132と、第2の可動部材104が非作用位置にあるときに、スプライス操作部130の操作及び可動部材駆動部132の動作を阻止する停止部134とをさらに備えている(図2、図7)。
【0040】
スプライス操作部130は、ベース部材72に回動可能に支持される操作部材136を備える。操作部材136は、平面視で略矩形の平板状部材であり、その一側縁でベース部材72の一側縁に回動可能に連結されるとともに、その一表面136aがベース部材72の上面72aに対し略平行に離間対向する作用位置と、同表面136aがベース部材72の上面72aに対向しない非作用位置(図2等)との間で、ベース部材72に対し回動できるようになっている。操作部材136の表面136aには、作用位置においてスプライス支持部44の支持溝部分74に対向する押圧溝部分138が形成される。操作部材136を非作用位置に配置した状態で、開位置にあるメカニカルスプライス40をスプライス支持部44に所定姿勢で静止支持させた後、操作部材136を非作用位置から作用位置へ移動させると、移動中に操作部材136の押圧溝部分138が、メカニカルスプライス40の作動部材52の頂面に当接される。その位置からさらに操作部材136をベース部材72に向かって強制的に回動させると、操作部材136から作動部材52に外力が加わって、作動部材52が本体48に押し込まれるように変位し、操作部材136が作用位置に到達することでメカニカルスプライス40が閉位置に移行する。
【0041】
図示構成では、操作部材136を作用位置にスナップ式に掛止する掛止要素140、142が、操作部材136とベース部材72とのそれぞれに設けられる(図7)。操作部材136には、ベース部材72に連結される側縁とは反対側の側縁に沿って、表面136a側に一対の掛止要素140が突設される。ベース部材72には、スプライス支持部44の二組の支持壁部分76のうち、操作部材136に連結される側縁から離れた側の一対の支持壁部分76の外面に、突条形状の掛止要素142がそれぞれ設けられる。掛止要素140、142は、互いにスナップ式に嵌着されて、操作部材136を作用位置に掛止する。
【0042】
可動部材駆動部132は、スプライス操作部130の操作部材136の表面136aに設けられる突起132を含んで構成される。操作部材136を非作用位置から作用位置へ移動させると、移動中に可動部材駆動部(突起)132が、ベース部材72の上面72a上で作用位置に配置されている第1の可動部材86の頂面に当接される。その位置からさらに操作部材136をベース部材72に向かって強制的に移動させて、メカニカルスプライス40を閉位置に移行させると、略同時に、可動部材駆動部(突起)132が第1の可動部材86の頂面を押圧して、第1の可動部材86を作用位置から非作用位置へ移動させる。
【0043】
停止部134は、スプライス操作部130の操作部材136の一部分と、一対の第2の可動部材104の各々が有する一方(操作部材136に近接する側)の側板部分108の一部分とを含んで構成される。少なくとも一方の第2の可動部材104が非作用位置にあるときに、操作部材136を非作用位置から作用位置へ移動させると、移動中、操作部材136の表面136aがベース部材72の上面72aに略直交する位置で、操作部材136の一部分が可動部材104の一方の側板部分108の一部分に衝突して、作用位置に向かう操作部材136のさらなる回転移動が阻止される。その結果、メカニカルスプライス40を開位置から閉位置へ動作させるためのスプライス操作部130の操作、及び第1の可動部材86を作用位置から非作用位置へ移動させるための可動部材駆動部132の動作が、いずれも停止部134(操作部材136及び側板部分108)によって阻止される。なお停止部134は、一対の第2の可動部材104の双方が作用位置にあるときにのみ、メカニカルスプライス40を開位置から閉位置へ動作させるためのスプライス操作部130の操作、及び第1の可動部材86を作用位置から非作用位置へ移動させるための可動部材駆動部132の動作を、許容するように構成されることが望ましい。
【0044】
上記構成によれば、少なくとも一方の撓み形成部84の第2の可動部材104が非作用位置にある状態(したがって、接続準備状態にある一対の光伝送路ユニット12(又は14)の光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)に対する所定撓み範囲内への撓み量の調整を実施する前の状態)では、スプライス操作部130の操作部材136によりメカニカルスプライス40を開位置から閉位置に移行させることができなくなるとともに、可動部材駆動部(突起)132により第1の可動部材86を作用位置から非作用位置へ移動させることができなくなる。したがって、メカニカルスプライス40により光ファイバ16(又は24)同士を恒久的に接続する前に、光ファイバ心線20(又は28)の中間部分20b(又は28b)に対する所定撓み範囲内への撓み量の調整を実施することが強要されるので、光接続された一対の光ファイバ16(又は24)に過剰撓みによる信号伝送損失が生じることを、一層確実に防止できる。
【0045】
次に、図4、図5、図11〜図16を参照して、図示の光伝送路接続装置10を用いた光接続方法の一例を説明する。
予備作業として、接続対象となる光伝送路ユニット12又は14に対し、心線被覆除去及びファイバ切断を実施して、光ファイバ心線20又は28の所定長さの末端領域20a又は28aを形成する。光伝送路接続装置10は、開位置にあるメカニカルスプライス40をスプライス支持部44に適正な姿勢で支持する一方、一対のホルダ42をホルダ支持部46に支持せずに取り外しておく。また、第1の可動部材86を作用位置に配置する一方、第2の可動部材104及びスプライス操作部130を非作用位置に配置する。これによりスプライス押え部128は、メカニカルスプライス40をスプライス支持部44の上で静止状態に保持する(図12)。
【0046】
光伝送路ユニット(光ケーブル)12においては、まず末端の所要長さに渡り心線収容部材(絶縁外被)22を除去して、光ファイバ心線20を露出させる(図4(a))。光ファイバ心線20が突出する心線収容部材22の末端部分22aを、蓋部60が開位置にあるホルダ42の押圧保持部56の凹所62に嵌入し(図4(b))、次いで蓋部60を閉位置に掛止して、ホルダ42を光伝送路ユニット12に取り付ける(図4(c))。ホルダ42を取り付けた光伝送路ユニット12に対し、例えば図示しない専用工具を用いた手作業により、露出した光ファイバ心線20の先端領域の被覆18を、予め定めた長さに渡り除去して、光ファイバ16を露出させる(図4(c))。さらに、例えば図示しない別の専用工具を用いた手作業により、光ファイバ心線20の先端領域で露出した光ファイバ16を、予め定めた長さに切断する(図4(c))。これにより、所定長さの末端領域20aが形成される。
【0047】
光伝送路ユニット14においては、まず光ファイバ心線28を心線収容部材30のブーツ部38及び心線把持部34に挿入し(図5(a))、光ファイバ心線28の末端から所要長さの位置に心線収容部材30を配置する(図5(b))。所要長さの光ファイバ心線28が突出する心線収容部材30の心線把持部34を、蓋部60が開位置にあるホルダ42の押圧保持部56の凹所62に嵌入し(図5(c))、次いで蓋部60を閉位置に掛止して、ホルダ42を光伝送路ユニット14に取り付ける(図5(d))。ホルダ42を取り付けた光伝送路ユニット14に対し、例えば図示しない専用工具を用いた手作業により、露出した光ファイバ心線28の先端領域の被覆26を、予め定めた長さに渡り除去して、光ファイバ24を露出させる(図5(d))。さらに、例えば図示しない別の専用工具を用いた手作業により、光ファイバ心線28の先端領域で露出した光ファイバ24を、予め定めた長さに切断する(図5(d))。これにより、所定長さの末端領域28aが形成される。
【0048】
なお、図示の光伝送路接続装置10は、一対の光伝送路ユニット12同士の接続、一対の光伝送路ユニット14同士の接続、及び光伝送路ユニット12と光伝送路ユニット14との接続を実施できる。以下、例として一対の光伝送路ユニット12同士の接続作業を説明する。
【0049】
上記した心線被覆除去及びファイバ切断ステップでは、例えば図11に示す治具144を用いることで、同一の工具により、光伝送路ユニット12に異なる長さの末端領域20aを形成することができる。治具144は、ホルダ42を取り付けた光伝送路ユニット12の、ホルダ42及びその前後の所要長さ部分を、直線状に伸ばした形態で受容できる凹部146を有する。凹部146は、ホルダ42を長手方向所定距離に渡って移動可能に受容するホルダ受容部148を含む。心線被覆除去ステップでは、ホルダ42及び光伝送路ユニット12の所要長さ部分を凹部146に嵌入し、光ファイバ心線20を突出させているホルダ42の前端面42aを、ホルダ受容部148の前端面148aに当接させて、光伝送路ユニット12を治具144上の前端位置に配置する(図11(a))。光伝送路ユニット12を前端位置に保持しながら、治具144の外面前端144aを基準とした所定位置P(外面前端144aからの距離p)よりも末端側で、光ファイバ心線20の被覆18を除去して、光ファイバ16を露出させる。
【0050】
ファイバ切断ステップでは、光伝送路ユニット12を前端位置に保持しながら、治具144の外面前端144aを基準とした所定位置Q(外面前端144aからの距離q(>p))で、光ファイバ16を切断する。これにより、PQ間の距離(q−p)をファイバ露出長さとする末端領域20aが形成される。或いは、ファイバ切断に先立ち、所定位置Pで被覆除去を行なった光伝送路ユニット12を、治具144上で前端位置から、心線収容部材22を突出させているホルダ42の後端面42bがホルダ受容部148の後端面148bに当接される後端位置に移動する(図11(b))。そしてファイバ切断ステップでは、光伝送路ユニット12を後端位置に保持しながら、治具144の外面前端144aを基準とした所定位置Q(外面前端144aからの距離q(>p))で、光ファイバ16を切断する。これにより、PQ間の距離(q−p)に、ホルダ受容部148内でのホルダ42の移動距離を加算した長さを、ファイバ露出長さとする末端領域20aが形成される。
【0051】
心線被覆除去及びファイバ切断ステップが完了した一対の光伝送路ユニット12を、対応のホルダ支持部46にホルダ42を適正な姿勢で支持するようにして、光伝送路接続装置10に取り付ける。このとき、各光伝送路ユニット12の末端で露出した光ファイバ16を、作用位置にある第1の可動部材86の案内通路90に沿わせながら、ホルダ42をベース部材72の長手方向各端から中心軸線72bに沿ってホルダ支持部46の凹所80に挿入する(図12)。各光伝送路ユニット12の光ファイバ16は、第1の可動部材86の案内通路90に案内されて、スプライス支持部44に支持したメカニカルスプライス40のファイバ挿入孔54に円滑に挿入される。ホルダ42がホルダ支持部46に適正に配置されて弾性腕82及び第1突起125により掛止されると、光ファイバ16は、開位置にあるメカニカルスプライス40の固定部材50の両翼部分50a(図6)の間に配置される。
【0052】
一対の光伝送路ユニット12の双方を上記手順で光伝送路接続装置10に取り付けると、それぞれのホルダ42がホルダ支持部46に適正に配置された時点で、開位置にあるメカニカルスプライス40の中で一対の光ファイバ16の先端が互いに突き合わされて、両光伝送路ユニット12が接続準備状態に置かれる。このとき、メカニカルスプライス40とホルダ42との間に延びる各光伝送路ユニット12の光ファイバ心線20の中間部分20bは、第1の可動部材86の当接面92に当接されて、所定撓み範囲内での最小撓みを生じた状態を維持している(図13)。
【0053】
双方の光伝送路ユニット12において、前述した心線被覆除去及びファイバ切断ステップで得た光ファイバ心線20の末端領域20aの長さが、許容範囲内の下限値であった場合、両光伝送路ユニット12の光ファイバ16の先端同士が突き合わされた状態で、一対の光ファイバ心線20の中間部分20bが、作用位置にある対応の第1の可動部材86の当接面92に当接されて最小撓みR1を生じる。他方、少なくとも一方の光ファイバ心線20の末端領域20aの長さが、許容範囲内で下限値よりも大きかった場合には、一対の光ファイバ16の先端同士の突き合わせにより、少なくとも一方の光ファイバ心線20の中間部分20bが、第1の可動部材86の当接面92から離れて、所定撓み範囲内で最小撓みR1よりも大きな撓みR2を生じることになる(図14(a))。後者の場合には、一対の中間部分20bの撓み量は必ずしも等しくなく、意図しない不平衡を生じ得る。
【0054】
次に、第2の可動部材104を非作用位置から作用位置へ移動して、ベース部材72に掛止する(図14(b))。ここで、メカニカルスプライス40内での一対の光ファイバ16の先端同士の突き合わせにより、少なくとも一方の光伝送路ユニット12の光ファイバ心線20が、中間部分20bにおいて所定撓み範囲内での最大撓みR3を生じていた場合、中間部分20bは、第2の可動部材104の案内溝112に受容されて当接面114に当接される。
【0055】
双方の光伝送路ユニット12において、心線被覆除去及びファイバ切断ステップで得た光ファイバ心線20の末端領域20aの長さが許容範囲内の上限値に近かったこと等に起因して、一対の光ファイバ16の先端同士を突き合わせたときに、いずれか一方の光伝送路ユニット12の光ファイバ心線20が、中間部分20bにおいて所定撓み範囲を超える撓みR4を生じる場合がある。この場合には、第2の可動部材104を作用位置に配置することで、案内溝112が光ファイバ心線20の中間部分20bを受容して当接面114が中間部分20bに押圧力を加え、それにより中間部分20bの過大な撓みR4が所定撓み範囲内での最大撓みR3に低減される(図14(c))。この撓みの低減量(R4−R3)は、過大な撓みR4を生じていない他方の光ファイバ心線20の中間部分20bに与えられて、当該他方の中間部分20bの撓みを増加させる。その結果、両光ファイバ心線20の中間部分20bの撓みが、所定撓み範囲内で実質的に平衡した状態になる。
【0056】
一対の光ファイバ心線20の双方の末端領域20aの長さが許容範囲内の上限値であった場合には、それら光ファイバ心線20の中間部分20bの双方が、第2の可動部材104の当接面114に当接されて、所定撓み範囲内での最大撓みR3を生じることになる。なお、双方の光ファイバ心線20が中間部分20bに過大な撓みR4を生じることは、心線被覆除去及びファイバ切断ステップで得た光ファイバ心線20の末端領域20aの長さが許容範囲を超えていることを意味するので、そのような光伝送路ユニット12を光接続しないようにすることで予め回避できる。
【0057】
一対の第2の可動部材104の双方を作用位置に配置すると、一対の光伝送路ユニット12の双方が、光ファイバ心線20の中間部分20bに所定撓み範囲内の撓みを生じた状態で、接続準備状態に置かれる(図15(a)、図16(a))。この状態で、停止部134(スプライス操作部130の操作部材136及び第2の可動部材104の側板部分108)は、両可動部材104が作用位置にあるので、メカニカルスプライス40を開位置から閉位置へ動作させるためのスプライス操作部130の操作、及び第1の可動部材86を作用位置から非作用位置へ移動させるための可動部材駆動部132の動作を許容する。
【0058】
そこで、操作部材136を、非作用位置から作用位置へ向けて回動させ(図15(b))、作用位置に掛止する(図15(c))。これにより、操作部材136からメカニカルスプライス40の作動部材52に押圧力が加わり、メカニカルスプライス40が開位置から閉位置に移行して、一対の光ファイバ16同士を先端突き合わせ状態で恒久的に接続する。また、操作部材136に設けられた可動部材駆動部(突起)132は、一対の第1の可動部材86の頂面をそれぞれに押圧して、それら第1の可動部材86を作用位置から非作用位置へ移動させる(図16(b))。可動部材駆動部132が第1の可動部材86を非作用位置へ移動させると、光ファイバ心線20の中間部分20bは、第1の可動部材86の当接面92から離隔して、所定撓み範囲内での少なくとも最小撓みを確保しながら、メカニカルスプライス40とホルダ42との間の空間に非拘束状態で張り渡される。このようにして、光伝送路接続装置10を用いた光伝送路ユニット12同士の光接続が完了する。なお、可動部材駆動部132による第1の可動部材86の非作用位置への移動は、メカニカルスプライス40の閉動による一対の光ファイバ16同士の恒久的接続と同時か、或いは恒久的接続よりも僅かに遅れて遂行されることが、光接続後に一対の光ファイバ心線20の双方の中間部分20bに所定撓み範囲内の撓みを確保する観点で、望ましい。
【0059】
図17及び図18は、回転式の第1の可動部材86に代えて、作用位置と非作用位置との間で直線的に動作する第1の可動部材86´を備えた変形例による光伝送路接続装置10を示す。第1の可動部材86´は、作用位置で、底面86aがベース部材72の上面72aに対し略平行に離隔して配置され(図18(a))、非作用位置で、底面86aがベース部材72の上面72aに対し略平行に近接(又は接触)して配置される(図18(b))。ベース部材72には、支軸100に代えて、第1の可動部材86´をベース部材72の上面72aに略直交する方向へ直線的に案内する案内構造150が設けられている。直動式の第1の可動部材86´は、回転式の第1の可動部材86と同様に、作用位置において、接続準備状態にある一対の光ファイバ心線20の各々の中間部分20bに接触して、所定撓み範囲における最小撓みを中間部分20bに生じさせることができる。また、直動式の第1の可動部材86´は、回転式の第1の可動部材86と同様に、スプライス操作部130に設けた可動部材駆動部132(図16)により駆動されて、作用位置から非作用位置へと移動できる。
【0060】
図19及び図20は、回転式の第1の可動部材86に代えて、作用位置と非作用位置との間で直線的に動作する第1の可動部材86´を備えるとともに、回転式の第2の可動部材104に代えて、作用位置と非作用位置との間で直線的に動作する第2の可動部材104´を備えた他の変形例による光伝送路接続装置10を示す。第2の可動部材104´は、作用位置で、上板部分106がベース部材72の上面72aに対し略平行に近接して配置され(図20(b))、非作用位置で、上板部分106がベース部材72の上面72aに対し略平行に離隔して配置される(図20(a))。ベース部材72には、支軸120に代えて、第2の可動部材104´をベース部材72の上面72aに略直交する方向へ案内するとともに作用位置及び非作用位置に掛止する掛止構造152が設けられている。直動式の第2の可動部材104´は、回転式の第2の可動部材104と同様に、作用位置において、接続準備状態にある一対の光ファイバ心線20の各々の中間部分20bに接触して、所定撓み範囲における最大撓みを中間部分20bに生じさせることができる。
【0061】
図21及び図22は、回転式の第1の可動部材86及び第2の可動部材104に代えて、作用位置と非作用位置との間で直線的に動作する第1の可動部材86´及び第2の可動部材104´を備えるとともに、回転式の操作部材136を有するスプライス操作部130に代えて、作用位置と非作用位置との間で直線的に動作する操作部材136を有するスプライス操作部130´を備えたさらに他の変形例による光伝送路接続装置10を示す。スプライス操作部130´は、作用位置で、操作部材136がベース部材72の上面72aに対し略平行に近接して配置され(図22(a))、非作用位置で、操作部材136がベース部材72の上面72aに対し略平行に離隔して配置される(図22(b))。直動式の操作部材136を有するスプライス操作部130´は、回転式の操作部材136を有するスプライス操作部130と同様に、作用位置において、メカニカルスプライス40を閉位置に移行させるとともに、操作部材136に設けた可動部材駆動部132により第1の可動部材86´を非作用位置へ移動させる。
【0062】
この変形例では、スプライス操作部130の操作部材136´を非作用位置から作用位置へ移動させる動作に連動して、第2の可動部材104´を非作用位置から作用位置へ移動させるように構成することができる。それにより、光伝送路接続装置10を用いた光接続作業の工数を削減することができる。この場合、図22に示すように、第2の可動部材104´に、案内溝112及び当接面114を有する突壁110(図20)を設ける代りに、操作部材136に、同様の案内溝112及び当接面114を有する突壁154を設けることができる。そして、可動部材駆動部(突起)132を突壁154よりも十分に小さく形成することにより、操作部材36が前述した第2の可動部材104の機能と同等の機能を発揮して、メカニカルスプライス40による光ファイバ16同士の恒久的接続が実施される前に、光ファイバ心線20の中間部分20bに対する所定撓み範囲内への撓み量の調整を実施することができる。
【符号の説明】
【0063】
10 光伝送路接続装置
12、14 光伝送路ユニット
16、24 光ファイバ
20、28 光ファイバ心線
22、30 心線収容部材
40 メカニカルスプライス
42 ホルダ
44 スプライス支持部
46 ホルダ支持部
72 ベース部材
84 撓み形成部
86 第1の可動部材
90 案内通路
92 当接面
100 支軸
104 第2の可動部材
112 案内溝
114 当接面
124 ホルダ押え部
128 スプライス押え部
130 スプライス操作部
132 可動部材駆動部
134 停止部
144 治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバに被覆を施してなる光ファイバ心線と該光ファイバ心線を少なくとも部分的に収容する心線収容部材とを各々に有する一対の光伝送路ユニットを、互いに接続する光伝送路接続装置において、
一対の光ファイバを受容する開位置とそれら光ファイバを挟持して互いに接続する閉位置との間で動作可能なメカニカルスプライスと、
一対の心線収容部材をそれぞれに保持する一対のホルダと、
前記メカニカルスプライスを予め定めた位置に支持するスプライス支持部と、
前記スプライス支持部に支持した前記メカニカルスプライスに対して前記一対のホルダが直線状に整列するように、前記一対のホルダのそれぞれを予め定めた位置に支持する一対のホルダ支持部と、
一対の光ファイバ心線の末端領域内で被覆を部分的に除去された一対の光ファイバが、前記スプライス支持部に支持した前記開位置にある前記メカニカルスプライスに先端突き合わせ状態で受容されるとともに、一対の心線収容部材が、それら光ファイバ心線の末端領域を外方へ突出させた部位で、前記一対のホルダ支持部に支持した前記一対のホルダにそれぞれ保持されているときに、それら光ファイバ心線の末端領域の、前記メカニカルスプライスと前記一対のホルダとの間に延びる中間部分を、予め定めた撓み範囲で撓ませる一対の撓み形成部とを具備し、
前記一対の撓み形成部の各々は、前記一対の光ファイバ心線の各々の前記中間部分に接触して前記撓み範囲における最小撓みを前記中間部分に生じさせる作用位置と、前記中間部分に接触しない非作用位置との間で移動可能な第1の可動部材を備えること、
を特徴とする光伝送路接続装置。
【請求項2】
前記一対の撓み形成部の各々は、前記第1の可動部材から独立して動作可能な第2の可動部材であって、前記一対の光ファイバ心線の各々の前記中間部分に接触して前記撓み範囲における最大撓みを前記中間部分に生じさせる作用位置と、前記中間部分に接触しない非作用位置との間で移動可能な第2の可動部材を備える、請求項1に記載の光伝送路接続装置。
【請求項3】
前記スプライス支持部に支持した前記メカニカルスプライスを前記開位置から前記閉位置へ動作させるスプライス操作部と、前記メカニカルスプライスを動作させる該スプライス操作部の操作に伴い、前記第1の可動部材を前記作用位置から前記非作用位置へ移動させるように動作する可動部材駆動部と、前記第2の可動部材が前記非作用位置にあるときに、該スプライス操作部の該操作及び該可動部材駆動部の該動作を阻止する停止部とをさらに具備する、請求項2に記載の光伝送路接続装置。
【請求項4】
前記第2の可動部材が前記非作用位置にあるときに、前記メカニカルスプライスを前記スプライス支持部の上で静止状態に保持するスプライス押え部をさらに具備する、請求項2又は3に記載の光伝送路接続装置。
【請求項5】
前記第2の可動部材が前記作用位置にあるときに、前記一対のホルダの各々を前記一対のホルダ支持部の各々の上で静止状態に保持するホルダ押え部をさらに具備する、請求項2〜4のいずれか1項に記載の光伝送路接続装置。
【請求項6】
前記第2の可動部材は、前記スプライス支持部に支持した前記メカニカルスプライスと前記ホルダ支持部に支持した前記ホルダとの間での前記中間部分の蛇行を防止する案内溝と、該案内溝に設けられ、前記作用位置において前記中間部分に当接されて前記最大撓みを前記中間部分に生じさせる当接面とを有する、請求項2〜5のいずれか1項に記載の光伝送路接続装置。
【請求項7】
前記第1の可動部材は、前記心線収容部材を保持した前記ホルダを前記ホルダ支持部に配置するときに前記スプライス支持部に支持した前記メカニカルスプライスに向けて光ファイバを案内する案内通路と、該案内通路に設けられ、前記作用位置において前記中間部分に当接されて前記最小撓みを前記中間部分に生じさせる当接面とを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光伝送路接続装置。
【請求項8】
前記スプライス支持部と前記一対のホルダ支持部とを有するベース部材をさらに具備し、前記第1の可動部材は、前記作用位置と前記非作用位置との間で回転可能又は平行移動可能に該ベース部材に設置される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光伝送路接続装置。
【請求項9】
前記スプライス支持部と前記一対のホルダ支持部とを有するベース部材をさらに具備し、前記第2の可動部材は、前記作用位置と前記非作用位置との間で回転可能又は平行移動可能に該ベース部材に設置される、請求項2〜6のいずれか1項に記載の光伝送路接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−242451(P2012−242451A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109730(P2011−109730)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】