光信号チャンネル分割多重通信方法及び光信号チャンネル分割多重通信システム
【目的】多重する複数のチャンネルの送信信号を単一波長の光パルスを出力する1つの光源と1つの光変調器とによって生成することが可能であって、光パルスの波長スペクトルの中心波長が変動してもこの変動が通信機能に影響を及ぼさない。
【解決手段】シリアル電気送信信号発生器12は第1〜第8チャンネル電気送信信号13を時間軸上で順次出力する。光パルス列発生器18は光パルス列19を出力する。光パルス波長分散器20は拡散光パルス列21を生成して出力する。光変調器22は、拡散光パルス列及び第1〜第8チャンネル電気送信信号17が入力されて、第1〜第8チャンネル変調光送信信号23を順次生成して出力する。タイミング調整器16は第1〜第8チャンネル電気送信信号の入力タイミングを調整する。第1受信部32は第1チャンネル変調光送信信号を受信して第1チャンネル光復調受信信号を出力する。第1受信信号再生部36は第1チャンネル電気再生受信信号37を出力する。
【解決手段】シリアル電気送信信号発生器12は第1〜第8チャンネル電気送信信号13を時間軸上で順次出力する。光パルス列発生器18は光パルス列19を出力する。光パルス波長分散器20は拡散光パルス列21を生成して出力する。光変調器22は、拡散光パルス列及び第1〜第8チャンネル電気送信信号17が入力されて、第1〜第8チャンネル変調光送信信号23を順次生成して出力する。タイミング調整器16は第1〜第8チャンネル電気送信信号の入力タイミングを調整する。第1受信部32は第1チャンネル変調光送信信号を受信して第1チャンネル光復調受信信号を出力する。第1受信信号再生部36は第1チャンネル電気再生受信信号37を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスを、相異なる波長成分に分割して複数のチャンネルに分配し、波長成分の相違をチャンネル識別標識として利用して光伝送を行う、光信号チャンネル分割多重通信方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及等により通信需要が急速に増大しており、それに対応して通信の大容量化が図られている。通信システムも多様な形態が構築されており、大容量伝送が可能な光ADM(Add-Drop-Multiplexer: 分岐挿入装置)を具えた、柔軟なバスあるいはリング形態の通信ネットワークが盛んに提案され研究されている。
【0003】
通信の大容量化のための手法として注目されるのが、一本の光ファイバ伝送路に複数チャンネル分の光パルス信号をまとめて伝送する光多重技術である。光多重技術としては、光時分割多重(OTDM: Optical Time Division Multiplexing)方式、波長分割多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)方式及び光符号分割多重(OCDM:Optical Code Division Multiplexing)方式が盛んに研究されている。
【0004】
OTDM方式によれば、1つの光源と光変調器により、複数チャンネルの信号を生成することができ、スターカプラを具えて構成されるPON(Passive Optical Network)等の通信ネットワークではよく用いられる方式である。また、WDM方式あるいはOCDM方式によれば、波長フィルタや符号器によって、光信号の状態でチャンネルの識別ができるため、これらの通信方式は、バスやリングなどの柔軟な形態の通信ネットワークに用いて好適な方式である。
【0005】
しかしながら、OTDM方式は、チャンネルの識別を、全てのデータを再生して電気信号の形態で実行する方式であるため、OTDM方式を採用したバスあるいはリング形態のネットワークでは、分岐点ごとに受信器を配置する必要がある。すなわち、このバスあるいはリング形態のネットワークでは、他チャンネルのデータ信号を次の分岐点に送るための信号を生成する光源と光変調器とが必要となる。
【0006】
また、WDM方式は、多波長の光搬送波を生成する光源が必要である。多波長の光搬送波を生成する光源は高価である上、多重伝送システムに利用できる波長資源には限りがある。また、多波長光源の出力光の波長の長時間安定性を確保することは、高度な技術を要し、高いコストがかかる。
【0007】
一方、OCDM方式にあっても、送信装置において光源を共有することは可能であるが、多重するチャンネル数分の光変調器が必要となる。
【0008】
そこで、WDM方式において、1つ又は2つの可変波長光源と1つの光変調器から複数チャンネルのデータ信号を発生させる方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ただし、この方式によれば、1つの光変調器から複数チャンネルのデータ信号を発生させることが可能であるが、多重するチャンネル数を増大させることに対応して、波長グリッド間隔を狭く設定することが必要となる。
【0009】
波長グリッド間隔を設定すると、光搬送波を生成する光源の波長ドリフト量をこの設定された波長グリッド間隔の範囲内の大きさに収めることが要請される。ここで、光源の波長ドリフトとは、光源から出力される波長が時間経過に対して変化する現象を言う。波長グリッド間隔の範囲を超える波長変動があると上述の特許文献1に開示されている方式においては、チャンネルの識別能力が失われてしまう。因みに、ITU(International Telecommunication Union)国際標準によれば、100 GHz間隔(約0.8 nm間隔)、50 GHz間隔(約0.4 nm間隔)等にWDM方式の波長グリッドが規定されている。
【0010】
一方、WDM方式において、1つの短パルス光(例えば、中心波長1550 nmで半値幅が70 nmであって、時間波長の半値幅が50 fsである光パルス)を波長分散媒質によって時間拡散し、1つの光変調器から複数チャンネル分のデータ信号を発生させる方法が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。この方法によれば、多数チャンネルの信号を生成することが可能である。
【0011】
しかしながら、この方法は1つのチャンネルに対して1つの波長を割り当てる方式であるので、多重するチャンネル数を増大させることに対応して、通信に使う波長帯域を広げる必要があり、また、チャンネル間で波長が安定されておりかつ均一な信号強度を確保するため、利用する光源から出力される光パルスの時間波形の半値幅は極端に狭いことが求められる。このため、この方式による通信ではデータ転送レートが低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−281869号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Jason B. Stark, et al., "Cascaded WDM Passive Optical Network with a Highly Shared Source", IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, Vol. 9, No. 8, (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した様に、OTDM方式では、多波長の光搬送波を生成する光源が必要である。また、OCDM方式にあっても、送信装置において光源を共有することは可能であるが、多重するチャンネル数分の光変調器が必要となる。
【0015】
また、これらの問題点を解消する方法として、上述の特許文献1及び非特許文献1にそれぞれ新たな方式が開示されているが、前者の特許文献1に開示されている方式では波長ドリフト量の充分に小さい高価な光源が求められ、後者の非特許文献1に開示されている方式では時間波形の半値幅は極端に狭い光パルスを出力する光源が必要とされかつこの方式による通信ではデータ転送レートが低くなるという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明の発明者は、波長スペクトルが唯一の極大をもつ光パルスであっても、波長スペクトルが有限の幅を有している以上、この波長スペクトル成分を複数のグループに分割し、その分割された波長スペクトル成分のそれぞれのグループにチャンネルを割り当てることが可能であることに思い至った。
【0017】
すなわち、唯一の極大をもつ光パルスの波長スペクトル成分を光変調器によって時間軸上で複数に分割してその分割された波長スペクトル成分のそれぞれのグループにチャンネルを割り当て、超格子構造ファイバブラック格子(SSFBG: Superstructured Fiber Bragg Grating)によってチャンネルごとに割り当てられたグループの光パルスの波長スペクトル成分を識別する方式を確立することによって、光パルスの波長スペクトルの中心波長が変動してもこの変動が通信機能に影響を及ぼさない、光信号チャンネル分割多重通信を実現することが可能であることを確信した。
【0018】
従って、この発明の目的は、多重する複数のチャンネルの送信信号を単一波長の光パルスを出力する1つの光源と1つの光変調器とによって生成することが可能であって、光パルスの波長スペクトルの中心波長が変動してもこの変動が通信機能に影響を及ぼさない、光チャンネル分割多重通信方法及び光チャンネル分割多重通信システムを提供することにある。
【0019】
この光チャンネル分割多重通信において、唯一の極大をもつ光パルスの波長スペクトル成分を複数のグループに分割することが擬似的な光符号化に相当し、SSFBGによってチャンネルごとに割り当てられたグループの光パルスの波長スペクトル成分を識別することが、擬似的な光復号化に相当する。そこで、以後この光チャンネル分割多重通信の方式を擬似的OCDM方式ということもある。
【0020】
ここで、用語「単一波長の光パルス」及び「擬似的OCDM」について、以下のとおり定義する。すなわち、単一波長の光パルスとは、波長スペクトルが唯一の極大を有する光パルスをいうものとする。また、擬似的OCDMとは、単一波長の光パルスの波長スペクトルを分割してそれぞれのチャンネルに割り当て、チャンネル識別を波長スペクトルの成分の相違及び後述する符号の相違に基づき識別する方式を意味するものとする。
【0021】
通常のWDMでは、波長スペクトルが複数の極大を有する光パルスを、各チャンネルにこの極大波長に対応させて分配し、これらの波長を識別することでチャンネルの識別が実現される。すなわち、通常のWDM方式における波長多重信号の光搬送波の波長スペクトルは複数の極大をとるのに対して、この発明の擬似的OCDM方式における信号の光搬送波の波長スペクトルは単一の極大を取ることに相違点がある。
【0022】
なお、以後の説明においては、符号化及び復号化という用語を、従来の慣習からより拡張して広い意味に使うこととする。すなわち、光パルス信号を構成する光パルスを時間軸上に拡散する規則を、通常の意味での符号(狭義の符号)に限定せず、一義的に確定する任意の規則(広義の符号)であっても、上述の符号化及び復号化という用語を用いる。従って、広義の符号の場合に対しても、符号化光パルス信号、チップパルス等の用語を使うものとする。
【0023】
また、以下に説明するこの発明の光パルス時間拡散装置を構成するSSFBGから出力されるチップパルスの列は、通常の符号が設定されたSSFBGから出力されるチップパルスの列のように、厳密な意味での符号に基づいて光パルスが時間拡散されて生成されたものではない。しかしながら、以後の説明においては、便宜上、光パルスをチップパルスの列に変換することを符号化といい、またチップパルスの列を自己相関波あるいは相互相関波として生成することを復号化ということもある。
【0024】
そこで、この発明の要旨によれば、以下の構成の光信号チャンネル分割多重通信方法及び装置が提供される。
【0025】
この発明の第1の光信号チャンネル分割多重通信方法は、送信ステップと受信ステップとを含んで構成され、送信ステップ及び受信ステップは以下のステップを含んで構成される。
【0026】
送信ステップは、シリアル電気送信信号発生ステップと、光パルス列発生ステップと、光パルス波長分散ステップと、光変調ステップと、タイミング調整ステップとを含んでいる。受信ステップは、第1〜第N受信ステップ(Nは2以上の整数である。)を含み、第j受信ステップ(jは、1からNのすべての整数である。)は、第jチャンネル光パルス復調ステップと、第jチャンネル受信信号再生ステップとを含んでいる。
【0027】
シリアル電気送信信号発生ステップは、第1〜第Nチャンネル電気送信信号を時間軸上で順次出力するステップである。
【0028】
光パルス列発生ステップは、波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列を出力するステップである。
【0029】
光パルス波長分散ステップは、この光パルス列を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、光パルスの連続する波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散して、拡散光パルス列を生成して出力するステップである。
【0030】
光変調ステップは、拡散光パルス列を第1〜第Nチャンネル電気送信信号で変調して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を順次生成して出力するステップである。
【0031】
タイミング調整ステップは、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように、第1〜第Nチャンネル電気送信信号の送信タイミングを調整するステップである。
【0032】
第1〜第N受信ステップは、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号をそれぞれ受信して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を復調して、それぞれ第1〜第N電気再生受信信号を出力するステップである。
【0033】
第jチャンネル光パルス復調ステップは、受信した第1〜第Nチャンネル変調光送信信号から第jチャンネル光復調受信信号を生成して出力するステップである。
【0034】
第jチャンネル受信信号再生ステップは、第jチャンネル光復調受信信号が入力されて、第jチャンネル電気再生受信信号を生成して出力するステップである。
【0035】
この発明の第2の光信号チャンネル分割多重通信方法は、送信ステップと受信ステップとを含んで構成され、送信ステップ及び受信ステップは以下のステップを含んで構成される。
【0036】
送信ステップは、パラレル-シリアル変換ステップと、光パルス列発生ステップと、光パルス波長分散ステップと、光変調ステップとを含んでいる。受信ステップは、第1〜第N受信ステップを含み、第j受信ステップは、第jチャンネル光パルス復調ステップと、第jチャンネル受信信号再生ステップとを含んでいる。
【0037】
パラレル-シリアル変換ステップは、同一時間軸上に並列して並ぶ第1〜第Nチャンネルパラレル電気送信信号を、時間軸上に順次シリアルに並ぶシリアル電気送信信号に変換するステップであり、このステップでは、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように変調される条件で、シリアル電気送信信号を構成する第1〜第Nチャンネルの送信信号成分の送信タイミングを調整して出力する。
【0038】
光パルス列発生ステップは、波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列を出力するステップである。
【0039】
光パルス波長分散ステップは、この光パルス列を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、光パルスの連続する波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散して、拡散光パルス列を生成して出力するステップである。
【0040】
光変調ステップは、拡散光パルス列をシリアル電気送信信号で変調して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を順次生成して出力するステップである。
【0041】
第1〜第N受信ステップは、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号をそれぞれ受信して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を復調して、それぞれ第1〜第N電気再生受信信号を出力するステップである。
【0042】
第jチャンネル光パルス復調ステップは、受信した第1〜第Nチャンネル変調光送信信号から第jチャンネル光復調受信信号を生成して出力するステップである。
【0043】
第jチャンネル受信信号再生ステップは、第jチャンネル光復調受信信号が入力されて、第jチャンネル電気再生受信信号を生成して出力するステップである。
【0044】
この発明の第1の光信号チャンネル分割多重通信方法は、この発明の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムによって実現される。この発明の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムは、送信装置と受信装置とを具えて構成され、送信装置及び受信装置のそれぞれは、以下の構成要素を具えている。
【0045】
送信装置は、シリアル電気送信信号発生器と、光パルス列発生器と、光パルス波長分散器と、光変調器と、タイミング調整器とを具えている。受信装置は、第1〜第N受信部を具え、第j受信部は、第jチャンネル光パルス復調器と、第jチャンネル受信信号再生部とを具えている。
【0046】
シリアル電気送信信号発生器は、第1〜第Nチャンネル電気送信信号を時間軸上で順次出力する。
【0047】
光パルス列発生器は、波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列を出力する。
【0048】
光パルス波長分散器は、この光パルス列を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、光パルスの連続する波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散して、拡散光パルス列を生成して出力する。
【0049】
光変調器は、拡散光パルス列及び第1〜第Nチャンネル電気送信信号が入力されて、拡散光パルス列を第1〜第Nチャンネル電気送信信号で変調して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を順次生成して出力する。
【0050】
タイミング調整器は、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように、光変調器に入力する第1〜第Nチャンネル電気送信信号の送信タイミングを調整する。
【0051】
第1〜第N受信部は、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号をそれぞれ受信して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を復調して、それぞれ第1〜第N電気再生受信信号を出力する。
【0052】
第jチャンネル光パルス復調器は、受信した第1〜第Nチャンネル変調光送信信号から第jチャンネル光復調受信信号を生成して出力する。
【0053】
第jチャンネル受信信号再生部は、第jチャンネル光復調受信信号が入力されて、第jチャンネル電気再生受信信号を生成して出力する。
【0054】
この発明の第2の光信号チャンネル分割多重通信方法は、この発明の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムによって実現される。この発明の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムは、送信装置と受信装置とを具えて構成され、送信装置及び受信装置のそれぞれは、以下の構成要素を具えている。
【0055】
送信装置は、電気送信信号発生部と、光パルス列発生器と、光パルス波長分散器と、光変調器とを具えている。受信装置は、第1〜第N受信部を具え、第j受信部は、第jチャンネル光パルス復調器と、第jチャンネル受信信号再生部とを具えている。
【0056】
電気送信信号発生部は、同一時間軸上に並列して並ぶ第1〜第Nチャンネル(Nは2以上の整数である。)パラレル電気送信信号を、時間軸上に順次シリアルに並ぶシリアル電気送信信号に変換するパラレル-シリアル変換器を具えている。パラレル-シリアル変換器は、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように変調される条件で、シリアル電気送信信号を構成する第1〜第Nチャンネルの送信信号成分が光変調器に入力されるように、当該シリアル電気送信信号の送信タイミングを調整して出力する。
【0057】
光パルス列発生器は、波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列を出力する。
【0058】
光パルス波長分散器は、この光パルス列を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、光パルスの連続する波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散して、拡散光パルス列を生成して出力する。
【0059】
光変調器は、拡散光パルス列及びシリアル電気送信信号が入力されて、拡散光パルス列をシリアル電気送信信号で変調して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を順次生成して出力する。
【0060】
第1〜第N受信部は、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号をそれぞれ受信して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を復調して、それぞれ第1〜第N電気再生受信信号を出力する。
【0061】
第jチャンネル光パルス復調器は、受信した第1〜第Nチャンネル変調光送信信号から第jチャンネル光復調受信信号を生成して出力する。
【0062】
第jチャンネル受信信号再生部は、第jチャンネル光復調受信信号が入力されて、第jチャンネル電気再生受信信号を生成して出力する。
【0063】
上述の第jチャンネル光パルス復調器は、M個(MはN≦Mを満たす整数である。)の単位ファイバブラック格子(FBG: Fiber Bragg Grating)を具える、以下の条件を満たすSSFBGを具えて構成するのが好適である。
【0064】
単位ファイバブラック格子のブラッグ反射波長λbを次式(1a)及び(1b)
λb=λs+{k+(1/2)}Δλs/N (1a)
(ただし、Nが偶数であって、kは-N/2〜(N/2)-1の範囲の整数)
λb=λs+{k+(1/2)}Δλs/N (1a)
(ただし、Nが奇数であって、kは-(N-1)/2〜(N-1)/2の範囲の整数)
で与えられる値に設定する。
【0065】
単位ファイバブラック格子のブラッグ反射波長帯域の半値全幅Δλbを、次式(2)
Δλb=Δλs=Td/Dp (2)
で与えられる値に設定する。
【0066】
隣接する単位ファイバブラック格子の配置周期Lを、次式(3)
L={(λb−Δλb/2)×(λb+Δλb/2)}÷(2・neffΔλb) (3)
で与えられる値に設定する。
【0067】
隣接する単位ファイバブラッグ格子からのブラッグ反射光の位相差Θを、次式(4)
Θ=(1/2)×(λs+j・Δλs/N) (4)
で与えられる値に設定する。
【0068】
ここで、Tdは光パルス列の光パルスの繰り返し周期、Dpは光パルス波長分散器の波長分散量、λsは光パルス発生器から出力される光パルス列の波長スペクトルのピーク波長、Δλsは光パルス列の波長スペクトルの半値全幅、及び、neffは超格子構造ファイバブラック格子を構成する光ファイバの実効屈折率である。
【発明の効果】
【0069】
この発明の第1及び第2の光信号チャンネル分割多重通信方法並びにシステムによれば、光パルス列発生ステップにおいて、波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列が生成され、この光パルス列が、光パルス波長分散ステップにおいて、この光パルス列を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、光パルスの連続する波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散される。そして、光変調ステップにおいて、線形拡散されて生成された拡散光パルス列が第1〜第Nチャンネル電気送信信号で変調されて、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号が順次生成される。
【0070】
唯一の極大をもつ光パルスの波長スペクトル成分を複数のグループに分割しそれぞれのチャンネルに割り当てる光変調ステップは、1つの光変調器によって実現可能である。また、光パルス列発生ステップを実現するには、唯一の極大をもつ光パルスを出力する光源を1つ用意すれば足り、多波長の光搬送波を生成する光源も必要としない。
【0071】
また、唯一の極大をもつ光パルスの波長スペクトル成分を複数のグループに分割する際に単一波長光搬送波発生光源の波長の揺らぎが発生しても、光変調ステップにおける、変調のタイミングによって確定される各グループの波長スペクトル成分は変動せず、SSFBGによって識別される波長成分も、SSFBGの構成によって確定されるので識別される各グループの波長スペクトル成分も変動しない。従って、この発明の第1及び第2の光信号チャンネル分割多重通信方法が採用する擬似的OCDM方式においては、単一波長光搬送波発生光源の波長の揺らぎの影響を受けないでチャンネル識別が可能となる。
【0072】
第jチャンネル光パルス復調器を、上述の式(1a)及び式(1b)〜式(4)を満たすように設定された単位FBGを具えるSSFGBを利用して構成することによって、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号から第jチャンネル光復調受信信号を生成して出力することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムの概略的ブロック構成図である。
【図2】タイミング調整器の概略的ブロック構成図である。
【図3】この発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの概略的ブロック構成図である。
【図4】パラレル-シリアル変換器及びこの構造及びその動作の説明に必要な送信制御信号発生器と第1〜第8チャンネル電気送信信号発生器を含めて示した概略的ブロック構成図である。
【図5】第1受信信号再生部の概略的ブロック構成図である。
【図6】第1〜第8チャンネル変調光送信信号を生成する際に使われる拡散光パルス列の生成方法及びこの拡散光パルス列の性質についての説明に供する図であり、(A)は光パルス列の時間波形を示す図であり、(B)は拡散光パルス列を構成する光パルスの波長スペクトルを示す図であり、(C)は拡散光パルス列を構成する光パルスの時間軸上での重なりの様子の説明に供する示す図であり、(D)は拡散光パルス列を構成する光パルスの時間軸上での波長分布の説明に供する図である。
【図7】この発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムの符号化処理についての説明に供する図であり、(A)はタイミング調整器によって各チャンネルに与えられ時間遅延量が調整されて出力された第1〜第8チャンネル電気送信信号の時間波形を示す図であり、(B-1)及び(B-2)は第1〜第8チャンネル電気送信信号によって拡散光パルス列から第1チャンネル及び第2チャンネルの波長スペクトル成分がを切り出される様子を示す図であり、(C)は拡散光パルス列を構成する光パルスの波長スペクトル成分から切り出されて第1チャンネル及び第2チャンネルに分配される波長成分についての説明に供する図である。
【図8】この発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの符号化処理についての説明に供する図であり、(A)は第1〜第8チャンネル電気送信信号発生器からそれぞれ出力される第1〜第8チャンネル電気送信信号の時間波形を示す図であり、(B)はシリアル電気送信信号の時間波形を示す図であり、(C)は拡散光パルス列を構成する光パルスの波長スペクトル成分から切り出されて第1〜第8チャンネルに分配される波長成分についての説明に供する図である。
【図9】この発明の実施形態の第1及び第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの各チャンネルの光パルス復調器の説明に供する図であり、(A)は単位FBGを矩形で模式的に示すSSFBGの模式的な図であり、(B)はSSFBGの屈折率変調構造を概略的に示す図であり、(C)は光ファイバのコアの屈折率変調量Δnを表すグラフを示す図である。
【図10】第1〜第8光パルス復調器の動作説明の前提となる第1〜第8チャンネル変調光送信信号の時間波形を示す図であり、(A)は拡散光パルス列を構成する光パルス3つ分のそれぞれの光パルスから切り出される第1チャンネルの波長スペクトル成分を概略的に示す図であり、(B)は第1チャンネルの1ビット分の変調光送信信号の時間波形を模式的に示す図である。
【図11】第1光パルス復調器の構成及びその動作についての説明に供する図であり、(A)は第1光パルス復調器の概略的構成を示す図であり、(B)は第1光パルス復調器が具えるSSFBGに入力されるチップパルス列を構成するM個のチップパルスのそれぞれが、SSFBGによってM個のチップパルスに変換され、これら合計(M×M)個のチップパルスの干渉によって自己相関波あるは相互相関波が生成される過程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、各図は、この実施形態に係る一構成例に対するものであり、この発明の実施形態が理解できる程度に各構成要素の配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、この発明の実施形態の第1及び第2の光信号チャンネル分割多重通信システムと同種の通信装置であれば通常具えている、この発明の特徴部分ではない周知の構成要素は図示を省略したものもある。以下の説明において、特定の機器及び条件等を用いることがあるが、これら材料及び条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。また、各図において同様の構成要素については、同一の番号を付して示し、その重複する説明を省略することもある。また、以下に示すブロック構成図において、光ファイバ等の光信号の経路を太線で示し、電気信号の経路を細線で示してある。
【0075】
<この発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システム>
図1を参照して、この発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムの構造及びその動作について説明する。図1は、この発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムの概略的ブロック構成図である。
【0076】
この発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムは、送信装置10と受信装置30とを具えて構成され、送信装置10及び受信装置30のそれぞれは、以下の構成要素を具えている。ここでは、一例として、多重するチャンネル数を8チャンネルとして説明する。すなわち、N=8である場合を想定して説明する。ただし、以下の説明の主旨はN=8である場合に限定されるものではない。
【0077】
送信装置10は、シリアル電気送信信号発生器12と、光パルス列発生器18と、光パルス波長分散器20と、光変調器22と、タイミング調整器16とを具えている。受信装置30は、第1〜第8受信部を具えている。第1受信部32は、第1チャンネル光パルス復調器34及び第1チャンネル受信信号再生部36を具えている。第2受信部40から第8受信部44についても、同様の光パルス復調器及び受信信号再生部を具えている。図1では、第1〜第8チャンネル受信信号再生部を単に第1〜第8受信信号再生部と略記してあり、第1〜第8チャンネル光パルス復調器を単に第1〜第8光パルス復調器と略記してある。
【0078】
シリアル電気送信信号発生部12は、第1〜第8チャンネル電気送信信号13を時間軸上で順次出力する。
【0079】
光パルス列発生器18は、波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列19を出力する。
【0080】
光パルス波長分散器20は、この光パルス列19を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、それぞれの光パルスの波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散して、拡散光パルス列21を生成して出力する。ここで、光パルス列19を構成する光パルスは、少なくとも隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う状態が実現すればよく、連続して存在する3つ分以上の光パルスが重なり合うことがあってもよい。
【0081】
光変調器22は、拡散光パルス列21及び第1〜第8チャンネル電気送信信号17が入力されて、拡散光パルス列21を第1〜第8チャンネル電気送信信号17で変調して、第1〜第8チャンネル変調光送信信号23を順次生成して出力する。
【0082】
タイミング調整器16は、第1〜第8チャンネル変調光送信信号23を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように、光変調器22に入力する第1〜第8チャンネル電気送信信号13の入力タイミングを調整して、タイミングが調整された第1〜第8チャンネル電気送信信号17を出力する。
【0083】
第1受信部32、第2受信部40、・・・第8受信部44のそれぞれは、光パルス復調器及び受信信号再生部を具える同一構造であるので、ここでは、主に第1受信部32を代表して取り上げて説明する。図1では、第1受信部32が具える光パルス復調器及び受信信号再生部をそれぞれ、第1光パルス復調器34及び第1受信信号再生部36と示してある。第2受信部40〜第8受信部44についても同様の構造である。
【0084】
第1受信部32、第2受信部40、・・・第8受信部44のそれぞれは、第1〜第8チャンネル変調光送信信号23をそれぞれ順次受信して、それぞれの受信部に関連する第1〜第8チャンネル変調光送信信号を復調して、それぞれ第1チャンネル電気再生受信信号37〜第8チャンネル電気再生受信信号を出力する。
【0085】
第1〜第8チャンネル変調光送信信号23は、まず第1受信部32に入力されて、第1受信部32が具えている第1光パルス復調器34によって第1チャンネルに割り当てられた光波長スペクトル成分のみが分離されて第1チャンネル光復調受信信号35-1が生成される。
【0086】
一方、第1光パルス復調器34を透過した第1〜第8チャンネル変調光送信信号23の光波長スペクトル成分35-2は、第2受信部40が具えている第2光パルス復調器によって第2チャンネルに割り当てられた光波長スペクトル成分のみが分離されて第2チャンネル光復調受信信号が生成される。
【0087】
以下、第3受信部(図示を省略してある。)〜第8受信部44において同様に、各チャンネルに割り当てられた光波長スペクトル成分のみが分離されて各チャンネルのチャンネル光復調受信信号が生成される。
【0088】
第1受信信号再生部36は、第1チャンネル光復調受信信号35-1が入力されて、第1チャンネル電気再生受信信号37を生成して出力する。
【0089】
図2を参照して、タイミング調整器16の構造及びその動作について説明する。図2は、タイミング調整器16の概略的ブロック構成図である。
【0090】
タイミング調整器16は、送信側スイッチ制御信号発生器28、切り換えスイッチ24、及び結合器26を具えて構成されている。切り換えスイッチ24には、第1チャンネル電気送信信号がまず入力され、続いて第2チャンネル電気送信信号が入力される。以後、第3〜第8チャンネル電気送信信号の順に逐次切り換えスイッチ24に入力される。このようにチャンネル順に逐次切り換えスイッチ24に入力される電気送信信号を、図2では、第1〜第8チャンネル電気送信信号13と示してある。
【0091】
切り換えスイッチ24には、第1〜第8チャンネル電気送信信号13の他、送信側スイッチ制御信号発生器28から出力される送信側スイッチ制御信号29が入力される。第1〜第8チャンネル電気送信信号13は、切り換えスイッチ24によって、送信側スイッチ制御信号29に同期して、チャンネルごとに切り換えられて、順次遅延線25-1〜25-8に入力する動作が行われる。すなわち、第1チャンネル電気送信信号が遅延線25-1に入力され、第2チャンネル電気送信信号が遅延線25-2に入力され、同様に第3チャンネル電気送信信号〜第8チャンネル電気送信信号がそれぞれ遅延線25-3〜25-8に入力される。
【0092】
遅延線25-1〜25-8では、それぞれ隣接して入力されるチャンネルの電気送信信号が時間軸上で重なることが無いように、各チャンネルの電気送信信号に遅延が与えられる。すなわち、各チャンネルに分配されている時間スロットが重ならないように、各チャンネルの電気送信信号に遅延が与えられる。遅延線25-1〜25-8のそれぞれの長さは、順次遅延量が増大するように調整されている。そして、遅延線25-1〜25-8から出力される各チャンネルの電気送信信号は結合器26で結合されて、第1〜第8チャンネル電気送信信号17として出力される。
【0093】
<この発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システム>
図3を参照して、この発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの構造及びその動作について説明する。図3は、この発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの概略的ブロック構成図である。
【0094】
この発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムは、送信装置50と受信装置30とを具えて構成されている。受信装置30は、上述のこの発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムが具えていた受信装置と同一であるので、この発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムにおいても受信装置を受信装置30として示してある。すなわち、この発明の実施形態の第1光信号チャンネル分割多重通信システムと第2の光信号チャンネル分割多重通信システムとの相違は、送信装置の構成にある。
【0095】
従って、以下のこの発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの構成及びその動作の説明においては、送信装置50について説明を行う。また、ここでも上述のこの発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムの説明同様、一例として、多重するチャンネル数を8チャンネルとして説明する。
【0096】
送信装置50は、電気送信信号発生部46と、光パルス列発生器18と、光パルス波長分散器20と、光変調器22とを具えている。上述のこの発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムの送信装置10との相違点は、電気信号発生部46にあり、光パルス列発生器18、光パルス波長分散器20、および光変調器22は、両者のシステムにおいて共通の構成要素である。
【0097】
電気送信信号発生部46は、同一時間軸上に並列して並ぶ第1〜第8チャンネルパラレル電気送信信号53-1〜53-8を、時間軸上に順次シリアルに並ぶシリアル電気送信信号55に変換するパラレル-シリアル変換器54を具えている。
【0098】
パラレル-シリアル変換器54は、第1〜第8チャンネル変調光送信信号43を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように変調される条件で、シリアル電気送信信号55を構成する第1〜第8チャンネルの送信信号成分が光変調器22に入力されるように、当該シリアル電気送信信号55の送信タイミングを調整して出力する。
【0099】
光変調器22は、拡散光パルス列21及びシリアル電気送信信号55が入力されて、拡散光パルス列をシリアル電気送信信号55で変調して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号43を順次生成して出力する。
【0100】
既に説明したこの発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムの送信装置10から出力される第1〜第8チャンネル変調光送信信号23は、チャンネルごとの送信信号がまとまって、時間軸上に第1チャンネル電気送信信号から第8チャンネル電気送信信号の順に並んで構成される信号である。すなわち、第1〜第8チャンネル変調光送信信号23は、チャンネルごとの送信信号を単位として時間多重されて構成されている。
【0101】
これに対して、第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの送信装置50から出力される第1〜第8チャンネル変調光送信信号43は、シリアル電気送信信号に変換された第1チャンネル電気送信信号53-1〜第8チャンネル電気送信信号53-8をそれぞれ構成する第1〜第8チャンネルの1ビット目が、第1〜第8チャンネルの順に並び、次に2ビット目が第1〜第8チャンネルの順に並ぶという順序で時間軸上に並び、以下3ビット目以降も同様の順で並んで構成されている点が異なる。すなわち、第1〜第8チャンネル変調光送信信号43は、ビット単位で時間多重されて構成されている。
【0102】
図4を参照して、パラレル-シリアル変換器54の構造及びその動作について説明する。図4は、パラレル-シリアル変換器54及びこの構造及びその動作の説明に必要な送信制御信号発生器58と第1〜第8チャンネル電気送信信号発生器52-1〜52−8を含めて示した概略的ブロック構成図である。
【0103】
パラレル-シリアル変換器54は、遅延線55-1〜55-8及び結合器56を具えて構成されている。
【0104】
第1〜第8チャンネル電気送信信号発生器52-1〜52-8のそれぞれには、送信制御信号発生器58から送信制御信号59が供給されている。この送信制御信号59によって、第1〜第8チャンネル電気送信信号発生器52-1〜52-8から出力される第1〜第8チャンネルパラレル電気送信信号53-1〜53-8の送信タイミングが調整される。
【0105】
遅延線55-1〜55-8では、第1チャンネル電気送信信号の1ビット目に続いて第2チャンネル電気送信信号の1ビット目、と順次第8チャンネル電気信号の1ビット目が時間軸上で並び、続いて順次第1チャンネル電気送信信号の2ビット目に続いて第2チャンネル電気送信信号の2ビット目、と順次第8チャンネル電気信号の2ビット目が時間軸上で並び、以下同様に、第1チャンネル電気送信信号の最終ビット目に続いて第2チャンネル電気送信信号の最終ビット目、と順次第8チャンネル電気送信信号の最終ビット目が時間軸上で並ぶという形態で時間軸上に信号ビットが並ぶように、第1チャンネル電気送信信号53-1〜第8チャンネル電気送信信号53-8に対して時間遅延が与えられる。
【0106】
そして、遅延線55-3〜55-8から出力される各チャンネルの電気送信信号は結合器56で結合されて、シリアル電気送信信号55として出力される。
【0107】
<受信信号再生部>
図5を参照して、この発明の実施形態の第1及び第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの受信装置30が具える第1受信信号再生部36の構成及びその動作について説明する。図5は、第1受信信号再生部36の概略的ブロック構成図である。第2受信部40〜第8受信部44がそれぞれ具える第2〜第8受信信号再生部も、その構成及びその動作は同一であるので、ここでは、一例として、第1受信信号再生部36を代表して取り上げて説明する。
【0108】
第1受信信号再生部36は、第1光パルス復調器34から出力される第1チャンネル光復調受信信号35-1を電気信号の形態の第1チャンネル電気復調信号61に変換するフォトダイオード(Photodiode: PD)60と、第1チャンネル電気復調信号61を増幅して第1チャンネル電気復調信号63として出力する増幅器62と、クロックデータリカバリー(Clock Data Recovery: CDR)回路64とを具えて構成されている。
【0109】
CDR回路64は、分配器68、バンドパスフィルタ72、及びD-FF(D-フリップフロップ)回路70を具えている。分配器68は、第1チャンネル電気復調信号63を分岐第1チャンネル電気復調信号68-1と分岐第1チャンネル電気復調受信信号68-2とに分岐する。
【0110】
分岐第1チャンネル電気復調信号68-2は、第1チャンネル光復調受信信号35-1のビットレート周波数に等しい周波数成分をフィルタリングしてクロック信号73を再生するバンドパスフィルタ72に入力される。すなわち、バンドパスフィルタ72からは、第1チャンネル光復調受信信号35-1から再生されたクロック信号73が出力される。
【0111】
分岐第1チャンネル電気復調信号68-1及びクロック信号73は、D-FF回路70に入力され、D-FF回路70から第1チャンネル電気再生受信信号37が生成されて出力される。
【0112】
図5に示す第1受信信号再生部36が具えているCDR回路64の構成は、時間波形が歪んで受信された電気受信信号の時間波形を整形するために一般的に利用されている周知の電気回路である。
【0113】
第1光パルス復調器34で復調されて得られる第1チャンネル光復調受信信号35-1の時間波形は、その形状に歪みがありまた雑音成分も含まれている。第1チャンネル電気復調信号61、第1チャンネル電気復調信号63、及び分岐第1チャンネル電気復調信号68-1の時間波形にも同様の歪みがありまた雑音成分も含まれている。
【0114】
従って、CDR回路64によって、時間波形が整形されしかも雑音成分が除去された第1チャンネル電気再生受信信号37が生成される。
【0115】
<符号化>
図6(A)〜図8(C)を参照して符号化についての説明を行う。
【0116】
まず、符号化の説明を行うに当たり、図6(A)〜図6(D)を参照して、図1を参照して説明した送信装置10が具えている光パルス列発生器18から出力される光パルス列19、及び光パルス波長分散器20から出力される拡散光パルス列21について説明する。
【0117】
図6(A)〜図6(D)は、第1〜第8チャンネル変調光送信信号23を生成する際に使われる拡散光パルス列21の生成方法及びこの拡散光パルス列21の性質についての説明に供する図であり、図6(A)は光パルス列19の時間波形を示す図であり、図6(B)は拡散光パルス列21を構成する光パルスの波長スペクトルを示す図であり、図6(C)は拡散光パルス列21を構成する光パルスの時間軸上での重なりの様子の説明に供する示す図であり、図6(D)は拡散光パルス列21を構成する光パルスの時間軸上での波長分布の説明に供する図である。
【0118】
図6(A)、図6(C)、図6(D)において横軸に時間軸を、図6(B)においては横軸に波長軸を、それぞれ任意目盛で目盛って示してある。また、各図とも縦軸は省略してあるが強度を任意スケールで示してある。
【0119】
光パルス列19は、図6(A)に示すように、時間間隔がTdで複数の光パルスが並ぶ光パルス列である。図6(A)では、代表して光パルス3つ分を示してあり、これら3つの光パルスを識別可能とするために、光パルスの包絡線をそれぞれ細かな波線(光パルス19-1)、実線(光パルス19-2)、粗い波線(光パルス19-3)で示してある。このような光パルス列は、モード同期レーザ等の周知の技術を用いて生成することが可能である。光パルス列19を構成する光パルスの時間波形の半値全幅は、ps(ピコ秒)程度の広さであればよく、fs(フェムト秒)の領域の極めて狭い半値全幅を有している必要はない。これは、光パルス波長分散器20によって、光パルス列19を構成する光パルスの時間幅を拡張する手法がとられているからである。
【0120】
光パルス列19は、光パルス波長分散器20によって、構成する光パルスの時間波形の半値全幅が拡張されて拡散光パルス列21に変換される。光パルス波長分散器20は、周期的実効屈折率分布の周期が伝播方向に徐々に変化するように形成されているチャープグレーティング型のFBG等周知の素子を利用して形成することが可能である。また、光パルス波長分散器20は、分散補償型光ファイバ等によっても形成することが可能である。
【0121】
図6(B)に示すように、拡散光パルス列21を構成する光パルスの波長スペクトルは、その中心波長がλsであり、半値全幅がΔλsである。また、拡散光パルス列21を構成する光パルスの波長スペクトルは、唯一の極大を持つガウス関数を表す曲線で近似できる形状をしている。すなわち、拡散光パルス列21を構成する光パルスは単一波長の光パルスである。
【0122】
これら、中心波長λs及び半値全幅Δλsの値は、後述する受信装置30における復調を行う際に利用される復調器を構成するSSFBGの設計を行う際の必須パラメータである。
【0123】
光パルス波長分散器20から出力される拡散光パルス列21の時間波形は、図6(C)に示すように、隣接する光パルスどうしが時間軸上で部分的に重なり合っている。
【0124】
拡散光パルス列21を構成する各光パルスは、光パルス波長分散器20によって、光パルス列19を構成する各光パルスが波長分散されて形成された光パルスであるので、時間軸上でこの光パルスの波長スペクトル成分が分離されて順に配列される。例えば、光パルス波長分散器20の波長分散特性が、長波長成分に与える遅延量よりも短波長成分に与える遅延量が小さい場合は、図6(D)に示すように、光パルス列19を構成する各光パルスは、時間軸の方向に沿って長波長から短波長の順に配列された形状に変形される。逆に、光パルス波長分散器20の波長分散特性が、短波長成分に与える遅延量よりも長波長成分に与える遅延量が小さい場合は、図6(D)に示す形状とは逆に、時間軸の方向に沿って短波長から長波長の順に配列された形状となる。すなわち、光パルス波長分散器20の波長分散特性は、長波長成分に与える遅延量と短波長成分に与える遅延量との関係が上述のいずれであっても良い。
【0125】
図7(A)〜図7(C)を参照して、この発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムの符号化処理について説明する。
【0126】
図7(A)〜図7(C)は、この発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムの符号化処理についての説明に供する図であり、図7(A)はタイミング調整器16によって各チャンネルに与えられ時間遅延量が調整されて出力された第1〜第8チャンネル電気送信信号17の時間波形を示す図であり、図7(B-1)及び図7(B-2)は第1〜第8チャンネル電気送信信号17によって拡散光パルス列21から第1チャンネル及び第2チャンネルの波長スペクトル成分がを切り出される様子を示す図であり、図7(C)は拡散光パルス列21を構成する光パルスの波長スペクトル成分から切り出されて第1チャンネル及び第2チャンネルに分配される波長成分についての説明に供する図である。
【0127】
図7(A)、図7(B-1)、図7(B-2)においては横軸に時間軸を、図7(C)においては横軸に波長軸を、それぞれ任意目盛で目盛って示してある。また、各図とも縦軸は省略してあるが強度を任意スケールで示してある。
【0128】
シリアル電気送信信号発生部12から出力される第1〜第8チャンネル電気送信信号13は、タイミング調整器16によって各チャンネルに与えられる時間遅延量が調整され、第1〜第8チャンネル電気送信信号17として出力される。この第1〜第8チャンネル電気送信信号17は、図7(A)に示すように、第1チャンネルから第8チャンネルの電気送信信号が、チャンネルごとに固まって時間軸上に順次配列された信号である。
【0129】
図7(A)において、第1チャンネルの電気送信信号をCH-1、第2チャンネルの電気送信信号をCH-2、及び第8チャンネルの電気送信信号をCH-8と示してある。また、第1チャンネルの電気送信信号CH-1と第2チャンネルの電気送信信号CH-2との時間間隔がσ1に設定されており、第7チャンネルの電気送信信号(図示を省略してある。)と第8チャンネルの電気送信信号CH-8との時間間隔がσ7に設定されている。また、各チャンネルを構成する信号ビット(1つの電気パルスが占める時間スロット)を縦長の矩形で示し、この縦長の矩形に施した相異なるハッチングによって各チャンネルを識別できるようにしてある。
【0130】
図7(B-1)は、拡散光パルス列21を構成する光パルスを3つ分の光パルスの包絡線をそれぞれ細かな波線(光パルス19-1)、実線(光パルス19-2)、粗い波線(光パルス19-3)で示し、この拡散光パルス列21を構成するそれぞれの光パルスを時間軸上で切り出す役割を果たす第1チャンネルの電気送信信号CH-1を構成する電気パルスの時間軸上での存在位置を縦長の矩形で示している。図7(B-2)は、図7(B-1)と同様の図であって、3つ分の光パルスの包絡線を示す図に重ねて第2チャンネルの電気送信信号CH-2を構成する電気パルスの時間軸上での存在位置を縦長の矩形で示している。
【0131】
図7(B-1)と図7(B-2)とを対比すると、第1チャンネルの電気送信信号CH-1及び第2チャンネルの電気送信信号CH-2を構成する電気パルスの時間軸上での存在位置が異なり、それによって、拡散光パルス列21を構成する光パルスから切り出される波長スペクトル成分が異なることが分かる。このように、拡散光パルス列21を構成するそれぞれの光パルスから相異なる波長スペクトル成分を切り出すことによって、チャンネル識別が可能となり、この切り出しによって変調光送信信号23を生成することが符号化することに相当する。
【0132】
第1〜第8チャンネル電気送信信号17を構成する各チャンネルの電気パルスの時間軸上での存在位置は、タイミング調整器16によって確定され、図7(A)で示すように、第1チャンネルの電気送信信号CH-1と第2チャンネルの電気送信信号CH-2との時間間隔を示すσ1等の値によってその存在位置が定量的に与えられる。すなわち送信装置10における各チャンネルの符号化処理は、このσ1等で与えられるパラメータによってその符号が決められる。
【0133】
図7(C)を参照して、拡散光パルス列21を構成する光パルス19-2を取り上げて、拡散光パルス列21の波長スペクトルから、第1チャンネル及び第2チャンネルに分配される波長スペクトル成分について説明する。図7(B-1)と図7(B-1)とを参照して説明したように、各チャンネルの電気パルスの時間軸上での存在位置が、隣接するチャンネル間の時間間隔を与えるσ1等の値によって決まっているので、第1〜第8チャンネル電気送信信号17によって切り出される拡散光パルス列21の波長スペクトル成分が確定される。
【0134】
図7(C)に示すように、第1チャンネルに分配される波長スペクトル成分は、CH-1と示す縦長の矩形の領域に収まる波長スペクトル成分であり。第2チャンネルに分配される波長スペクトル成分は、CH-2と示す縦長の矩形の領域に収まる波長スペクトル成分である。
【0135】
図7(C)では、図面が複雑化して見にくくならないように、第1及び第2チャンネルに分配される波長スペクトル成分のみを示してあるが、実際は第3〜第8チャンネルには、第1及び第2チャンネルに分配される波長スペクトル成分以外の波長スペクトル成分が分配される。第3〜第8チャンネルに分配される波長スペクトル成分は、図示は省略してあるが、σ2〜σ7の値によって確定され、σ1〜σ7の値はそれぞれ互いに異なる値に設定されている。
【0136】
図8(A)〜図8(C)を参照して、この発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの符号化処理について説明する。
【0137】
図8(A)〜図8(C)は、この発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの符号化処理についての説明に供する図であり、図8(A)は第1〜第8チャンネル電気送信信号発生器52-1〜52-8からそれぞれ出力される第1〜第8チャンネル電気送信信号53-1〜53-8の時間波形を示す図であり、図8(B)はシリアル電気送信信号55の時間波形を示す図であり、図8(C)は拡散光パルス列21を構成する光パルスの波長スペクトル成分から切り出されて第1〜第8チャンネルに分配される波長成分についての説明に供する図である。
【0138】
図8(A)〜図8(C)において、各チャンネルを構成する信号ビット(1つの電気パルスが占める時間スロット)を縦長の矩形で示し、この縦長の矩形に施した相異なるハッチングによって各チャンネルを識別できるようにしてある。図8(A)〜図8(C)において横軸に時間軸を任意目盛で目盛って示してあり、縦軸は省略してあるが強度を任意スケールで示してある。
【0139】
図8(A)は、上から順に第1〜第8チャンネル電気送信信号発生器52-1〜52-8からそれぞれ出力される第1〜第8チャンネル電気送信信号53-1〜53-8の時間波形を示している。図8(A)では、各チャンネルを構成する信号の電気パルスを縦長の矩形で示し、この縦長の矩形に施した相異なるハッチングによって各チャンネルを識別できるようにしてある。
【0140】
第1〜第8チャンネル電気送信信号発生器52-1〜52-8からそれぞれ出力される第1〜第8チャンネル電気送信信号53-1〜53-8の位相は、送信制御信号発生器58から出力される送信制御信号59によって規定されるが、最終的にパラレル-シリアル変換器54によって、図8(B)に示すように、第1〜第8チャンネル電気送信信号の1ビット目が第1〜第8チャンネルの順に並び、次に2ビット目が第1〜第8チャンネルの順に並び分という順序で時間軸上に並び、以下3ビット目以降も同様の順で並ぶように当該位相が調整される。
【0141】
図8(C)は、上述した図7(B-1)及び図7(B-2)と同様に、拡散光パルス列21を構成する光パルスを3つ分の光パルスの包絡線をそれぞれ細かな波線(光パルス19-1)、実線(光パルス19-2)、粗い波線(光パルス19-3)で示し、この拡散光パルス列21を構成するそれぞれの光パルスを時間軸上で切り出す役割を果たす第1〜第8チャンネルの電気送信信号CH-1〜CH-8を構成する電気パルスの時間軸上での存在位置を縦長の矩形で示している。
【0142】
図8(C)に示すように、第1〜第8チャンネルに分配される波長スペクトル成分は、CH-1〜CH-8と示す縦長の矩形の領域に収まる位置に存在する波長スペクトル成分である。拡散光パルス列21を構成する光パルスは、図6(D)に示したように、時間軸の方向に沿って長波長から短波長の順に配列された形状となっているので、時間軸上での位置によって切り出される波長スペクトル成分は異なる。すなわち、CH-1〜CH-8と示す縦長の矩形の領域からは、それぞれ固有の波長スペクトル成分が切り出され、各チャンネルはこの固有の波長スペクトル成分の相違によって識別されることとなる。
【0143】
このように、光変調器22によって、拡散光パルス列21を構成するそれぞれの光パルスから相異なる波長スペクトル成分が切り出されることによってチャンネル識別が可能となり、この切り出しによって変調光送信信号43を生成することが符号化することに相当する。
【0144】
<復号化>
図9(A)〜図9(C)を参照して、この発明の実施形態の第1及び第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの各チャンネルの光パルス復調器に利用されるSSFBGの詳細な構造を説明する。図9(A)〜図9(C)は、この発明の実施形態の第1及び第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの各チャンネルの光パルス復調器の説明に供する図である。
【0145】
図9(A)は、単位FBGを矩形で模式的に示すSSFBGの模式的な図であり、図9(B)は、SSFBGの屈折率変調構造を概略的に示す図である。横軸はSSFBGが形成された光ファイバの長手方向に沿った位置座標である。縦軸は光ファイバの屈折率変調量Δnをグラフ化して表しており、屈折率変調量Δnとは、光ファイバを構成するコアの屈折率の最大と最小の差を意味する。また、図9(C)には、光ファイバのコアの屈折率変調量Δnを表すグラフを一部拡大して描いてある。図9(A)、(B)及び(C)では、単位FBGの個数を示すMの値が32、すなわち、32個の単位FBGを具えたSSFBGを一例として示してある。
【0146】
単位FBGの屈折率周期構造の周期Λが、後述する単位FBGのブラッグ波長λbを決定する。すなわち、SSFBGを構成している光ファイバの平均実効屈折率の値がneffである場合、λbは2・neffΛで与えられる。
【0147】
復号化の説明に当たって、説明の便宜上以下のとおりの条件を設定するが、以下に説明する内容の技術的特徴はこの設定条件を変更しても影響しない。また、復号化のプロセスは、この発明の実施形態の第1及び第2の光信号チャンネル分割多重通信システムに共通するので、以下の説明においては、第1の光信号チャンネル分割多重通信システムに関する説明であるか、第2の光信号チャンネル分割多重通信システムに関する説明であるかは断らない。
【0148】
光パルス列19の繰返し周期Tdを800 ps(=1/1.25 GHz)とし、光パルス列19の波長スペクトルの中心波長を1549.3 nm、光パルス列19を構成する光パルスの波長スペクトルの半値全幅Δλsを0.64 nm(時間波形の半値全幅に換算して6 psに相当する。)とした。
【0149】
光パルス波長分散器20の波長分散量DpをDp=800 ps×(1/0.64 nm)=1250 ps/nmと設定した。
【0150】
また、光変調器22における変調速度を1.25 Gb/sとし、変調幅を100 ps以下に設定した。繰返し周期Tdが800 ps(=1/1.25 GHz)であるから、この繰返し周期に相当する時間スロットを8個の時間スロットに分割し、第1〜第8チャンネルの各ビットがこの繰返し周期内に1ビットずつ収まるように設定した。
【0151】
この発明の実施形態において、光パルス列19を構成する光パルスの時間波形の半値全幅は6 psである。このため、第1〜第8チャンネルの各チャンネル当たり割り当てられる波長スペクトルの波長帯域は、拡散光パルス列21を構成する1つの光パルス当たり2箇所ないし3箇所の切り出し箇所を持って切り出される波長帯域となる。
【0152】
すなわち、図7(C)に示したように、CH-1で示されている縦長の矩形の領域は、拡散光パルス列21を構成する1つの光パルス当たり3箇所あり、CH-2で示されている縦長の矩形の領域は、拡散光パルス列21を構成する1つの光パルス当たり2箇所ある。同様に、図7(C)には図示を省略してあるが、CH-3〜CH-8に割り当てられる波長スペクトル領域も2箇所ないし3箇所の切り出し箇所を持って切り出される波長帯域となる。
【0153】
各チャンネルの光パルス復調器に利用されるSSFBGを以下に説明する条件で形成することによって、受信装置30における第1〜第8光パルス復調器において、各チャンネルの光復調信号を生成することが可能となる。
【0154】
図10(A)及び図10(B)を参照して、第1〜第8チャンネルの受信部がそれぞれ具える第1〜第8光パルス復調器の動作説明の前提となる第1〜第8チャンネル変調光送信信号の時間波形につき説明する。図10(A)及び図10(B)は、第1〜第8光パルス復調器の動作説明の前提となる第1〜第8チャンネル変調光送信信号の時間波形を示す図であり、図10(A)は、拡散光パルス列21を構成する光パルス3つ分のそれぞれの光パルスから切り出される第1チャンネルの波長スペクトル成分を概略的に示す図であり、図10(B)は第1チャンネルの1ビット分の変調光送信信号23あるいは43の時間波形を模式的に示す図である。この発明の実施形態では、光パルスの波長成分間の干渉により変調され、チップパルス列が生成される。
【0155】
第2光パルス復調器に入力される変調光送信信号35-2は、第1チャンネルに割り当てられた波長スペクトル成分が第1〜第8チャンネル変調光送信信号23あるいは43から除去されている。また、同様に、第3〜第8光パルス復調器に入力される変調光送信信号は、それぞれそれよりも前の位置に配置されている光パルス復調器によって、除去された波長スペクトル成分を欠いているが、以下の説明では、この欠損している波長スペクトル成分があっても、残されている波長スペクトル成分から、それぞれのチャンネルに割り当てられた波長スペクトル成分を抽出しチャンネル光復調受信信号が生成されるので、欠損している波長スペクトル成分は何らこの復号化には影響を与えない。
【0156】
図11(A)及び図11(B)を参照して、第1光パルス復調器34の構成及びその動作について説明する。図11(A)及び図11(B)は、第1光パルス復調器34の構成及びその動作についての説明に供する図であり、図11(A)は、第1光パルス復調器34概略的構成を示す図であり、図11(B)は、第1光パルス復調器34が具えるSSFBGに入力されるチップパルス列を構成するM個(M≧8)のチップパルスのそれぞれが、SSFBGによってM個のチップパルスに変換され、これら合計(M×M)個のチップパルスの干渉によって自己相関波あるは相互相関波が生成される過程を説明する図である。
【0157】
この発明の実施形態の復号化の動作についてより一般的に説明するため、SSFBGが具える単位FBGの個数を8個と限定せずM個と表現してある。また、図11(A)では、SSFBGがM個の単位FBGを具えて構成され、単位FBGの配置間隔周期をLとしてある。
【0158】
図11(A)に示すように、第1〜第8チャンネル変調光送信信号を構成するM個の光パルス列が光サーキュレータ74の第1ポートから入力され、第2ポートに出力されてSSFBG 76に入力されて、ブラッグ反射された波長スペクトル成分が再び第2ポートに入力されて第3ポートから各チャンネルに割り当てられた波長スペクトル成分からなる変調光送信信号が出力される。
【0159】
図11(B)では、横軸に時間軸Tを示してある。また、縦方向には、SSFBGに入力される変調光送信信号を構成するM個のチップパルスのそれぞれが、SSFBGによってM個の光パルスに変換されることで得られるMとおりのチップパルス列を、SSFBGから出力される時間遅れの関係を反映させてM段に並べて示してある。i=1と示してあるチップパルス列は、符号器から出力されるチップパルス列を構成するチップパルスの第1番目のチップパルスが復号器でチップパルス列として生成されたものである。同様にi=2〜Mと示してあるチップパルス列は、それぞれ符号器から出力されるチップパルス列を構成するチップパルスの第2〜M番目のチップパルスが復号器でチップパルス列として生成されたものである。i=1〜Mと示してあるチップパルス列が、図11(B)に示すように時間軸上で重なり合って干渉する結果、復号器であるSSFBGからは、自己相関波あるいは相互相関波が出力される。
【0160】
以下の説明では、数式を使う関係上、式を見やすくするために、チャンネル数を8と設定せず一般的にNで表すこととする。
【0161】
単位FBGのブラッグ反射波長λbを次式(1a)及び(1b)
λb=λs+{k+(1/2)}Δλs/N (1a)
(ただし、Nが偶数であって、kは-N/2〜(N/2)-1の範囲の整数)
λb=λs+k・Δλs/N (1b)
(ただし、Nが奇数であって、kは-(N-1)/2〜(N-1)/2の範囲の整数)
で与えられる値に設定する。
【0162】
単位FBGのブラッグ反射波長帯域の半値全幅Δλbを、次式(2)
Δλb=Δλs=Td/Dp (2)
で与えられる値に設定する。
【0163】
隣接する単位FBGの配置周期Lを、次式(3)
L={(λb−Δλb/2)×(λb+Δλb/2)}÷(2・neffΔλb) (3)
で与えられる値に設定する。
【0164】
隣接する単位FBGからのブラッグ反射光の位相差Θを、次式(4)
Θ=(1/2)×λb=(1/2)×(λs+j・Δλs/N) (4)
で与えられる値に設定する。
【0165】
ここで、Tdは光パルス列の光パルスの繰り返し周期、Dpは光パルス波長分散器の波長分散量、λsは光パルス列発生器から出力される光パルス列の波長スペクトルのピーク波長、Δλsは光パルス列の波長スペクトルの半値全幅、及び、neffはSSFBGを構成する光ファイバの実効屈折率である。
【0166】
上述のように、ブラッグ反射光の位相差Θを設定することで、図7(A)〜図7(C)及び図8(A)〜図8(C)を参照して説明した、各チャンネルに割り当てられる波長スペクトル成分が確定される。すなわち、例えば、多重数を8チャンネルとする場合は、式(4)のファクタjに1〜8をそれぞれ与えることによって、第1〜第8チャンネルに設定される拡散光パルス列21を構成する光パルスの時間軸上での切り出し位置が確定し、それに伴って、第1〜第8チャンネルに割り当てられる波長スペクトルが確定される。
【0167】
既に図1あるいは図3を参照して説明したように、第1〜第8チャンネル電気送信信号17あるいはシリアル電気送信信号55は、第1〜第8チャンネルに設定される拡散光パルス列21を構成する光パルスの時間軸上での切り出し位置、すなわち、拡散光パルス列21を構成する光パルスを切り出して各チャンネルに割り当てられる波長を確定する位相が、上述のブラッグ反射光の位相差Θと合致するように、その位相が調整されている。このように拡散光パルス列21を構成する光パルスに時間軸上でのタイミングを調整するには、例えば、受信装置が具えている第1〜第8光パルス復調器から出力される各チャンネルの光復調受信信号の強度が最大となるようにタイミング調整器16あるいはパラレル-シリアル変換器54で各チャンネルの送信信号の遅延量を設定すればよい。
【0168】
図7(C)に示したように、拡散光パルス列21を構成する光パルスの半値全幅はΔλsであり、この半値全幅Δλsを与える短波長側の波長をλ1とし長波長側の波長をλ2とする。図10(B)のチップパルス列のパルス周期tbは、次式(5)で与えられる。
tb={1/c}×{(λ1・λ2)/Δλs} (5)
ここで、cは光速度である。また、Δλs=λ2−λ1(λ2>λ1)である。
【0169】
チップパルス列の波長スペクトルの中心波長λsが1.55μmであって、Δλsが0.64 nmである場合、tbはほぼ12.5 psとなる。
【0170】
また、単位FBGのブラッグ反射光の波長λbを次式(6)で与えられる値に設定し、
λb=(λ1+λ2)/2=λ1+Δλs/2=λ2−Δλs/2 (6)
及び、隣接する単位FBGの配置周期Lを次式(7)
L=(c×tb)/(2neff) (7)
で表される値に設定する。
【0171】
SSFBG 76を構成する隣接する単位FBGから反射されるブラッグ反射光の位相差は次式(8)で与えられるように、各単位FBGのブラッグ反射波長λb及び単位FBGの配置周期Lが設定されている。
2π×2×L×neff/λb=2π×(m+(1/2)) (8)
ここで、mは0以上の整数である。
【0172】
隣接する単位FBGからブラッグ反射されるチップパルス間の位相差φは次式(9)で与えられる。
φ=2π×2×L×neff/λx=2π×(m+(1/2))×λb/λx (9)
ここで、x=1又は2である。
すなわち、
φ=2π×(m+(1/2))×(1+(Δλs/2λ1))
又は、
=2π×(m+(1/2))×(1−(Δλs/2λ2))
あるいは、
φ=π+{2π×(m+(1/2))×(Δλs/λ1)
又は、
=π−{2π×(m+(1/2))×(Δλs/λ2)
となる。すなわちφの値はΔλsの大きさによって決定される。
【0173】
送信装置10あるいは50で生成され位相Δφeが与えられて出力されたチップパルス、すなわち、図11(A)の光サークレータ74の第1ポートに入力されるチップパルス列を構成する第i番目のチップパルスが、SSFBG 76の第j単位FBGによって復号化され位相Δφdが更に付加されて与えられたと仮定すると、SSFBG 76から出力されるチップパルス列の第1番目のチップパルスを基準として、このチップパルスは次式(10)
Δφij=j×Δφe+j×Δφd (10)
で与えられる位相Δφijを有している。
【0174】
図11(B)に示すように、SSFBG 76に入力されるチップパルス列を構成するM個のチップパルスのそれぞれは、SSFBG 76によってM個のチップパルスに変換される。その結果、合計(M×M)個のチップパルスが生成される。送信装置10あるいは50で生成されたM個のチップパルスのそれぞれのチップパルスがSSFBG 76で再びM個のチップパルスからなるチップパルス列となり、これらのチップパルス列が時間軸上で重なることによる干渉によって自己相関波あるは相互相関波が生成される。
【0175】
時刻T=j+jにおいて時間軸上で重なりあうチップパルスの位相Δφjj(T)は、次式(11)
Δφjj(T)=T×Δφd+(Δφe−Δφd)×j (11)
で与えられる。
【0176】
Δφe=Δφd=Δφである場合、Δφjj(T)=T×Δφとなり、jの値に依存せず時刻Tにおいて全てのチップパルスが同位相で干渉しあう。すなわち、時刻Tにおいて非常に大きなピークが形成され自己相関波が形成される。
【0177】
一方、ΔφeとΔφdとが異なっている場合、時刻T=i+jにおいて時間軸上で重なりあうチップパルスの位相Δφij(T)は、jの値によってΔφij(T)の値がそれぞれ異なってくるから、チップパルス同士は干渉によってそれぞれ打ち消しあってピークが形成されず相互相関波が形成される。
【0178】
この発明の第1及び第2の光信号チャンネル分割多重通信システムによれば、多重するチャンネル数を増やすことに対応して、波長グリッドを狭くすることが可能である。例えば、波長グリッドを0.1 nm以下に設定することが可能である。しかも各チャンネルに割り当てられる波長スペクトルは変動することがない。
【0179】
受信装置30が具える各チャンネルに設置される光パルス復調器が具えるSSFBGの単位FBGのブラッグ反射波長λb、あるいは単位FBGの配置周期L等を、拡散光パルス列21を構成する光パルスの波長スペクトルの中心波長λs及び半値全幅Δλs及び各チャンネルに割り当てられる波長スペクトル成分を確定する式(4)のファクタjをチャンネルごとに設定することによって、擬似的OCDMが実現される。
【符号の説明】
【0180】
10、50:送信装置
12:シリアル電気送信信号発生器
16:タイミング調整器
18:光パルス列発生器
20:光パルス波長分散器
22:光変調器
24:切り換えスイッチ
25-1〜25-8、55-1〜55-8:遅延線
26、56:結合器
28:送信側スイッチ制御信号発生器
30:受信装置
32:第1受信部
34:第1光パルス復調器
36:第1受信信号再生部
40:第2受信部
44:第8受信部
46:電気送信信号発生部
52-1〜52-8:第1〜第8チャンネル電気送信信号発生器
54:パラレル-シリアル変換器
58:送信制御信号発生器
60:フォトダイオード(PD)
62:増幅器
64:CDR回路
68: 分配器
70:D-フリップフロップ(D-FF)回路
72:バンドパスフィルタ
74:光サーキュレータ
76:SSFBG
【技術分野】
【0001】
この発明は、波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスを、相異なる波長成分に分割して複数のチャンネルに分配し、波長成分の相違をチャンネル識別標識として利用して光伝送を行う、光信号チャンネル分割多重通信方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及等により通信需要が急速に増大しており、それに対応して通信の大容量化が図られている。通信システムも多様な形態が構築されており、大容量伝送が可能な光ADM(Add-Drop-Multiplexer: 分岐挿入装置)を具えた、柔軟なバスあるいはリング形態の通信ネットワークが盛んに提案され研究されている。
【0003】
通信の大容量化のための手法として注目されるのが、一本の光ファイバ伝送路に複数チャンネル分の光パルス信号をまとめて伝送する光多重技術である。光多重技術としては、光時分割多重(OTDM: Optical Time Division Multiplexing)方式、波長分割多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)方式及び光符号分割多重(OCDM:Optical Code Division Multiplexing)方式が盛んに研究されている。
【0004】
OTDM方式によれば、1つの光源と光変調器により、複数チャンネルの信号を生成することができ、スターカプラを具えて構成されるPON(Passive Optical Network)等の通信ネットワークではよく用いられる方式である。また、WDM方式あるいはOCDM方式によれば、波長フィルタや符号器によって、光信号の状態でチャンネルの識別ができるため、これらの通信方式は、バスやリングなどの柔軟な形態の通信ネットワークに用いて好適な方式である。
【0005】
しかしながら、OTDM方式は、チャンネルの識別を、全てのデータを再生して電気信号の形態で実行する方式であるため、OTDM方式を採用したバスあるいはリング形態のネットワークでは、分岐点ごとに受信器を配置する必要がある。すなわち、このバスあるいはリング形態のネットワークでは、他チャンネルのデータ信号を次の分岐点に送るための信号を生成する光源と光変調器とが必要となる。
【0006】
また、WDM方式は、多波長の光搬送波を生成する光源が必要である。多波長の光搬送波を生成する光源は高価である上、多重伝送システムに利用できる波長資源には限りがある。また、多波長光源の出力光の波長の長時間安定性を確保することは、高度な技術を要し、高いコストがかかる。
【0007】
一方、OCDM方式にあっても、送信装置において光源を共有することは可能であるが、多重するチャンネル数分の光変調器が必要となる。
【0008】
そこで、WDM方式において、1つ又は2つの可変波長光源と1つの光変調器から複数チャンネルのデータ信号を発生させる方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ただし、この方式によれば、1つの光変調器から複数チャンネルのデータ信号を発生させることが可能であるが、多重するチャンネル数を増大させることに対応して、波長グリッド間隔を狭く設定することが必要となる。
【0009】
波長グリッド間隔を設定すると、光搬送波を生成する光源の波長ドリフト量をこの設定された波長グリッド間隔の範囲内の大きさに収めることが要請される。ここで、光源の波長ドリフトとは、光源から出力される波長が時間経過に対して変化する現象を言う。波長グリッド間隔の範囲を超える波長変動があると上述の特許文献1に開示されている方式においては、チャンネルの識別能力が失われてしまう。因みに、ITU(International Telecommunication Union)国際標準によれば、100 GHz間隔(約0.8 nm間隔)、50 GHz間隔(約0.4 nm間隔)等にWDM方式の波長グリッドが規定されている。
【0010】
一方、WDM方式において、1つの短パルス光(例えば、中心波長1550 nmで半値幅が70 nmであって、時間波長の半値幅が50 fsである光パルス)を波長分散媒質によって時間拡散し、1つの光変調器から複数チャンネル分のデータ信号を発生させる方法が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。この方法によれば、多数チャンネルの信号を生成することが可能である。
【0011】
しかしながら、この方法は1つのチャンネルに対して1つの波長を割り当てる方式であるので、多重するチャンネル数を増大させることに対応して、通信に使う波長帯域を広げる必要があり、また、チャンネル間で波長が安定されておりかつ均一な信号強度を確保するため、利用する光源から出力される光パルスの時間波形の半値幅は極端に狭いことが求められる。このため、この方式による通信ではデータ転送レートが低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−281869号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Jason B. Stark, et al., "Cascaded WDM Passive Optical Network with a Highly Shared Source", IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, Vol. 9, No. 8, (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した様に、OTDM方式では、多波長の光搬送波を生成する光源が必要である。また、OCDM方式にあっても、送信装置において光源を共有することは可能であるが、多重するチャンネル数分の光変調器が必要となる。
【0015】
また、これらの問題点を解消する方法として、上述の特許文献1及び非特許文献1にそれぞれ新たな方式が開示されているが、前者の特許文献1に開示されている方式では波長ドリフト量の充分に小さい高価な光源が求められ、後者の非特許文献1に開示されている方式では時間波形の半値幅は極端に狭い光パルスを出力する光源が必要とされかつこの方式による通信ではデータ転送レートが低くなるという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明の発明者は、波長スペクトルが唯一の極大をもつ光パルスであっても、波長スペクトルが有限の幅を有している以上、この波長スペクトル成分を複数のグループに分割し、その分割された波長スペクトル成分のそれぞれのグループにチャンネルを割り当てることが可能であることに思い至った。
【0017】
すなわち、唯一の極大をもつ光パルスの波長スペクトル成分を光変調器によって時間軸上で複数に分割してその分割された波長スペクトル成分のそれぞれのグループにチャンネルを割り当て、超格子構造ファイバブラック格子(SSFBG: Superstructured Fiber Bragg Grating)によってチャンネルごとに割り当てられたグループの光パルスの波長スペクトル成分を識別する方式を確立することによって、光パルスの波長スペクトルの中心波長が変動してもこの変動が通信機能に影響を及ぼさない、光信号チャンネル分割多重通信を実現することが可能であることを確信した。
【0018】
従って、この発明の目的は、多重する複数のチャンネルの送信信号を単一波長の光パルスを出力する1つの光源と1つの光変調器とによって生成することが可能であって、光パルスの波長スペクトルの中心波長が変動してもこの変動が通信機能に影響を及ぼさない、光チャンネル分割多重通信方法及び光チャンネル分割多重通信システムを提供することにある。
【0019】
この光チャンネル分割多重通信において、唯一の極大をもつ光パルスの波長スペクトル成分を複数のグループに分割することが擬似的な光符号化に相当し、SSFBGによってチャンネルごとに割り当てられたグループの光パルスの波長スペクトル成分を識別することが、擬似的な光復号化に相当する。そこで、以後この光チャンネル分割多重通信の方式を擬似的OCDM方式ということもある。
【0020】
ここで、用語「単一波長の光パルス」及び「擬似的OCDM」について、以下のとおり定義する。すなわち、単一波長の光パルスとは、波長スペクトルが唯一の極大を有する光パルスをいうものとする。また、擬似的OCDMとは、単一波長の光パルスの波長スペクトルを分割してそれぞれのチャンネルに割り当て、チャンネル識別を波長スペクトルの成分の相違及び後述する符号の相違に基づき識別する方式を意味するものとする。
【0021】
通常のWDMでは、波長スペクトルが複数の極大を有する光パルスを、各チャンネルにこの極大波長に対応させて分配し、これらの波長を識別することでチャンネルの識別が実現される。すなわち、通常のWDM方式における波長多重信号の光搬送波の波長スペクトルは複数の極大をとるのに対して、この発明の擬似的OCDM方式における信号の光搬送波の波長スペクトルは単一の極大を取ることに相違点がある。
【0022】
なお、以後の説明においては、符号化及び復号化という用語を、従来の慣習からより拡張して広い意味に使うこととする。すなわち、光パルス信号を構成する光パルスを時間軸上に拡散する規則を、通常の意味での符号(狭義の符号)に限定せず、一義的に確定する任意の規則(広義の符号)であっても、上述の符号化及び復号化という用語を用いる。従って、広義の符号の場合に対しても、符号化光パルス信号、チップパルス等の用語を使うものとする。
【0023】
また、以下に説明するこの発明の光パルス時間拡散装置を構成するSSFBGから出力されるチップパルスの列は、通常の符号が設定されたSSFBGから出力されるチップパルスの列のように、厳密な意味での符号に基づいて光パルスが時間拡散されて生成されたものではない。しかしながら、以後の説明においては、便宜上、光パルスをチップパルスの列に変換することを符号化といい、またチップパルスの列を自己相関波あるいは相互相関波として生成することを復号化ということもある。
【0024】
そこで、この発明の要旨によれば、以下の構成の光信号チャンネル分割多重通信方法及び装置が提供される。
【0025】
この発明の第1の光信号チャンネル分割多重通信方法は、送信ステップと受信ステップとを含んで構成され、送信ステップ及び受信ステップは以下のステップを含んで構成される。
【0026】
送信ステップは、シリアル電気送信信号発生ステップと、光パルス列発生ステップと、光パルス波長分散ステップと、光変調ステップと、タイミング調整ステップとを含んでいる。受信ステップは、第1〜第N受信ステップ(Nは2以上の整数である。)を含み、第j受信ステップ(jは、1からNのすべての整数である。)は、第jチャンネル光パルス復調ステップと、第jチャンネル受信信号再生ステップとを含んでいる。
【0027】
シリアル電気送信信号発生ステップは、第1〜第Nチャンネル電気送信信号を時間軸上で順次出力するステップである。
【0028】
光パルス列発生ステップは、波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列を出力するステップである。
【0029】
光パルス波長分散ステップは、この光パルス列を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、光パルスの連続する波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散して、拡散光パルス列を生成して出力するステップである。
【0030】
光変調ステップは、拡散光パルス列を第1〜第Nチャンネル電気送信信号で変調して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を順次生成して出力するステップである。
【0031】
タイミング調整ステップは、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように、第1〜第Nチャンネル電気送信信号の送信タイミングを調整するステップである。
【0032】
第1〜第N受信ステップは、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号をそれぞれ受信して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を復調して、それぞれ第1〜第N電気再生受信信号を出力するステップである。
【0033】
第jチャンネル光パルス復調ステップは、受信した第1〜第Nチャンネル変調光送信信号から第jチャンネル光復調受信信号を生成して出力するステップである。
【0034】
第jチャンネル受信信号再生ステップは、第jチャンネル光復調受信信号が入力されて、第jチャンネル電気再生受信信号を生成して出力するステップである。
【0035】
この発明の第2の光信号チャンネル分割多重通信方法は、送信ステップと受信ステップとを含んで構成され、送信ステップ及び受信ステップは以下のステップを含んで構成される。
【0036】
送信ステップは、パラレル-シリアル変換ステップと、光パルス列発生ステップと、光パルス波長分散ステップと、光変調ステップとを含んでいる。受信ステップは、第1〜第N受信ステップを含み、第j受信ステップは、第jチャンネル光パルス復調ステップと、第jチャンネル受信信号再生ステップとを含んでいる。
【0037】
パラレル-シリアル変換ステップは、同一時間軸上に並列して並ぶ第1〜第Nチャンネルパラレル電気送信信号を、時間軸上に順次シリアルに並ぶシリアル電気送信信号に変換するステップであり、このステップでは、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように変調される条件で、シリアル電気送信信号を構成する第1〜第Nチャンネルの送信信号成分の送信タイミングを調整して出力する。
【0038】
光パルス列発生ステップは、波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列を出力するステップである。
【0039】
光パルス波長分散ステップは、この光パルス列を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、光パルスの連続する波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散して、拡散光パルス列を生成して出力するステップである。
【0040】
光変調ステップは、拡散光パルス列をシリアル電気送信信号で変調して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を順次生成して出力するステップである。
【0041】
第1〜第N受信ステップは、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号をそれぞれ受信して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を復調して、それぞれ第1〜第N電気再生受信信号を出力するステップである。
【0042】
第jチャンネル光パルス復調ステップは、受信した第1〜第Nチャンネル変調光送信信号から第jチャンネル光復調受信信号を生成して出力するステップである。
【0043】
第jチャンネル受信信号再生ステップは、第jチャンネル光復調受信信号が入力されて、第jチャンネル電気再生受信信号を生成して出力するステップである。
【0044】
この発明の第1の光信号チャンネル分割多重通信方法は、この発明の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムによって実現される。この発明の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムは、送信装置と受信装置とを具えて構成され、送信装置及び受信装置のそれぞれは、以下の構成要素を具えている。
【0045】
送信装置は、シリアル電気送信信号発生器と、光パルス列発生器と、光パルス波長分散器と、光変調器と、タイミング調整器とを具えている。受信装置は、第1〜第N受信部を具え、第j受信部は、第jチャンネル光パルス復調器と、第jチャンネル受信信号再生部とを具えている。
【0046】
シリアル電気送信信号発生器は、第1〜第Nチャンネル電気送信信号を時間軸上で順次出力する。
【0047】
光パルス列発生器は、波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列を出力する。
【0048】
光パルス波長分散器は、この光パルス列を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、光パルスの連続する波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散して、拡散光パルス列を生成して出力する。
【0049】
光変調器は、拡散光パルス列及び第1〜第Nチャンネル電気送信信号が入力されて、拡散光パルス列を第1〜第Nチャンネル電気送信信号で変調して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を順次生成して出力する。
【0050】
タイミング調整器は、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように、光変調器に入力する第1〜第Nチャンネル電気送信信号の送信タイミングを調整する。
【0051】
第1〜第N受信部は、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号をそれぞれ受信して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を復調して、それぞれ第1〜第N電気再生受信信号を出力する。
【0052】
第jチャンネル光パルス復調器は、受信した第1〜第Nチャンネル変調光送信信号から第jチャンネル光復調受信信号を生成して出力する。
【0053】
第jチャンネル受信信号再生部は、第jチャンネル光復調受信信号が入力されて、第jチャンネル電気再生受信信号を生成して出力する。
【0054】
この発明の第2の光信号チャンネル分割多重通信方法は、この発明の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムによって実現される。この発明の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムは、送信装置と受信装置とを具えて構成され、送信装置及び受信装置のそれぞれは、以下の構成要素を具えている。
【0055】
送信装置は、電気送信信号発生部と、光パルス列発生器と、光パルス波長分散器と、光変調器とを具えている。受信装置は、第1〜第N受信部を具え、第j受信部は、第jチャンネル光パルス復調器と、第jチャンネル受信信号再生部とを具えている。
【0056】
電気送信信号発生部は、同一時間軸上に並列して並ぶ第1〜第Nチャンネル(Nは2以上の整数である。)パラレル電気送信信号を、時間軸上に順次シリアルに並ぶシリアル電気送信信号に変換するパラレル-シリアル変換器を具えている。パラレル-シリアル変換器は、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように変調される条件で、シリアル電気送信信号を構成する第1〜第Nチャンネルの送信信号成分が光変調器に入力されるように、当該シリアル電気送信信号の送信タイミングを調整して出力する。
【0057】
光パルス列発生器は、波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列を出力する。
【0058】
光パルス波長分散器は、この光パルス列を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、光パルスの連続する波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散して、拡散光パルス列を生成して出力する。
【0059】
光変調器は、拡散光パルス列及びシリアル電気送信信号が入力されて、拡散光パルス列をシリアル電気送信信号で変調して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を順次生成して出力する。
【0060】
第1〜第N受信部は、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号をそれぞれ受信して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を復調して、それぞれ第1〜第N電気再生受信信号を出力する。
【0061】
第jチャンネル光パルス復調器は、受信した第1〜第Nチャンネル変調光送信信号から第jチャンネル光復調受信信号を生成して出力する。
【0062】
第jチャンネル受信信号再生部は、第jチャンネル光復調受信信号が入力されて、第jチャンネル電気再生受信信号を生成して出力する。
【0063】
上述の第jチャンネル光パルス復調器は、M個(MはN≦Mを満たす整数である。)の単位ファイバブラック格子(FBG: Fiber Bragg Grating)を具える、以下の条件を満たすSSFBGを具えて構成するのが好適である。
【0064】
単位ファイバブラック格子のブラッグ反射波長λbを次式(1a)及び(1b)
λb=λs+{k+(1/2)}Δλs/N (1a)
(ただし、Nが偶数であって、kは-N/2〜(N/2)-1の範囲の整数)
λb=λs+{k+(1/2)}Δλs/N (1a)
(ただし、Nが奇数であって、kは-(N-1)/2〜(N-1)/2の範囲の整数)
で与えられる値に設定する。
【0065】
単位ファイバブラック格子のブラッグ反射波長帯域の半値全幅Δλbを、次式(2)
Δλb=Δλs=Td/Dp (2)
で与えられる値に設定する。
【0066】
隣接する単位ファイバブラック格子の配置周期Lを、次式(3)
L={(λb−Δλb/2)×(λb+Δλb/2)}÷(2・neffΔλb) (3)
で与えられる値に設定する。
【0067】
隣接する単位ファイバブラッグ格子からのブラッグ反射光の位相差Θを、次式(4)
Θ=(1/2)×(λs+j・Δλs/N) (4)
で与えられる値に設定する。
【0068】
ここで、Tdは光パルス列の光パルスの繰り返し周期、Dpは光パルス波長分散器の波長分散量、λsは光パルス発生器から出力される光パルス列の波長スペクトルのピーク波長、Δλsは光パルス列の波長スペクトルの半値全幅、及び、neffは超格子構造ファイバブラック格子を構成する光ファイバの実効屈折率である。
【発明の効果】
【0069】
この発明の第1及び第2の光信号チャンネル分割多重通信方法並びにシステムによれば、光パルス列発生ステップにおいて、波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列が生成され、この光パルス列が、光パルス波長分散ステップにおいて、この光パルス列を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、光パルスの連続する波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散される。そして、光変調ステップにおいて、線形拡散されて生成された拡散光パルス列が第1〜第Nチャンネル電気送信信号で変調されて、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号が順次生成される。
【0070】
唯一の極大をもつ光パルスの波長スペクトル成分を複数のグループに分割しそれぞれのチャンネルに割り当てる光変調ステップは、1つの光変調器によって実現可能である。また、光パルス列発生ステップを実現するには、唯一の極大をもつ光パルスを出力する光源を1つ用意すれば足り、多波長の光搬送波を生成する光源も必要としない。
【0071】
また、唯一の極大をもつ光パルスの波長スペクトル成分を複数のグループに分割する際に単一波長光搬送波発生光源の波長の揺らぎが発生しても、光変調ステップにおける、変調のタイミングによって確定される各グループの波長スペクトル成分は変動せず、SSFBGによって識別される波長成分も、SSFBGの構成によって確定されるので識別される各グループの波長スペクトル成分も変動しない。従って、この発明の第1及び第2の光信号チャンネル分割多重通信方法が採用する擬似的OCDM方式においては、単一波長光搬送波発生光源の波長の揺らぎの影響を受けないでチャンネル識別が可能となる。
【0072】
第jチャンネル光パルス復調器を、上述の式(1a)及び式(1b)〜式(4)を満たすように設定された単位FBGを具えるSSFGBを利用して構成することによって、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号から第jチャンネル光復調受信信号を生成して出力することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムの概略的ブロック構成図である。
【図2】タイミング調整器の概略的ブロック構成図である。
【図3】この発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの概略的ブロック構成図である。
【図4】パラレル-シリアル変換器及びこの構造及びその動作の説明に必要な送信制御信号発生器と第1〜第8チャンネル電気送信信号発生器を含めて示した概略的ブロック構成図である。
【図5】第1受信信号再生部の概略的ブロック構成図である。
【図6】第1〜第8チャンネル変調光送信信号を生成する際に使われる拡散光パルス列の生成方法及びこの拡散光パルス列の性質についての説明に供する図であり、(A)は光パルス列の時間波形を示す図であり、(B)は拡散光パルス列を構成する光パルスの波長スペクトルを示す図であり、(C)は拡散光パルス列を構成する光パルスの時間軸上での重なりの様子の説明に供する示す図であり、(D)は拡散光パルス列を構成する光パルスの時間軸上での波長分布の説明に供する図である。
【図7】この発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムの符号化処理についての説明に供する図であり、(A)はタイミング調整器によって各チャンネルに与えられ時間遅延量が調整されて出力された第1〜第8チャンネル電気送信信号の時間波形を示す図であり、(B-1)及び(B-2)は第1〜第8チャンネル電気送信信号によって拡散光パルス列から第1チャンネル及び第2チャンネルの波長スペクトル成分がを切り出される様子を示す図であり、(C)は拡散光パルス列を構成する光パルスの波長スペクトル成分から切り出されて第1チャンネル及び第2チャンネルに分配される波長成分についての説明に供する図である。
【図8】この発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの符号化処理についての説明に供する図であり、(A)は第1〜第8チャンネル電気送信信号発生器からそれぞれ出力される第1〜第8チャンネル電気送信信号の時間波形を示す図であり、(B)はシリアル電気送信信号の時間波形を示す図であり、(C)は拡散光パルス列を構成する光パルスの波長スペクトル成分から切り出されて第1〜第8チャンネルに分配される波長成分についての説明に供する図である。
【図9】この発明の実施形態の第1及び第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの各チャンネルの光パルス復調器の説明に供する図であり、(A)は単位FBGを矩形で模式的に示すSSFBGの模式的な図であり、(B)はSSFBGの屈折率変調構造を概略的に示す図であり、(C)は光ファイバのコアの屈折率変調量Δnを表すグラフを示す図である。
【図10】第1〜第8光パルス復調器の動作説明の前提となる第1〜第8チャンネル変調光送信信号の時間波形を示す図であり、(A)は拡散光パルス列を構成する光パルス3つ分のそれぞれの光パルスから切り出される第1チャンネルの波長スペクトル成分を概略的に示す図であり、(B)は第1チャンネルの1ビット分の変調光送信信号の時間波形を模式的に示す図である。
【図11】第1光パルス復調器の構成及びその動作についての説明に供する図であり、(A)は第1光パルス復調器の概略的構成を示す図であり、(B)は第1光パルス復調器が具えるSSFBGに入力されるチップパルス列を構成するM個のチップパルスのそれぞれが、SSFBGによってM個のチップパルスに変換され、これら合計(M×M)個のチップパルスの干渉によって自己相関波あるは相互相関波が生成される過程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、各図は、この実施形態に係る一構成例に対するものであり、この発明の実施形態が理解できる程度に各構成要素の配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、この発明の実施形態の第1及び第2の光信号チャンネル分割多重通信システムと同種の通信装置であれば通常具えている、この発明の特徴部分ではない周知の構成要素は図示を省略したものもある。以下の説明において、特定の機器及び条件等を用いることがあるが、これら材料及び条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。また、各図において同様の構成要素については、同一の番号を付して示し、その重複する説明を省略することもある。また、以下に示すブロック構成図において、光ファイバ等の光信号の経路を太線で示し、電気信号の経路を細線で示してある。
【0075】
<この発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システム>
図1を参照して、この発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムの構造及びその動作について説明する。図1は、この発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムの概略的ブロック構成図である。
【0076】
この発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムは、送信装置10と受信装置30とを具えて構成され、送信装置10及び受信装置30のそれぞれは、以下の構成要素を具えている。ここでは、一例として、多重するチャンネル数を8チャンネルとして説明する。すなわち、N=8である場合を想定して説明する。ただし、以下の説明の主旨はN=8である場合に限定されるものではない。
【0077】
送信装置10は、シリアル電気送信信号発生器12と、光パルス列発生器18と、光パルス波長分散器20と、光変調器22と、タイミング調整器16とを具えている。受信装置30は、第1〜第8受信部を具えている。第1受信部32は、第1チャンネル光パルス復調器34及び第1チャンネル受信信号再生部36を具えている。第2受信部40から第8受信部44についても、同様の光パルス復調器及び受信信号再生部を具えている。図1では、第1〜第8チャンネル受信信号再生部を単に第1〜第8受信信号再生部と略記してあり、第1〜第8チャンネル光パルス復調器を単に第1〜第8光パルス復調器と略記してある。
【0078】
シリアル電気送信信号発生部12は、第1〜第8チャンネル電気送信信号13を時間軸上で順次出力する。
【0079】
光パルス列発生器18は、波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列19を出力する。
【0080】
光パルス波長分散器20は、この光パルス列19を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、それぞれの光パルスの波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散して、拡散光パルス列21を生成して出力する。ここで、光パルス列19を構成する光パルスは、少なくとも隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う状態が実現すればよく、連続して存在する3つ分以上の光パルスが重なり合うことがあってもよい。
【0081】
光変調器22は、拡散光パルス列21及び第1〜第8チャンネル電気送信信号17が入力されて、拡散光パルス列21を第1〜第8チャンネル電気送信信号17で変調して、第1〜第8チャンネル変調光送信信号23を順次生成して出力する。
【0082】
タイミング調整器16は、第1〜第8チャンネル変調光送信信号23を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように、光変調器22に入力する第1〜第8チャンネル電気送信信号13の入力タイミングを調整して、タイミングが調整された第1〜第8チャンネル電気送信信号17を出力する。
【0083】
第1受信部32、第2受信部40、・・・第8受信部44のそれぞれは、光パルス復調器及び受信信号再生部を具える同一構造であるので、ここでは、主に第1受信部32を代表して取り上げて説明する。図1では、第1受信部32が具える光パルス復調器及び受信信号再生部をそれぞれ、第1光パルス復調器34及び第1受信信号再生部36と示してある。第2受信部40〜第8受信部44についても同様の構造である。
【0084】
第1受信部32、第2受信部40、・・・第8受信部44のそれぞれは、第1〜第8チャンネル変調光送信信号23をそれぞれ順次受信して、それぞれの受信部に関連する第1〜第8チャンネル変調光送信信号を復調して、それぞれ第1チャンネル電気再生受信信号37〜第8チャンネル電気再生受信信号を出力する。
【0085】
第1〜第8チャンネル変調光送信信号23は、まず第1受信部32に入力されて、第1受信部32が具えている第1光パルス復調器34によって第1チャンネルに割り当てられた光波長スペクトル成分のみが分離されて第1チャンネル光復調受信信号35-1が生成される。
【0086】
一方、第1光パルス復調器34を透過した第1〜第8チャンネル変調光送信信号23の光波長スペクトル成分35-2は、第2受信部40が具えている第2光パルス復調器によって第2チャンネルに割り当てられた光波長スペクトル成分のみが分離されて第2チャンネル光復調受信信号が生成される。
【0087】
以下、第3受信部(図示を省略してある。)〜第8受信部44において同様に、各チャンネルに割り当てられた光波長スペクトル成分のみが分離されて各チャンネルのチャンネル光復調受信信号が生成される。
【0088】
第1受信信号再生部36は、第1チャンネル光復調受信信号35-1が入力されて、第1チャンネル電気再生受信信号37を生成して出力する。
【0089】
図2を参照して、タイミング調整器16の構造及びその動作について説明する。図2は、タイミング調整器16の概略的ブロック構成図である。
【0090】
タイミング調整器16は、送信側スイッチ制御信号発生器28、切り換えスイッチ24、及び結合器26を具えて構成されている。切り換えスイッチ24には、第1チャンネル電気送信信号がまず入力され、続いて第2チャンネル電気送信信号が入力される。以後、第3〜第8チャンネル電気送信信号の順に逐次切り換えスイッチ24に入力される。このようにチャンネル順に逐次切り換えスイッチ24に入力される電気送信信号を、図2では、第1〜第8チャンネル電気送信信号13と示してある。
【0091】
切り換えスイッチ24には、第1〜第8チャンネル電気送信信号13の他、送信側スイッチ制御信号発生器28から出力される送信側スイッチ制御信号29が入力される。第1〜第8チャンネル電気送信信号13は、切り換えスイッチ24によって、送信側スイッチ制御信号29に同期して、チャンネルごとに切り換えられて、順次遅延線25-1〜25-8に入力する動作が行われる。すなわち、第1チャンネル電気送信信号が遅延線25-1に入力され、第2チャンネル電気送信信号が遅延線25-2に入力され、同様に第3チャンネル電気送信信号〜第8チャンネル電気送信信号がそれぞれ遅延線25-3〜25-8に入力される。
【0092】
遅延線25-1〜25-8では、それぞれ隣接して入力されるチャンネルの電気送信信号が時間軸上で重なることが無いように、各チャンネルの電気送信信号に遅延が与えられる。すなわち、各チャンネルに分配されている時間スロットが重ならないように、各チャンネルの電気送信信号に遅延が与えられる。遅延線25-1〜25-8のそれぞれの長さは、順次遅延量が増大するように調整されている。そして、遅延線25-1〜25-8から出力される各チャンネルの電気送信信号は結合器26で結合されて、第1〜第8チャンネル電気送信信号17として出力される。
【0093】
<この発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システム>
図3を参照して、この発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの構造及びその動作について説明する。図3は、この発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの概略的ブロック構成図である。
【0094】
この発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムは、送信装置50と受信装置30とを具えて構成されている。受信装置30は、上述のこの発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムが具えていた受信装置と同一であるので、この発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムにおいても受信装置を受信装置30として示してある。すなわち、この発明の実施形態の第1光信号チャンネル分割多重通信システムと第2の光信号チャンネル分割多重通信システムとの相違は、送信装置の構成にある。
【0095】
従って、以下のこの発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの構成及びその動作の説明においては、送信装置50について説明を行う。また、ここでも上述のこの発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムの説明同様、一例として、多重するチャンネル数を8チャンネルとして説明する。
【0096】
送信装置50は、電気送信信号発生部46と、光パルス列発生器18と、光パルス波長分散器20と、光変調器22とを具えている。上述のこの発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムの送信装置10との相違点は、電気信号発生部46にあり、光パルス列発生器18、光パルス波長分散器20、および光変調器22は、両者のシステムにおいて共通の構成要素である。
【0097】
電気送信信号発生部46は、同一時間軸上に並列して並ぶ第1〜第8チャンネルパラレル電気送信信号53-1〜53-8を、時間軸上に順次シリアルに並ぶシリアル電気送信信号55に変換するパラレル-シリアル変換器54を具えている。
【0098】
パラレル-シリアル変換器54は、第1〜第8チャンネル変調光送信信号43を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように変調される条件で、シリアル電気送信信号55を構成する第1〜第8チャンネルの送信信号成分が光変調器22に入力されるように、当該シリアル電気送信信号55の送信タイミングを調整して出力する。
【0099】
光変調器22は、拡散光パルス列21及びシリアル電気送信信号55が入力されて、拡散光パルス列をシリアル電気送信信号55で変調して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号43を順次生成して出力する。
【0100】
既に説明したこの発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムの送信装置10から出力される第1〜第8チャンネル変調光送信信号23は、チャンネルごとの送信信号がまとまって、時間軸上に第1チャンネル電気送信信号から第8チャンネル電気送信信号の順に並んで構成される信号である。すなわち、第1〜第8チャンネル変調光送信信号23は、チャンネルごとの送信信号を単位として時間多重されて構成されている。
【0101】
これに対して、第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの送信装置50から出力される第1〜第8チャンネル変調光送信信号43は、シリアル電気送信信号に変換された第1チャンネル電気送信信号53-1〜第8チャンネル電気送信信号53-8をそれぞれ構成する第1〜第8チャンネルの1ビット目が、第1〜第8チャンネルの順に並び、次に2ビット目が第1〜第8チャンネルの順に並ぶという順序で時間軸上に並び、以下3ビット目以降も同様の順で並んで構成されている点が異なる。すなわち、第1〜第8チャンネル変調光送信信号43は、ビット単位で時間多重されて構成されている。
【0102】
図4を参照して、パラレル-シリアル変換器54の構造及びその動作について説明する。図4は、パラレル-シリアル変換器54及びこの構造及びその動作の説明に必要な送信制御信号発生器58と第1〜第8チャンネル電気送信信号発生器52-1〜52−8を含めて示した概略的ブロック構成図である。
【0103】
パラレル-シリアル変換器54は、遅延線55-1〜55-8及び結合器56を具えて構成されている。
【0104】
第1〜第8チャンネル電気送信信号発生器52-1〜52-8のそれぞれには、送信制御信号発生器58から送信制御信号59が供給されている。この送信制御信号59によって、第1〜第8チャンネル電気送信信号発生器52-1〜52-8から出力される第1〜第8チャンネルパラレル電気送信信号53-1〜53-8の送信タイミングが調整される。
【0105】
遅延線55-1〜55-8では、第1チャンネル電気送信信号の1ビット目に続いて第2チャンネル電気送信信号の1ビット目、と順次第8チャンネル電気信号の1ビット目が時間軸上で並び、続いて順次第1チャンネル電気送信信号の2ビット目に続いて第2チャンネル電気送信信号の2ビット目、と順次第8チャンネル電気信号の2ビット目が時間軸上で並び、以下同様に、第1チャンネル電気送信信号の最終ビット目に続いて第2チャンネル電気送信信号の最終ビット目、と順次第8チャンネル電気送信信号の最終ビット目が時間軸上で並ぶという形態で時間軸上に信号ビットが並ぶように、第1チャンネル電気送信信号53-1〜第8チャンネル電気送信信号53-8に対して時間遅延が与えられる。
【0106】
そして、遅延線55-3〜55-8から出力される各チャンネルの電気送信信号は結合器56で結合されて、シリアル電気送信信号55として出力される。
【0107】
<受信信号再生部>
図5を参照して、この発明の実施形態の第1及び第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの受信装置30が具える第1受信信号再生部36の構成及びその動作について説明する。図5は、第1受信信号再生部36の概略的ブロック構成図である。第2受信部40〜第8受信部44がそれぞれ具える第2〜第8受信信号再生部も、その構成及びその動作は同一であるので、ここでは、一例として、第1受信信号再生部36を代表して取り上げて説明する。
【0108】
第1受信信号再生部36は、第1光パルス復調器34から出力される第1チャンネル光復調受信信号35-1を電気信号の形態の第1チャンネル電気復調信号61に変換するフォトダイオード(Photodiode: PD)60と、第1チャンネル電気復調信号61を増幅して第1チャンネル電気復調信号63として出力する増幅器62と、クロックデータリカバリー(Clock Data Recovery: CDR)回路64とを具えて構成されている。
【0109】
CDR回路64は、分配器68、バンドパスフィルタ72、及びD-FF(D-フリップフロップ)回路70を具えている。分配器68は、第1チャンネル電気復調信号63を分岐第1チャンネル電気復調信号68-1と分岐第1チャンネル電気復調受信信号68-2とに分岐する。
【0110】
分岐第1チャンネル電気復調信号68-2は、第1チャンネル光復調受信信号35-1のビットレート周波数に等しい周波数成分をフィルタリングしてクロック信号73を再生するバンドパスフィルタ72に入力される。すなわち、バンドパスフィルタ72からは、第1チャンネル光復調受信信号35-1から再生されたクロック信号73が出力される。
【0111】
分岐第1チャンネル電気復調信号68-1及びクロック信号73は、D-FF回路70に入力され、D-FF回路70から第1チャンネル電気再生受信信号37が生成されて出力される。
【0112】
図5に示す第1受信信号再生部36が具えているCDR回路64の構成は、時間波形が歪んで受信された電気受信信号の時間波形を整形するために一般的に利用されている周知の電気回路である。
【0113】
第1光パルス復調器34で復調されて得られる第1チャンネル光復調受信信号35-1の時間波形は、その形状に歪みがありまた雑音成分も含まれている。第1チャンネル電気復調信号61、第1チャンネル電気復調信号63、及び分岐第1チャンネル電気復調信号68-1の時間波形にも同様の歪みがありまた雑音成分も含まれている。
【0114】
従って、CDR回路64によって、時間波形が整形されしかも雑音成分が除去された第1チャンネル電気再生受信信号37が生成される。
【0115】
<符号化>
図6(A)〜図8(C)を参照して符号化についての説明を行う。
【0116】
まず、符号化の説明を行うに当たり、図6(A)〜図6(D)を参照して、図1を参照して説明した送信装置10が具えている光パルス列発生器18から出力される光パルス列19、及び光パルス波長分散器20から出力される拡散光パルス列21について説明する。
【0117】
図6(A)〜図6(D)は、第1〜第8チャンネル変調光送信信号23を生成する際に使われる拡散光パルス列21の生成方法及びこの拡散光パルス列21の性質についての説明に供する図であり、図6(A)は光パルス列19の時間波形を示す図であり、図6(B)は拡散光パルス列21を構成する光パルスの波長スペクトルを示す図であり、図6(C)は拡散光パルス列21を構成する光パルスの時間軸上での重なりの様子の説明に供する示す図であり、図6(D)は拡散光パルス列21を構成する光パルスの時間軸上での波長分布の説明に供する図である。
【0118】
図6(A)、図6(C)、図6(D)において横軸に時間軸を、図6(B)においては横軸に波長軸を、それぞれ任意目盛で目盛って示してある。また、各図とも縦軸は省略してあるが強度を任意スケールで示してある。
【0119】
光パルス列19は、図6(A)に示すように、時間間隔がTdで複数の光パルスが並ぶ光パルス列である。図6(A)では、代表して光パルス3つ分を示してあり、これら3つの光パルスを識別可能とするために、光パルスの包絡線をそれぞれ細かな波線(光パルス19-1)、実線(光パルス19-2)、粗い波線(光パルス19-3)で示してある。このような光パルス列は、モード同期レーザ等の周知の技術を用いて生成することが可能である。光パルス列19を構成する光パルスの時間波形の半値全幅は、ps(ピコ秒)程度の広さであればよく、fs(フェムト秒)の領域の極めて狭い半値全幅を有している必要はない。これは、光パルス波長分散器20によって、光パルス列19を構成する光パルスの時間幅を拡張する手法がとられているからである。
【0120】
光パルス列19は、光パルス波長分散器20によって、構成する光パルスの時間波形の半値全幅が拡張されて拡散光パルス列21に変換される。光パルス波長分散器20は、周期的実効屈折率分布の周期が伝播方向に徐々に変化するように形成されているチャープグレーティング型のFBG等周知の素子を利用して形成することが可能である。また、光パルス波長分散器20は、分散補償型光ファイバ等によっても形成することが可能である。
【0121】
図6(B)に示すように、拡散光パルス列21を構成する光パルスの波長スペクトルは、その中心波長がλsであり、半値全幅がΔλsである。また、拡散光パルス列21を構成する光パルスの波長スペクトルは、唯一の極大を持つガウス関数を表す曲線で近似できる形状をしている。すなわち、拡散光パルス列21を構成する光パルスは単一波長の光パルスである。
【0122】
これら、中心波長λs及び半値全幅Δλsの値は、後述する受信装置30における復調を行う際に利用される復調器を構成するSSFBGの設計を行う際の必須パラメータである。
【0123】
光パルス波長分散器20から出力される拡散光パルス列21の時間波形は、図6(C)に示すように、隣接する光パルスどうしが時間軸上で部分的に重なり合っている。
【0124】
拡散光パルス列21を構成する各光パルスは、光パルス波長分散器20によって、光パルス列19を構成する各光パルスが波長分散されて形成された光パルスであるので、時間軸上でこの光パルスの波長スペクトル成分が分離されて順に配列される。例えば、光パルス波長分散器20の波長分散特性が、長波長成分に与える遅延量よりも短波長成分に与える遅延量が小さい場合は、図6(D)に示すように、光パルス列19を構成する各光パルスは、時間軸の方向に沿って長波長から短波長の順に配列された形状に変形される。逆に、光パルス波長分散器20の波長分散特性が、短波長成分に与える遅延量よりも長波長成分に与える遅延量が小さい場合は、図6(D)に示す形状とは逆に、時間軸の方向に沿って短波長から長波長の順に配列された形状となる。すなわち、光パルス波長分散器20の波長分散特性は、長波長成分に与える遅延量と短波長成分に与える遅延量との関係が上述のいずれであっても良い。
【0125】
図7(A)〜図7(C)を参照して、この発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムの符号化処理について説明する。
【0126】
図7(A)〜図7(C)は、この発明の実施形態の第1の光信号チャンネル分割多重通信システムの符号化処理についての説明に供する図であり、図7(A)はタイミング調整器16によって各チャンネルに与えられ時間遅延量が調整されて出力された第1〜第8チャンネル電気送信信号17の時間波形を示す図であり、図7(B-1)及び図7(B-2)は第1〜第8チャンネル電気送信信号17によって拡散光パルス列21から第1チャンネル及び第2チャンネルの波長スペクトル成分がを切り出される様子を示す図であり、図7(C)は拡散光パルス列21を構成する光パルスの波長スペクトル成分から切り出されて第1チャンネル及び第2チャンネルに分配される波長成分についての説明に供する図である。
【0127】
図7(A)、図7(B-1)、図7(B-2)においては横軸に時間軸を、図7(C)においては横軸に波長軸を、それぞれ任意目盛で目盛って示してある。また、各図とも縦軸は省略してあるが強度を任意スケールで示してある。
【0128】
シリアル電気送信信号発生部12から出力される第1〜第8チャンネル電気送信信号13は、タイミング調整器16によって各チャンネルに与えられる時間遅延量が調整され、第1〜第8チャンネル電気送信信号17として出力される。この第1〜第8チャンネル電気送信信号17は、図7(A)に示すように、第1チャンネルから第8チャンネルの電気送信信号が、チャンネルごとに固まって時間軸上に順次配列された信号である。
【0129】
図7(A)において、第1チャンネルの電気送信信号をCH-1、第2チャンネルの電気送信信号をCH-2、及び第8チャンネルの電気送信信号をCH-8と示してある。また、第1チャンネルの電気送信信号CH-1と第2チャンネルの電気送信信号CH-2との時間間隔がσ1に設定されており、第7チャンネルの電気送信信号(図示を省略してある。)と第8チャンネルの電気送信信号CH-8との時間間隔がσ7に設定されている。また、各チャンネルを構成する信号ビット(1つの電気パルスが占める時間スロット)を縦長の矩形で示し、この縦長の矩形に施した相異なるハッチングによって各チャンネルを識別できるようにしてある。
【0130】
図7(B-1)は、拡散光パルス列21を構成する光パルスを3つ分の光パルスの包絡線をそれぞれ細かな波線(光パルス19-1)、実線(光パルス19-2)、粗い波線(光パルス19-3)で示し、この拡散光パルス列21を構成するそれぞれの光パルスを時間軸上で切り出す役割を果たす第1チャンネルの電気送信信号CH-1を構成する電気パルスの時間軸上での存在位置を縦長の矩形で示している。図7(B-2)は、図7(B-1)と同様の図であって、3つ分の光パルスの包絡線を示す図に重ねて第2チャンネルの電気送信信号CH-2を構成する電気パルスの時間軸上での存在位置を縦長の矩形で示している。
【0131】
図7(B-1)と図7(B-2)とを対比すると、第1チャンネルの電気送信信号CH-1及び第2チャンネルの電気送信信号CH-2を構成する電気パルスの時間軸上での存在位置が異なり、それによって、拡散光パルス列21を構成する光パルスから切り出される波長スペクトル成分が異なることが分かる。このように、拡散光パルス列21を構成するそれぞれの光パルスから相異なる波長スペクトル成分を切り出すことによって、チャンネル識別が可能となり、この切り出しによって変調光送信信号23を生成することが符号化することに相当する。
【0132】
第1〜第8チャンネル電気送信信号17を構成する各チャンネルの電気パルスの時間軸上での存在位置は、タイミング調整器16によって確定され、図7(A)で示すように、第1チャンネルの電気送信信号CH-1と第2チャンネルの電気送信信号CH-2との時間間隔を示すσ1等の値によってその存在位置が定量的に与えられる。すなわち送信装置10における各チャンネルの符号化処理は、このσ1等で与えられるパラメータによってその符号が決められる。
【0133】
図7(C)を参照して、拡散光パルス列21を構成する光パルス19-2を取り上げて、拡散光パルス列21の波長スペクトルから、第1チャンネル及び第2チャンネルに分配される波長スペクトル成分について説明する。図7(B-1)と図7(B-1)とを参照して説明したように、各チャンネルの電気パルスの時間軸上での存在位置が、隣接するチャンネル間の時間間隔を与えるσ1等の値によって決まっているので、第1〜第8チャンネル電気送信信号17によって切り出される拡散光パルス列21の波長スペクトル成分が確定される。
【0134】
図7(C)に示すように、第1チャンネルに分配される波長スペクトル成分は、CH-1と示す縦長の矩形の領域に収まる波長スペクトル成分であり。第2チャンネルに分配される波長スペクトル成分は、CH-2と示す縦長の矩形の領域に収まる波長スペクトル成分である。
【0135】
図7(C)では、図面が複雑化して見にくくならないように、第1及び第2チャンネルに分配される波長スペクトル成分のみを示してあるが、実際は第3〜第8チャンネルには、第1及び第2チャンネルに分配される波長スペクトル成分以外の波長スペクトル成分が分配される。第3〜第8チャンネルに分配される波長スペクトル成分は、図示は省略してあるが、σ2〜σ7の値によって確定され、σ1〜σ7の値はそれぞれ互いに異なる値に設定されている。
【0136】
図8(A)〜図8(C)を参照して、この発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの符号化処理について説明する。
【0137】
図8(A)〜図8(C)は、この発明の実施形態の第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの符号化処理についての説明に供する図であり、図8(A)は第1〜第8チャンネル電気送信信号発生器52-1〜52-8からそれぞれ出力される第1〜第8チャンネル電気送信信号53-1〜53-8の時間波形を示す図であり、図8(B)はシリアル電気送信信号55の時間波形を示す図であり、図8(C)は拡散光パルス列21を構成する光パルスの波長スペクトル成分から切り出されて第1〜第8チャンネルに分配される波長成分についての説明に供する図である。
【0138】
図8(A)〜図8(C)において、各チャンネルを構成する信号ビット(1つの電気パルスが占める時間スロット)を縦長の矩形で示し、この縦長の矩形に施した相異なるハッチングによって各チャンネルを識別できるようにしてある。図8(A)〜図8(C)において横軸に時間軸を任意目盛で目盛って示してあり、縦軸は省略してあるが強度を任意スケールで示してある。
【0139】
図8(A)は、上から順に第1〜第8チャンネル電気送信信号発生器52-1〜52-8からそれぞれ出力される第1〜第8チャンネル電気送信信号53-1〜53-8の時間波形を示している。図8(A)では、各チャンネルを構成する信号の電気パルスを縦長の矩形で示し、この縦長の矩形に施した相異なるハッチングによって各チャンネルを識別できるようにしてある。
【0140】
第1〜第8チャンネル電気送信信号発生器52-1〜52-8からそれぞれ出力される第1〜第8チャンネル電気送信信号53-1〜53-8の位相は、送信制御信号発生器58から出力される送信制御信号59によって規定されるが、最終的にパラレル-シリアル変換器54によって、図8(B)に示すように、第1〜第8チャンネル電気送信信号の1ビット目が第1〜第8チャンネルの順に並び、次に2ビット目が第1〜第8チャンネルの順に並び分という順序で時間軸上に並び、以下3ビット目以降も同様の順で並ぶように当該位相が調整される。
【0141】
図8(C)は、上述した図7(B-1)及び図7(B-2)と同様に、拡散光パルス列21を構成する光パルスを3つ分の光パルスの包絡線をそれぞれ細かな波線(光パルス19-1)、実線(光パルス19-2)、粗い波線(光パルス19-3)で示し、この拡散光パルス列21を構成するそれぞれの光パルスを時間軸上で切り出す役割を果たす第1〜第8チャンネルの電気送信信号CH-1〜CH-8を構成する電気パルスの時間軸上での存在位置を縦長の矩形で示している。
【0142】
図8(C)に示すように、第1〜第8チャンネルに分配される波長スペクトル成分は、CH-1〜CH-8と示す縦長の矩形の領域に収まる位置に存在する波長スペクトル成分である。拡散光パルス列21を構成する光パルスは、図6(D)に示したように、時間軸の方向に沿って長波長から短波長の順に配列された形状となっているので、時間軸上での位置によって切り出される波長スペクトル成分は異なる。すなわち、CH-1〜CH-8と示す縦長の矩形の領域からは、それぞれ固有の波長スペクトル成分が切り出され、各チャンネルはこの固有の波長スペクトル成分の相違によって識別されることとなる。
【0143】
このように、光変調器22によって、拡散光パルス列21を構成するそれぞれの光パルスから相異なる波長スペクトル成分が切り出されることによってチャンネル識別が可能となり、この切り出しによって変調光送信信号43を生成することが符号化することに相当する。
【0144】
<復号化>
図9(A)〜図9(C)を参照して、この発明の実施形態の第1及び第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの各チャンネルの光パルス復調器に利用されるSSFBGの詳細な構造を説明する。図9(A)〜図9(C)は、この発明の実施形態の第1及び第2の光信号チャンネル分割多重通信システムの各チャンネルの光パルス復調器の説明に供する図である。
【0145】
図9(A)は、単位FBGを矩形で模式的に示すSSFBGの模式的な図であり、図9(B)は、SSFBGの屈折率変調構造を概略的に示す図である。横軸はSSFBGが形成された光ファイバの長手方向に沿った位置座標である。縦軸は光ファイバの屈折率変調量Δnをグラフ化して表しており、屈折率変調量Δnとは、光ファイバを構成するコアの屈折率の最大と最小の差を意味する。また、図9(C)には、光ファイバのコアの屈折率変調量Δnを表すグラフを一部拡大して描いてある。図9(A)、(B)及び(C)では、単位FBGの個数を示すMの値が32、すなわち、32個の単位FBGを具えたSSFBGを一例として示してある。
【0146】
単位FBGの屈折率周期構造の周期Λが、後述する単位FBGのブラッグ波長λbを決定する。すなわち、SSFBGを構成している光ファイバの平均実効屈折率の値がneffである場合、λbは2・neffΛで与えられる。
【0147】
復号化の説明に当たって、説明の便宜上以下のとおりの条件を設定するが、以下に説明する内容の技術的特徴はこの設定条件を変更しても影響しない。また、復号化のプロセスは、この発明の実施形態の第1及び第2の光信号チャンネル分割多重通信システムに共通するので、以下の説明においては、第1の光信号チャンネル分割多重通信システムに関する説明であるか、第2の光信号チャンネル分割多重通信システムに関する説明であるかは断らない。
【0148】
光パルス列19の繰返し周期Tdを800 ps(=1/1.25 GHz)とし、光パルス列19の波長スペクトルの中心波長を1549.3 nm、光パルス列19を構成する光パルスの波長スペクトルの半値全幅Δλsを0.64 nm(時間波形の半値全幅に換算して6 psに相当する。)とした。
【0149】
光パルス波長分散器20の波長分散量DpをDp=800 ps×(1/0.64 nm)=1250 ps/nmと設定した。
【0150】
また、光変調器22における変調速度を1.25 Gb/sとし、変調幅を100 ps以下に設定した。繰返し周期Tdが800 ps(=1/1.25 GHz)であるから、この繰返し周期に相当する時間スロットを8個の時間スロットに分割し、第1〜第8チャンネルの各ビットがこの繰返し周期内に1ビットずつ収まるように設定した。
【0151】
この発明の実施形態において、光パルス列19を構成する光パルスの時間波形の半値全幅は6 psである。このため、第1〜第8チャンネルの各チャンネル当たり割り当てられる波長スペクトルの波長帯域は、拡散光パルス列21を構成する1つの光パルス当たり2箇所ないし3箇所の切り出し箇所を持って切り出される波長帯域となる。
【0152】
すなわち、図7(C)に示したように、CH-1で示されている縦長の矩形の領域は、拡散光パルス列21を構成する1つの光パルス当たり3箇所あり、CH-2で示されている縦長の矩形の領域は、拡散光パルス列21を構成する1つの光パルス当たり2箇所ある。同様に、図7(C)には図示を省略してあるが、CH-3〜CH-8に割り当てられる波長スペクトル領域も2箇所ないし3箇所の切り出し箇所を持って切り出される波長帯域となる。
【0153】
各チャンネルの光パルス復調器に利用されるSSFBGを以下に説明する条件で形成することによって、受信装置30における第1〜第8光パルス復調器において、各チャンネルの光復調信号を生成することが可能となる。
【0154】
図10(A)及び図10(B)を参照して、第1〜第8チャンネルの受信部がそれぞれ具える第1〜第8光パルス復調器の動作説明の前提となる第1〜第8チャンネル変調光送信信号の時間波形につき説明する。図10(A)及び図10(B)は、第1〜第8光パルス復調器の動作説明の前提となる第1〜第8チャンネル変調光送信信号の時間波形を示す図であり、図10(A)は、拡散光パルス列21を構成する光パルス3つ分のそれぞれの光パルスから切り出される第1チャンネルの波長スペクトル成分を概略的に示す図であり、図10(B)は第1チャンネルの1ビット分の変調光送信信号23あるいは43の時間波形を模式的に示す図である。この発明の実施形態では、光パルスの波長成分間の干渉により変調され、チップパルス列が生成される。
【0155】
第2光パルス復調器に入力される変調光送信信号35-2は、第1チャンネルに割り当てられた波長スペクトル成分が第1〜第8チャンネル変調光送信信号23あるいは43から除去されている。また、同様に、第3〜第8光パルス復調器に入力される変調光送信信号は、それぞれそれよりも前の位置に配置されている光パルス復調器によって、除去された波長スペクトル成分を欠いているが、以下の説明では、この欠損している波長スペクトル成分があっても、残されている波長スペクトル成分から、それぞれのチャンネルに割り当てられた波長スペクトル成分を抽出しチャンネル光復調受信信号が生成されるので、欠損している波長スペクトル成分は何らこの復号化には影響を与えない。
【0156】
図11(A)及び図11(B)を参照して、第1光パルス復調器34の構成及びその動作について説明する。図11(A)及び図11(B)は、第1光パルス復調器34の構成及びその動作についての説明に供する図であり、図11(A)は、第1光パルス復調器34概略的構成を示す図であり、図11(B)は、第1光パルス復調器34が具えるSSFBGに入力されるチップパルス列を構成するM個(M≧8)のチップパルスのそれぞれが、SSFBGによってM個のチップパルスに変換され、これら合計(M×M)個のチップパルスの干渉によって自己相関波あるは相互相関波が生成される過程を説明する図である。
【0157】
この発明の実施形態の復号化の動作についてより一般的に説明するため、SSFBGが具える単位FBGの個数を8個と限定せずM個と表現してある。また、図11(A)では、SSFBGがM個の単位FBGを具えて構成され、単位FBGの配置間隔周期をLとしてある。
【0158】
図11(A)に示すように、第1〜第8チャンネル変調光送信信号を構成するM個の光パルス列が光サーキュレータ74の第1ポートから入力され、第2ポートに出力されてSSFBG 76に入力されて、ブラッグ反射された波長スペクトル成分が再び第2ポートに入力されて第3ポートから各チャンネルに割り当てられた波長スペクトル成分からなる変調光送信信号が出力される。
【0159】
図11(B)では、横軸に時間軸Tを示してある。また、縦方向には、SSFBGに入力される変調光送信信号を構成するM個のチップパルスのそれぞれが、SSFBGによってM個の光パルスに変換されることで得られるMとおりのチップパルス列を、SSFBGから出力される時間遅れの関係を反映させてM段に並べて示してある。i=1と示してあるチップパルス列は、符号器から出力されるチップパルス列を構成するチップパルスの第1番目のチップパルスが復号器でチップパルス列として生成されたものである。同様にi=2〜Mと示してあるチップパルス列は、それぞれ符号器から出力されるチップパルス列を構成するチップパルスの第2〜M番目のチップパルスが復号器でチップパルス列として生成されたものである。i=1〜Mと示してあるチップパルス列が、図11(B)に示すように時間軸上で重なり合って干渉する結果、復号器であるSSFBGからは、自己相関波あるいは相互相関波が出力される。
【0160】
以下の説明では、数式を使う関係上、式を見やすくするために、チャンネル数を8と設定せず一般的にNで表すこととする。
【0161】
単位FBGのブラッグ反射波長λbを次式(1a)及び(1b)
λb=λs+{k+(1/2)}Δλs/N (1a)
(ただし、Nが偶数であって、kは-N/2〜(N/2)-1の範囲の整数)
λb=λs+k・Δλs/N (1b)
(ただし、Nが奇数であって、kは-(N-1)/2〜(N-1)/2の範囲の整数)
で与えられる値に設定する。
【0162】
単位FBGのブラッグ反射波長帯域の半値全幅Δλbを、次式(2)
Δλb=Δλs=Td/Dp (2)
で与えられる値に設定する。
【0163】
隣接する単位FBGの配置周期Lを、次式(3)
L={(λb−Δλb/2)×(λb+Δλb/2)}÷(2・neffΔλb) (3)
で与えられる値に設定する。
【0164】
隣接する単位FBGからのブラッグ反射光の位相差Θを、次式(4)
Θ=(1/2)×λb=(1/2)×(λs+j・Δλs/N) (4)
で与えられる値に設定する。
【0165】
ここで、Tdは光パルス列の光パルスの繰り返し周期、Dpは光パルス波長分散器の波長分散量、λsは光パルス列発生器から出力される光パルス列の波長スペクトルのピーク波長、Δλsは光パルス列の波長スペクトルの半値全幅、及び、neffはSSFBGを構成する光ファイバの実効屈折率である。
【0166】
上述のように、ブラッグ反射光の位相差Θを設定することで、図7(A)〜図7(C)及び図8(A)〜図8(C)を参照して説明した、各チャンネルに割り当てられる波長スペクトル成分が確定される。すなわち、例えば、多重数を8チャンネルとする場合は、式(4)のファクタjに1〜8をそれぞれ与えることによって、第1〜第8チャンネルに設定される拡散光パルス列21を構成する光パルスの時間軸上での切り出し位置が確定し、それに伴って、第1〜第8チャンネルに割り当てられる波長スペクトルが確定される。
【0167】
既に図1あるいは図3を参照して説明したように、第1〜第8チャンネル電気送信信号17あるいはシリアル電気送信信号55は、第1〜第8チャンネルに設定される拡散光パルス列21を構成する光パルスの時間軸上での切り出し位置、すなわち、拡散光パルス列21を構成する光パルスを切り出して各チャンネルに割り当てられる波長を確定する位相が、上述のブラッグ反射光の位相差Θと合致するように、その位相が調整されている。このように拡散光パルス列21を構成する光パルスに時間軸上でのタイミングを調整するには、例えば、受信装置が具えている第1〜第8光パルス復調器から出力される各チャンネルの光復調受信信号の強度が最大となるようにタイミング調整器16あるいはパラレル-シリアル変換器54で各チャンネルの送信信号の遅延量を設定すればよい。
【0168】
図7(C)に示したように、拡散光パルス列21を構成する光パルスの半値全幅はΔλsであり、この半値全幅Δλsを与える短波長側の波長をλ1とし長波長側の波長をλ2とする。図10(B)のチップパルス列のパルス周期tbは、次式(5)で与えられる。
tb={1/c}×{(λ1・λ2)/Δλs} (5)
ここで、cは光速度である。また、Δλs=λ2−λ1(λ2>λ1)である。
【0169】
チップパルス列の波長スペクトルの中心波長λsが1.55μmであって、Δλsが0.64 nmである場合、tbはほぼ12.5 psとなる。
【0170】
また、単位FBGのブラッグ反射光の波長λbを次式(6)で与えられる値に設定し、
λb=(λ1+λ2)/2=λ1+Δλs/2=λ2−Δλs/2 (6)
及び、隣接する単位FBGの配置周期Lを次式(7)
L=(c×tb)/(2neff) (7)
で表される値に設定する。
【0171】
SSFBG 76を構成する隣接する単位FBGから反射されるブラッグ反射光の位相差は次式(8)で与えられるように、各単位FBGのブラッグ反射波長λb及び単位FBGの配置周期Lが設定されている。
2π×2×L×neff/λb=2π×(m+(1/2)) (8)
ここで、mは0以上の整数である。
【0172】
隣接する単位FBGからブラッグ反射されるチップパルス間の位相差φは次式(9)で与えられる。
φ=2π×2×L×neff/λx=2π×(m+(1/2))×λb/λx (9)
ここで、x=1又は2である。
すなわち、
φ=2π×(m+(1/2))×(1+(Δλs/2λ1))
又は、
=2π×(m+(1/2))×(1−(Δλs/2λ2))
あるいは、
φ=π+{2π×(m+(1/2))×(Δλs/λ1)
又は、
=π−{2π×(m+(1/2))×(Δλs/λ2)
となる。すなわちφの値はΔλsの大きさによって決定される。
【0173】
送信装置10あるいは50で生成され位相Δφeが与えられて出力されたチップパルス、すなわち、図11(A)の光サークレータ74の第1ポートに入力されるチップパルス列を構成する第i番目のチップパルスが、SSFBG 76の第j単位FBGによって復号化され位相Δφdが更に付加されて与えられたと仮定すると、SSFBG 76から出力されるチップパルス列の第1番目のチップパルスを基準として、このチップパルスは次式(10)
Δφij=j×Δφe+j×Δφd (10)
で与えられる位相Δφijを有している。
【0174】
図11(B)に示すように、SSFBG 76に入力されるチップパルス列を構成するM個のチップパルスのそれぞれは、SSFBG 76によってM個のチップパルスに変換される。その結果、合計(M×M)個のチップパルスが生成される。送信装置10あるいは50で生成されたM個のチップパルスのそれぞれのチップパルスがSSFBG 76で再びM個のチップパルスからなるチップパルス列となり、これらのチップパルス列が時間軸上で重なることによる干渉によって自己相関波あるは相互相関波が生成される。
【0175】
時刻T=j+jにおいて時間軸上で重なりあうチップパルスの位相Δφjj(T)は、次式(11)
Δφjj(T)=T×Δφd+(Δφe−Δφd)×j (11)
で与えられる。
【0176】
Δφe=Δφd=Δφである場合、Δφjj(T)=T×Δφとなり、jの値に依存せず時刻Tにおいて全てのチップパルスが同位相で干渉しあう。すなわち、時刻Tにおいて非常に大きなピークが形成され自己相関波が形成される。
【0177】
一方、ΔφeとΔφdとが異なっている場合、時刻T=i+jにおいて時間軸上で重なりあうチップパルスの位相Δφij(T)は、jの値によってΔφij(T)の値がそれぞれ異なってくるから、チップパルス同士は干渉によってそれぞれ打ち消しあってピークが形成されず相互相関波が形成される。
【0178】
この発明の第1及び第2の光信号チャンネル分割多重通信システムによれば、多重するチャンネル数を増やすことに対応して、波長グリッドを狭くすることが可能である。例えば、波長グリッドを0.1 nm以下に設定することが可能である。しかも各チャンネルに割り当てられる波長スペクトルは変動することがない。
【0179】
受信装置30が具える各チャンネルに設置される光パルス復調器が具えるSSFBGの単位FBGのブラッグ反射波長λb、あるいは単位FBGの配置周期L等を、拡散光パルス列21を構成する光パルスの波長スペクトルの中心波長λs及び半値全幅Δλs及び各チャンネルに割り当てられる波長スペクトル成分を確定する式(4)のファクタjをチャンネルごとに設定することによって、擬似的OCDMが実現される。
【符号の説明】
【0180】
10、50:送信装置
12:シリアル電気送信信号発生器
16:タイミング調整器
18:光パルス列発生器
20:光パルス波長分散器
22:光変調器
24:切り換えスイッチ
25-1〜25-8、55-1〜55-8:遅延線
26、56:結合器
28:送信側スイッチ制御信号発生器
30:受信装置
32:第1受信部
34:第1光パルス復調器
36:第1受信信号再生部
40:第2受信部
44:第8受信部
46:電気送信信号発生部
52-1〜52-8:第1〜第8チャンネル電気送信信号発生器
54:パラレル-シリアル変換器
58:送信制御信号発生器
60:フォトダイオード(PD)
62:増幅器
64:CDR回路
68: 分配器
70:D-フリップフロップ(D-FF)回路
72:バンドパスフィルタ
74:光サーキュレータ
76:SSFBG
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1〜第Nチャンネル(Nは2以上の整数である。)電気送信信号を時間軸上で順次出力するシリアル電気送信信号発生ステップと、
波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列を出力する光パルス列発生ステップと、
前記光パルス列を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、前記光パルスの連続する波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散して、拡散光パルス列を生成して出力する光パルス波長分散ステップと、
前記拡散光パルス列を前記第1〜第Nチャンネル電気送信信号で変調して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を順次生成して出力する光変調ステップと、
前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように、前記第1〜第Nチャンネル電気送信信号の送信タイミングを調整するタイミング調整ステップと
を含む送信ステップ、及び
前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号をそれぞれ受信して、該第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を復調して、それぞれ第1〜第N電気再生受信信号を出力する第1〜第N受信ステップを含み、
第j受信ステップ(jは、1からNのすべての整数である。)は、受信した前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号から第jチャンネル光復調受信信号を生成して出力する第jチャンネル光パルス復調ステップと、
該第jチャンネル光復調受信信号が入力されて、第jチャンネル電気再生受信信号を生成して出力する第jチャンネル受信信号再生ステップと
を含む受信ステップ
を具えることを特徴とする光信号チャンネル分割多重通信方法。
【請求項2】
同一時間軸上に並列して並ぶ第1〜第Nチャンネル(Nは2以上の整数である。)パラレル電気送信信号を、時間軸上に順次シリアルに並ぶシリアル電気送信信号に変換するパラレル-シリアル変換ステップと、
波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列を出力する光パルス列発生ステップと、
前記光パルス列を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、前記光パルスの連続する波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散して、拡散光パルス列を生成して出力する光パルス波長分散ステップと、
前記拡散光パルス列を前記シリアル電気送信信号で変調して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を順次生成して出力する光変調ステップと
を含む送信ステップ、及び
前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号をそれぞれ受信して、該第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を復調して、それぞれ第1〜第N電気再生受信信号を出力する第1〜第N受信ステップを含み、
第j受信ステップ(jは、1からNのすべての整数である。)は、受信した前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号から第jチャンネル光復調受信信号を生成して出力する第jチャンネル光パルス復調ステップと、
該第jチャンネル光復調受信信号が入力されて、第jチャンネル電気再生受信信号を生成して出力する第jチャンネル受信信号再生ステップと
を含む受信ステップを含んでおり、
前記パラレル-シリアル変換ステップは、前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように変調される条件で、前記シリアル電気送信信号を構成する第1〜第Nチャンネルの送信信号成分の送信タイミングを調整して出力するステップである
ことを特徴とする光信号チャンネル分割多重通信方法。
【請求項3】
第1〜第Nチャンネル(Nは2以上の整数である。)電気送信信号を時間軸上で順次出力するシリアル電気送信信号発生器と、
波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列を出力する光パルス列発生器と、
前記光パルス列を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、前記光パルスの波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散して、拡散光パルス列を生成して出力する光パルス波長分散器と、
前記拡散光パルス列及び前記第1〜第Nチャンネル電気送信信号が入力されて、該拡散光パルス列を該第1〜第Nチャンネル電気送信信号で変調して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を順次生成して出力する光変調器と、
前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように、該光変調器に入力する前記第1〜第Nチャンネル電気送信信号の送信タイミングを調整するタイミング調整器と
を具える送信装置、及び
前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号をそれぞれ受信して、該第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を復調して、それぞれ第1〜第N電気再生受信信号を出力する第1〜第N受信部を具え、
第j受信部(jは、1からNのすべての整数である。)は、受信した前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号から第jチャンネル光復調受信信号を生成して出力する第jチャンネル光パルス復調器と、
該第jチャンネル光復調受信信号が入力されて、第jチャンネル電気再生受信信号を生成して出力する第jチャンネル受信信号再生部と
を具える受信装置
を具えることを特徴とする光信号チャンネル分割多重通信システム。
【請求項4】
同一時間軸上に並列して並ぶ第1〜第Nチャンネル(Nは2以上の整数である。)パラレル電気送信信号を、時間軸上に順次シリアルに並ぶシリアル電気送信信号に変換するパラレル-シリアル変換器を具える電気送信信号発生部と、
波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列を出力する光パルス列発生器と、
前記光パルス列を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、前記光パルスの連続する波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散して、拡散光パルス列を生成して出力する光パルス波長分散器と、
前記拡散光パルス列及び前記シリアル電気送信信号が入力されて、該拡散光パルス列を該シリアル電気送信信号で変調して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を順次生成して出力する光変調器と、
を具える送信装置、及び
前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号をそれぞれ受信して、該第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を復調して、それぞれ第1〜第N電気再生受信信号を出力する第1〜第N受信部を具え、
第j受信部(jは、1からNのすべての整数である。)は、受信した前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号から第jチャンネル光復調受信信号を生成して出力する第jチャンネル光パルス復調器と、
該第jチャンネル光復調受信信号が入力されて、第jチャンネル電気再生受信信号を生成して出力する第jチャンネル受信信号再生部と
を具える受信装置を具えており、
前記パラレル-シリアル変換器は、前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように変調される条件で、前記シリアル電気送信信号を構成する第1〜第Nチャンネルの送信信号成分が前記光変調器に入力されるように、当該シリアル電気送信信号の送信タイミングを調整して出力する
ことを特徴とする光信号チャンネル分割多重通信システム。
【請求項5】
前記第jチャンネル光パルス復調器は、
M個(MはN≦Mを満たす整数である。)の単位ファイバブラック格子を具える超格子構造ファイバブラック格子を具えて構成されており、
前記単位ファイバブラック格子のブラッグ反射波長λbが次式(1a)及び(1b)で与えられる値に設定されており、
λb=λs+{k+(1/2)}Δλs/N (1a)
(ただし、Nが偶数であって、kは-N/2〜(N/2)-1の範囲の整数)
λb=λs+{k+(1/2)}Δλs/N (1b)
(ただし、Nが奇数であって、kは-(N-1)/2〜(N-1)/2の範囲の整数)
前記単位ファイバブラック格子のブラッグ反射波長帯域の半値全幅Δλbは、次式(2)で与えられる値に設定されており、
Δλb=Δλs=Td/Dp (2)
隣接する前記単位ファイバブラック格子の配置周期Lは、次式(3)で与えられる値に設定されており、
L={(λb−Δλb/2)×(λb+Δλb/2)}÷(2・neffΔλb) (3)
隣接する前記単位ファイバブラッグ格子からのブラッグ反射光の位相差Θは、次式(4)で与えられる値に設定されている
Θ=(1/2)×λb=(1/2)×(λs+j・Δλs/N) (4)
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の光信号チャンネル分割多重通信システム。
ここで、Tdは前記光パルス列の光パルスの繰り返し周期、Dpは前記光パルス波長分散器の波長分散量、λsは前記光パルス列発生器から出力される光パルス列の波長スペクトルのピーク波長、Δλsは該光パルス列の波長スペクトルの半値全幅、及び、neffは前記超格子構造ファイバブラック格子を構成する光ファイバの実効屈折率である。
【請求項1】
第1〜第Nチャンネル(Nは2以上の整数である。)電気送信信号を時間軸上で順次出力するシリアル電気送信信号発生ステップと、
波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列を出力する光パルス列発生ステップと、
前記光パルス列を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、前記光パルスの連続する波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散して、拡散光パルス列を生成して出力する光パルス波長分散ステップと、
前記拡散光パルス列を前記第1〜第Nチャンネル電気送信信号で変調して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を順次生成して出力する光変調ステップと、
前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように、前記第1〜第Nチャンネル電気送信信号の送信タイミングを調整するタイミング調整ステップと
を含む送信ステップ、及び
前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号をそれぞれ受信して、該第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を復調して、それぞれ第1〜第N電気再生受信信号を出力する第1〜第N受信ステップを含み、
第j受信ステップ(jは、1からNのすべての整数である。)は、受信した前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号から第jチャンネル光復調受信信号を生成して出力する第jチャンネル光パルス復調ステップと、
該第jチャンネル光復調受信信号が入力されて、第jチャンネル電気再生受信信号を生成して出力する第jチャンネル受信信号再生ステップと
を含む受信ステップ
を具えることを特徴とする光信号チャンネル分割多重通信方法。
【請求項2】
同一時間軸上に並列して並ぶ第1〜第Nチャンネル(Nは2以上の整数である。)パラレル電気送信信号を、時間軸上に順次シリアルに並ぶシリアル電気送信信号に変換するパラレル-シリアル変換ステップと、
波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列を出力する光パルス列発生ステップと、
前記光パルス列を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、前記光パルスの連続する波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散して、拡散光パルス列を生成して出力する光パルス波長分散ステップと、
前記拡散光パルス列を前記シリアル電気送信信号で変調して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を順次生成して出力する光変調ステップと
を含む送信ステップ、及び
前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号をそれぞれ受信して、該第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を復調して、それぞれ第1〜第N電気再生受信信号を出力する第1〜第N受信ステップを含み、
第j受信ステップ(jは、1からNのすべての整数である。)は、受信した前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号から第jチャンネル光復調受信信号を生成して出力する第jチャンネル光パルス復調ステップと、
該第jチャンネル光復調受信信号が入力されて、第jチャンネル電気再生受信信号を生成して出力する第jチャンネル受信信号再生ステップと
を含む受信ステップを含んでおり、
前記パラレル-シリアル変換ステップは、前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように変調される条件で、前記シリアル電気送信信号を構成する第1〜第Nチャンネルの送信信号成分の送信タイミングを調整して出力するステップである
ことを特徴とする光信号チャンネル分割多重通信方法。
【請求項3】
第1〜第Nチャンネル(Nは2以上の整数である。)電気送信信号を時間軸上で順次出力するシリアル電気送信信号発生器と、
波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列を出力する光パルス列発生器と、
前記光パルス列を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、前記光パルスの波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散して、拡散光パルス列を生成して出力する光パルス波長分散器と、
前記拡散光パルス列及び前記第1〜第Nチャンネル電気送信信号が入力されて、該拡散光パルス列を該第1〜第Nチャンネル電気送信信号で変調して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を順次生成して出力する光変調器と、
前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように、該光変調器に入力する前記第1〜第Nチャンネル電気送信信号の送信タイミングを調整するタイミング調整器と
を具える送信装置、及び
前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号をそれぞれ受信して、該第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を復調して、それぞれ第1〜第N電気再生受信信号を出力する第1〜第N受信部を具え、
第j受信部(jは、1からNのすべての整数である。)は、受信した前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号から第jチャンネル光復調受信信号を生成して出力する第jチャンネル光パルス復調器と、
該第jチャンネル光復調受信信号が入力されて、第jチャンネル電気再生受信信号を生成して出力する第jチャンネル受信信号再生部と
を具える受信装置
を具えることを特徴とする光信号チャンネル分割多重通信システム。
【請求項4】
同一時間軸上に並列して並ぶ第1〜第Nチャンネル(Nは2以上の整数である。)パラレル電気送信信号を、時間軸上に順次シリアルに並ぶシリアル電気送信信号に変換するパラレル-シリアル変換器を具える電気送信信号発生部と、
波長スペクトルが唯一の極大を持つ光パルスが時間軸上に等間隔に並ぶ光パルス列を出力する光パルス列発生器と、
前記光パルス列を構成する隣接する光パルスどうしが時間軸上で重なり合う部分が発生するように、前記光パルスの連続する波長スペクトル成分を時間軸上に線形拡散して、拡散光パルス列を生成して出力する光パルス波長分散器と、
前記拡散光パルス列及び前記シリアル電気送信信号が入力されて、該拡散光パルス列を該シリアル電気送信信号で変調して、第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を順次生成して出力する光変調器と、
を具える送信装置、及び
前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号をそれぞれ受信して、該第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を復調して、それぞれ第1〜第N電気再生受信信号を出力する第1〜第N受信部を具え、
第j受信部(jは、1からNのすべての整数である。)は、受信した前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号から第jチャンネル光復調受信信号を生成して出力する第jチャンネル光パルス復調器と、
該第jチャンネル光復調受信信号が入力されて、第jチャンネル電気再生受信信号を生成して出力する第jチャンネル受信信号再生部と
を具える受信装置を具えており、
前記パラレル-シリアル変換器は、前記第1〜第Nチャンネル変調光送信信号を構成する光パルスの波長スペクトル成分がそれぞれ相異なるように変調される条件で、前記シリアル電気送信信号を構成する第1〜第Nチャンネルの送信信号成分が前記光変調器に入力されるように、当該シリアル電気送信信号の送信タイミングを調整して出力する
ことを特徴とする光信号チャンネル分割多重通信システム。
【請求項5】
前記第jチャンネル光パルス復調器は、
M個(MはN≦Mを満たす整数である。)の単位ファイバブラック格子を具える超格子構造ファイバブラック格子を具えて構成されており、
前記単位ファイバブラック格子のブラッグ反射波長λbが次式(1a)及び(1b)で与えられる値に設定されており、
λb=λs+{k+(1/2)}Δλs/N (1a)
(ただし、Nが偶数であって、kは-N/2〜(N/2)-1の範囲の整数)
λb=λs+{k+(1/2)}Δλs/N (1b)
(ただし、Nが奇数であって、kは-(N-1)/2〜(N-1)/2の範囲の整数)
前記単位ファイバブラック格子のブラッグ反射波長帯域の半値全幅Δλbは、次式(2)で与えられる値に設定されており、
Δλb=Δλs=Td/Dp (2)
隣接する前記単位ファイバブラック格子の配置周期Lは、次式(3)で与えられる値に設定されており、
L={(λb−Δλb/2)×(λb+Δλb/2)}÷(2・neffΔλb) (3)
隣接する前記単位ファイバブラッグ格子からのブラッグ反射光の位相差Θは、次式(4)で与えられる値に設定されている
Θ=(1/2)×λb=(1/2)×(λs+j・Δλs/N) (4)
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の光信号チャンネル分割多重通信システム。
ここで、Tdは前記光パルス列の光パルスの繰り返し周期、Dpは前記光パルス波長分散器の波長分散量、λsは前記光パルス列発生器から出力される光パルス列の波長スペクトルのピーク波長、Δλsは該光パルス列の波長スペクトルの半値全幅、及び、neffは前記超格子構造ファイバブラック格子を構成する光ファイバの実効屈折率である。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−61606(P2011−61606A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210580(P2009−210580)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
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