説明

光分散補償器

【課題】光分散補償器における放射損失を低減すること。
【解決手段】一端がスラブ導波路であり他端がアレイ導波路となるように、複数のスラブ導波路と複数のアレイ導波路とが交互に縦続接続され、前記一端のスラブ導波路に入力導波路および出力導波路が接続されると共に前記他端のアレイ導波路に反射器が接続され、前記一端のスラブ導波路以外のスラブ導波路の内部にレンズ型空間位相変調器が配置された前記コアと、前記コアの上下に積層されたクラッドとを備えた光分散補償器であって、前記レンズ型空間位相変調器は、前記コアとクラッドを貫通した溝に透明樹脂を充填することにより設けられ、表裏の少なくとも一面が凹レンズに形成され、表裏の曲率が異なる非対称レンズであることを特徴とする光分散補償器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信ネットワークノードにおける分散補償回路に適用して有効な光分散補償器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の反射型アレイ導波路回折格子(AWG)型光分散補償器の構造を図6に示す。図6に示すように、従来のAWG型光分散補償器は、石英またはシリコンからなる基板614上に、石英からなるクラッド612、コア613が積層されて構成される。コア613は、3種類のAWGで構成することができる。ここでは、必要に応じて一つのスラブ導波路を便宜的に2つの部分に分けて説明しており、AWG1からAWG3のそれぞれにおける第1、第2のスラブ導波路をiA、iBと示している(i=1、2、3)。
【0003】
AWG1は、入力導波路601(a)と、出力導波路601(b)と、スラブ導波路1A(602)と、第1アレイ導波路603と、スラブ導波路1B(604)とを備えた構成とされる。スラブ導波路1B(604)の終端部の内部には空間位相変調器605が設置される。また、第1アレイ導波路603は、導波路間の光路差がΔL1となる長さに設定されている。
【0004】
AWG2は、AWG1の後段に配置され、任意の数だけ設けることができる。図示の例では1つだけ配置した場合を例に挙げて説明している。AWG2の個数をnで表すと、n=0でもよい。すなわち、AWG2は完全に省いてもよい。AWG2は、スラブ導波路2A(606)と、第k+1アレイ導波路607と、スラブ導波路2B(608)と、スラブ導波路2B(608)の内部に設置された空間位相変調器605とを有している。なお、kはAWG2の個数に応じた1からnまでの整数である。また、第k+1アレイ導波路607は、導波路間の光路差がΔL1の2倍であるΔL2となる長さに設定されている。すなわち、第k+1アレイ導波路607の回折次数は、第1アレイ導波路603の2倍となるように設定されている。
【0005】
AWG3は、AWG2の後段に接続される。ただしn=0のときは、AWG1の後段にAWG2を介さずAWG3が接続される。AWG3は、スラブ導波路609と、第n+2アレイ導波路610と、反射ミラー611とを有している。AWG3は、反射型AWGであり、同一のスラブ導波路609がスラブ導波路3A、3Bとして機能する。また、第n+2アレイ導波路610は、導波路間の光路差がΔL2/2となる長さに設定されている。すなわち、第n+2アレイ導波路610を往復したときに第k+1アレイ導波路607と同じ長さとなるように設定されている。
【0006】
図6の光分散補償器の動作を簡単に説明すれば以下の通りである。光パルスはまずAWG1により、スラブ導波路1B(604)の終端付近に空間的に周波数展開される。各周波数成分の波面は空間位相変調器605により傾けられ、伝播方向が制御される。次に各周波数成分は、AWG2を通過するが、AWG2はAWG1の2倍の回折次数を持つ、すなわち2倍の光路長差を持つ。したがって、AWG2のアレイ導波路のちょうど中間地点においてはAWG1で分光された光が合波されている。すなわち、各波長成分の波面の向きが一致している。そして、アレイ導波路の後半部分で再びΔL1の光路長差によって波長ごとに波面が制御される。したがって、各波長成分は、スラブ導波路2B(608)の終端付近に再び空間的に展開される。ここでも各スペクトル成分は605によって位相変調を受ける。これをAWG2の段数分繰り返し、次に光はAWG3を通過する。AWG3は、反射によって伝播方向を逆転させ、往路と同じ位置に光を集光する。その後光はAWG2を逆方向へ伝播し、最後にAWG1を通過する。AWG1はすべてのスペクトル成分を単一の出力導波路へ出力する回折特性を持ち、各成分は合波され、最終的に分散が補償された光パルスが出力導波路601(b)から得られる。分散値は、空間位相変調器605による光ビームの方向制御によって決定する。
【0007】
図7は、図6とは別の構成の従来例である。これは、図6の構成において、アレイ導波路の中間に反射面を位置させる構成に代えて、スラブ導波路の中間に反射面を位置させたものである。言い換えると、AWG2の終端部分に反射ミラーがあり、AWG3は存在しない構成である。動作原理は図6のものと同じである。
【0008】
図6、図7に示された光分散補償器は、非特許文献1で提案されたものである。また、非特許文献2に記載された装置は、図6においてn=0とした構成の光分散補償器の従来例である。
【0009】
空間位相変調器605は、図6(b)に示すように、コア613を貫き下部のクラッド612に達するよう掘られたレンズ型の溝605に透明樹脂を充填して作成される。厚いレンズを用いると放射損失が大きくなるため、これを避ける目的でレンズは分割され、表裏が同じ曲率とされた薄いレンズが複数枚用いられる。この構造を図8に示す。レンズ中心幅をw0、レンズ端の最大幅をw1とする。レンズ中心部におけるレンズ同士のセパレーションをc2、レンズ外縁部におけるそれをd2とする。w1−w0が大きいほどレンズ1枚あたりの位相変調量は大きくなる。ひとつのレンズで基板に垂直な方向に放射された光のうち一部は、次のレンズにおいて導波モードに結合するため、レンズ群による損失は、個々のレンズの放射損の単純和にはならない。レンズ中心部を通る光の放射損失が最小となるよう、レンズ間隔cが最適化される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】C.R.Doerr,S.Chandrasekhar,M.A.Cappuzzo,A.Wong−Foy,E.Y.Chen,andL.T.Gomez,“Four−Stage Mach−Zehnder−Type Tunable Optical Dispersion Compensator With Single−Knob Control,”IEEE Photon.Technol.Lett.,vol.17,no.12,Dec.2005.
【非特許文献2】Y.Ikuma,T.Mizuno,H.Takahashi,and H.Tsuda,“Circulator−Free Reflection−Type Tunable Optical Dispersion Compensator Using Cascaded Arrayed−Waveguide Gratings,”European Conference and Exhibition on Optical Communication 2010,We.8.E.7,Torino,Italy,Sep.22nd,2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来のレンズ形状では、レンズ中心部のみにおいて放射損失が最小化されているため、中心から外れたところを通る光の放射損失が大きいという問題があった。
【0012】
そこで本発明では、上記問題に鑑み、曲率が表面と裏面で異なるレンズを利用することで放射損失を低減することができることを見出し本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載された本発明は、一端がスラブ導波路であり他端がアレイ導波路となるように、複数のスラブ導波路と複数のアレイ導波路とが交互に縦続接続され、前記一端のスラブ導波路に入力導波路および出力導波路が接続されると共に前記他端のアレイ導波路に反射器が接続され、前記一端のスラブ導波路以外のスラブ導波路の内部にレンズ型空間位相変調器が配置された前記コアと、前記コアの上下に積層されたクラッドとを備えた光分散補償器であって、前記レンズ型空間位相変調器は、前記コアとクラッドを貫通した溝に透明樹脂を充填することにより設けられ、表裏の少なくとも一面が凹レンズに形成され、表裏の曲率が異なる非対称レンズであることを特徴とする光分散補償器である。
【0014】
請求項2に記載された発明は、両端がスラブ導波路となるように、複数のスラブ導波路と複数のアレイ導波路とが交互に縦続接続され、一端のスラブ導波路に入力導波路および出力導波路が接続されると共に前記他端のスラブ導波路に反射器が接続され、前記一端のスラブ導波路以外のスラブ導波路の内部にレンズ型空間位相変調器が配置された前記コアと、前記コアの上下に積層されたクラッドとを備えた光分散補償器であって、前記レンズ型空間位相変調器は、前記コアとクラッドを貫通した溝に透明樹脂を充填することにより設けられ、表裏の少なくとも一面が凹レンズ形状とされ、表裏の曲率が異なる非対称レンズであることを特徴とする光分散補償器である。
【0015】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2に記載の光分散補償器において、前記空間位相変調器は、レンズ中心部とレンズ外縁部とでレンズ幅が異なり、該レンズ幅に応じて放射損が最小になるようにレンズ中心部の溝間隔と外縁部の溝間隔が異なる値に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、従来型構成に比べ、レンズ部分での狭帯域化を抑制できるため、チャネル内透過帯域幅が広がる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態の反射型AWG型光分散補償器の構造を示す図である。
【図2】図1の光分散補償器における空間位相変調器105のレンズ配置図である。
【図3】非対称レンズを用いることにより、レンズを通る光の損失を低減できる理由を説明する図である。
【図4】レンズを通過するときの光の透過率を従来型と本発明のものとを比べた図である。
【図5】第2の実施形態の反射型AWG型光分散補償器の構造を示す図である。
【図6】従来の反射型AWG型光分散補償器の構造の一例を示す図である。
【図7】従来の反射型AWG型光分散補償器の構造の他の一例を示す図である。
【図8】従来の光分散補償器における空間位相変調器のレンズ配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面において、同一の機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態の反射型アレイ導波路回折格子(AWG)型光分散補償器の構造を示す図である。図1(a)はコア部分を構成する導波路の配置を示す図であり、図1(b)は光分散補償器における各層の配置を示す図である。図1(b)に示すように、本実施形態のAWG型光分散補償器は、石英またはシリコンからなる基板114上に、石英からなるクラッド112、コア113が積層されて構成される。コア113は、図1(a)に示すように、3種類のAWGで構成することができる。ここでは、必要に応じて一つのスラブ導波路を便宜的に2つの部分に分けて説明しており、AWG1からAWG3のそれぞれにおける第1、第2のスラブ導波路をiA、iBと示している(i=1、2、3)。
【0020】
AWG1は、入力導波路101(a)と、出力導波路101(b)と、スラブ導波路1A(102)と、第1アレイ導波路103と、スラブ導波路1B(104)とを備えた構成とされる。スラブ導波路1B(104)の終端部の内部には空間位相変調器105が設置される。空間位相変調器105は、図1(b)に示すように、上部側のクラッド112からコア113を貫き、下部側のクラッド112に達するよう掘られたレンズ型の溝に透明樹脂を充填して作成される。空間位相変調器105の溝は、基板114まで達するように掘られてもよい。また、第1アレイ導波路103は、導波路間の光路差がΔL1となる長さに設定されている。
【0021】
AWG2は、AWG1の後段に配置され、任意の数だけ設けることができる。図示の例では1つだけ配置した場合を例に挙げて説明している。AWG2の個数をnで表すと、n=0でもよい。すなわち、AWG2は完全に省いてもよい。図1において、AWG2は個数可変であることを示すために破線で囲んで示してある。AWG2は、スラブ導波路2A(106)と、第k+1アレイ導波路107と、スラブ導波路2B(108)と、スラブ導波路2B(108)の内部に設置された空間位相変調器105とを備えた構成とされる。なお、kはAWG2の個数に応じた1からnまでの整数である。また、第k+1アレイ導波路107は、導波路間の光路差がΔL1の2倍であるΔL2となる長さに設定されている。すなわち、第k+1アレイ導波路107の回折次数は、第1アレイ導波路103の2倍となるように設定されている。
【0022】
AWG3は、AWG2の後段に接続される。ただしn=0のときは、AWG1の後段にAWG2を介さずAWG3が接続される。AWG3は、スラブ導波路109と、第n+2アレイ導波路110と、反射ミラー111とを備えた構成とされる。AWG3は、反射型AWGであり、同一のスラブ導波路109がスラブ導波路3A、3Bとして機能する。また、第n+2アレイ導波路110は、導波路間の光路差がΔL2/2となる長さに設定されている。すなわち、第n+2アレイ導波路110を往復したときに第k+1アレイ導波路107と同じ長さとなるように設定されている。
【0023】
図1に示す構成の光分散補償器において、分散補償動作の基本原理は従来例と同様である。図1に示す本実施形態の光分散補償器では、空間位相変調器105のレンズ形状が従来の光分散補償器とは異なり、表裏の曲率が異なる点に特徴がある。図2に、空間位相変調器105のレンズ配置図を示す。空間位相変調器105を構成するレンズ(透明樹脂)は、アレイ導波路面を構成する円弧の中心とレンズの中心軸とが同じ高さなるように構成される。ここに示されるように、空間位相変調器105のレンズ形状は表面と裏面での曲率が異なる(以下、非対称レンズともいう)。この空間位相変調器105は、そのレンズ形状は表裏の少なくとも一面が図6、7に示す従来例と同様に凹レンズであるが、この非対称レンズを用いることにより、レンズを通る光の損失を低減できる。
【0024】
ここで、非対称レンズを用いることにより、レンズを通る光の損失を低減できる理由について説明する。複数の溝を有する導波路を光が伝播するとき、溝部分では縦方向(基板に対し鉛直方向、すなわち図1(b)において紙面上下方向)に光の閉じ込めが無いため、放射損失が発生する。その損失は、溝幅と溝間隔とによって決定され、溝幅が一定のときには溝間隔に依存して増減する。レンズを通る光の損失を低減するために最適な溝間隔を、複数の溝幅について調べた結果を図3(a)に示す。図3(a)は、溝を複数配置したときにその溝列を通る光の放射損が最小化される溝間隔(中心間隔)を溝幅に対してプロットしたグラフである。最適な溝間隔は、その溝幅において放射損が最小となる溝間隔と考えられる。
【0025】
ここで空間位相変調器105として図3(b)に示す従来型の対称型レンズを用いる場合について最適な溝間隔について考える。空間位相変調器105として対称型レンズを用いた場合、レンズの中心部と外縁部とで溝幅は異なるにもかかわらず、その溝間隔が同じ値になる。すなわち、レンズの外縁部では、レンズ中心部と同じ溝間隔aでありながら、溝幅はレンズ中心部とは異なる。したがって、レンズの光軸に沿って伝播する光の伝播損失を最小化するようレンズの配置間隔aを選ぶことで中心波長の損失は低減できるが、レンズの外縁部では、放射損を最小化するように溝間隔が最適化されておらず、中心波長から離れた光の損失は大きい。
【0026】
これに対し、本実施形態の光分散補償器のように、空間位相変調器105として図3(c)に示す非対称レンズを採用すると、レンズの裏面と表面の曲率の非対称性を調整することで、レンズ中心部の溝間隔aと外縁部の溝間隔bとは異なる値を設定できる。すなわち、レンズ中心だけでなく、外縁部についても溝間隔を自由に調整できるようになる。したがって、レンズのどの位置を伝播する光に対しても、溝幅に合わせた溝間隔に設定することが可能となり、図3(a)にあわせた設定することで放射損失を最小化することができる。
【0027】
また、空間位相変調器105として必要なレンズの数は1枚あたりの厚みや与える分散量などにより増減するが、ここでは図2のように16枚を例にとる。レンズ中心幅をw0、レンズ外縁部(端)の最大幅をw1とし、レンズ中心部におけるレンズ同士のセパレーションをc、レンズ外縁部におけるレンズ同士のセパレーションをdとすると、対称型レンズは、下記の式(1)を満たすと考えられる。
【0028】
【数1】

【0029】
式(1)が満たされている(c=c2、d=d2)とき、レンズは対称型レンズとなり、図8に示した構造となる。しかしながら式(1)を満たさないcとd(すなわちc1とd1)の値に設定した場合、図2のように、レンズは表面と裏面の形状が異なる非対称レンズとなる。
【0030】
図4(a)に図8で表される従来型配置のレンズを通過するときの光の透過率を示し、図4(b)に図2で表される本発明のレンズ列を通過するときの光の透過率を示す。図4に示したものはシミュレーション値であり、ビーム伝搬法によって計算したものである。レンズ幅w0、w1とレンズ枚数は従来例と本発明構成両方において等しく設定されており、それぞれw0=10μm、w1=60μm、16枚である。図4(a)の従来型においては、c2=60μm、d2=10μmであり、式(1)は満たされている。図4(b)の非対称レンズにおいては、c1=54μm、d1=14μmに設定されており、式(1)を満たさない。一方で図4(b)の非対称レンズにおいては、溝幅(レンズ幅w0、w1)に応じて放射損が最小が最低になる(図3(a)を満足する)値にレンズ中心部の溝間隔aと外縁部の溝間隔bが設定されている。
【0031】
図4からわかるように、レンズの端部における透過率が本発明では改善され、より平坦化されていることがわかる。先述したように、メニスカス形状を採用した本発明の構成では、レンズ端部を通る波長の光に対しても、溝幅(レンズ幅)に応じて、放射損失が最小化されるよう溝間隔がより最適化されたからである。c1、d1の最適値はレンズ材質の屈折率、導波路コアの屈折率などによって変わるため、先述のビーム伝搬法などによる計算が都度必要である。
【0032】
このように本実施形態の光分散補償器によれば、光分散補償器のチャネル内帯域が広くなり、将来必要とされる伝送速度の高い信号(広帯域信号)に対しても光分散補償器を適用することが可能となる。
【0033】
以上の実施形態では、チップ右端に設けられた反射ミラーで折り返す構成の反射型アレイ導波路回折格子(AWG)型光分散補償器を例に挙げて説明したが、図1の反射ミラーを削除し、チップ右端を対称軸として対称な回路レイアウトを有する透過型でも、2倍の回路面積を必要とするが、レンズ形状の工夫により得られる本発明の概念は適用可能である。
【0034】
[第2の実施形態]
次に第2の実施形態について説明する。図5は、第2の実施形態の光分散補償器を示す図である。図1が図6の従来例に対応する回路構成であるのと同様に、本実施形態の光分散補償器は図7で示される従来例に対応した回路構成を有している。図5の光分散補償器は、図1の光分散補償器において、アレイ導波路110の中間に反射面111を位置させる構成に代えて、スラブ導波路108、109の中間に反射面111を位置させたものである。言い換えると、AWG2の終端部分に反射ミラー111があり、AWG3は存在しない構成である。AWG2の個数nが0以上の任意の個数であるのは第1の実施形態と同じである。もしn=0で、AWG2が存在しない場合、反射ミラー111はAWG1の終端に設置される構成となる。
【0035】
本実施形態の光分散補償器においても、第1の実施形態と同様に、空間位相変調器105として、従来の対称型レンズに代えて非対称型レンズを用いる点に特徴がある。
【0036】
本実施形態の光分散補償器によれば、空間位相変調器105として非対称レンズを用い、その溝幅(レンズ幅w0、w1)に応じて放射損が最小になる値にレンズ中心部の溝間隔aと外縁部の溝間隔bが設定することで、光分散補償器のチャネル内帯域が広くなり、将来必要とされる伝送速度の高い信号(広帯域信号)に対しても光分散補償器を適用することが可能となる。
【0037】
第1の実施形態の光分散補償器が偶数個のAWGで構成したい場合に適用されるのに対し、この実施形態の光分散補償器は、奇数個のAWGで構成したい場合に好適に適用できる。
【0038】
また、第1の実施形態と同様に、図5の反射ミラーを削除し、チップ右端を対称軸として対称な回路レイアウトを有する透過型でも、2倍の回路面積を必要とするが、レンズ形状の工夫により得られる本発明の概念は適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
101(a) 入力導波路
101(b) 出力導波路
102 AWG1の第1のスラブ導波路
103 第1アレイ導波路
104 AWG1の第2のスラブ導波路
105 非対称レンズ型位相変調器
106 AWG2の第1のスラブ導波路
107 第k+1番目のアレイ導波路
108 AWG2の第2のスラブ導波路
109 AWG3の第1・第2のスラブ導波路
110 第n+2番目のアレイ導波路
111 反射ミラー
112 クラッド
113 コア
114 基板
601(a) 入力導波路
601(b) 出力導波路
602 AWG1の第1のスラブ導波路
603 第1アレイ導波路
604 AWG1の第2のスラブ導波路
605 対称レンズ型位相変調器
606 AWG2の第1のスラブ導波路
607 第k+1番目のアレイ導波路
608 AWG2の第2のスラブ導波路
609 AWG3の第1・第2のスラブ導波路
610 第n+2番目のアレイ導波路
611 反射ミラー
612 クラッド
613 コア
614 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端がスラブ導波路であり他端がアレイ導波路となるように、複数のスラブ導波路と複数のアレイ導波路とが交互に縦続接続され、前記一端のスラブ導波路に入力導波路および出力導波路が接続されると共に前記他端のアレイ導波路に反射器が接続され、前記一端のスラブ導波路以外のスラブ導波路の内部にレンズ型空間位相変調器が配置された前記コアと、
前記コアの上下に積層されたクラッドとを備えた光分散補償器であって、
前記レンズ型空間位相変調器は、前記コアとクラッドを貫通した溝に透明樹脂を充填することにより設けられ、表裏の少なくとも一面が凹レンズに形成され、表裏の曲率が異なる非対称レンズであることを特徴とする光分散補償器。
【請求項2】
両端がスラブ導波路となるように、複数のスラブ導波路と複数のアレイ導波路とが交互に縦続接続され、一端のスラブ導波路に入力導波路および出力導波路が接続されると共に前記他端のスラブ導波路に反射器が接続され、前記一端のスラブ導波路以外のスラブ導波路の内部にレンズ型空間位相変調器が配置された前記コアと、
前記コアの上下に積層されたクラッドとを備えた光分散補償器であって、
前記レンズ型空間位相変調器は、前記コアとクラッドを貫通した溝に透明樹脂を充填することにより設けられ、表裏の少なくとも一面が凹レンズ形状とされ、表裏の曲率が異なる非対称レンズであることを特徴とする光分散補償器。
【請求項3】
前記空間位相変調器は、レンズ中心部とレンズ外縁部とでレンズ幅が異なり、該レンズ幅に応じて放射損が最小になるようにレンズ中心部の溝間隔と外縁部の溝間隔が異なる値に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光分散補償器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−29546(P2013−29546A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163567(P2011−163567)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】