説明

光制御積層体およびその製造方法、照明装置

【課題】生産が容易で安価な製造方法により、印刷面の剥離、擦れを防止でき、耐久性の高い光制御積層体およびその製造方法、照明装置を提供する。
【解決手段】光源から出射した光を制御する光制御積層体1であって、光源に対向配置される基体2と前記基体2と同系の樹脂からなり、前記基体2に積層されるフィルム4とを備え、前記基体2と前記フィルム4の間には選択遮光部3を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、光制御積層体およびその製造方法、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや一般照明装置等の背面照明などに用いる面状光源として直下型バックライトが使用されている。かかるバックライトでは、特許文献1に開示されているように光拡散剤を配合した光拡散板や、特許文献2〜7に開示されているように、光透過板に光遮断性を有するインク層などを印刷したものにより、光源から発生された光を面状光源に変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−50607
【特許文献2】特開2000−162411
【特許文献3】特開平3−236958
【特許文献4】特開2002−313103
【特許文献5】特開平5−119313
【特許文献6】特開2003−156602
【特許文献7】特開2002−202507
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2〜7に記載の発明では、いずれもインク層が外側の層に形成されており、直下型バックライトユニットにおいて、拡散板を使用する際、輸送や組み立て時に印刷が剥がれる他、印刷面と液晶パネルや光学シートとの擦れが生じたり、印刷面を光源側として配置した場合には、拡散板の支持ピンとの擦れにより、印刷面が傷つき、選択遮光性を逸失してしまうという問題があった。特許文献6には、インク層を強制硬化することにより表面硬度の高い光拡散板を製造する技術が記載されているが、生産性やコストの点でなお問題があった。
【0005】
本発明は、このような点を鑑みて、生産性が高く安価に製造可能であり、印刷面の剥離、擦れを防止でき、耐久性の高い光制御積層体およびその製造方法、照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、光源から出射した光を制御する光制御積層体であって、光源に対向配置される基体と、前記基体と同系の樹脂からなり、前記基体に積層されるフィルムと、を備え、前記基体と前記フィルムの間には選択遮光部を有し、当該光制御積層体の前記選択遮光部における全光線透過率が20%以上かつ50%以下であることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、本発明の光制御積層体を、例えば、液晶パネルのバックライトユニットに使用する場合でも、選択遮光部が光制御積層体の表面に露出することがなく、基体およびフィルムに保護されている状態となるので、組立、運搬、および使用時に選択遮光部が剥がれたり、擦れて傷つくことがなく、経時的な劣化にも強い光制御積層体を提供することができる。また、前記基体と前記フィルムが同系の樹脂からなるので、例えば熱ラミネートで積層した場合にも、密着性がよく、剥離を防止でき、積層体の反りも防止できる。また、従来、光源光を拡散するために使用されていた部材、例えば、拡散フィルムやプリズムフィルム等を省くことができる。
ここで、選択遮光部とは、基体とフィルムとの間に形成された、選択的に光を遮断する領域である。この選択遮光部は、基体とフィルムとの間の全面に形成されてもよいし、部分的に形成されてもよく、所望の輝度に応じて適宜調整される。本発明では、この選択遮光部における光制御積層体の全光線透過率が20%以上かつ50%以下の範囲内であるため、この光制御積層体を光源とともに用いた場合に、光ムラの発生を抑制し、所望の輝度分布を得ることができる。なお、全光線透過率が20%未満、または50%を超えると、所望の輝度分布を得られない可能性がある。
【0008】
本発明では、前記選択遮光部が形成された前記フィルムの前記選択遮光部における反射率が37%以上かつ72%以下であることが好ましい。
この発明では、選択遮光部が形成されたフィルムにおいて、選択遮光部が形成された領域の反射率が37%以上かつ72%以下の範囲内である。このため、この光制御積層体を光源とともに用いると、光ムラの発生を抑制し、所望の輝度分布を得ることができる。反射率が37%未満、または72%を超えると、光ムラが発生したり、所望の輝度分布を得られない可能性がある。なお、反射率のより好ましい範囲は、40%以上かつ70%以下である。
【0009】
本発明では、前記同系の樹脂が、ポリスチレン系樹脂であることが好ましい。
この発明によれば、透明性が高いポリスチレン系樹脂を使用するので、光線透過率が高く、光源の輝度を効率よく利用できる他、選択遮光部の光拡散効果をより効果的に発揮できる。また、積層時の接着性がよく、前述の剥離防止効果をより強く奏することができる。さらに、ポリスチレン系樹脂は印刷および塗装性に優れているため、前記選択遮光部を基体およびフィルムに、印刷により容易に形成することが可能となる。
【0010】
さらに、前記フィルムは二軸延伸ポリスチレンフィルムであることが好ましい。
この発明によれば、選択遮光部をより強く保護することができる。また、選択遮光部をフィルムに印刷する場合や、フィルムを基体に積層する際など、製造過程においても、強度が確保されており、扱いやすい。
【0011】
また、前記基体が、光拡散剤を含有していることが好ましい。
選択遮光部との相乗効果により、光拡散性が増し、当該光制御積層体をバックライトユニットに用いた場合、より望ましい輝度が得られる。
【0012】
本発明では、前記反射率は、前記フィルムの前記選択遮光部が形成された領域内で一定値であることが好ましい。
この発明によれば、選択遮光部が形成されたフィルムの、選択遮光部が形成された領域において、反射率を37%以上かつ72%以下の範囲内の一定値とする。すなわち、選択遮光部をフィルムの全面に形成することを意味する。これによれば、選択遮光部を全面に形成(ベタ印刷)すればよいので、複雑なパターンを形成する必要がなく、製造が容易となり、製造コストを低減することができる。
【0013】
本発明では、前記全光線透過率が50%より高い領域が面内に存在してもよい。
例えば、液晶テレビでは、面中央部の輝度がその周りの輝度より相対的に高くなるように設計される場合がある。また、電子看板等では、意匠性のため、端部や特定の部分の輝度を他の部分より相対的に高くすることが求められる場合がある。本発明では、これら所定の部分の全光線透過率を他の領域の全光線透過率より高く、場合によっては部分的に50%を越えるように設計することを含む。このように、製品によって求められる輝度分布に応じて全光線透過率が調整されることにより、所望の輝度分布を得ることができる。
【0014】
本発明の光制御積層体の製造方法は、前記基体または前記フィルムの少なくともいずれか一方に選択遮光部を印刷する工程と、次いで、前記選択遮光部が、前記基体と前記フィルムの間に配置されるよう、前記基体と前記フィルムを熱ラミネートにより積層する工程とを備えることを特徴とする。
この発明によれば、選択遮光部が表面に露出せずフィルムで保護されるので、傷の発生を防止できる。また、熱ラミネートにより、基体とフィルムを接着するので、剥がれ難い上、接着剤が不要であることから、環境負荷が小さい。特に、基体とフィルムを同系の樹脂とした場合には、反りや剥離の発生を良好に防止できる。
【0015】
本発明の照明装置は、前記光制御積層体と前記光制御積層体直下に配置された光源とを備える。
本発明によれば、光制御積層体の選択遮光部がフィルムにより保護されているので、組立や運送時はもちろん、使用中にも傷が発生するのを防ぐことができ、また、フィルムと基体が同系の樹脂で構成されることから、反りも発生せず、光拡散性を長期間に渡って保つことのできる照明装置を提供できる。また、光ムラの発生を抑制し、所望の輝度分布を得ることができる。
【0016】
本発明では、前記光源がLEDであってもよい。
この発明は、LEDを光源とする照明装置において、上述したように光ムラが発生せず、所望の輝度分布を得ることができる。このような照明装置としては、室内照明、電子看板、誘導灯、液晶テレビのバックライトユニット等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光制御積層体の断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る光制御積層体の断面図である。
【図3】直下型バックライトユニットの一例を示す分解斜視図である。
【図4】実施例6の結果を示すグラフであり、(A)は光制御積層体の面内の全光線透過率を示すグラフ、(B)は光制御積層体の面内の輝度分布を示すグラフである。
【図5】比較例4の結果を示すグラフであり、(A)は光制御積層体の面内の全光線透過率を示すグラフ、(B)は光制御積層体の面内の輝度分布を示すグラフである。
【図6】比較例5の結果を示すグラフであり、(A)は光制御積層体の面内の全光線透過率を示すグラフ、(B)は光制御積層体の面内の輝度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る光制御積層体について、図1に基づいて説明する。
本発明の光制御積層体1は、一般照明装置や液晶表示装置のバックライトに用いる面状光源装置に関するものであり、例えば直下型バックライトユニットとして利用される。
【0019】
[積層体の構成]
光制御積層体1は、図1に示すように、基体2、選択遮光部3、フィルム4が順に積層された光制御積層体である。本実施形態では、選択遮光部3がフィルム4の全面に印刷された形態(ベタ印刷)を例示して説明する。
本発明に用いる基体2は、後述のフィルム4と同系の樹脂からなり、特に透明性、印刷および塗装性、接着性に優れることから同系樹脂はポリスチレン系樹脂であることが好ましい。厚みは0.5mm以上、特に0.8mm以上3.0mm以下であることが好ましい。0.5mmより薄いと剛性不足および反りの発生等、フィルム4および選択遮光部3を支持する層として不十分である。また、3.0mmよりも厚いと、扱いにくいためコスト的に不利になる可能性がある。また、3.0mmよりも厚いと、例えば照明装置に用いた場合には、装置の軽量化、薄化の傾向に対応できない恐れがある。また、反りを防止するには、フィルム4に対し、積層体の厚みは20〜500倍であることが望ましい。
基体2の全光線透過率は50%以上、特に55%以上が好ましい。50%より小さいと後述する選択遮光部3の効果が出にくい。
【0020】
また、基体2に含有できる光拡散剤としては、一般的に使用される炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンなどの無機系光拡散剤、あるいはシロキサン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、スチレン系重合体粒子などの有機系拡散剤を使用できる。含有量に特に制限はない。
基体2の表面形状について、特に制限はなく、必要に応じてシボ付け等を行ってもよい。また、さらに基体2に透明板や半透明板を積層し、多層構造とすることも本発明の効果を損なわない限りにおいて可能である。
また、光制御積層体1、基体2、フィルム4のいずれの原料についても、本発明の効果を損なわない限りにおいて、酸化防止剤や紫外線吸収剤、帯電防止剤等を加えることは可能である。
【0021】
選択遮光部3は、基体2とフィルム4との間に形成され、所望の面状発光および輝度分布となるように任意に設計される。具体的には、この選択遮光部3と基体2とフィルム4とで構成される光制御積層体1の全光線透過率が20%以上かつ50%以下となるように設計される。全光線透過率が上記範囲外であると、所望の輝度分布を得にくい。なお、全光線透過率は、選択遮光部3の反射率と基体の全光線透過率を調整することで制御することができる。このような選択遮光部3は、印刷により、基体2およびフィルム4の少なくともいずれか一方の面に形成される。
【0022】
印刷の際のインク種および印刷方法は特に限定されず、各種印刷方法および蒸着などにより形成できる。特にフィルム4に印刷する場合で、フィルム4に二軸延伸ポリスチレンフィルムを用いた場合は、例えば、金属酸化物系汎用グラビア用インキを用い、グラビア印刷により選択遮光部3を印刷できるため、印刷の難易度も低く、生産性が高く、コスト的にも有利である。この際、グラビア用インキの顔料としては、光反射、散乱特性の高い化合物を用いるのが好ましく、特に酸化チタンを用いるのが好ましい。
【0023】
フィルム4は前述の基体2と同系樹脂からなることが好ましい。特に透明性、印刷および塗装性、接着性に優れることから同系樹脂はポリスチレン系樹脂であることが好ましいが、選択遮光部3を保護する観点および製造時の扱い易さから、強度の高い二軸延伸ポリスチレンフィルムを使用することが好ましい。通常、延伸倍率は2〜30倍程度であるが、これに限らず使用できる。また、フィルム4の厚みは10μm以上、特に12μm以上500μm以下が好ましい。10μmより薄いと、後述する基体2との張り合わせ過程で、フィルムが切れやすくなる。また、500μmを超えると、ロール状にするのが困難で、選択遮光部3をフィルム4に印刷する場合、生産性の高いグラビア印刷を利用することが難しくなる。また、フィルム4の全光線透過率は50%以上、特に70%以上が好ましい。50%より小さいと後述する選択遮光部3の効果が出にくい。
尚、フィルム4には、本発明の効果を損なわない範囲で、帯電防止処理、耐候処理等の機能を付与すべく、添加剤の練りこみや塗布、およびさらなる機能性フィルムの貼付等を行ってもよい。
【0024】
ここで、フィルム4に選択遮光部3が形成された印刷フィルムの反射率は、37%以上かつ72%以下であることが好ましい。反射率が上記範囲外であると、輝度ムラが発生したり、所望の輝度分布を得ることが困難となる。なお、反射率のより好ましい範囲は、40%以上かつ70%以下である。また、印刷フィルムの反射率は、面内の各部分で37%以上かつ72%以下の範囲内であればよいが、本実施形態では、選択遮光部3をフィルム4の全面に形成した形態であるので、面内の各部分の反射率が一定値となっている。
【0025】
また、基体2と選択遮光部3とフィルム4とで構成される光制御積層体1の全光線透過率は、上述したように、20%以上かつ50%以下となる。全光線透過率をこの範囲内とすることにより、輝度ムラを抑制し、所望の輝度分布を得ることができる。
【0026】
[製造方法]
まず、本発明の基体2は、ポリスチレン樹脂に光拡散剤を配合させた樹脂材料を一般的に用いられる方法で混練して得られる。例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等で混練する方法が挙げられる。
【0027】
本発明の光制御積層体1の製造方法としては、熱ラミネート法を用いることができる。
ここで、熱ラミネート法としては、広義に熱を利用した各種ラミネート方法を意味し、前記基体2および前記フィルム4を予めシート状に形成したものを両者の軟化点より高い温度でプレスして一体化する熱ラミネート法の他、押出ラミネート法やポリサンドラミネート法などを含む、公知の各種方法を指す。
【0028】
例えば、押出ラミネートにより本光制御積層体1を製造する場合は、フィルム4に選択遮光部3を印刷し、所定の幅にスリットしてロール状に巻き取っておく。そして、ロールから繰り出されたフィルム4の選択遮光部3が印刷された面に基体2を押出機から押し出して溶融状態で積層することにより光制御積層体1を製造する。
この際、押出機には脱揮装置が必要である。この脱揮装置は、溶融状態で大気圧力以下に減圧可能なものであり、押出時に通常8kPa以下、好ましくは4kPa以下に減圧する。この減圧脱揮により、樹脂材料に残存する水分及び揮発性の反応副生成物を除去するとともに、押出成形により生成する副次的な揮発性の反応副生成物をも除去することができる。脱揮が不充分であると、基体2の発泡又は基体2の表面の肌荒れが生じ、基体2内における光の均一な拡散性が得られない。
また、基体2を前述の押出機で押し出して、予めシート成形した場合には、選択遮光部3を印刷したフィルム4を印刷面と反対側の面から熱ロールで加熱し基体2に熱ラミネートすればよい。
本発明の光制御積層体1の製造には、上述の押出ラミネート法を用いるのが、環境負荷やコストの面で有利であるが、前述の通り、他にも、ポリサンドラミネート法や熱ラミネート法など公知の各種方法が使用できる。本発明において、例えばドライラミネート法やウェットラミネート法を用いる場合、厚みのある基体2にフィルム4をラミネートすることに困難性があり、また溶剤を使用することから、環境負荷が大きくなる。また共押出ラミネーションでは、選択遮光部3を印刷することができない。
【0029】
[照明装置]
本発明の光制御積層体1は、一般照明装置や液晶のバックライトとして利用できる。いずれの場合においても、光制御積層体1の基体2直下に光源を配置して用いる。光源としては、LEDや冷陰極管を用いることができる。光源から発生した光は、基体2を通り、選択遮光部3により、拡散され、さらにフィルム4を通って表面に放出される。
【0030】
[第1実施形態の作用効果]
上述した構成によれば、以下の作用効果を奏することができる。
選択遮光部3が基体2とフィルム4との間に形成されるため、選択遮光部3が光制御積層体1の表面に露出することがなく、組立、運搬、および使用時に選択遮光部3が剥がれたり、擦れて傷つくことがなく、経時的な劣化にも強い光制御積層体1を提供することができる。
【0031】
また、光制御積層体1の全光線透過率が20%以上かつ50%以下の範囲内であるため、照明装置として用いた場合に、光ムラの発生を抑制し、所望の輝度分布を得ることができる。
さらに、選択遮光部3が形成されたフィルム4において、光制御積層体1の反射率が37%以上かつ72%以下の範囲内としたことにより、照明装置として用いた場合に、光ムラの発生を抑制し、所望の輝度分布を得ることができる。特に、本実施形態では、選択遮光部3をベタ印刷した構成のため、上記反射率は面内の各部分において一定値となっている。本実施形態では、選択遮光部を全面に形成(ベタ印刷)すればよいので、複雑なパターンを形成する必要がなく、製造が容易となり、製造コストを低減することができる。
【0032】
また、基体2とフィルム4にポリスチレン系樹脂を使用したので、光線透過率が高く、光源の輝度を効率よく利用できる他、選択遮光部3の光拡散効果をより効果的に発揮できる。また、積層時の接着性がよく、剥離防止効果をより強く奏することができる。さらに、ポリスチレン系樹脂は印刷および塗装性に優れているため、選択遮光部3をフィルム3に、印刷により容易に形成することが可能となる。
このように、基体2とフィルム4とを同系の樹脂で構成したので、例えば熱ラミネートで積層した場合にも、密着性がよく、剥離を防止でき、積層体の反りも防止できる。
【0033】
また、フィルム4に二軸延伸ポリスチレンフィルムを使用したので、選択遮光部3をより強く保護することができる。また、選択遮光部3をフィルム4に印刷する際、製造過程においても、強度が確保されており、扱いやすい。
また、基体2が、光拡散剤を含有しているため、選択遮光部3との相乗効果により、光拡散性が増し、光制御積層体1を用いたバックライトユニットにおいて、より望ましい輝度が得られる。
【0034】
<第2実施形態>
第1実施形態では、選択遮光部3がフィルム4の全面に印刷された例(ベタ印刷)を示したが、第2実施形態では、図2に示すように、選択遮光部3が部分的に形成された例(部分印刷)について説明する。
光制御積層体5は、図2に示すように、基体2とフィルム4との間に部分的に形成された選択遮光部6を備えている。選択遮光部6のパターンは、特に限定されないが、目的の製品に求められる輝度分布に応じて適宜調整される。
このように部分的に形成された選択遮光部6と基体2とフィルム4とから構成される光制御積層体5は、選択遮光部6が形成された領域における全光線透過率が20%以上かつ50%以下である。
また、選択遮光部6を形成したフィルム4において、選択遮光部6が形成されている領域の反射率は37%以上かつ72%以下である。なお、反射率のより好ましい範囲は、40%以上かつ70%以下である。
このような構成によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0035】
<変形例>
本発明の光制御積層体1は、フィルム4を光源側に配しても使用できる。この場合においても、選択遮光部3はフィルム4で保護されているため、光制御積層体1を支持する支持ピン等による擦れで傷つくことなく、利用できる。
また、本発明の光制御積層体1は直下型バックライトユニットの拡散板として利用することを想定しているが、エッジライト型バックライトユニットの導光板として利用することも可能である。
【0036】
また、上記実施形態の光制御積層体を液晶ディスプレイに用いる場合は、面中央部や端部、その他特定の部分の全光線透過率を他の領域の前記全光線透過率よりも高くなるようにしてもよい。場合によっては部分的に50%を超えるように設計してもよい。かかる積層体を用いることで、液晶ディスプレイは、所望の輝度分布を得ることができる。このように、製品によって求められる輝度分布は異なるため、求められる輝度分布に応じて面内の全光線透過率を適宜調整してもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、基体2またはフィルム4の端から端まで選択遮光部3を積層したが、液晶ディスプレイのバックライトユニットに使用する場合は、表示エリアに相当する領域にのみ選択遮光部3を積層する構成であってもよい。これによれば、印刷用インキ等を節約でき、低コスト化を図ることができる。
さらに、バックライトの光漏れが局所的な場合は、この局所に対応する領域にのみ選択遮光部3を形成して輝度を調整してもよい。
【実施例】
【0038】
次に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は実施例の内容に限定されるものではない。
<試験1>
第1実施形態で説明した光制御積層体1について以下の試験を行った。
[実施例1]
フィルムは、ポリスチレンフィルム(旭化成ケミカルズ株式会社製OPS、厚さ25μm、全光線透過率91%)を用いた。このフィルムの一方の全面に、金属酸化物系グラビア用インキ(大日精化工業株式会社製NPS701白)で選択遮光部をグラビア印刷した。
基体は、ポリスチレン(PSジャパン株式会社製G9504)に光拡散剤(シロキサン系重合粒子)をポリスチレンの質量に対し0.4質量%を混合した樹脂を用いた。この樹脂を210〜250℃に設定した押出機(日立造船株式会社製65mmφ単軸)により押し出し
、選択遮光部を印刷したフィルムの印刷面に厚さ2.5mmになるようラミネートし積層した。線圧は、50〜300kgf/cm(490〜2940N/cm)の範囲で調整可能であるが、本実施例では100kgf/cm(980N/cm)にてラミネートした(尚、ここで言う線圧とは、ラミネートするロールに加える力を、ダイスのリップの幅で割った値である)。基体の積層面と反対側の面にはシボ付け加工を行い、積層体の両表面に帯電防止剤を塗布し、光制御積層体を得た。
【0039】
[評価]
選択遮光部3が印刷されたフィルム4(以降、印刷フィルムとも表記する。)については反射率を以下の方法で測定し、光制御積層体については、全光線透過率、反り、剥離強度(クロスカット)、光ムラ、輝度を以下の方法で測定または評価し、表1に結果を記載した。尚、表1中で、ポリスチレンをPS、ポリエチレンテレフタレートをPETと表記してある。
(1)反射率
印刷フィルムを吸光性のある黒色のプラスチックシートの上に載置し、分光測色計(CM−2600d、コニカミノルタセンシング株式会社製)にてD65光源/2°視野で、印刷フィルムの全反射率を測定した。なお、この黒色プラスチックシートを同方法で測定すると、三刺激値X/Y/Z=3.6/3.7/4.1であった。
(2)全光線透過率
JIS K 7361(ISO 13468)に準拠した。ヘーズメーターとしては日本電色社製NDH5000を用いた。
(3)反り
温度60℃、湿度95%の雰囲気下に実施例で得られた光制御積層体を24時間曝したときの反りの程度を観察した結果、○:反りなし、×:反りありとして評価した。
(4)剥離強度(クロスカット)
実施例で得られた光制御積層体上にJIS K 5600−5−6 をベースに、5mm×5mmの格子状のマス目を3×3=9マス作成し、当該マス目部分に市販の布製テープ(ガムテープ)を貼付後、すぐに剥離した。その際、フィルムが9マス中、8マス剥がれたら「1/9」、全部残った場合「9/9」、と記載した。擦れ等により選択遮光部が暴露しないことが必要なため、9/9が最も優れた積層体である。
(5)光ムラ(輝度ムラ)
市販の32型液晶テレビを分解して得られるLED直下型のバックライトユニットを用いた。光制御積層体をバックライトユニットに設置し、その上に拡散シート(株式会社ツジデン製D121UZ)を1枚設置した場合と、2枚設置した場合とで、均一な面状光源体となっているかを目視にて、◎:ムラなし、○:軽微にムラあり、△:ややムラあり、×:ムラあり、−:未評価として評価した。
(6)輝度
輝度が均一な面状光源体として、市販の32型液晶テレビを分解して得られるLED直下型のバックライトユニットを用いた。この面状光源体の中央正面輝度(以下、輝度と略す)を4200cd/mに調整した。この上に、光制御積層体を設置し、その上に拡散シート(株式会社ツジデン製D121UZ)を2枚設置し、表面の輝度を、分光放射計(株式会社トプコンテクノハウス製SR−3A、測定距離400mm、測定角1度、測定径5.8mm)にて測定した。中央とは、ユニット表面の縦および横の中央の直交点であり、正面とはユニット表面に対して垂直であることを示す。
【0040】
[実施例2〜5]
全光線透過率が表1に示した値の光制御積層体を用いた以外は、実施例1と同様の方法で光制御積層体を得た。
【0041】
[比較例1、2]
全光線透過率が表1に示した値の光制御積層体を用いた以外は、実施例1と同様の方法で光制御積層体を得た。
【0042】
[比較例3]
フィルムにポリエチレンテレフタレート樹脂(東洋紡績株式会社製E5100、厚さ12μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして光制御積層体を得た。
【0043】
【表1】

【0044】
[結果]
表1に示したように、基体とフィルムがいずれもポリスチレン(PS)からなり、押出ラミネートにより製造された実施例および比較例では反りが発生せず、クロスカット評価においても剥離は発生しなかった。これに対して、基体をポリスチレン、フィルムをポリエチレンテレフタレート(PET)とした比較例3では、反りが発生した。
また、積層体の全光線透過率が20%以上かつ50%以下であり、印刷フィルムの反射率が40%以上かつ70%以下である実施例3〜5では光ムラが発生せず、十分な輝度が得られた。これに対し、積層体の全光線透過率が上記範囲内であり、印刷フィルムの反射率が37%以上かつ72%以下である実施例1、2では拡散シート1枚を使用した場合に軽微な光ムラが発生したものの、実用的には問題ない程度であり、十分な輝度が得られた。これらに対し、積層体の全光線透過率と印刷フィルムの反射率とが上記範囲外である比較例1,2では、光ムラが発生した。特に、実施例1〜5の輝度が2200〜2600cd/m得られるのに対し、比較例1では1800cd/mしか得られなかった。輝度比で10%以上も光学特性が劣る基体は、バックライト用として望ましいとは言い難い。
【0045】
<試験2>
第2実施形態で説明した光制御積層体5について、全光線透過率による輝度分布の変化を確認する試験を行った。
試験2では、図3に示すように、光制御積層体5の基体2直下に4本の冷陰極管(CCFL)7を平行に均等間隔に配置した照明装置8を用いた。照明装置8は、面状光源として光ムラが無く、面内端部が相対的に低輝度となる代わりに面内中央部が相対的に高輝度となることが求められる直下型バックライトユニットである。
【0046】
まず、光制御積層体5の製造方法について説明する。フィルム4としてポリスチレンフィルム(旭化成ケミカルズ株式会社製OPS、厚さ25μm、全光線透過率91%)を用い、このフィルム4の一方の面に、金属酸化物系グラビア用インキ(大日精化工業株式会社製NPS701白)で選択遮光部6をグラビア印刷した。
選択遮光部6のパターン形状としては、照明装置8における光ムラを無くすために、各冷陰極管7の直上に相当する部分を選択的に遮光し(透過性を低くし)、隣接する冷陰極管7から最も遠い部分の光透過性が高くなるよう、また、光透過性の境目が目立たなくなるよう全光線透過率が漸次変化(グラデーション)するように印刷パターンを最適化した。さらに、面内中央部に輝度を偏在化させるために、冷陰極管7に応じたグラデーションは残しつつ、面内中央部が相対的に高透過に、面内端部が相対的に低透過になるよう、印刷パターンを調整した。
【0047】
基体は、ポリスチレン(PSジャパン株式会社製G9504)に光拡散剤(シロキサン系重合粒子)をポリスチレンの質量に対し1.0質量%を混合した樹脂を用いた。この樹脂を210〜250℃に設定した押出機(日立造船株式会社製65mmφ単軸)により押し出し、選択遮光性パターンを印刷したフィルムの印刷面に厚さ1.5mmになるようラミネートし積層した。線圧は、50〜300kgf/cm(490〜2940N/cm)の範囲で調整可能であるが、本実施例では100kgf/cm(980N/cm)にてラミネートした(尚、ここで言う線圧とは、ラミネートするロールに加える力を、ダイスのリップの幅で割った値である)。基体2の積層面と反対側の面にはシボ付け加工を行い、積層体の両表面に帯電防止剤を塗布し、光制御積層体5を得た。
上述した印刷パターンの調整により、以下の実施例および比較例に示す光制御積層体5を製造し、全光線透過率を測定した。また、得られた光制御積層体5を照明装置8に設置し、輝度分布を測定した。
【0048】
全光線透過率および輝度の測定方法は以下の通りである。
(1)全光線透過率
JIS K 7361(ISO 13468)に準拠した。ヘーズメーターとしては日本電色社製NDH5000を用いた。
(2)輝度
照明装置8の冷陰極管7の直上に得られた光制御積層体5を設置し、光制御積層体5表面の輝度を、輝度ムラ計(株式会社トプコンテクノハウス製UA−100)にて測定した。この際、絶対輝度として、事前に、他の輝度計にて測定した中央正面輝度を輝度ムラ計(およびその計算処理装置)に入力しておいた。ここで、中央とは、ユニット表面の縦および横の中央の直交点であり、正面とはユニット表面に対して垂直であることを示す。
輝度ムラ計で得られた面内の各輝度のうち、各冷陰極管7の中央部に相当し、冷陰極管に垂直となる方向への輝度のみを、輝度分布としてグラフ(図4(B)、図5(B)、図6(B))に示した。
【0049】
[実施例6]
光制御積層体の遮光すべき部分(端部)の全光線透過率が20〜50%の領域となるよう、印刷パターンの調整を行い、得られた光制御積層体について、全光線透過率を測定した。その結果を図4(A)に示す。図4(A)において、横軸の「位置」とは、光制御積層体を冷陰極管7の直上に配置した際に、冷陰極管7の中央部で冷陰極管7の長手方向に直交する方向に延びる積層体上の線をLとすると、線Lの一方の端部、すなわち積層体の面内の一方の端部を0%とし、線Lの他方の端部、すなわち積層体の面内の他方の端部を100%とした場合の測定位置である。本実験例では、4本の冷陰極管7のうち1本目の位置は12.5%、2本目の位置は37.5%、3本面の位置は62.5%、4本目の位置は87.5%である。なお、本実験例においては面内中央部を比較的高輝度に設計するため、面内中央部は全光線透過率が50%以上となっている部分があってもよい。そして、この積層体を用いた照明装置8の輝度分布は、図4(B)に示すように、求められる輝度分布であった。
【0050】
[比較例4]
光制御積層体のどの部分も全光線透過率が20〜50%の領域にないように印刷パターンの調整を行い、得られた光制御積層体について、全光線透過率を測定した。その結果を図5(A)に示す。そして、この光制御積層体を用いた照明装置8の輝度分布は、図5(B)に示すように、光の拡散が不足し、光ムラが残り、所望の輝度分布が得られなかった。
【0051】
[比較例5]
光制御積層体の全ての領域において全光線透過率が20〜50%となるように印刷パターンの調整を行い、得られた光制御積層体について、全光線透過率を測定した。その結果を図6(A)に示す。図6(A)に示すように、遮光すべきでない部分も全光線透過率が20〜50%となっている。そして、この積層体を用いた照明装置8の輝度分布は、図6(B)に示すように、中央部が高輝度とならず、所望の輝度分布が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の光制御積層体は、看板や一般照明装置等の背面照明に用いる面状光源装置、特に液晶表示装置のバックライトとして好適に利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1、5…光制御積層体
2 …基体
3、6…選択遮光部
4 …フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射した光を制御する光制御積層体であって、
光源に対向配置される基体と、
前記基体と同系の樹脂からなり、前記基体に積層されるフィルムと、を備え、
前記基体と前記フィルムの間には選択遮光部を有し、
当該光制御積層体の前記選択遮光部における全光線透過率が20%以上かつ50%以下であることを特徴とする光制御積層体。
【請求項2】
請求項1に記載の光制御積層体において、
前記選択遮光部が形成された前記フィルムの前記選択遮光部における反射率が37%以上かつ72%以下であることを特徴とする光制御積層体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光制御積層体において、
前記同系の樹脂が、ポリスチレン系樹脂であることを特徴とする光制御積層体。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光制御積層体において、
前記フィルムは二軸延伸ポリスチレンフィルムであることを特徴とする光制御積層体。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光制御積層体において、
前記基体が、光拡散剤を含有していることを特徴とする光制御積層体。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の光制御積層体において、
前記反射率は、前記フィルムの前記選択遮光部が形成された領域内で一定値であることを特徴とする光制御積層体。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光制御積層体において、
前記全光線透過率が50%より高い領域が面内に存在することを特徴とする光制御積層体。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載された光制御積層体の製造方法であって、
前記基体または前記フィルムの少なくともいずれか一方に選択遮光部を印刷する工程と、
次いで、前記選択遮光部が、前記基体と前記フィルムの間に配置されるよう、前記基体と前記フィルムを熱ラミネートにより積層する工程と、
を備えることを特徴とする光制御積層体の製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の光制御積層体と、
前記光制御積層体直下に配置された光源と、
を備えたことを特徴とする照明装置。
【請求項10】
請求項9に記載の照明装置において、
前記光源がLEDであることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−232461(P2012−232461A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101881(P2011−101881)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【出願人】(593122789)ユーテック株式会社 (118)
【Fターム(参考)】