説明

光反射ベスト

【課題】着用者の側方からも極めて視認しやすく、かつ、着用したときに着用者が非常に動作しやすい光反射ベストとする。
【解決手段】本発明の光反射ベスト10は、胴着部12と、胴着部12に接続された袖部14と、胴着部12と袖部14とが重なる第1重なり部16と、胴着部12と袖部14とを第1重なり部16で互いに滑らせる第1滑り手段(滑り部40,40)と、袖部14に接続された着用者11の腕20を囲む腕囲部22と、袖部14と腕囲部22とが重なる第2重なり部24と、袖部14と腕囲部22とを第2重なり部24で互いに滑らせる第2滑り手段(滑り部42,42)と、胴着部12に設けられた第1光反射部26と、袖部14または腕囲部22の少なくとも一方に設けられた第2光反射部28と、を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を反射してその存在を視認させる光反射ベストに関する。
【背景技術】
【0002】
夜間になると、道路で交通整理、工事もしくは清掃等をする者、または、交通事故の処理もしくは交通違反の取り締まり等を行う警察官などは、自己の存在を通行者または運転者などに視認させるために、光を反射させる光反射ベストを着用する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−268406号公報(要約等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の光反射ベストでは、着用者の前方および後方の光反射部は視認しやすいものの、着用者の側方の光反射部は、腰の周囲のみに存在するため視認しにくい。さらに、着用者が腕を下ろした状態では、着用者の腕と着用者の腰の周囲に設けられた光反射部とが重なってしまうため、着用者の側方の光反射部が視認できない場合がある。
【0005】
光反射ベストの着用者の側方からの視認性を向上させるために、光反射部を備える袖を光反射ベストに付加することも考えられる。しかし、単に、光反射ベストに光反射部を備える袖を付加しただけでは、着用者が動作しにくくなってしまう。
【0006】
本発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、着用者の側方からも視認しやすく、かつ、着用したときに着用者が動作しやすい光反射ベストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明の光反射ベストは、胴着部と、胴着部に接続された袖部と、胴着部と袖部とが重なる第1重なり部と、胴着部と袖部とを第1重なり部で互いに滑らせる第1滑り手段と、胴着部に設けられた第1光反射部と、袖部に設けられた第2光反射部と、を有するものである。
【0008】
袖部に設けられた第2光反射部によって、光反射ベストは、着用者の側方からも視認しやすくなる。また、第1滑り手段によって、胴着部と袖部とが重なる第1重なり部で胴着部と袖部とが互いに滑るため、着用者が腕を動かしたときに、袖部が滑らかに動く。この結果、着用者は、腕をスムーズに動かすことができる。
【0009】
他の発明の光反射ベストは、胴着部と、胴着部に接続された袖部と、胴着部と袖部とが重なる第1重なり部と、胴着部と袖部とを第1重なり部で互いに滑らせる第1滑り手段と、袖部に接続された着用者の腕を囲む腕囲部と、袖部と腕囲部とが重なる第2重なり部と、袖部と腕囲部とを第2重なり部で互いに滑らせる第2滑り手段と、胴着部に設けられた第1光反射部と、袖部または腕囲部の少なくとも一方に設けられた第2光反射部と、を有するものである。
【0010】
袖部または腕囲部の少なくとも一方に設けられた第2光反射部によって、光反射ベストは、着用者の側方からも視認しやすくなる。また、第1滑り手段によって、胴着部と袖部とが重なる第1重なり部で胴着部と袖部とが互いに滑るため、着用者が腕を動かしたときに、袖部が滑らかに動く。この結果、着用者は、腕をスムーズに動かすことができる。さらに、第2滑り手段によって、袖部と腕囲部とが重なる第2重なり部で袖部と腕囲部とが互いに滑るため、着用者が腕を動かしたときに、袖部が滑らかに動く。
【0011】
腕囲部は、着用者の腕が通過可能な分離部を有する構成を採用することができる。この構成によって、光反射ベストの着用および脱衣が容易となる。また、分離部に重なり合う部分を設けることによって、着用者の腕の太さ、または、着用季節(冬季は、防寒衣料の上に光反射ベストを着用することがある)に応じた腕囲部のサイズ調整が可能となる。
【0012】
腕囲部は、袖部の先端で袖部と連通しており、腕囲部が袖部の方向に折り返された状態で着用される構成を採用することができる。このように、腕囲部が袖部と連通している構成によって、光反射ベストの製造工程において、腕囲部を袖部に接続する作業、例えば、縫着作業が不要となる。
【0013】
袖部は、胴着部の裏側に接続され、第1滑り手段は、胴着部の裏側および袖部の表側に設けられた滑り部を有する構成を採用することができる。この構成によって、簡易な構成によって、着用者が腕を動かしたときに、袖部が滑らかに動くようにするこができる。
【0014】
袖部は、着用者の腕の上部を覆う円筒の一部形状を有すると共に、着用者の腕に沿った両端に袖支持軸を有する構成を採用することができる。この構成によって、袖部に第2光反射部が設けられている場合には、着用者が腕を動かしても、袖部に設けられた第2光反射部が型崩れを起こすことがほとんどない。また、着用者が腕を動かしたときに、袖部に設けられた第2光反射部が折れ曲がらないので、第2光反射部が胴着部(腕囲部を有する光反射ベストでは、胴着部および腕囲部)の内側に滑らかに入り込むことができる。この結果、第2光反射部が胴着部の内側で滑る構成、または、第2光反射部が胴着部および腕囲部の内側で滑る構成となっている光反射ベストでは、着用者が腕をスムーズに動かすことができる。
【0015】
袖支持軸は、切り込みを入れたゴム片を有する構成を採用することができる。ゴム片の切り込み方向、切り込み深さ、または、切り込み間隔等を調整することによって、第2光反射部の両端が、着用者の腕の内方向には曲がりにくく、着用者の腕の外方向には曲がりやすい構造にすることができる。
【0016】
胴着部は、前方胴着部と後方胴着部とを備え、胴着部の少なくとも一方の脇に設けられ、表側面に第3光反射部を備える傾斜脇覆部を有し、傾斜脇覆部の表側面の露出面積は、変更可能とされ、前方胴着部と後方胴着部との重なり部である第3重なり部の面積が変更されるのに伴って、胴着部のサイズが変更される構成を採用することができる。
【0017】
この構成によって、着用者の体の大きさ、または、着用季節に応じて、簡易に、光反射ベストのサイズを調整することができる。また、光反射部を備える傾斜脇覆部を有するため、光反射ベストの側方からの視認性を向上させることができる。
【0018】
第3光反射部は、複数の光反射片で形成された標識と、標識を覆う透明被膜と、を有する構成を採用することができる。また、第1光反射部または第2光反射部の少なくとも一方は、複数の光反射片で形成された標識と、標識を覆う透明被膜と、を有する構成を採用することができる。
【0019】
この構成によって、第1光反射部、第2光反射部または第3光反射部に照射された光は、光反射片によって各種方向に乱反射されるため、光反射片で形成された標識が認識しやすくなると共に、光反射ベストの視認性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、着用者の側方からも極めて視認しやすく、かつ、着用したときに着用者が非常に動作しやすい光反射ベストが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る光反射ベストについて、図面を参照しながら説明する。
【0022】
まず、図1から図10を参照しながら、本発明の実施の形態に係る光反射ベストの構成について説明する。
【0023】
図1は、光反射ベスト10の正面図である。図2は、光反射ベスト10の背面図である。なお、光反射ベスト10を着用している着用者11は、図1および図2において、一点鎖線で示されている。光反射ベスト10は、図1および図2に示すように、胴着部12と、袖部14と、胴着部12と袖部14とが重なる第1重なり部16と、着用者11の腕20を囲む腕囲部22と、袖部14と腕囲部22とが重なる第2重なり部24と、胴着部12に設けられた第1光反射部26と、袖部14および腕囲部22に設けられた第2光反射部28と、肩章29と、ポケット30と、各種の縁部31と、を有している。
【0024】
光反射ベスト10は、第1重なり部16で胴着部12と袖部14とを互いに滑らせる第1滑り手段として、胴着部12および袖部14に設けられた滑り部40,40を有している(図8参照)。また、光反射ベスト10は、第2重なり部24で袖部14と腕囲部22とを互いに滑らせる第2滑り手段として、袖部14と腕囲部22に設けられた滑り部42,42を有している(図9参照)。
【0025】
胴着部12は、柔軟なメッシュ素材から構成されている。このため、胴着部12の通気性が良く、夏に着用した場合でも、暑さを緩和することができる。また、胴着部12は、図1から図3に示すように、袖がなく、脇の部分が切り欠かれている。このため、着用者11は、胴44または腕20等を動かしやすい。
【0026】
図3は、光反射ベスト10を着用者11の左方向から見たときの側面図である。なお、図3では、構成部品の一部を省略してある。胴着部12は、図1から図3に示すように、両脇付近で前方胴着部46と後方胴着部48とに分かれている。前方胴着部46は、着用者11の胸部および腹部付近で、面ファスナーによって接合および分離自在に構成されている(図1参照)。本実施の形態に係る光反射ベスト10では、前方胴着部46が、面ファスナーによって接合および分離自在に構成されているが、これに代えて、ベルト、ボタンまたはスナップ等によって接合および分離自在に構成されても良い。なお、本明細書中の「前」とは、着用者11の正面側をいい、「後」とは、着用者11の背面側をいう。
【0027】
前方胴着部46および後方胴着部48は、図1または図2に示すように、それぞれの表面に第1光反射部26を備えている。第1光反射部26は、光反射板50と光乱反射部52とを備えている。光反射板50は、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂または表面に金属酸化物を焼付けたガラス等の光反射性を有する材質から作製されている。胴着部12がその前表面および後表面に光反射板50を備えているため、光反射ベスト10は、前方および後方からの再帰反射視認性を有する。
【0028】
光乱反射部52は、複数の光反射片54で形成された標識56と、この標識56を覆う透明被膜とを備えている。第1光反射部26に照射された光は、光反射片54によって各種方向に乱反射されるため、光反射片54で形成された標識56が認識しやすくなる。また、光乱反射部52と光反射板50との相乗効果により光反射ベスト10の視認性を向上させることができる。また、光反射ベスト10が光反射片54を覆う透明被膜を有するため、光反射片54の光反射率をほとんど低下させずに、光反射片54が剥離することを抑えることができる。
【0029】
光反射片54は、着色されたアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂またはABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂等の光反射性を有する着色樹脂から作製されている。なお、光反射片54は、光反射性を有する金属箔から作製されていても良い。透明被膜は、透明なエポキシ樹脂から構成されている。
【0030】
胴着部12の両脇には、傾斜脇覆部68が設けられている。本実施の形態に係る光反射ベスト10では、胴着部12が両脇付近で前方胴着部46と後方胴着部48とに分かれているが、これに代えて、胴着部12の一方の脇のみで前方胴着部46と後方胴着部48とに分かれていても良い。また、本実施の形態に係る光反射ベスト10では、傾斜脇覆部68を胴着部12の両脇に設けたが、これに代えて、胴着部12の一方の脇にのみ傾斜脇覆部68を設けても良い。
【0031】
前方胴着部46の胴囲方向の両端部の裏側には、一方の面ファスナー70が、後方胴着部48の胴囲方向の両端部の表側には、他方の面ファスナー72が、それぞれ設けられている。このため、胴着部12の両脇付近で、前方胴着部46と後方胴着部48とが、自在に接合および分離できる。なお、本明細書中の「裏」とは、着用者11の体に接する側をいい、「表」とは、「裏」と反対側をいう。本実施の形態に係る光反射ベスト10では、前方胴着部46と後方胴着部48とが、面ファスナー70,72によって接合および分離されているが、これに代えて、ベルト、ボタンまたはスナップ等によって接合および分離されても良い。
【0032】
前方胴着部46と後方胴着部48との重なり部である第3重なり部74の面積が大きくなるように、前方胴着部46と後方胴着部48とが接合されれば、胴着部12のサイズは小さくなり、第3重なり部74の面積が小さくなるように、前方胴着部46と後方胴着部48とが接合されれば、胴着部12のサイズは大きくなる。すなわち、第3重なり部74の面積が変更されるのに伴って、胴着部12のサイズが変更される。このため、着用者11の体の大きさ、または、着用季節に応じて、簡易に、光反射ベスト10のサイズを調整することができる。
【0033】
傾斜脇覆部68は、柔軟なメッシュ素材から構成されている。また、傾斜脇覆部68は、図3に示すように、表側面に第3光反射部75を構成する光反射板76と、光乱反射部79とを備えている。光反射板76は、光反射板50と同様に、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂または表面に金属酸化物を焼付けたガラス等の光反射性を有する材質から作製されている。光乱反射部79は、光反射片と、この光反射片を覆う透明被膜とから構成されている。傾斜脇覆部68が表側面に光反射板76および光乱反射部79を備えているため、光反射ベスト10の側方からの視認性を向上させることができる。
【0034】
また、傾斜脇覆部68は、着用者11の上から下に向かって、胴囲が絞られるように形成されている。このため、光反射ベスト10を着用したときに、傾斜脇覆部68が着用者11の体形(胴44のボディライン)にフィットするようになる。したがって、着用者11が動作しやすい。
【0035】
図4は、光反射ベスト10の着用者11の胸部および腹部を開放して、光反射ベスト10を平面状にした状態で、後方胴着部48、傾斜脇覆部68および前方胴着部46を裏側から見た図である。なお、図4では、構成部品の一部およびメッシュ模様の全部を省略してある。傾斜脇覆部68は、図4に示すように、後方胴着部48の裏側に設けられたベルト通し77を通過している。また、傾斜脇覆部68は、一端(図4における右端)が前方胴着部46に縫着されている。傾斜脇覆部68の他端(図4における左端)には、傾斜脇覆部68よりも幅が小さいベルト78が接続されている。このベルト78は、柔らかい素材から構成されている。ベルト78は、後方胴着部48の裏側に設けられたベルト通し80を通過した後、その方向が変えられ、ベルト締め具82によってその位置を固定されている。
【0036】
つまり、傾斜脇覆部68は、前方胴着部46およびベルト締め具82によって、胴着部12に固定されることとなる。また、ベルト78とベルト締め具82を操作することによって、ベルト締め具82に固定されるベルト78の位置を調整できる。このため、傾斜脇覆部68の表側面の露出面積が変更可能で、光反射ベスト10のサイズ調整が容易である。胴着部12に設けられたもう一方の傾斜脇覆部(不図示)も、傾斜脇覆部68と同様の構成によって、胴着部12に固定されている。
【0037】
図5は、ベルト締め具82およびベルト締め具82で固定されたベルト78の、ベルト78の長手方向(図4のX−X線)に沿って切断したときの断面図である。図4および図5に示すように、2つの傾斜脇覆部68,68に接続されているそれぞれのベルト78,78は、ベルト締め具82を通過して、ほぼ均等な長さでベルト締め具82から突出している。このように、ベルト締め具82によってベルト78,78の固定位置を調整しているため、ベルト締め具82から突出しているベルト78,78の長さを揃えることができる。ベルト78,78の長さを揃えることによって、傾斜脇覆部68,68の露出面積を簡易に両脇で均等にすることができる。また、ベルト78,78の固定部品が、1つのベルト締め具82のみで済む。
【0038】
さらに、ベルト締め具82自体がベルト78,78で固定されるため、ベルト締め具82を胴着部12等に固定する必要がない。なお、本実施の形態に係る光反射ベスト10では、ベルト78,78をベルト締め具82に通過させてその固定位置を調整しているが、これに代えて、傾斜脇覆部68自体を、傾斜脇覆部68の露出面積が変更可能となるように、胴着部12に接続しても良い。傾斜脇覆部68を、その露出面積が変更可能となるように、胴着部12に接続する方法として、面ファスナーを用いる方法、または、胴着部12に複数のボタンを設け、傾斜脇覆部68に設けられたボタン孔に嵌め込む方法等が挙げられる。
【0039】
図6は、光反射ベスト10の袖部14付近の外観図である。袖部14は、柔軟なメッシュ素材から構成されている。ただし、袖部14の表側面は、光反射板83に覆われているため、表側からは、メッシュ形状は見えない。また、袖部14は、図6に示すように、着用者11の腕20の上部を覆う円筒の一部形状を有している。また、袖部14の着用者11の腕20に沿った両端には、袖支持軸84が設けられている。
【0040】
このため、着用者11が腕20を動かす際に、袖部14は、胴着部12または腕囲部22の内側に滑らかに入り込むことができる。すなわち、袖部14に袖支持軸84を設けることによって、袖部14が胴着部12または腕囲部22の内側に入り込みにくくなるような袖部14自体の変形、例えば、袖部14が着用者11の腕20の外方向に突出するように折れ曲がる変形を抑えることができる。この結果、着用者11は腕20をスムーズに動かすことができる。
【0041】
袖部14の表側には、第2光反射部28を構成している光反射板83が設けられている。光反射板83も光反射板50と同様に、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂または表面に金属酸化物を焼付けたガラス等の光反射性を有する材質から作製されている。なお、光反射板50、光反射板76および光反射板83の色を変えて、その色使いによって光反射ベスト10の側方からの視認性を向上させても良い。
【0042】
袖支持軸84は、この光反射板83と袖部14との間、すなわち、光反射板83の裏側、かつ、袖部14の表側の位置に、固定されて設けられている。より具体的には、光反射板83が、着用者11の腕20の方向に沿って、袖部14に線状に縫着されており、この縫着線85と袖部14の外縁86との間に、袖支持軸84が挿入されている。
【0043】
図7は、袖支持軸84を裏側(袖部14に装着されたときの袖部14の裏側)から見た外観図である。袖支持軸84は、図7に示すように、プラスチック製の本体部88と、ゴム片90,90とを備えている。本体部88は、細長い板形状を有している。ゴム片90,90は、接着剤が塗布された本体部88の両端に嵌め込まれ、本体部88に固定されている。また、ゴム片90,90は、断面略凹形状を有していると共に、袖支持軸84の端部に近づくにつれて、その厚みが緩やかに減少している。また、胴着部12に近い方に配置されるゴム片90は、着用者11の体にフィットするように構成された光反射板83の曲面に合わせて、その端部が斜めに形成されている。
【0044】
ゴム片90,90の突出している縁部には、袖支持軸84の長手と垂直方向に、複数の切り込み部92が形成されている。このため、袖支持軸84は、ゴム片90,90の部分で、着用者11の腕20の外方向に曲がりやすく、腕20の内方向に曲がりにくくなっている。したがって、着用者11が腕20を動かして、袖部14が胴着部12および腕囲部22に最大限入り込んだ状態となっても、着用者11は、腕20を上方向に容易に曲げることができる。
【0045】
また、図6に示すように、袖部14は、胴着部12と袖部14とが重なる部分(第1重なり部16)が形成されるように、胴着部12の裏側に縫着されて接続されている。本実施の形態に係る光反射ベスト10では、袖部14が胴着部12の裏側に縫着されているが、これに代えて、袖部14が胴着部12の裏側にスナップ、ボタンまたは面ファスナー等によって接続されていても良い。特に、袖部14が胴着部12の裏側にスナップまたはボタン等の1箇所で接続されている場合、この接続箇所を支点として、袖部14が着用者11の肩に密着し、腕20の動きに連動することができる。
【0046】
図8は、胴着部12を裏側から、袖部14を表側から見たときの、胴着部12と袖部14との接続部付近の外観図である。すなわち、図8は、胴着部12を上方向にまくった状態での、第1重なり部16付近の図である。胴着部12の裏側および袖部14の表側には、図8に示すように、滑り部40,40が設けられている。
【0047】
胴着部12に設けられた滑り部40は、その表面が、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステルまたはポリテロラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂等から作製されており、滑りやすくなっている。袖部14に設けられた滑り部40は、光反射板83と兼用されている。上述したように、光反射板83は、その表面が滑りやすい材質から作製されている。また、滑り部40,40は、胴着部12を下げたときに、互いに重なり合う位置に設けられている。
【0048】
両滑り部40,40の間の袖部14のメッシュ素材の部分は、両側が縫い縮められ、曲面形状とされている。このため、このメッシュ素材の部分は、着用者11の肩にフィットする。また、このメッシュ素材の部分は、胴着部12に対して袖部14を各種方向に動かすことができる可動部93として作用している。すなわち、この可動部93自体が、伸縮、ねじれ、または、歪みを起こすことによって、胴着部12が固定されたままであっても、胴着部12に接続されている袖部14が各種方向に動く。
【0049】
このように、着用者11が光反射ベスト10を着用した状態で胴着部12および袖部14の両滑り部40,40が互いに重なり合うので、また、可動部93が変形しやすい構成をしているので、着用者11が腕20を動かしたときに、袖部14(光反射板83)が滑らかに動く。
【0050】
図9は、光反射ベスト10を平面状に展開した状態で、袖部14を表側から、腕囲部22を裏側から見たときの、袖部14と腕囲部22との連通部付近の外観図である。腕囲部22は、図9に示すように、袖部14の先端で一体に連通している。このため、光反射ベスト10の製造工程において、腕囲部22を袖部14に接続する作業、例えば、縫着作業が不要となる。また、腕囲部22は、着用者の腕が通過可能な分離部を有している。腕囲部22の分離部には、面ファスナー94,94が設けられている。このように、面ファスナー94,94によって、腕囲部22が接合および分離自在に構成されているため、着用者11の腕20の太さ、または、着用季節に応じて、腕囲部22のサイズ調整が容易に可能となる。
【0051】
光反射ベスト10は、腕囲部22が袖部14の方向(図9の一点鎖線Aを谷折り)に折り返された状態で着用される。腕囲部22が袖部14の方向に折り返されたときに、腕囲部22と袖部14とが重なる第2重なり部24には、袖部14と腕囲部22とを互いに滑らせる第2滑り手段である滑り部42,42が設けられている。すなわち、滑り部42,42は、それぞれ袖部14の表側および腕囲部22の裏側に設けられている。なお、袖部14に設けられた滑り部42は、袖部14に設けられた滑り部40と同様に、光反射板83と兼用されている。また、腕囲部22に設けられた滑り部42の表面は、胴着部12に設けられた滑り部40の表面と同じ素材で構成されている。
【0052】
両滑り部42,42の間の袖部14のメッシュ素材の部分は、腕囲部22に対して袖部14を各種方向に動かすことができる可動部95として作用している。すなわち、この可動部95自体が、伸縮、ねじれ、または、歪みを起こすことによって、腕囲部22が固定されたままであっても、腕囲部22と連通している袖部14が各種方向に動く。
【0053】
このように、着用者11が光反射ベスト10を着用した状態で袖部14および腕囲部22の両滑り部42,42が互いに重なり合うので、また、可動部95が変形しやすい構成をしているので、着用者11が腕20を動かしたときに、袖部14(光反射板83)が滑らかに動く。
【0054】
また、腕囲部22の表側面には、第2光反射部28が設けられている(図1参照)。腕囲部22の表側面の第2光反射部28は、光反射板と光反射片とを備えている(不図示)。このため、より一層、光反射ベスト10の側方からの視認性を向上させることができる。なお、腕囲部22の第2光反射部28の光反射板に設けられている光反射片によって、標識が形成されていても良い。また、腕囲部22の第2光反射部28の光反射板に設けられている光反射片に、透明被膜を設けても良い。腕囲部22の第2光反射部28が、複数の光反射片で形成された標識と、この標識を覆う透明被膜とを有する場合、第1光反射部26の光反射片54で形成された標識56と、標識56を覆う透明被膜を設けないこともできる。
【0055】
次に、光乱反射部52の作製方法について説明する。
【0056】
まず、光反射板50の表面に、光反射片54で表示したい標識56(例えば、「POLICE」の文字)の形状に接着剤を塗布する。次に、光反射板50の接着剤を塗布した部分およびその周辺に、複数の光反射片54をふりかけて接着させる。なお、光反射片54の色としては、金、銀、青、緑、赤または黄等が挙げられる。また、標識56の種類は、文字に限定されない。標識56としては、文字以外に、例えば、数字、記号、図形、絵画または写真等が挙げられる。
【0057】
次に、光反射板50にふりかけた光反射片54のうち、光反射板50に接着していない光反射片54を、羽毛等を使って払い落とす。次に、光反射板50に形成された光反射片54の標識56の表面に、透明被膜を形成する。具体的には、硬化後に透明となるエポキシ樹脂の液状原料を、光反射片54の標識56の表面に塗布して、乾燥・硬化させる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形実施可能である。図10は、本発明の他の実施の形態に係る光反射ベスト100を展開して、着用者11に着用されるときの上方から見た要部外観図である。なお、矢示Bが前方、矢示C方向が後方である。したがって、図10では、着用者11の左肩に載る部分の胴着部12を表側から、着用者11の左腕を覆う袖部14を裏側から、着用者11の左腕を囲む腕囲部22を表側からそれぞれ見たときの状態を示している。
【0059】
本実施の形態に係る光反射ベスト10では、袖部14は胴着部12に縫着されているが、これに代えて、図10に示すように、袖部14と胴着部12を連通させ、袖部14を、胴着部12の下を通過させて、矢示D方向に折り返して着用するように構成しても良い。この構成によって、光反射ベスト100の製造工程において、袖部14を胴着部12に接続する作業、例えば、縫着作業が不要となる。また、着用者11が激しい動作を行っても、袖部14が胴着部12から外れるおそれがほとんどなくなる。
【0060】
また、本実施の形態に係る光反射ベスト10では、袖部14に設けられた滑り部40および滑り部42が光反射板83と兼用されているが、これに代えて、袖部14に設けられた滑り部40または滑り部42を、光反射板83とは別部材で作製しても良い。
【0061】
また、本実施の形態に係る光反射ベスト10は、腕囲部22と、第2重なり部24と、第2滑り手段(滑り部42,42)と、を有しているが、これに代えて、光反射ベストは、腕囲部22、第2重なり部24および第2滑り手段(滑り部42,42)を有していなくても良い。裏側にベルト通しが設けられた腕章を着用者11の腕20に巻き、この腕章を安全ピン等で着衣に(例えば、2箇所で)固定し、袖部14をこのベルト通しに通し、かつ、腕章と袖部14とを滑りやすくすれば、腕囲部22、第2重なり部24および第2滑り手段(滑り部42)を有していない光反射ベストであっても、袖部14が着用者11の腕20と連動できる。
【0062】
また、腕囲部22、第2重なり部24および第2滑り手段(滑り部42)を有していない光反射ベストでは、袖部14の面積を大きくし、袖部14に設けられたベルト等に着衣に固定するなどして、袖部14と着用者11の腕20との連動性を向上させても良い。これらのようにして、着用者11が腕20を動かしても、袖部14が腕20と連動できるようにすれば、側方からも視認しやすく、かつ、着用者が動作しやすい光反射ベストとなる。
【0063】
また、他の発明として、胴着部と、この胴着部に設けられた光反射板と、この光反射板に設けられた複数の光反射片で形成された標識と、この標識を覆う透明被膜とを備えた光乱反射部と、を有する光反射ベスト等の光反射着衣が挙げられる。胴着部、光反射板、光反射片および透明被膜等として、本実施の形態に係る光反射ベスト10と同じ物が使用できる。この発明では、光反射板と、光乱反射部との相乗効果によって、標識の認識度および視認性の向上が図れる。
【0064】
また、他の発明として、脇部が切り欠かれた胴着部と、この切り欠かれた脇部に設けられ、着用者の上から下に向かって、胴囲が絞られるように形成されている傾斜脇覆部と、傾斜脇覆部の表面に設けられた光反射部と、を有する光反射ベスト等の光反射着衣が挙げられる。胴着部、傾斜脇覆部および光反射部等として、本実施の形態に係る光反射ベスト10と同じ物が使用できる。この発明では、傾斜脇覆部が着用者の胴にフィットすると共に、着用者の側方の視認性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、再帰光反射を行う着衣に利用することが可能である。また、本発明は、夜間の道路工事、線路工事、交通整理または警察の交通違反の取り締まり等の夜間作業に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態に係る光反射ベストの正面図である。
【図2】図1の光反射ベストの背面図である
【図3】図1の光反射ベストの左側面図である。
【図4】図1の光反射ベストの後方胴着部、傾斜脇覆部および前方胴着部を裏側から見た外観図である。
【図5】図1の光反射ベストのベルト締め具およびベルト付近を、図4のX−X線で切断したときの断面図である。
【図6】図1の光反射ベストの左の袖部付近の外観図である。
【図7】図1の光反射ベストの袖支持軸を裏側から見た外観図である。
【図8】図1の光反射ベストの胴着部を裏側から、袖部を表側から見たときの、胴着部と袖部との接続部付近の外観図である。
【図9】図1の光反射ベストを平面状に展開した状態で、袖部を表側から、腕囲部を裏側から見たときの、袖部と腕囲部との連通部付近の外観図である。
【図10】本発明の他の実施の形態に係る光反射ベストを展開して、着用者に着用されるときの上方から見た要部外観図である。
【符号の説明】
【0067】
10 光反射ベスト
11 着用者
12 胴着部
14 袖部
16 第1重なり部
20 腕
22 腕囲部
24 第2重なり部
26 第1光反射部
28 第2光反射部
40、42 滑り部
44 胴
46 前方胴着部
48 後方胴着部
50 光反射板
52 光乱反射部
54 光反射片
56 標識
68 傾斜脇覆部
74 第3重なり部
75 第3光反射部
76 光反射板
83 光反射板
84 袖支持軸
93、95 可動部
100 光反射ベスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴着部と、
上記胴着部に接続された袖部と、
上記胴着部と上記袖部とが重なる第1重なり部と、
上記胴着部と上記袖部とを上記第1重なり部で互いに滑らせる第1滑り手段と、
上記胴着部に設けられた第1光反射部と、
上記袖部に設けられた第2光反射部と、
を有することを特徴とする光反射ベスト。
【請求項2】
胴着部と、
上記胴着部に接続された袖部と、
上記胴着部と上記袖部とが重なる第1重なり部と、
上記胴着部と上記袖部とを上記第1重なり部で互いに滑らせる第1滑り手段と、
上記袖部に接続された着用者の腕を囲む腕囲部と、
上記袖部と上記腕囲部とが重なる第2重なり部と、
上記袖部と上記腕囲部とを上記第2重なり部で互いに滑らせる第2滑り手段と、
上記胴着部に設けられた第1光反射部と、
上記袖部または上記腕囲部の少なくとも一方に設けられた第2光反射部と、
を有することを特徴とする光反射ベスト。
【請求項3】
前記腕囲部は、前記着用者の腕が通過可能な分離部を有することを特徴とする請求項2記載の光反射ベスト。
【請求項4】
前記腕囲部は、前記袖部の先端で前記袖部と連通しており、
前記腕囲部が前記袖部の方向に折り返された状態で着用されることを特徴とする請求項2または3項記載の光反射ベスト。
【請求項5】
前記袖部は、前記胴着部の裏側に接続され、
前記第1滑り手段は、前記胴着部の裏側および前記袖部の表側に設けられた滑り部を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の光反射ベスト。
【請求項6】
前記袖部は、着用者の腕の上部を覆う円筒の一部形状を有すると共に、上記着用者の腕に沿った両端に袖支持軸を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の光反射ベスト。
【請求項7】
前記袖支持軸は、切り込みを入れたゴム片を有することを特徴とする請求項6記載の光反射ベスト。
【請求項8】
前記胴着部は、前方胴着部と後方胴着部とを備え、
前記胴着部の少なくとも一方の脇に設けられ、表側面に第3光反射部を備える傾斜脇覆部を有し、
上記傾斜脇覆部の上記表側面の露出面積は、変更可能とされ、
上記前方胴着部と上記後方胴着部との重なり部である第3重なり部の面積が変更されるのに伴って、前記胴着部のサイズが変更されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の光反射ベスト。
【請求項9】
前記第3光反射部は、複数の光反射片で形成された標識と、上記標識を覆う透明被膜と、を有することを特徴とする請求項8記載の光反射ベスト。
【請求項10】
前記第1光反射部または前記第2光反射部の少なくとも一方は、複数の光反射片で形成された標識と、上記標識を覆う透明被膜と、を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の光反射ベスト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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