説明

光受信デバイス

【課題】 高速の光信号を受信することができるフォトダイオードと、その平均の出力あるいは高速信号の存否を検出できる感度の高い応答速度の低いフォトダイオードを組み合わせた複合フォトダイオードデバイスを与えること。
【解決手段】 高速の光信号を受信するために、受光面の狭い寸法の小さい小フォトダイオードと、信号の平均の強度を検出するために広い受光部の大きい寸法を有する大フォトダイオードを持ち、それぞれのカソード、アノード電極は独立で絶縁されており、大フォトダイオードにも小フォトダイオードにも光信号が当たるようにし、それぞれで受光できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えば受光パワーが間欠的に変化するバースト信号と、信号の平均のパワーを検出したいというような場合がある。一方の信号を通信そのものに使い、他方の信号を平均し受光パワーの平均の変動を求め、後段の増幅器のゲイン調整に利用するというようなことがある。そのように同じ信号を二つの受光素子で受光し、異なる処理をする場合に、一つの信号を二つの受光モジュールで受けるようにすると、光を分配するための光分波器、光導波路などが必要になる。光を効率よく受光素子に当てるためのレンズも二つ必要になる。パッケージも二つ要る。受光素子とレンズの間の調芯も二つのモジュールについて必要である。構造が複雑でデバイスのサイズが肥大化し製造コストが上がる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図1は通常のフォトダイオードの構造を示す。n型基板1の上にn型受光層2を設け、n型受光層の中間部にp型不純物を拡散してp領域3を作り、受光層2にpn接合4を形成し、p領域3にはp電極7を、n型基板1にはn電極8を設けている。受光部はpn接合4の存在する部分である。裏面が閉ざされているので上面入射型である。上面入射型で光信号はレンズで絞ってフォトダイオードの受光部に上方から入力する。pn接合4の存在する部分に入った光は空乏層6で電子正孔対を発生する。アノード(p電極7)とカソード(n電極8)の間には逆バイアスが掛かっている。逆バイアスのため電子eはn型基板1の方へ引き寄せられる。正孔hはpn接合4からp領域3へと引き寄せられる。正孔hがp領域3に入ると光電流が流れる。上面から光が入るのでp電極はリング状か小さいドット状の電極とする。n電極は広い底面電極となっている。
【0003】
レンズで集光するのであるが、一部の光が受光部から逸れてチップの外周部(n型)に入る場合もある。外周部でも電子正孔対ができる。そのうち少数キャリヤである正孔hが問題である。外周部にはバイアスが掛かっていないので正孔の動きが鈍い。濃度差によって正孔hがゆっくりと移動し、中央のpn接合4を越えてp領域3に入る。そのときに光電流が流れる。初めの光信号が入ったときからかなり遅れてその光電流が流れる。そのため受信パルス信号が裾を引く事になる。それは受信信号を歪ませるので好ましくない。
【0004】
そこで特許文献1は、周辺部にもリング状のp領域を形成して、周辺部のpn接合に正孔を引き寄せるような構造を持つフォトダイオードを提案している。図2の断面図において、周辺部のp領域13を形成するのである。周辺pn接合14ができる。周辺部のp領域を拡散遮蔽層と呼んでいる。特許文献1は周辺部p領域13にp電極17を設けており、底部のn電極8とp電極17の間に別の電源を用いて逆バイアスしている。
【0005】
これは信号検出でなく、周辺光によるノイズ除去のためのp電極17であり、周辺光ノイズ除去用電源である。周辺光ノイズ除去用電源によって周辺pn接合14に電界が発生する。周辺に入った光によってできた電子正孔対のうち、正孔hは逆バイアスによる電界によってpn接合14の方へ引き寄せられる。正孔hはp領域13に入って消滅する。それによってp電極17、底部n電極8の間に電流が流れる。この光電流は中央のp電極7を通らない。よって周辺光は光信号(中央p電極7を通る)から分離される。光信号の歪み(裾引き)を防ぐことができる。
【0006】
【特許文献1】特開2000−12889号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えばパワーが間欠的に変化するバースト信号などの検出に使用するフォトダイオードの場合、受光パワーが予め分からないとか受光パワーが変動するとかいうことがある。受光パワーの平均値を知ってゲイン(増幅率)を調整したいということもある。そのためには同じ信号に対して二つのフォトダイオードを設ける必要がある。高速の光信号J(t)を歪みなくそのまま検出する高速信号用のフォトダイオードと、平均値<J(t)>を検出する平均値用の低速フォトダイオードを設けるということになる。
【0008】
すると、フォトダイオードのパッケージも二つ必要である。二つのフォトダイオードへ同一の信号光を導入するには、光を二つに分岐する光分波器や分岐光導波路が必要となる。また光ファイバなどによって二つの光を独立のフォトダイオードへ導く必要もある。一つのフォトダイオードだけを用いる場合の約2倍の構成要素が必要になり構造が複雑になってしまう。
【0009】
高速用フォトダイオードと低速用フォトダイオードを持ちながら光分波器、分岐導波路などを不要とし、ファイバで信号光を引き回す必要のない簡単な構造であって、異なる二つの用途、異なる二つの速度の信号の検出に用いることができるデバイスを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
それぞれが独立し絶縁されたカソード、アノード電極を持ち、受光部が狭く寸法の小さい小フォトダイオードと、受光部が広く寸法の大きいフォトダイオードを、受光部が同じ方向を向くように近傍に設け、レンズによって光を小フォトダイオードの近くに集光し、大フォトダイオードにも一部が入るようにしている。大フォトダイオードの上方に小フォトダイオードを設けることができる(上下型)。図3は上下に小フォトダイオードPD1と大フォトダイオードPD2を配置した上下型の例を示す断面図である。
【0011】
図5は同じものの斜視図である。小フォトダイオードPD1は狭い受光部21を持つ。レンズ9によって光信号を絞るが、集光点は小フォトダイオードPD1の受光部21の近くに合わせてある。大フォトダイオードPD2は寸法が大きく受光部22も広い。大フォトダイオードPD2と小フォトダイオードPD1の間には空隙32がある。これは絶縁のためである。レンズ9によって光信号は小フォトダイオードに入るよう導かれるが一部の光は大フォトダイオードPD2に入る。
【0012】
小フォトダイオードは狭い受光部を持ち容量抵抗積である時定数CRも小さいので、高速信号J(t)を歪みなく受信する。大フォトダイオードは応答速度は遅いが広い受光部を持ち、レンズで絞られた光の一部の漏れ光を感度良く受光できる。後段に積分回路などを設けて信号の平均値<J(t)>を検出できる。それによって小フォトダイオードの後段のゲイン調整をすることができる。上下型の場合、小チップを大チップの上に載せるので面積を節減できる。いずれも角型のチップを用いることができるので製造容易である。
【0013】
円環状の大フォトダイオードの内部穴に、円形の小フォトダイオードを同心円状に設けるものも可能である。図4は同心型を示す断面図である。図6は同心型のものの斜視図である。円環状大フォトダイオードPD4の穴に、円形状の小フォトダイオードPD3を設けたものである。小フォトダイオードPD3は狭い受光部23を持つ。大フォトダイオードPD4は円環状の広い受光部24を備える。大小フォトダイオードPD3、PD4の間には間隙34がある。レンズ9によって信号光が主に小フォトダイオードPD3の受光部23に入るようにする。一部は漏れて大フォトダイオードPD4の受光部24に入る。同心円状の場合は円筒対称性があるので、レンズによって絞られた光の偏奇を検出することもできる。
【0014】
矩形の3偶を持つ大フォトダイオードと、矩形の一偶を小フォトダイオードとする(同一平面偏奇型)のも可能である。図7はそのような偏奇型のフォトダイオードの斜視図を示す。L字型の大フォトダイオードPD6は、L字型の広い受光部26を持っている。一隅に狭い受光部25を持つ小フォトダイオードPD5が設けられる。間隙36によって小フォトダイオードPD5は大フォトダイオードPD6から隔てられる。図8は信号光をレンズ9によって絞った様子を示す。大部分の信号光は小フォトダイオードに入る。一部の信号光は大フォトダイオードPD6に入るようになっている。同一平面偏奇型の場合、同一の絶縁基板上に幾つかの角型のチップを並べるようにできるから製造容易であるという利点がある。
【0015】
いずれも同一方向に大小のフォトダイオードを並べたもので同一の信号を受光するものである。大小のフォトダイオードを絶縁基板によって固定する。それによって相互の位置関係が決定される。
【0016】
レンズから出た光を空間伝搬させることによって、小フォトダイオードと大フォトダイオードで分配する。それはどうして可能か?ということをここでは問題にする。
【0017】
レンズが収差のない高品質のものであると、小フォトダイオード受光面に集光点を合わせると漏れがなく大フォトダイオードへ光が入らない。光ファイバのコア径を例えば10μmとし、小フォトダイオードの受光部径を50μmとすると、レンズの倍率を1/5として、ファイバ端の像を5倍に拡大して小フォトダイオードの受光面に投影すると、全ての光は小フォトダイオードに吸収されてしまう。
【0018】
それでは困るので、集光点を小フォトダイオードの受光部より前後にずらす。前後にずらすと、一部の光が漏れて大フォトダイオードに入射する。集光点が前後にずれると小フォトダイオードの受光面で光は収束しないが、それでも光量検出は正確に行なうことができる。
【0019】
或いは集光点を小フォトダイオードの受光部の前後にずらすと共に左右にもずらせることもできる。多少受光部からずれていても小フォトダイオードは光信号を検出できる。
【0020】
レンズが球レンズのように安価で収差の大きいものであると、光線の角度によって集光点が違うので一層本発明には適するようになる。近軸光線はより遠くで集光し遠軸光線はより近くで収束する。ビームの直径はどこでも0とならない。最小錯乱円より小さくならない。最小錯乱円より遠く或いは近くに小フォトダイオードの受光部を設定すると、一部の光が大フォトダイオードに入るようにできる。
【0021】
前述の特許文献1も、周辺p電極とn電極に逆バイアスを与える電源とp電極、n電極を繋ぐ経路の光電流を測定すれば平均光量が分かる筈であるが、特許文献1の場合は、周辺の僅かな空間にp領域を作りp電極を設けるので、受光部面積を大きくできない。周辺部のp領域に入る光量は極微弱である。従って平均の光電流<J(t)>を正確に求めることができない。本発明の場合は、大フォトダイオードは別のフォトダイオードなので、受光部面積を大きくできる。漏れ光を広い範囲で拾うので、平均値をより精度良く検出できる。
【0022】
また大フォトダイオードの電極は、小フォトダイオードの電極と絶縁され独立であるから、平均値電流を使って小フォトダイオードの増幅率を加減する場合に、回路構成の自由度が高くなる。
【発明の効果】
【0023】
寸法、受光部の面積の異なる大小のフォトダイオードを受光部を同じ方向に向け近接して設け、レンズで集光した光の一部が大フォトダイオードと小フォトダイオードに入るようにしているので、小フォトダイオードによって高速の光信号そのものを検出する事ができるし、大フォトダイオードによって光信号の存在或いは、その平均パワーを検出することができる。
【0024】
光信号の存在非存在は、大フォトダイオードに光電流が流れているかいないかによって検出できる。平均パワー<J(t)>を得るには大フォトダイオードに続いて積分作用を持つ回路を用いて光信号の平均を求めればよい。平均パワー<J(t)>が小さい場合は、小フォトダイオードの後段の増幅器のゲインを増強する。平均パワー<J(t)>が大きい場合は、小フォトダイオードの後段の増幅器のゲインを下げるようにする。
【0025】
同じパッケージの中に大小フォトダイオードを収容することができるから、二つ分のフォトダイオードモジュールよりも寸法、容積が小さくなる。レンズで集光した漏れ分を大フォトダイオードで受けるようにするから、光分波器、分岐光導波路などは不要である。分岐した光をそれぞれのフォトダイオードへ与えるための光ファイバを引き回す必要もない。
【実施例1】
【0026】
[実施例1(上下2型;図9〜図13)]
n型基板の上に、バッファ層、受光層、窓層などをエピタキシャル成長させる。これがエピタキシャルウエハ−である。エピタキシャルウエハ−の上に、所望のチップの寸法や形状に合わせてp領域を形成する。p領域の上にp電極を、n型基板の底にn電極を形成する。必要であれば、パッシベーション膜や反射防止膜等も形成する。エピタキシャルウエハ−に電極や反射防止膜などを形成したウエハ−をプロセスウエハ−と仮に呼ぶ。一枚のエピタキシャルウエハ−の上に全て同じデバイスの単位を作るのではなくて、複数種類の異なるチップ単位を作製する。
【0027】
図9のように、そのような複数種類の異なるチップ単位を含むプロセスウエハ−から、異なる寸法のフォトダイオード用結晶を切り出す。これを小フォトダイオードチップPD1、大フォトダイオードチップPD2と呼ぶ。簡単に小チップPD1、大チップPD2とも呼ぶ。小チップPD1は、高速の光通信信号を受信できるように小型でありpn接合も狭く受光部径も狭い。大チップPD2は、同じ信号を受けるがその平均のパワーを感受する。大チップPD2は光通信信号が存在するか非存在であるかということを監視できる。或いは平均のパワーがどれだけかというようなことを調べるために利用する。チップには、AuZn、AuGeNi等の電極金属が形成されている。
【0028】
受光部は小チップPD1については中央部に存在する。しかし大チップの場合は必ずしも受光部は中央部になくてもよく、光を受け易いように、一方に片寄って受光部を形成するというようなこともできる。
【0029】
図9は、寸法の異なるフォトダイオード用のチップPD1、PD2を切り出した状態を示す。PD2、PD1はn型基板、受光層、p領域、n電極、p電極等を含むものである。n電極、p電極に付けるための金の電極を作る。
【0030】
これは図10のように、二つのチップのn電極、p電極につける金電極である。底面電極と上面電極というように区別する。小チップPD1のための底面電極81はPD1の底面のn電極に接合するものであり矩形状である。小チップPD1のための上面電極71は、上面のp領域に接合するものでコの字型である。大チップPD2のための底面電極82は、チップPD2のサイズに合わせた矩形(または正方形)である。大チップPD2のための上面電極72はチップの外辺に沿ったコの字型をしている。いずれも金の薄片で作る。
【0031】
図11は金の電極82、81、72を、大チップPD2に組み付ける様子を示す。金(Au)錫(Sn)の共晶半田によって、PD2の底面(n電極)に底面電極82を貼り合わせる。小さくて薄く、電極の熱容量は小さい。半田ごてで付けるのは難しい。電極にAuとSnの共晶半田を蒸着しておき、チップに密着させ加熱して半田を溶かし冷却して半田付けする。PD2の上面にはコの字型の上面電極72と、PD1の底面電極81をAuとSnの共晶半田で貼り付ける。上面電極72がPD2のアノード(p電極)となる。底面電極82がPD2のカソード(n電極)となる。PD2の上面の前端中央の一部はSiO、SiNなどの絶縁膜で被覆される。絶縁膜の上に先述のPD1底面電極81を貼り付ける。PD2の受光部(p領域の部分)はそれを除くコの字型の部分に広く形成されている。
【0032】
次に図12のように、大チップPD2の前端中央にある底面電極81の上に小チップPD1の底面をAuとSnの共晶半田で接合する。さらに小チップPD1の上にコの字型の上面電極71を半田で付ける。底面電極81はPD1のカソードに、上面電極71はアノードとなる。
【0033】
図13は上下に張り合わされた小チップPD1と大チップPD2よりなる親子フォトダイオードの完成図を示す。大チップPD2の上前端部に小チップPD1が搭載されている。小チップPD1の底面電極81は、絶縁膜(SiO、SiN膜)を介して大チップPD2の上面に固着されている。大フォトダイオードPD2のカソードは底面電極82、アノードは上面電極72となる。小フォトダイオードPD1のカソードは底面電極81に、アノードは上面電極71となる。PD2、PD1のアノード、カソードは別個であり、それぞれは絶縁されている。この親子フォトダイオードは、レンズ系によって集光された信号光の集光点近くに置かれる小チップPD1の受光面にレンズの集光点が来るようにする。
【0034】
高速の光信号を小チップPD1によって受光する。デフォーカス分の一部が大チップPD2に入る。大チップは受光面が広いのでデフォーカス光を巧く集光できる。受光面が広くCRが大きいので感度は良いが応答速度は遅い。大チップPD2は信号光を取るというのではなくて、光信号の存在非存在の検出、或いは、平均光を検知するのに向いている。平均値を求める場合には、PD2の後段に平均化回路を設けるようにする。光信号をJ(t)とすると、小チップPD1の出力はJ(t)で、大チップPD2の検知するべき出力は<J(t)>である。
【0035】
図28に光受信モジュールの全体の構造の斜視図を示し、図29にその内部構造の断面図を示す。光ファイバ59の先端を光ファイバ固定金具60によって固定する。光ファイバ固定金具60は円筒形のスリーブの開口部の上面に溶接される。円筒形のスリーブ61の下端は、円盤状のステム63の上に溶接される。ステム63の上には小フォトダイオードPD1と大フォトダイオードPD2が上下に並んでマウントされる。ステム63の上面には円筒形のレンズホルダ−62が溶接される。レンズホルダ−62は中央開口部にレンズ9を保持する。ステム63の下面からリードピン64、65、66、67が下向きに突出している。光ファイバ59の先端68から信号光が出る。それがレンズ9によって絞られる。一部は小フォトダイオードPD1に入り一部は大フォトダイオードPD2に入る。
【実施例2】
【0036】
[実施例2(同心円型;図14〜図20)]
大チップと小チップを大小の同心円に配置することもできる。その場合はチップを円板状、円筒状に成形する。同じエピタキシャルウエハ−の上に大チップ、小チップに相応しい構造を持つユニットを作製し、これをチップに分離し円形に成形する。
【0037】
元のエピウエハ−は、n型基板、受光層、窓層、p領域などを含む。n型基板と受光層の間にバッファ層を介在させることもある。チップの形状に合わせて適当な形状のp領域を設ける。更にp、n電極も設ける。上面入射型のフォトダイオードであるから、p電極をp領域の上方にリング状または小さいドット状に設ける。n電極はn型基板の底面に広く形成される。p領域、電極はチップ形状に合わせて設計される。
【0038】
図14のように、角型の大チップCP4、小チップCP3を電極を設けたウエハ−から切り取る。角型の大チップCP4、小チップCP3を一部にマスクをしてエッチングし、穴開き円筒形の大チップPD4、円形の小チップPD3とする。
図15に穴開き円筒形の大チップPD4、円形の小チップPD3を示す。
【0039】
窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ、SiO、SiNなどの絶縁基板54を準備する。図16のように絶縁基板54の上に金のパターンを蒸着し電極を形成する。小チップ用の底面電極83と大チップ用の底面電極84を同心円状に設ける。二つのチップの電極の間には隙間があって相互に絶縁されている。
【0040】
図17のように金で上面電極を作る。小チップ用の上面電極73は小さい直径のリング状である。大チップ用の上面電極74は一部が欠けたリング状である。その他に中継電極93も予め作製しておく。
【0041】
図18のように絶縁基板54の小チップ用の底面電極83の上に小チップPD3を、大チップ用のリング状底面電極84の上に大チップPD4をAuとSnの共晶半田によって貼り合わせる。絶縁基板54に同心状に大チップPD4、小チップPD3が貼り付けられた状態になる。
【0042】
図19のように、小チップPD3の上にリング状の上面電極73を貼り付ける。大チップPD4の上にリング状の上面電極74を貼り付ける。また中継電極93を大チップPD4の上に貼り付ける。図20が完成した状態を示す斜視図である。
絶縁基板54の上に、大フォトダイオードPD4と、その穴に入るように小フォトダイオードPD3が固定される。小フォトダイオードPD3の上面電極73と中継電極93とはワイヤ94で接続されている。大フォトダイオードPD4はアノード74、カソード84を持つ。小フォトダイオードPD3はアノード93、カソード83を持つ。大、小フォトダイオードのアノード、カソードは相互に絶縁される。
【0043】
これによって図6に基本形を示した複合フォトダイオードを得る。これも狭い受光部を持つ小チップPD3が高速の光信号を受信し、広い受光部を持つ大チップPD4が感度良く且つ広く漏れ光を集めるようにできる。大チップは光信号の平均のパワーを検出することができる。同心状で同一平面上に大小フォトダイオードPD4、PD3を並べているので、PD4の受光面をPD3が遮らないという利点がある。また上下に伸びないから、よりコンパクトにできて有利である。対称性良く受光できるから、光の偏奇を正しく検出することもできる。
【0044】
図28に光受信モジュールの全体の構造の斜視図を示し、図30にその内部構造の断面図を示す。光ファイバ59の先端を光ファイバ固定金具60によって固定する。光ファイバ固定金具60は円筒形のスリーブの開口部の上面に溶接される。円筒形のスリーブ61の下端は、円盤状のステム63の上に溶接される。ステム63の上には小フォトダイオードPD3と大フォトダイオードPD4が内外に並んでマウントされる。ステム63の上面には円筒形のレンズホルダ−62が溶接される。レンズホルダ−62は中央開口部にレンズ9を保持する。ステム63の下面からリードピン64、65、66、67が下向きに突出している。光ファイバ59の先端68から信号光が出る。それがレンズ9によって絞られる。一部は小フォトダイオードPD3に入り一部は大フォトダイオードPD4に入る。
【実施例3】
【0045】
[実施例3(同一平面偏奇型:図21〜27)]
図7、図8の基本形に対応するものである。L字型のフォトダイオードを作ることはできるが、ここではL字型大チップを三つの分割チップで構成した例を示す。図21に示すように、エピタキシャルウエハ−にp領域、p電極、n電極を設けたプロセスウエハ−から、四つのチップPD5、PD7、PD8、PD9を切り取る。このうちPD7〜PD9は、三つでL字型大チップを等価的に構成する。図22のように絶縁基板56の上に、小チップ用の底面電極85と大チップ用の底面電極86を設ける。金の電極85、86を金と錫の共晶半田で貼り合わせる。チップPD5、PD7、PD8、PD9の為の上面電極75、77、78、79を金の薄片で作製する。
【0046】
図23のように底面電極85に小チップPD5をAuとSnの共晶半田で貼り付ける。L字型底面電極86にPD7、PD8、PD9を貼り付ける。貼り付けた状態の平面図が図24である。PD7、PD8、PD9は同等であって、三つで大チップの変わりとなる。図25のように金の薄片である上面電極75、77、78、79をPD5、PD7、PD8、PD9の上に貼り付ける。図26は上面電極を貼り付けた状態の斜視図である。更に図27のように、PD7、PD8、PD9の上面電極77、78、79同士をワイヤ97、98によって結合する。上面電極75、底面電極85が小フォトダイオードPD5のアノード、カソードとなる。上面電極77、78、79、底面電極86が大フォトダイオードのアノード、カソードとなる。フォトダイオードのカソード、アノードは別個であり独立している。
【0047】
図28に光受信モジュールの全体の構造の斜視図を示し、図31にその内部構造の断面図を示す。光ファイバ59の先端を光ファイバ固定金具60によって固定する。光ファイバ固定金具60は円筒形のスリーブの開口部の上面に溶接される。円筒形のスリーブ61の下端は、円盤状のステム63の上に溶接される。ステム63の上には小フォトダイオードPD5と大フォトダイオードPD7、8、9が同一平面状偏奇し並んでマウントされる。ステム63の上面には円筒形のレンズホルダ−62が溶接される。レンズホルダ−62は中央開口部にレンズ9を保持する。ステム63の下面からリードピン64、65、66、67が下向きに突出している。光ファイバ59の先端68から信号光が出る。それがレンズ9によって絞られる。一部は小フォトダイオードPD5に入り一部は大フォトダイオードPD7,8,9に入る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】特開2000−12889に従来例として記載されたフォトダイオードの断面図。
【0049】
【図2】特開2000−12889に実施例として記載されたフォトダイオードの断面図。
【0050】
【図3】光信号をレンズによって集光し集光部の近傍に小フォトダイオードと大フォトダイオードを上下に配置した上下型の本発明の一例を示す概略断面図。
【0051】
【図4】光信号をレンズによって集光し集光部の近傍に、円環状の大フォトダイオードと、その中央穴に円形の小フォトダイオードを配置した同心型の本発明の一例を示す概略断面図。
【0052】
【図5】大フォトダイオードの上方に小フォトダイオードを設けた上下型の本発明の一例を示す斜視図。
【0053】
【図6】円環状の大フォトダイオードの内部穴に小フォトダイオードを設けた同心型の本発明の一例を示す概略斜視図。
【0054】
【図7】L字型の大フォトダイオードとその一隅に設けられる小フォトダイオードとよりなる偏奇同一平面型の本発明の一例を示す概略斜視図。
【0055】
【図8】L字型の大フォトダイオードとその一隅に設けられる小フォトダイオードとよりなる偏奇同一平面型の場合の、レンズによって光信号を小フォトダイオードに集光し、一部が大フォトダイオードへ入る様子を示す本発明の一例の概略斜視図。
【0056】
【図9】上下型のデバイスを作製するためにプロセスウエハ−から寸法の相違する二つの矩形フォトダイオードチップを切り出した状態の斜視図。
【0057】
【図10】二つの寸法の異なる矩形チップの底面電極、上面電極を金によって作製した状態を示す平面図。
【0058】
【図11】矩形の大チップの下に底面電極を、上に上面電極を貼り付ける直前の様子を示す斜視図。
【0059】
【図12】底面電極と上面電極を貼りつけた矩形大チップと小チップの底面電極の上に小チップを固定する直前の状態を示す斜視図。
【0060】
【図13】大チップの上面電極の上に小チップを貼り付け上下型のデバイスを完成した状態を示す斜視図。
【0061】
【図14】同心型のデバイスを作製するために矩形大チップと、矩形小チップをプロセスウエハ−から切り出した状態を示す斜視図。
【0062】
【図15】矩形大チップ、矩形小チップにマスクを形成しエッチングすることによって円環状大チップと、円形の小チップにした状態を示す斜視図。
【0063】
【図16】窒化アルミ基板の上に、円環状の大チップ用底面電極と、円形の小チップ用底面電極を同心状に形成した様子を示す基板の斜視図。
【0064】
【図17】円環状大チップのための上面電極74、円形小チップのための上面電極73、中継電極93を金によって作製した状態を示す平面図。
【0065】
【図18】底面電極83、84を設けた窒化アルミ基板に円環状の大チップと円形の小チップを貼り付ける直前の状態を示す斜視図。
【0066】
【図19】底面電極83、84を設けた窒化アルミ基板に円環状の大チップと円形の小チップを貼り付け、その上に上面電極73、74及び中継電極93を貼り付ける直前の状態を示す斜視図。
【0067】
【図20】底面電極83、84を設けた窒化アルミ基板に円環状の大チップと円形の小チップを貼り付け、その上に上面電極73、74及び中継電極93を貼り付け、上面電極73と中継電極93をワイヤ94で接続してデバイスを完成した状態の斜視図。
【0068】
【図21】プロセスウエハ−から四つのフォトダイオードチップを切り出した状態を示す斜視図。
【0069】
【図22】絶縁基板56の上に大フォトダイオード用のL字型底面電極86と、その空隙の一隅に設けた小フォトダイオード用の底面電極85とを貼り付け、三つの大フォトダイオードを構成するチップ用の上面電極77、78、79と、小チップ用の上面電極75を作製した状態を示す斜視図。
【0070】
【図23】大小の底面電極を張り付けた絶縁基板56の、大底面電極の上に三つの大フォトダイオード用のチップPD7〜PD9を、小底面電極PD5の上に小チップを貼り付ける直前の状態を示す斜視図。
【0071】
【図24】大小の底面電極を貼り付けた絶縁基板56の、大底面電極の上に三つの大フォトダイオード用のチップPD7〜PD9を、小底面電極の上に小チップPD5を貼り付けた状態を示す平面図。
【0072】
【図25】絶縁基板56に貼り付けた大フォトダイオード用の三つのチップPD7〜PD9と、小チップPD5の上に上面電極75、77、78、79を貼り付ける直前の様子を示す斜視図。
【0073】
【図26】大底面電極と小底面電極を設けた絶縁基板56に貼り付けた大フォトダイオード用の三つのチップPD7〜PD9と、小チップPD5の上に上面電極75、77、78、79を貼り付けたものを示す斜視図。
【0074】
【図27】三つの大フォトダイオード用チップの上面電極77、78、79をワイヤ97、98で結合しデバイスを完成させたものを示す斜視図。
【0075】
【図28】大フォトダイオードと小フォトダイオードを組み合わせた本発明の実施例に係る光受信モジュール全体の斜視図。
【0076】
【図29】大フォトダイオードの上に小フォトダイオードを乗せた上下型の本発明の実施例1に係る光受信モジュールの縦断面図。
【0077】
【図30】大フォトダイオードの内部に小フォトダイオードを付けた同心円型の本発明の実施例2に係る光受信モジュールの縦断面図。
【0078】
【図31】L型に並べた3つのフォトダイオードからなる大フォトダイオードの隅部に小フォトダイオードを付けた同一平面偏奇型の本発明の実施例3に係る光受信モジュールの縦断面図。
【符号の説明】
【0079】
PD1 小フォトダイオード
PD2 大フォトダイオード
PD3 小フォトダイオード
PD4 大フォトダイオード
PD5 小フォトダイオード
PD6 大フォトダイオード
PD7〜PD9 大フォトダイオードの一部を構成するフォトダイオード
CP3 小チップ
CP4 大チップ
1 n型基板
2 受光層
3 p領域
4 pn接合
6 空乏層
7 p電極
8 n電極
9 レンズ
13 p領域
14 pn接合
16 空乏層
21〜26 受光部
32 間隙
34 間隙
54 絶縁基板
56 絶縁基板
59 光ファイバ
60 光ファイバ固定金具
61 スリーブ
62 レンズホルダ−
63 ステム
64 リードピン
65 リードピン
66 リードピン
67 リードピン
68 光ファイバの先端
71 PD1の上面電極
72 PD2の上面電極
73 PD3の上面電極
74 PD4の上面電極
75 PD5の上面電極
77 PD7の上面電極
78 PD8の上面電極
79 PD9の上面電極
81 PD1の底面電極
82 PD2の底面電極
83 PD3の底面電極
84 PD4の底面電極
85 PD5の底面電極
86 PD7、PD8、PD9の底面電極
97、98 ワイヤ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
狭い受光部を持つ小フォトダイオードと、広い受光部を持つ大フォトダイオードとを受光部を同じ方向に向けて間隙を置いて近接して設け、大フォトダイオード、小フォトダイオードのアノード、カソード電極は独立し絶縁されており、光信号がそれぞれのフォトダイオードに入射するようにし、小フォトダイオードが大フォトダイオードよりも応答速度が速いことを特徴とする光受信デバイス。
【請求項2】
大フォトダイオードは円穴を有する円環状であり、小フォトダイオードは円形であって、大フォトダイオードの円穴の内部に設けられ、大フォトダイオードと小フォトダイオードが同一絶縁基板上に設けられることを特徴とする請求項1に記載の光受信デバイス。
【請求項3】
大フォトダイオードは角型であり、上面の一部に絶縁膜があって、絶縁膜の上に小フォトダイオードが固定されていることを特徴とする請求項1に記載の光受信デバイス。
【請求項4】
大フォトダイオードはL字型に絶縁基板上に配置された小型のフォトダイオードの複数個の並列接続した組み合わせからなり、小フォトダイオードは、同じ絶縁基板上に、前記複数フォトダイオードに近接した位置に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の光受信デバイス。
【請求項5】
請求項1から4の何れかの光受信デバイスと、光信号を前記光受信デバイスに結合する光学部品を有し、大フォトダイオードが小フォトダイオードよりも高感度で受信することを特徴とする光受信モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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