説明

光受信機の光ファイバ余長収納構造

【課題】ファイバトレイ上に複数の巻き付け部を有することによって、様々な長さの余長部分を収納することができる。
【解決手段】余長収納部S2は、第2の巻き付け部12の周囲に光ファイバを巻き付ける巻き付けパターンP1、第1の巻き付け部11と第2の巻き付け部12との間に光ファイバを大きい長円状及び8の字状に巻き付ける巻き付けパターンP2,P3、第1の巻き付け部11と第2の巻き付け部12の第2の部分12Bとの間に光ファイバを小さい長円状に巻き付ける巻き付けパターンP4を有する。巻き付けパターンP5のような引き回し方も可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光受信機の光ファイバ余長収納構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外の光ケーブルを、屋外から屋内に光ファイバとして引き込むための装置として、光受信機(FTTH端末機)が知られている。この光受信機は、光ファイバにて入力される光信号を、電気信号に変換するものである。
【0003】
前述した光受信機においては、光ファイバについて接合・結線作業をする必要があるために、そのような作業ができるように数十cm程度の余長を確保することが求められる。一方、接合・結線作業はファイバトレイ上で行うため、光ファイバの余長部分を引き回し収納する構造が、ファイバトレイ上に必要になる。また、光受信機内部において、光ファイバの接合・結線作業をする際には、光ファイバは様々な長さの余長を取ることがあるので、そのような様々な長さの光ファイバを引き回すために適用範囲の広い収納パターンを持つファイバトレイが求められている。
【0004】
従来の光受信機において、搭載しているファイバトレイに第1及び第2の巻回部を設け、それらの間に光ファイバを引き回すものは知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−251968号公報(段落0020〜0022及び図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1記載のファイバトレイは、第1及び第2の巻回部を有するものの、光ファイバの、多彩な巻き付けパターンと、余長部分の収納長さの自由度の大きさの点で十分とは言えなかった。
【0006】
本発明は、光ファイバの余長部分をファイバトレイ上で複数の巻き取り部に巻き付けることができるようにすることによって、複数種類の長さの余長部分を収納することができる光受信機の光ファイバ余長収納構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、一面が開放される本体ケーシングと、この本体ケーシングの前記一面側に取り外し可能に設けられるファイバトレイとを備え、前記ファイバトレイに光ファイバの余長部分を巻き付けて収納する余長収納部が形成されている光受信機の光ファイバ余長収納構造において、前記ファイバトレイ上には、第1の巻き付け部と第2の巻き付け部とが一定間隔を隔てて配置され、前記第2の巻き付け部が、第1の部分と第2の部分とに分割されて、それらの間を前記光ファイバが配置可能に構成され、前記ファイバトレイが、前記第1の巻き付け部と前記第2の巻き付け部との間に、前記光ファイバを大きい長円状に巻き付ける巻き付けパターン及び8の字状に巻き付ける巻き付けパターンに加えて、前記第1の巻き付け部と第2の巻き付け部の第2の部分との間に前記光ファイバを小さい長円状に巻き付ける巻き付けパターンを有することを特徴とする。
【0008】
このようにすれば、ファイバトレイが、第1の巻き付け部と第2の巻き付け部との間に大きい長円状に巻き付ける巻き付けパターン及び8の字状に巻き付ける巻き付けパターンに加えて、第1の巻き付け部と第2の巻き付け部の第2の部分との間に小さい長円状に巻き付ける巻き付けパターンを有しているので、ファイバトレイ上での光ファイバの巻き付けパターン(収納パターン)を特許文献1に記載のものよりも増やすことができ、様々な長さの余長を収納することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載のように、前記第1の巻き付け部と第2の巻き付け部との間に案内部が設けられ、この案内部は、前記第2の巻き付け部の第2の部分に巻き付けられる前記光ファイバの曲率半径が、前記第2の巻き付け部の第1の部分に巻き付けられる前記光ファイバの曲率半径と同じかあるいはそれよりも大きくなるように前記光ファイバの巻き付けを案内するものであることが望ましい。
【0010】
このようにすれば、第1の巻き付け部と第2の巻き付け部との間に光ファイバを巻き付ける場合に、案内部の案内によって、前記第2の巻き付け部の第2の部分に巻き付ける場合に光ファイバの曲率半径を第2の巻き付け部の第1の部分に巻き付ける場合の曲率半径と同じかあるいはそれより大きくすることができ、光ファイバの余長部分は、巻き付けパターン(第2の巻き付け部の第1の部分への巻き付け、第2の巻き付け部の第2の部分への巻き付け)にかかわりなく所定の曲率半径(一般の光ファイバで30mm以上)を保つように巻き付けることができる。よって、光ファイバを、曲げ過ぎて伝送特性が劣化したり、破断したりするのが回避される。
【0011】
請求項3の発明は、一面が開放される本体ケーシングと、この本体ケーシングの前記一面側に取り外し可能に設けられるファイバトレイとを備え、前記ファイバトレイに光ファイバの余長部分を巻き付けて収納する光受信機の光ファイバ余長収納構造において、前記ファイバトレイ上には、2つの巻き付け部の間に1つの中間巻き付け部が配置されるとともに、前記2つの巻き付け部及び1つの中間巻き付け部のいずれに対しても前記光ファイバを巻き付け可能に構成され、前記1つの中間巻き付け部が前記2つの巻き付け部のうちのいずれか一方の巻き付け部に接近して配置されていることを特徴とする。
【0012】
このようにすれば、ファイバトレイを大きくすることなく、3つの巻き付け部(2つの巻き付け部と1つの中間巻き付け部)を配置することができ、ファイバトレイ上での光ファイバの巻き付けパターン(収納パターン)を増やすことができ、様々な長さの余長を収納することが可能となる。
【0013】
この場合、請求項4に記載のように、前記1つの中間巻き付け部に巻き付けられる前記光ファイバの曲率半径が、前記2つの巻き付け部に巻き付けられる前記光ファイバの曲率半径と同じかあるいはそれよりも大きくなるように前記光ファイバの巻き付けを案内する案内部が、前記1つの中間巻き付け部と前記1つの中間巻き付け部から離れて配置されている巻き付け部との間に設けられていることが望ましい。
【0014】
このようにすれば、前記1つの中間巻き付け部に巻き付けられる前記光ファイバの曲率半径を、案内部の案内によって、前記2つの巻き付け部に巻き付けられる前記光ファイバの曲率半径と同じかあるいはそれよりも大きくすることができ、光ファイバの余長部分は、巻き付けパターンにかかわりなく所定の曲率半径を保つように巻き付けることができる。
【0015】
請求項5に記載のように、前記案内部より外側の位置に、前記光ファイバを繋ぐ接続具を保持可能である保持部が配置されている構成とすることができる。
【0016】
このようにすれば、第1及び第2の巻き付け部への巻き付けを損なうことなく、光ファイバを繋ぐ接続具を保持することができる。
【0017】
また、ファイバトレイ上に、4つの巻き付け部を配置する場合には、請求項6の発明のように構成することができる。すなわち、請求項6の発明は、一面が開放される本体ケーシングと、この本体ケーシングの前記一面側に取り外し可能に設けられるファイバトレイとを備え、前記ファイバトレイに光ファイバの余長部分を巻き付けて収納する光受信機の光ファイバ余長収納構造において、前記ファイバトレイ上には、2つの巻き付け部の間に2つの中間巻き付け部が配置されるとともに、前記2つの巻き付け部及び2つの中間巻き付け部のいずれに対しても前記光ファイバを巻き付け可能に構成され、前記2つの中間巻き付け部は、前記2つの巻き付け部のうちの近い側の巻き付け部に接近して配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように構成したから、本発明は、光ファイバを大きい長円状に巻き付ける巻き付けパターン、8の字状に巻き付ける巻き付けパターン、光ファイバを小さい長円状に巻き付ける巻き付けパターンを含めて、ファイバトレイ上での光ファイバの巻き付けパターン(収納パターン)を増やすことができる。よって、様々な長さの余長を収納することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0020】
図1は本発明に係る光受信機の分解斜視図、図2は光受信機のケーシングカバーが開放された状態の側面図、図3はファイバトレイ及びケーシングカバーを取り外した状態を示す平面図、図4は図3のIV-IV線における断面図である。
【0021】
図1〜図4に示すように、光受信機1は、一面(図1においては上面)が開放される本体ケーシング2と、この本体ケーシング2の前記一面側に取り外し可能に嵌め込まれるファイバトレイ3と、本体ケーシング2に開閉可能に設けられたケーシングカバー4とを備える。本体ケーシング2の内部(図1において底部)には、電源部5と、この電源部5によって電力を供給され(放送系の)光信号を電気信号に変換する光受信増幅部6とが設けられている。
【0022】
光受信増幅部6は、この光受信増幅部6に光信号を受光するための光中継用アダプタ6aを有し、この光中継用アダプタ6aはシールドケース6bの上面に、支持部材6cを介して一定の角度をなすように取り付けられている。光中継用アダプタ6aを介して入力された光信号は、光受信増幅部6において電気信号に変換され、増幅される。この増幅された電気信号は、シールドケース6bの下面部(図3参照)に設けられた出力端子8から出力される。この出力端子8から出力される電気信号をモニタするモニタ端子7が、シールドケース6bの下面部に出力端子8と並列に設けられている。なお、電気信号はテレビ放送信号であり、この電気信号は出力端子8からは同軸ケーブル(図示せず)を介してテレビ受信機などに供給される。
【0023】
本体ケーシング2の下面には、図3に示すように、出力端子8及びモニタ端子7がそれぞれ貫通される挿通孔2a,2bが形成されている。また、本体ケーシング2の両側面後部には、ケーシングカバー4を、ヒンジ片4aの部分で回転可能に支持する一対の係合凸部2cが形成されている。また、ケーシングカバー4を本体ケーシング2に固着するためのネジが螺着される雌ネジ部2dが下面部側に設けられている。さらに、本体ケーシング2の下面部から下方へ、シールドケース6bのアース用突部6dが突出し、ねじ(図示せず)にて本体ケーシング2の下面部に取り付けられている。
【0024】
電源部5及び光受信増幅部6を本体ケーシング2内の底面部に取付け、その内部に収納した状態において、本体ケーシング2の一面(開放面)を閉塞するように、内部カバーとして機能するファイバトレイ3が嵌め込まれている。
【0025】
本体ケーシング2の下面部側からケーシング内方に1対の係合突部2kが突出しており、その係合突部2kに係脱可能に係合する1対の切り欠き部3aがファイバトレイ3に形成されており、本体ケーシング2の上面部内に、ファイバトレイ3の後端部が係止される1対の係止部2e(図3参照)が形成されている。よって、係合突部2kを切り欠き部3aに係合させた状態で、ファイバトレイ3を本体ケーシング2上に嵌め込むと、ファイバトレイ3の上端部が係止部2eにて支持される。なお、係合突部2kが形成されている両側には、導入される光ケーブル100を通すための切り欠き部2fと、電源部5から外部に延びる電源コード5aを通す切り欠き部2gとが形成されている。なお、導入された光ケーブル100は、ファイバの先端部分だけを簡単にコネクタ加工できる簡易コード化部材10内で、放送系の光ファイバ100Aと通信系の光ファイバ100Bとに分けられる。
【0026】
また、ファイバトレイ3のほぼ中央部には貫通穴3bが形成され、本体ケーシング2に設けられたボス部2hに、貫通穴3bを通じてビスを適用することで、ファイバトレイ3が本体ケーシング2に固定される。
【0027】
ファイバトレイ3の前面部は、図5に詳細を示すように、仕切壁部3cによって、光ケーブル100が導入されるケーブル導入部S1と、光ファイバ100A,100Bを巻き付けることにより、光ファイバ100A,100Bの余長部分を収納する余長収納部S2とに区画されている。上下面には、それらの外周囲を規定する第1及び第2の湾曲壁部3d,3eが形成されている。
【0028】
ケーブル導入部S1においては、ファイバトレイ3の下面側には、光ケーブル100が挿入される側に、簡易コード化部材10を嵌合可能な第1の凹部S11が、その第1の凹部S11に連続して挿入される側とは反対側に、簡易コード化部材10から引き出される光ファイバ100A,100Bが収納される第2の凹部S12が形成されている。
【0029】
図5に示すように、ケーブル導入部S1に並んで設けられる余長収納部S2においては、ファイバトレイ3の底面部からそれに直交する方向に突出する板状のリブを組み合わせることによって、光ファイバ100A,100Bの余長部分を巻き付けのために通過させる多彩な経路が形成されている。
【0030】
具体的には、余長収納部S2には、第1の巻き付け部11と第2の巻き付け部12とが一定間隔を隔てて配置される。そして、余長収納部S2において、第1の凹部S11の隣側に第1の巻き付け部11が、第2の凹部S12の隣側に第2の巻き付け部12がそれぞれ位置している。第2の巻き付け部12は、第1の部分12Aと第2の部分12B(中間巻き付け部)に分割されており、それら部分12A,12Bの間は、余長部分である光ファイバ100A,100Bが配置可能な通路13となっている。第1及び第2の部分12A,12Bはそれぞれ独立した巻き付け部であるが、それらが接近して配置されていることで、両部分12A,12Bで1つのまとまり(第2の巻き付け部12A)を構成している。ここで、第1の部分12A及び第2の部分12Bも巻き付け部として機能するので、ファイバトレイ3上には、3つの巻き付け部(第1の巻き付け部11と、第2の巻き付け部12の第1の部分12Aと、それらの間に位置する第2の巻き付け部12の第2の部分12B)が配置されていることになる。
【0031】
そして、図7に示すように、ファイバトレイ3は、第2の巻き付け部12の周囲に巻き付ける巻き付けパターンP1のほか、第1の巻き付け部11と第2の巻き付け部12との間に光ファイバ100A,100Bを大きい長円状に巻き付ける巻き付けパターンP2及び8の字状に巻き付ける巻き付けパターンP3に加えて、第1の巻き付け部11と第2の巻き付け部12の第2の部分12Bとの間に光ファイバ100A,100Bを小さい長円状に巻き付ける巻き付けパターンP4を有する。
【0032】
また、第1の巻き付け部11と第2の巻き付け部12との間には、第1及び第2の案内部14,15が配置されている。これら案内部14,15は、第2の巻き付け部12の第2の部分12Bに巻き付ける際の光ファイバ100A,100Bの曲率半径が、第2の巻き付け部12の第1の部分12Aに巻き付ける際の曲率半径と同等又はそれよりも大きくなるように光ファイバ100A,100Bを案内するものである。
【0033】
ケーブル導入部S1と第1の案内部14との間には、光ファイバ100A,100Bを繋ぐ接続具102を保持可能である第1の保持部16が配置され、ケーブル導入部S1と反対側に位置する第2の案内部15の外側には、接続具102を保持可能である第2及び第3の保持部17,18が配置されている。この各保持部16〜18は、光ファイバ100A,100Bの余長部分の長さに応じて適宜使い分けられる。なお、接続具102としては、周知のメカニカルスプライス(光ファイバーを溶かさないで機械的に接合するもの)または融着スリーブ(光ファイバを機械的に接合するのではなく、溶かして繋ぐもの)が用いられる。各保持部16〜18には、接続具102が外れにくいように1対の押圧フィン16a〜18aが設けられている。
【0034】
この第1〜第3の保持部16〜18は、第1の巻き付け部11及び第2の巻き付け部12に光ファイバ100A,100Bを大きい長円状に巻き付けた場合の光ファイバ100A,100Bの外側に位置するようになっており、第1〜第3の保持部16〜18を通過させる場合と、そうでない場合とで、収納できる余長部分の長さを変更できるようになっている。
【0035】
また、第1及び第2の巻き付け部11,12の間には、それらの間に光ファイバ100A,100Bが巻き付けられた場合にその光ファイバ100A,100Bの下側を通って、光受信増幅部6の光中継用アダプタ6aに、放送系の光ファイバ100Aの終端部の光コネクタ100aを着脱可能に接続するために案内する案内凹部21が形成されている。
【0036】
この案内凹部21は、第2の巻き付け部11の一側(ケーブル導入部S1とは反対側)から、第1の巻き付け部11の他側(ケーブル導入部S1の側)に向かうように本体ケーシング2の長手方向中心線に対して傾斜して延び、第2の巻き付け部12の下側の開口3fに通じるように設けられている。そして、案内凹部21の底面(ファイバトレイ3の底面でもある)は、開口3fに向かって徐々に高さが低くなるように傾斜している。これにより、放送系の光ファイバ100Aの先端に設けられた光コネクタ100aを、第1及び第2の巻き付け部11,12より低い位置、すなわちファイバトレイ3の下側で光中継用アダプタ6aに接続することができるようになる。
【0037】
第1の巻き付け部11は、図5に示すように、前側に向かって突出する円弧形状のリブ11aで外周部分が形成され、その内部に通信系の光ファイバ100Bを案内する通路状の案内部22が同様にリブ22a,22bによって形成され、通信系の光ファイバ100Bが、第1の巻き付け部11に巻き付けられる放送系の光ファイバ100Aの上側を通過し、切り欠き部3hを通じて外部に導かれる構成とされている。つまり、第1の巻き付け部11の外周部分を形成する円弧形状のリブ11aの途中に、通信系の光ファイバ100Bを外部に導き出すための切り欠き部11bが形成され、その切り欠き部11bに案内部22が通じている。
【0038】
第2の巻き付け部12は、前側に向かって突出する円弧形状のリブ12A1及びそのリブ12A1の内側に位置しそのリブ12A1より曲率半径が大きいリブ12A2にて構成される第1の部分12Aと、この第1の部分12Aのリブ12A2との間に、通路13を形成する筒状の第2の部分12Bとを有する。第2の部分12Bは、リブ12A2と同様な曲率半径を有するがそれよりは短い円弧形状のリブ12B1と、この円弧形状に対応した形状で反対側に突出するように湾曲したリブ12B2とを有する。第2の巻き付け部12の外周部分(リブ12A1,12B2)は、第1の巻き付け部11の外周部分とほぼ同じ曲率半径となっている。第1及び第2の巻き付け部11,12は、それらの径が約30mm以上とされ、巻き付けた光ファイバ100A,100Bにおける光信号の伝送ロスが大きくならないようにしていると共に、その破断を防止している。
【0039】
また、第1及び第2の巻き付け部11,12や案内部14、保持部16,17には、各巻き付け部11,12や案内部14、保持部16,17からの光ファイバ100A,100Bが通過する部分に対し光ファイバ100A,100Bの離脱(浮き上がり)を防止するためのひさし状の水平リブ31〜42が、通路に向けて水平に突出するように設けられている。通路13に対しても水平リブ43〜45が設けられている。第1及び第2の湾曲壁部3d,3eには、経路の幅が広くなるので、前述した水平リブ31〜45よりも長い水平リブ46〜49が設けられている。そして、光ファイバ100A,100Bが通過する経路の幅に対して水平リブ31〜45,46〜49が長めになっているので、ファイバトレイ3を傾けても、光ファイバ100A,100Bをしっかりと保持できる。また、第1の巻き付け部11の外周部分であって通信系の光ファイバ100Bが外部に導かれる部分の両側に設けられる水平リブ32,33は、他の部分に設けられる水平リブ31、34〜49よりも低い位置に設けられ、通信系の光ファイバ100Bが、他の光ファイバと干渉することなく外部に導き出されるようになっている。
【0040】
第1及び第2の巻き付け部11,12と各保持部16〜18との間には、光ファイバ100A,100Bを案内する板状の補助案内リブ51〜56がそれぞれ設けられている。
【0041】
上記構成によれば、例えば図6に示すように、光ケーブル導入用の切り欠き部2fを通じて、入力側からの光ケーブル100がファイバトレイ3内に入ってきた後、簡易コード化部材10(第1の凹部S11)を経て、第2の凹部S12で、放送系の光ファイバ100Aと通信系の光ファイバ100Bとは別々に分かれる。
【0042】
放送系の光ファイバ100A(図6の実線参照)は、ファイバトレイ3上の第2の巻き付け部12(第1の部分12A及び第2の部分12B)の周囲を一周した後、斜め向きの放送系の光ファイバ100Aの光中継用アダプタ6aに向かう。通信系の光ファイバ100B(図6の破線参照)は、第2の巻き付け部12から第3の保持部18の、接続具102を経て、第1の巻き付け部11から第2の巻き付け部12を経て、余長収納部S2内を一周した後に、案内部22を通って、通信系の出力ケーブルとして外部に導出される。
【0043】
このように、余長収納部S2において、第1及び第2の湾曲壁部3d,3eとの間に、第1および第2の巻き付け部11,12や保持部16〜18を利用して、光ファイバ100A,100Bが通る経路(光ファイバを収容する収容溝でもある)を形成することで、多彩な経路を経て巻き付けることができ、光ファイバ100A,100Bの余長部分の長さを調節することができる。つまり、余長部分をファイバトレイ3上にうまく収納するために、光ファイバ100A,100Bを引き回すための収納パターンをこのファイバトレイ3は複数種類有している。
【0044】
その収納パターンの例として、図7において、巻き付けパターンP1〜P4として示す。これらの巻き付けパターンで光ファイバ100A,100Bを巻き付けて収納したときの長さは、巻き付けパターンP1の場合は20〜24cm、巻き付けパターンP2の場合は38〜44cm、巻き付けパターンP3の場合は43〜50cm、巻き付けパターンP4の場合は29〜33cmとなる。つまり、巻き付けパターンそれぞれについて長さに範囲があるため、光ファイバ100A,100Bの長さ20〜50cmの範囲で、引き回して収納することが可能になる。
【0045】
また、簡易コード化部材10を使用せずに、引っ張り止め金具103(図6参照)のみを使う場合には、保持部18の接続具102を保持部16に移動すると、巻き付けパターンP5のような引き回し方も可能になっている。なお、3w,3vは、ファイバトレイ3上に形成された引っ張り止め具103の収容部である。
【0046】
よって、光ファイバ100A,100Bに光コネクタ100aや接続具102(メカニカルスプライス、融着スリーブ)を現場で取り付ける際には、作業を行うためのゆとりとして前記余長部分を利用することができ、あるいは接合を失敗したときには切断し直して結線することも可能となる。
【0047】
以上説明した光受信機1において、余長収納部S2に収納される光ファイバ100Aの先端に設けた光コネクタ100aを光中継用アダプタ6aに着脱可能に接続することにより、光受信増幅部6に光信号を導入するようにしている。これにより、故障などにより光受信増幅部6を交換する必要性が生じた場合、光中継用アダプタ6aから光コネクタ100aを外すことによりファイバトレイ3に形成されている余長収納部S2に光ファイバ100A,100Bの余長部分を収納したままで、ファイバトレイ3を取り外して光受信増幅部6を交換することができるようになる。
【0048】
前記実施の形態においては、第2の巻き付け部12のみ、2つの巻き付け部(第1の部分12Aと第2の部分12B)で構成されるようにしているが、本発明はそれに限定されるものではなく、第1の巻き付け部11も、第2の巻き付け部と同様に、接近して配置される2つの巻き付け部(第1の部分12A及び第2の部分12Bに相当する第1の部分及び第2の部分)で構成することも可能である。この場合には、2つの巻き付け部の間に、2つの中間巻き付け部が配置されることになり、ファイバトレイ上に4つの巻き付け部が配置されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る光受信機の分解斜視図である。
【図2】光受信機のカバーが開放された状態の側面図である。
【図3】ファイバトレイ及びケーシングカバーを取り外した状態を示す平面図である。
【図4】図3のIV-IV線における断面図である。
【図5】ファイバトレイの平面図である。
【図6】光ファイバの引き回しの一例を示す説明図である。
【図7】光ファイバトレイの引き回しの他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 光受信機
3 ファイバトレイ
5 電源部
6 光受信増幅部
11 第1の巻き付け部
12 第2の巻き付け部
12A 第1の部分
12B 第2の部分(中間巻き付け部)
16〜18 保持部
21 案内凹部
22 案内部
100 光ケーブル
100A 放送系の光ファイバ
100B 通信系の光ファイバ
100a 光コネクタ
102 接続具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面が開放される本体ケーシングと、この本体ケーシングの前記一面側に取り外し可能に設けられるファイバトレイとを備え、前記ファイバトレイに光ファイバの余長部分を巻き付けて収納する余長収納部が形成されている光受信機の光ファイバ余長収納構造において、
前記ファイバトレイ上には、第1の巻き付け部と第2の巻き付け部とが一定間隔を隔てて配置され、前記第2の巻き付け部が、第1の部分と第2の部分とに分割されて、それらの間を前記光ファイバが配置可能に構成され、
前記ファイバトレイが、前記第1の巻き付け部と前記第2の巻き付け部との間に、前記光ファイバを大きい長円状に巻き付ける巻き付けパターン及び8の字状に巻き付ける巻き付けパターンに加えて、前記第1の巻き付け部と第2の巻き付け部の第2の部分との間に前記光ファイバを小さい長円状に巻き付ける巻き付けパターンを有することを特徴とする光受信機の光ファイバ余長収納構造。
【請求項2】
前記第1の巻き付け部と第2の巻き付け部との間に案内部が設けられ、この案内部は、前記第2の巻き付け部の第2の部分に巻き付けられる前記光ファイバの曲率半径が、前記第2の巻き付け部の第1の部分に巻き付けられる前記光ファイバの曲率半径と同じかあるいはそれよりも大きくなるように前記光ファイバの巻き付けを案内するものであることを特徴とする請求項3記載の光受信機の光ファイバ余長収納構造。
【請求項3】
一面が開放される本体ケーシングと、この本体ケーシングの前記一面側に取り外し可能に設けられるファイバトレイとを備え、前記ファイバトレイに光ファイバの余長部分を巻き付けて収納する光受信機の光ファイバ余長収納構造において、
前記ファイバトレイ上には、2つの巻き付け部の間に1つの中間巻き付け部が配置されるとともに、前記2つの巻き付け部及び1つの中間巻き付け部のいずれに対しても前記光ファイバを巻き付け可能に構成され、
前記1つの中間巻き付け部が前記2つの巻き付け部のうちのいずれか一方の巻き付け部に接近して配置されていることを特徴とする光受信機の光ファイバ余長収納構造。
【請求項4】
前記1つの中間巻き付け部に巻き付けられる前記光ファイバの曲率半径が、前記2つの巻き付け部に巻き付けられる前記光ファイバの曲率半径と同じかあるいはそれよりも大きくなるように前記光ファイバの巻き付けを案内する案内部が、前記1つの中間巻き付け部と前記1つの中間巻き付け部から離れて配置されている巻き付け部との間に設けられていることを特徴とする請求項2記載の光受信機の光ファイバ余長収納構造。
【請求項5】
前記案内部より外側の位置に、前記光ファイバを繋ぐ接続具を保持可能である保持部が配置されていることを特徴とする請求項2又は4記載の光受信機の光ファイバ余長収納構造。
【請求項6】
一面が開放される本体ケーシングと、この本体ケーシングの前記一面側に取り外し可能に設けられるファイバトレイとを備え、前記ファイバトレイに光ファイバの余長部分を巻き付けて収納する光受信機の光ファイバ余長収納構造において、
前記ファイバトレイ上には、2つの巻き付け部の間に2つの中間巻き付け部が配置されるとともに、前記2つの巻き付け部及び2つの中間巻き付け部のいずれに対しても前記光ファイバを巻き付け可能に構成され、
前記2つの中間巻き付け部は、前記2つの巻き付け部のうちの近い側の巻き付け部に接近して配置されていることを特徴とする光受信機の光ファイバ余長収納構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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