説明

光可変フィルタ装置の特性制御方法

【課題】フィルタの特性を任意に変化することができる光可変フィルタ装置のフィルタ特性制御方法を提供すること。
【解決手段】周波数選択素子は周波数分散方向に配列された画素構造を有する。その制御画素について印加電圧と周波数幅及び印加電圧と減衰率の関係から周波数幅と透過率の関係を示す近似曲線を関数としてあらかじめ算出する。そしてこの関数に基づいて各画素を制御することによって光可変フィルタ装置のフィルタ特性制御方法を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光通信分野、光分光分析分野などに用いられる光可変フィルタ装置の特性制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光可変フィルタは光通信や分光分析の分野に代表されるように、現在広く利用されている。特に光通信分野では近年の伝送容量需要に応えるべく、高伝送レート化、新規変調フォーマットが盛んに研究開発されており、光ネットワークも複雑化している。このような光ネットワークにおいては、光信号のうち所望の波長の光を変化させることができる光可変フィルタが用いられる。例えば特許文献1には周波数選択素子として2次元の反射型LCOS(Liquid Crystal On Silicon)の液晶素子(以下、LCOS素子という)を用いた光可変フィルタが示されている。
【0003】
一方、近年の伝送容量需要に応えるべく、伝送レートの高速化、新規変調フォーマットが盛んに研究開発されており、光ネットワークも複雑化している。このような光ネットワークにおいては、光ネットワーク網の分岐点に相当する光ノードでは、再構成可能なアド、ドロップ機能を有するROADM(Reconfigurable Optical Add Drop Multiplexer)装置の導入が進められている。ROADM装置を実現するため、任意の波長を任意の方向に切り換える波長選択スイッチ(WSS -Wavelength Selective Switch)が注目されている。光可変フィルタは波長選択スイッチを実現したり、各光信号の伝送レートや変調フォーマットに対し最適なフィルタリングを実現するため、従来の周波数(波長)選択機能に加え、光周波数レベルでのフィルタ中心周波数、及びパスバンドの動的制御機能が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US2006/0067611A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光可変フィルタ装置においては、光周波数レベルでのフィルタの中心周波数の制御、及び各光信号の伝送レートや変調フォーマットに対し最適なパスバンドとなるように変化させる機能が求められている。中心周波数やパスバンドを可変するためには、光の周波数に応じて異なる方向に光を分散させ、多数の画素を有する周波数選択素子に入射し、画素毎に透過率をオン/オフ制御することが考えられる。
【0006】
しかしながら、周波数の分解能は、1画素に割り当てられる周波数に制限される。この割当て周波数は周波数選択素子の平面上の単位長当りの周波数である逆線分散量Dと周波数分散方向の画素の幅dとの積(D・d)で決まる。そのため周波数選択特性を高分解能化するためには、画素幅を縮小するか、もしくは逆線分散量を小さくすることが必要であり、装置が大型化したり、画素数を多くした周波数選択素子が必要になるという問題点があった。そこで、装置の大型化、及び周波数選択素子の精細化を必要とせず、周波数の分解能を高めることが望まれていた。
【0007】
本発明はこのような従来の光可変フィルタ装置の問題点に鑑みてなされたものであって、装置の大型化、周波数選択素子の細密化を必要とせず、周波数選択の分解能を高め、連続して正確にフィルタ特性を変化できるようにすることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明の光可変フィルタ装置の特性制御方法は、周波数に応じて空間的に分散させた光が入射し、周波数分散方向に配列された多数の画素を有し、各画素の特性を変化させることにより所望の周波数選択特性を得る周波数選択素子を有する光可変フィルタ装置の特性制御方法であって、前記周波数選択素子の特定画素の駆動電圧を連続的に変化させ、その画素を通過する周波数の変化量を取得し、前記周波数選択素子の特定画素の駆動電圧値を連続的に変化させ、その画素を通過する光の減衰値を取得し、得られた駆動電圧と周波数特性及び駆動電圧と減衰量の関係から透過率と周波数の関係を示す2次以上6次以下の近似曲線を示す関数を算出し、前記関数に基づいて前記周波数選択素子の制御画素を駆動することによって特性を制御するものである。
【0009】
ここで前記光可変フィルタ装置は、光を入射し、入射光のうち選択された周波数の光を出射する入出射部と、前記入出射部に入射した光をその周波数に応じて空間的に分散させると共に、反射光を合波する周波数分散素子と、前記周波数分散素子によって分散した光を2次元平面に平行に集光する集光素子と、前記集光素子によって集光された光を受光する位置に配置され、少なくとも周波数分散方向に配列された多数の画素を有し、各画素の反射特性を変化させることにより所望の周波数選択特性を得る周波数選択素子と、前記周波数選択素子の各画素の電極を駆動することによって入射光の周波数毎に透過特性を階調制御する周波数選択素子駆動部と、を具備する光可変フィルタ装置としてもよい。
【0010】
ここで前記光可変フィルタ装置は、光を入射する入射部と、前記入射部より入射した光をその周波数に応じて空間的に分散させる周波数分散素子と、前記周波数分散素子によって分散した光を2次元平面上に集光する第1の集光素子と、前記第1の集光素子によって集光された光を受光する位置に配置され、少なくとも周波数分散方向に配列された多数の画素を有し、各画素の透過特性を変化させることにより任意の周波数の光を選択する周波数選択素子と、前記周波数選択素子の各画素の電極を駆動することによって入射光の周波数毎に光透過特性を階調制御する周波数選択素子駆動部と、前記周波数選択素子を透過した各周波数の光を集光する第2の集光素子と、前記第2の集光素子によって集光された分散光を合成する周波数合成素子と、前記周波数合成素子によって合成された光を出射する出射部と、を具備する光可変フィルタ装置としてもよい。
【0011】
ここで前記算出した関数で示される透過率と周波数変動量の関係を示すテーブルをメモリに保持し、前記テーブルから読出した必要な透過率の周波数変動量に相当する駆動電圧を前記周波数選択素子に設定することによって、前記周波数選択素子を制御するようにしてもよい。
【0012】
ここで前記算出した関数で示される透過率と周波数変動量の関係を示すテーブルをメモリに保持し、前記テーブルから読出した必要な透過率の周波数変動量からスプライン補間によって求められた駆動電圧を前記周波数選択素子に設定することによって、前記周波数選択素子を制御するようにしてもよい。
【0013】
ここで前記周波数選択素子は、周波数分散方向の画素幅を入射光の周波数分散方向のビーム半径より小さくするようにしてもよい。
【0014】
ここで前記周波数選択素子は、少なくとも1次元に配列された多数の画素を有するLCOS素子であり、前記周波数選択素子駆動部は、周波数選択特性に応じて各画素に印加する電圧を制御するようにしてもよい。
【0015】
ここで前記周波数選択素子は、少なくとも1次元に配列された多数の画素を有する液晶素子であり、前記周波数選択素子駆動部は、周波数選択特性に応じて各画素に印加する電圧を制御するようにしてもよい。
【0016】
ここで前記周波数選択素子は、少なくとも1次元に配列された多数の画素を有するMEMS素子であり、前記周波数選択素子駆動部は、周波数選択特性に応じて各画素に印加する電圧を制御するようにしてもよい。
【0017】
ここで入射光の各周波数について、各周波数に対応する前記周波数選択素子の少なくとも1つの画素から成る画素群を介して出射される入出射光の比率を当該画素群の透過率とするとき、所望の連続した画素群を光透過状態とし、透過周波数範囲の画素群のうち端部の画素群に隣接する少なくとも1つの第1の制御画素群、及び前記通過周波数帯域の他方の端部の画素群に隣接する少なくとも1つの第2の制御画素群の透過率を同時に徐々に上昇させることによってバンド幅を拡大するようにしてもよい。
【0018】
ここで入射光の各周波数について、各周波数に対応する前記周波数選択素子の少なくとも1つの画素から成る画素群を介して出射される入出射光の比率を当該画素群の透過率とするとき、所望の連続した画素群を光透過状態とし、前記透過周波数範囲の画素群のうち端部の少なくとも1つの第1の制御画素群、及び前記通過周波数帯域の他方の端部の少なくとも1つの第2の制御画素群の透過率を同時に徐々に低下させることによってバンド幅を縮小するようにしてもよい。
【0019】
ここで入射光の各周波数について、各周波数に対応する前記周波数選択素子の少なくとも1つの画素から成る画素群を介して出射される入出射光の比率を当該画素群の透過率とするとき、所望の連続した画素群を光透過状態とし、透過周波数範囲の画素群のうち周波数変化の方向の端部の画素群に隣接する少なくとも1つの第1の制御画素群の光透過率を徐々に上昇させ、前記透過周波数範囲の他方の端部の画素群の少なくとも1つの第2の制御画素群の透過率を、徐々に減少させることによって透過周波数範囲の中心周波数を周波数軸に沿って変更するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
このような特徴を有する本発明によれば、周波数分散させた光を分散方向に配列した複数の画素に対応させると共に、画素の透過率を連続的に階調制御している。このため装置の大型化、及び周波数選択素子の高精細化を必要とせず、周波数の分解能を高めることができる。これにより高分解能で正確にパスバンド幅を変化させたり、パスバンドの中心周波数を正確に変化させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】図1Aは本発明の特性制御方法が適用される反射型の光可変フィルタ装置の一例についてx軸方向から見た光学的な配置を示す図である。
【図1B】図1Bはこの反射型の光可変フィルタ装置のy軸方向からの光学的な配置を示す図である。
【図2A】図2Aは本発明の特性制御方法が適用される透過型の光可変フィルタ装置の一例についてx軸方向から見た光学的な配置を示す図である。
【図2B】図2Bはこの透過型の光可変フィルタ装置のy軸方向からの光学的な配置を示す図である。
【図3A】図3Aは前述した光可変フィルタ装置に用いられる2次元の周波数選択素子を示す図である。
【図3B】図3Bは前述した光可変フィルタ装置に用いられる1次元の周波数選択素子を示す図である。
【図4A】図4Aは反射型の光可変フィルタ装置に用いられるLCOS素子の変調方式の一例を示す図である。
【図4B】図4Bは反射型の光可変フィルタ装置に用いられるLCOS素子の変調方式の他の例を示す図である。
【図5】図5は反射型の光可変フィルタ装置に用いられるMEMS素子の1画素を示す図である。
【図6A】図6Aは透過型の光可変フィルタ装置に用いられるLCOS素子の変調方式の一例を示す図である。
【図6B】図6Bは透過型の光可変フィルタ装置に用いられるLCOS素子の変調方式の他の例を示す図である。
【図7A】図7Aは本発明の第1の実施の形態においてバンドパスフィルタのバンド幅を広くする場合の制御方法を示す図である。
【図7B】図7Bは本発明の第1の実施の形態においてバンドパスフィルタのバンド幅を狭くする場合の制御方法を示す図である。
【図8】図8は本発明の第1,第2の実施の形態による光可変フィルタ装置のバンド幅の変化の例を示す図である。
【図9A】図9Aは本発明の実施の形態による光可変フィルタ装置の特性制御方法における制御画素群の連続的に変化させたときの周波数の変化を示すグラフである。
【図9B】図9Bは電圧を連続的に変化させたときの減衰レベルの変化を示すグラフである。
【図9C】図9Cは本実施の形態による周波数変化量に対する減衰レベルを示すグラフである。
【図9D】図9Dは周波数変化量に対する透過率の変化を示すグラフである。
【図9E】図9Eは周波数変化量に対する近似曲線による透過率を示すグラフである。
【図10】図10は周波数分散素子の画素位置及び特性決定のための構成システムを示すブロック図である。
【図11】図11は本実施の形態によるx座標に対する周波数を確定するための処理を示すフローチャートである。
【図12】図12はライン上の画素を反射状態とする状態を示すLCOS素子を示す図である。
【図13A】図13Aは周波数可変光源61の周波数走査光を示すスペクトル図である。
【図13B】図13Bは光パワーメータに得られる光出力の変化さを示す図である。
【図13C】図13Cは光パワーメータに得られる時間軸上での出力変化を示す図である。
【図14】図14は各画素番号に対する1画素群当たりの周波数を示すグラフである。
【図15A】図15Aは本発明の第2の実施の形態においてバンドパスフィルタの中心周波数を上昇させる場合の制御方法を示す図である。
【図15B】図15Bは本発明の第2の実施の形態においてバンドパスフィルタの中心周波数を低下させる場合の制御方法を示す図である。
【図16A】図16Aは本発明の第1,第2の実施の形態による光可変フィルタ装置の中心周波数の上昇の例を示す図である。
【図16B】図16Bは本発明の第1,第2の実施の形態による光可変フィルタ装置の中心周波数の低下の例を示す図である。
【図17】図17は本発明の第1,第2の実施の形態による光可変フィルタ装置の中心周波数の上昇の例を示す図である。
【図18】図18はバンド幅の変化しない状態を示すグラフである。
【図19A】図19Aはγ=2.7の場合に制御画素群の透過率を変化させたときの中心周波数の変化と透過率との関係を示すグラフである。
【図19B】図19Bはγ=1.8の場合に制御画素群の透過率を変化させたときの中心周波数の変化と透過率との関係を示すグラフである。
【図19C】図19Cはγ=1.2の場合に制御画素群の透過率を変化させたときの中心周波数の変化と透過率との関係を示すグラフである。
【図19D】図19Dはγ=1.0の場合に制御画素群の透過率を変化させたときの中心周波数の変化と透過率との関係を示すグラフである。
【図19E】図19Eはγ=0.5の場合に制御画素群の透過率を変化させたときの中心周波数の変化と透過率との関係を示すグラフである。
【図19F】図19Fはγ=0.25の場合に制御画素群の透過率を変化させたときの中心周波数の変化と透過率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(反射型光可変フィルタ装置)
図1Aは本発明の特性制御の対象となる反射型の光可変フィルタ装置10Aの光学素子の構成を示すx軸方向から見た側面図、図1Bはそのy軸方向から見た側面図である。入射光は例えば周波数fa〜fbの光信号が多重化されたWDM信号光とする。WDM光は光ファイバ11を介してコリメートレンズ12より出射される。又コリメートレンズ13に入射した光は光ファイバ14より外部に出射される。コリメートレンズ12より出射する光はz軸方向に平行であり、周波数分散素子15に入射される。周波数分散素子15は光をその周波数に応じてxz平面上での異なった方向に分散するものである。ここで周波数分散素子15としては回折格子であってもよく、又プリズム等を用いてもよい。又回折格子とプリズムを組み合わせた構成でもよい。こうして周波数分散素子15で分散された光は集光素子であるレンズ16に与えられる。レンズ16はxz平面上で分散した光をz軸方向に平行に集光する集光素子であって、集光した光は周波数選択素子17に垂直に入射される。
【0023】
尚ここでは図1Bに最低周波数fa及び最高周波数fbの光を例示しているが、入射光は周波数fa〜fbまでの間で多数のスペクトルを有するWDM信号光であるので、xz平面に沿って展開されたWDM信号光が帯状に周波数選択素子17に加わる。周波数選択素子17は入射光を選択的に反射するものであり、その反射特性に応じて光フィルタの選択特性が決定されるが、詳細については後述する。周波数選択素子17によって反射された光は、同一の経路を通ってレンズ16に加わり、再び周波数分散素子15に加わる。周波数分散素子15は反射光を合波して元の入射光と同一方向に集束し、集束した光をコリメートレンズ13を介して光ファイバ14より出射する。ここで光ファイバ11,14とコリメートレンズ12,13は光を入射し、選択された光を出射する入出射部を構成している。
【0024】
尚この実施の形態では入射光と出射光の光軸を分離しているが、光軸を共通とし、入出射光を同一のファイバに導き、サーキュレータによって入出射光を分離して夫々の光ファイバ11,14に導くようにしてもよい。
【0025】
(透過型光可変フィルタ装置)
次に本発明の特性制御の対象となる透過型の光可変フィルタ装置について説明する。図2Aはこの透過型の光可変フィルタ装置20の光学素子の構成を示すx軸方向から見た側面図、図2Bはそのy軸方向から見た側面図である。図2Aにおいても入射光は第1の実施の形態で説明したWDM信号であり、光ファイバ21からコリメートレンズ22に入射され、平行な光ビームとして第1の周波数分散素子23に与えられる。光ファイバ21、コリメートレンズ22はWDM信号光を入射する入射部を構成している。周波数分散素子23は周波数分散素子15と同様に、回折格子やプリズムもしくは回折格子とプリズムの組み合わせにより実現することができる。周波数分散素子23は図2Bに示すように光の周波数に応じてxz平面上で異なった方向に光を出射するものである。この光はいずれもレンズ24に入射される。レンズ24はxz平面上で分散した光をz軸方向に平行に集光する第1の集光素子である。又レンズ24の光軸に垂直に周波数選択素子25が配置される。周波数選択素子25は入射光を部分的に透過するものであり、詳細については後述する。周波数選択素子25を透過した光はレンズ26に入射される。レンズ24、周波数分散素子23とレンズ26、周波数合成素子27は周波数選択素子25の中心のxy面に対して面対称である。レンズ26はxz平面上の平行な光を集光する第2の集光素子であり、周波数合成素子27は異なった方向からの周波数成分の光を合成して出射するものである。周波数合成素子27によって合成された光はコリメートレンズ28を介して光ファイバ29に与えられる。コリメートレンズ28及び光ファイバ29は、選択された周波数の光を出射する出射部を構成している。
【0026】
(周波数選択素子の構成)
次にこれらの光可変フィルタ装置に用いられる周波数選択素子17,25について説明する。入射光を周波数に応じてxz平面上で分散させ、帯状の光として周波数選択素子17,25に入射したとき、その入射領域は図3Aに示す長方形状の領域Rであるとする。そして光可変フィルタ装置10では、反射させる画素を選択することによって、任意の周波数の光を選択することができる。光可変フィルタ装置20では、透過させる画素を選択することによって、任意の周波数の光を選択することができる。周波数選択素子17,25には設定部30がドライバ31を介して接続されている。設定部30はxy平面の光を反射又は透過する画素を選択周波数に合わせて決定するものである。ドライバ31は入力されたデジタル信号を画素に印加する電圧に変換するD/A変換器を含んでいる。設定部30とドライバ31は周波数選択素子のxy方向に配列された各画素の電極を駆動することによってx軸及びy軸方向の所定の位置の画素の特性を制御する周波数選択素子駆動部を構成している。
【0027】
次に周波数選択素子17の具体例について説明する。周波数選択素子17の第1の例は、2次元の反射型LCOS(Liquid Crystal On Silicon)の液晶素子(以下、LCOS素子という)17A1とする。2次元LCOS素子17A1は各画素の背面に液晶変調ドライバを内蔵しているため、画素数を多くすることができ、例えば1000×1000の多数の格子状の画素から構成することができる。LCOS素子17A1では各周波数毎に異なる位置に光ビームが入射するので、その位置の画素を反射状態とすればその周波数の光を選択することができる。
【0028】
ここでLCOS素子17A1における変調方式の1つである位相変調方式について説明する。図4AはLCOS素子17A1を示す概略図であり、光が入射する面からz軸に沿って透明電極41,液晶42及び背面反射電極43を積層して構成されている。LCOS素子17A1は図3Aに示すように、1つの周波数に相当する位置にy軸方向に複数の画素が対応しているため、これらの複数画素について透明電極41と背面反射電極43との間に電圧を印加することによって屈折率の凹凸を形成し、回折現象を発現することができる。そして各周波数成分の回折角を夫々独立に制御し、特定周波数の入力光をそのまま入射方向に反射させたり、他の周波数成分の光を不要な光として回折させ、入射方向とは異なった方向に光を反射させることができる。そして各画素に印加する電圧をアナログ的に制御することによって、必要な画素を反射状態から非反射状態まで反射率を連続して階調制御することができる。そしてx軸方向で任意の画素を反射状態とすれば、入射光の任意の周波数の光を選択することができる。ここで各周波数成分についての反射率の制御はオンオフ制御ではなく、連続してアナログ的に制御するものとする。
【0029】
次にLCOS素子17A1の他の変調方式である強度変調方式について説明する。図4Bは強度変調方式による周波数選択方法を示す図であり、入射光の入射する面には偏光子44を配置する。偏光子44は入射光を図中○で示す特定の偏光状態にして反射型のLCOS素子17A1に入射する。この場合にもLCOS素子17A1は透明電極41,液晶42及び背面反射電極43によって構成される。LCOS素子17A1に光を入射すると、電圧の印加状態によって電極間の液晶の複屈折率差を制御することができる。強度変調方式では図3Aのy軸方向に並んでいる画素に同時に同一の電圧を印加するものとし、印加する画素の偏光状態を制御することにより反射光の偏光状態を異ならせることができる。ここで液晶分子の配向成分によって電圧を制御したときに偏光面が回転するか保持されるかが決定される。例えば電圧を印加しない場合に偏光面が保持されるとすると、図中○状態で示す光がそのまま反射することとなる。一方電圧を印加すれば偏光面が回転して反射するため、反射光は偏光子44によって遮蔽される。従って画素に加える電圧をアナログ的に制御して入射光を反射状態から非反射状態まで反射率を連続して階調制御することができる。そしてx軸方向で任意の画素を反射状態とすれば、入射光の任意の周波数の光を選択することができる。この場合も各周波数成分について反射率はアナログ的に制御するものとする。
【0030】
またこの周波数選択素子17の第2の例として、LCOS構造ではない反射型の2次元電極アレイを有する液晶素子17A2について説明する。LCOS素子の場合には画素の背面に液晶ドライバが内蔵されているが、2次元電極アレイ液晶素子17A2は液晶変調用のドライバが素子の外部に装備されている。その他の構成はLCOS素子と同様であり、前述した位相変調方式と強度変調方式を実現することができる。又画素について電圧レベルをアナログ的に変化させることによって反射率を連続して階調制御することができる。
【0031】
周波数選択素子17の第3の例として2次元のMEMS素子17A3について説明する。多数のMEMSミラーが2次元に配置されたMEMS素子は、デジタルマイクロ素子(DMD)として実用化されている。MEMSミラーのy軸方向の1列の全画素はWDM信号のある光周波数に対応させるものとする。MEMSを用いた場合も1つの周波数帯に対して複数のMEMS素子の画素を対応付けているので、1つの周波数に対応する多数の画素に印加する電圧を制御し位相変調することによって、その反射率を異ならせることができる。又図5に示すようにMEMS素子の各画素をx軸又はy軸を中心に回転させることによって強度変調を行い、各画素に印加する電圧レベルのミラーの角度を制御することができ、反射率光量を任意に設定することができる。従ってこの場合にも選択する周波数帯の光の強度レベルを階調制御することができる。
【0032】
次に周波数選択素子17の第4の例として、1次元のLCOS素子17B1について説明する。この周波数選択素子17B1は図3Bに示すようにx軸方向に多数の細長い画素が配置されたLCOS素子とし、x軸に沿って周波数に応じて分散されたWDM光が入射する。この場合も設定部32とドライバ33は周波数選択素子17のx軸方向に配列された各画素の電極を駆動することによってx軸方向の所定の位置の画素の特性を制御する周波数選択素子駆動部を構成している。LCOS素子17B1は設定部32よりドライバ33を介してを駆動される。この場合には前述した位相変調方式は使えず、強度変調方式のみで周波数を選択するものとする。
【0033】
周波数選択素子17の第5の例として、反射型の1次元電極アレイを有する液晶素子17B2を用いることができる。この場合も位相変調方式は使えず、強度変調方式のみで周波数を選択するものとする。
【0034】
更に周波数選択素子17の第6の例として、反射型の1次元MEMSミラー素子17B3を用いることができる。この場合も強度位相変調方式は使えず、強度変調方式のみで周波数を選択するものとする。
【0035】
次に第2の実施の形態の波長可変フィルタ装置で用いる透過型の周波数選択素子25について説明する。この周波数選択素子25の第1の例としては透過型の2次元LCOS素子25A1を用いて構成することができる。LCOS素子25A1においても各周波数毎に異なる位置に光ビームが入射するので、その位置の画素を透過状態とすればその光信号を選択することができる。
【0036】
ここでLCOS素子25A1における変調方式の1つである位相変調方式について説明する。図6AはLCOS素子を示す概略図であり、光が入射する面からz軸に沿って透明電極51,液晶52及び透明電極53を積層して構成されている。LCOS素子25A1は1つの周波数に相当する位置にy軸方向に複数の画素が対応しているため、これらの複数画素について透明電極51と透明電極53との間に電圧を印加することによって屈折率の凹凸を形成し、回折現象を発現することができる。そして各周波数成分の回折角を独立に制御し、特定周波数の入力光をz軸方向に直進させてそのまま透過させたり、他の周波数成分の光を不要な光として回折させ、z軸方向とは異なった方向に光を回折させることができる。このため各画素に印加する電圧を制御することによって、必要な画素を回折させずに透過状態とすることができる。ここでも各周波数成分についての透過率の制御はオンオフ制御ではなく、連続してアナログ的に制御するものとする。
【0037】
次にLCOS素子の他の変調方式である強度変調方式について説明する。図6Bは強度変調方式による波長選択方法を示す図であり、入射光の入射する面には偏光子54を配置する。偏光子54は入射光を図中○で示す特定の偏光状態にしてLCOS素子25A1に入射する。この場合にもLCOS素子は透明電極51,液晶52及び透明電極53によって構成される。LCOS素子を透過した出射光の光軸上には偏光子55を配置する。偏光子55は入射光を図中○で示す特定の偏光状態の光のみを出射するものである。LCOS素子に光を入射すると、電圧の印加状態によって電極間の液晶の複屈折率差を制御することができる。従って印加する電圧の偏光状態を独立に制御することにより透過光の偏光状態を異ならせることができる。ここで液晶分子の配向成分によって電圧を制御したときに偏光面が回転するか保持されるかが決定される。例えば電圧を印加しない場合に偏光面が保持されるとすると、図中○状態で示す光がそのまま透過することとなる。一方電圧を印加すれば偏光面が回転して透過するため、透過光は偏光子55によって遮蔽される。従って画素に加える電圧を制御して入射光を選択することができる。ここで任意の画素を透過状態とすれば、その画素に対応する周波数の光を選択することができる。この場合も各周波数成分について透過率の制御は連続してアナログ的に制御するものとする。
【0038】
またこの周波数選択素子25の第2の例として、LCOS構造ではない透過型の2次元電極アレイを有する液晶素子25A2を用いることができる。LCOS素子の場合には画素の背面に液晶ドライバが内蔵されているが、2次元電極アレイ液晶素子25A2は液晶変調用のドライバが素子の外部に装備されている。その他の構成はLCOS素子と同様であり、前述した位相変調方式と強度変調方式を実現することができる。又画素について電圧レベルをアナログ的に変化させることによって透過率を連続して階調制御することができる。
【0039】
次に周波数選択素子25の第3の例として、1次元のLCOS素子25B1について説明する。この周波数選択素子25B1は図3Bに示すようにx軸方向に多数の細長い画素が配置された透過型のLCOS素子とし、x軸に沿って周波数に応じて分散されたWDM光が入射する。この場合も設定部32とドライバ33は周波数選択素子のx軸方向に配列された各画素の電極を駆動することによってx軸方向の所定の位置の画素の特性を制御する周波数選択素子駆動部を構成しており、設定部32よりドライバ33を介してLCOS素子25B1を駆動する。この場合には前述した位相変調方式は使えず、強度変調方式のみで周波数を選択するものとする。
【0040】
周波数選択素子25の第4の例として、透過型の1次元電極アレイを有する電極アレイ液晶素子25B2を用いることができる。この場合も位相変調方式は使えず、強度変調方式のみで周波数を選択するものとする。
【0041】
(バンド幅変更)
次に本発明の第1の実施の形態による光可変フィルタ装置の周波数制御の詳細について説明する。尚、以下の説明では、反射型の光可変フィルタ装置であっても入射光の一部が周波数選択素子の各画素で反射されて出力側に戻ってくるため、これを透過率として考えて説明するものとする。又以下の説明では2次元周波数選択素子であっても同一の周波数に相当する画素、即ちxの座標が共通する全y軸に沿った画素は全てまとめて1つの画素群と考える。即ち周波数選択素子は、x軸方向に画素群P1〜Pmが配置されているものとして説明する。尚1次元の周波数選択素子については1つの画素がこの画素群に相当する。この画素群P1〜Pmは夫々個別の透過率T1〜Tmを有する。
【0042】
図7A,図7Bは横軸を周波数とし、縦軸を周波数選択素子の画素群の透過率としたグラフである。最初の状態は画素群Pi+1〜Pi+k(1<=i,k<=m)の透過率Ti+1〜Ti+kを1とし、その他の画素群の透過率を0とする。こうすれば透過率が1の周波数帯を通過するバンドパスフィルタとなる。ここでバンド幅を拡大する場合には、その両端に隣接する画素群の透過率を同時に連続して上昇させる。このように透過率を変化させる画素群を制御画素群といい、Pi,Pi+k+1を夫々第1,第2の制御画素群とする。図7Aのグラフに示すように制御画素群PiとPi+k+1の透過率Ti,Ti+k+1をアナログ的に連続して変化させる。例えば制御画素群PiとPi+k+1の透過率を0〜1まで連続して同時に上昇させれば、図8に示すようにバンド幅もこれに伴って広げることができる。図8は透過率Ti,Ti+k+1を0から1まで同時に0.25単位で上昇させたときの曲線A〜Eを示している。尚、図8は50GHzのチャンネル間幅のWDM信号に用いる光フィルタにおいて、以下の条件を満たす場合の一例である。
(1)周波数選択素子の平面上の線分散量、即ち1GHz当りの画素上の幅を2.89μm/GHzとし、
(2)光ビーム半径wを22.6μmとし、
(3)周波数選択素子上の周波数分散方向の画素幅を8.5μmとし、
(4)高周波側と低周波側の制御画素群を夫々1つとする。
この例では透過特性は曲線A〜Eに示すように、中心周波数±25GHzのバンド幅から±28GHzにまで変化する。この場合、制御画素群PiとPi+k+1とは夫々1.5GHzの帯域に相当している。このように両端の制御画素群の透過率を連続的に上昇させれば、バンド幅を連続的に広くすることができる。
【0043】
次に前述した初期状態から、バンドパスフィルタを構成する画素群Pi+1〜Pi+kのうち、両端の一対の画素群Pi+1,Pi+k(第1,第2の制御画素群)の透過率Ti+1,Ti+kを図7Bに示すように1から0まで徐々に減少させれば、バンドパスフィルタのバンド幅を縮小させることができる。
【0044】
このように所定バンド幅の高周波側と低周波側の一対の画素群の透過率を連続して同一方向に変化させることによって、バンドパスフィルタのバンド幅を広げたり縮小することができる。両側の制御画素群数はここでは夫々1つとしているが、これには限らず、複数の画素群を同時に制御することでバンドパスフィルタのフィルタのスロープ特性を変化させることができる。又パスバンドの可変幅を2画素群に相当する周波数以上にする場合には、制御画素群を順次隣接する画素にシフトさせることでパスバンドの可変幅を無制限に且つ連続して制御することが可能となる。
【0045】
さて、各制御画素群に印加される電圧に対して、透過率は直線的に変化するものではなく、非直線的に変化する。従ってこの関係をあらかじめ確認しておくことによって、透過率を正確に変化させ、選択周波数を正確に制御することができる。尚、以下では電圧によって減衰量が変化する強度変調方式により各画素の透過率を制御するものとする。
【0046】
そこで画素当たりの透過率と周波数変化量とをデータとして取得する方法について、以下に説明する。まず周波数選択素子の特定の画素群を制御画素群として選択し、制御画素群に印加する電圧値を0から最大値まで連続的に変化させていく。そしてその電圧値の変化によって得られる実際の周波数の変化量のデータを取得する。図9Aは制御画素群に相当する周波数幅が2.5GHzのときの電圧を連続的に変化させたときの周波数の変化を示すグラフであり、データとしてばらついているが、ある曲線上に近似的な曲線を想定することができる。図9Aはこうして得られたデータの一例を示しているが、いくつかの異なった画素群についてデータを取得し、平均化処理を行うようにしてもよい。
【0047】
次にこの画素群について電圧と出力レベルについてデータをとる。即ち電圧を連続的に変化させたときのその画素を透過して得られる減衰レベルATのデータを測定する。図9Bはこのグラフの一例であり、デシベル値で減衰レベルを示している。
【0048】
そして図9Aに示す電圧と周波数の関係から横軸を周波数に変換して周波数に対する減衰レベルを算出する。例えば図9Cでは周波数の変化量が0〜2.5GHzに対して減衰レベルATが−40dB〜0dB付近まで変化している。
【0049】
次に次式により減衰レベルAT(デシベル値)を透過率T(0〜1)に変換する。
T=10(AT/10)
このように減衰レベルAT(dB値)を透過率Tに変換することによって、図9Dのグラフが得られる。このような演算及び処理を行うことによって周波数の変化量と透過率との関係を示すグラフを得ることができる。
【0050】
一旦このようなグラフが得られると、このグラフを滑らかに結ぶように多項式で近似する。ここではTを透過率とし、fを周波数とすると、次の多項式
T(f)=a0+a1f+a22+a33・・・a66 ・・・(1)
のように6次の関数式を用いて近似する。図9Eは図9Dを近似曲線で示したグラフの一例である。ここで各係数a0〜a6は最小二乗法等によって求める定数である。尚近似曲線は必ずしも6次関数に限定されるものではなく、2次以上の任意の次数の曲線であってもよい。こうして得られた関数は1つのLCOSのどの部分の制御画素群についても適用することができる。
【0051】
(光可変フィルタアレイ装置の校正)
次に各画素群に照射され、その画素群で制御可能な周波数の幅は一定ではないので、あらかじめ校正しておく必要がある。図10は周波数に対応する周波数選択素子の画素位置及び特性の決定のための校正システムを示すブロック図である。本図において周波数可変光源61は、光可変フィルタ装置に用いられる周波数帯域の周波数faから周波数fbまで単一周波数の光を連続的に変化させて出射することができる周波数走査型の光源である。この実施の形態では、外部からの信号に基づいて一定の速度で周波数を走査して周波数走査光を出力するものである。周波数可変光源61からの出力は偏波スクランブラ62を介して前述した光可変フィルタ装置10,20に入射光として出力される。そして光可変フィルタ装置10,20からの出射光はパワーメータ63に入射される。パワーメータ63は各チャンネル毎に出力を検出してその出力レベルのデータを制御装置64に出力する。制御装置64は、周波数可変光源61より出力している周波数と、光可変フィルタ装置で入力光が出力されるように設定している画素、及びパワーメータ63で検出される出力レベルに基づいて、画素と周波数との対応及び出力特性を演算し、その結果をテーブルメモリ65に保持するものである。
【0052】
次に各画素のx座標で表される周波数を確定する校正方法の詳細について説明する。図3A,図3Bに示すようにx軸方向は周波数分散方向であるが、周波数選択素子17,25上では周波数分散方向の各画素が対応する周波数幅を確定する必要がある。本実施の形態では、この処理を図11に示すフローチャートに基づいて行う。尚、以下では光可変フィルタ装置10において、強度変調されるLCOS素子17A1の校正を行うものとする。図12に示すLCOS素子17A1の各画素の座標を(x1,y1)から(x1920,y1000)とする。まず制御装置64は、ステップS11においてx座標が例えばx100である全てのy軸に平行な一列の画素、x座標がx300である全てのy軸に平行な一列の画素のように、ハッチングで示す複数本のライン状の画素を反射状態とする。そうすればその位置の画素に光が入射したときに出力側に光が戻ってくるため、反射型の光可変フィルタ装置10としては挿入損失が小さくなる。ここでx座標の確定を容易にするために、これらのラインの一部、例えば中央のx座標xcのラインの反射率を他よりも小さくしておく。
【0053】
そしてステップS12において周波数可変光源61より図13Aに示すように使用する周波数帯の範囲で周波数を走査した光を出力する。こうすれば偏波スクランブラ62を介して光可変フィルタ装置10の光ファイバ11より周波数走査光を入力する。図13Aに示すように光ファイバより周波数走査された光を入射すると、周波数分散素子15を介して光が周波数に応じてLCOS素子17A1上を走査することとなる。図12の入射領域R3は1回の走査分の光の軌跡を示している。こうすれば反射状態となっている画素に入射した光は反射して光ファイバ14側に出力が得られる。図13Bはこの出力の軌跡を示している。そして光ファイバ14からの出力をパワーメータ63によって検出する。
【0054】
次にステップS13においてパワーメータ63によって出力のピークとそのレベルを検出し、ステップS14において検出した出力ピークと周波数との関係から周波数と画素との対応関係を確定する。例えば図13B,図13Cに示すように他のピークに比べてレベルが低い中央のピーク出力の周波数fcは、他より反射率を低くした中央のラインからの反射光と考えられる。従ってxcの座標は周波数fcに対応するものとする。そして周波数fcのピーク値から所定の減衰量(例えば−3dB)までの範囲をこのx座標の画素群が受け持つ周波数範囲とする。同様にその前後のピークの周波数fc-1,fc+1と反射状態としたx座標、更にその前後に隣接するピークの周波数fc-2,fc+2と反射状態としたx座標・・・のように順次各反射状態のラインに対応した周波数とその画素群の周波数幅を全て確定する。ステップS15ではこうして得られたx座標に対応する周波数を、制御装置64よりテーブルメモリ65に書き込む。そしてステップS16では通常状態とするx座標に対応する周波数幅の校正が終了したかどうかを制御し、終了していなければステップS17によりx座標を変更して同様の処理を繰り返す。これによってLCOS素子17A1の画素のx座標とその周波数幅の関係を確定することができる。図14はこうして得られた画素番号と周波数幅の関係を示すグラフである。
【0055】
前述した式(1)に示す関数は1つのLCOSのどの部分の制御画素群についても適用することができる。即ちある制御画素群について1画素群の幅が図14に示すように変化するものとしても実際に設定される1画素当たりの周波数に重みをつけることで取得した式(1)の値をどの位置でも使用することができる。例えば図14では画素群P2及びP10では周波数幅は2.5GHzであり、画素群P13では2GHz、画素群P8では3GHzとなっている。即ちf2,f10は0〜2.5GHz,f13は0〜2GHz、f8は0〜3GHzとする。ここで図9A〜図9Eにおいて式(1)の関数を画素番号P2から得たとすると、他の画素群、例えば画素群P13に対しては次式
13=2.0/2.5×f2
を用いて正規化した周波数f13を用いることによって、前述した式(1)の関数を適用することができる。
【0056】
同様にして3.0GHzの周波数幅を持つ画素群P8については次式
8=3.0/2.5・f2
を用いて正規化した周波数f8を用いることによって、前述した式(1)の関数を適用することができる。
【0057】
(中心周波数シフト)
次に第2の実施の形態によるバンドパスフィルタの中心周波数をシフトする制御方法について説明する。まず画素群Pi+1〜Pi+kの透過率Ti+1〜Ti+kが1、他は全て0とし、画素群Pi+1〜Pi+kに入射する光周波数の範囲のバンドパスフィルタを構成しているものとする。ここでパスバンドを高周波側にシフトする場合には、図15Aに示すように最も高い周波数の画素群Pi+kに隣接する画素群Pi+k+1(第1の制御画素群)の透過率を徐々に上昇させると共に、最も低い周波数の画素群Pi+1(第2の制御画素群)の透過率を下げる。このとき制御画素群Pi+1とPi+k+1の透過率の合計が1となるように連続的に変化させる。こうすれば制御画素群Pi+1の透過率Ti+1が1から0まで0.25単位で低下するときの曲線をA〜Eとすると、図16A,図17に示すようにバンドパスフィルタの中心周波数を連続的に高くすることができる。このとき制御画素群の透過率変化量の合計を0としておけば、図18に示すようにバンド幅が変化することはない。
【0058】
次に前述した初期状態からフィルタの中心周波数を低下させる制御方法について説明する。この場合には、変化方向にある低周波側の画素群Pi+1(第1の制御画素群)に隣接する画素群Piの透過率Tiを上昇させ、高周波側の画素群Pi+k(第2の制御画素群)の透過率Ti+kを低下させるように連続的に制御する。ここで図15Bは2つの両側の制御画素群Pi,Pi+kの透過率の合計が1という条件を保ちつつ、変化させている状態を示す。こうすれば制御画素群Piの透過率が0から1まで0.25単位で上昇するときの曲線をA〜Eとすると、図16Bに示すように制御画素群の透過率の変化に対応して中心周波数が低下するが、フィルタのバンド幅を一定にしたままで周波数を低周波側にシフトさせることができる。
【0059】
上記のいずれの場合にも中心周波数の可変幅が1画素当りの周波数を超える場合、制御画素群を順次隣接する画素群にシフトさせることで中心周波数の可変幅を無制限に且つ連続して制御することができる。
【0060】
次にこの制御方法が有効な光学設計条件について説明する。本実施の形態では各画素群の透過率の中間値をフィルタ形状に反映させているので、制御画素群の各画素の周波数分散方向の幅と入力ビーム径によってこのような連続した特性の変化が可能な条件が定まる。即ち制御画素群の幅がWDM信号光の各周波数成分の入力ビーム径に比べて大きければ、制御画素群に設計した透過率がフィルタ波形にそのまま反映され歪みが発生することが想定される。ここで周波数選択素子において周波数分散方向の画素の幅をd、光強度がピークの1/e2までの範囲を各周波数成分のビーム半径wとする。このとき画素の幅dとビーム半径wとで定義されるパラメータγを導入する。
γ=w/d
【0061】
図19A〜図19Fは前述した条件下でバンド幅を対応するため、又は中心周波数を下げるため低周波側の制御画素群の透過率を0.25単位で0〜0.75まで変化させたときの透過周波数と透過率の関係を示している。ここでは図19Aはγ=2.7,図19Bはγ=1.8,図19Cはγ=1.2,図19Dはγ=1.0,図19Eはγ=0.5,図19Fはγ=0.25の場合である。これらの図から知られるように、γが1.0以上では波形の歪みは生じないが、γが1未満の場合、即ちγが0.5や0.25では、透過率の応答がフィルタ波形に反映され歪みが生じている。このためγが1以上、即ち画素の幅dは入力ビーム半径wよりも小さいことが好ましい。
【0062】
尚前述した光可変フィルタ装置は、入射光をWDM信号光としているが、入射光はWDM信号光に限られるものでない。即ち本発明は任意の光をフィルタリングする種々の用途、例えばチューナブルレーザや光分光分析などの分野にも使用することができる。
【0063】
又この実施の形態においては式(1)で示される関数式を記憶させておき、関数式に基づいて周波数選択素子を駆動するようにしているが、透過率と周波数変動量の関係を示すテーブルをあらかじめメモリに保持しておき、これに基づいて周波数選択素子を駆動するようにしてもよい。この場合にテーブルは所定の周波数のステップ毎にデータを記憶しておき、その間はスプライン補間した値を用いて周波数選択素子の電圧レベルを制御してもよく、又スプライン補間した値をそのままテーブルとして保持しておいてもよい。
【0064】
又この実施の形態では周波数選択素子の駆動電圧を強度変調によって変化させるものについて説明しているが、屈折率の凹凸によって回折現象を発現させて反射率や透過率を制御する場合には、各画素に印加するのこぎり波状の電圧の周期を一定としつつピーク値を変化させることによって強度変調の場合と同様の処理を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上詳細に説明したように本発明によれば、周波数選択素子の反射特性や透過特性を画素単位で変更することによって、入射光の周波数選択特性を変化させることができる。これにより光をWDM光のアドドロップ機能を有するノードのRODAM機能を有する主要構成要素や光分光装置の構成要素として用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
11,14,21,29 光ファイバ
12,13,22,28 コリメートレンズ
16,24,26 レンズ
15,23 周波数分散素子
17,25 周波数選択素子
17A1,25A1 2次元LCOS素子
17A1,25A2 2次元電極アレイ液晶素子
17A3 2次元MEMS素子
17B1,25B1 1次元LCOS素子
17B1,25B2 1次元電極アレイ液晶素子
17B3 1次元MEMS素子
27 周波数合成素子
30,32 設定部
31,33 ドライバ
41,51,53 透明電極
42,52 液晶
43 反射電極
44,54,55 偏光子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数に応じて空間的に分散させた光が入射し、周波数分散方向に配列された多数の画素を有し、各画素の特性を変化させることにより所望の周波数選択特性を得る周波数選択素子を有する光可変フィルタ装置の特性制御方法であって、
前記周波数選択素子の特定画素の駆動電圧を連続的に変化させ、その画素を通過する周波数の変化量を取得し、
前記周波数選択素子の特定画素の駆動電圧値を連続的に変化させ、その画素を通過する光の減衰値を取得し、
得られた駆動電圧と周波数特性及び駆動電圧と減衰量の関係から透過率と周波数の関係を示す2次以上6次以下の近似曲線を示す関数を算出し、
前記関数に基づいて前記周波数選択素子の制御画素を駆動することによって特性を制御する光可変フィルタ装置の特性制御方法。
【請求項2】
前記光可変フィルタ装置は、
光を入射し、入射光のうち選択された周波数の光を出射する入出射部と、
前記入出射部に入射した光をその周波数に応じて空間的に分散させると共に、反射光を合波する周波数分散素子と、
前記周波数分散素子によって分散した光を2次元平面に平行に集光する集光素子と、
前記集光素子によって集光された光を受光する位置に配置され、少なくとも周波数分散方向に配列された多数の画素を有し、各画素の反射特性を変化させることにより所望の周波数選択特性を得る周波数選択素子と、
前記周波数選択素子の各画素の電極を駆動することによって入射光の周波数毎に透過特性を階調制御する周波数選択素子駆動部と、を具備する光可変フィルタ装置である請求項1記載の光可変フィルタ装置の特性制御方法。
【請求項3】
前記光可変フィルタ装置は、
光を入射する入射部と、
前記入射部より入射した光をその周波数に応じて空間的に分散させる周波数分散素子と、
前記周波数分散素子によって分散した光を2次元平面上に集光する第1の集光素子と、
前記第1の集光素子によって集光された光を受光する位置に配置され、少なくとも周波数分散方向に配列された多数の画素を有し、各画素の透過特性を変化させることにより任意の周波数の光を選択する周波数選択素子と、
前記周波数選択素子の各画素の電極を駆動することによって入射光の周波数毎に光透過特性を階調制御する周波数選択素子駆動部と、
前記周波数選択素子を透過した各周波数の光を集光する第2の集光素子と、
前記第2の集光素子によって集光された分散光を合成する周波数合成素子と、
前記周波数合成素子によって合成された光を出射する出射部と、を具備する光可変フィルタ装置である請求項1記載の光可変フィルタ装置の特性制御方法。
【請求項4】
前記算出した関数で示される透過率と周波数変動量の関係を示すテーブルをメモリに保持し、前記テーブルから読出した必要な透過率の周波数変動量に相当する駆動電圧を前記周波数選択素子に設定することによって、前記周波数選択素子を制御する請求項1記載の光可変フィルタ装置の特性制御方法。
【請求項5】
前記算出した関数で示される透過率と周波数変動量の関係を示すテーブルをメモリに保持し、前記テーブルから読出した必要な透過率の周波数変動量からスプライン補間によって求められた駆動電圧を前記周波数選択素子に設定することによって、前記周波数選択素子を制御する請求項1記載の光可変フィルタ装置の特性制御方法。
【請求項6】
前記周波数選択素子は、周波数分散方向の画素幅を入射光の周波数分散方向のビーム半径より小さくした請求項2又は3記載の光可変フィルタ装置の特性制御方法。
【請求項7】
前記周波数選択素子は、少なくとも1次元に配列された多数の画素を有するLCOS素子であり、
前記周波数選択素子駆動部は、周波数選択特性に応じて各画素に印加する電圧を制御するものである請求項2又は3記載の光可変フィルタ装置の特性制御方法。
【請求項8】
前記周波数選択素子は、少なくとも1次元に配列された多数の画素を有する液晶素子であり、
前記周波数選択素子駆動部は、周波数選択特性に応じて各画素に印加する電圧を制御するものである請求項2又は3記載の光可変フィルタ装置の特性制御方法。
【請求項9】
前記周波数選択素子は、少なくとも1次元に配列された多数の画素を有するMEMS素子であり、
前記周波数選択素子駆動部は、周波数選択特性に応じて各画素に印加する電圧を制御するものである請求項2記載の光可変フィルタ装置の特性制御方法。
【請求項10】
入射光の各周波数について、各周波数に対応する前記周波数選択素子の少なくとも1つの画素から成る画素群を介して出射される入出射光の比率を当該画素群の透過率とするとき、所望の連続した画素群を光透過状態とし、
透過周波数範囲の画素群のうち端部の画素群に隣接する少なくとも1つの第1の制御画素群、及び前記通過周波数帯域の他方の端部の画素群に隣接する少なくとも1つの第2の制御画素群の透過率を同時に徐々に上昇させることによってバンド幅を拡大する請求項2又は3記載の光可変フィルタ装置のフィルタ特性制御方法。
【請求項11】
入射光の各周波数について、各周波数に対応する前記周波数選択素子の少なくとも1つの画素から成る画素群を介して出射される入出射光の比率を当該画素群の透過率とするとき、所望の連続した画素群を光透過状態とし、
前記透過周波数範囲の画素群のうち端部の少なくとも1つの第1の制御画素群、及び前記通過周波数帯域の他方の端部の少なくとも1つの第2の制御画素群の透過率を同時に徐々に低下させることによってバンド幅を縮小する請求項2又は3記載の光可変フィルタ装置のフィルタ特性制御方法。
【請求項12】
入射光の各周波数について、各周波数に対応する前記周波数選択素子の少なくとも1つの画素から成る画素群を介して出射される入出射光の比率を当該画素群の透過率とするとき、所望の連続した画素群を光透過状態とし、
透過周波数範囲の画素群のうち周波数変化の方向の端部の画素群に隣接する少なくとも1つの第1の制御画素群の光透過率を徐々に上昇させ、
前記透過周波数範囲の他方の端部の画素群の少なくとも1つの第2の制御画素群の透過率を、徐々に減少させることによって透過周波数範囲の中心周波数を周波数軸に沿って変更する請求項2又は3記載の光可変フィルタ装置のフィルタ特性制御方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図19E】
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【図19F】
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【公開番号】特開2013−83802(P2013−83802A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223772(P2011−223772)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(591102693)サンテック株式会社 (57)
【Fターム(参考)】