光合成サンプル計測容器及び容器ホルダ
【課題】培養効率を向上させると共に、計測精度も向上できる光合成サンプル計測容器を提供する。
【解決手段】培養時に底になる下壁部3と、計測時に底になる第1の側壁部7と、計測のための励起光が透過する透過窓4と、光合成サンプルC及び希釈液Wを注入するための注入口17と、を備え、第1の側壁部7よりも下壁部3の面積の方が大きいことを特徴とする収容容器1Aである。この収容容器1Aによれば、培養時には、下壁部3が底になり、希釈液Wによって希釈された光合成サンプルCは、下壁部3に沿って薄く広がり、光合成サンプルCの培養に伴うガス交換が促進されて培養効率が向上する。また、計測時には、第1の側壁部7が底になるために、光合成サンプルCは、第1の側壁部7の上で嵩が高くなり計測精度が向上する。
【解決手段】培養時に底になる下壁部3と、計測時に底になる第1の側壁部7と、計測のための励起光が透過する透過窓4と、光合成サンプルC及び希釈液Wを注入するための注入口17と、を備え、第1の側壁部7よりも下壁部3の面積の方が大きいことを特徴とする収容容器1Aである。この収容容器1Aによれば、培養時には、下壁部3が底になり、希釈液Wによって希釈された光合成サンプルCは、下壁部3に沿って薄く広がり、光合成サンプルCの培養に伴うガス交換が促進されて培養効率が向上する。また、計測時には、第1の側壁部7が底になるために、光合成サンプルCは、第1の側壁部7の上で嵩が高くなり計測精度が向上する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光合成サンプルを収容し、収容した光合成サンプルを計測するために用いられる光合成サンプル計測容器及び光合成サンプル計測容器を保持するための容器ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
光合成サンプル、例えば、光合成機能を有する藻類や植物細胞などの吸光度を計測装置で計測する場合には、通常、石英製の計測用セルが用いられる。このような計測においては、あらかじめ培養容器中で培養された光合成サンプルを、測定に際して計測用セルに移し替える必要がある。これに対して、特許文献1に記載の試料セルによれば、培養と計測とを一つの容器で兼用できるため、培養した試料を他のセルに移し替える手間は発生しない。
【特許文献1】特開平7−147968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、引用文献1に記載の試料セルでは、培養時と計測時とを一つのセルで兼用できるものの、培養効率を優先すると、計測精度が低下し易く、逆に、計測精度を優先すると培養効率が低下し易くなる。また、引用文献1に記載の試料セルでは、試料と大気とが接する界面を十分に確保できないため、培養効率は必ずしも高くない。
【0004】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、培養効率を向上させると共に、計測精度も向上させることができる光合成サンプル容器及び容器ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、光合成サンプルを収容し、収容した前記光合成サンプルを計測するために用いられる光合成サンプル計測容器において、培養時に底になる第1の壁部と、計測時に底になる第2の壁部と、前記光合成サンプルへ入射される入射光を透過する光入射窓を有する第3の壁部と、光入射窓と対向する位置に光合成サンプルを伝播した入射光を透過する光出射窓を有する第4の壁部と、光合成サンプルを注入するための注入口と、を備え、第2の壁部よりも第1の壁部の面積の方が大きいことを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、培養時には、第2の壁部に比べて面積が大きい第1の壁部が底になり、光合成サンプルは、第1の壁部に沿って薄く広がる。従って、培養時に光合成サンプルが大気に接触する表面積が大きくなり、培養液のガス交換が促進されて培養効率が向上する。また、計測時には、第1の壁部に比べて面積が小さい第2の壁部が底になるために、光合成サンプルは、容器内において第2の壁部の上で嵩が高くなる。従って、光合成サンプル測定容器内において、光入射窓と光出射窓とを介した吸光度測定に十分に足る培養液の嵩を確保できるため、計測精度が向上する。その結果として、培養効率を向上させると共に、計測精度も向上させることができる。
【0007】
さらに、注入口を覆う通気性を有する蓋部を備えると好適である。通気性を有する蓋部により、雑菌などの進入を防ぎながら通気性を維持することができるため、培養効率をさらに向上させることが可能となる。
【0008】
光合成サンプル計測容器には、光合成サンプルを保持する保持部が容器内部に設けられていると好適である。光合成サンプルを容器内部に保持する場合に、光合成サンプルを所定位置に留めることが可能となるため、光合成サンプルに希釈液や培養液といった溶液を注入する際の自動化に有効である。
【0009】
保持部は、第1の壁部の内側に設けられていると好適である。第1の壁部は培養時に底になるため、光合成サンプルと、容器内に注入される希釈液等の溶液とを確実に混合することが可能となる。
【0010】
さらに、保持部内に光合成サンプルがあらかじめ保持されていると好適である。保持部内に光合成サンプルを集約することで、光合成サンプルの分散による乾燥などを防ぎ、また光合成サンプルの劣化を防止できる。
【0011】
さらに、注入口は、第1の壁部と対向する壁部に設けられており、保持部は、注入口に対面する位置に配置されていると好適である。分注器などで注入口から注入した溶液が光合成サンプルに直に接触して混合されるため、光合成サンプルと溶液との混合ロスを低減できるとともに、それらの混合が速やかに行われる。
【0012】
さらに、保持部は、注入される溶液を受ける溶液受け部と、溶液受け部に滴下された溶液の流れ方向を案内するガイド部とを有すると好適である。溶液を所定方向に案内しながら光合成サンプルと溶液とを効率よく混合できる。
【0013】
さらに、保持部は、多数の孔が形成された蓋部を有すると好適である。保持部から光合成サンプルが容器内部に流出するのを防ぐと共に、例えば、溶液を注入口から注入した際に、保持部内の光合成サンプルが飛び散るのを防止する。
【0014】
保持部は、光合成サンプル容器を為す壁部の他の部分に比べて熱伝導率が高いと好適である。この構成により、培養時における光合成サンプルの温調が、熱伝導部材を介して効率的に行われる。また、光合成サンプルが凍結された状態で保持部に保持される場合には、光合成サンプルを効率的に凍結、解凍することができる。
【0015】
また、上記の光合成サンプル計測容器を保持する容器ホルダであって、光合成サンプル計測容器の挿入口と、光合成サンプルを励起する励起光が通過する励起光入射口と、励起光の入射によって光合成サンプルから生じる遅延発光が通過する遅延発光出射口と、光合成サンプルに入射される入射光が通過する光入射口と、光合成サンプルを伝播した入射光が出射される光出射口と、を備えることを特徴とする。
【0016】
光合成サンプル計測容器は、計測時に容器ホルダの挿入口から挿入され、容器ホルダ内で保持される。容器ホルダは、励起光入射口、遅延発光出射口、光入射口及び光出射口を備えるので、容器ホルダは、光合成サンプルを計測可能な状態のまま、光合成サンプル計測容器を安定した状態で保持する。
【0017】
さらに、容器ホルダは、遅延発光出射口に対向する内壁面が光反射部材により形成されると好適である。このような構成によれば、光反射部材により反射された遅延発光も遅延発光出射口から出射される。従って、遅延発光のような微弱光の計測において、検出可能な遅延発光の光量が増大するため、S/Nを向上できる。
【0018】
さらに、容器ホルダは、光合成サンプル計測容器を位置決めする位置決め部を更に備えると好適である。光合成サンプル計測容器を容器ホルダの所定位置に精度良く設置できるため、計測のための光路を再現性良く定めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、培養効率を向上させると共に、計測精度も向上させた光合成サンプル計測容器及び容器ホルダを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1及び図2は、光合成サンプルを収容する光合成サンプル計測容器の斜視図である。図1に示されるように、光合成サンプル計測容器1A内の光合成サンプルCは、例えば、希釈液Wによって希釈された状態で培養され、所定時間の経過後に励起光L1を照射される(図2参照)。励起光L1の照射によって光合成サンプルCから遅延発光(「遅延蛍光」ともいう)L2が発生し、遅延発光L2の経時変化を計測することで、光合成サンプルの状態を評価できる。まず、この評価を利用した環境要因の評価について説明する。
【0022】
(環境要因の評価)
藻類などの光合成サンプルCに励起光L1を照射すると、光合成サンプルCは光合成代謝を行い、細胞を生長させる。光合成代謝では、光合成色素により吸収された光エネルギーが複数の化学反応により伝達され、細胞生長に必要なエネルギーに変換される。その過程で酵素発生、光−化学エネルギー変換、及びCO2吸収等の遅延発光のエネルギー源となる反応が順次発生する。これらの反応よりフォトンが異なるタイミングで発生(発光)し、それらの発光の和が光合成サンプル全体としての微弱な遅延発光L2として、計測される。
【0023】
有害な環境要因が光合成サンプルに作用すると細胞内の代謝が変化し、遅延発光の発光量の時間変化が、環境要因が作用しない場合と比較して異なるものとなる。さらに、遅延発光に対する影響は、環境要因ごとに異なる。すなわち、遅延発光の経時変化を、それぞれ比較することにより、環境要因それぞれが光合成サンプルCに及ぼす影響を評価できる。
【0024】
(収容容器)
光合成サンプルを収容する収容容器(光合成サンプル計測容器)1Aは、透明樹脂製で略直方体形状である。収容容器1Aは、光合成サンプルCの培養時(図1参照)に、すなわち棚や机などの載置台に寝かせた時に底になる平坦な下壁部3(第1の壁部)と、下壁部3に対向する平坦な上壁部5とを備える。下壁部3及び上壁部5は、共に透明であり、下壁部3と上壁部5とは、全面にわたって励起光や遅延発光が透過する透過窓4,6になっている。
【0025】
さらに、収容容器1Aは、下壁部3及び上壁部5を接続するようにして四面を取り囲む第1の側壁部7(第2の壁部)、第2の側壁部9、第3の側壁部11(第3の壁部)及び第4の側壁部13(第4の壁部)を有する。第1の側壁部7及び第2の側壁部9は互いに対向し、第3の側壁部11及び第4の側壁部13は互いに対向して配置されている。第1の側壁部7は平坦であり、計測時に、すなわち光計測装置(図示省略)の試料設置台にセットされた時に底になる。また、下壁部3は、第1の側壁部7に比べて、好ましくは面積が5倍以上大きい。
【0026】
図1及び図3に示されるように、下壁部3の内側には、環状に突き出た保持部15が設けられている。保持部15内には、濃縮された光合成サンプルC(図3参照)が貯留されている。保持部15内に予め光合成サンプルCを備え付けておくと、光合成サンプルC付きの収容容器1Aを取得した計測者にとっては、光合成サンプルCを収容容器内に投入する手間が減る。さらに、生育条件や分量などを予め規格化した光合成サンプルCを備え付けておくことで、光合成サンプルの濃度のバラツキを抑制できるため、計測の精度を高めることができる。
【0027】
下壁部3に対向する上壁部5には、円形の注入口17が形成されている。さらに、注入口17は、保持部15の真上になるように、保持部15に対面する位置に形成されている。規格化された光合成サンプルCは、注入口17から保持部15に投入され、冷凍保存される。また、光合成サンプルCを培養する際には、図4に示されるように、pH調整するための水溶液や栄養塩類を含む培養液などからなる希釈液Wが、ピペットチップ18などによって注入口17から滴下される。
【0028】
上記したように、規格化された光合成サンプルCは、保持部15によって所定位置に保持されている。従って、希釈液Wを光合成サンプルCに注入する際に、注入の都度、光合成サンプルCの位置を捜して狙いを定めるような煩わしさが減り、同じ動作で希釈液Wの注入を行える。その結果、光合成サンプルCの希釈を自動化する場合にも有効である。さらに、規格化された光合成サンプルCは、保持部15内の狭い領域で保持されるため、光合成サンプルが収容セル1A内で分散して乾燥してしまうことを防止でき、乾燥による光合成サンプルCの劣化を防止できる。特に、保持部15を有することによって、規格化された光合成サンプルCを予め保持させ易くなり、培養や計測の効率化が向上される。
【0029】
さらに、規格化された光合成サンプルCを保持部15に分注して保存する場合、光合成サンプルCの劣化を抑えるために、凍結して保存することが好ましい。また、光合成サンプルCを培養する際には、光合成サンプルCを解凍する必要がある。光合成サンプルCは保持部15に保持されているため、冷却または加温ポイントを保持部15に設定することにより、効率よく光合成サンプルCの冷凍及び解凍が可能になる。
【0030】
また、注入口17は、培養時に保持部15の真上となる(図3及び図4参照)。従って、光合成サンプルCを希釈液Wで希釈する場合に、光合成サンプルCは、滴下された希釈液Wに直接的に接して混合され、希釈液Wのロスを少なくすることができるとともに、混合を迅速に行うことが可能となる。
【0031】
また、図1に示されるように、光合成サンプルCを希釈した後で、上壁部5には、注入口17を遮蔽する円形の通気性を有する蓋(蓋部材)21が貼り付けられる。通気性を有する蓋部材21によって注入口17を遮蔽することにより、雑菌などの進入を防ぎながら通気性を維持することができる。通気性を有する蓋部材としては、メンブレンやフィルターなどが好適に使用される。また蓋部材は、撥水性を有することが好ましい。
【0032】
第3の側壁部11には、光合成サンプルCに照射される入射光L3が入射する入射窓23が設けられており、第4の側壁部13には、出射光L4を出射する出射窓24が設けられている。入射窓23と出射窓24とは対面するように配置されている。また、光合成サンプルCの吸光度は、入射窓23と出射窓24とを介して計測されるため、入射窓23及び出射窓24は、第2の側壁部9側よりも、計測時に底となる第1の側壁部7(第2の壁部)側、すなわち、計測時に底となる第1の側壁部7(第2の壁部)に近接して形成される。入射光L3は、吸光度を測定するための光であり、入射光が通過する箇所には、透明度、平面度及び平行度を得るために特別な処理(鏡面仕上げなど)が施される。収容セル1Aの全面にわたって、このような特別な処理を施すのはコストアップを招来するため、透過光L3が照射される位置に対応させて特別な処理が施された入射窓23と出射窓24とを設けている。
【0033】
(収容セル保持具)
図5に示されるように、収容容器1Aは、ケース状の収容容器保持具(容器ホルダ)2Aに挿入されて光計測装置の試料設置台(図示せず)にセットされる。収容容器保持具2Aは、収容容器1Aに対応した直方体形状であり、上面が開放されて収容容器1Aの挿入口25が形成されている。収容容器1Aは、第1の側壁部7が底になるように立てた状態で挿入口25に挿入され、第1の側壁部7は収容容器保持具2Aの底面26に当接する。収容容器保持具2Aには、収容容器1Aの入射窓23を露出させる光入射口27と、収容容器1Aの出射窓24を露出させる光出射口29とが形成されている。さらに、収容容器保持具2Aには、収容容器1Aの下壁部3の一部を露出させる励起光入射口31と、上壁部5の一部を露出させる遅延発光出射口33とが形成されている。
【0034】
収容容器1Aに向けて照射された励起光L1は、励起光入射口31及び下壁部3を通過して光合成サンプルCに到達し、光合成サンプルCを励起する。励起光L1の照射によって生じた遅延発光L2が、遅延発光出射口33を介して計測される。また、収容容器1Aに向けて照射された入射光L3は、光入射口27及び入射窓23を介して収容容器1A内に入射し、光合成サンプルCを透過した出射光L4は、出射窓24及び光出射口29を介して出射される。出射光L4の計測によって吸光度が測定される。
【0035】
培養時(図1参照)において収容容器1Aは、第1の側壁部7に比べて面積が大きい下壁部3が底になり、希釈液Wによって希釈された光合成サンプルCは、下壁部3に沿って薄く広がる。従って、培養時に光合成サンプルCが空気に接触する表面積が大きくなり、光合成サンプルCの生長に伴うガス交換が促進されて培養効率が向上する。また、計測時(図2参照)において収容容器1Aは、収容容器保持具2Aに挿入され、下壁部3に比べて面積が小さい第1の側壁部7が底になる。従って、希釈液Wによって希釈された光合成サンプルCは、第1の側壁部7の上で嵩が高くなると共に厚くなる。従って、遅延発光L2や透過光L4の計測精度は高くなり、計測効率が向上する。その結果として、培養時の効率を向上させると共に、計測時の効率も向上させることができる。
【0036】
また、収容容器1Aは、上記したように、収容容器保持具2Aの挿入口25に挿入され、収容容器保持具2A内で保持される。収容容器保持具2Aは、励起光入射口31、遅延発光出射口33、光入射口27及び光出射口29を備えるので、収容容器1Aは、光合成サンプルCの計測が可能な状態のまま、収容容器保持具2Aを安定した状態で保持する。
【0037】
(第2実施形態)
図6〜図8を参照して本発明の第2実施形態について説明する。図6は、第2実施形態に係る収容容器の断面図である。図7は、図6のVII−VII線に沿った断面図であり、図8は、図6のVIII−VIII線に沿った断面図である。なお、第1実施形態に係る収容容器1Aと同一の要素及び部材については、同一の符号を記して説明を省略する。
【0038】
収容容器1Bの下壁部35の内側には、規格化された光合成サンプルCを保持する保持部37が、下壁部35と一体に形成されている。保持部37は楕円環状の周壁部38と、周壁部38の内側に形成された凹状の湾曲部39とからなる。周壁部38の長手方向は、下壁部35の長手方向に一致している。また、湾曲部39は、希釈液を受けるための溶液受け部41と、希釈液Wの流れを案内するガイド部43とを有する。溶液受け部41は、第2の側壁部9に近い側に配置されて最も深くなっており、ガイド部43は、第1の側壁部7に近い側に配置された緩やかに傾斜しており、溶液受け部41から遠い側が近い側に比べて浅くなっている。ガイド部43は、溶液受け部41で受けた希釈液Wを第1の側壁部7側に案内する。規格化された光合成サンプルCは、溶液受け部41上に載せられており、溶液受け部41に滴下された希釈液Wは、光合成サンプルCに接触した後に、ガイド部43によって流れ方向を案内されながら流動し、効率良く混合される。
【0039】
(第3実施形態)
図9を参照して本発明の第3実施形態について説明する。図9は、第3実施形態に係る収容容器1Cの断面図である。なお、第1実施形態に係る収容容器1Aと同一の要素及び部材については、同一の符号を記して説明を省略する。
【0040】
収容容器1Cの下壁部3の保持部15には、保持部15の内部を覆うドーム状の蓋部45が設けられている。蓋部45には多数の孔47が形成されている。保持部15を蓋部45で覆うことにより、保持部15から光合成サンプルが流出するのを防ぐと共に、例えば、希釈液Wを注入口から注入した際に、保持部15内の光合成サンプルCが飛び散るのを防止する。
【0041】
(第4実施形態)
図10を参照して本発明の第4実施形態について説明する。図10は、第4実施形態に係る収容容器1Dの断面図である。なお、第1実施形態に係る収容容器1Aと同一の要素及び部材については、同一の符号を記して説明を省略する。
【0042】
収容容器1Dの下壁部51には、筒状の嵌合口53が形成されており、嵌合口53内に有底筒状の保持部55が嵌め込まれて接着されている。保持部55を除く下壁部51の他の部分は樹脂製であり、収容容器1Dを形成するこの他の部分に比べて熱伝導効率の高いアルミや銅などによって保持部55が形成されている。保持部55は、熱伝導効率が下壁部51の中でも比較的高いので、効果的に光合成サンプルCを適温に維持することが容易になり、特に、光合成サンプルCの培養時の温調や、冷凍や解凍の際の冷却や加温に有効である。
【0043】
(第5実施形態)
図11を参照して本発明の第5実施形態について説明する。図11は、第5実施形態に係る収容容器保持具2Bの斜視図である。なお、第1実施形態に係る収容容器保持具2Aと同一の要素及び部材については、同一の符号を記して説明を省略する。
【0044】
図11に示されるように、収容容器保持具2Bは、収容容器1Aに対応した略直方体形状であり、上面には収容容器1Aが挿入される挿入口57が形成されている。収容容器保持具2Bの下部には、励起光が通過する励起光入射口59が形成され、励起光入射口59を形成する縁部61には、収容セル1Aの第1の側壁部7が当接する。さらに、収容容器保持具2Bには、収容容器1Aの下壁部3に対面する壁に矩形の反射板63が設けられている。さらに、収容容器保持具2Bには、第1実施形態に係る収容容器保持具2Aと同様に、光入射口27、光出射口29、遅延発光出射口33が設けられている。励起光L1を収容セル1Aに向けて照射すると、励起光L1は励起光入射口59及び第1の側壁部7を通過して光合成サンプルに到達する。励起光L1の照射によって発生する遅延発光L2は全方位に向けて出射される。反射板63を遅延発光出射口33に対面配置しているので、反射板63を反射した遅延発光L2も遅延発光出射口33へ指向される。従って、反射した遅延発光L2も有効利用して遅延発光L2といった微弱光の計測が可能になり、遅延発光の検出量が増加するため、計測精度が向上する。
【0045】
(第6実施形態)
図12を参照して本発明の第6実施形態について説明する。図12は、第5実施形態に係る収容容器保持具2Cの斜視図である。なお、第1実施形態に係る収容容器保持具2Aと同一の要素及び部材については、同一の符号を記して説明を省略する。
【0046】
収容容器保持具2Cは樹脂製であり、第1実施形態に係る収容容器保持具2Cと同様に、励起光入射口31、発光出射口33、光入射口27及び光出射口29が形成されている。励起光入射口31が形成された後側の壁部65には、収容容器1Aを位置決めする可撓性を有する位置決め片(位置決め部)67が形成されている。位置決め片67は、壁部65の上部から突き出ており、先端部の内側には環状の突起部69が形成されている。収容容器1Aの下壁部3の外側には、保持部15を形成する環状の窪み71(図3、図13参照)があり、位置決め片67の突起部69は窪み71に嵌り込んで収容容器1Aを位置決めし、抜けを防止する。従って、収容容器1Aを収容容器保持具2Cの所定位置に精度良く設置できるため、計測のための光路を再現良く定めることができる。
【0047】
本発明に係る光合成サンプル計測容器や容器ホルダは、以上の実施形態に限定されず、例えば、光合成サンプル計測容器に設けた一つの入射窓によって励起光、遅延発光、入射光などを透過させる窓を兼用させるようにしてもよい。
【0048】
また、保持部は注入口に対面させなくてもよく、例えば、収容容器内の隅であると共に、注入口から差し込まれたピペットチップなどが届く位置に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態に係る収容容器を示し、培養時を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る収容容器を示し、計測時を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る収容容器の断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る収容容器保持具の斜視図である。
【図4】ピペットチップで希釈液を滴下している状態を示す断面図である。
【図6】第2実施形態に係る収容容器の断面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】第3実施形態に係る収容容器の断面図である。
【図10】第4実施形態に係る収容容器の断面図である。
【図11】第5実施形態に係る収容容器保持具の斜視図である。
【図12】第6実施形態に係る収容容器保持具の斜視図である。
【図13】第6実施形態に係る収容容器保持具を示し、(a)は収容容器を挿入している途中の状態を示し側面図であり、(b)は収容容器の位置決めが完了した状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0050】
1A,1B,1C,1D…収容容器(光合成サンプル計測容器)、2A,2B,2C…収容容器保持具(容器ホルダ)、3,35,51…下壁部(第1の壁部)、4,6…透過窓、7…第1の側壁部(第2の壁部)、11…第3の側壁部(第3の壁部)、13…第4の側壁部(第4の壁部)、15,37,55…保持部、17…注入口、21…メンブレンフィルタ(蓋部)、23…光入射窓、24…光出射窓、57…挿入口、27…光入射口、29…光出射口、31,59…励起光入射口、33…遅延発光出射口、41…溶液受け部、43…ガイド部、45…蓋部、47…孔、63…反射板、67…位置決め片(位置決め部)、C…光合成サンプル、W…希釈液。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光合成サンプルを収容し、収容した光合成サンプルを計測するために用いられる光合成サンプル計測容器及び光合成サンプル計測容器を保持するための容器ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
光合成サンプル、例えば、光合成機能を有する藻類や植物細胞などの吸光度を計測装置で計測する場合には、通常、石英製の計測用セルが用いられる。このような計測においては、あらかじめ培養容器中で培養された光合成サンプルを、測定に際して計測用セルに移し替える必要がある。これに対して、特許文献1に記載の試料セルによれば、培養と計測とを一つの容器で兼用できるため、培養した試料を他のセルに移し替える手間は発生しない。
【特許文献1】特開平7−147968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、引用文献1に記載の試料セルでは、培養時と計測時とを一つのセルで兼用できるものの、培養効率を優先すると、計測精度が低下し易く、逆に、計測精度を優先すると培養効率が低下し易くなる。また、引用文献1に記載の試料セルでは、試料と大気とが接する界面を十分に確保できないため、培養効率は必ずしも高くない。
【0004】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、培養効率を向上させると共に、計測精度も向上させることができる光合成サンプル容器及び容器ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、光合成サンプルを収容し、収容した前記光合成サンプルを計測するために用いられる光合成サンプル計測容器において、培養時に底になる第1の壁部と、計測時に底になる第2の壁部と、前記光合成サンプルへ入射される入射光を透過する光入射窓を有する第3の壁部と、光入射窓と対向する位置に光合成サンプルを伝播した入射光を透過する光出射窓を有する第4の壁部と、光合成サンプルを注入するための注入口と、を備え、第2の壁部よりも第1の壁部の面積の方が大きいことを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、培養時には、第2の壁部に比べて面積が大きい第1の壁部が底になり、光合成サンプルは、第1の壁部に沿って薄く広がる。従って、培養時に光合成サンプルが大気に接触する表面積が大きくなり、培養液のガス交換が促進されて培養効率が向上する。また、計測時には、第1の壁部に比べて面積が小さい第2の壁部が底になるために、光合成サンプルは、容器内において第2の壁部の上で嵩が高くなる。従って、光合成サンプル測定容器内において、光入射窓と光出射窓とを介した吸光度測定に十分に足る培養液の嵩を確保できるため、計測精度が向上する。その結果として、培養効率を向上させると共に、計測精度も向上させることができる。
【0007】
さらに、注入口を覆う通気性を有する蓋部を備えると好適である。通気性を有する蓋部により、雑菌などの進入を防ぎながら通気性を維持することができるため、培養効率をさらに向上させることが可能となる。
【0008】
光合成サンプル計測容器には、光合成サンプルを保持する保持部が容器内部に設けられていると好適である。光合成サンプルを容器内部に保持する場合に、光合成サンプルを所定位置に留めることが可能となるため、光合成サンプルに希釈液や培養液といった溶液を注入する際の自動化に有効である。
【0009】
保持部は、第1の壁部の内側に設けられていると好適である。第1の壁部は培養時に底になるため、光合成サンプルと、容器内に注入される希釈液等の溶液とを確実に混合することが可能となる。
【0010】
さらに、保持部内に光合成サンプルがあらかじめ保持されていると好適である。保持部内に光合成サンプルを集約することで、光合成サンプルの分散による乾燥などを防ぎ、また光合成サンプルの劣化を防止できる。
【0011】
さらに、注入口は、第1の壁部と対向する壁部に設けられており、保持部は、注入口に対面する位置に配置されていると好適である。分注器などで注入口から注入した溶液が光合成サンプルに直に接触して混合されるため、光合成サンプルと溶液との混合ロスを低減できるとともに、それらの混合が速やかに行われる。
【0012】
さらに、保持部は、注入される溶液を受ける溶液受け部と、溶液受け部に滴下された溶液の流れ方向を案内するガイド部とを有すると好適である。溶液を所定方向に案内しながら光合成サンプルと溶液とを効率よく混合できる。
【0013】
さらに、保持部は、多数の孔が形成された蓋部を有すると好適である。保持部から光合成サンプルが容器内部に流出するのを防ぐと共に、例えば、溶液を注入口から注入した際に、保持部内の光合成サンプルが飛び散るのを防止する。
【0014】
保持部は、光合成サンプル容器を為す壁部の他の部分に比べて熱伝導率が高いと好適である。この構成により、培養時における光合成サンプルの温調が、熱伝導部材を介して効率的に行われる。また、光合成サンプルが凍結された状態で保持部に保持される場合には、光合成サンプルを効率的に凍結、解凍することができる。
【0015】
また、上記の光合成サンプル計測容器を保持する容器ホルダであって、光合成サンプル計測容器の挿入口と、光合成サンプルを励起する励起光が通過する励起光入射口と、励起光の入射によって光合成サンプルから生じる遅延発光が通過する遅延発光出射口と、光合成サンプルに入射される入射光が通過する光入射口と、光合成サンプルを伝播した入射光が出射される光出射口と、を備えることを特徴とする。
【0016】
光合成サンプル計測容器は、計測時に容器ホルダの挿入口から挿入され、容器ホルダ内で保持される。容器ホルダは、励起光入射口、遅延発光出射口、光入射口及び光出射口を備えるので、容器ホルダは、光合成サンプルを計測可能な状態のまま、光合成サンプル計測容器を安定した状態で保持する。
【0017】
さらに、容器ホルダは、遅延発光出射口に対向する内壁面が光反射部材により形成されると好適である。このような構成によれば、光反射部材により反射された遅延発光も遅延発光出射口から出射される。従って、遅延発光のような微弱光の計測において、検出可能な遅延発光の光量が増大するため、S/Nを向上できる。
【0018】
さらに、容器ホルダは、光合成サンプル計測容器を位置決めする位置決め部を更に備えると好適である。光合成サンプル計測容器を容器ホルダの所定位置に精度良く設置できるため、計測のための光路を再現性良く定めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、培養効率を向上させると共に、計測精度も向上させた光合成サンプル計測容器及び容器ホルダを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1及び図2は、光合成サンプルを収容する光合成サンプル計測容器の斜視図である。図1に示されるように、光合成サンプル計測容器1A内の光合成サンプルCは、例えば、希釈液Wによって希釈された状態で培養され、所定時間の経過後に励起光L1を照射される(図2参照)。励起光L1の照射によって光合成サンプルCから遅延発光(「遅延蛍光」ともいう)L2が発生し、遅延発光L2の経時変化を計測することで、光合成サンプルの状態を評価できる。まず、この評価を利用した環境要因の評価について説明する。
【0022】
(環境要因の評価)
藻類などの光合成サンプルCに励起光L1を照射すると、光合成サンプルCは光合成代謝を行い、細胞を生長させる。光合成代謝では、光合成色素により吸収された光エネルギーが複数の化学反応により伝達され、細胞生長に必要なエネルギーに変換される。その過程で酵素発生、光−化学エネルギー変換、及びCO2吸収等の遅延発光のエネルギー源となる反応が順次発生する。これらの反応よりフォトンが異なるタイミングで発生(発光)し、それらの発光の和が光合成サンプル全体としての微弱な遅延発光L2として、計測される。
【0023】
有害な環境要因が光合成サンプルに作用すると細胞内の代謝が変化し、遅延発光の発光量の時間変化が、環境要因が作用しない場合と比較して異なるものとなる。さらに、遅延発光に対する影響は、環境要因ごとに異なる。すなわち、遅延発光の経時変化を、それぞれ比較することにより、環境要因それぞれが光合成サンプルCに及ぼす影響を評価できる。
【0024】
(収容容器)
光合成サンプルを収容する収容容器(光合成サンプル計測容器)1Aは、透明樹脂製で略直方体形状である。収容容器1Aは、光合成サンプルCの培養時(図1参照)に、すなわち棚や机などの載置台に寝かせた時に底になる平坦な下壁部3(第1の壁部)と、下壁部3に対向する平坦な上壁部5とを備える。下壁部3及び上壁部5は、共に透明であり、下壁部3と上壁部5とは、全面にわたって励起光や遅延発光が透過する透過窓4,6になっている。
【0025】
さらに、収容容器1Aは、下壁部3及び上壁部5を接続するようにして四面を取り囲む第1の側壁部7(第2の壁部)、第2の側壁部9、第3の側壁部11(第3の壁部)及び第4の側壁部13(第4の壁部)を有する。第1の側壁部7及び第2の側壁部9は互いに対向し、第3の側壁部11及び第4の側壁部13は互いに対向して配置されている。第1の側壁部7は平坦であり、計測時に、すなわち光計測装置(図示省略)の試料設置台にセットされた時に底になる。また、下壁部3は、第1の側壁部7に比べて、好ましくは面積が5倍以上大きい。
【0026】
図1及び図3に示されるように、下壁部3の内側には、環状に突き出た保持部15が設けられている。保持部15内には、濃縮された光合成サンプルC(図3参照)が貯留されている。保持部15内に予め光合成サンプルCを備え付けておくと、光合成サンプルC付きの収容容器1Aを取得した計測者にとっては、光合成サンプルCを収容容器内に投入する手間が減る。さらに、生育条件や分量などを予め規格化した光合成サンプルCを備え付けておくことで、光合成サンプルの濃度のバラツキを抑制できるため、計測の精度を高めることができる。
【0027】
下壁部3に対向する上壁部5には、円形の注入口17が形成されている。さらに、注入口17は、保持部15の真上になるように、保持部15に対面する位置に形成されている。規格化された光合成サンプルCは、注入口17から保持部15に投入され、冷凍保存される。また、光合成サンプルCを培養する際には、図4に示されるように、pH調整するための水溶液や栄養塩類を含む培養液などからなる希釈液Wが、ピペットチップ18などによって注入口17から滴下される。
【0028】
上記したように、規格化された光合成サンプルCは、保持部15によって所定位置に保持されている。従って、希釈液Wを光合成サンプルCに注入する際に、注入の都度、光合成サンプルCの位置を捜して狙いを定めるような煩わしさが減り、同じ動作で希釈液Wの注入を行える。その結果、光合成サンプルCの希釈を自動化する場合にも有効である。さらに、規格化された光合成サンプルCは、保持部15内の狭い領域で保持されるため、光合成サンプルが収容セル1A内で分散して乾燥してしまうことを防止でき、乾燥による光合成サンプルCの劣化を防止できる。特に、保持部15を有することによって、規格化された光合成サンプルCを予め保持させ易くなり、培養や計測の効率化が向上される。
【0029】
さらに、規格化された光合成サンプルCを保持部15に分注して保存する場合、光合成サンプルCの劣化を抑えるために、凍結して保存することが好ましい。また、光合成サンプルCを培養する際には、光合成サンプルCを解凍する必要がある。光合成サンプルCは保持部15に保持されているため、冷却または加温ポイントを保持部15に設定することにより、効率よく光合成サンプルCの冷凍及び解凍が可能になる。
【0030】
また、注入口17は、培養時に保持部15の真上となる(図3及び図4参照)。従って、光合成サンプルCを希釈液Wで希釈する場合に、光合成サンプルCは、滴下された希釈液Wに直接的に接して混合され、希釈液Wのロスを少なくすることができるとともに、混合を迅速に行うことが可能となる。
【0031】
また、図1に示されるように、光合成サンプルCを希釈した後で、上壁部5には、注入口17を遮蔽する円形の通気性を有する蓋(蓋部材)21が貼り付けられる。通気性を有する蓋部材21によって注入口17を遮蔽することにより、雑菌などの進入を防ぎながら通気性を維持することができる。通気性を有する蓋部材としては、メンブレンやフィルターなどが好適に使用される。また蓋部材は、撥水性を有することが好ましい。
【0032】
第3の側壁部11には、光合成サンプルCに照射される入射光L3が入射する入射窓23が設けられており、第4の側壁部13には、出射光L4を出射する出射窓24が設けられている。入射窓23と出射窓24とは対面するように配置されている。また、光合成サンプルCの吸光度は、入射窓23と出射窓24とを介して計測されるため、入射窓23及び出射窓24は、第2の側壁部9側よりも、計測時に底となる第1の側壁部7(第2の壁部)側、すなわち、計測時に底となる第1の側壁部7(第2の壁部)に近接して形成される。入射光L3は、吸光度を測定するための光であり、入射光が通過する箇所には、透明度、平面度及び平行度を得るために特別な処理(鏡面仕上げなど)が施される。収容セル1Aの全面にわたって、このような特別な処理を施すのはコストアップを招来するため、透過光L3が照射される位置に対応させて特別な処理が施された入射窓23と出射窓24とを設けている。
【0033】
(収容セル保持具)
図5に示されるように、収容容器1Aは、ケース状の収容容器保持具(容器ホルダ)2Aに挿入されて光計測装置の試料設置台(図示せず)にセットされる。収容容器保持具2Aは、収容容器1Aに対応した直方体形状であり、上面が開放されて収容容器1Aの挿入口25が形成されている。収容容器1Aは、第1の側壁部7が底になるように立てた状態で挿入口25に挿入され、第1の側壁部7は収容容器保持具2Aの底面26に当接する。収容容器保持具2Aには、収容容器1Aの入射窓23を露出させる光入射口27と、収容容器1Aの出射窓24を露出させる光出射口29とが形成されている。さらに、収容容器保持具2Aには、収容容器1Aの下壁部3の一部を露出させる励起光入射口31と、上壁部5の一部を露出させる遅延発光出射口33とが形成されている。
【0034】
収容容器1Aに向けて照射された励起光L1は、励起光入射口31及び下壁部3を通過して光合成サンプルCに到達し、光合成サンプルCを励起する。励起光L1の照射によって生じた遅延発光L2が、遅延発光出射口33を介して計測される。また、収容容器1Aに向けて照射された入射光L3は、光入射口27及び入射窓23を介して収容容器1A内に入射し、光合成サンプルCを透過した出射光L4は、出射窓24及び光出射口29を介して出射される。出射光L4の計測によって吸光度が測定される。
【0035】
培養時(図1参照)において収容容器1Aは、第1の側壁部7に比べて面積が大きい下壁部3が底になり、希釈液Wによって希釈された光合成サンプルCは、下壁部3に沿って薄く広がる。従って、培養時に光合成サンプルCが空気に接触する表面積が大きくなり、光合成サンプルCの生長に伴うガス交換が促進されて培養効率が向上する。また、計測時(図2参照)において収容容器1Aは、収容容器保持具2Aに挿入され、下壁部3に比べて面積が小さい第1の側壁部7が底になる。従って、希釈液Wによって希釈された光合成サンプルCは、第1の側壁部7の上で嵩が高くなると共に厚くなる。従って、遅延発光L2や透過光L4の計測精度は高くなり、計測効率が向上する。その結果として、培養時の効率を向上させると共に、計測時の効率も向上させることができる。
【0036】
また、収容容器1Aは、上記したように、収容容器保持具2Aの挿入口25に挿入され、収容容器保持具2A内で保持される。収容容器保持具2Aは、励起光入射口31、遅延発光出射口33、光入射口27及び光出射口29を備えるので、収容容器1Aは、光合成サンプルCの計測が可能な状態のまま、収容容器保持具2Aを安定した状態で保持する。
【0037】
(第2実施形態)
図6〜図8を参照して本発明の第2実施形態について説明する。図6は、第2実施形態に係る収容容器の断面図である。図7は、図6のVII−VII線に沿った断面図であり、図8は、図6のVIII−VIII線に沿った断面図である。なお、第1実施形態に係る収容容器1Aと同一の要素及び部材については、同一の符号を記して説明を省略する。
【0038】
収容容器1Bの下壁部35の内側には、規格化された光合成サンプルCを保持する保持部37が、下壁部35と一体に形成されている。保持部37は楕円環状の周壁部38と、周壁部38の内側に形成された凹状の湾曲部39とからなる。周壁部38の長手方向は、下壁部35の長手方向に一致している。また、湾曲部39は、希釈液を受けるための溶液受け部41と、希釈液Wの流れを案内するガイド部43とを有する。溶液受け部41は、第2の側壁部9に近い側に配置されて最も深くなっており、ガイド部43は、第1の側壁部7に近い側に配置された緩やかに傾斜しており、溶液受け部41から遠い側が近い側に比べて浅くなっている。ガイド部43は、溶液受け部41で受けた希釈液Wを第1の側壁部7側に案内する。規格化された光合成サンプルCは、溶液受け部41上に載せられており、溶液受け部41に滴下された希釈液Wは、光合成サンプルCに接触した後に、ガイド部43によって流れ方向を案内されながら流動し、効率良く混合される。
【0039】
(第3実施形態)
図9を参照して本発明の第3実施形態について説明する。図9は、第3実施形態に係る収容容器1Cの断面図である。なお、第1実施形態に係る収容容器1Aと同一の要素及び部材については、同一の符号を記して説明を省略する。
【0040】
収容容器1Cの下壁部3の保持部15には、保持部15の内部を覆うドーム状の蓋部45が設けられている。蓋部45には多数の孔47が形成されている。保持部15を蓋部45で覆うことにより、保持部15から光合成サンプルが流出するのを防ぐと共に、例えば、希釈液Wを注入口から注入した際に、保持部15内の光合成サンプルCが飛び散るのを防止する。
【0041】
(第4実施形態)
図10を参照して本発明の第4実施形態について説明する。図10は、第4実施形態に係る収容容器1Dの断面図である。なお、第1実施形態に係る収容容器1Aと同一の要素及び部材については、同一の符号を記して説明を省略する。
【0042】
収容容器1Dの下壁部51には、筒状の嵌合口53が形成されており、嵌合口53内に有底筒状の保持部55が嵌め込まれて接着されている。保持部55を除く下壁部51の他の部分は樹脂製であり、収容容器1Dを形成するこの他の部分に比べて熱伝導効率の高いアルミや銅などによって保持部55が形成されている。保持部55は、熱伝導効率が下壁部51の中でも比較的高いので、効果的に光合成サンプルCを適温に維持することが容易になり、特に、光合成サンプルCの培養時の温調や、冷凍や解凍の際の冷却や加温に有効である。
【0043】
(第5実施形態)
図11を参照して本発明の第5実施形態について説明する。図11は、第5実施形態に係る収容容器保持具2Bの斜視図である。なお、第1実施形態に係る収容容器保持具2Aと同一の要素及び部材については、同一の符号を記して説明を省略する。
【0044】
図11に示されるように、収容容器保持具2Bは、収容容器1Aに対応した略直方体形状であり、上面には収容容器1Aが挿入される挿入口57が形成されている。収容容器保持具2Bの下部には、励起光が通過する励起光入射口59が形成され、励起光入射口59を形成する縁部61には、収容セル1Aの第1の側壁部7が当接する。さらに、収容容器保持具2Bには、収容容器1Aの下壁部3に対面する壁に矩形の反射板63が設けられている。さらに、収容容器保持具2Bには、第1実施形態に係る収容容器保持具2Aと同様に、光入射口27、光出射口29、遅延発光出射口33が設けられている。励起光L1を収容セル1Aに向けて照射すると、励起光L1は励起光入射口59及び第1の側壁部7を通過して光合成サンプルに到達する。励起光L1の照射によって発生する遅延発光L2は全方位に向けて出射される。反射板63を遅延発光出射口33に対面配置しているので、反射板63を反射した遅延発光L2も遅延発光出射口33へ指向される。従って、反射した遅延発光L2も有効利用して遅延発光L2といった微弱光の計測が可能になり、遅延発光の検出量が増加するため、計測精度が向上する。
【0045】
(第6実施形態)
図12を参照して本発明の第6実施形態について説明する。図12は、第5実施形態に係る収容容器保持具2Cの斜視図である。なお、第1実施形態に係る収容容器保持具2Aと同一の要素及び部材については、同一の符号を記して説明を省略する。
【0046】
収容容器保持具2Cは樹脂製であり、第1実施形態に係る収容容器保持具2Cと同様に、励起光入射口31、発光出射口33、光入射口27及び光出射口29が形成されている。励起光入射口31が形成された後側の壁部65には、収容容器1Aを位置決めする可撓性を有する位置決め片(位置決め部)67が形成されている。位置決め片67は、壁部65の上部から突き出ており、先端部の内側には環状の突起部69が形成されている。収容容器1Aの下壁部3の外側には、保持部15を形成する環状の窪み71(図3、図13参照)があり、位置決め片67の突起部69は窪み71に嵌り込んで収容容器1Aを位置決めし、抜けを防止する。従って、収容容器1Aを収容容器保持具2Cの所定位置に精度良く設置できるため、計測のための光路を再現良く定めることができる。
【0047】
本発明に係る光合成サンプル計測容器や容器ホルダは、以上の実施形態に限定されず、例えば、光合成サンプル計測容器に設けた一つの入射窓によって励起光、遅延発光、入射光などを透過させる窓を兼用させるようにしてもよい。
【0048】
また、保持部は注入口に対面させなくてもよく、例えば、収容容器内の隅であると共に、注入口から差し込まれたピペットチップなどが届く位置に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態に係る収容容器を示し、培養時を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る収容容器を示し、計測時を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る収容容器の断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る収容容器保持具の斜視図である。
【図4】ピペットチップで希釈液を滴下している状態を示す断面図である。
【図6】第2実施形態に係る収容容器の断面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】第3実施形態に係る収容容器の断面図である。
【図10】第4実施形態に係る収容容器の断面図である。
【図11】第5実施形態に係る収容容器保持具の斜視図である。
【図12】第6実施形態に係る収容容器保持具の斜視図である。
【図13】第6実施形態に係る収容容器保持具を示し、(a)は収容容器を挿入している途中の状態を示し側面図であり、(b)は収容容器の位置決めが完了した状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0050】
1A,1B,1C,1D…収容容器(光合成サンプル計測容器)、2A,2B,2C…収容容器保持具(容器ホルダ)、3,35,51…下壁部(第1の壁部)、4,6…透過窓、7…第1の側壁部(第2の壁部)、11…第3の側壁部(第3の壁部)、13…第4の側壁部(第4の壁部)、15,37,55…保持部、17…注入口、21…メンブレンフィルタ(蓋部)、23…光入射窓、24…光出射窓、57…挿入口、27…光入射口、29…光出射口、31,59…励起光入射口、33…遅延発光出射口、41…溶液受け部、43…ガイド部、45…蓋部、47…孔、63…反射板、67…位置決め片(位置決め部)、C…光合成サンプル、W…希釈液。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光合成サンプルを収容し、収容した前記光合成サンプルを計測するために用いられる光合成サンプル計測容器において、
培養時に底になる第1の壁部と、
計測時に底になる第2の壁部と、
前記光合成サンプルへ入射される入射光を透過する光入射窓を有する第3の壁部と、
前記光入射窓と対向する位置に前記光合成サンプルを伝播した前記入射光を透過する光出射窓を有する第4の壁部と、
前記光合成サンプルを注入するための注入口と、を備え、
前記第2の壁部よりも前記第1の壁部の面積の方が大きいことを特徴とする光合成サンプル計測容器。
【請求項2】
前記注入口を覆う通気性を有する蓋部を更に備えることを特徴とする請求項1記載の光合成サンプル計測容器。
【請求項3】
前記光合成サンプル計測容器の内部には、前記光合成サンプルを保持する保持部が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の光合成サンプル計測容器。
【請求項4】
前記保持部は、前記第1の壁部の内側に設けられていることを特徴とする請求項3記載の光合成サンプル計測容器。
【請求項5】
前記保持部内に前記光合成サンプルが保持されていることを特徴とする請求項3または4記載の光合成サンプル計測容器。
【請求項6】
前記注入口は、前記第1の壁部と対向する壁部に設けられており、前記保持部は、前記注入口に対面する位置に配置されていることを特徴とする請求項3〜5記載の光合成サンプル計測容器。
【請求項7】
前記保持部は、注入される溶液を受ける溶液受け部と、前記溶液受け部に注入される前記溶液の流れ方向を案内するガイド部とを有することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項記載の光合成サンプル計測容器。
【請求項8】
前記保持部は、多数の孔が形成された蓋部を有することを特徴とする請求項3〜7のいずれか一項記載の光合成サンプル計測容器。
【請求項9】
前記保持部は、前記光合成サンプル容器を為す壁部の他の部分に比べて熱伝導率が高いことを特徴とする請求項3〜8のいずれか一項記載の光合成サンプル計測容器。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項記載の前記光合成サンプル計測容器を保持する容器ホルダであって、
前記光合成サンプル計測容器の挿入口と、前記光合成サンプルに入射される励起光が通過する励起光入射口と、前記励起光の入射によって前記光合成サンプルから生じる遅延発光が通過する遅延発光出射口と、前記光合成サンプルに入射される入射光が通過する光入射口と、前記光合成サンプルを伝播した前記入射光が出射される光出射口と、を備えることを特徴とする容器ホルダ。
【請求項11】
前記遅延発光出射口に対向する内壁面に設けられた光反射部を更に備えることを特徴とする請求項10記載の容器ホルダ。
【請求項12】
前記光合成サンプル計測容器を位置決めする位置決め部を更に備えることを特徴とする請求項10または11記載の容器ホルダ。
【請求項1】
光合成サンプルを収容し、収容した前記光合成サンプルを計測するために用いられる光合成サンプル計測容器において、
培養時に底になる第1の壁部と、
計測時に底になる第2の壁部と、
前記光合成サンプルへ入射される入射光を透過する光入射窓を有する第3の壁部と、
前記光入射窓と対向する位置に前記光合成サンプルを伝播した前記入射光を透過する光出射窓を有する第4の壁部と、
前記光合成サンプルを注入するための注入口と、を備え、
前記第2の壁部よりも前記第1の壁部の面積の方が大きいことを特徴とする光合成サンプル計測容器。
【請求項2】
前記注入口を覆う通気性を有する蓋部を更に備えることを特徴とする請求項1記載の光合成サンプル計測容器。
【請求項3】
前記光合成サンプル計測容器の内部には、前記光合成サンプルを保持する保持部が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の光合成サンプル計測容器。
【請求項4】
前記保持部は、前記第1の壁部の内側に設けられていることを特徴とする請求項3記載の光合成サンプル計測容器。
【請求項5】
前記保持部内に前記光合成サンプルが保持されていることを特徴とする請求項3または4記載の光合成サンプル計測容器。
【請求項6】
前記注入口は、前記第1の壁部と対向する壁部に設けられており、前記保持部は、前記注入口に対面する位置に配置されていることを特徴とする請求項3〜5記載の光合成サンプル計測容器。
【請求項7】
前記保持部は、注入される溶液を受ける溶液受け部と、前記溶液受け部に注入される前記溶液の流れ方向を案内するガイド部とを有することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項記載の光合成サンプル計測容器。
【請求項8】
前記保持部は、多数の孔が形成された蓋部を有することを特徴とする請求項3〜7のいずれか一項記載の光合成サンプル計測容器。
【請求項9】
前記保持部は、前記光合成サンプル容器を為す壁部の他の部分に比べて熱伝導率が高いことを特徴とする請求項3〜8のいずれか一項記載の光合成サンプル計測容器。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項記載の前記光合成サンプル計測容器を保持する容器ホルダであって、
前記光合成サンプル計測容器の挿入口と、前記光合成サンプルに入射される励起光が通過する励起光入射口と、前記励起光の入射によって前記光合成サンプルから生じる遅延発光が通過する遅延発光出射口と、前記光合成サンプルに入射される入射光が通過する光入射口と、前記光合成サンプルを伝播した前記入射光が出射される光出射口と、を備えることを特徴とする容器ホルダ。
【請求項11】
前記遅延発光出射口に対向する内壁面に設けられた光反射部を更に備えることを特徴とする請求項10記載の容器ホルダ。
【請求項12】
前記光合成サンプル計測容器を位置決めする位置決め部を更に備えることを特徴とする請求項10または11記載の容器ホルダ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−253150(P2008−253150A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95542(P2007−95542)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、環境省、環境技術開発等推進費、産業再生法第30条の適用を受ける出願
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、環境省、環境技術開発等推進費、産業再生法第30条の適用を受ける出願
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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