説明

光回路およびその製造方法

【課題】基板上に光導波路が設けられた光回路において、光回路内に挿入部材を挿入可能にしつつ、小型化を図ること。
【解決手段】光回路は、基板100と、基板の上の下部クラッド層101と、コア層102と、コア層102の上の上部クラッド層103と、上部クラッド層103の上のヤトイ107とを備える。下部クラッド層101、コア層102、及び上部クラッド層103が光導波路を構成する。光回路は、光導波路と交差する溝104をさらに備え、当該溝104は、ヤトイ107から下部クラッド層101まで少なくとも延在する。このように、ヤトイ107が存在する部分において溝104を形成し、そこに波長板等の挿入部材105を挿入することで、光回路を小型化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光回路およびその製造方法に関し、より詳細には、基板上に光導波路が設けられた光回路およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量光通信に向けて偏波多重された光信号の利用が進んでいる。偏波多重光通信方式の実用化に伴い偏波をハンドリングするデバイスの実用化が始まっている。このようなデバイスでは、光回路内で並行して進行する複数の光導波路の一部の光導波路に対して偏波変換を行うことが必要となる場合がある。
【0003】
従来、このような場合、偏波変換が必要な光導波路に溝を形成し、そこに半波長板を挿入して接着剤で固定していた(特許文献1参照)。従来の光回路構成を図1に、従来の光回路の製造工程を図2に示す。基板100上に下部クラッド101、コア102、上部クラッド103から構成される光導波路に対して、まず溝104が形成される。この溝104には波長板105が挿入され、接着剤106により固定される。その後、光ファイバとの接続性を確保するためにヤトイ107a、107bが光導波路上に貼り付けられ、接着剤108a、108bで固定される。
【0004】
偏波変換以外にも、光導波路に形成した溝に波長板等の挿入部材を挿入する場合があり、例えば、特許文献2には波長板を用いた偏波ビームスプリッタの例が開示されている。また、特許文献3には光フィルタを溝に挿入した例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−204753号公報
【特許文献2】特開平07−092326号公報
【特許文献3】特開2010−113055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の光回路およびその製造方法には以下に述べる問題があった。図2に示すように、従来の製造方法では、波長板105を挿入して接着剤106で固定したのちに、ヤトイ107a、107bを接着剤108a、108bで固定する。一般に接着剤106と接着剤108a、108bは異なる種類の接着剤が用いられるために、これらが干渉しないように波長板105とヤトイ107a、107bとの距離を一定以上確保する必要がある。このために光回路のサイズが制限されていた。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板上に光導波路が設けられた光回路において、光回路内に挿入部材を挿入可能にしつつ、小型化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、第1の態様は、基板と、前記基板の上の下部クラッド層と、前記下部クラッド層の上のコア層と、前記コア層の上の上部クラッド層と、前記上部クラッド層の上のヤトイと、前記ヤトイから前記下部クラッド層まで少なくとも延在する溝とを備えることを特徴とする光回路である。
【0009】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記溝が、前記ヤトイに設けられた第1の溝と、前記第1の溝の内部において、前記下部クラッド層まで少なくとも延在する第2の溝とを備え、前記第2の溝の幅は前記第1の溝の幅より狭いことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第3の態様は、第1の態様において、前記ヤトイが凹部を有する凹型ヤトイであり、前記溝は、前記凹部の内部において、前記下部クラッド層まで少なくとも延在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ヤトイから下部クラッド層まで少なくとも延在する溝を設けることにより、基板上に光導波路が設けられた光回路において、光回路内に挿入部材を挿入可能にしつつ、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の光回路の断面図を示す図である。
【図2】従来の光回路の製造工程を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る光回路の断面図を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る光回路の製造工程を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る光回路の断面図を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る光回路の製造工程を示す図である。
【図7】第2の実施形態の変形形態に係る光回路の断面図を示す図である。
【図8】第2の実施形態の変形形態に係る光回路の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図3に、第1の実施形態に係る光回路の断面図を示す。光回路は、基板100と、基板の上の下部クラッド層101と、コア層102と、コア層102の上の上部クラッド層103と、上部クラッド層103の上のヤトイ107とを備える。下部クラッド層101、コア層102、及び上部クラッド層103が光導波路を構成する。
【0015】
光回路は、光導波路と交差する溝104をさらに備え、当該溝104は、ヤトイ107から下部クラッド層101まで少なくとも延在する。このように、ヤトイ107が存在する部分において溝104を形成し、そこに波長板等の挿入部材105を挿入し、接着剤106で固定することで、光回路を小型化することができる。
【0016】
図4に、第1の実施形態に係る光回路の製造方法を示す。製造方法としては、基板100と、基板の上の下部クラッド層101と、コア層102と、コア層102の上の上部クラッド層103とを設け(ステップ1)、上部クラッド層103の上にヤトイ107を接着固定し(ステップ2)、ヤトイ107から下部クラッド層101まで少なくとも延在する溝104を形成する(ステップ3)。その後、必要な挿入部材105を溝104に挿入し(ステップ4)、接着固定する(ステップ5)。
【0017】
溝104は、コア層102を貫通して下部クラッド層101まで延在する必要があるが、下部クラッド層101を貫通して基板100まで延在しても、下部クラッド層101を貫通しなくてもよい。
【0018】
溝104は、ダイシングなどにより形成することができる。
【0019】
(第2の実施形態)
図5に、第2の実施形態に係る光回路の断面図を示す。光回路は、溝109を除いて第1の実施形態に係る光回路と同一である。光回路は、ヤトイ107に設けられた第1の溝109と、第1の溝109の内部において下部クラッド層101まで延在する第2の溝104を備える。第2の溝104の幅は第1の溝109の幅よりも狭い。
【0020】
一般に、波長板等の挿入部材105が実際に挿入される溝である第2の溝104は、光学損失を低減する必要から幅を狭くする必要がある。第1の溝109を形成した後、ダイシングなどにより第2の溝104を形成するとき、ダイシングのブレードが物理的にヤトイ107と接触することが避けられ、作業性が高まる。
【0021】
図6に、第2の実施形態に係る光回路の製造方法を示す。製造方法としては、基板100と、基板の上の下部クラッド層101と、コア層102と、コア層102の上の上部クラッド層103とを設け(ステップ1)、上部クラッド層103の上にヤトイ107を接着固定し(ステップ2)、ヤトイ107の一部に第1の溝109を形成し(ステップ3)、続いてヤトイ107から下部クラッド層101まで少なくとも延在する溝104を形成する(ステップ4)。その後、必要な挿入部材105を溝104に挿入し(ステップ5)、接着固定する(ステップ6)。
【0022】
第1の溝109は、コア層102までは延在してはならないが、上部クラッド層103まで延在しても延在しなくてもよい。
【0023】
(第2の実施形態の変形形態)
図7に、第2の実施形態の変形に係る光回路の断面図を示す。光回路は、予め凹部111が形成された凹型ヤトイ110を除いて第1の実施形態に係る光回路と同一である。光回路は、凹型ヤトイ110に設けられた凹部111と、凹部111の内部において下部クラッド層101まで延在する溝104を備える。溝104の幅はヤトイの凹部111の幅よりも狭い。
【0024】
このように、ヤトイに凹部111を設けることで、第2の溝104をダイシング等で形成するときの作業性が高まる。
【0025】
図8に、第2の実施形態の変形形態に係る光回路の製造方法を示す。製造方法としては、基板100と、基板の上の下部クラッド層101と、コア層102と、コア層102の上の上部クラッド層103とを設け(ステップ1)、上部クラッド層103の上に凹型ヤトイ110を接着固定し(ステップ2)、凹型ヤトイ110の凹部111から下部クラッド層101まで少なくとも延在する溝104を形成する(ステップ3)。その後、必要な挿入部材105を溝104に挿入し(ステップ4)、接着固定する(ステップ5)。
【符号の説明】
【0026】
100 基板
101 下部クラッド層
102 コア層
103 上部クラッド層
104 溝
105 挿入部材
106 接着剤
107 ヤトイ
108 接着剤
109 溝
110 凹型ヤトイ
111 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上の下部クラッド層と、
前記下部クラッド層の上のコア層と、
前記コア層の上の上部クラッド層と、
前記上部クラッド層の上のヤトイと、
前記ヤトイから前記下部クラッド層まで少なくとも延在する溝と
を備えることを特徴とする光回路。
【請求項2】
前記溝は、
前記ヤトイに設けられた第1の溝と、
前記第1の溝の内部において、前記下部クラッド層まで少なくとも延在する第2の溝と
を備え、
前記第2の溝の幅は前記第1の溝の幅より狭いことを特徴とする請求項1記載の光回路。
【請求項3】
前記ヤトイは、凹部を有する凹型ヤトイであり、
前記溝は、前記凹部の内部において、前記下部クラッド層まで少なくとも延在することを特徴とする請求項1記載の光回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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