説明

光回路

【課題】偏波を変換する光回路であって、偏波変換を行う光導波路と行わない光導波路との間の損失差を抑制した光回路を提供すること。
【解決手段】光回路100は、基板101上に設けられた第1の光導波路111及び第2の光導波路112と、第1の光導波路111及び第2の光導波路112と交差する溝120とを備える。溝120には、第1の光導波路111の光路上に、遅延量がλ/2の半波長板131が、主軸が基板垂線と約45度の傾きで挿入されている。また、第2の光導波路112の光路上に、遅延量がλ/2の半波長板132が、主軸が基板垂線と約0度または約90度の傾きで挿入されている。偏波変換を行わない第2の光導波路112に、主軸を基板垂線と約0度または約90度の傾きで半波長板132を挿入することにより、半波長板132を実効的に半波長板として機能しないようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光回路に関し、より詳細には、偏波を変換する光回路に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量光通信に向けて光ファイバの帯域を有効利用するために、光信号を偏波多重する偏波多重光通信方式の採用が進んでいる。偏波多重光通信方式では、偏波多重分離など光の偏波をハンドリングするデバイスが重要な役割を果たす。特に、偏波をハンドリングできる光導波路デバイスは、小型性、堅牢性、量産性から注目を集めている。このように偏波をハンドリングする光導波路デバイスでは、光回路内で並行して進行する複数の光導波路の一部の光導波路のみに対して偏波変換を行うことが必要となる場合が多く、実際に偏波多重光変調器や偏波多重分離光ハイブリッドなどでは直交する偏波のうち一方の偏波のみ偏波変換を行って偏波を揃えることが行われる。一般に、このような場合、直交する偏波が進行する複数の光導波路は近接して並行に配置されていることが多い。
【0003】
従来、このように近接して並行する光導波路の一部でのみ偏波変換を行う場合、並行する光導波路の全てを横断するような溝を量産性に優れるダイシングで形成し、偏波変換が必要な光導波路のみに半波長板を挿入して接着剤で固定していた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−204753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では次のような問題点があった。まず、波長板を挿入した光導波路と挿入していない光導波路との間では波長板の有無が異なるために損失差が生じてしまう問題があった。このような損失差があると、偏波多重あるいは偏波分離したときに偏波依存性損失としてみえてしまい、大容量伝送では信号品質を劣化させてしまう。加えて、波長板の入っている溝と入っていない溝とでは、毛細管現象の効き方が異なるため、接着剤が波長板の入っていない部分には充分に充填されずに、光路上に空気部分が発生し、損失が生じる場合がある。この場合にも偏波依存性損失が生じてしまうため、大容量伝送での信号品質劣化につながる。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、偏波を変換する光回路であって、偏波変換を行う光導波路と行わない光導波路との間の損失差を抑制した光回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、基板上に設けられた第1の光導波路及び第2の光導波路と、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路と交差する溝と、前記溝内の前記第1の光導波路の光路上に、主軸が基板垂線と約45度の傾きで挿入された、遅延量がλ/2の半波長板と、前記溝内の前記第2の光導波路の光路上に挿入されたポリイミド板とを備えることを特徴とする光回路である。
【0008】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記ポリイミド板が、前記溝内の前記第2の光導波路の光路上に、主軸が基板垂線と約0度または約90度の傾きで挿入された遅延量がλ/2の半波長板であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の第3の態様は、第1の態様において、前記ポリイミド板が複屈折を有しないポリイミド板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、偏波変換を行わない光導波路の光路上にポリイミド板を挿入することにより、偏波変換を行う光導波路と行わない光導波路との間の損失差を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光回路の上面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る光回路の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1に、第1の実施形態に係る光回路を示す。光回路100は、基板101上に設けられた第1の光導波路111及び第2の光導波路112と、第1の光導波路111及び第2の光導波路112と交差する溝120とを備える。溝120には、第1の光導波路111の光路上に、遅延量がλ/2の半波長板131が、主軸が基板垂線と約45度の傾きで挿入されている。また、第2の光導波路112の光路上に、遅延量がλ/2の半波長板132が、主軸が基板垂線と約0度または約90度の傾きで挿入されている。
【0014】
偏波変換を行わない第2の光導波路112に、主軸を基板垂線と約0度または約90度の傾きで半波長板132を挿入することにより、半波長板132を実効的に半波長板として機能しないようにしている。偏波変換用の半波長板131と同一のものを用いるために、厚さ等が等しく、接着剤固定の条件が統一され、簡便な製造工程で偏波変換を行う光導波路と行わない光導波路との間の損失差を抑制することができる。
【0015】
なお、図1を参照した説明では、基板101上に設けられた光導波路の数を2本としたが、光導波路の数は2以上のほか特に制限がない。また、主軸が基板垂線と約45度傾けられた半波長板131の数、主軸が基板垂線と約0度または約90度傾けられた半波長板132の数についても、それぞれ1以上光導波路の数未満、合計で光導波路の数となれば、特に制限がない。換言すれば、偏波変換を行う光導波路にも行わない光導波路にもいずれかの半波長板が挿入されていればよい。
【0016】
また、半波長板131、132はポリイミド板で構成することができる。
【0017】
(第2の実施形態)
図2に、第2の実施形態に係る光回路を示す。光回路200は、基板201上に設けられた第1の光導波路211及び第2の光導波路212と、第1の光導波路211及び第2の光導波路212と交差する溝220とを備える。溝220には、第1の光導波路211の光路上に、遅延量がλ/2の半波長板231が、主軸が基板垂線と約45度の傾きで挿入されている。また、第2の光導波路212の光路上に、複屈折を有しないポリイミド板232が挿入されている。
【0018】
偏波変換を行わない第2の光導波路212に、複屈折を有さず、偏光成分間に位相差を生じさせないポリイミド板232を挿入することにより、簡便な製造工程で偏波変換を行う光導波路と行わない光導波路との間の損失差を抑制することができる。ポリイミド板232の挿入角度が問題ならないため、挿入作業中に傾いて挿入されても特性劣化が生じない。
【0019】
光導波路の数、挿入する板の数については、第1の実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0020】
100、200 光回路
101、201 基板
111、211 第1の光導波路
112、212 第2の光導波路
120、220 溝
131、132 半波長板
231 半波長板
232 ポリイミド板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた第1の光導波路及び第2の光導波路と、
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路と交差する溝と、
前記溝内の前記第1の光導波路の光路上に、主軸が基板垂線と約45度の傾きで挿入された、遅延量がλ/2の半波長板と、
前記溝内の前記第2の光導波路の光路上に挿入されたポリイミド板と
を備えることを特徴とする光回路。
【請求項2】
前記ポリイミド板は、前記溝内の前記第2の光導波路の光路上に、主軸が基板垂線と約0度または約90度の傾きで挿入された遅延量がλ/2の半波長板であることを特徴とする請求項1記載の光回路。
【請求項3】
前記ポリイミド板は、複屈折を有しないポリイミド板であることを特徴とする請求項1記載の光回路。

【図1】
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【図2】
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