説明

光塩素化装置を用いた1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンの精製

1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンと1種または複数の不飽和フルオロカーボン化合物との粗混合物を精製するための連続式気相法であって、a)1)透明な内側ウェル内に位置するUVランプを含むUVランプユニットであって、その透明内側ウェルが透明な外側ウェル内に位置しており、その外側ウェルには、内側および外側のウェルの壁を冷却するための材料が備えられており、内側ウェルと外側ウェルが互いに隔離された個別のチャンバーを画定するランプユニットと、2)その中に前記UVランプユニットが挿入されている反応容器とを含む光塩素化装置容器を提供するステップ;b)Clと、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンおよび1種または複数の不飽和フルオロカーボン化合物の蒸留分離不可能混合物とのガス状混合物を反応容器中に導入するステップ;c)ガスの状態で、光塩素化装置からのUV光の存在下、Clと、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンおよび1種または複数の不飽和化合物の蒸留分離不可能混合物との混合物を反応させ、不飽和フルオロカーボンを飽和させて反応混合物にするステップ;及びd)1000ppm未満、最も好ましくは100ppm未満の不飽和フルオロカーボンを含有する精製1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン生成物を分離するステップ;を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UV光塩素化装置(UV photochlorinator)を用いて、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)を、<1000ppm、好ましくは<500ppm、より好ましくは<100ppmのレベルの全不飽和物にまで精製するための連続式気相法に関する。
【背景技術】
【0002】
その安定性、比較的低い毒性、多くの物質との相溶性および低沸点のため、短鎖フルオロカーボンは、工業分野において多くの目的のための有用性または潜在的有用性を有していることが分かっている。そうした短鎖フルオロカーボン(約1から約5個の炭素原子)は、例えば噴射剤、冷媒および溶媒として用いられている。
【0003】
残念ながら、ある種のフルオロカーボン、特にクロロフルオロカーボンは環境、特にオゾン層に対して有害である可能性があると主張されている。さらに、ある種のフルオロカーボン中の不純物は厄介なものであることが分かっている。その多くが有毒であり、またしばしば不安定でもあるので、不飽和フルオロカーボンは特に望ましくない。そうした不安定な不飽和フルオロカーボンは分解して、腐食性のあるより望ましくない生成物になる可能性がある。それゆえ、特定の用途では、フルオロカーボンが不飽和種を実質的に含まない(例えば、100ppm未満)ことが特に重要である。したがって、環境により優しい、より高純度の新規なフルオロカーボンを開発するための協調努力がなされてきている。
【0004】
いくつかのフルオロカーボンに関して、例えば米国特許第5,190,626号および同第5,336,377号に記載のように、塩素化によって不飽和の種の量を低減させることができることが分かっている。残念ながら、そうした塩素化技術の結果は、精製されるフルオロカーボン中に水素が存在する場合特にそうであるが、あるフルオロカーボンから別のフルオロカーボンを予測することができない。それは、水素がしばしば塩素で置換され、それによって所望の生成物の収量を低下させ、さらなる不純物をもたらす結果となるからである。特定の用途においては、例えば、密閉区域での空調装置の冷媒用などの特に敏感な区域で用いる場合、そうしたフルオロカーボンは、特に高純度でなければならない。
【0005】
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)は、冷媒として用いられるフルオロカーボンCClCClF(CFC−114)の代替品として用いることができることが分かっている。HFC−236faは、閉鎖環境における冷媒として特に用いられている。HFC−236faは多くの方法、例えば米国特許第5,395,997;5,414,165号および国際特許出願WO96/15085A1に記載されているような方法によって調製することができる。純粋な1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンが既知の調製方法では得られていないという点を除けば、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンはCFC−114の優れた代替品となり得る可能性がある。これは、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンを調製するための殆どの既知の方法が、他のフルオロカーボンの残留不純物をもたらすためである。残念ながら、フルオロカーボン不純物のいくつかのものは、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンとの低沸点共沸混合物を生成するか、または1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンと沸点が近接しており、このことは、従来の蒸留法による分離を妨げるものである(「蒸留分離不可能混合物(distillation inseparable mixtures)」)。反応混合物から、蒸留によって、その中に生成した1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンを精製しようとすると、そうした蒸留分離不可能混合物がもたらされる。これは、共沸混合物または近接沸点混合物を形成する不純物のいくつかは不飽和であり、ある種の用途での冷媒においてはわずかでも許容されないので、特に厄介である。そうした望ましくない不飽和フルオロカーボン不純物の例は、米国特許第5,395,997号に記載の液相反応によって得られる1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−2−クロロプロペンや米国特許第5,414,165号に記載の気相反応によって得られるCHClである。
【0006】
米国特許第5,856,595号および同第6,274,779B1号には、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンと少なくとも1種の不飽和フルオロカーボンの蒸留分離不可能混合物からHFC−236faを精製して、100パーツパーミリオン(ppm)未満の不飽和フルオロカーボンを含有する99.9重量%を超える純度の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン生成物を得る、回分式の液相法による方法であって、
a)その混合物を塩素と反応させて反応混合物中の不飽和フルオロカーボンを飽和させるステップと、
b)反応混合物を蒸留して1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンを得るステップと、そして、
c)混合物を塩素と反応させて不飽和フルオロカーボンを飽和させた後に、その方法の任意の時点で、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンから、残留するHClおよび塩素を除去するステップと、
を含む方法が提示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの特許の方法では、混合物の塩素との反応は紫外線(UV)の存在下で実施することが好ましいと教示されている。しかし、これらの特許には、その特許の目的達成のために用いるのに適した具体的なUV光塩素化装置は全く開示されておらず、また、連続式の気相反応で精製反応を実施するのに適しており、同時に<100ppmのフルオロカーボン不飽和物を含む精製されたHFC−236fa生成物を得ることができる光塩素化反応装置も全く開示されていない。<1000ppm、好ましくは<500ppm、より好ましくは<100ppmのフルオロカーボン不飽和物を含むHFC−236faを生成する連続プロセスが得られることが非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
本発明によれば、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満の不飽和フルオロカーボンを含有する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン生成物を得るための、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンと少なくとも1種の不飽和フルオロカーボンとの蒸留分離不可能混合物からの1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンの精製法のための連続式気相法が提供される。そうした生成物は、例えば、一般に99.9重量%を超える純度のものである。
【0009】
本発明は、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンと1種または複数の不飽和フルオロカーボン化合物との粗混合物(未精製混合物;crude mixture)を精製するための連続式気相法であって、その方法は、
a)1)透明な内側ウェル内に位置するUVランプを含むUVランプユニットであって、その透明内側ウェルが透明な外側ウェル内に位置しており、前記外側ウェルには、内側および外側のウェルの壁を冷却するための材料が備えられており;その内側ウェルと外側ウェルが互いに隔離された個別のチャンバーを画定する、ランプユニット;および
2)その中に前記UVランプユニットが挿入されている反応容器;
を含む光塩素化装置の容器を提供するステップと、
b)Clと、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンおよび1種または複数の不飽和フルオロカーボン化合物の蒸留分離不可能混合物とのガス状混合物を前記反応容器中に導入するステップと、
c)ガスの状態で、光塩素化装置からのUV光の存在下、Clと、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンおよび1種または複数の不飽和化合物の蒸留分離不可能混合物との混合物を反応させ、不飽和フルオロカーボンを飽和させて反応混合物にするステップと、
d)1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満の不飽和フルオロカーボンを含有する精製された1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン生成物を分離するステップ、とを含む。
他の実施形態では、ステップd)は、前記反応混合物を蒸留して精製された1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン生成物を得るステップを含む。本発明のさらに他の実施形態では、連続式気相法は、混合物をClと反応させて不飽和フルオロカーボンを飽和させた後に、その方法の任意の時点で1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンから残留するHClおよび塩素を除去する追加のステップe)を含む。本発明のさらに他の実施形態では、ステップe)は、ステップc)とd)との間に実施され、前記反応混合物を水溶液で洗浄して残留するHClおよび塩素を除去するステップと、この水溶液を除去するステップとを含む。
【0010】
連続式気相法は、好ましくは、
a)1.透明な内側ウェル内に位置するUVランプを含むUVランプユニットであって、その透明内側ウェルが透明な外側ウェル内に位置しており、前記外側ウェルには、内側および外側のウェルの壁を冷却するための材料が備えられており;その内側ウェルと外側ウェルが互いに隔離された個別のチャンバーを画定する、ランプユニット;および
2.その中に前記UVランプユニットが挿入されている反応容器;
を含む光塩素化装置の容器を提供するステップと、
b)Clと、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンおよび1種または複数の不飽和フルオロカーボン化合物の蒸留分離不可能混合物とのガス状混合物を前記反応容器中に導入するステップと、
c)光塩素化装置からのUV光の存在下で、Clと、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンおよび1種または複数の不飽和化合物の蒸留分離不可能混合物との混合物を反応させ、不飽和フルオロカーボンを飽和させて反応混合物にするステップと、
d)前記反応混合物を水溶液で洗浄して残留塩酸およびClを除去するステップと、
e)水溶液を除去するステップと、
f)水溶液を除去した後の前記反応混合物を蒸留して、<1000ppm、好ましくは<500ppm、より好ましくは<100ppmの不飽和フルオロカーボンを含有する精製された1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンを得るステップ、とを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明によれば、HFC−236faと、そのいずれかが飽和またはエチレン不飽和であり得るヒドロフルオロカーボン(HFC’s)、クロロフルオロカーボン(CFC’s)およびヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC’s)を含む他の飽和および不飽和ハロカーボンとを含む粗生成物の混合物から、HFC−236faを精製するために、連続式気相法が提供される。粗生成物は、上記したようないくつかの異なる反応方法によって生成させることができる。本発明は、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンと1種または複数の不飽和フルオロカーボン化合物との粗混合物(未精製混合物)を精製するための連続式気相法であって、その方法は、
a)1)透明な内側ウェル内に位置するUVランプを含むUVランプユニットであって、その透明内側ウェルが透明な外側ウェル内に位置しており、前記外側ウェルには、内側および外側のウェルの壁を冷却するための材料が備えられており;その内側ウェルと外側ウェルが互いに隔離された個別のチャンバーを画定する、ランプユニット;および
2)その中に前記UVランプユニットが挿入されている反応容器;
を含む光塩素化装置の容器を提供するステップと、
b)Clと、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンおよび1種または複数の不飽和フルオロカーボン化合物の蒸留分離不可能混合物とのガス状混合物を前記反応容器中に導入するステップと、
c)ガスの状態で、光塩素化装置からのUV光の存在下、Clと、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンおよび1種または複数の不飽和化合物の蒸留分離不可能混合物との混合物を反応させ、不飽和フルオロカーボンを飽和させて反応混合物にするステップと、
d)1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満の不飽和フルオロカーボンを含有する精製された1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン生成物を分離するステップ、とを含む。
他の実施形態では、ステップd)は、前記反応混合物を蒸留して精製された1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン生成物を得るステップを含む。本発明のさらに他の実施形態では、連続式気相法は、混合物をClと反応させて不飽和フルオロカーボンを飽和させた後に、その方法の任意の時点で1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンから残留するHClおよび塩素を除去する追加のステップe)を含む。本発明のさらに他の実施形態では、ステップe)は、ステップc)とd)との間に実施され、前記反応混合物を水溶液で洗浄して残留するHClおよび塩素を除去するステップと、この水溶液を除去するステップとを含む。
【0012】
連続式気相法は、好ましくは、
a)1.透明な内側ウェル内に位置するUVランプを含むUVランプユニットであって、その透明内側ウェルが透明な外側ウェル内に位置しており、前記外側ウェルには、内側および外側のウェルの壁を冷却するための材料が備えられているランプユニット;および、
2.その中に前記UVランプユニットが挿入されている反応容器;
を含む光塩素化装置の容器を提供するステップと、
b)Clと、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンおよび1種または複数の不飽和フルオロカーボン化合物の蒸留分離不可能混合物とのガス状混合物を前記反応容器中に導入するステップと、
c)光塩素化装置からのUV光の存在下で、Clと、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンおよび1種または複数の不飽和化合物の蒸留分離不可能混合物との混合物を反応させ、不飽和フルオロカーボンを飽和させて反応混合物にするステップと、
d)前記反応混合物を水溶液で洗浄して残留塩酸およびClを除去するステップと、
e)水溶液を除去するステップと、
f)水溶液を除去した後の前記反応混合物を蒸留して、<1000ppm、好ましくは<500ppm、より好ましくは<100ppmの不飽和フルオロカーボンを含有する精製された1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン生成物を得るステップ、とを含む。
【0013】
本明細書で用いる「フルオロカーボン」は、1個または複数のフッ素原子がそれに結合している炭素鎖を意味する。炭素鎖は過フッ素化されていても、すなわちフッ素で飽和されていても、また一部だけフッ素化されていていてもよい。部分的にフッ素化された炭素鎖は、エチレン不飽和であってよい、すなわちアルケン構造を含んでよく、また結合した水素、塩素または臭素原子を有することもできる。したがって、総称用語の「フルオロカーボン」はHFC’s、HCFC’sおよびCFC’sを含む。
【0014】
最初の液相合成からの粗1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンは一般に、約20から40重量%のフルオロカーボン不純物、例えば1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFC1225zc);1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−2−クロロプロペン(HCFC1215xc);1,1,1,3−テトラフルオロ−3−クロロプロペン(HCFC1224zc);1,1−ジフルオロ−2,2−ジクロロエテン(HCFC1112a);トリクロロフルオロメタン(CFC11)および1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−3−クロロプロパン(HCFC235fa)を含む。
【0015】
液相反応によって得られた粗1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンを蒸留して殆どの不純物を除去する。その結果、約0.5重量%未満の他のフルオロカーボンを有する、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンと1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−クロロプロペンとの共沸混合物が得られる。
【0016】
本明細書で用いる「沸点近接混合物(close boiling mixture)」は、非常に近接して一緒に沸騰するので、ほぼ同じ温度で蒸発する化合物の混合物を意味する。そうした沸点近接混合物の例は米国特許第5,414,165号に記載されており、約99重量%の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、約0.2から約0.7重量%のCHClの不飽和異性体を含み、残分が他のフルオロカーボンである。
【0017】
本明細書で用いる「共沸混合物(azeotropic mixture)」は、独立に、化合物のいずれかの沸点より低い温度で一緒に沸騰(蒸発)する化合物の混合物を意味する。本発明により、液相反応で調製物から蒸留により分離された共沸混合物は、約95重量%以上の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンと約5重量%以下のフルオロカーボン不純物を含むことができる。共沸混合物中での最も一般的なフルオロカーボン不純物は、通常1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−2−クロロプロペンである。例えば、液相反応からの蒸留により得られる特定の共沸混合物は、約97と約98重量%の間の1,1,1,3,3,3ヘキサフルオロプロパン、約0.007重量%の1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペン;約2と約3重量%の間の1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−2−クロロプロペン;約0.08重量%の1,1−ジフルオロ−2,2−ジクロロエテン;および約0.05重量%のトリクロロフルオロメタンを含むことが分かった。
【0018】
「混合物を塩素と反応させること」は、蒸留分離不可能混合物中の不飽和化合物を、UV光の存在下で塩素と反応させ、それによって不飽和化合物の二重結合にわたって(二重結合の両方に)塩素を加えて二重結合を塩素飽和させることを意味する。
【0019】
前記混合物を塩素と反応させるステップは、気相中、約0psigから約50psig、好ましくは約1psigから約15psig、より好ましくは約2psigから約10psig、最も好ましくは約5psigの圧力で実施する。反応温度は一般に約−1℃から約100℃、好ましくは約5℃から約70℃、より好ましくは約15℃から約50℃、最も好ましくは周囲温度である。
【0020】
不飽和フルオロカーボンを塩素で飽和させるとその沸点が変化する。したがって、塩素と反応させた後、その混合物を、蒸留などの通常の技術により処理して、残留するフルオロカーボン不純物を除去する。
【0021】
蒸留ステップ自体で、HClおよび塩素から1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンを分離することはできるが、望ましくは、塩素との反応の後で、かつ次の精製ステップ、例えば蒸留の前に、残留する塩酸および塩素を通常分離する。これは一般に、蒸留ステップでのHClおよび塩素の分離が完全でないためである。残留する塩酸および塩素は通常、蒸留の前かまたはその後に、水溶液で洗浄し、次いで水溶液を除去することによって取り除かれる。
【0022】
本明細書で用いる「塩酸」は、水に溶解していてもいなくても、塩化水素(HCl)を含むものとする。
【0023】
塩素化後、反応混合物は通常、酸中和剤および塩素反応物質、例えば苛性(caustic)および亜硫酸水素塩(bisulfite)を含む水溶液で洗浄して過剰の塩素や塩酸を中和する。次いで得られた水溶液を、得られたフルオロカーボンから分離する。液洗浄の場合、通常、水相とフルオロカーボン相の混合物を、上側の水相と下側のフルオロカーボン相とに相分離させ、水相の下から下側のフルオロカーボン相を抜き出すことによって、水相の主要部分を分離する。
【0024】
「苛性(caustic)」は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはその混合物を含む水溶液を意味する。水溶液中の水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの量は一般に約0.01から約0.5重量%である。「亜硫酸水素塩(bisulfite)」は、任意の水溶性亜硫酸水素塩、特に亜硫酸水素ナトリウムおよび亜硫酸水素カリウムを意味する。水溶液中の亜硫酸水素塩の量は一般に約0.01から約0.02重量%である。アルカリ土類水酸化物、例えば水酸化カルシウムまたは水酸化マグネシウムなどの他の酸中和剤を用いることができる。
【0025】
洗浄水溶液からフルオロカーボンを分離した後、通常、蒸留する前に乾燥させて残留水分を除去する。乾燥は、例えば硫酸または乾燥剤などを用いた適切な任意の乾燥方法により実施することができる。「乾燥剤」は、乾燥するフルオロカーボン中に溶解させることなく、あるいはそれを汚染することなく、水分を吸収する任意の材料、例えば硫酸カルシウムまたはモレキュラーシーブを意味する。
【0026】
塩素は、例えばメチルスチレンなどの反応性有機物によって除去することもできる。そうした反応性有機物を用いる場合、塩素と不飽和フルオロカーボンとの反応後、かつ水溶液で洗浄する前に、残留塩素と反応させることができる。次いで、次の蒸留ステップで、塩素−塩素反応性生成有機化合物を除去することができる。
【0027】
UVユニットで使用するUV光源は、約0.01から約10.0ワット時/kg反応混合物、好ましくは約0.02から約2.0ワット時/kg反応混合物、最も好ましくは約0.1から約1.0ワット時/kg反応混合物のUV出力を提供する大きさである。UV光は約300から約400nmの波長を有するものである。紫外線源は適切な任意の光源であってよく、例えば水銀、アルゴンまたはキセノンアーク灯などのアーク灯、ならびに、例えばタングステンおよびハロゲン白熱電球などの白熱電球によって提供することができる。各ランプの実際に有用なUV出力ワットは、選択されるランプの特性に依存する。例えば、10KWのUVランプは、通常、300から400nmの波長範囲で1.2KW(または12%)のUV光を出力する。
【実施例】
【0028】
本発明の1つの例示的ではあるが非限定的な実施形態の図面を参照して、本発明をさらに説明することができる。その方法またはプロセスの概要を図1に示す。ストリーム1を蒸留塔11に供給する。ストリーム1は、上記に論じた米国特許第5,395,997号に記載のような当業者に知られている液相法によって調製される粗1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンを含んでいる。塔11の頂部を出るストリーム2は、約97.6重量%の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンと約2.4重量%の1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−2−クロロプロペンとの共沸混合物であり得る。
【0029】
ストリーム2は光塩素化反応器21に入る。そこには450ワットUV光源があり、それが点灯されている。Clであるストリーム3は別のストリームであってよいが、反応容器21に入る前に、ストリーム2と一緒になったストリームであることが好ましい(図2に示す)。UV光は、Clを不飽和不純物、特に1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−2−クロロプロペンの二重結合にわたって(二重結合の両方と)結合させる。反応器21は約5psig、周囲温度で稼働する。反応器21中の未反応塩素を中和するのに必要な量の亜硫酸水素塩を含む、弱い苛性溶液のストリーム5を、スクラバー槽31に加える。反応させたストリーム4は反応器21を出て、スクラバー槽31中に供給され、そこで苛性の亜硫酸水素塩溶液(caustic bisulfite solution)と混合されて過剰のClまたは塩酸を、亜硫酸水素塩および苛性でそれぞれ中和する。反応させたストリーム4は、気相中でさらに処理するか、後続の処理ステップのために冷却して液ストリームにすることができることが理解されよう。
【0030】
中和した後、ハロカーボン(ストリーム6)を水溶液(ストリーム7)から分離する。液相スクラッビング(scrubbing)の場合、スクラバー槽31の内容物を上側の水相と下側のハロカーボン相に相分離させる。次いでハロカーボン相を、混合槽31の底部からストリーム6として抜き出す。ストリーム6を抜き出した後、水相をストリーム7として抜き出す。
【0031】
不純物から1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンを分離するために、乾燥塔41からの乾燥したストリーム8を蒸留塔51に導入する。蒸留塔51から出たストリーム9は1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンが99.9重量%超であり、不飽和フルオロカーボンは100ppm未満である。ストリーム10は除去された不純物を含む。
【0032】
構成要素であるUVユニット23と反応容器21を合わせた光塩素化装置容器の概略を図2に示す。これは原寸には比例していない。UVユニット23の例を図3に示す。図3を参照すると、UVユニット23は内側ウェル40とその周りを囲む外側ウェル50を備えている。2つのウェルは、例えば密封リング54などによって、互いに隔離された別個のチャンバーを画定している。内側ウェル40の中に、UVランプに電力を供給するために電力源(示していない)が連結されている、電気キャップ70に接続されたUVランプ42が配置されている。ウェル40中に不活性な冷却ガス、例えば窒素の供給/排気系44が備えられており、反応の際の過熱からUVランプ42を守るためのガスを供給し、フィラメントの損傷を阻止するようになっている。内側ウェル40をとり囲む外側ウェル50は、その中に、反応操作の際に内側および外側のウェル、特に外側ウェル50の表面を冷却するための冷却剤(coolant)を提供する、冷却剤供給/排気系を備えている。反応の際にウェル壁を冷たく保持することができなければ、外側ウェルの外側表面上に望ましくない沈着物が形成される結果となり、UV光が塩素ガスと蒸留分離不可能混合物の反応を引き起こすのを阻害または阻止する結果となる恐れがある。さらに、外側ウェルからの過剰な熱は、HFC−236faの望まない分解を引き起こす可能性がある。冷却剤として水、好ましくは脱イオン水を使用することができる。脱イオン水によって、無機性沈着物を清浄化するためにUVランプウェル40および50を取り出しておく時間間隔を長くすることができる。UVユニット23は、それを反応器21に装着するための適切な任意の装着用エレメントを備えていてよい。例えば、UVユニット23は装着用フランジ60を備えていてよい。
【0033】
UVユニット23の透明なウェルは、適切な任意の透明材料でできていてよいが、石英でできていることが好ましい。反応容器21は適切な任意の材料でできており、一般にそれはポリテトラフルオロエチレンでライニングされた炭素鋼である。
【0034】
図2に示すように、ガス状の蒸留分離不可能HFC−236fa混合物とClとは、共通のノズルなどを経由して反応容器21中に導入される。反応混合物は光塩素化されたHFC−236aストリームとして出口ノズルを出る。
【0035】
反応容器は適切なサイズの任意のものでよい。有用なサイズは直径40.64cm(16インチ)、長さ2.743m(9フィート)のものである。ガス状の蒸留分離不可能なHFC−236fa混合物とClとの供給用と、光塩素化生成物の出口用に10.16cm(4インチ)ノズルを用いることができる。一般にこれら2つのノズルは直線距離で約2.438m(8フィート)離されている。反応容器は、内部ガス拡散装置を有することができ、反応ガス流を流し、かつランプユニットを支持するための必要性に応じて、バッフル(baffles)を備えても備えなくてもよい。10KWのUVランプを備えたUV光塩素化容器を用いて、約1500kg/時の粗製HFC−236faを光塩素化し、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満の不飽和フルオロカーボンを含有する精製されたHFC−236faを製造することができる。任意の大きさの反応容器に対する任意の所与の粗供給物フィード速度に対して、最適のワット時/kg粗供給物を実験的に決定することができる。例えば、長さ約2.743m(9フィート)、内径約27.94cm(11インチ)の反応器において、300kg/時の粗供給物に対して5KWのUV光を用いることができる。
【0036】
本発明の他の態様では、問題となる不飽和フルオロカーボンを転換させ、かつ塩素の消費を最少にするか、またはほぼ検出不可能なレベルの不飽和物にするために、塩素と粗HFC−236faとの光塩素化反応用に2つ以上のUV光塩素化容器を直列にして用いることができる。本発明のさらに他の態様では、UV光塩素化容器は、大量の粗HFC−236faを処理してかなりの量の不飽和物を削減するために使用され、例えばもたらされた不飽和物の90%を削減するために使用することができる。次いで、第2の光塩素化容器またはモレキュラーシーブによる仕上げステップ(polishing step)によって、不飽和物のレベルをさらに低減させる。さらに、本発明のUV光塩素化容器は、粗製HFC−134aおよびHFC−245faから不飽和フルオロカーボンを低減させるのに用いることができる。
【0037】
本明細書において、本発明の具体的な実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本明細書で開示した本発明の概念の趣旨および範囲を逸脱することなく、変更、改変および変化を加えることができることを理解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内のすべての変更、改変および変化を包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一般的方法を示す概略フローダイヤグラムである。
【図2】本発明の方法で用いる光塩素化装置の立面図である。
【図3】本発明のUV光塩素化装置のUVユニットの部分的断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンと1種または複数の不飽和フルオロカーボン化合物との粗混合物を精製するための連続式気相法であって、
a)1)透明な内側ウェル内に位置するUVランプを含むUVランプユニットであって、前記透明内側ウェルが透明な外側ウェル内に位置しており、前記外側ウェルには、前記内側および外側のウェルの壁を冷却するための材料が備えられており;前記内側ウェルと外側ウェルが互いに隔離された個別のチャンバーを画定する、ランプユニット;および
2)その中に前記UVランプユニットが挿入されている反応容器;
を含む光塩素化装置容器を提供するステップと、
b)Clと、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンおよび1種または複数の不飽和フルオロカーボン化合物の蒸留分離不可能混合物とのガス状混合物を前記反応容器中に導入するステップと、
c)ガスの状態で、前記光塩素化装置からのUV光の存在下、Clと、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンおよび1種または複数の不飽和化合物の蒸留分離不可能混合物との混合物を反応させ、不飽和フルオロカーボンを飽和させて反応混合物にするステップと、
d)1000ppm未満の不飽和フルオロカーボンを含有する精製1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン生成物を分離するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記混合物をClと反応させて不飽和フルオロカーボンを飽和させるステップの後に、その方法の任意の時点で1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンから残留するHClおよび塩素を除去するステップe)を追加的に含む、請求項1に記載の連続式気相法。
【請求項3】
ステップe)が、ステップc)とd)の間に実施され、かつ、水溶液で前記反応混合物を洗浄して残留するHClおよび塩素を除去するステップと、水溶液を除去するステップとを含み、そして、ステップd)が前記反応混合物を蒸留して精製された1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンを得るステップを含む、請求項2に記載の連続式気相法。
【請求項4】
前記内側ウェルが不活性冷却ガス用の入口を備えており、前記外側ウェル中に提供された冷却剤用の材料が脱イオン水であり、前記内側ウェル中に提供された冷却ガスが窒素であり、前記精製された1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン生成物が<100ppmの不飽和フルオロカーボンを含む生成物である、請求項1に記載の連続式気相法。
【請求項5】
前記透明な内側および外側のウェルが石英製ウェルである、請求項4に記載の連続式気相法。
【請求項6】
前記UVランプが約300から約400nmの波長のUV光を提供する、請求項1に記載の連続式気相法。
【請求項7】
前記精製された1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンが約99.9%の純度である、請求項1に記載の連続式気相法。
【請求項8】
少なくとも2つの光塩素化容器ユニットを直列に備える、請求項1に記載の連続式気相法。
【請求項9】
前記光塩素化容器ユニット中での反応がかなりの量の不飽和フルオロカーボン化合物を低減させ、前記反応に仕上げステップを後続させて不飽和フルオロカーボン化合物の量をさらに低減する、請求項1に記載の連続式気相法。
【請求項10】
塩素と、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンおよび1種または複数の不飽和フルオロカーボン化合物の蒸留分離不可能混合物とを、前記反応容器にそれらを導入する前に合わせて、前記光塩素化反応を周囲温度下、約5psigの圧力で実施する、請求項1に記載の連続式気相法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−515880(P2009−515880A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540141(P2008−540141)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/043417
【国際公開番号】WO2007/058836
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】