説明

光増感剤及び音増感剤と関連してのニトロキシドの使用方法

ここでの教示は、患者中の光増感剤及び音増感剤に起因するマイナスの副作用の改善のための、十分な量のニトロキシドを投与することを含む新しい処置方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光増感剤及び音増感剤と関連しての1以上のニトロキシドの使用に関するものである。特に、ここでの実施態様は、治療及び診断に用いられる光増感剤又は音増感剤の負の作用を和らげるための1以上のニトロキシドの使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光線療法とは、体内に患者の利益となる作用を誘起するために光線を使用する全ての処置を含む用語である。光力学療法(PDT)は、光線療法の特定の形態であり、正常な健康な組織を維持しながら、不要な組織(例えば、癌)を破壊することができる発展中の技術である。概して、PDTは、光増感化合物(光増感剤)、つまり光エネルギー吸収能力を有する分子を利用し、このエネルギーを細胞及び全身の組織で化学反応の進行のために用いる。光増感剤は、単独では概して無害であり、健康、異常組織のどちらにも作用しない。しかし、光線の特定の波長が光増感剤を含む組織に照射された場合、光増感剤は活性化され、PDTの場合組織は急速に破壊されるが、しかしそれは光線が照射された場所のみにおいて起こる。この様に、光線を注意深く適用すれば、この技術は、選択的に、例えば癌等の標的異常細胞の局所処置として使用可能である。
【0003】
現代光力学療法は、恐らくは、1960年代のSchwartz及びLippmanの業績により始まったものである。Schwartzは、蛍光測定において腫瘍性の染色体座に濃縮することが示されたヘマトポルフィリン(Hp)より誘導される製剤を得た。この産物の構造は不明であったため、「ヘマトポルフィリン誘導物」(HpD)と名付けられた。このことがHpDは単独の化合物であるという仮説に繋がり、文献における混乱を生じた。現在は、HpDはポルフィリン構造に基づく多数の産物を含むことが知られている。Hp、プロトポルフィリン(Pp)及び中間脱水生成物である、ヒドロキシエチルビニル重水素化ポルフィリン(HVD)からなるモノマー類の混合物が存在する。HpD調整の最終段階は、希釈基剤への製品の溶解を伴う。この段階が、様々な予期しない反応、ダイマーや高重合度のオリゴマーの形成を含む様々な予期しない反応に繋がる。現在商業的に利用可能な臨床的光増感剤は、PHOTOFRIN(登録商標)(Axcan Pharma社, Quebec カナダによるもの)であり、モノマー及び不安定な成分が非常に少ない製剤である。
【0004】
Doughertyら(1978)による大まかな臨床実験に続き、固体腫瘍の処置においてのHpDを利用する様々な臨床実験及び商業的拡張が、特にPHOTOFRIN(登録商標)についてなされた。
消化器道癌、表面に近い膀胱癌、婦人科の癌、及び皮膚癌の処置については、概して肯定的な結果が報告されている。例えば、日本においては、Hayata、Kato及び彼らの同僚が1982年に肺癌のPDTについての臨床結果を報告している。彼らは、研究において、HpDを使用し、後にPHOTOFRIN(登録商標)を使用した。発達の様々な段階にある299の病巣の初期調査においては、134例の軽快兆候が認められた。追跡研究が、初期段階の中枢性の落屑性の細胞癌についての詳細研究、並びに初期段階の肺癌のための手術中の研究、待機的研究、及び多施設臨床試験について行われた。結果は励みになるもので、方法はコスト効率のよいものだった。
【0005】
1980年代始めには既に、改良された光増感剤、つまり、HpD及びその関連物質について改良されたもの、の製造の仕事が進行中であった。HpD薬剤類は「第一世代」として公知となり;新しいものは「第二世代」と呼ばれた。開発途中の光増感剤薬類のいくつかは、周囲の健康な組織よりも腫瘍(及びある他の種類の増殖性組織)に集中するという望ましい性質をも有し、標的化することをも容易にしている。今や、PDTが恐らく代替療法より少なくとも同等以上だといういくつかの証拠が存在することは明らかである。現在、PDTは癌、及び脈絡膜の脈絡膜新生血管によりしばしば引き起こされる老化関連黄斑変性(AMD)等の病気の処置に用いられている。
【0006】
以下は、PDT及び光診断の背後にある一般的機構の背景である。典型的には、光増感剤は被検体に、(例えば、注射、経口、局所的)により投与され、被検体の全体の器官を循環させられる。光増感剤が光源により活性化された後、電子を高い軌道に移すことにより、光増感剤は三重項状態に励起され、二つの不対電子を生じる。光増感剤が励起された後、生物学的分子と衝突できる。概して三重項状態の光増感剤が生物学的分子と反応することができる2つの機構がある。:タイプI及びタイプII反応である。タイプI反応はラジカルにより仲介され、タイプII反応は電子的に励起され、反応性の高い一重項水素を生じる。
【0007】
より詳細には、タイプI反応は、概して、光増感剤からの直接の電子/水素転移によるイオンの生成、又は、基質分子からの電子/水素引き抜きによるフリーラジカルの形成を伴う。
これらのラジカル類は、次に、急速に、通常酸素と反応し、高反応性酸素種の生成に至る。(例えば、超酸化物及び過酸化物アニオン類)。これらのラジカル類は、次に細胞標的を攻撃する。フリーラジカルは細胞膜を攻撃し、(例えば癌細胞)膜の完全性を喪失させ、壊死性の死に至らしめる。細胞質ゾルのシトクロムC及び高濃度の細胞内のCa2+は、カスパーゼカスケードを活性化させ、DNA分裂及び分子内蛋白の破壊に至る。
【0008】
タイプII反応においては、活性化された光増感剤から分子酸素へのエネルギーの移動は、高度に有毒の反応性酸素種である一重項酸素の形成につながる。典型的には、これら酸素種は、標的となる細胞を、壊死性の機構又はアポトーシスカスケードの開始により殺すことができる。
【0009】
PDTにおいては、これら二つの反応機構を区別するのが難しい。タイプII反応が起こりうる場合においてでさえ、タイプII反応は通常縦列に起こり、ラジカル種によりのみ引き起こされる光生物学的作用を識別するのは難しい。PDTは、癌性細胞を標的にするフリーラジカルの生成により作用するが、光増感剤が標的となる場所から離れて活性化される時には、これらフリーラジカルは、健康な正常の組織、細胞、並びに非細胞器官、及び分子に広い損害を引き起こす。
【0010】
PDTにおいて用いられるほか、光増感剤は、例えば蛍光マーカー等の診断目的にも用いられてきた。PDT同様、光診断もまた、特定の光線の波長を吸収する光増感剤を利用することができる。蛍光及び燐光診断の場合には、照明放射より吸収された光子は、光増感剤の電子を基底状態からより高い状態に励起する。その後、励起された電子は、より低い状態に失活するが、基底状態には直ぐには戻らず、吸収したものよりも長い波長の光子を放射する。このことにより、医療従事者が容易に例えば蛍光スキャナーを用いて通常の組織から癌細胞を区別することができる。
【0011】
不幸にも、多くの光増感剤は長期の皮膚光毒症を有するという大きな欠点を有している。他の光増感剤を治療及び診断に用いることによるによる欠点は、主に大量に全身に導入される容量及び通常蛋白及び糖蛋白に高い非特異的親和性を有すること、630nmにおいて組織への浸透が少ないことによる低い1重項酸素の収量に関連する低いPDT効能、並びに考慮すべき上皮組織への親和性の理由に起因する体内からの非常に長い浄化期間(例えば2.5から3カ月)により処置の間及び処置後に皮膚が赤くなり、日光への皮膚の感度が増加することを含む。さらに、医療従事者は、一般に患者への光増感剤の導入から腫瘍外傷への照射の間24から72時間待たなければならず、この間、患者は大体暗室にいることとなる。
【0012】
これらマイナスの副作用のため、患者は大体薬剤の投与から暫くの間、明るい光を避け、その期間はしばしば照射後数週間になる。このことは、室外で働く人々や、しばしば長時間に渡り日光を浴びる人々にとり、大きな不便となり得る。遮光剤や適切な衣服(長袖シャツ等)は、光増感剤の活性化の防止を助けうるが、光増感剤が標的部位から離れて活性化された場合には、全体や皮膚へのマイナスの副作用を防止する技術が必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここでのある実施態様は、患者の処置方法に関するものであり、十分な量のニトロキシドを投与することにより、光増感剤又は音増感剤により起こるマイナスの副作用の防止又は処置することに関するものを含む。さらなる実施態様では、ここでの方法は、光力学療法において使われる光増感剤に適用しうる。よりさらなる実施態様においては、光増感剤は、例えば、ポルフィリン類、クロリン類、及びフタロシアニン類等から選ばれてもよい。さらに特定の実施態様では、光増感剤はPHOTOFRIN(登録商標)であってよい。さらなる実施態様では、ここでの方法は、酸化ストレス、光に対する異常な感受性、全身性の毒性、及び細胞アポトーシス等のマイナスの作用を改善する。さらなる実施態様では、ここでの方法で使用されるニトロキシドは、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-1-オキシルであってよい。
【0014】
さらなる実施態様では、癌に罹患した患者の処置方法であって、光増感剤のマイナスの作用が改善する様に、治療に有効量の光増感剤を体系的に上記患者に投与すること;患者の標的部位に光線をあてること;そこで、光線は十分に患者を透過し、投与された光増感剤を活性化する波長を有し;及び治療に有効量のニトロキシドを患者に投与することを含むものである。より特定の実施態様においては、光増感剤は、ポルフィリン類、クロリン類、及びフタロシアニン類等からなる群から選ばれてもよい。さらに特定の実施態様では、光増感剤はPHOTOFRIN(登録商標)であってよい。特定の実施態様においては、ここでの方法は、肺、乳房、及び皮膚癌の処置に用いられてもよい。さらに特定の実施態様では、ここでの方法は、酸化ストレス、光感受性、全身性の毒性、及び細胞アポトーシス等のマイナスの作用を改善することができる。
【0015】
他の実施態様は、癌を有すると疑われる患者の診断方法であって、光増感剤のマイナスの作用が改善する様に、治療に有効量の光増感剤を前記患者に体系的に投与すること;そこで、光増感剤は癌性の細胞に対し高い特異性を有し、特定の波長により活性化された時、検出可能な光線の波長を放射することができる;投与された光増感剤を光線の特定の波長で活性化すること;光増感剤の放射された波長を検出すること;及び治療に有効量のニトロキシドを患者に投与することを含む方法を含む。特定の実施態様においては、ここでの方法は、肺、乳房、及び皮膚癌の処置に用いられてもよい。さらに特定の実施態様では、ここでの方法は、酸化ストレス、光線に対する異常な感受性、全身性の毒性、及び細胞アポトーシス等のマイナスの作用を改善することができる。さらなる実施態様では、ここでの方法で使用されるニトロキシドは、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-1-オキシルであってよい。
【0016】
さらなる実施態様は、癌に罹患した患者の処置方法であって、音増感剤のマイナスの作用が改善する様に、治療に有効量の音増感剤を前記患者に体系的に投与すること;患者の標的部位に超音波又は音ルミネセンスをあてること;そこで、超音波又は音ルミネセンスは、患者を十分に患者を透過し、かつ、投与された音増感剤を活性化する波長を有する;及び治療に有効量のニトロキシドを患者に投与することを含む処置方法を含む。特定の実施態様においては、ここでの方法は、肺、乳房、及び皮膚癌の処置に用いられてもよい。さらなる実施態様では、ここでの方法は、酸化ストレス、酸化ストレス、光線に対する異常な感受性、及び細胞アポトーシス等のマイナスの作用を改善することができる。さらなる実施態様では、ここでの方法で使用されるニトロキシドは、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-1-オキシルであってよい。
【0017】
追加の実施態様は、哺乳動物の患者への投与を通じての光増感剤又は音増感剤に起因するマイナスの副作用の予防又は処置のための医薬の調製におけるニトロキシドの使用を含む。さらなる実施態様では、ここでの使用は、光力学療法において使用される光増感剤に適用される。より特定の実施態様においては、例えば、光増感剤は、ポルフィリン類、クロリン類、及びフタロシアニン類からなる群から選ばれてもよい。さらに特定の実施態様では、光増感剤はPHOTOFRIN(登録商標)であってよい。さらに特定の実施態様では、ここでの使用は、酸化ストレス、光に対する異常な感受性、全身性の毒性、及び細胞アポトーシス等のマイナスの作用を改善することができる。さらなる実施態様では、ここでの方法で使用されるニトロキシドは、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-1-オキシルであってよい。
【0018】
他の実施態様は光増感剤又は音増感剤に起因するマイナスの副作用の予防又は処置のための医薬であって、上記医薬はニトロキシドを含むものを含む。さらなる実施態様では、ここでの医薬は、光力学療法の間に光増感剤を投与された患者に適用されてもよい。より特定の実施態様においては、例えば、光増感剤は、ポルフィリン類、クロリン類、及びフタロシアニン類からなる群から選ばれてもよい。さらに特定の実施態様では、光増感剤はPHOTOFRIN(登録商標)であってよい。さらに特定の実施態様では、ここでの医薬は、酸化ストレス、光に対する異常な感受性、全身性の毒性、及び細胞アポトーシス等のマイナスの作用を改善することができる。さらなる実施態様では、ここでの医薬で使用されるニトロキシドは、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-1-オキシルであってよい。
【課題を解決するための手段】
【0019】
光増感剤
ここで開示される方法は、患者の体におけるいかなる光増感剤のマイナスの作用を改善するニトロキシドの使用を含む。ここで用いられる用語「光増感剤」は、広く一般的に光エネルギーを吸収することができ、そのエネルギーを細胞及び組織内での化学反応を進行させるのに用いることができる薬剤に関する。ある実施態様では、用語「増感剤」は、反応性酸素種を含むフリーラジカルを生成する薬剤に関する。ある実施態様では、用語「増感剤」は、光診断で用いられるマーカー、例えば蛍光マーカー等に関する。Bommerらに発行された米国特許第4977177号、並びにPandeyらに発行された米国特許第5591847号、米国特許第5770730号、及び豪州特許第669876号を含む多くの特許が光増感剤を開示しており、それらの全体は、ここに明示して本願に援用される。これらの特許に記述されたものを含むいかなる光増感剤もがここでの方法に用いられうる。
【0020】
光増感化合物には、ポルフィリン類、クロリン類、及びフタロシアニン類の3つの主要なクラスがある。他のタイプの光増感剤は、例えば、修飾ポルフィリン類、バクテリオクロリン類、ナフタロシアニン類、フェオフォルビデ類、プルプリン類を含む。ここで記述される方法は、例えばここで記述される各光増感剤を含むあらゆる光増感剤により起こされるマイナスの作用を改善することができる。PDT及び光診断剤は発展中の分野であるため、ここでの方法は、現在利用可能ないずれかの光増感剤及び将来利用可能となるいずれかの光増感剤により起こされるマイナスの作用を、少なくとも少しでも改善することができることが重要であることを述べておく。
【0021】
いくつかの実施態様では、ここで開示された方法は、例えば、Hpd及びその誘導体PHOTOFRIN(登録商標)(Axcan Pharma社, Quebec カナダにより入手可能)、並びにPHOTOFRINIIを含むポルフィリン類によって引き起こされるマイナスの作用を改善することができる。PHOTOFRINは、肺、食道、胃、頸部の癌、及び頸部の前期癌性状態、等の癌の処置に有効であることが示されている。PHOTOFRIN(登録商標)は、一般に630nm辺りの赤色光により活性化される。
【0022】
さらなる実施態様では、ここで開示された方法は、例えば、クロリン類、又は、バクテリオクロリン類によって引き起こされるマイナスの作用を改善することができる。一般に、クロリン類は、ポルフィリン環のエキソ−ピロール二重結合の一つが水添されていることにより特徴付けられ、そのことにより650nm以上の波長において大きな吸収がある。バクテリオクロリン類においては、ポルフィリン環のエキソ−ピロール二重結合の二つが水添されており、さらに長い波長において最大吸収を有する化合物を生じる。これらの改良された光学特性により、クロリン類及びバクテリオクロリン類は、PDTのための新しい薬剤として広く開発されている。さらに、クロリン類は、より長い波長(例えば、患者の皮膚をより容易に透過する波長)において活性化されるため、HpD等のポルフィリン類よりも、深い腫瘍の処置を可能にする。ここで開示される方法によって改善するクロリン類、又は、バクテリオクロリン類の例としては、例えば、ボネリン、メタ−テトラヒドロキシフェニルクロリン(m-THPC)、モノ-L-アスパルチルクロリンe6(NPe6又はMACE)等を含む。
【0023】
いくつかの実施態様では、ここでの方法は、メタ−テトラヒドロキシフェニルクロリン(m-THPC)によって引き起こされるマイナスの副作用を改善することができる。m-THPCは、Scotia QuantaNova社によって、臨床的な使用のために開発された第二世代の光増感剤である。m-THPCは、また、FOSCAN(登録商標)(Biolitec AG社, Germany)としても知られている。疎水性のクロリンコア及びヒドロキシフェニル基をメソ位に有し、光増感剤の溶解性を増加させる。
m-THPCの最初の臨床研究は、1990年にヒトの中皮腫の処置のために始まり、婦人科、呼吸器系、頭部、頸部の癌のために、合衆国、ヨーロッパ、及び英国において現在開発が進んでいる。
【0024】
m-THPCの有利な点は、PHOTOFRIN(登録商標)との比較により強調される。;光力学的用量の比較において(つまり、低い光増感剤用量、及び、短い蛍光時間で同様の結果を得ることができる点において)、m-THPCは、PHOTOFRIN(登録商標)より、約200倍有効であることが示されている。m-THPCは、ポルフィリン類の混合物というよりむしろ、単一の純粋な化合物である。より長い波長において励起し、m-THPCのモル吸光係数は、PHOTOFRIN(登録商標)のそれよりもずっと高い。;それぞれ652nmにおいて22400M-lcm-1及び630nmにおいて1170M-1cm-1である(メタノール中)。さらに、m-THPCは、より細胞毒性の大きな反応性酸素種を生成する三重項の半減期が長く、腫瘍及び通常組織の間でより選択的であるとされている。さらに、m-THPCは、PHOTOFRIN(登録商標)より疎水性であり;このことが細胞への取り込みを増加させ、in vitroでの高い効能につながる。これらのPHOTOFRIN(登録商標)に対する利点にもかかわらず、m-THPCにより引き起こされる皮膚の光感受性は、PHOTOFRIN(登録商標)よりわずかに低いだけである。
【0025】
他の実施態様では、ここで記述される方法は、モノ−L−アスパルチルクロリンe6(NPe6 又は MACE)によって引き起こされるマイナスの作用を改善又は防止するために使用しうる。Npe6は、水溶性の高いクロリン型の光増感剤であり、654nm(40000M-1cm-1の吸光係数)に吸光ピークを有する。Npe6は、潰瘍保定及び効果的な光動力学損傷より分かる様に、in vitro及びin vivoで効能を有する。
【0026】
さらに、他の実施態様においても、本方法は、バクテリオクロリン類のマイナスの作用を改善又は防止するために使用しうる。今のところ、沢山の施設や会社がバクテリオクロリン類を開発中であり、それらは組織への浸透の点で良好な光学的性質を有している。740nm以上において光を強く吸収するこれらの化合物は、PDT剤として、顕著な潜在性を有する。
【0027】
ある実施例においては、ここで記述された方法はベンゾポルフィリン誘導体一価酸A(BPD)によって引き起こされるマイナスの副作用の予防又は処置のために用いられてもよい。BPDは、QuadraLogic Technologies社(カナダ)により開発されてきた塩素系分子である。
ポルフィリン環の3又は4位のいずれかに一価酸があることにより特徴付けられる疎水性分子である。PDTの吸収ピークは、典型的には650nmに、34000M-1cm-1の吸光係数で存在する。臨床試験において、迅速な潰瘍への蓄積を示した。
【0028】
さらなる実施態様では、本発明は、フタロシアニン類のマイナスの作用を処置又は防止するのに用いられてもよい。フタロシアニン類は着色度の高い化合物であり、広い商業的用途を有し、PDTのための光増感剤として開発されつつある。
【0029】
一般に、フタロシアニン類のピロール基は、ベンゼン環と共役しており、メチン炭素よりむしろアザ窒素によって架橋している。このことが吸収スペクトル長波長側にシフトさせ、Q帯をソレットピークより強いものにする。この赤の吸収ピークのシフトは、これらの化合物類を励起させるためにポルフィリン類の励起に用いられる630nmの光に比較して、増加した組織浸透性を有する長波長光(典型的には、680nm周辺)の使用を許容する。
【0030】
ここで記述された方法は、多くの他の改良された光物理的特性又は潰瘍選択性を有する合成光増感剤のマイナスの作用を処置及び予防することもできる。例えば、これらのものは:プルプリン類、ポルフィセン類、フェオフォルビデ類、ベルジン類などを含む。プルプリン類は、一般に700nmに40000M-1cm-1の吸光係数を有するエチオプルプリンスズ(SnET2)に特徴づけられる一般に630nmから715nmの間の吸収帯を有するポルフィリンマクロ環型のものである。ポルフィセン類は、他の新しい光増感剤より低い活性波長を有しているにもかかわらず(例えば635nm)、HpDより高い蛍光収量を示し、そのため光増感剤としての選択肢に挙げられ易い。フォルビデ類はクロロフィル類(例、フェオフォルビデ)より誘導され、HpDの20倍の有効度を有する。ベルジン類はポルフィリン環のピロール類の一つに縮合したシクロヘキサノン環を含み、HpD及びプルプリン類に似た応答を生じる。
【0031】
他の実施態様においては、ここで記述される方法は、3000年以上に渡り皮膚の障害の処置に用いられてきたものであり、現在も用いられているソラレン類及びそれらの誘導体によって引き起こされるマイナスの作用を改善することができる。これらの化合物類の細胞毒性の作用は、紫外光による活性化の後、生体分子、特にDNAに架橋する能力に起因する。この特定の実施態様においても、ここで記述された方法は、乾鮮や他の皮膚症状を処置するのにしばしば用いられるPUVA(UVAを用いたソラレン)のマイナスの作用を改善するのに用いることができる。
【0032】
さらなる実施態様においては、ここで記述される方法は腫瘍選択性を示すアントラサイクリン化合物類により引き起こされるマイナスの作用を改善することができる。このグループに属するものは、現在化学療法において用いられるが有害な副作用が知られているドキソルビシンを含む。
【0033】
他の実施態様においては、ここに記述された方法は、例えば、Lu-テキサフィリン、SnEt2、テトラヒドロキシフェニルクロリン(THPC)等により引き起こされるマイナスの作用を改善することができる。
【0034】
他の実施態様においては、ここで記述された方法は、合成非ポルフィリン化合物であって、増感作用を示すもののマイナスの作用を処置又は予防することができる。これらの化合物類は、:メチレンブルー等のフェノチアジニウム化合物;口腔病の診断に広い用途を有するトルイジンブルー;シアニン類、例えばメロシアニン540;1900年にRaabにより実証されたアクリジン染料類;腫瘍マーカー誘導体であるナイルブルー;及びローダミン類、例えばミトコンドリアに特異的なローダミン123を含む。
【0035】
ここに開示される方法は、外因性又は合成の光増感剤のマイナスの副作用を処置又は予防するのに加えて、内因性の光増感剤であってプロトポルフィリンIX(PpIX)、ヘム等を例とするポルフィリン類のマイナスの作用を改善することができる。5-アミノレブリン酸(ALA)は、ヘムの生合成の代謝的先駆体である。この経路におけるヘムへの直接の先駆体は、PpIXであり、ある種のポルフィリン症に関連する天然の光増感剤である。PpIXの生成速度は、グリシン及び自由ヘムの濃度により負のフィードバック法で制御されるスクシニルCoAからのALAの合成速度に依存する。PpIXからヘムへの転換は比較的ゆっくりであるため、外因性ALAの投与が負のフィードバック機構を迂回することができ、内因性の光増感剤PpIXの光毒水準の増大を起しうる。
【0036】
ニトロキシドは、内因性のポルフィリン類のマイナスの作用を改善することができるため、ここで開示される方法は、ポルフィリン症を処置又は予防するために用いることができる。ポルフィリン症は、一般にポルフィリン類が、皮膚、骨、歯等の客体の全身の様々な部分に蓄積することに関連するものの総体に関連する。これらのポルフィリン類は、日光により、腐食性の毒素に変換され、組織を浸食することができる。ある実施態様においては、ここでの方法は以下のポルフィリン症により引き起こされる影響の非限定的なリストの防止又は処置に用いることができる:例えば、組織の溶解、傷、深層における色素沈着、貧血その他。
【0037】
以下は、ここで記述される方法と共に用いることができる光増感剤の商標の非限定的なリストである。:PHOTOFRIN(登録商標)(QLT社, Vancouver,カナダ)、PHOTOFRIN II (QLT社, Vancouver, カナダ)、 PHOTOFLORA、 PHOTOSENSE(ロシア)、PHOTOHEM(ロシア)、VERTEPORFINS(登録商標)(QLT社,Vancouver,カナダ)、LUTRIN(Pharmacyclics社,合衆国)、 FOSCAN (BiolitecAG社, ドイツ)、LEVULAN(Dusa Pharmaceuticals社, Toronto, カナダ)、 VISUDYNE(QLT及びNovartis Opthalmics社, Vancouver, カナダ, 及びDuluth, Georgia)、 METVIX (Photocure社, Oslo, ノルウェー)、 PHOTOPOINT SnET2 (Miravant Medical Technologies社, Santa Barbara, California)、 PHOTOPOINT MV9411 (Miravant Medical Technologies社, Santa Barbara, California)、ANTRIN (Pharmacyclics社, Sunnyvale, California)、 LUTRIN (Pharmacyclics社, Sunnyvale, California)。
音増感剤
【0038】
光増感剤により引き起こされるマイナスの作用の処置又は予防に加え、本開示は、また、いずれかの音増感剤により引き起こされるマイナスの作用を改善する方法をも含む。音増感剤は、共に励起する前の状態においては一般に無害であり、励起後においては反応性酸素種で不要な細胞の処置に用いられることができる点において光増感剤と類似している。二種の化合物の主要な違いは、光増感剤は典型的には光エネルギーにより活性化され、音増感剤は典型的には超音波又は音ルミネセンスにより活性化されることである。音力学療法(SDT)は、一般に超音波又は光ルミネセンスでの不要な組織の処置に関連し、典型的には音増感剤、5W/cm2の電力、及び数分間の照射を伴う。
【0039】
SDT及び音増感剤は、Alfheimに発行された米国特許第6498945号により詳細に記述されており、その全体はここに明示して本願に援用される。ここでの予防及び処置方法は、全てこの特許に開示される方法及び音増感剤と共に用いることができる。ある実施態様では、音増感剤は、例えば、水溶性ポリマー(例えば六量体、より高分子のポリマー、及びポリアルキレンオキシド化合物)及びそれらの誘導体、界面活性剤類、水中油型エマルション、安定化粒子、スルホン化された染料等のある種の色素体群等から選ばれてもよい。SDTは開発途中の分野であり、ここに開示された方法はいずれかの現在利用可能な音増感剤及びいずれかの将来利用可能となる音増感剤により引き起こされるマイナスの作用を改善することができるということが重要である。
ニトロキシド類
【0040】
ここで開示される方法は、患者の体内の光増感剤又は音増感剤によって引き起こされるマイナスの作用を改善するためのニトロキシド類の使用に関連する。ある実施態様においては、光増感剤は、光療法(例、PDT)の結果患者の体内に存在しうる。他の実施態様においては、光増感剤は例えば、光診断の結果存在し、他の実施態様においては音増感剤は例えば、SDTの結果存在しうる。
【0041】
ここで、用語「ニトロキシド」は、広く解釈されるものとし、例えば、一般に、種々の生物学的に関連のある化合物、例えば、オキシラジカル類を含むフリーラジカル類等の安定フリーラジカル化合物に関連する。より特定の実施態様においては、ここで記述されるニトロキシド類はフリーラジカルスカベンジャー又は抗酸化剤である。
【0042】
一般に、ニトロキシド類は、光増感剤及び音増感剤を用いることにより引き起こされるマイナスの副作用の多くを改善することができる。これらの作用は、酸化ストレス、皮膚光毒症、皮膚の敏感さ、壊死及びアポトーシスを含む、フリーラジカルの生成により健康な細胞に引き起こされるダメージ等のマイナスの作用を含むが、これらに限定されることはない。ニトロキシド類は、例えば、細胞小器官並びにDNA及びRNA等の分子等への損傷等を含む非細胞損傷をも防止することができる。
【0043】
ある実施態様によれば、ここで開示される方法において用いられるニトロキシド類は、以下の化学式より選択される。:
【化1】

【0044】
ここでXはO・及びOHから選択され、また、Rは、COOH,CONH,CN,及びCH2NH2から選択される。
【化2】

【0045】
ここでXはO・及びOHから選択され、また、R1は、CH3及びスピロシクロヘキシルから、また、R2はC2H5及びスピロシクロヘキシルから選択される。
【化3】

【0046】
ここでXはO・及びOHから選択され、また、Rは、CONHから選択される。
【化4】

【0047】
ここでXはO・及びOHから選択され、また、Rは、H,OH,及びNH2から選択され、TはOから選択される。
【0048】
他の適切なニトロキシドは、Proctorの米国特許第5352442号及びMitchellらの米国特許第5462946号に見い出すことができ、両者の全体は本願に援用される。
【0049】
ここで記述される方法において用いられるニトロキシドのこれらに限定されることのないリストは、また、2-エチル-2,5,5-トリメチル-3-オキゾリジン-1-オキシル(OXANO)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPOL)、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ(Tempamine)、3-アミノメチル-PROXYL、3-シアノ-PROXYL、3-カルバモイル-PROXYL、3-カルボキシ-PROXYL、及び4-オキソ-TEMPOを含む。
【0050】
ここで記述される方法で用いられることができる方法で用いられることができる1つの好ましいニトロキシドは、化学式4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルとして特徴付けられるTempolである。Tempolは、フリーラジカルスカベンジャーとして作用することができ、よって、光増感剤又は音増感剤が被検体の健康な細胞又は組織に有する有害な作用を改善することができる。
【0051】
ある実施態様によれば、ニトロキシドは光増感剤又は音増感剤によって引き起こされるマイナスの作用を改善するために単独の活性成分として用いることができる。他の実施態様においては、ニトロキシドは、他のニトロキシドを含む他の抗酸化剤とともに用いられ、光療法、光診断、及び音力学療法の結果により被検体の体内の光増感剤及び音増感剤により生成される有害なフリーラジカル類を安定化することができる。他の適切な抗酸化剤でニトロキシドと共に用いられるものは、以下のものがあるが、また、これらに限定されない:例えば、ビタミンA,B,C,及びE,セレン,イソフラボン,ポリフェノール類,カロテノイド類,カルノシン類,クエン酸,フェノール化合物,BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール),BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン),没食子酸プロピル,TBHQ(tert-ブチルヒドロキノン),レシチン類,ギア(guiac)ガム、又は樹脂、THBP(トリヒドロキシブチロフェノン),チオジプロピオン酸,ジラウリルチオジプロピオネート,コエンザイムQ10,アルファ-リポ酸,アントシアニン類,ベータ-カロチン,カテキン類,イチョウビルボア(bilboa),ルテイン(lutien),リコペン,グルタチオン,プロアントシアニジン類(proanthocyanidins)等である。
【0052】
ニトロキシド配合物の特徴
ここで使用されるニトロキシド類は、いずれかの適切な配合に取り込まれ得るもの、又は単独で用いられるものである。ここで用いられる特定のニトロキシド配合物は、あらゆる利用可能な方法により患者に投与され得る。ここで使用されるニトロキシド配合物は、意図する投与の方法、例えば、経口、注射を含む非経口、又は局所的等といった投与の態様に依存する。ある実施態様においては、ニトロキシドは製薬的に許容可能な担体や賦形剤との併用の製薬組成物の態様で投与されうる。その比率及び性質は選択されるニトロキシドの溶解度と化学的性質、選択される投与のルート、及び標準的製薬慣習により決定され得る。他の実施態様では、ここで記述されるニトロキシドは、それ自体が有効である限り、安定性、結晶化のための便宜、溶解度の増加等のために、例えば、酸付加塩の形態等の製薬学的に許容可能な塩の形態で配合及び投与され得る。
【0053】
ここでの教示に基づき利用されるニトロキシドは、上記ニトロキシドを生化学的に利用可能とするいかなる形態又は態様、例えば経口、非経口、及び局所的経路を含む、で投与され得る。限定されない投与経路は、経口、皮下、筋内、静脈内、経皮性、鼻内、直腸、局所的等なものを含む。配合物の調製をする当業者は、関連する環境を評価した後、選択されるニトロキシドの特定の特徴に基づき投与の適切な形態又は態様を容易に選択することができる。
【0054】
ある実施態様においては、ニトロキシドは担体又は1以上の賦形剤を含んでもよい。より特定の実施態様においては、担体又は賦形剤は、ニトロキシドのための賦形剤又は培地となることができる固体、半固体又は液体材料であってよい。適切な賦形剤又は培地は当該分野で周知である。さらなる実施態様では、ニトロキシドは、経口、非経口、及び局所的使用に適合する様に変化させることができ、錠剤、カプセル、坐剤、溶液、懸濁液、等の形態で患者に投与されることができる。
【0055】
ある実施態様においては、ニトロキシドは、例えば、不活性賦形剤又は食用担体とともに投与されることができる。他の実施態様においては、ニトロキシドは生薬カプセルに封入されるか、又は錠剤に圧縮されることができる。経口投与に関連するある実施態様のためには、ニトロキシドは賦形剤に取り込まれ、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェハー、チューインガム等の形態で用いられることができる。
【0056】
他の実施態様においては、ニトロキシド含有の錠剤、ピル、カプセル、トローチ等は、製薬類の調製に典型的に利用される補助薬をも含む。
例えば、これらは、1以上の以下の補助薬を含む。:ミクロ結晶性セルロース、トラガカントガム又はゼラチン等のバインダー;デンプン又はラクトース等の賦形剤,アルギン酸、トウモロシデンプン等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸亜鉛等の潤滑剤;コロイド状二酸化シリコン等の滑剤;及び添加可能なスクロース若しくはサッカリン等の甘味剤又は、例えば、ペパーミント、メチルサリチレート、オレンジ香料等の香料。用量単位形態がカプセルの時、上述の材料に加え、例えば、ポリエチレングリコール又は脂肪オイル等の液体担体を含んでもよい。
【0057】
他の実施態様においては、用量単位形態は、例えばコーティングとしての用量単位の物理的形状を修正する他の物質を含んでいてもよい。この様に、錠剤やピルは、糖、シェラック、又は腸溶性コート剤によりコートされてもよい。他の実施態様においては、ニトロキシド含有シロップは、スクロース等の甘味剤、並びに、例えば、ある種の保存料、染料、着色料、香料等を含むことができる。
【0058】
ある実施態様においては、ここで記述される方法において使用されるニトロキシドは、適切な溶媒に溶解する溶質である。他の実施態様においては、ここで記述される方法で使用される方法で用いられるニトロキシドは、例えば、分散液、懸濁液、液体、増粘化液、ゲル、又はエマルションの形態をとる。追加の実施態様においては、ニトロキシド配合物は、クリーム、ローション、軟膏等の形態をとる。上述の配合物の調製法は、Remington's Pharmaceutical Sciences,18th ed. 1990にあり、その全体は本願に援用される。
【0059】
さらなる実施態様においては、非経口、皮内、又は皮下の適用に用いられるニトロキシド溶液又は懸濁液は、例えば、注射用水、生理食塩水のような滅菌賦形剤、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール他の合成溶媒、ベンジルアルコール、又はメチルパラベン等の抗菌剤、アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤、アセチレンジアミンテトラ酢酸等のキレート等のキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩等の緩衝剤、塩化ナトリウム、又はブドウ糖の張度調製剤等を含む。さらなる実施態様においては、pHは、塩酸、水酸化ナトリウム等の酸又は塩基により調製されてもよい。非経口調製物は、例えば、アンプル、シリンジ、ガラス又はプラスチック製の多用量バイアル等に封入されていてもよい。
【0060】
注入物に適切な製薬組成物は、例えば、滅菌水性溶液又は分散液、並びに滅菌注入可能な溶液、分散液等の即時調製のための滅菌粉末を含む。静脈内の投与については、適切な担体は、例えば、生理学的食塩水、静菌性の水、クレモフォア(Cremophor)ELTM(BASF社 Parsippany, N.J.),リン酸塩により緩衝された生理学的食塩水(PBS),等を含む。他の実施態様においては、担体は、例えば、溶媒又は分散媒であって、水、エタノール等のアルコール、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレンレングリコール等のポリオール、これらの適切な混合物等を含むものであってよい。ある実施態様においては、これらの製薬組成物は容易に注入できる範囲にある液体である。適切な流動性は、例えば、レシチン等の皮膜、又は界面活性剤等の使用により維持してもよい。微生物の活動防止は、様々な抗菌性、及び抗真菌性剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等を用いることにより達成してもよい。ある実施態様では、糖類、マンニトール、ソルビトール等のポリアルコール類、塩化ナトリウム等の等張性化剤をニトロキシド含有組成物に用いてもよい。注入可能な組成物の吸収を長期化させることは、例えば、アルミニウムモノステアレート、ゼラチン等の吸収遅延剤を含むことにより実現してもよい。
【0061】
ここでの方法で用いられる注入可能な組成物は、当該分野において既知のあらゆる現在利用可能な方法で調製されうる。注入可能な溶液の調製方法の詳細はRemington's Pharmaceutical Sciences,18th ed. 1990,にあり、その全体はここで本願に援用される。いくつかの実施態様では、注入可能な溶液は、所望量のニトロキシドを適切な溶媒にのみに、あるいは、ここで挙げられた、又は当該分野において既知の1以上の追加の成分と共に、取り込むことにより調製されることができる。さらなる実施態様においては、溶液は、ニトロキシドを溶解した後、滅菌濾過してもよい。
【0062】
他の実施態様においては、ニトロキシド含有分散物は、既知のあらゆる現在利用可能な方法で調製されることができる。注入可能な分散物の調製方法の詳細はRemington's Pharmaceutical Sciences,18th ed. 1990,にあり、その全体はここで本願に援用される。他の実施態様においては、ニトロキシド含有組成物は利用可能なあらゆる方法に基づき調製されうる。いくつかの実施態様では、例えば、ニトロキシドを基礎の分散媒体を含む滅菌媒体に単体で取り込むことにより、あるいは、ここで挙げられた、又は当該分野において既知の1以上の追加の成分と共に取り込むことにより、注入可能な分散物は調製されることができる。
【0063】
他の実施態様は、低残留配合中のニトロキシドの使用を伴う。低残留配合の開発は、低残留ゲル、増粘化液、液体等のニトロキシド溶液を調製することにより行われる。さらなる実施態様は、適用の際、処置域から直ぐに流れ落ちることのない十分な粘度を有する配合物中のニトロキシドを含む。十分な粘度有する配合物の開発は、ニトロキシドを、例えば、ゲル、液体、増粘化液、エマルション、分散物、及び懸濁液中に含む溶液を調製することによりなされる。
【0064】
ここでの実施態様は、ニトロキシドを含む局所的配合物の使用方法を含む。特定の実施態様においては、局所的配合物は、患者の頭皮、顔面、頸、胸部、腕部、脚部、胴部、背部等を含む皮膚の全ての部分に容易に適用されることができる様に調製されうる。局所的配合物は、また、眼、口、鼻、膣、直腸等を含む全ての領域の患者の全ての粘膜に適用されることができる。ある実施態様においては、粘膜の処置に用いられる処置は、水、又は他の無刺激性溶媒を含むことが好ましい。追加の実施態様においては、粘膜に適用される配合物は、アルコール、尿等の刺激性溶媒を含まない。
【0065】
局所的配合物においては、ニトロキシド又は他の活性成分の総吸収量は、適用領域のサイズ、適用の頻度及び強さ、並びに適用媒体の粘度又は厚さを含む多くの要素に基づき大きく変わりうる。
薬剤吸収に影響を与える他の要因は、適用部位、年齢、皮膚の状態である。例えば、角質化せず、高齢で、切断又は磨耗された皮膚は、これらの皮膚の基型が活性成分により、より容易に浸透され易いため、高い薬剤吸収を示すだろう。この様に、ここでの一つの実施態様は、処置される患者によるニトロキシドの吸収を最大とすることである。
【0066】
他の実施態様は、十分な粘度を有する局所的配合物を含む。ある実施態様においては、製薬組成物はニトロキシド及び他の活性成分を処置領域への適切な吸収を許容する十分な時間に渡る接触を保つ粘度を有するべきである。いくつかの実施態様では、配合物は処置部分から直ぐに流れ落ちることのない適切な粘度を有するべきである。従って、配合物を一定の場に保つ方法はここに包含される。
【0067】
代替的な実施態様は、粘度の低い局所的配合物であって、液体及び濃厚化された液体を含むが、それらに限定されないものを含む。いくつかの実施態様では、液体及び濃厚化された液体は、適切な適用を許容する適用具の助けにより、処置領域へ適用され得る。適用具は、布、ぼろ切れ、スポンジ、タオル、ガーゼ等の吸収性物質を含むがそれらに限定されない。そして、適用具及びニトロキシド溶液は、ここで記述される方法の一つの面である。
【0068】
ニトロキシド及び溶媒を含むことに加えて、ここでの局所的組成物は、ポリマー、色素、抗菌剤、保存料、抗酸化剤、アルコール、皮膚軟化薬、追加の活性成分、処置領域の浸透性を向上させる成分、水、他の局所的配合物において共通に用いられている成分をも含む。
【0069】
当業者は、ニトロキシドの配合物の粘度を、ポリマーで容易に修正できる。実施態様は、例えば、ニトロキシドの溶解に用いられる溶媒と中から高程度の融和性を持つ1以上の適切なポリマーを含む配合物を含む。ある実施態様においては、ポリマーは、エチレンポリマー、アクリルポリマー、ポリビニルピロリドン類(PVPs)、ポリビニルコポリマー、セルロースポリマー、同修飾セルロースを含むもの、コラーゲンを含む天然ポリマー、ポリスチレンポリマー、シリコーンポリマー、無機ポリマー、等から選択されることができる。
【0070】
使用できるエチレンポリマーの例は、酸化ポリエチレン、ポリエチレン、ポリエチレングリコール等を含むが、これらに限定されない。
【0071】
使用できるアクリルポリマーの例は、アクリルエステル、メタクリルエステルコポリマー、アクリルポリマーエマルション、カルボマー、エチレンアクリレート、メタアクリロイルエチルベタイン、メタクリレートコポリマー、オクチルアクリルアミド、アクリレート類、ブチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ポリクォータニウム(polyquaternium)-5、ポリクォータニウム(polyquaternium)-6、ポリクォータニウム(polyquaternium)-7、ポリクォータニウム(polyquaternium)-15等を含むが、これらに限定されない。
【0072】
ポリビニルピロリドン類(PVPs)の例は、ポリクォータニウム(polyquaternium)-11、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVP/ジメチルアミノメチルメタクリレートコポリマー、PVP/エルコセンコポリマー、PVP/エチルメタクリレート/メタクリル酸ターポリマー、PVP/ヘキサデセンコポリマー,PVP/VAコポリマー,スチレン/PVPコポリマー等を含むが、これらに限定されない。
【0073】
ポリビニルコポリマーの例は、エチレンビニルアセテートコポリマー、PVM/MAコポリマーエステル、ビニルアセテート/クロトン酸コポリマー、ビニルアセテート/クロトン酸/メタクリロキシベンゾフェノン-1コポリマー,ビニルアセテート/クロトン酸/ビニルネオデカノエートコポリマー,カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,PEGセルロース類,ポリクォータニウム(polyquaternium)-4、ポリクォータニウム(polyquaternium)-10等を含むが、これらに限定されない。
【0074】
天然ポリマー類の例は、アカシア、寒天(agar)、アルギネート(alginate)、カラギーナン、ファーセレラン(Furcelleran)、ゼラチン、インドゴム(ghatti gum)、グリコサミノグリカン類、グアールガム(guar gum)、グアールガム(guar gum)誘導体、ヒドロキシプロピルグアール(guar)、ヒアルロン酸、カラヤ(karaya)、ロカスト(locust)豆ガム、マルトデキストリン(maltodextrin)、ペクチン、トラガカントガム、キサンタン等を含むがこれらに限定されない。
【0075】
ポリスチレンポリマー類の例は、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムを含むが、これに限定されない。
【0076】
シリコーンポリマー類の例は、アミノビスプロピルジメチコン、シクロメチコン、ジメチコン、ジメチコンコポリオール、ヘキサメチルジシロキサン、メチコン、オクタデシルジメチコン、フェニルジメチコン、ステアロキシジメチコン等を含むが、これらに限定されない。
【0077】
無機ポリマーの例は、ベントナイト、修飾ベントナイト、マグネシウムアルミニウムシリケート、修飾ヘクトライト(hectorite)、マグネシウムナトリウムシリケート等を含むが、これらに限定されない。
【0078】
上述のポリマー類は、ここで記述の、液体、増粘化液、ゲル、エマルション、分散物、及び懸濁液を含む全ての局所的組成物及び配合物において用いられてもよい。
【0079】
ニトロキシドに適切な溶媒
Tempol等のニトロキシドは、容易に水溶液に溶解する。いくつかの実施態様では、ニトロキシドは溶媒に溶解され、ゲル、増粘化液、液体、等を含む配合に調製されうる。当業者は、あらゆる適切なレベルで水と混和性を有する液体が溶媒として使えることを容易に評価できるものとし、これらのものは、グリセリン、PEG類、ポリソルベート類等を含むが、これらに限定されない。
【0080】
以下のものは、ニトロキシドのために用いることができる溶媒の非限定的なリストである。:水、尿素、アルコール類、グリコール類。ニトロキシドを溶解することができるあらゆるアルコールは、ここで記載の配合物及び方法で用いることができる;例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等を含む。同様に、ニトロキシドを溶解することができるあらゆるグリコール類も、ここで記述の配合物及び方法において用いることができる;例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等を含む。一つの好ましい実施態様においては、溶媒はニトロキシドを溶解するだけでなく、経皮伝達を促進する。
この様に、経皮伝達促進剤、特に爪角質層の成分を中断又は溶解するものが特に好まれる。他の実施態様においては、ニトロキシドの皮膚への浸透を促進する様々なアルコール類がここでの方法とともに使用可能である。追加のな実施態様は、患者の全身系の処理を許容する利用可能な経皮性向上剤を含む。
【0081】
本発明のある実施態様においては、活性成分であるニトロキシドの濃度は、溶解度限界に近い濃度レベルであってよい。例えば、ニトロキシドは、溶液中、飽和の約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%及び100%であってよい。
実施態様は、ニトロキシドが処理領域での適用時に所望の速度で放出を促進するように溶媒中で十分に溶解している配合物をも含む。上述の全ての溶媒類は、ここで記述の、ゲル類、濃厚化液、液体等を含む溶液において用いることができる。
ゲル類
【0082】
上述の様に、いくつかの実施態様では、製薬組成物を含むニトロキシドはゲルの形態の局所的配合である。ここで使用される様に、ゲルは、その間を液体で満たされた、小さな無機粒子又は大きな有機分子のいずれかからなる懸濁液の半固体系に関連する。一般に、外部からの干渉なしに暫く置かれた場合には、ゲルは、半固体又はゼラチン状態であってよい。ゲルによっては、少量の水が静止状態で分離する。
【0083】
当業者は、ゲル類の調製方法を容易に知るであろう。このようなゲル類の調製方法の詳細はRemington's Pharmaceutical Sciences,18th ed. 1990,にあり、その全体はここで本願に援用される。1の実施態様においては、ゲルは1以上の適切なポリマー類を必須量の適切な溶媒にゆっくり分散することにより調製される。適切な溶媒及びポリマーについては、上述の議論がある。調製の1方法によれば、ポリマー及び溶媒はポリマーが完全に溶解するまで攪拌されてもよい。水は、攪拌されるにつれポリマー/溶媒溶液に加えられてもよい。十分な量のニトロキシドは、ニトロキシドが十分に溶解できる限り、攪拌混合物に加えられてもよい。
【0084】
ゲルは、単相又は多相系であってよい。小さな離散粒子のネットワークからなるゲルの内部は、一般に2相系と名付けられ、一方単相のジェルは、典型的には、分散した巨大分子と液体の間に見かけの境界が存在しない様に液体に均一に分散した有機巨大分子からなる。
【0085】
ある実施態様においては、ゲルは水アルコールゲルであってよい。いくつかの実施態様では、エタノール等のアルコールは、PEG-40、水添カストールオイル、ポリソルベート20、又は同様の成分の使用を避けつつニトロキシドを溶解するのに用いられる。これらの溶解剤がないことで、べた付き感及びゴムのような感覚が事実上なくなり、製品の美容感触が大きく上昇する。製薬組成物が有意の量のアルコール(例えば、エタノール)を含む場合、追加の保存料は必要とされない。
【0086】
当業者は、ここで記述した配合特性を有する水アルコールゲルを容易に調製する数多くの方法を用いることができる。水アルコールゲルの1つの調製方法によると、溶液は、エタノール中にニトロキシドを溶解することにより調製される。ニトロキシド/エタノール溶液は、ヒドロゲルに加えることができる。ある実施態様によると、ニトロキシド/エタノール溶液は、予め調製されたヒドロゲルに、ゆっくり動くアンカー型撹拌機を用い、水アルコールゲル中の空気泡の生成を抑制しつつ加えることができる。
【0087】
水素結合の減少により、水アルコールゲルの粘度は、一般に、対応するヒドロゲルの粘度より低い。とにかく、当業者は、水アルコールゲルの成分を、望ましい成果のための適切な粘度を有する組成物の調製のために調整できる。例えば、上述の増粘剤又はポリマーを特定配合の粘度の上昇のために用いることができる。
【0088】
ある実施態様においては、ゲルはスプレー可能である。スプレー可能なゲルの調製方法は周知である。スプレー可能なゲルの調製の1の実施態様によると、適切なポリマーを水に加えることができる。水和及び化学構造の発達に際し、濃厚化ポリマー/水混合物を、ニトロキシド/溶媒溶液に加えることができる。
液体配合物
【0089】
ここでのさらなる実施態様は光増感剤又は音増感剤からの作用を防止又は改善するための窒化酸素含有液体配合物を含む。例えば、ニトロキシドは、ここで議論される適切な溶媒に溶解されることができる。以下はTempolのための溶媒として使用されることができる非限定的なリストである。:水、尿素、アルコール類、グリコール類等。これらの液体配合は、それを必要とする患者に適用するために、タオル、布、ぼろ切れ、スポンジ、ガーゼ等の吸収性物質を含む適用具の助けと共に用いられ得る。
【0090】
さらなる実施態様は、ニトロキシド含有液体溶液の増粘化のためにポリマーを添加することを含む。上述のポリマーのいずれかは、これらの配合物についての増粘化剤として用いられることができる。例えば、以下のポリマーは、増粘化剤として使用できる、エチレンポリマー、アクリルポリマー、ポリビニルピロリドン類(PVPs),ポリビニルコポリマー、セルロースポリマー、天然ポリマー、ポリスチレンポリマー、シリコーンポリマー、無機ポリマー等である。
【0091】
当業者は、ここで記述される方法に係る濃厚化液体溶液の調製方法を容易に知るであろう。このような液体の調製方法の詳細はRemington's Pharmaceutical Sciences,18th ed. 1990,にあり、その全体はここで本願に援用される。ここで記述される配合物が濃厚化液において実践されるなら、この液体を20〜100000センチポイズ以上の粘度にするのに有利である。
組成物の使用方法
【0092】
ニトロキシドは、例えば、経口、局所的、又は非経口を含む、あらゆる利用可能な方法により、患者に投与され得る。経口投与は、例えば、錠剤、シロップ、ゲルカプセル等である。注射は、例えば、皮下、整脈、又は筋内注射により行われる。
【0093】
ここで記述のニトロキシド配合物の局所的適用のための適切な領域は、皮膚、粘膜の全ての領域を含む。方法は、頭皮、顔面、頸、胸部、腕部、脚部、胴部、背部等を含む皮膚の全ての部分に配合物を塗布することを含むが、これに限定されない。さらに、方法は、口、鼻、眼、膣、直腸等の領域を含むが、これらに限定されない粘膜に配合物を適用することを含むが、これに限定されない。
【0094】
いくつかの実施態様は、ニトロキシドの吸収を促進させるために、ニトロキシド含有配合物を罹病性のある患者にこすりつけることを含む。こすりつけることは、医療従事者の手、典型的には手袋をはめたままで、により、代替的には布、タオル、スポンジ、ぼろ布、ガーゼ等の適用具によりされてもよい。代替的には、処置領域に適用される際、配合物は吸収の為に残っていてもよい。特定の実施態様は、十分な量の4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-1-オキシル等のニトロキシドを、光増感剤又は音増感剤のマイナスの作用の防止又は改善の為に局所的に適用することを含む。
【0095】
光増感剤又は音増感剤の作用の防止又は改善をすることができるあらゆる用量の特定のニトロキシドは、ここで記述される方法と共に、用いられることができる。ある実施態様では、ニトロキシドは、例えば、約1、1.5、2、2.5、3、3.25、3.5、3.75、4、4.25、4.5、4.75、5、5.25、5.5、5.75、6、6.25、6.5、6.75、7、7.25、7.5、7.75、8、8.25、8.5、8.75、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9及び10mg/kgのいかなる用量でも用いられることができる。他の実施態様においては、ニトロキシドの用量は、例えば、約10.5、 11、 11.5、 12、 12.5、13、13.5、14、14.5、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、及び300mg/kgである。
【0096】
いくつかの実施態様では、ニトロキシドは、光療法、光診断、またはSDTの直後、または暫くたってから患者に投与されることができる。ある実施態様においては、ニトロキシドは、患者が光療法、光診断、またはSDTを経験してから、約8、7、6、5、4、3、又は2週後に投与されてもよい。
他の実施態様においては、ニトロキシドは、患者が光療法、光診断、またはSDTを経験してから、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、又は2日後に投与されてもよい。さらなる実施態様においては、ニトロキシドは、患者が光療法、光診断、またはSDTを経験してから、約24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、又は2時間後に投与されてもよい。他の実施態様においては、ニトロキシドは、患者が光療法、光診断、またはSDTを経験してから、約119、118、117、116、115、110、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、又は2分後に投与されてもよい。他の実施態様においては、ニトロキシドは、患者が光療法、光診断、またはSDTを経験してから、約119、118、117、116、115、110、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、又は2分後に投与されてもよい。
特定の実施態様においては、ニトロキシドは被検体に、被検体が光線に露出する前に、火傷防止のために投与される。
【0097】
いくつかの実施態様では、ニトロキシドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10用量で投与される。他の実施態様においては、毎日、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は約10回投与される。他の実施態様においては、光療法、光診断、SDT等を経験した患者への日常的投与(例えば、毎月、月2回、毎週、週2回、週3回、毎日、1日2回、1日3回)を含む。他の実施態様においては、例えば、ニトロキシドの半減期の1又は2倍の期間後投与されてもよい。
【0098】
方法の実施態様は、患者の体内の光増感剤又は音増感剤により引き起こされるマイナスの作用を改善することができるあらゆるニトロキシドを含む。ここで使用される用語「改善する」とは、防止又は処置方法を含む。用語「作用」、「有害な作用」、及び「マイナスの作用」は、広く解釈され、例えば、あらゆる有害な結果(間接的及び直接的の両者)に関連する。例としては、酸化ストレス、壊死、光感受性(火傷に繋がるもの)、一般毒性、光毒症、アポトーシス、及び細胞小器官、DNA、RNAへのダメージを含む非細胞損傷を含む。ある実施態様においては、ここでの方法は、現在利用可能な光療法(例、PDT)及びSDTの方法と共に用いられてもよい。他の実施態様においては、ここでの方法は、将来開発されるであろう処置方法と共に用いられてもよい。他の実施態様においては、ここでの方法は、光診断、現在利用可能及び将来利用になるであろう両方法とともに用いられてもよい。
【0099】
光療法(例、PDT)、SDT及び光診断は、広く多様性な病気及び症状に適用される。ここで記述される方法は、以下の患者の病気及び症状の非限定的なリストの処理、防止、又は診断のために用いられる光増感剤又は音増感剤のマイナスの作用の改善のためのニトロキシドの使用を含む。:前立腺のアデノーマ、移植における拒否反応(例、免疫細胞の殺傷のための感作物質の使用)、良性前立腺肥大、慢性前立腺炎、耳鼻咽喉科学の病気(例、静脈洞炎、フロンティティス(frontitis)、多飲(polyposis))、新生血管眼病(例、湿式のAMD、糖尿病性網膜症、新生血管網膜の疾患、網膜中心静脈閉塞、虹彩皮膚潮紅、単純疱疹、角膜炎、トラコーマ、プテンジナム(ptenygium)ヒストプラスマ症、中心窩下脈絡膜の新生血管形成)、アテローム性動脈硬化症のプラーク(例、光血管形成)、十二指腸周囲炎、慢性及び急性歯肉炎、肺胞炎、自己免疫疾患(多発性硬化症、リウマチ様関節炎を引き起こす免疫細胞を殺す為の増感剤を使用する。)、敗血症、細菌性の感染、酵母感染、ウイルス性の又は炎症性の疾患、子宮頚管炎、子宮内膜症、子宮の類線維腫、生殖器のイボ(verucca)、イボ(warts)、骨盤の炎症性の疾患、クラミジア属疾患、頸部の前悪性又は悪性腫瘍、ざ瘡、酒/、乾癬、ヘルペス、乳頭腫、化膿性の創傷、潰瘍、帯状ヘルペス、脂漏症皮膚炎、白斑症、ヒストプラスマ症、コクシジオイデス真菌症、脱毛、母斑除去、ケロイド瘢痕、刺青、間接病(例、リウマチ様の関節炎、骨髄炎)、ホルモン欠乏症、精神性の鬱病、獣医学病(例、癌、化膿性創傷、潰瘍)、ウイルス性の感染(例、ヒト免疫不全ウイルス1型、単純ヘルペスウイルス1型および2型、ヒトサイトメガロウイルス、麻疹、シミアンウイルス、乳頭腫ウイルス)および白血病。
【0100】
他の実施態様においては、ここでの方法は、ヒト型結核菌、らい菌、マラリア、オンコセルシアシス(oncocerciasis)等の熱帯病の処置、予防、診断に用いられる光増感剤又は音増感剤のマイナスの作用を改善する為のニトロキシドの使用を含む。
【0101】
ある種の実施態様においては、ここでの方法は、あらゆるタイプの癌(潰瘍及び前癌症状を含む)であって、以下のものを含むがこれらに限定されないものの処置、予防、及び診断に用いられる光増感剤又は音増感剤のマイナスの作用を改善するニトロキシドの使用を含む。:脳、喉頭、肺、口腔、胸部、卵巣、精巣、皮膚(例、黒色腫、基底及び鱗状の細胞癌腫)、食道、胃、胆汁嚢、頚部、骨組織、膀胱、血液(例、白血病)、頭部、並びに、頸の癌。
【0102】
さらなる実施態様は、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等のニトロキシドを十分量光増感剤又は音増感剤により引き起こされる有害な副作用の予防又は処置のために局所的に適用することを含む。
均等物
【0103】
前記の記述は、ここでの開示のある好ましい実施態様について詳述し、発明者により熟考された最高の形態について記述する。しかし、前記がいかに詳細に本文に記載されていようとも、光増感剤又は音増感剤の作用を改善するためのニトロキシドの使用方法は、多くの方法で実施されうるし、また、ここでの開示は、付属のクレーム及びその均等物に基づき理解されるべきであることを重視するべきである。前記記載の詳細は、当業者が、ここで記述された実施態様を実施するのに十分であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光増感剤及び音増感剤からなる群から選択される化合物に起因するマイナスの副作用の防止又は処置のために、十分な量のニトロキシドを投与することを含む患者の処置方法。
【請求項2】
前記光増感剤は光力学療法において使われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光増感剤はポルフィリン類、クロリン類、及びフタロシアニン類からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光増感剤はPHOTOFRIN(登録商標)である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ニトロキシドは、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-1-オキシルである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記マイナスの副作用は、酸化ストレスである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記マイナスの作用は、光感受性である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記マイナスの作用は、全身性の毒性である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記マイナスの作用は、細胞アポトーシスである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
癌に罹患した患者の処置方法であって、光増感剤のマイナスの作用を改善する様に、
治療に有効量の光増感剤を前記患者に体系的に投与すること;
患者の標的部位に光線をあてること;そこで、光線は患者を十分に患者を透過し、かつ、投与された光増感剤を活性化する波長を有する;及び
治療に有効量のニトロキシドを患者に投与することを含む患者の処置方法。
【請求項11】
前記癌は、肺癌である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記癌は、乳癌である請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記癌は、皮膚癌である請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記光増感剤はポルフィリン類、クロリン類、及びフタロシアニン類からなる群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記光増感剤はPHOTOFRIN(登録商標)である請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記ニトロキシドは、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-1-オキシルである請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記マイナスの副作用は、酸化ストレスである請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記マイナスの作用は、光感受性である請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記マイナスの作用は、全身性の毒性である請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記マイナスの作用は、細胞アポトーシスである請求項10に記載の方法。
【請求項21】
癌を有すると疑われる患者の診断方法であって、光増感剤のマイナスの作用が改善する様に、
治療に有効量の光増感剤を前記患者に体系的に投与すること;そこで、光増感剤は癌性の細胞に対し高い特異性を有し、特定の波長により活性化された時、検出可能な光線の波長を放射することができる;
投与された光増感剤を光線の前記特定の波長で活性化すること;
光増感剤の放射された波長を検出すること;及び
治療に有効量のニトロキシドを患者に投与することを含む患者の診断方法。
【請求項22】
前記癌は、皮膚癌である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記癌は、乳癌である請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記癌は、皮膚癌である請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記ニトロキシドは、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-1-オキシルである請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記マイナスの副作用は、酸化ストレスである請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記マイナスの作用は、光感受性である請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記マイナスの作用は、全身性の毒性である請求項21に記載の方法。
前記マイナスの作用は、細胞アポトーシスである請求項21に記載の方法。
【請求項29】
癌に罹患した患者の処置方法であって、
音増感剤のマイナスの作用が改善する様に、
治療に有効量の音増感剤を前記患者に体系的に投与すること;
患者の標的部位に超音波又は音ルミネセンスをあてること;そこで、前記超音波又は音ルミネセンスは、患者を十分に患者を透過し、かつ、投与された音増感剤を活性化する波長を有する;及び
治療に有効量のニトロキシドを患者に投与することを含む処置方法。
【請求項30】
前記癌は、肺癌である請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記癌は、乳癌である請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記癌は、皮膚癌である請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記マイナスの副作用は、酸化ストレスである請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記マイナスの作用は、光感受性である請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記マイナスの作用は、全身性の毒性である請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記マイナスの作用は、細胞アポトーシスである請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記ニトロキシドは、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-1-オキシルである請求項29に記載の方法。
【請求項38】
哺乳動物の患者への投与を通じての光増感剤又は音増感剤に起因するマイナスの副作用の予防又は処置のための医薬の調製におけるニトロキシドの使用。
【請求項39】
前記光増感剤は光力学療法において使用される請求項38に記載の使用。
【請求項40】
前記光増感剤はポルフィリン類、クロリン類、及びフタロシアニン類からなる群から選択される請求項38に記載の使用。
【請求項41】
前記光増感剤はPHOTOFRIN(登録商標)である請求項38に記載の使用。
【請求項42】
前記ニトロキシドは、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-1-オキシルである請求項38に記載の使用。
【請求項43】
前記マイナスの副作用は、酸化ストレスである請求項38に記載の使用。
【請求項44】
前記マイナスの作用は、光感受性である請求項38に記載の使用。
【請求項45】
前記マイナスの作用は、全身性の毒性である請求項38に記載の使用。
【請求項46】
前記マイナスの作用は、細胞アポトーシスである請求項38に記載の使用。
【請求項47】
光増感剤又は音増感剤に起因するマイナスの副作用の予防又は処置のための医薬であって、前記医薬はニトロキシドを含むもの。
【請求項48】
前記光増感剤は光力学療法において用いられる請求項47に記載の医薬。
【請求項49】
前記光増感剤は、ポルフィリン類、クロリン類、及びフタロシアニン類からなる群から選ばれる請求項47に記載の医薬。
【請求項50】
前記光増感剤はPHOTOFRIN(登録商標)である請求項47に記載の医薬。
【請求項51】
前記ニトロキシドは、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-1-オキシルである請求項47に記載の医薬。
【請求項52】
前記マイナスの副作用は、酸化ストレスである請求項47に記載の医薬。
【請求項53】
前記マイナスの作用は、光感受性である請求項47に記載の医薬。
【請求項54】
前記マイナスの作用は、全身性の毒性である請求項47に記載の医薬。
【請求項55】
前記マイナスの作用は、細胞アポトーシスである請求項47に記載の医薬。

【公表番号】特表2007−500227(P2007−500227A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533332(P2006−533332)
【出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/016190
【国際公開番号】WO2004/105860
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(306040540)ミトス・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】