光変調装置および光変調方法
【課題】高速応答性を有し、伝送劣化が抑制された高品質な光位相変調を行う。
【解決手段】光変調装置10は、反転部13、非線形媒質15−1、非線形媒質15−2および光干渉部16を備える。反転部13は、変調信号光のパワーを反転させて、反転変調信号光を生成する。非線形媒質15−1は、被変調光を変調信号光の非線形光学効果によって位相変調させる。非線形媒質15−2は、被変調光を反転変調信号光の非線形光学効果によって位相変調させる。光干渉部16は、非線形媒質15−1の出力光と、非線形媒質15−2の出力光との干渉制御を行って、位相変調された被変調光を出力する。
【解決手段】光変調装置10は、反転部13、非線形媒質15−1、非線形媒質15−2および光干渉部16を備える。反転部13は、変調信号光のパワーを反転させて、反転変調信号光を生成する。非線形媒質15−1は、被変調光を変調信号光の非線形光学効果によって位相変調させる。非線形媒質15−2は、被変調光を反転変調信号光の非線形光学効果によって位相変調させる。光干渉部16は、非線形媒質15−1の出力光と、非線形媒質15−2の出力光との干渉制御を行って、位相変調された被変調光を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光位相変調を行う光変調装置および光変調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット等によるマルチメディアサービスの拡大に伴い、ネットワーク上を流れる情報量は飛躍的に増大している。このような状況において、高速・大容量の情報を遠距離まで低コストで伝送するために、光通信ネットワークの構築が進展している。また、光通信ネットワークの通信方式としては、長距離伝送に優れた光位相変調方式が注目されている。
【0003】
光位相変調方式は、光の位相を変化(変調)させて情報を重畳させる方式であり、代表的なデバイスに、マッハ・ツェンダ干渉計(Mach−Zehnder interferometer)を使用した光変調器がある。
【0004】
この光変調器は、強誘電体媒質であるニオブ酸リチウム(LiNbO3:LNとも表記)等を用いた結晶基板上に、光導波路で形成されたマッハ・ツェンダ干渉計が設けられる。そして、この光導波路に電気信号を印加して、光導波路の屈折率変化を利用することで、光導波路内を伝搬する光の位相変調を行うものである。
【0005】
一方、電気信号を介さずに光信号を直接用いて光位相変調を行う光直接位相変調方式がある。この方式は、非線形媒質内にデータ信号光を入力し、データ信号光のパワーに依存する非線形光学効果(相互位相変調(XPM:Cross Phase Modulation)など)によって屈折率変化を発生させて、位相を変調させるものである。
【0006】
なお、非線形光学効果とは、ガラス中に比較的強いパワーの光を伝搬させたとき、光強度に応じてガラスの物性(屈折率)が変化し、光学的な応答が線形性を失う現象のことである。
【0007】
光変調の従来技術としては、ファイバループの干渉計に代えて、内部で光空間平行光が伝送される空間干渉系を用いた光変調器が提案されている(特許文献1)。また、電界吸収型光変調器の吸収飽和に起因する屈折率変化を利用して、干渉計構成によって被制御光を制御する技術が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−194375号公報
【特許文献2】特開2001−264712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
光位相変調方式として、上記のような、LN結晶基板上にマッハ・ツェンダ干渉計を設けた光変調器(以降、LN光変調器と呼ぶ)を使用した場合、マッハ・ツェンダ干渉計の平行光導波路上で差動変調を行うことによって、周波数チャープの発生が抑制された光位相変調が可能である。
【0010】
しかし、LN光変調器は、電気信号により光導波路の屈折率を変化させて、光位相変調を行う構成なので、電気信号を発する電子回路の動作速度に制約されてしまい、高速光変調を実現することができないといった問題があった。
【0011】
基幹光ネットワークでは、10Gbit/s帯から40Gbit/s帯への移行が始まっており、さらには、数百Gbit/s帯への開発も行われている。このような超高速・大容量のシステムを実現するためには、光変調器を高速駆動させる必要がある。
【0012】
しかし、LN光変調器では、駆動するための電気信号に帯域制限(速度制限)があるため、変調速度が制限され、数百Gbit/sといった超高速動作を実現することができない。
一方、上記の光直接位相変調方式では、非線形媒質内において、データ信号光のパワーに依存する非線形光学効果によって屈折率を変化させるといった、全光学的光位相変調を行う構成をとる。
【0013】
このため、LN光変調器のような、電子回路の応答速度に制約されるといったことはなく、超高速応答する非線形媒質および超高速データ信号光を用意すれば、数百Gbit/sといわず、Tbit/s(テラビット)級の動作を実現することも可能である。
【0014】
しかし、光直接位相変調方式では、周波数チャープが生じるといった問題があった。一般に高速データ信号光の波形は、矩形ではないので、データ信号光のパワーに比例して生じる屈折率変化量は変動し、一定値にはならない。
【0015】
その結果、非線形媒質内で発生する位相変調量も一定値にはならず、位相変調後の信号光には周波数チャープが発生してしまう。周波数チャープが発生した場合、必要以上に帯域が広くなって周波数利用効率が悪くなり、伝送特性が劣化するなどの欠点がある。
【0016】
このように、従来では、電子回路の応答速度を上回る速度において、周波数チャープを発生させずに、高品質な光位相変調を実現することができなかった。
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、高速応答速度で動作して、伝送特性劣化が抑制された、高品質な光位相変調を行う光変調装置を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明の他の目的は、高速応答速度で動作して、伝送特性劣化が抑制された、高品質な光位相変調を行う光変調方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、光変調装置が提供される。この光変調装置は、変調信号光のパワーを反転させて、反転変調信号光を生成する反転部と、被変調光を前記変調信号光の非線形光学効果によって位相変調させる第1の非線形媒質と、前記被変調光を前記反転変調信号光の前記非線形光学効果によって位相変調させる第2の非線形媒質と、前記第1の非線形媒質の出力光と、前記第2の非線形媒質の出力光との干渉制御を行う光干渉部とを有する。
【発明の効果】
【0019】
高速応答性を有して、伝送特性劣化が抑制された、高品質な光位相変調を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】光変調装置の構成例を示す図である。
【図2】LN光変調器の構成例を示す図である。
【図3】平行光導波路上の伝搬光の位相遷移状態を示す図である。
【図4】LN光変調器の出力光の位相遷移状態を示す図である。
【図5】光直接位相変調方式で周波数チャープが発生する理由を説明するための図である。
【図6】光変調装置の構成例を示す図である。
【図7】各信号光のパワーまたは位相状態を示す図である。
【図8】各信号光のパワーまたは位相状態を示す図である。
【図9】光変調装置の各経路点における位相遷移状態を示す図である。
【図10】光変調装置の出力光の位相遷移状態を示す図である。
【図11】反転部の構成例を示す図である。
【図12】反転部の入出力特性を示す図である。
【図13】反転部の構成例を示す図である。
【図14】光変調装置の構成例を示す図である。
【図15】光変調装置の構成例を示す図である。
【図16】光変調装置の構成例を示す図である。
【図17】光変調装置の構成例を示す図である。
【図18】各信号光の波形例を示す図である。
【図19】光変調装置の構成例を示す図である。
【図20】各信号光の波形例を示す図である。
【図21】各信号光の波形例を示す図である。
【図22】光変調装置の構成例を示す図である。
【図23】光変調装置の構成例を示す図である。
【図24】光変調装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は光変調装置の構成例を示す図である。光変調装置10は、反転部13、非線形媒質15−1(第1の非線形媒質)、非線形媒質15−2(第2の非線形媒質)および光干渉部16を備える。なお、光変調装置10は、電気信号を用いずに全光学的光位相変調を行う装置である。
【0022】
反転部13は、変調信号光のパワーを反転させて、反転変調信号光を生成する。非線形媒質15−1は、被変調光を変調信号光の非線形光学効果によって位相変調させる。非線形媒質15−2は、被変調光を反転変調信号光の非線形光学効果によって位相変調させる。光干渉部16は、非線形媒質15−1の出力光と、非線形媒質15−2の出力光との干渉制御を行って、位相変調された被変調光を出力する。
【0023】
次に光変調装置10の構成および動作の詳細を説明する前に、LN光変調器で周波数チャープが抑制される理由および光直接位相変調方式で周波数チャープが発生する理由について説明する。
【0024】
図2はLN光変調器の構成例を示す図である。LN光変調器5は、LN結晶基板50上の一部に、光を2つに分岐して異なる光導波路を通した後に再度合波するマッハ・ツェンダ干渉計型の光導波路51が形成される。
【0025】
光導波路51は、入射光導波路51a、分岐部51b、2つの平行光導波路51−1、51−2、合波部51cおよび出射光導波路51dを含み、平行光導波路51−1、51−2の近傍には、それぞれ電極55a、55bが設けられている。
【0026】
また、LN結晶基板50の周辺には、光電変換部52、データ反転部53、アンプ54a、54bが設けられる。光電変換部52は、入力された変調信号光を電気信号に変換する。データ反転部53は、電気信号のデータレベルを反転する。アンプ54aは、光電変換部52からの出力信号を増幅して電極55aへ送信し、アンプ54bは、データ反転部53からの出力信号を増幅して電極55bへ送信する。
【0027】
光導波路51の入射光導波路51aには、変調信号光が電気信号に変換された後のデータ列によって変調される被変調光が入射し、分岐部51bにより2つに分岐されて、平行光導波路51−1、51−2上を流れる。
【0028】
また、電極55a、55bから与えられる電界によって、平行光導波路51−1、51−2の屈折率がそれぞれ変化する。これにより、平行光導波路51−1、51−2上を伝搬する光の位相が変化し、合波部51cによって合波されることで、位相変調された被変調光が出射光導波路51dから出力される。
【0029】
図3は平行光導波路51−1、51−2上の伝搬光の位相遷移状態を示す図である。変調信号光のデータレベルが“1”のときに光位相変調量が“π”、変調信号光のデータレベルが“0”のときに光位相変調量が“0”とする。(A)は、平行光導波路51−1の伝搬光の0からπへの位相遷移を示す。(B)は、平行光導波路51−2の伝搬光の0から−πへの位相遷移を示す。
【0030】
平行光導波路51−1における光位相変調に対し、電極55aから印加される電界によって、平行光導波路51−1で位相変調が生じ、平行光導波路51−1上の伝搬光は、0とπの2値の位相をとる。
【0031】
この場合、平行光導波路51−1上で0からπへ遷移するとき、またはπから0へ遷移するとき、0とπの間の遷移時間において、角度(位相)θ(0≦θ≦π)を持って遷移することになる。
【0032】
すなわち、0からπへ遷移するときは、θは、0からπの方向へ向かって、0からπの間の正側の角度(位相)を時間的に遷移しながらπとなる。また、πから0へ遷移するときは、θは、πから0の方向へ向かって、πから0の間の正側の角度(位相)を時間的に遷移しながら0となる。
【0033】
ここで、周波数チャープをf、位相をφ、時間をtとすると、周波数チャープfは、以下の式(1)で表せる。
【0034】
【数1】
【0035】
周波数チャープは、式(1)に示すように位相の時間微分であるから、位相が時間変動すると発生する。仮に平行光導波路51−1だけで光位相変調を実施した場合、平行光導波路51−1上の伝搬光は、0とπの2値の位相をとるので、1つの平行光導波路51−1だけでも光位相変調を行うことはできる。
【0036】
しかし、平行光導波路51−1だけの光位相変調では、上記のように0とπ以外の位相をとりながら時間遷移して位相が変位するので、周波数チャープが発生することになる。
一方、LN光変調器5は、平行光導波路51−2に対しては、変調信号光の光電変換後の反転データで変調をかけている。平行光導波路51−2における光位相変調では、電極55bから印加される電界によって、平行光導波路51−2で位相変調が生じ、平行光導波路51−2上の伝搬光は、0と−πの2値の位相をとる。
【0037】
この場合、平行光導波路51−2上で0から−πへ遷移するとき、または−πから0へ遷移するとき、0と−πの間の遷移時間において、角度(位相)θ(−π≦θ≦0)を持って遷移することになる。
【0038】
すなわち、0から−πへ遷移するときは、θは、0から−πの方向へ向かって、0から−πの間の負側の角度(位相)を時間的に遷移しながら−πとなる。また、−πから0へ遷移するときは、θは、−πから0の方向へ向かって、−πから0の間の負側の角度(位相)を時間的に遷移しながら0となる。
【0039】
図4はLN光変調器5の出力光の位相遷移状態を示す図である。平行光導波路51−1、51−2における位相変調量は共に同じであり、符号が異なる。したがって、例えば、平行光導波路51−1側で角度(+θ1)の遷移があったとき、平行光導波路51−2側では角度(−θ1)の遷移となるから、これらの合成ベクトルは、実軸上に現れることになる。
【0040】
すなわち、平行光導波路51−1側で遷移する位相と、平行光導波路51−2側で遷移する位相との光電界の合成ベクトルは、常に実軸上に存在することになる。したがって、0とπの間の角度(位相)の時間変動がないので(実軸上での遷移となるので角度を持たない)、0またはπを瞬間的に遷移することになり、位相変調量の時間変動が抑制される。
【0041】
このように、LN光変調器5では、上記のような差動変調を行うことにより、0からπへ、逆にπから0に遷移する瞬間を除いて、位相変調量の時間変動が抑制されるので、周波数チャープの発生を防止することができる。
【0042】
ただし、LN光変調器5においては、電気光学効果の応答速度により、変調速度に制限がかかる(〜100Gb/s程度)。このため、電子回路がボトルネックとなり、高ビットレートの光位相変調を行うことができない。また、光信号を電気信号に変換する機能は、光信号から電気信号への変換効率は低いために、大きな電力消失を伴うといった欠点があった。
【0043】
図5は光直接位相変調方式で周波数チャープが発生する理由を説明するための図である。光直接位相変調方式では、まず、偏波状態が共に調整された変調信号光と被変調光とが合波部6aによって合波され、合波光が非線形媒質6bに入力する。
【0044】
そして、非線形媒質6b内で被変調光が位相変調されて、光フィルタ6cにより変調信号光が遮断され、位相変調後の被変調光が出力するものである。なお、変調信号光の波長と被変調光の波長は互いに異なる。
【0045】
ここで、非線形媒質6bでは、光カー効果(optical Kerr effect)と呼ばれる非線形光学効果が発生し、被変調光は、変調信号光のパワー(振幅)に比例した位相量だけ変調されて出力される。
【0046】
光フィルタ6cから出力される被変調光は、図5の位相状態p1に示すように、矩形波形ではなく、時間変動を有した位相の波形であり、周波数チャープは、位相の時間微分であるから、位相状態p1のような波形を時間で微分すると、周波数チャープch1が発生することがわかる。
【0047】
光直接位相変調方式は、このように周波数チャープが発生することは不可避といえるが、非線形媒質6b内の非線形光学効果は非常に速く、テラビット級の超高速応答特性を有しているため、高ビットレートの光位相変調が可能であるという利点を持っている。
【0048】
次に光変調装置10の構成および動作について以降詳しく説明する。図6は光変調装置の構成例を示す図である。光変調装置10aは、被変調光分岐部11、変調信号光分岐部12、反転部13、光合波部14a、14b、非線形媒質15−1、15−2および光干渉部16を備える。また、光干渉部16は、位相シフト部16a、光合波部16bおよび光フィルタ16cを含む。
【0049】
被変調光分岐部11は、入力した被変調光を分岐して、被変調光a1と被変調光a2を出力する。変調信号光分岐部12は、入力した変調信号光を分岐して、変調信号光b1と変調信号光b2を出力する。
【0050】
反転部13は、変調信号光b2のパワーを反転して、反転変調信号光b3を生成する。なお、被変調光の波長λpと変調信号光の波長λsとは互いに異なる(λp≠λs)。
光合波部14aは、被変調光a1と変調信号光b1とを合波し、合波光を非線形媒質15−1に入力する。光合波部14bは、被変調光a2と反転変調信号光b3とを合波し、合波光を非線形媒質15−2に入力する。
【0051】
非線形媒質15−1は、被変調光a1と変調信号光b1とが入力し、変調信号光b1の非線形光学効果(主にXPMの作用)によって、変調信号光b1のパワーに比例した位相量だけ被変調光a1を変調して、出力光を位相変調光c1として出力する。
【0052】
非線形媒質15−2は、被変調光a2と反転変調信号光b3とが入力し、反転変調信号光b3の非線形光学効果(主にXPMの作用)によって、反転変調信号光b3のパワーに比例した位相量だけ被変調光a2を変調して、出力光を位相変調光c2として出力する。
【0053】
このように、一方の非線形媒質15−1には、被変調光a1と変調信号光b1とを入力して位相変調を行い、他方の非線形媒質15−2には、被変調光a2と、変調信号光b2のパワーを反転させた反転変調信号光b3とを入力して位相変調を行うようにして、互いに独立して被変調光の位相を変調する。
【0054】
非線形媒質15−1、15−2としては、非線形光学効果の発生効率が高い、例えば、高非線形光ファイバ(HNLF:High Non Linear Fiber)を使用できる。またはHNLFに限らず、フォトニック結晶ファイバ、半導体光アンプ、擬似位相整合構造を有する導波路(PPLN:Periodically Poled Lithium Niobate)、シリコン光導波路等を使用してもよい。
【0055】
なお、位相変調量は、一般に非線形媒質の非線形係数、媒質長および変調信号光のパワーの積に比例する。また、変調信号光b1のパワーおよび反転変調信号光b3のパワーは、非線形媒質15−1、15−2内で生じる位相変調量が概ねπになるように調整する。
【0056】
一方、光干渉部16において、位相シフト部16aでは、変調信号光b1で位相変調された被変調光が生成される経路(非線形媒質15−1側経路)と、反転変調信号光b3で位相変調された被変調光が生成される経路(非線形媒質15−2側経路)とに対して、2つの経路差の位相が0になるように、非線形媒質15−2側経路に対してバイアスをかけて、位相変調光c2の位相変調量をπ(または−π)だけ位相をシフトさせる。
【0057】
光合波部16bは、位相変調光c1と、位相シフト後の位相変調光c2とを合波する。これにより、非線形媒質15−1、15−2それぞれで位相変調を受けた被変調光a1、a2の互いのデータパターンが一致するタイミングで結合される。光フィルタ16cは、変調信号光を除去する光帯域除去フィルタであって、合波光から被変調光の光成分以外を遮断して、位相変調された被変調光を出力する。
【0058】
このように、非線形媒質15−1、15−2の後段に、光干渉部16を配置して、位相シフト、合波および光フィルタリングを行うことで、非線形媒質15−1、15−2からの出力光を適切に光干渉させて、所望の特性の光を出力させることが可能になる。
【0059】
ここで、変調信号光のデータレベルが“1”のときは、非線形媒質15−1を通過した光の位相変調量は“π”であり、非線形媒質15−2を通過した光の位相変調量は“−π”になっているので、その光電界の合成は“π”になる。
【0060】
一方、変調信号光のデータレベルが“0”のときは、非線形媒質15−1を通過した光の位相変調量は“0”であり、非線形媒質15−2を通過した光の位相変調量は“0”なので、その光電界の合成は“0”になる。
【0061】
すなわち、非線形媒質15−1が位置する経路を伝搬した光と、非線形媒質15−2が位置する経路を伝搬した光との和は、常に、実軸上に存在することになり、位相が0もしくはπしかとりえないという構成となる。したがって、光変調装置10aの構成において、位相変調量の時間変動がなく、周波数チャープの発生を抑制することが可能になる。
【0062】
また、光変調装置10aは、全光学的構成をとっており、非線形媒質15−1、15−2による非線形光学効果を利用して位相変調を実行するために、LN光変調器のような位相変調を実行するための電気駆動信号は不要である。これにより、駆動源の電子回路の動作速度に制約されるといったことがなく、超高速光変調を実現することが可能になる。
【0063】
図7、図8は各信号光のパワーまたは位相状態を示す図である。光変調装置10aにおける各信号光のパワーまたは位相状態の一例を示している。図7の(A)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、被変調光のパワーを示している。被変調光は連続光(CW(Continuous Wave)光)である。
【0064】
図7の(B)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、入力される変調信号光のデータパターンを示している。図7の(C)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、変調信号光のデータパターンが反転された反転変調信号光b3のデータパターンを示している。
【0065】
図8の(A)は、縦軸は位相、横軸は時間であり、位相変調光c1の位相を示している。図8の(B)は、縦軸は位相、横軸は時間であり、位相変調光c2の位相を示している。図8の(C)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、光フィルタ16c出力後の被変調光のパワーを示している。図8の(D)は、縦軸は位相、横軸は時間であり、光フィルタ16c出力後の被変調光の位相を示している。
【0066】
図9は光変調装置10aの各経路点における位相遷移状態を示す図である。状態ph1は、非線形媒質15−1から出力された位相変調光c1の0からπへの位相遷移状態を示す。
【0067】
状態ph2は、非線形媒質15−2から出力された位相変調光c2の0からπへの位相遷移状態を示す。状態ph3は、位相シフト部16aによって位相がπ(または−π)シフトされた後の位相変調光c2の位相遷移状態を示す。
【0068】
図10は光変調装置10aの出力光の位相遷移状態を示す図である。位相変調光c2はπ(または−π)だけ位相シフトされるので、位相変調光c1、c2は、位相変調量が同じであり、互いに符号だけが異なる。
【0069】
したがって、例えば、位相変調光c1の位相が角度(+θ1)だけ遷移したとき、位相シフト後の位相変調光c2の位相は(−θ1)の遷移となり、|θ1|=|−θ1|なので、光合波部16bによって合波されると、合成ベクトルは実軸上に現れることになる。
【0070】
したがって、光電界の合成ベクトルは、常に実軸上に存在することになるので、位相が0からπへ遷移、またはπから0へ遷移する際には、0とπの間の角度(位相)の時間変動がなくなり(実軸上での遷移となるので角度を持たない)、瞬間的に遷移する。
【0071】
このように、光変調装置10aでは、上記のような位相変調を行うことにより、LN光変調器と同様にして、位相変調量の時間変動が抑制されるので、周波数チャープの発生を防止することになる。
【0072】
次に反転部13の構成および動作について説明する。図11は反転部の構成例を示す図である。反転部13−1は、光カースイッチを応用して光データの反転を行うものであり、光源13a、偏波コントローラ13b−1、13b−2、光カプラ13c、光カースイッチ13dを備える。また、光カースイッチ13dは、高非線形光ファイバ(例えば、HNLFなど)13d−1、偏光子13d−2および光フィルタ13d−3を含む。
【0073】
光源13aは、CW光である信号光b4を発出する。信号光b4の波長λcは、変調信号光の波長λsおよび被変調光の波長λpに対して異なる(λc≠λs≠λp)。偏波コントローラ13b−1は、信号光b4の偏光状態(偏波状態)を調整制御する。偏波コントローラ13b−2は、変調信号光b2の偏光状態を調整制御する。
【0074】
光カプラ13cは、偏光調整後の変調信号光b2と、偏光調整後の信号光b4とを合波して合波光を高非線形光ファイバ13d−1へ入力する。高非線形光ファイバ13d−1は、光カー効果を介して、信号光b4の偏光状態を変調する。
【0075】
偏光子13d−2は、偏光軸(透過軸)と同一方向の偏光状態の光を通過させる光素子である。光フィルタ13d−3は、偏光子13d−2の出力光から、波長λcを透過帯域とするフィルタリングを行って、反転データ信号光である反転変調信号光b3を出力する。
【0076】
動作について説明する。偏波コントローラ13b−1では、変調信号光b2の入力がないとき、すなわち、高非線形光ファイバ13d−1の中で信号光b4が非線形光学効果を受けないとき、高非線形光ファイバ13d−1の後段に設置されている偏光子13d−2を最大透過するように、信号光b4の偏光状態を調整する。
【0077】
したがって、信号光b4の偏光状態を、偏光子13d−2の偏光軸と同一方向に調整することになる。例えば、図11に示すように、偏光子13d−2の偏光軸が水平にある状態P1の場合、偏波コントローラ13b−1では、信号光b4の偏波方向も水平になるように調整制御する(状態P2)。さらに加えて、高非線形光ファイバ13d−1の入力端で、信号光b4の偏光状態がおよそ直線偏光になるように調整する。
【0078】
なお、高非線形光ファイバ13d−1の内部で偏光状態が変わらないとすると、上記の設定は1つの偏波コントローラ13b−1で達成できるが、高非線形光ファイバ13d−1内で発生する偏波変動を考慮する場合には、高非線形光ファイバ13d−1と偏光子13d−2との間に、別途、偏波コントローラを設置すればよい。
【0079】
一方、偏波コントローラ13b−2では、変調信号光b2の偏光状態は、高非線形光ファイバ13d−1の入力端において、およそ直線偏波となって、かつ信号光b4の偏光面と概ねπ/4をなすように調整する(状態P3)。
【0080】
ここで、変調信号光b2が入力せずにパワーがゼロであれば、高非線形光ファイバ13d−1において信号光b4の偏光方向は回転しない。この場合、高非線形光ファイバ13d−1から出力される信号光b4の偏光方向は、偏光子13d−2の偏光軸と一致するので、信号光b4のほぼ100%が偏光子13d−2を通過することになる。したがって、変調信号光b2のデータが“0”の場合は、偏光子13d−2から“1”の値が出力されることになる。
【0081】
一方、変調信号光b2が高非線形光ファイバ13d−1に入力し、変調信号光b2のパワーが大きくなると、高非線形光ファイバ13d−1では、光カー効果によって(特にXPMの作用によって)偏光回転が生じ、変調信号光b2のパワーに応じて、信号光b4の偏光方向が回転する。
【0082】
そして、信号光b4の偏光方向がπ/2回転すると、高非線形光ファイバ13d−1から出力される信号光b4の偏光方向は、偏光子13d−2の偏光軸と直交する状態になり、信号光b4は、偏光子13d−2によって完全に遮断される。したがって、変調信号光b2のデータが“1”の場合は、偏光子13d−2から“0”の値が出力されることになる。
【0083】
このように、反転部13−1では、非線形媒質として高非線形光ファイバ13d−1を用いた光カースイッチ13dにより、変調信号光b2のデータレベルが反転された反転変調信号光b3を生成する構成とした。これにより、光電変換などを行わずに、光信号の状態のままで効率よくデータ反転を行うことが可能になる。
【0084】
図12は反転部13−1の入出力特性を示す図である。縦軸は反転部13−1の出力パワーであり、横軸は変調信号光b2の入力パワーである。変調信号光b2の入力パワーが0のときは、反転部13−1の出力パワーは1となり、変調信号光b2の入力パワーが1のときは、反転部13−1の出力パワーは0となる。
【0085】
図13は反転部の構成例を示す図である。反転部13−2では、図11で示した高非線形光ファイバ13d−1と偏光子13d−2の代わりに、半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)を用いるものである。
【0086】
反転部13−2は、光源13a、偏波コントローラ13b−1、13b−2、光カプラ13cおよび光カースイッチ13eを備える。また、光カースイッチ13eは、SOA13e−1および光フィルタ13e−2を備える。SOA13e−1には、変調信号光b2と信号光b4との合波光が入力される。
【0087】
なお、SOA13e−1として、矩形無歪バルク構造、伸張歪ウエル多重量子井戸(MQW:Multi-Quantum Well)構造、伸張歪バルク構造、伸張歪バリアMQW構造などの偏波無依存で動作するSOAを用いれば、偏波コントローラ13b−1、13b−2は不要である。
【0088】
ここで、変調信号光b2と信号光b4とのパワーの和が十分小さい場合、すなわち、利得が線形の場合は、両者の光が同じ利得を受ける。しかしながら、信号光b4と比べて、変調信号光b2のパワーが十分大きいと、変調信号光b2の増幅に使われるエネルギーが大きくなり、信号光b4は利得を受けなくなる。
【0089】
すなわち、変調信号光b2のパワーが大きくなると、SOA13e−1内で非線形光学効果である相互利得変調が発生し、信号光b4を一定パワーでSOA13e−2に入力していても、SOA13e−1内で発生する利得が変調信号光b2の方に取られてしまい、信号光b4の出力パワーが小さくなる現象が生じる。このことは、変調信号光b2のデータが“1”の場合は、SOA13e−1から“0”の値が出力されることを意味している。
【0090】
一方、変調信号光b2がない場合には、信号光b4は利得を受ける。このことは、変調信号光b2のデータが“0”の場合は、SOA13e−1から“1”の値が出力されることを意味する。上記のようにして、変調信号光b2のデータが反転した光が、SOA13e−1から出力され、データ反転が実施される。
【0091】
このように、反転部13−2では、非線形媒質としてSOA13e−1を用いた光カースイッチ13eにより、変調信号光b2のデータレベルが反転された反転変調信号光b3を生成する構成とした。これにより、光電変換などを行わずに、光信号の状態のままで効率よくデータ反転を行うことが可能になる。
【0092】
次に光変調装置10aの他の実施の形態について説明する。なお、以降の説明では、上述した構成要素には同じ符号を付けて、同一構成要素の説明は省略し、あらたな構成要素について主に説明する。
【0093】
図14は光変調装置の構成例を示す図である。光変調装置10a−1は、図6で上述した光変調装置10aに対して、あらたに偏波コントローラ17a〜17cを設け、あらたな光干渉部16−1を設けている。光干渉部16−1は、あらたに光減衰器16dを含む。
【0094】
偏波コントローラ17aは、被変調光a1の偏光状態を調整制御する。偏波コントローラ17bは、変調信号光b0の偏光状態を調整制御する。偏波コントローラ17cは、被変調光a2の偏光状態を調整制御する。光減衰器16dは、位相変調光c1の光レベルを調整制御する。
【0095】
一般に、非線形媒質や光部品接続用の光ファイバ中では、光の偏光状態は完全に保たれない。このため、偏波コントローラ17a〜17cを設けることにより、所望の偏光状態(偏波状態)を実現することが可能になる。
【0096】
また、非線形媒質15−1を伝搬する経路の光損失と、非線形媒質15−2を伝搬する経路の光損失とは一般には等しくならない。このため、非線形媒質15−1を伝搬する経路にパワー調整機構である光減衰器16dを設置する。
【0097】
これにより、位相変調光c1のパワーと、位相シフト後の位相変調光c2のパワーとを均等化することができ、光合波部16bにおいて、パワーバランスされた両者を結合することが可能になる。
【0098】
図15は光変調装置の構成例を示す図である。光変調装置10a−2は、図6で上述した光変調装置10aに対して、あらたな光干渉部16−2が設けられる。光干渉部16−2は、あらたに光分岐部16e、モニタ部16f、ドライバ16gを含む。
【0099】
光分岐部16eは、光フィルタ16cからの被変調光の出力を2分岐する。モニタ部16fは、光分岐部16eによって分岐された一方の被変調光のパワーをモニタする。ドライバ16gは、モニタ値が所定の値になるように(具体的には、モニタした光パワーが最大になるように)、位相シフト部16aに対してバイアス量を調整し、調整後のバイアスを与えるフィードバック制御を行う。
【0100】
ここで、非線形媒質15−1、15−2それぞれの経路を伝搬した光を結合する場合、その経路差の揺らぎを波長に比べて十分に短い長さにする必要がある。光通信で使用する光の波長は1.5μm程度なので、サブマイクロメートルの精度に抑え込むことになる。
【0101】
シリコン導波路をもちいて集積化したものだと、特に、動的な安定化は必要ないが、光ファイバ入出力形態の光部品を接続して本光変調装置を実現する場合には、経路差揺らぎを制御して動作を安定化することが好ましい。
【0102】
この安定化策の一例が光変調装置10a−2に示す構成である。経路差が半波長の奇数倍だと、互いの光が干渉して、パワーが小さくなる。一方、経路差が半波長の偶数倍だと、互いが干渉して、出力パワーが大きくなる。
【0103】
この特徴を利用して、光フィルタ16cからの出力光パワーを光パワーメータなどのモニタ部16fで測定し、そのパワーが最大になるように、ドライバ16gによってバイアスを調整する。これにより、経路差揺らぎを効率よく制御することができ、安定な動作が可能になる。
【0104】
なお、バイアス制御を実現する例としては、LN導波路やシリコン導波路にDCバイアスをかける等が挙げられる。または光ファイバに張力をかけて長さを高精度に調整する方法をとってもよい(例えば、光ファイバにピエゾ素子を付加し、ドライバ16gでピエゾ素子に電圧を印加して、ファイバ経路長の微調整を行うなど)。
【0105】
図16は光変調装置の構成例を示す図である。光変調装置10a−3は、図6で上述した光変調装置10aに対して、あらたに波長多重化部18が設けられる。波長多重化部18は、波長λp1の被変調光と、波長λp2の被変調光との波長多重化を行って(λp1≠λp2)、波長多重被変調光を出力する。
【0106】
このように、非線形媒質15−1、15−2で位相変調される被変調光が、2波長以上の波長数の波長多重光となるように、互いに異なる複数の波長の被変調光の波長多重化を行う波長多重化部18を設けた。
【0107】
これにより、多波長の被変調光に同じ変調信号光で変調して、例えば、マルチキャストなどの通信サービスを行うことが可能になる。なお、図16の例では2波長の場合を示しているが、3波以上の複数波長の光にも適用できる。
【0108】
図17は光変調装置の構成例を示す図である。上述してきた光変調装置では、被変調光としてCW光を入力したが、光変調装置10a−4では、光クロックの被変調光を入力するものである(装置構成上の特段の変更はない)。
【0109】
CW光の被変調光を入力した場合、位相変調後は、NRZ(Non Return to Zero)形式の信号光として出力されるが、RZ(Return to Zero)形式の信号光として出力したい場合には、光変調装置10a−4のように、パルス化した被変調光を入力すればよい。
【0110】
図18は各信号光の波形例を示す図である。光変調装置10a−4の各信号光の波形例を示している。(A)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、変調信号光の波形を示す。(B)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、被変調光(装置入力時)の波形を示す。(C)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、被変調光(装置出力時)の波形を示す。
【0111】
図19は光変調装置の構成例を示す図である。光変調装置10a−5は、図6で上述した光変調装置10aに対して、あらたに波長多重化部18aを有する。波長多重化部18aは、波長λp1の被変調光と、波長λp2の被変調光との波長多重化を行って(λp1≠λp2)、波長多重被変調光を出力する。被変調光(λp1)と被変調光(λp2)はともに光クロックである。
【0112】
図20、図21は各信号光の波形例を示す図である。光変調装置10a−5の各信号光の波形例を示している。図20の(A)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、変調信号光の波形を示す。図20(B)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、被変調光(装置入力時、波長λp1)の波形を示す。図20の(C)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、被変調光(装置入力時、波長λp2)の波形を示す。
【0113】
図21(A)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、被変調光(装置出力時、波長λp1)の波形を示す。図21の(B)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、被変調光(装置出力時、波長λp2)の波形を示す。
【0114】
図22は光変調装置の構成例を示す図である。光変調装置10a−6は、図6で上述した光変調装置10aに対して、あらたにタイミング抽出部19を備える。各信号光の波形は図18と同じである。
【0115】
タイミング抽出部19は、変調信号光の光クロックからタイミング抽出を行って、被変調光の光クロックを生成する。被変調光を光クロックで入力する場合、変調信号光との同期が重要になる。
【0116】
このため、正確な同期を実現するためには、タイミング抽出部19において、変調信号光からクロックタイミングを抽出し、そのクロックタイミングと一致した光クロックの被変調光を生成する。タイミング抽出部19を備えることにより、変調信号光と正確に同期した光クロックの被変調光を生成することが可能になる。
【0117】
なお、タイミング抽出としては、例えば、電界吸収型光変調器(EAM:Electric Absorption Modulator)を用いた手法、半導体光増幅器を用いた方法などがある。また、超高速の光クロック生成は、半導体モード同期レーザ、ファイバモード同期レーザなどにより実現できる。
【0118】
図23は光変調装置の構成例を示す図である。光変調装置10a−7は、図6で上述した光変調装置10aに対して、波長多重化部18aとタイミング抽出部19をさらに備える。各信号光の波形は図20、図21と同じである。
【0119】
タイミング抽出部19は、変調信号光のクロックタイミング抽出を行って、波長λp1の被変調光の光クロックと、波長λp2の被変調光の光クロックを生成する(λp1≠λp2)。波長多重化部18aは、波長λp1の被変調光と、波長λp2の被変調光との波長多重化を行って、波長多重被変調光を出力する。
【0120】
図24は光変調装置の構成例を示す図である。光変調装置10a−8は、図23の光変調装置10a−7と基本構成は同じであるが、光伝送路3を通じて伝送された変調信号光を受信する構成を示している。各信号光の波形は図20、図21と同じである。
【0121】
光伝送路3は、光ファイバf1、f2を含み、光増幅器31、32が中継点において設置される。光変調装置10a−8は、光伝送路3を通じて他ノード等から送信された変調信号光を受信し、その変調信号光のタイミング抽出を行って複数波長の被変調光を生成する。
【0122】
このような構成により、例えば、遠方のノードから伝送されてきた変調信号光を受信した場合であっても、タイミング抽出部19によって、変調信号光からクロックタイミングを抽出して、変調信号光と同期した被変調光の光クロックを生成することができる。
【0123】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。
(付記1) 変調信号光のパワーを反転させて、反転変調信号光を生成する反転部と、
被変調光を前記変調信号光の非線形光学効果によって位相変調させる第1の非線形媒質と、
前記被変調光を前記反転変調信号光の前記非線形光学効果によって位相変調させる第2の非線形媒質と、
前記第1の非線形媒質の出力光と、前記第2の非線形媒質の出力光との干渉制御を行う光干渉部と、
を有することを特徴とする光変調装置。
【0124】
(付記2) 前記光干渉部は、
前記第2の非線形媒質の出力光に所定の位相シフトを与える位相シフト部と、
前記第1の非線形媒質の出力光と、位相シフト後の前記第2の非線形媒質の出力光とを合波して合波光を出力する光合波部と、
前記合波光から、前記被変調光と異なる波長の光を遮断する光フィルタと、
を有することを特徴とする付記1記載の光変調装置。
【0125】
(付記3) 前記光干渉部は、光減衰器をさらに有し、
前記光減衰器は、前記第1の非線形媒質の出力光のパワーと、位相シフト後の前記第2の非線形媒質の出力光のパワーとが均等化するように、前記第1の非線形媒質の出力光のパワー、または位相シフト後の前記第2の非線形媒質の出力光のパワーのいずれかの減衰制御を行うことを特徴とする付記2記載の光変調装置。
【0126】
(付記4) 前記光干渉部は、
前記光フィルタの透過後の光パワーをモニタするモニタ部と、
モニタ値が所定値になるように、位相シフトさせるためのバイアス量を調整し、調整後のバイアス量を前記位相シフト部に与えるドライバと、
を有することを特徴とする付記2記載の光変調装置。
【0127】
(付記5) 前記変調信号光および前記被変調光に対して、偏光状態を制御するための偏波コントローラをさらに有することを特徴とする付記1記載の光変調装置。
(付記6) 前記第1の非線形媒質および前記第2の非線形媒質で位相変調される前記被変調光が、2波長以上の波長数の波長多重光となるように、互いに異なる複数の波長の前記被変調光の波長多重化を行う波長多重化部をさらに有することを特徴とする付記1記載の光変調装置。
【0128】
(付記7) 前記反転部は、非線形媒質として高非線形光ファイバを用いた光カースイッチを含むことを特徴とする付記1記載の光変調装置。
(付記8) 前記反転部は、非線形媒質として半導体光増幅器を用いた光カースイッチを含むことを特徴とする付記1記載の光変調装置。
【0129】
(付記9) 前記変調信号光からクロックタイミングを抽出して前記変調信号光と同期した前記被変調光の光クロックを生成するタイミング抽出部をさらに有することを特徴とする付記1記載の光変調装置。
【0130】
(付記10) 光変調方法において、
変調信号光のパワーを反転させて、反転変調信号光を生成し、
第1の非線形媒質により、被変調光を前記変調信号光の非線形光学効果によって位相変調させ、
第2の非線形媒質により、前記被変調光を前記反転変調信号光の前記非線形光学効果によって位相変調させ、
前記第1の非線形媒質の出力光と、前記第2の非線形媒質の出力光との干渉制御を行う、
ことを特徴とする光変調方法。
【符号の説明】
【0131】
10 光変調装置
13 反転部
15−1、15−2 非線形媒質
16 光干渉部
【技術分野】
【0001】
本発明は、光位相変調を行う光変調装置および光変調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット等によるマルチメディアサービスの拡大に伴い、ネットワーク上を流れる情報量は飛躍的に増大している。このような状況において、高速・大容量の情報を遠距離まで低コストで伝送するために、光通信ネットワークの構築が進展している。また、光通信ネットワークの通信方式としては、長距離伝送に優れた光位相変調方式が注目されている。
【0003】
光位相変調方式は、光の位相を変化(変調)させて情報を重畳させる方式であり、代表的なデバイスに、マッハ・ツェンダ干渉計(Mach−Zehnder interferometer)を使用した光変調器がある。
【0004】
この光変調器は、強誘電体媒質であるニオブ酸リチウム(LiNbO3:LNとも表記)等を用いた結晶基板上に、光導波路で形成されたマッハ・ツェンダ干渉計が設けられる。そして、この光導波路に電気信号を印加して、光導波路の屈折率変化を利用することで、光導波路内を伝搬する光の位相変調を行うものである。
【0005】
一方、電気信号を介さずに光信号を直接用いて光位相変調を行う光直接位相変調方式がある。この方式は、非線形媒質内にデータ信号光を入力し、データ信号光のパワーに依存する非線形光学効果(相互位相変調(XPM:Cross Phase Modulation)など)によって屈折率変化を発生させて、位相を変調させるものである。
【0006】
なお、非線形光学効果とは、ガラス中に比較的強いパワーの光を伝搬させたとき、光強度に応じてガラスの物性(屈折率)が変化し、光学的な応答が線形性を失う現象のことである。
【0007】
光変調の従来技術としては、ファイバループの干渉計に代えて、内部で光空間平行光が伝送される空間干渉系を用いた光変調器が提案されている(特許文献1)。また、電界吸収型光変調器の吸収飽和に起因する屈折率変化を利用して、干渉計構成によって被制御光を制御する技術が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−194375号公報
【特許文献2】特開2001−264712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
光位相変調方式として、上記のような、LN結晶基板上にマッハ・ツェンダ干渉計を設けた光変調器(以降、LN光変調器と呼ぶ)を使用した場合、マッハ・ツェンダ干渉計の平行光導波路上で差動変調を行うことによって、周波数チャープの発生が抑制された光位相変調が可能である。
【0010】
しかし、LN光変調器は、電気信号により光導波路の屈折率を変化させて、光位相変調を行う構成なので、電気信号を発する電子回路の動作速度に制約されてしまい、高速光変調を実現することができないといった問題があった。
【0011】
基幹光ネットワークでは、10Gbit/s帯から40Gbit/s帯への移行が始まっており、さらには、数百Gbit/s帯への開発も行われている。このような超高速・大容量のシステムを実現するためには、光変調器を高速駆動させる必要がある。
【0012】
しかし、LN光変調器では、駆動するための電気信号に帯域制限(速度制限)があるため、変調速度が制限され、数百Gbit/sといった超高速動作を実現することができない。
一方、上記の光直接位相変調方式では、非線形媒質内において、データ信号光のパワーに依存する非線形光学効果によって屈折率を変化させるといった、全光学的光位相変調を行う構成をとる。
【0013】
このため、LN光変調器のような、電子回路の応答速度に制約されるといったことはなく、超高速応答する非線形媒質および超高速データ信号光を用意すれば、数百Gbit/sといわず、Tbit/s(テラビット)級の動作を実現することも可能である。
【0014】
しかし、光直接位相変調方式では、周波数チャープが生じるといった問題があった。一般に高速データ信号光の波形は、矩形ではないので、データ信号光のパワーに比例して生じる屈折率変化量は変動し、一定値にはならない。
【0015】
その結果、非線形媒質内で発生する位相変調量も一定値にはならず、位相変調後の信号光には周波数チャープが発生してしまう。周波数チャープが発生した場合、必要以上に帯域が広くなって周波数利用効率が悪くなり、伝送特性が劣化するなどの欠点がある。
【0016】
このように、従来では、電子回路の応答速度を上回る速度において、周波数チャープを発生させずに、高品質な光位相変調を実現することができなかった。
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、高速応答速度で動作して、伝送特性劣化が抑制された、高品質な光位相変調を行う光変調装置を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明の他の目的は、高速応答速度で動作して、伝送特性劣化が抑制された、高品質な光位相変調を行う光変調方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、光変調装置が提供される。この光変調装置は、変調信号光のパワーを反転させて、反転変調信号光を生成する反転部と、被変調光を前記変調信号光の非線形光学効果によって位相変調させる第1の非線形媒質と、前記被変調光を前記反転変調信号光の前記非線形光学効果によって位相変調させる第2の非線形媒質と、前記第1の非線形媒質の出力光と、前記第2の非線形媒質の出力光との干渉制御を行う光干渉部とを有する。
【発明の効果】
【0019】
高速応答性を有して、伝送特性劣化が抑制された、高品質な光位相変調を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】光変調装置の構成例を示す図である。
【図2】LN光変調器の構成例を示す図である。
【図3】平行光導波路上の伝搬光の位相遷移状態を示す図である。
【図4】LN光変調器の出力光の位相遷移状態を示す図である。
【図5】光直接位相変調方式で周波数チャープが発生する理由を説明するための図である。
【図6】光変調装置の構成例を示す図である。
【図7】各信号光のパワーまたは位相状態を示す図である。
【図8】各信号光のパワーまたは位相状態を示す図である。
【図9】光変調装置の各経路点における位相遷移状態を示す図である。
【図10】光変調装置の出力光の位相遷移状態を示す図である。
【図11】反転部の構成例を示す図である。
【図12】反転部の入出力特性を示す図である。
【図13】反転部の構成例を示す図である。
【図14】光変調装置の構成例を示す図である。
【図15】光変調装置の構成例を示す図である。
【図16】光変調装置の構成例を示す図である。
【図17】光変調装置の構成例を示す図である。
【図18】各信号光の波形例を示す図である。
【図19】光変調装置の構成例を示す図である。
【図20】各信号光の波形例を示す図である。
【図21】各信号光の波形例を示す図である。
【図22】光変調装置の構成例を示す図である。
【図23】光変調装置の構成例を示す図である。
【図24】光変調装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は光変調装置の構成例を示す図である。光変調装置10は、反転部13、非線形媒質15−1(第1の非線形媒質)、非線形媒質15−2(第2の非線形媒質)および光干渉部16を備える。なお、光変調装置10は、電気信号を用いずに全光学的光位相変調を行う装置である。
【0022】
反転部13は、変調信号光のパワーを反転させて、反転変調信号光を生成する。非線形媒質15−1は、被変調光を変調信号光の非線形光学効果によって位相変調させる。非線形媒質15−2は、被変調光を反転変調信号光の非線形光学効果によって位相変調させる。光干渉部16は、非線形媒質15−1の出力光と、非線形媒質15−2の出力光との干渉制御を行って、位相変調された被変調光を出力する。
【0023】
次に光変調装置10の構成および動作の詳細を説明する前に、LN光変調器で周波数チャープが抑制される理由および光直接位相変調方式で周波数チャープが発生する理由について説明する。
【0024】
図2はLN光変調器の構成例を示す図である。LN光変調器5は、LN結晶基板50上の一部に、光を2つに分岐して異なる光導波路を通した後に再度合波するマッハ・ツェンダ干渉計型の光導波路51が形成される。
【0025】
光導波路51は、入射光導波路51a、分岐部51b、2つの平行光導波路51−1、51−2、合波部51cおよび出射光導波路51dを含み、平行光導波路51−1、51−2の近傍には、それぞれ電極55a、55bが設けられている。
【0026】
また、LN結晶基板50の周辺には、光電変換部52、データ反転部53、アンプ54a、54bが設けられる。光電変換部52は、入力された変調信号光を電気信号に変換する。データ反転部53は、電気信号のデータレベルを反転する。アンプ54aは、光電変換部52からの出力信号を増幅して電極55aへ送信し、アンプ54bは、データ反転部53からの出力信号を増幅して電極55bへ送信する。
【0027】
光導波路51の入射光導波路51aには、変調信号光が電気信号に変換された後のデータ列によって変調される被変調光が入射し、分岐部51bにより2つに分岐されて、平行光導波路51−1、51−2上を流れる。
【0028】
また、電極55a、55bから与えられる電界によって、平行光導波路51−1、51−2の屈折率がそれぞれ変化する。これにより、平行光導波路51−1、51−2上を伝搬する光の位相が変化し、合波部51cによって合波されることで、位相変調された被変調光が出射光導波路51dから出力される。
【0029】
図3は平行光導波路51−1、51−2上の伝搬光の位相遷移状態を示す図である。変調信号光のデータレベルが“1”のときに光位相変調量が“π”、変調信号光のデータレベルが“0”のときに光位相変調量が“0”とする。(A)は、平行光導波路51−1の伝搬光の0からπへの位相遷移を示す。(B)は、平行光導波路51−2の伝搬光の0から−πへの位相遷移を示す。
【0030】
平行光導波路51−1における光位相変調に対し、電極55aから印加される電界によって、平行光導波路51−1で位相変調が生じ、平行光導波路51−1上の伝搬光は、0とπの2値の位相をとる。
【0031】
この場合、平行光導波路51−1上で0からπへ遷移するとき、またはπから0へ遷移するとき、0とπの間の遷移時間において、角度(位相)θ(0≦θ≦π)を持って遷移することになる。
【0032】
すなわち、0からπへ遷移するときは、θは、0からπの方向へ向かって、0からπの間の正側の角度(位相)を時間的に遷移しながらπとなる。また、πから0へ遷移するときは、θは、πから0の方向へ向かって、πから0の間の正側の角度(位相)を時間的に遷移しながら0となる。
【0033】
ここで、周波数チャープをf、位相をφ、時間をtとすると、周波数チャープfは、以下の式(1)で表せる。
【0034】
【数1】
【0035】
周波数チャープは、式(1)に示すように位相の時間微分であるから、位相が時間変動すると発生する。仮に平行光導波路51−1だけで光位相変調を実施した場合、平行光導波路51−1上の伝搬光は、0とπの2値の位相をとるので、1つの平行光導波路51−1だけでも光位相変調を行うことはできる。
【0036】
しかし、平行光導波路51−1だけの光位相変調では、上記のように0とπ以外の位相をとりながら時間遷移して位相が変位するので、周波数チャープが発生することになる。
一方、LN光変調器5は、平行光導波路51−2に対しては、変調信号光の光電変換後の反転データで変調をかけている。平行光導波路51−2における光位相変調では、電極55bから印加される電界によって、平行光導波路51−2で位相変調が生じ、平行光導波路51−2上の伝搬光は、0と−πの2値の位相をとる。
【0037】
この場合、平行光導波路51−2上で0から−πへ遷移するとき、または−πから0へ遷移するとき、0と−πの間の遷移時間において、角度(位相)θ(−π≦θ≦0)を持って遷移することになる。
【0038】
すなわち、0から−πへ遷移するときは、θは、0から−πの方向へ向かって、0から−πの間の負側の角度(位相)を時間的に遷移しながら−πとなる。また、−πから0へ遷移するときは、θは、−πから0の方向へ向かって、−πから0の間の負側の角度(位相)を時間的に遷移しながら0となる。
【0039】
図4はLN光変調器5の出力光の位相遷移状態を示す図である。平行光導波路51−1、51−2における位相変調量は共に同じであり、符号が異なる。したがって、例えば、平行光導波路51−1側で角度(+θ1)の遷移があったとき、平行光導波路51−2側では角度(−θ1)の遷移となるから、これらの合成ベクトルは、実軸上に現れることになる。
【0040】
すなわち、平行光導波路51−1側で遷移する位相と、平行光導波路51−2側で遷移する位相との光電界の合成ベクトルは、常に実軸上に存在することになる。したがって、0とπの間の角度(位相)の時間変動がないので(実軸上での遷移となるので角度を持たない)、0またはπを瞬間的に遷移することになり、位相変調量の時間変動が抑制される。
【0041】
このように、LN光変調器5では、上記のような差動変調を行うことにより、0からπへ、逆にπから0に遷移する瞬間を除いて、位相変調量の時間変動が抑制されるので、周波数チャープの発生を防止することができる。
【0042】
ただし、LN光変調器5においては、電気光学効果の応答速度により、変調速度に制限がかかる(〜100Gb/s程度)。このため、電子回路がボトルネックとなり、高ビットレートの光位相変調を行うことができない。また、光信号を電気信号に変換する機能は、光信号から電気信号への変換効率は低いために、大きな電力消失を伴うといった欠点があった。
【0043】
図5は光直接位相変調方式で周波数チャープが発生する理由を説明するための図である。光直接位相変調方式では、まず、偏波状態が共に調整された変調信号光と被変調光とが合波部6aによって合波され、合波光が非線形媒質6bに入力する。
【0044】
そして、非線形媒質6b内で被変調光が位相変調されて、光フィルタ6cにより変調信号光が遮断され、位相変調後の被変調光が出力するものである。なお、変調信号光の波長と被変調光の波長は互いに異なる。
【0045】
ここで、非線形媒質6bでは、光カー効果(optical Kerr effect)と呼ばれる非線形光学効果が発生し、被変調光は、変調信号光のパワー(振幅)に比例した位相量だけ変調されて出力される。
【0046】
光フィルタ6cから出力される被変調光は、図5の位相状態p1に示すように、矩形波形ではなく、時間変動を有した位相の波形であり、周波数チャープは、位相の時間微分であるから、位相状態p1のような波形を時間で微分すると、周波数チャープch1が発生することがわかる。
【0047】
光直接位相変調方式は、このように周波数チャープが発生することは不可避といえるが、非線形媒質6b内の非線形光学効果は非常に速く、テラビット級の超高速応答特性を有しているため、高ビットレートの光位相変調が可能であるという利点を持っている。
【0048】
次に光変調装置10の構成および動作について以降詳しく説明する。図6は光変調装置の構成例を示す図である。光変調装置10aは、被変調光分岐部11、変調信号光分岐部12、反転部13、光合波部14a、14b、非線形媒質15−1、15−2および光干渉部16を備える。また、光干渉部16は、位相シフト部16a、光合波部16bおよび光フィルタ16cを含む。
【0049】
被変調光分岐部11は、入力した被変調光を分岐して、被変調光a1と被変調光a2を出力する。変調信号光分岐部12は、入力した変調信号光を分岐して、変調信号光b1と変調信号光b2を出力する。
【0050】
反転部13は、変調信号光b2のパワーを反転して、反転変調信号光b3を生成する。なお、被変調光の波長λpと変調信号光の波長λsとは互いに異なる(λp≠λs)。
光合波部14aは、被変調光a1と変調信号光b1とを合波し、合波光を非線形媒質15−1に入力する。光合波部14bは、被変調光a2と反転変調信号光b3とを合波し、合波光を非線形媒質15−2に入力する。
【0051】
非線形媒質15−1は、被変調光a1と変調信号光b1とが入力し、変調信号光b1の非線形光学効果(主にXPMの作用)によって、変調信号光b1のパワーに比例した位相量だけ被変調光a1を変調して、出力光を位相変調光c1として出力する。
【0052】
非線形媒質15−2は、被変調光a2と反転変調信号光b3とが入力し、反転変調信号光b3の非線形光学効果(主にXPMの作用)によって、反転変調信号光b3のパワーに比例した位相量だけ被変調光a2を変調して、出力光を位相変調光c2として出力する。
【0053】
このように、一方の非線形媒質15−1には、被変調光a1と変調信号光b1とを入力して位相変調を行い、他方の非線形媒質15−2には、被変調光a2と、変調信号光b2のパワーを反転させた反転変調信号光b3とを入力して位相変調を行うようにして、互いに独立して被変調光の位相を変調する。
【0054】
非線形媒質15−1、15−2としては、非線形光学効果の発生効率が高い、例えば、高非線形光ファイバ(HNLF:High Non Linear Fiber)を使用できる。またはHNLFに限らず、フォトニック結晶ファイバ、半導体光アンプ、擬似位相整合構造を有する導波路(PPLN:Periodically Poled Lithium Niobate)、シリコン光導波路等を使用してもよい。
【0055】
なお、位相変調量は、一般に非線形媒質の非線形係数、媒質長および変調信号光のパワーの積に比例する。また、変調信号光b1のパワーおよび反転変調信号光b3のパワーは、非線形媒質15−1、15−2内で生じる位相変調量が概ねπになるように調整する。
【0056】
一方、光干渉部16において、位相シフト部16aでは、変調信号光b1で位相変調された被変調光が生成される経路(非線形媒質15−1側経路)と、反転変調信号光b3で位相変調された被変調光が生成される経路(非線形媒質15−2側経路)とに対して、2つの経路差の位相が0になるように、非線形媒質15−2側経路に対してバイアスをかけて、位相変調光c2の位相変調量をπ(または−π)だけ位相をシフトさせる。
【0057】
光合波部16bは、位相変調光c1と、位相シフト後の位相変調光c2とを合波する。これにより、非線形媒質15−1、15−2それぞれで位相変調を受けた被変調光a1、a2の互いのデータパターンが一致するタイミングで結合される。光フィルタ16cは、変調信号光を除去する光帯域除去フィルタであって、合波光から被変調光の光成分以外を遮断して、位相変調された被変調光を出力する。
【0058】
このように、非線形媒質15−1、15−2の後段に、光干渉部16を配置して、位相シフト、合波および光フィルタリングを行うことで、非線形媒質15−1、15−2からの出力光を適切に光干渉させて、所望の特性の光を出力させることが可能になる。
【0059】
ここで、変調信号光のデータレベルが“1”のときは、非線形媒質15−1を通過した光の位相変調量は“π”であり、非線形媒質15−2を通過した光の位相変調量は“−π”になっているので、その光電界の合成は“π”になる。
【0060】
一方、変調信号光のデータレベルが“0”のときは、非線形媒質15−1を通過した光の位相変調量は“0”であり、非線形媒質15−2を通過した光の位相変調量は“0”なので、その光電界の合成は“0”になる。
【0061】
すなわち、非線形媒質15−1が位置する経路を伝搬した光と、非線形媒質15−2が位置する経路を伝搬した光との和は、常に、実軸上に存在することになり、位相が0もしくはπしかとりえないという構成となる。したがって、光変調装置10aの構成において、位相変調量の時間変動がなく、周波数チャープの発生を抑制することが可能になる。
【0062】
また、光変調装置10aは、全光学的構成をとっており、非線形媒質15−1、15−2による非線形光学効果を利用して位相変調を実行するために、LN光変調器のような位相変調を実行するための電気駆動信号は不要である。これにより、駆動源の電子回路の動作速度に制約されるといったことがなく、超高速光変調を実現することが可能になる。
【0063】
図7、図8は各信号光のパワーまたは位相状態を示す図である。光変調装置10aにおける各信号光のパワーまたは位相状態の一例を示している。図7の(A)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、被変調光のパワーを示している。被変調光は連続光(CW(Continuous Wave)光)である。
【0064】
図7の(B)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、入力される変調信号光のデータパターンを示している。図7の(C)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、変調信号光のデータパターンが反転された反転変調信号光b3のデータパターンを示している。
【0065】
図8の(A)は、縦軸は位相、横軸は時間であり、位相変調光c1の位相を示している。図8の(B)は、縦軸は位相、横軸は時間であり、位相変調光c2の位相を示している。図8の(C)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、光フィルタ16c出力後の被変調光のパワーを示している。図8の(D)は、縦軸は位相、横軸は時間であり、光フィルタ16c出力後の被変調光の位相を示している。
【0066】
図9は光変調装置10aの各経路点における位相遷移状態を示す図である。状態ph1は、非線形媒質15−1から出力された位相変調光c1の0からπへの位相遷移状態を示す。
【0067】
状態ph2は、非線形媒質15−2から出力された位相変調光c2の0からπへの位相遷移状態を示す。状態ph3は、位相シフト部16aによって位相がπ(または−π)シフトされた後の位相変調光c2の位相遷移状態を示す。
【0068】
図10は光変調装置10aの出力光の位相遷移状態を示す図である。位相変調光c2はπ(または−π)だけ位相シフトされるので、位相変調光c1、c2は、位相変調量が同じであり、互いに符号だけが異なる。
【0069】
したがって、例えば、位相変調光c1の位相が角度(+θ1)だけ遷移したとき、位相シフト後の位相変調光c2の位相は(−θ1)の遷移となり、|θ1|=|−θ1|なので、光合波部16bによって合波されると、合成ベクトルは実軸上に現れることになる。
【0070】
したがって、光電界の合成ベクトルは、常に実軸上に存在することになるので、位相が0からπへ遷移、またはπから0へ遷移する際には、0とπの間の角度(位相)の時間変動がなくなり(実軸上での遷移となるので角度を持たない)、瞬間的に遷移する。
【0071】
このように、光変調装置10aでは、上記のような位相変調を行うことにより、LN光変調器と同様にして、位相変調量の時間変動が抑制されるので、周波数チャープの発生を防止することになる。
【0072】
次に反転部13の構成および動作について説明する。図11は反転部の構成例を示す図である。反転部13−1は、光カースイッチを応用して光データの反転を行うものであり、光源13a、偏波コントローラ13b−1、13b−2、光カプラ13c、光カースイッチ13dを備える。また、光カースイッチ13dは、高非線形光ファイバ(例えば、HNLFなど)13d−1、偏光子13d−2および光フィルタ13d−3を含む。
【0073】
光源13aは、CW光である信号光b4を発出する。信号光b4の波長λcは、変調信号光の波長λsおよび被変調光の波長λpに対して異なる(λc≠λs≠λp)。偏波コントローラ13b−1は、信号光b4の偏光状態(偏波状態)を調整制御する。偏波コントローラ13b−2は、変調信号光b2の偏光状態を調整制御する。
【0074】
光カプラ13cは、偏光調整後の変調信号光b2と、偏光調整後の信号光b4とを合波して合波光を高非線形光ファイバ13d−1へ入力する。高非線形光ファイバ13d−1は、光カー効果を介して、信号光b4の偏光状態を変調する。
【0075】
偏光子13d−2は、偏光軸(透過軸)と同一方向の偏光状態の光を通過させる光素子である。光フィルタ13d−3は、偏光子13d−2の出力光から、波長λcを透過帯域とするフィルタリングを行って、反転データ信号光である反転変調信号光b3を出力する。
【0076】
動作について説明する。偏波コントローラ13b−1では、変調信号光b2の入力がないとき、すなわち、高非線形光ファイバ13d−1の中で信号光b4が非線形光学効果を受けないとき、高非線形光ファイバ13d−1の後段に設置されている偏光子13d−2を最大透過するように、信号光b4の偏光状態を調整する。
【0077】
したがって、信号光b4の偏光状態を、偏光子13d−2の偏光軸と同一方向に調整することになる。例えば、図11に示すように、偏光子13d−2の偏光軸が水平にある状態P1の場合、偏波コントローラ13b−1では、信号光b4の偏波方向も水平になるように調整制御する(状態P2)。さらに加えて、高非線形光ファイバ13d−1の入力端で、信号光b4の偏光状態がおよそ直線偏光になるように調整する。
【0078】
なお、高非線形光ファイバ13d−1の内部で偏光状態が変わらないとすると、上記の設定は1つの偏波コントローラ13b−1で達成できるが、高非線形光ファイバ13d−1内で発生する偏波変動を考慮する場合には、高非線形光ファイバ13d−1と偏光子13d−2との間に、別途、偏波コントローラを設置すればよい。
【0079】
一方、偏波コントローラ13b−2では、変調信号光b2の偏光状態は、高非線形光ファイバ13d−1の入力端において、およそ直線偏波となって、かつ信号光b4の偏光面と概ねπ/4をなすように調整する(状態P3)。
【0080】
ここで、変調信号光b2が入力せずにパワーがゼロであれば、高非線形光ファイバ13d−1において信号光b4の偏光方向は回転しない。この場合、高非線形光ファイバ13d−1から出力される信号光b4の偏光方向は、偏光子13d−2の偏光軸と一致するので、信号光b4のほぼ100%が偏光子13d−2を通過することになる。したがって、変調信号光b2のデータが“0”の場合は、偏光子13d−2から“1”の値が出力されることになる。
【0081】
一方、変調信号光b2が高非線形光ファイバ13d−1に入力し、変調信号光b2のパワーが大きくなると、高非線形光ファイバ13d−1では、光カー効果によって(特にXPMの作用によって)偏光回転が生じ、変調信号光b2のパワーに応じて、信号光b4の偏光方向が回転する。
【0082】
そして、信号光b4の偏光方向がπ/2回転すると、高非線形光ファイバ13d−1から出力される信号光b4の偏光方向は、偏光子13d−2の偏光軸と直交する状態になり、信号光b4は、偏光子13d−2によって完全に遮断される。したがって、変調信号光b2のデータが“1”の場合は、偏光子13d−2から“0”の値が出力されることになる。
【0083】
このように、反転部13−1では、非線形媒質として高非線形光ファイバ13d−1を用いた光カースイッチ13dにより、変調信号光b2のデータレベルが反転された反転変調信号光b3を生成する構成とした。これにより、光電変換などを行わずに、光信号の状態のままで効率よくデータ反転を行うことが可能になる。
【0084】
図12は反転部13−1の入出力特性を示す図である。縦軸は反転部13−1の出力パワーであり、横軸は変調信号光b2の入力パワーである。変調信号光b2の入力パワーが0のときは、反転部13−1の出力パワーは1となり、変調信号光b2の入力パワーが1のときは、反転部13−1の出力パワーは0となる。
【0085】
図13は反転部の構成例を示す図である。反転部13−2では、図11で示した高非線形光ファイバ13d−1と偏光子13d−2の代わりに、半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)を用いるものである。
【0086】
反転部13−2は、光源13a、偏波コントローラ13b−1、13b−2、光カプラ13cおよび光カースイッチ13eを備える。また、光カースイッチ13eは、SOA13e−1および光フィルタ13e−2を備える。SOA13e−1には、変調信号光b2と信号光b4との合波光が入力される。
【0087】
なお、SOA13e−1として、矩形無歪バルク構造、伸張歪ウエル多重量子井戸(MQW:Multi-Quantum Well)構造、伸張歪バルク構造、伸張歪バリアMQW構造などの偏波無依存で動作するSOAを用いれば、偏波コントローラ13b−1、13b−2は不要である。
【0088】
ここで、変調信号光b2と信号光b4とのパワーの和が十分小さい場合、すなわち、利得が線形の場合は、両者の光が同じ利得を受ける。しかしながら、信号光b4と比べて、変調信号光b2のパワーが十分大きいと、変調信号光b2の増幅に使われるエネルギーが大きくなり、信号光b4は利得を受けなくなる。
【0089】
すなわち、変調信号光b2のパワーが大きくなると、SOA13e−1内で非線形光学効果である相互利得変調が発生し、信号光b4を一定パワーでSOA13e−2に入力していても、SOA13e−1内で発生する利得が変調信号光b2の方に取られてしまい、信号光b4の出力パワーが小さくなる現象が生じる。このことは、変調信号光b2のデータが“1”の場合は、SOA13e−1から“0”の値が出力されることを意味している。
【0090】
一方、変調信号光b2がない場合には、信号光b4は利得を受ける。このことは、変調信号光b2のデータが“0”の場合は、SOA13e−1から“1”の値が出力されることを意味する。上記のようにして、変調信号光b2のデータが反転した光が、SOA13e−1から出力され、データ反転が実施される。
【0091】
このように、反転部13−2では、非線形媒質としてSOA13e−1を用いた光カースイッチ13eにより、変調信号光b2のデータレベルが反転された反転変調信号光b3を生成する構成とした。これにより、光電変換などを行わずに、光信号の状態のままで効率よくデータ反転を行うことが可能になる。
【0092】
次に光変調装置10aの他の実施の形態について説明する。なお、以降の説明では、上述した構成要素には同じ符号を付けて、同一構成要素の説明は省略し、あらたな構成要素について主に説明する。
【0093】
図14は光変調装置の構成例を示す図である。光変調装置10a−1は、図6で上述した光変調装置10aに対して、あらたに偏波コントローラ17a〜17cを設け、あらたな光干渉部16−1を設けている。光干渉部16−1は、あらたに光減衰器16dを含む。
【0094】
偏波コントローラ17aは、被変調光a1の偏光状態を調整制御する。偏波コントローラ17bは、変調信号光b0の偏光状態を調整制御する。偏波コントローラ17cは、被変調光a2の偏光状態を調整制御する。光減衰器16dは、位相変調光c1の光レベルを調整制御する。
【0095】
一般に、非線形媒質や光部品接続用の光ファイバ中では、光の偏光状態は完全に保たれない。このため、偏波コントローラ17a〜17cを設けることにより、所望の偏光状態(偏波状態)を実現することが可能になる。
【0096】
また、非線形媒質15−1を伝搬する経路の光損失と、非線形媒質15−2を伝搬する経路の光損失とは一般には等しくならない。このため、非線形媒質15−1を伝搬する経路にパワー調整機構である光減衰器16dを設置する。
【0097】
これにより、位相変調光c1のパワーと、位相シフト後の位相変調光c2のパワーとを均等化することができ、光合波部16bにおいて、パワーバランスされた両者を結合することが可能になる。
【0098】
図15は光変調装置の構成例を示す図である。光変調装置10a−2は、図6で上述した光変調装置10aに対して、あらたな光干渉部16−2が設けられる。光干渉部16−2は、あらたに光分岐部16e、モニタ部16f、ドライバ16gを含む。
【0099】
光分岐部16eは、光フィルタ16cからの被変調光の出力を2分岐する。モニタ部16fは、光分岐部16eによって分岐された一方の被変調光のパワーをモニタする。ドライバ16gは、モニタ値が所定の値になるように(具体的には、モニタした光パワーが最大になるように)、位相シフト部16aに対してバイアス量を調整し、調整後のバイアスを与えるフィードバック制御を行う。
【0100】
ここで、非線形媒質15−1、15−2それぞれの経路を伝搬した光を結合する場合、その経路差の揺らぎを波長に比べて十分に短い長さにする必要がある。光通信で使用する光の波長は1.5μm程度なので、サブマイクロメートルの精度に抑え込むことになる。
【0101】
シリコン導波路をもちいて集積化したものだと、特に、動的な安定化は必要ないが、光ファイバ入出力形態の光部品を接続して本光変調装置を実現する場合には、経路差揺らぎを制御して動作を安定化することが好ましい。
【0102】
この安定化策の一例が光変調装置10a−2に示す構成である。経路差が半波長の奇数倍だと、互いの光が干渉して、パワーが小さくなる。一方、経路差が半波長の偶数倍だと、互いが干渉して、出力パワーが大きくなる。
【0103】
この特徴を利用して、光フィルタ16cからの出力光パワーを光パワーメータなどのモニタ部16fで測定し、そのパワーが最大になるように、ドライバ16gによってバイアスを調整する。これにより、経路差揺らぎを効率よく制御することができ、安定な動作が可能になる。
【0104】
なお、バイアス制御を実現する例としては、LN導波路やシリコン導波路にDCバイアスをかける等が挙げられる。または光ファイバに張力をかけて長さを高精度に調整する方法をとってもよい(例えば、光ファイバにピエゾ素子を付加し、ドライバ16gでピエゾ素子に電圧を印加して、ファイバ経路長の微調整を行うなど)。
【0105】
図16は光変調装置の構成例を示す図である。光変調装置10a−3は、図6で上述した光変調装置10aに対して、あらたに波長多重化部18が設けられる。波長多重化部18は、波長λp1の被変調光と、波長λp2の被変調光との波長多重化を行って(λp1≠λp2)、波長多重被変調光を出力する。
【0106】
このように、非線形媒質15−1、15−2で位相変調される被変調光が、2波長以上の波長数の波長多重光となるように、互いに異なる複数の波長の被変調光の波長多重化を行う波長多重化部18を設けた。
【0107】
これにより、多波長の被変調光に同じ変調信号光で変調して、例えば、マルチキャストなどの通信サービスを行うことが可能になる。なお、図16の例では2波長の場合を示しているが、3波以上の複数波長の光にも適用できる。
【0108】
図17は光変調装置の構成例を示す図である。上述してきた光変調装置では、被変調光としてCW光を入力したが、光変調装置10a−4では、光クロックの被変調光を入力するものである(装置構成上の特段の変更はない)。
【0109】
CW光の被変調光を入力した場合、位相変調後は、NRZ(Non Return to Zero)形式の信号光として出力されるが、RZ(Return to Zero)形式の信号光として出力したい場合には、光変調装置10a−4のように、パルス化した被変調光を入力すればよい。
【0110】
図18は各信号光の波形例を示す図である。光変調装置10a−4の各信号光の波形例を示している。(A)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、変調信号光の波形を示す。(B)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、被変調光(装置入力時)の波形を示す。(C)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、被変調光(装置出力時)の波形を示す。
【0111】
図19は光変調装置の構成例を示す図である。光変調装置10a−5は、図6で上述した光変調装置10aに対して、あらたに波長多重化部18aを有する。波長多重化部18aは、波長λp1の被変調光と、波長λp2の被変調光との波長多重化を行って(λp1≠λp2)、波長多重被変調光を出力する。被変調光(λp1)と被変調光(λp2)はともに光クロックである。
【0112】
図20、図21は各信号光の波形例を示す図である。光変調装置10a−5の各信号光の波形例を示している。図20の(A)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、変調信号光の波形を示す。図20(B)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、被変調光(装置入力時、波長λp1)の波形を示す。図20の(C)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、被変調光(装置入力時、波長λp2)の波形を示す。
【0113】
図21(A)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、被変調光(装置出力時、波長λp1)の波形を示す。図21の(B)は、縦軸はパワー、横軸は時間であり、被変調光(装置出力時、波長λp2)の波形を示す。
【0114】
図22は光変調装置の構成例を示す図である。光変調装置10a−6は、図6で上述した光変調装置10aに対して、あらたにタイミング抽出部19を備える。各信号光の波形は図18と同じである。
【0115】
タイミング抽出部19は、変調信号光の光クロックからタイミング抽出を行って、被変調光の光クロックを生成する。被変調光を光クロックで入力する場合、変調信号光との同期が重要になる。
【0116】
このため、正確な同期を実現するためには、タイミング抽出部19において、変調信号光からクロックタイミングを抽出し、そのクロックタイミングと一致した光クロックの被変調光を生成する。タイミング抽出部19を備えることにより、変調信号光と正確に同期した光クロックの被変調光を生成することが可能になる。
【0117】
なお、タイミング抽出としては、例えば、電界吸収型光変調器(EAM:Electric Absorption Modulator)を用いた手法、半導体光増幅器を用いた方法などがある。また、超高速の光クロック生成は、半導体モード同期レーザ、ファイバモード同期レーザなどにより実現できる。
【0118】
図23は光変調装置の構成例を示す図である。光変調装置10a−7は、図6で上述した光変調装置10aに対して、波長多重化部18aとタイミング抽出部19をさらに備える。各信号光の波形は図20、図21と同じである。
【0119】
タイミング抽出部19は、変調信号光のクロックタイミング抽出を行って、波長λp1の被変調光の光クロックと、波長λp2の被変調光の光クロックを生成する(λp1≠λp2)。波長多重化部18aは、波長λp1の被変調光と、波長λp2の被変調光との波長多重化を行って、波長多重被変調光を出力する。
【0120】
図24は光変調装置の構成例を示す図である。光変調装置10a−8は、図23の光変調装置10a−7と基本構成は同じであるが、光伝送路3を通じて伝送された変調信号光を受信する構成を示している。各信号光の波形は図20、図21と同じである。
【0121】
光伝送路3は、光ファイバf1、f2を含み、光増幅器31、32が中継点において設置される。光変調装置10a−8は、光伝送路3を通じて他ノード等から送信された変調信号光を受信し、その変調信号光のタイミング抽出を行って複数波長の被変調光を生成する。
【0122】
このような構成により、例えば、遠方のノードから伝送されてきた変調信号光を受信した場合であっても、タイミング抽出部19によって、変調信号光からクロックタイミングを抽出して、変調信号光と同期した被変調光の光クロックを生成することができる。
【0123】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。
(付記1) 変調信号光のパワーを反転させて、反転変調信号光を生成する反転部と、
被変調光を前記変調信号光の非線形光学効果によって位相変調させる第1の非線形媒質と、
前記被変調光を前記反転変調信号光の前記非線形光学効果によって位相変調させる第2の非線形媒質と、
前記第1の非線形媒質の出力光と、前記第2の非線形媒質の出力光との干渉制御を行う光干渉部と、
を有することを特徴とする光変調装置。
【0124】
(付記2) 前記光干渉部は、
前記第2の非線形媒質の出力光に所定の位相シフトを与える位相シフト部と、
前記第1の非線形媒質の出力光と、位相シフト後の前記第2の非線形媒質の出力光とを合波して合波光を出力する光合波部と、
前記合波光から、前記被変調光と異なる波長の光を遮断する光フィルタと、
を有することを特徴とする付記1記載の光変調装置。
【0125】
(付記3) 前記光干渉部は、光減衰器をさらに有し、
前記光減衰器は、前記第1の非線形媒質の出力光のパワーと、位相シフト後の前記第2の非線形媒質の出力光のパワーとが均等化するように、前記第1の非線形媒質の出力光のパワー、または位相シフト後の前記第2の非線形媒質の出力光のパワーのいずれかの減衰制御を行うことを特徴とする付記2記載の光変調装置。
【0126】
(付記4) 前記光干渉部は、
前記光フィルタの透過後の光パワーをモニタするモニタ部と、
モニタ値が所定値になるように、位相シフトさせるためのバイアス量を調整し、調整後のバイアス量を前記位相シフト部に与えるドライバと、
を有することを特徴とする付記2記載の光変調装置。
【0127】
(付記5) 前記変調信号光および前記被変調光に対して、偏光状態を制御するための偏波コントローラをさらに有することを特徴とする付記1記載の光変調装置。
(付記6) 前記第1の非線形媒質および前記第2の非線形媒質で位相変調される前記被変調光が、2波長以上の波長数の波長多重光となるように、互いに異なる複数の波長の前記被変調光の波長多重化を行う波長多重化部をさらに有することを特徴とする付記1記載の光変調装置。
【0128】
(付記7) 前記反転部は、非線形媒質として高非線形光ファイバを用いた光カースイッチを含むことを特徴とする付記1記載の光変調装置。
(付記8) 前記反転部は、非線形媒質として半導体光増幅器を用いた光カースイッチを含むことを特徴とする付記1記載の光変調装置。
【0129】
(付記9) 前記変調信号光からクロックタイミングを抽出して前記変調信号光と同期した前記被変調光の光クロックを生成するタイミング抽出部をさらに有することを特徴とする付記1記載の光変調装置。
【0130】
(付記10) 光変調方法において、
変調信号光のパワーを反転させて、反転変調信号光を生成し、
第1の非線形媒質により、被変調光を前記変調信号光の非線形光学効果によって位相変調させ、
第2の非線形媒質により、前記被変調光を前記反転変調信号光の前記非線形光学効果によって位相変調させ、
前記第1の非線形媒質の出力光と、前記第2の非線形媒質の出力光との干渉制御を行う、
ことを特徴とする光変調方法。
【符号の説明】
【0131】
10 光変調装置
13 反転部
15−1、15−2 非線形媒質
16 光干渉部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調信号光のパワーを反転させて、反転変調信号光を生成する反転部と、
被変調光を前記変調信号光の非線形光学効果によって位相変調させる第1の非線形媒質と、
前記被変調光を前記反転変調信号光の前記非線形光学効果によって位相変調させる第2の非線形媒質と、
前記第1の非線形媒質の出力光と、前記第2の非線形媒質の出力光との干渉制御を行う光干渉部と、
を有することを特徴とする光変調装置。
【請求項2】
前記光干渉部は、
前記第2の非線形媒質の出力光に所定の位相シフトを与える位相シフト部と、
前記第1の非線形媒質の出力光と、位相シフト後の前記第2の非線形媒質の出力光とを合波して合波光を出力する光合波部と、
前記合波光から、前記被変調光と異なる波長の光を遮断する光フィルタと、
を有することを特徴とする請求項1記載の光変調装置。
【請求項3】
前記光干渉部は、光減衰器をさらに有し、
前記光減衰器は、前記第1の非線形媒質の出力光のパワーと、位相シフト後の前記第2の非線形媒質の出力光のパワーとが均等化するように、前記第1の非線形媒質の出力光のパワー、または位相シフト後の前記第2の非線形媒質の出力光のパワーのいずれかの減衰制御を行うことを特徴とする請求項2記載の光変調装置。
【請求項4】
前記光干渉部は、
前記光フィルタの透過後の光パワーをモニタするモニタ部と、
モニタ値が所定値になるように、位相シフトさせるためのバイアス量を調整し、調整後のバイアス量を前記位相シフト部に与えるドライバと、
を有することを特徴とする請求項2記載の光変調装置。
【請求項5】
光変調方法において、
変調信号光のパワーを反転させて、反転変調信号光を生成し、
第1の非線形媒質により、被変調光を前記変調信号光の非線形光学効果によって位相変調させ、
第2の非線形媒質により、前記被変調光を前記反転変調信号光の前記非線形光学効果によって位相変調させ、
前記第1の非線形媒質の出力光と、前記第2の非線形媒質の出力光との干渉制御を行う、
ことを特徴とする光変調方法。
【請求項1】
変調信号光のパワーを反転させて、反転変調信号光を生成する反転部と、
被変調光を前記変調信号光の非線形光学効果によって位相変調させる第1の非線形媒質と、
前記被変調光を前記反転変調信号光の前記非線形光学効果によって位相変調させる第2の非線形媒質と、
前記第1の非線形媒質の出力光と、前記第2の非線形媒質の出力光との干渉制御を行う光干渉部と、
を有することを特徴とする光変調装置。
【請求項2】
前記光干渉部は、
前記第2の非線形媒質の出力光に所定の位相シフトを与える位相シフト部と、
前記第1の非線形媒質の出力光と、位相シフト後の前記第2の非線形媒質の出力光とを合波して合波光を出力する光合波部と、
前記合波光から、前記被変調光と異なる波長の光を遮断する光フィルタと、
を有することを特徴とする請求項1記載の光変調装置。
【請求項3】
前記光干渉部は、光減衰器をさらに有し、
前記光減衰器は、前記第1の非線形媒質の出力光のパワーと、位相シフト後の前記第2の非線形媒質の出力光のパワーとが均等化するように、前記第1の非線形媒質の出力光のパワー、または位相シフト後の前記第2の非線形媒質の出力光のパワーのいずれかの減衰制御を行うことを特徴とする請求項2記載の光変調装置。
【請求項4】
前記光干渉部は、
前記光フィルタの透過後の光パワーをモニタするモニタ部と、
モニタ値が所定値になるように、位相シフトさせるためのバイアス量を調整し、調整後のバイアス量を前記位相シフト部に与えるドライバと、
を有することを特徴とする請求項2記載の光変調装置。
【請求項5】
光変調方法において、
変調信号光のパワーを反転させて、反転変調信号光を生成し、
第1の非線形媒質により、被変調光を前記変調信号光の非線形光学効果によって位相変調させ、
第2の非線形媒質により、前記被変調光を前記反転変調信号光の前記非線形光学効果によって位相変調させ、
前記第1の非線形媒質の出力光と、前記第2の非線形媒質の出力光との干渉制御を行う、
ことを特徴とする光変調方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−158764(P2011−158764A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21179(P2010−21179)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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