説明

光学コーティング組成物

【課題】高透明性、高屈折率及び高硬度を併せ持つ光学コーティング組成物を提供する。
【解決手段】反応性官能基を有するトリアルコキシシラン(A)を、前記トリアルコキシシラン(A)100重量部に対して、β−ジケトン化合物又はβ−ケトエステル化合物から有機配位子を有する2官能性以上の、ジルコニウム、チタン及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属の、金属アルコキシド(B)50〜200重量部存在下に、加水分解、縮合してなるシルセスキオキサン誘導体を主成分とする光学コーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シルセスキオキサン誘導体を使用した光学コーティング組成物に関し、詳細には、高透明性、高屈折率及び高硬度を併せ持つ光学コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光学部品、光素子、又は、液晶表示装置等の各種ディスプレイ等の光デバイス等における光学基材の表面には、保護や機能付与を目的にコーティングがなされる。この目的としては、所望の機能に応じて各種の特性を付与することが挙げられるが、プラスチックやガラス等の光学基材が使用されることが多い光学部品や光素子、光デバイス等の場合には、硬度付与、屈折率制御、所定の波長域に関する透明性等が特に重要とされる。
【0003】
従来、このようなコーティングのためには、主としてアクリル系樹脂が使用されてきたのであるが、硬度等が不充分であり、長期の使用や保護の必要な用途には向いていなかった。そこで、シルセスキオキサンを使用したハードコート組成物が提案された(例えば、特許文献1参照。)。上記文献には、数平均分子量1000〜3万のラダー型硬化性官能基含有シルセスキオキサンの使用が提案されており、表面硬度等に優れていることが記載されている。しかしながら、シルセスキオキサンの屈折率は1.53程度であり、高屈折率の要請には不充分である。
【0004】
一方では、3価以上の金属のアルコキシドを化学修飾により2官能性のアルコキシドとしたものとトリアルコキシシランとを加水分解重縮合したシリコン重合体が知られている(例えば、特許文献2参照。)。この技術によれば、β−ケトエステル等を化学修飾に用いている。しかしながら、上記文献の記載や開示は、もっぱら耐熱性エラストマーに関するものであって、光学用コーティング膜用途とは全く無関係である。
【特許文献1】特開2002−167552号公報
【特許文献2】特開平10−251409号公報(請求項8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の現状に鑑み、本発明は、高透明性、高屈折率及び高硬度を併せ持つ光学用コーティング組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討の結果、従来、光学用途に使用されていなかった有機配位子で化学修飾した金属アルコキシドを反応性官能基を有するトリアルコキシシランとともに反応させることにより、高屈折率を有するシルセスキオキサン誘導体を得ることができることを見出した。従って本発明は、反応性官能基を有するトリアルコキシシラン(A)を、前記トリアルコキシシラン(A)100重量部に対して、有機配位子を有する2官能性以上の、ジルコニウム、チタン及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属の、金属アルコキシド(B)50〜200重量部存在下に、加水分解、縮合してなるシルセスキオキサン誘導体を主成分とするコーティング組成物である。
本発明の一態様において、有機配位子は、β−ジケトン化合物又はβ−ケトエステル化合物からなる。
本発明の別の態様においては、トリアルコキシシラン(A)は、エポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基及びオキセタニル基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性環状エーテル基を反応性官能基として有する。
本発明のさらに別の態様においては、トリアルコキシシラン(A)は、アルケニル基又は(メタ)アクリロイル基を反応性官能基として有する。
本発明のさらに他の態様においては、さらに、反応性官能基を含有しないトリアルコキシシラン(C)を共加水分解、共縮合してなる。
本発明はまた、上記コーティング組成物を塗布し、硬化させてなるコーティング膜でもある。
【発明の効果】
【0007】
(1)本発明の光学コーティング組成物は上述の構成により、反応性官能基を介した反応により硬化することができるので、高温での加熱、乾燥をする必要がなく、耐熱性の高くない樹脂基材にも適用することができる。
(2)本発明の光学コーティング組成物は上述の構成により、高透明性、高屈折率及び高硬度を併せ持つことができ、シルセスキオキサンを使用した光学用コーティング組成物の特性をバランス良く改善することができる。
(3)本発明の光学コーティング組成物は、有機配位子を有する金属アルコキシドの存在下にトリアルコキシシランの加水分解、縮合反応を行うことで、シルセスキオキサン誘導体のポリシロキサン構造を適度に維持し、コーティング膜の硬度と機械的特性のバランスを保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上記トリアルコキシシラン(A)における反応性官能基としては、他の基と反応して架橋を形成することができるものであれば特に限定されず、例えば、反応性環状エーテル基(例えば、エポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、オキセタニル基、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等。)、炭素−炭素不飽和二重結合含有基(例えば、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基等。)等を挙げることができる。これらのうち、エポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、オキセタニル基、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)が好ましく、エポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0009】
上記トリアルコキシシラン(A)としては、例えば、下記一般式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、複数のRは各々独立してアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等。)を表し、R2は反応性官能基を含有する置換基を表す。)で表されるトリアルコキシシラン(I)を挙げることができる。
【0012】
上記トリアルコキシシラン(I)における上記一般式(1)中、上記反応性官能を含有する置換基としては、例えば、上記反応性環状エーテル基(例えば、エポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、オキセタニル基等)を含有し、エーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基、(メタ)アクリロイル基又はビニル基を含有する炭素数2〜10の炭化水素基、上記反応性環状エーテル基(例えば、エポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、オキセタニル基等)を含有するシリルオキシ基等を挙げることができる。
【0013】
上記トリアルコキシシラン(I)の具体例としては、例えば、Rが全てメチル基であるか、全てエチル基であるか、メチル基が二つにエチル基が一つであるか、又は、メチル基が一つにエチル基が二つであって、そのそれぞれについて、R1がエポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、オキセタニル基若しくはアルケニル基を含有し、エーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基、(メタ)アクリロイル基を含有する炭素数2〜10の炭化水素基、又は、エポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、オキセタニル基若しくはアルケニル基を含有するシリルオキシ基であるもの、等が挙げられる。
【0014】
上記トリアルコキシシラン(A)と併用することができる反応性官能基を含有しないトリアルコキシシラン(C)としては特に限定されず、例えば、下記一般式(2):
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、複数のRは各々独立してアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)を表し、R1は炭素数1〜20のアルキル基を表すか、又は、炭素数1〜8の炭化水素基を有していてもよいフェニル基を表す。)で表されるトリアルコキシシラン(II)を挙げることができる。
【0017】
上記炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−又はt−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、オクチル、イソオクチル、ドデシル、テトラデシル等を挙げることができる。これらのうち、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数2〜8のアルキル基がより好ましい。
【0018】
上記炭素数1〜8の炭化水素基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、クメニル等のほか、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等の置換基を有するフェニル基等を挙げることができる。
【0019】
上記トリアルコキシシラン(II)の具体例としては、例えば、Rが全てメチル基であるか、全てエチル基であるか、メチル基が二つにエチル基が一つであるか、又は、メチル基が一つにエチル基が二つであって、そのそれぞれについて、R1がエチル、イソブチル、イソオクチル又はフェニル等であるもの、等が挙げられる。
【0020】
上記トリアルコキシシラン(I)と上記トリアルコキシシラン(II)との配合モル比は、10:90〜90:10であることが好ましく、より好ましくは、40:60〜80:20である。トリアルコキシシラン(II)のモル比が10未満であると硬化後の架橋密度が高くなり、耐熱衝撃性が悪くなるおそれがある。90より大きいと機械強度が低くなるおそれがある。
【0021】
上記金属アルコキシド(B)は、有機配位子を有する2官能性以上(例えば、アルコキシル基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ等)を2つ有する2官能性、又は、アルコキシル基を3つ有する3官能性等)の、ジルコニウム、チタン及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属のアルコキシドである。上記有機配位子は、金属アルコキシドに配位し、アルコキシドの反応性を制御することができる。上記有機配位子としては、例えば、β−ジケトン化合物、β−ケトエステル化合物等を挙げることができる。これらのうち、β−ケトエステル化合物が好ましい。
【0022】
上記金属アルコキシド(B)の具体例としては、例えば、ジルコニウムジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキサイドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、ジルコニウムメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリ−n−プロポキサイド、チタンジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタンメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、チタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、チタンジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、アルミニウム(III)ジ−s−ブトキサイドエチルアセトアセテート、アルミニウム(III)ジイソプロポキサイドエチルアセトアセテート等を挙げることができる。
【0023】
本発明のコーティング組成物においては、上記トリアルコキシシラン(A)と、必要に応じて上記トリアルコキシシラン(C)とを、上記金属アルコキシド(B)存在下に、加水分解、縮合して得ることができるシルセスキオキサン誘導体を主成分とする。
【0024】
上記シルセスキオキサン誘導体は、上述の反応性官能基を有する。なお、本明細書においてはシルセスキオキサン誘導体は、(RSiO3/2)nの構造を有するポリシロキサンの、上記構造中のSiの一部がジルコニウム、チタン又はアルミニウムに置き換わった構造のシルセスキオキサンをいう。上記トリアルコキシシラン(A)と、必要に応じて上記トリアルコキシシラン(C)とを、上記金属アルコキシド(B)存在下に、加水分解、縮合することにより、上記シルセスキオキサン誘導体を得ることができる。3官能性の金属アルコキシドを使用する場合は、一般的には、上記ポリシロキサン構造と類似する3次元構造を形成するであろうし、2官能性の金属アルコキシドを使用する場合は、2次元の結合を形成するであろうから、上記ポリシロキサン構造が部分的に乱れるであろう。この結果、上記シルセスキオキサン誘導体の可撓性に影響を与え得る。なお、上記シルセスキオキサン誘導体は、ラダー型又はランダム型構造のものであってもよく、又は、籠型構造のものであってもよいが、ラダー型又はランダム型構造のものが好ましい。従って、上記シルセスキオキサン誘導体は、好ましくは、ラダー型構造のもののみ、ランダム型構造のもののみ、又は、ラダー型構造のものとランダム型構造のものの混合物のいずれかであり、より好ましくはラダー型構造のものとランダム型構造のものの混合物である。
【0025】
ラダー型構造のシルセスキオキサン誘導体は、例えば、以下のような構造を有する。
【0026】
【化3】

【0027】
上記式中、複数のXは同一又は異なって反応性官能基を、複数のYは同一又は異なって1価の炭化水素基(例えば、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜8の炭化水素基を有していてもよいフェニル基等)を表す。
【0028】
上記シルセスキオキサン誘導体は、上記トリアルコキシシラン(A)と、必要に応じて上記トリアルコキシシラン(C)とを、上記金属アルコキシド(B)存在下に、共加水分解、共縮合することにより得ることができ、共加水分解、共縮合の条件により、また、2官能性の金属アルコキシドを使用するか又は3官能性の金属アルコキシドを使用するかにもより、ラダー型、ランダム型又は籠型構造のものを得ることができる。例えば、ラダー型又はランダム型構造体の上記シルセスキオキサン誘導体の製造方法として、本明細書の実施例の方法や、特開平6−306173号公報に記載のシルセスキオキサンの製造方法等に準じた方法により製造することができ、籠型構造のものは、特開2004−359933号公報に記載のシルセスキオキサンの製造方法等に準じた方法を適用することができる。
【0029】
例えば、ラダー型又はランダム型構造のものの場合、アルコキシル基1モルに対して1〜3モルの水を添加し、必要に応じて、酸触媒を使用し、反応温度25〜50℃、反応時間3〜12時間で撹拌しつつ共加水分解、共縮合する。その際、アルコール等の有機溶媒を併用してもよい
【0030】
上記酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸、ホウ酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルフォン酸、P−トルエンスルホン酸などが挙げられる。また、テトラブチルアンモニウムフルオライド、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムなどのフッ素系化合物なども用いることができる。その配合量は、固形分を100重量部とした場合、0.01〜0.1重量%が好ましい。
【0031】
上記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、トルエン、キシレン、ベンゼン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、その他ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの溶媒が例示される。これら溶媒は単独でまたは二種類以上混合して使用することができる。
【0032】
本発明においては、上記トリアルコキシシラン(A)100重量部に対して、上記金属アルコキシド(B)を50〜200重量部使用する。上記金属アルコキシド(B)の配合量が50重量部未満であると、屈折率の向上効果が充分ではなく、200重量部を超えると、透明性が不充分である。上記金属アルコキシド(B)の配合量は、好ましくは60〜150重量部であり、より好ましくは70〜120重量部である。
【0033】
上記シルセスキオキサン誘導体の重量平均分子量は、1000〜15000であることが好ましい。重量平均分子量が1000未満であると、硬度が不充分となるおそれがあり、15000を超えると、粘度が高くなり、コーティングすることが困難となる場合がある。より好ましくは1500〜10000である。
【0034】
本発明において、上記シルセスキオキサン誘導体は、架橋物を形成して硬化するのであるが、この硬化は、例えば、光硬化(光カチオン硬化、光ラジカル硬化等)又は熱硬化であってよい。光ラジカル硬化は、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等に適用される。光カチオン硬化は、例えば、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタニル基等に適用される。
【0035】
上記光ラジカル硬化には、可視光、紫外線、電子線、X線等の活性エネルギー線を照射されることによってラジカル等を発生するラジカル重合開始剤を含有させることができる。
【0036】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリ)−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、p,p−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール等のケタール類、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のアントラキノン類、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、2,4,6−トリス−S−トリアジン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等)等を単独でまた2種以上を組み合わせて使用して行うことができる。
【0037】
このようなラジカル重合開始剤の使用量は、シルセスキオキサン誘導体100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、特に好ましくは1〜5重量部である。
【0038】
また、上記シルセスキオキサン誘導体の架橋物を形成するために、過酸化物系熱重合開始剤を使用してもよい。過酸化物系熱重合開始剤とは、熱の作用によって開裂しラジカル等を発生する化合物である。このような過酸化物系熱重合開始剤としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)バラレート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0039】
このような過酸化物系熱重合開始剤の使用量は、シルセスキオキサン誘導体100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、特に好ましくは1〜5重量部である。
【0040】
上記光カチオン硬化には、光カチオン開始剤を使用することが出来る。光カチオン開始剤とは、可視光、紫外線、電子線、X線等の活性エネルギー線の作用によって開裂し強酸を放出する化合物である。
【0041】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、有機金属錯体類、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩およびヨードニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。当該オニウム塩類としては、例えば、オプトマーSP−150{商品名、旭電化工業(株)製}、オプトマーSP−170{商品名、旭電化工業(株)製}、UVE−1014(商品名、ゼネラルエレクトロニクス社製)、ロードシル2074(商品名、ローディア社製)およびCD−1012(商品名、サートマー社製)、また、有機金属錯体類としては、例えば、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体およびアリールシラノール−アルミニウム錯体などの化合物を単独でまた2種以上を組み合わせて使用して用いることができる。
【0042】
このような光カチオン重合開始剤の使用量は、シルセスキオキサン誘導体100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、特に好ましくは1〜5重量部である。
【0043】
また、上記シルセスキオキサン誘導体の架橋物を形成するために、熱カチオン重合開始剤を使用してもよい。熱カチオン重合開始剤とは、熱の作用によって開裂し強酸を放出する化合物である。カチオン重合においては、ビニルエーテル基やエポキシ基のカチオン重合が起こり、例えば、カチオン種がエポキシ環を開環させ、エポキシ樹脂同士を自己架橋させて、ネットワークを形成する。このようなカチオン重合開始剤としては、スルホニウム塩(例えば、ジメチルフェナシルスルホニウム、ジメチルベンジルスルホニウム、ジメチル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウム、ジメチル−4−ヒドロキシナフチルスルホニウム、ジメチル−4,7−ジヒドロキシナフチルスルホニウム、ジメチル−4,8−ジヒドロキシナフチルスルホニウム、トリフェニルスルホニウム、p−トリルジフェニルスルホニウム、p−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−フェニルチオフェニルスルホニウム等のクロリド、ブロミド、p−トルエンスルホナート、トリフルオロメタンスルホナート、テトラフルオロボレート、テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、テトラキスペンタフルオロフェニルガレート、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアルセナート、ヘキサフルオロアンチモネート塩が挙げられる)等を挙げることができる。
【0044】
このような熱カチオン重合開始剤の配合量は、シルセスキオキサン誘導体100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、特に好ましくは1〜5重量部である。
【0045】
本発明のコーティング組成物は、上記シルセスキオキサン誘導体を主成分とし、必要に応じて、上述したように、重合開始剤等の成分を添加して得ることができる。また、本発明のコーティング組成物には、本発明の目的を阻害しないかぎり、その他の各種の添加剤を配合することができ、例えば、希釈剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0046】
上記希釈剤は、光又は熱重合性モノマー及び有機溶剤の少なくとも1種を意味する。光重合性モノマーは反応性希釈剤といわれるものである。粘度や乾燥性を調節するために有機溶剤を用いてもよいが、その必要がなければ用いなくてもよい。上記反応性希釈剤としては、光又は熱カチオン重合性モノマーと、光ラジカル重合性モノマーが挙げられる。
【0047】
光又は熱カチオン重合性モノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、脂環式エポキシ基等の反応性環状エーテル又は、ビニルエーテル基等のカチオン硬化可能な官能基を少なくとも一種類以上含む化合物を使用することが出来る。例えば、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、水素化ビスフェノールAや水素化ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加型ジグリシジルエーテル、脂肪族ジオール、トリオール類等の多価アルコール類から得られる多価グリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等のアルキルモノグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等の脂環式エポキシ化合物、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が挙げられる。これら反応性希釈剤は単独で使用できる他、2種以上を混合しても使用することができる。
【0048】
光ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクロイル、ビニル基等のラジカル重合可能な官能基を少なくとも一種類以上含む化合部を使用すること出来る。例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら反応性希釈剤は単独で使用できる他、2種以上を混合しても使用することができる。
【0049】
反応性希釈の配合量は、シルセスキオキサン誘導体と上記重合開始剤との合計量に対して、通常5〜60重量%、好ましくは10〜30重量%である。60重量%を超えると、硬化速度は大幅に低下する。
【0050】
上記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;ならびに2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類を挙げることができる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリールエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレートなどのポリオキシエチレンジアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤;エフトップEF301、エフトップ303、エフトップ352(新秋田化成(株)製);メガファックF171、メガファックF172、メガファックF173(大日本インキ化学工業(株)製);フロラードFC−430、フロラードFC−431(住友スリーエム(株)製);アサヒガードAG710、サーフロンS−382、サーフロンSC−101、サーフロンSC−102、サーフロンSC−103、サーフロンSC−104、サーフロンSC−105、サーフロンSC−106(旭硝子(株)製)などの名称で市販されているフッ素系界面活性剤;オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製);(メタ)アクリル酸系共重合体ポリフローNo.57、95(共栄社油脂化学工業(株)製)など。これらは単独であるいは2種以上組合せて用いられる。
【0052】
上記紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸類、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジtert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジtert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジtert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{(2′−ヒドロキシ−3′,3′′,4′′,5′′,6′′−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール類、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル}メチル]ブチルマロネート等のヒンダードアミン類などが挙げられる。これらは、単独で使用できるほか、2種以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0053】
これらの紫外線吸収剤は、シルセスキオキサン誘導体100重量部に対して好ましくは0.01から10重量部配合される。
【0054】
上記光安定剤の具体例としては、例えば、ポリ[{6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)イミノ}]等のヒンダードアミン類が挙げられる。これらは単独で使用できるほか、2種以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0055】
これらの光安定剤は、シルセスキオキサン誘導体100重量部に対して好ましくは0.01から10重量部配合される。
【0056】
上記シランカップリング剤としては、例えば、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビルニトリメトキシシラン、ビルニトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0057】
本発明のコーティング組成物は、固形分濃度が20〜70%であることが、塗布性の観点から、好ましい。
【0058】
本発明のコーティング組成物を適用する光基材としては、例えば、ガラス、樹脂等の素材からなる各種形状の基材が挙げられる。コーティング組成物を、これらの光基材に公知の各種の方法(例えば、ロールコート、カーテンフローコート、グラビアコート、ブレードコート、ディップコート等)により、乾燥膜厚を、例えば、20〜300nm程度になるように塗布し、必要に応じて、溶剤を乾燥除去し、次いで、塗膜を硬化させてコーティング膜を形成させる。
【0059】
光硬化の場合は、紫外線(高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、ブラックライト、メタルハライドランプ等)、電子線等の電離放射線を照射(照射光量は、例えば、100〜1000mJ/cm2;照射時間は、例えば、数秒〜数時間程度;照射時の温度は、例えば、室温〜100℃程度。)することが通常行われている。
【0060】
本発明のコーティング膜は、硬化膜厚が通常、1〜10μmである。膜厚が薄すぎると保護効果が乏しく、逆に、厚すぎると、効果の増大が望めず、また、塗膜の形成が困難となる。
【0061】
本発明のコーティング膜は、シルセスキオキサンの有する硬度、透明性等の特性を生かしつつ、屈折率を高めることができ、例えば、1.60以上の屈折率とすることができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の記載は専ら説明のためであって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
合成例1
シルセスキオキサン誘導体(SQ−1)の合成
撹拌機及び温度計を設置した反応容器に、MIBK150g、35%塩酸水溶液1.0g、蒸留水24.5gを仕込んだ後、チタンジイソプロポキサイドビス(エチルアセテート)96.3g(227.0mmol)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン51.6g(227.0mmol)を25〜30℃で徐々に加え、12時間撹拌放置した。反応終了後、系内にMIBK150gを加え、さらに75gの蒸留水で水層のpHが中性になるまで水洗した。次に80gの蒸留水で2回水洗後、減圧下でMIBKを留去して目的の化合物(SQ−1)を得た。Mwは2170であった。分散度Mw/Mn=1.3、IR測定で3500cm−1付近の残存シラノールのピークを持つ、ラダー型もしくはランダム型構造を主体とするシルセスキオキサン誘導体を得た。
【0064】
合成例2
シルセスキオキサン誘導体(SQ−2)の合成
撹拌機及び温度計を設置した反応容器に、MIBK150g、35%塩酸水溶液1.0g、蒸留水25.0gを仕込んだ後、チタンジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオテート)101.9g(204.0mmol)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン48.1g(204.0mmol)を25〜30℃で徐々に加え、12時間撹拌放置した。反応終了後、系内にMIBK150gを加え、さらに75gの蒸留水で水層のpHが中性になるまで水洗した。次に80gの蒸留水で2回水洗後、減圧下でMIBKを留去して目的の化合物(SQ−2)を得た。Mwは2270であった。分散度Mw/Mn=1.2、IR測定で3500cm−1付近の残存シラノールのピークを持つ、ラダー型もしくはランダム型構造を主体とするシルセスキオキサン誘導体を得た。
【0065】
合成例3
シルセスキオキサン誘導体(SQ−3)の合成
撹拌機及び温度計を設置した反応容器に、MIBK150g、35%塩酸水溶液1.0g、蒸留水25.0gを仕込んだ後、ジルコニウムジイソプロポキサイドビス(2,2,6,6,−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート92.8g(161.0mmol)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン57.2g(242.0mmol)を25〜30℃で徐々に加え、12時間撹拌放置した。反応終了後、系内にMIBK150gを加え、さらに75gの蒸留水で水層のpHが中性になるまで水洗した。次に80gの蒸留水で2回水洗後、減圧下でMIBKを留去して目的の化合物(SQ−2)を得た。Mwは2410であった。分散度Mw/Mn=1.3、IR測定で3500cm−1付近の残存シラノールのピークを持つ、ラダー型もしくはランダム型構造を主体とするシルセスキオキサン誘導体を得た。
【0066】
合成例4
シルセスキオキサン誘導体(SQ−4)の合成
撹拌機及び温度計を設置した反応容器に、MIBK150g、35%塩酸水溶液1.0g、蒸留水29.0gを仕込んだ後、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネートの45%トルエン溶液178.6g(196.0mmol)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン69.6g(295.0mmol)を25〜30℃で徐々に加え、12時間撹拌放置した。反応終了後、系内にMIBK150gを加え、さらに75gの蒸留水で水層のpHが中性になるまで水洗した。次に80gの蒸留水で2回水洗後、減圧下でMIBKを留去して目的の化合物(SQ−2)を得た。Mwは2010であった。分散度Mw/Mn=1.2、IR測定で3500cm−1付近の残存シラノールのピークを持つ、ラダー型もしくはランダム型構造を主体とするシルセスキオキサン誘導体を得た。
【0067】
合成例5
シルセスキオキサン誘導体(SQ−5)の合成
撹拌機及び温度計を設置した反応容器に、MIBK150g、35%塩酸水溶液1.0g、蒸留水30.0gを仕込んだ後、60%ジルコニウム−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)の60%ブタノール溶液216.1g(298.0mmol)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン70.3g(298.0mmol)を25〜30℃で徐々に加え、12時間撹拌放置した。反応終了後、系内にMIBK150gを加え、さらに75gの蒸留水で水層のpHが中性になるまで水洗した。次に80gの蒸留水で2回水洗後、減圧下でMIBKを留去して目的の化合物(SQ−2)を得た。Mwは2100であった。分散度Mw/Mn=1.3、IR測定で3500cm−1付近の残存シラノールのピークを持つ、ラダー型もしくはランダム型構造を主体とするシルセスキオキサン誘導体を得た。
【0068】
合成例6
シルセスキオキサン誘導体(SQ−6)の合成
撹拌機及び温度計を設置した反応容器に、MIBK150g、水酸化テトラメチルアンモニウムの20%水溶液10.3g(水酸化テトラメチルアンモニウム22.6)、蒸留水29.0gを仕込んだ後、フェニルトリメトキシシラン68.4g(345.0mmol)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン81.6g(345.0mmol)を50〜55℃で徐々に加え、3時間撹拌放置した。反応終了後、系内にMIBK150gを加え、さらに75gの蒸留水で水層のpHが中性になるまで水洗した。次に80gの蒸留水で2回水洗後、減圧下でMIBKを留去して目的の化合物(SQ−6)を得た。Mwは4800であった。分散度Mw/Mn=1.2、IR測定で3500cm−1付近の残存シラノールのピークを持つ、ラダー型もしくはランダム型構造を主体とするシルセスキオキサン誘導体を得た。
【0069】
実施例1〜5
合成例1〜5で得られた樹脂、光カチオン重合開始剤(三新化学(株)製、製品名「サンエイドSI−100L」)、、界面活性剤(大日本インキ化学工業社製、製品名「メガファック172」)、PGMEAを表1に示す割合で配合し、コーティングの組成物を得た。
【0070】
比較例1
ポリメチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)社製、製品名「アクリライト」)PGMEA30%溶液を用いた。
【0071】
比較例2
ポリスチレン(PSジャパン(株)社製、製品名「SC004」)をPGMEA30%溶液を用いた。
【0072】
評価方法
実施例の1〜5、比較例1〜3の各コーティング組成液を、スピンナーを用いてガラス基板上に塗布した後、90℃のホットプレート上で120秒間プリベークして、膜厚約2μmの塗膜を得た。次いで200℃にて1時間後硬化した。;得られた薄膜について、透過率、鉛筆硬度、屈折率について評価した。結果を表2に示した。
(1)屈折率:光干渉式膜質測定機にて830nmにおける屈折率を測定した。
(2)透明性:日立製分光光度計U−2000を用いて、470nmの分光透過率を測定した。
(3)鉛筆硬度:JIS−K−5400の試験法に準じて測定した。鉛筆硬度試験機を用いて荷重9.8Nをかけた際の塗膜にキズが付かない最も高硬度をもって鉛筆硬度とした。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
実施例の結果から、本発明におけるコーティング組成物を使用した実施例1〜5は、硬度、屈折率、透明性のいずれにおいても優れており、バランスのよい特性を有していた。一方、シルセスキオキサン誘導体を用いているものの、本願発明の構成を持たない比較例3は、透過率こそシルセスキオキサンの特性どおりの高い値を発揮したが、屈折率は不充分であり、硬度も不充分であった。この結果、本発明の構成を有することが本発明の目的を達成するために重要であることが判った。なお、従来技術に属する比較例1、2の組成物は、透過率はまずまずであったが、屈折率及び硬度において低い値であった。これらのことからも判るとおり、本発明の組成物は、シルセスキオキサンの持つ透過率を保持しつつ、高い屈折率を発揮し、しかも、硬度もシルセスキオキサン以上であることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のコーティング組成物は、光学部品(レンズ、フィルター等)、光素子(発光素子、受光素子、複合光素子、光集積回路、光ファイバー等)、光デバイス(液晶表示装置等の各種ディスプレイ、LED、LD等)等の反射防止膜やクリアコーティング、カラーフィルター、ハードコート等のためのコーティング組成物として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性官能基を有するトリアルコキシシラン(A)を、前記トリアルコキシシラン(A)100重量部に対して、有機配位子を有する2官能性以上の、ジルコニウム、チタン及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属の、金属アルコキシド(B)50〜200重量部存在下に、加水分解、縮合してなるシルセスキオキサン誘導体を主成分とする光学コーティング組成物。
【請求項2】
有機配位子は、β−ジケトン化合物又はβ−ケトエステル化合物からなる請求項1記載の光学コーティング組成物。
【請求項3】
トリアルコキシシラン(A)は、エポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基及びオキセタニル基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性環状エーテル基を反応性官能基として有する請求項1又は2記載の光学コーティング組成物。
【請求項4】
トリアルコキシシラン(A)は、アルケニル基又は(メタ)アクリロイル基を反応性官能基として有する請求項1又は2記載の光学コーティング組成物。
【請求項5】
さらに、反応性官能基を含有しないトリアルコキシシラン(C)を共加水分解、共縮合してなる請求項1〜4のいずれか記載の光学コーティング組成物。
【請求項6】
トリアルコキシシラン(A)とトリアルコキシシラン(C)との配合モル比は、10:90〜90:10である請求項5記載の光学コーティング組成物。
【請求項7】
請求項6記載の光学コーティング組成物を塗布し、硬化させてなる光学コーティング膜。

【公開番号】特開2007−9080(P2007−9080A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192273(P2005−192273)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】