説明

光学シート、透過型スクリーンおよび背面投射型表示装置

【課題】ゲインの低下や解像度の低下を抑制しつつ映像光を効率的に拡散させ、これにより、効率的に映像のギラツキを防止し得る光学シートを提供する。
【解決手段】光学シート29は、基材31と基材内に分散された複数の光拡散剤33とを有する光拡散層30を備える。光拡散剤の屈折率は前記基材の屈折率よりも大きい。一つの光拡散剤と、前記一つの光拡散剤の中心と光学シートのシート面に直交する方向において重なる他の一つの光拡散剤のうち、前記一つの光拡散剤とシート面に直交する方向に沿って隣り合う他の一つの光拡散剤と、の二つの光拡散剤における、シート面に直交する方向に沿った当該二つの光拡散剤の中心間の平均離間距離が、平均粒径Dを有する光拡散剤の焦点距離Fの2倍以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型スクリーンに用いられる光拡散機能を有した光学シートに係り、とりわけ、入射光を効率的に拡散させ、これにより、シンチレーションの発生等を効率的に抑制することができる光学シートに関する。
【0002】
また、本発明は、このような光学シートを含んだ透過型スクリーンおよび背面投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、レンチキュラーレンズシートやフレネルレンズシート等の光学シートを備えた透過型スクリーンが知られている。このような透過型スクリーンには、例えばCRT等の光源から映像光が投射されていた。
【0004】
近年においては、光源として、CRTの代わりに液晶プロジェクタやライトバルブ等の投射瞳の小さい投影管が用いられるようになってきている。しかしながら、従来の光学シートを用いた透過型スクリーンを、このような投射瞳の小さい投影管と組み合わせた場合、シンチレーションまたはスペックルと呼ばれる映像のギラツキがスクリーン上に現れてしまうという問題がある。
【0005】
このような問題を解決するためには、映像光を指向性なく拡散させることが有効であるとされている。このため、光学シートの表面に凹凸を形成したり、光学シート内に光拡散剤(拡散性粒子)を分散させたりして、効果的にこれらの不具合を解消することが研究されてきた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特許第3606862号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光学シートに無指向性の光拡散機能を付与した場合、ゲインの低下や解像度の低下といった別の不具合を引き起こしてしまう。
【0007】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、ゲインの低下や解像度の低下を抑制しつつ映像光を効率的に拡散させ、これにより、効率的に映像のギラツキを防止し得る光学シート、透過型スクリーンおよび背面投射型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
図1に示すように、単位拡散要素aに入射する光束LFが、当該単位拡散要素によって一旦集光され、その後に拡散させられる場合がある。なお、ここで単位拡散要素aとは、個々の光拡散剤(拡散性粒子)や、マット面を形成する個々の凹凸(単位レンズ形状部)等であり、図示する例では光拡散剤としている。このような場合において、集光点近傍(図1の位置B)に次の単位拡散要素(図示する例において光拡散剤)bが配置されているとすると、入光側の単位拡散要素aを透過した光束LFは、出光側の単位拡散要素bの表面の一部分のみに入射する。この場合、光束LFは、出光側の単位拡散要素bによって広い範囲に拡散されることがないだけでなく、一旦集光することによってシンチレーションとして視認され得る。また、出光側の単位拡散要素bは、光束LFを拡散させることに大きく寄与することができない一方で、ゲインの低下や解像度の低下を引き起こす原因となる。
【0009】
すなわち、出光側の単位拡散要素bは、入光側の単位拡散要素aへ入射した光束LFがその後に通過する領域S内に入り込むように、例えば図1の位置Cや位置Dに配置されていることが好ましい。このような場合には、当該出光側の単位拡散要素bの全表面を透過光の拡散に寄与させることが可能となる。すなわち、映像光を効率的に広い範囲に拡散させることができるため、不必要にゲインを低下させたり、不必要に解像度を低下させたりすることなく、映像のギラツキを効率的に防止することができる。そして、本件発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0010】
本発明による第1の光学シートは、透過型スクリーン用の光学シートであって、基材と、前記基材内に分散された複数の光拡散剤と、を有する光拡散層を備え、前記光拡散剤の屈折率は前記基材の屈折率よりも大きく、前記光拡散剤の平均粒径をDとすると、一つの光拡散剤と、前記一つの光拡散剤の中心と光学シートのシート面に直交する方向において重なる他の一つの光拡散剤のうち、前記一つの光拡散剤と光学シートのシート面に直交する方向に沿って隣り合う他の一つの光拡散剤と、の二つの光拡散剤における、光学シートのシート面に直交する方向に沿った当該二つの光拡散剤の中心間の平均離間距離が、粒径がDである光拡散剤の焦点距離の2倍以上であることを特徴とする。本発明による第1の光学シートにおいて、前記光拡散剤を含んだ前記基材中における前記光拡散剤の重量比をCとし、前記光拡散剤の比重をScとし、前記光拡散剤を含んだ前記基材の比重をSaとし、前記基材の厚みをTとし、粒径がDである光拡散剤の焦点距離をFとすると、以下の式(1)が満たされるようにしてもよい。
2×F≦T/(((3×T×C×Sa)/(2×D×Sc))+1) ・・・式(1)
【0011】
本発明による第2の光学シートは、透過型スクリーン用の光学シートであって、基材と、前記基材内に分散された複数の光拡散剤と、を有する光拡散層を備え、前記光拡散剤の屈折率は前記基材の屈折率よりも大きく、前記光拡散剤の平均粒径をDとし、前記光拡散剤を含んだ前記基材中における前記光拡散剤の重量比をCとし、前記光拡散剤の比重をScとし、前記光拡散剤を含んだ前記基材の比重をSaとし、前記基材の厚みをTとし、粒径がDである光拡散剤の焦点距離をFとすると、以下の式(2)が満たされることを特徴とする。
2×F≦T/(((3×T×C×Sa)/(2×D×Sc))+1) ・・・式(2)
【0012】
本発明による第3の光学シートは、透過型スクリーン用の光学シートであって、基材と、前記基材内に分散された複数の光拡散剤と、を有する光拡散層を備え、前記光拡散剤の屈折率は前記基材の屈折率よりも大きく、前記光拡散剤の平均粒径をDとすると、一つの光拡散剤と、前記一つの光拡散剤の中心と光学シートのシート面に直交する方向において重なる他の一つの光拡散剤のうち、前記一つの光拡散剤と光学シートのシート面に直交する方向に沿って隣り合う他の一つの光拡散剤と、の二つの光拡散剤における、光学シートのシート面に直交する方向に沿った当該二つの光拡散剤の中心間の平均離間距離が、粒径がDである光拡散剤の焦点距離の3倍以上であることを特徴とする。本発明による第3の光学シートにおいて、前記光拡散剤を含んだ前記基材中における前記光拡散剤の重量比をCとし、前記光拡散剤の比重をScとし、前記光拡散剤を含んだ前記基材の比重をSaとし、前記基材の厚みをTとし、粒径がDである光拡散剤の焦点距離をFとすると、以下の式(3)が満たされるようにしてもよい。
3×F≦T/(((3×T×C×Sa)/(2×D×Sc))+1) ・・・式(3)
【0013】
本発明による第4の光学シートは、透過型スクリーン用の光学シートであって、基材と、前記基材内に分散された複数の光拡散剤と、を有する光拡散層を備え、前記光拡散剤の屈折率は前記基材の屈折率よりも大きく、前記光拡散剤の平均粒径をDとし、前記光拡散剤を含んだ前記基材中における前記光拡散剤の重量比をCとし、前記光拡散剤の比重をScとし、前記光拡散剤を含んだ前記基材の比重をSaとし、前記基材の厚みをTとし、粒径がDである光拡散剤の焦点距離をFとすると、以下の式(4)が満たされることを特徴とする。
3×F≦T/(((3×T×C×Sa)/(2×D×Sc))+1) ・・・式(4)
【0014】
上述した式(1)乃至式(4)において、前記光拡散剤の屈折率をncとし、前記基材の屈折率をnaとし、前記基材の屈折率に対する前記光拡散剤の屈折率の比をxa(=nc/na)として、以下の式(5)によって得られた値を、前記粒径がDである光拡散剤の焦点距離Fの値としてもよい。
F=D×
(exp(7xa4)−6exp(7xa)+exp(8xa)−7exp(7xa)+2exp(7))/2
・・・式(5)
【0015】
本発明による第5の光学シートは、透過型スクリーン用の光学シートであって、第1基材と、前記第1基材内に分散された複数の第1光拡散剤と、を有する第1光拡散層と、第1基材よりも出光側に配置された第2基材と、前記第2基材内に分散された複数の第2光拡散剤と、を有する第2光拡散層と、を備え、前記第1光拡散剤の屈折率は前記第1基材の屈折率よりも大きいことを特徴とする。
【0016】
本発明による第5の光学シートにおいて、前記第1基材の屈折率および前記第1光拡散剤の屈折率のうちの大きい方の屈折率の値を前記第1基材の屈折率および前記第1光拡散剤の屈折率のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値と、前記第2基材の屈折率および前記第2光拡散剤の屈折率のうちの大きい方の屈折率の値を前記第2基材の屈折率および前記第2光拡散剤の屈折率のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値と、は異なるようにしてもよい。
【0017】
また、本発明による第5の光学シートにおいて、前記第1基材の屈折率および前記第1光拡散剤の屈折率のうちの大きい方の屈折率の値を前記第1基材の屈折率および前記第1光拡散剤の屈折率のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値は、前記第2基材の屈折率および前記第2光拡散剤の屈折率のうちの大きい方の屈折率の値を前記第2基材の屈折率および前記第2光拡散剤の屈折率のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値よりも、大きくなるようにしてもよい。
【0018】
さらに、本発明による第5の光学シートにおいて、前記第2光拡散剤の屈折率は前記第2基材の屈折率よりも小さくなるようにしてもよい。
【0019】
さらに、本発明による第5の光学シートが、前記第1光拡散層と前記第2光拡散層との間に配置された中間層をさらに備えるようにしてもよい。
【0020】
さらに、本発明による第5の光学シートにおいて、前記第1基材と前記第2基材とは隣接して配置され、前記第1基材の屈折率と前記第2基材の屈折率とは異なるようにしてもよい。この場合、前記第2基材の屈折率は前記第1基材の屈折率よりも小さくなるようにしてもよい。
【0021】
あるいは、本発明による第5の光学シートにおいて、前記第1基材と前記第2基材とは同一材料により一体に形成されるようにしてもよい。この場合、本発明による第5の光学シートが、前記第1光拡散層と前記第2光拡散層との間に配置された中間層をさらに備え、中間層の基材は、前記第1基材および前記第2基材の少なくとも一方と、同一材料により一体に形成されるようにしてもよい。
【0022】
さらに、本発明による第5の光学シートにおいて、前記第1光拡散剤の平均粒径をD1とし、前記第2光拡散剤の平均粒径をD2とすると、粒径がD1であり前記第1基材中の最入光側に配置された第1光拡散剤へ、光学シートのシート面に直交する方向から、入射した光束が第1光拡散剤から出射した後であって集光する前に通過する領域内に、粒径がD2であり前記第2基材中の最出光側に配置された第2光拡散剤が入り込み得るよう、光学シートのシート面に直交する方向に沿った前記第1基材の入光側面から前記第2基材の出光側面までの長さが設定されるようにしてもよい。
【0023】
さらに、本発明による第5の光学シートにおいて、前記第1光拡散剤の平均粒径をD1とし、前記第2光拡散剤の平均粒径をD2とし、粒径がD1である第1光拡散剤の焦点距離をF1とすると、光学シートのシート面に直交する方向に沿った前記第1基材の入光側面から前記第2基材の出光側面までの長さL1は、以下の式(6)を満たすようにしてもよい。
L1≦(F1×(D1−D2)/D1)+(D1+D2)/2 ・・・式(6)
【0024】
式(6)において、前記第1光拡散剤の屈折率をnc1とし、前記第1基材の屈折率をnaとして、以下の式(7)によって得られた値を、前記粒径がD1である第1光拡散剤の焦点距離F1の値としてもよい。
F1=D1×tan(sin-1(na/nc1))/2 ・・・式(7)
【0025】
さらに、本発明による第5の光学シートにおいて、前記第1光拡散剤の平均粒径をD1とし、前記第2光拡散剤の平均粒径をD2とすると、粒径がD1であり前記第1基材中の最出光側に配置された第1光拡散剤へ、光学シートのシート面に直交する方向から、入射した光束が第1光拡散剤から出射して集光した後に通過する領域内に、粒径がD2であり前記第2基材中の最入光側に配置された第2光拡散剤が入り込み得るよう、光学シートのシート面に直交する方向に沿った前記第1基材の出光側面から前記第2基材の入光側面までの長さが設定されるようにしてもよい。
【0026】
さらに、本発明による第5の光学シートにおいて、前記第1光拡散剤の平均粒径をD1とし、前記第2光拡散剤の平均粒径をD2とし、粒径がD1である第1光拡散剤の焦点距離をF1とすると、光学シートのシート面に直交する方向に沿った前記第1基材の出光側面から前記第2基材の入光側面までの長さL2は、以下の式(8)を満たすようにしてもよい。
L2≧(F1×(D1+D2)/D1)−(D1+D2)/2 ・・・式(8)
【0027】
さらに、本発明による第5の光学シートにおいて、前記第1光拡散剤の平均粒径をD1とすると、一つの第1光拡散剤と、前記一つの第1光拡散剤の中心と光学シートのシート面に直交する方向において重なる他の一つの第1光拡散剤のうち、前記一つの第1光拡散剤と光学シートのシート面に直交する方向に沿って隣り合う他の一つの第1光拡散剤と、の二つの第1光拡散剤における、光学シートのシート面に直交する方向に沿った当該二つの第1光拡散剤の中心間の平均離間距離が、粒径がD1である第1光拡散剤の焦点距離の2倍以上であるようにしてもよい。
【0028】
さらに、本発明による第5の光学シートにおいて、前記第1光拡散剤の平均粒径をD1とし、前記第1光拡散剤を含んだ前記第1基材中における前記第1光拡散剤の重量比をC1とし、前記第1光拡散剤の比重をSc1とし、前記第1光拡散剤を含んだ前記第1基材の比重をSa1とし、前記第1基材の厚みをT1とし、粒径がD1である第1光拡散剤の焦点距離をF1とすると、以下の式(9)が満たされるようにしてもよい。
2×F1≦T1/(((3×T1×C1×Sa1)/(2×D1×Sc1))+1) ・・・式(9)
【0029】
さらに、本発明による第5の光学シートにおいて、前記第1光拡散剤の平均粒径をD1とすると、一つの第1光拡散剤と、前記一つの第1光拡散剤の中心と光学シートのシート面に直交する方向において重なる他の一つの第1光拡散剤のうち、前記一つの第1光拡散剤と光学シートのシート面に直交する方向に沿って隣り合う他の一つの第1光拡散剤と、の二つの第1光拡散剤における、光学シートのシート面に直交する方向に沿った当該二つの第1光拡散剤の中心間の平均離間距離が、粒径がD1である第1光拡散剤の焦点距離の3倍以上であるようにしてもよい。
【0030】
さらに、本発明による第5の光学シートにおいて、前記第1光拡散剤の平均粒径をD1とし、前記第1光拡散剤を含んだ前記第1基材中における前記第1光拡散剤の重量比をC1とし、前記第1光拡散剤の比重をSc1とし、前記第1光拡散剤を含んだ前記第1基材の比重をSa1とし、前記第1基材の厚みをT1とし、粒径がD1である第1光拡散剤の焦点距離をF1とすると、以下の式(10)が満たされるようにしてもよい。
3×F1≦T1/(((3×T1×C1×Sa1)/(2×D1×Sc1))+1) ・・・式(10)
【0031】
上述した式(6)、式(8)、式(9)および式(10)において、前記第1光拡散剤の屈折率をnc1とし、前記第1基材の屈折率をnaとし、前記第1基材の屈折率に対する前記第1光拡散剤の屈折率の比をxa(=nc1/na)として、以下の式(11)によって得られた値を、前記粒径がD1である第1光拡散剤の焦点距離F1の値としてもよい。
F1=D1×
(exp(7xa4)−6exp(7xa)+exp(8xa)−7exp(7xa)+2exp(7))/2
・・・式(11)
【0032】
さらに、本発明による第5の光学シートにおいて、前記第2光拡散剤の平均粒径をD2とすると、一つの第2光拡散剤と、前記一つの第2光拡散剤の中心と光学シートのシート面に直交する方向において重なる他の一つの第2光拡散剤のうち、前記一つの第2光拡散剤と光学シートのシート面に直交する方向に沿って隣り合う他の一つの第2光拡散剤と、の二つの第2光拡散剤における、光学シートのシート面に直交する方向に沿った当該二つの第2光拡散剤の中心間の平均離間距離が、粒径がD2である第2光拡散剤の焦点距離の2倍以上であるようにしてもよい。
【0033】
さらに、本発明による第5の光学シートにおいて、前記第2光拡散剤の平均粒径をD2とし、前記第2光拡散剤を含んだ前記第2基材中における前記第2光拡散剤の重量比をC2とし、前記第2光拡散剤の比重をSc2とし、前記第2光拡散剤を含んだ前記第2基材の比重をSa2とし、前記第2基材の厚みをT2とし、粒径がD2である第2光拡散剤の焦点距離をF2とすると、以下の式(12)が満たされるようにしてもよい。
【0034】
2×F2≦T2/(((3×T2×C2×Sa2)/(2×D2×Sc2))+1) ・・・式(12)
さらに、本発明による第5の光学シートにおいて、前記第2光拡散剤の平均粒径をD2とすると、一つの第2光拡散剤と、前記一つの第2光拡散剤の中心と光学シートのシート面に直交する方向において重なる他の一つの第2光拡散剤のうち、前記一つの第2光拡散剤と光学シートのシート面に直交する方向に沿って隣り合う他の一つの第2光拡散剤と、の二つの第2光拡散剤における、光学シートのシート面に直交する方向に沿った当該二つの第2光拡散剤の中心間の平均離間距離が、粒径がD2である第2光拡散剤の焦点距離の3倍以上であるようにしてもよい。
【0035】
さらに、本発明による第5の光学シートにおいて、前記第2光拡散剤の平均粒径をD2とし、前記第2光拡散剤を含んだ前記第2基材中における前記第2光拡散剤の重量比をC2とし、前記第2光拡散剤の比重をSc2とし、前記第2光拡散剤を含んだ前記第2基材の比重をSa2とし、前記第2基材の厚みをT2とし、粒径がD2である第2光拡散剤の焦点距離をF2とすると、以下の式(13)が満たされるようにしてもよい。
【0036】
3×F2≦T2/(((3×T2×C2×Sa2)/(2×D2×Sc2))+1) ・・・式(13)
上述した式(12)および式(13)において、前記第2光拡散剤の屈折率をnc2とし、前記第2基材の屈折率をnbとし、前記第2基材の屈折率に対する前記第2光拡散剤の屈折率の比をxb(=nc2/nb)として、以下の式(14)によって得られた値を、前記粒径がD2である第2光拡散剤の焦点距離F2の値としてもよい。
F2=D2×
(exp(7xb4)−6exp(7xb)+exp(8xb)−7exp(7xb)+2exp(7))/2
・・・式(14)
【0037】
本発明による透過型スクリーンは、上述したいずれかの光学シートを備えたことを特徴とする。
【0038】
本発明による背面投射型表示装置は、上述したいずれかの透過型スクリーンを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、光学シート内に設けられた光拡散層により、映像光を効率的に拡散させることができる。したがって、不必要なゲインの低下や解像度の低下を抑制しながら、効率的に映像のギラツキ等の不具合を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0041】
図2乃至図26は本発明による光学シート、透過型スクリーン並びに背面投射型表示装置の実施の形態を説明するための図である。
【0042】
このうち、図2および図3には、本発明による光学シートおよび透過型スクリーンが適用され得る背面投射型表示装置が示されている。また、図4乃至図13には、本発明による光学シートおよび透過型スクリーンの第1の実施の形態およびその変形例が示されている。
【0043】
<第1の実施の形態>
まず、図2乃至図13を参照して、本発明による光学シート、透過型スクリーン並びに背面投射型表示装置の第1の実施の形態について説明する。
【0044】
図2および図3に示すように、背面投射型映像表示装置10は、例えばLCDやDMD等のマイクロデバイス(MD)からなる光源12と、光源12から投射された映像光を背面から透過させて映像を結像させる透過型スクリーン20と、を備えている。本実施の形態において、図2に示すように、光源12からの映像光は、いったんミラー14により反射されて透過型スクリーン20に投射され、透過型スクリーン20を透過するようになっている。ただし、このような例に限定されず、ミラーを介さず、光源12から透過型スクリーン20に映像光が直接投射されるようにしてもよい。
【0045】
図4および図5に示すように本実施の形態における透過型スクリーン20は、第1乃至第3の光学シート21,25,29を備えている。最入光側(最光源側)に設けられた第1光学シート21は、光源12から拡大投射される映像光を透過型スクリーン20(各光学シート21,25,29)のシート面に直交する方向に偏向させるための光偏向層22を有している。第1光学シート21の出光側に配置される第2光学シート25は、入射する映像光を一方向(例えば、使用される状態における水平方向)に拡散させて視野角を広げるための視野角拡大層(有指向性光拡散層)26を有している。そして、第2光学シート25の出光側に第3光学シート29が設けられている。
【0046】
なお、図示する例において、光偏向層22は、入射光を屈折させて偏向させるフレネンルレンズ部として形成されているが、これに限られない。同様の機能を有する公知の光偏向層、例えば入射光を全反射させて偏向させる全反射型フレネルレンズ部として形成された光偏向層を用いることができる。また、図示する例において、視野角拡大層26は、入射光を主に屈折させて拡散させるレンチキュラーレンズ部として形成されているが、これに限られない。同様の機能を有する公知の視野角拡大層、例えば入射光を主に全反射させて拡散させる全反射型レンチキュラーレンズ部として形成された視野角拡大層を用いることができる。また、光偏向層22および視野角拡大層26は必須ではなく、省くことも可能である。さらに、第1光学シート21、第2光学シート25および第3光学シートの少なくとも二つ以上が一体化されていてもよい。
【0047】
次に、第3光学シート29について詳述する。
【0048】
図5および図6に示すように、本実施の形態における第3光学シート29は、透過型スクリーンの出光側面を形成する表面層42と、表面層42の入光側に設けられた光拡散層40と、光拡散層40の入光側に設けられた支持層41と、を備えている。
【0049】
このうち、表面層42は、例えば、種々の機能を有した公知の機能層として形成され得る。ここで、種々の機能とは、例えば、拡散、反射防止、防眩、着色、減光、紫外線吸収、帯電防止、防汚、センサー、および、ハードコート等である。また、支持層41は、透過型スクリーン20全体の剛性を高めるための支持基板として機能する層である。一例として、支持層41は、例えば厚みが2mmのアクリル、アクリル/スチレン共重合、スチレン、ポリカーボネイト、アクリロニトリル/スチレン共重合等の樹脂や硝子から構成することができる。ただし、表面層42や支持層41は、その目的に応じて省くことも可能である。
【0050】
図5および図6に示すように、光拡散層30は、基材31と、基材31内に分散された複数の光拡散剤33と、を有している。光拡散層30の光拡散剤33に入射した光は、基材31と基材31に含有された光拡散剤33との界面で屈折して進行方向を変える。これにより、第3光学シート29を透過する光は、二次元的に指向性無く拡散させられるようになる。
【0051】
光拡散剤33は略球形状を有している。光拡散剤33としては、有機ビーズ、無機ビーズあるいは硝子ビーズ等の公知の光拡散剤を用いることができる。また、基材31の材料として、例えば、アクリル、アクリル/スチレン共重合、スチレン、ポリカーボネイト、アクリロニトリル/スチレン共重合等の樹脂を用いることができる。
【0052】
ただし、光拡散剤33の屈折率ncは基材31の屈折率naよりも大きくなっている。この場合、図6に示すように、光拡散剤33に入光した光束LFは、光拡散剤33から出射した後にいったん集光し、その後に広い範囲に広がるようになる。ここで、個々の光拡散剤33の光拡散機能が効果的に発揮されるようにするには、図1を用いて説明したように、一つの光拡散剤33に入光した光束LFがその後に通過する領域S(本例においては、光拡散剤33に接するように入射する光の光路間)内に、当該光束LSが次に入光すべき光拡散剤33を入り込ませることが有効である。すなわち、光拡散剤33は、基材31内において、ある程度離間して配置されていることが好ましい。本実施の形態では、ある一つの光拡散剤と、前記一つの光拡散剤の中心と第3光学シート29のシート面に直交する方向において重なる他の一つの光拡散剤のうち、前記一つの光拡散剤と第3光学シート29のシート面に直交する方向に沿って隣り合う他の一つの光拡散剤と、の二つの光拡散剤における、第3光学シート29のシート面に直交する方向に沿った当該二つの光拡散剤の中心間の離間長さの平均値(平均離間距離)Mを、基材31中に含まれ粒径Dを有する光拡散剤33の焦点距離(集光距離)Fの二倍以上とすべく、式(15)を満たすようになっている。ここで、基材31内に含有される多数の光拡散剤33の平均粒径はDとなっている。
2×F≦T/(((3×T×C×Sa)/(2×D×Sc))+1) ・・・式(15)
【0053】
なお、式(15)中において、基材31中における光拡散剤33の重量比(基材31と光拡散剤33とのみによって光拡散層30が形成される本実施の形態においては、光拡散層30に対する光拡散剤33の重量比に相当)をCとし、光拡散剤33の比重をScとし、光拡散剤33を含む基材31の比重(基材31と光拡散剤33とのみによって光拡散層30が形成される本実施の形態においては、光拡散層30の比重に相当)をSaとし、第3光学シート29のシート面に直交する方向に沿った基材31の厚みをTとしている。
【0054】
式(15)中においては、ある一つの光拡散剤33と、前記一つの光拡散剤の中心と第3光学シート29のシート面に直交する方向において重なるようになる隣り合う他の一つの光拡散剤と、の間における、光学シートのシート面に直交する方向に沿った当該二つの光拡散剤の中心間の離間長さの平均(単位は、例えばmm)の値Mを、式(15)中の右辺にて表している。以下、式(15)中の右辺の導出方法について説明する。
【0055】
図7に示すような、入光側面および出光側面の面積がAa(単位は、例えばmm2)で、厚さがT(単位は、例えばmm)の基材31(光拡散層30)をモデルとする。この基材31中に含まれる光拡散剤33の総重量Wc(単位は、例えばg)は、式(16)で表される。
Wc=Aa×T×Sa×C ・・・式(16)
【0056】
そして、光拡散剤33の総重量Wcを、光拡散剤33の一つあたりの平均重量で割ることにより、このモデルとなった基材31中に含まれる光拡散剤33の個数N(個)は、以式(17)で表される。
N=Wc/(4/3×π×(D/2)3×Sc)
=Aa×T×Sa×C/(4/3×π×(D/2)3×Sc) ・・・式(17)
【0057】
ここで、式(16)および式(17)を用いて、図7に示す光拡散層30に入射した光L7(図7参照)が、仮に、光拡散層30(基材31)のシート面に直交する方向に沿って光拡散層30内を進むとすると、当該光L7が平均して何回光拡散剤33に衝突するかを検討する。光拡散層30のシート面に直交する方向からの視野において、一つの光拡散剤33が占める面積Ac(単位は、例えばmm2)は、式(18)で表される。
Ac=π×(D/2)2 ・・・式(18)
また、基材31中に分散された光拡散剤33のすべての面積Acを足し合わせた総面積At(単位は、例えばmm2)は、式(19)で表される。
At=N×π×(D/2)2 =(3×Aa×T×Sa×C)/(2×D×Sc)
・・・式(19)
さらに、この総面積Atを、モデルとなった基材31の表面積Aaで割った値Bは、基材31の入光側面の任意の位置に入射するとともにシート面に直交する方向に基材31を透過する光L7が貫通する(衝突する)光拡散剤の平均個数となる。
B=At/Aa=(3×T×Sa×C)/(2×D×Sc) ・・・式(20)
【0058】
そして、図7に示すように、光拡散中の一つの光拡散剤33と、前記一つの光拡散剤の中心と第3光学シート29のシート面に直交する方向において重なる他の一つの光拡散剤33のうち、第3光学シート29のシート面に直交する方向において前記一つの光拡散剤と隣り合う他の一つの光拡散剤と、の間における、光学シートのシート面に直交する方向に沿った当該二つの光拡散剤の中心間の離間長さの平均の値(平均離間距離)Mは、基材の厚さTを、(平均衝突回数B+1)で割ることにより、推定され得る。すなわち、光拡散層30の厚さ方向に沿って隣り合う光拡散剤33,33間の平均離間距離Mとして、以下の式(21)で得られた値を用いることができる。
M=T/(B+1)=T/(((3×T×Sa×C)/(2×D×Sc))+1) ・・・式(21)
【0059】
以上のようにして、式(15)の右辺が導出され得る。
【0060】
またここで、式(15)の左辺に用いられている、粒径がDである光拡散剤33の焦点距離(集光距離)についても検討してみる。
【0061】
図8および図9に示すように、略球形状を有する光拡散剤37に入射した光は、厳密には、一点に集光させられるわけではない。このような現象は収差と呼ばれており、光拡散剤33への入射位置が中心から表面側へずれるにしたがって、焦点距離Fはしだいに短くなっていく。このとき、光拡散剤37の屈折率ncと光拡散剤37を含有する基材の屈折率nとの比が異なれば、収差の程度も同様に異なる。本件発明者は、光拡散剤37の屈折率ncと基材の屈折率nとの比を種々の値に変更し、各比における焦点距離Fの変化について調査した。
【0062】
図8は、光拡散剤37の屈折率ncと光拡散剤37を含有する基材の屈折率nとの比がある値になっている場合における、光拡散剤37の各位置に入射する光の光路を示す図である。また、図9は、図8に示す場合における、光拡散剤37への入射位置と、各入射位置に入射した光の焦点距離との関係を示すグラフである。図9における横軸は、光拡散剤37の半径(D/2)に対する、入射方向に直交する方向に沿った入射位置のずれ量r(図8参照)の比である。すなわち、光拡散剤37の中心に入射した光の入射位置比は0であり、光拡散剤37に接するよう光拡散剤37の表面に入射した光の入射位置比は1となる。また、図9における縦軸は、光拡散剤37の中心近傍に入射した光の焦点距離(集光距離)に対する、各入射位置に入射した光の焦点距離(集光距離)の比である。すなわち、光拡散剤37の中心近傍に入射した光の焦点距離比は略1となる。
【0063】
図9に示すように、入射位置比が0より大きく0.9以下である入射光については、焦点距離の変動はほとんどなく、焦点距離は略一定となっている。一方、入射位置比が0.9を超えると、焦点距離が大きく変動するようになる。そこで表1に、光拡散剤33への入射位置比が1である入射光の焦点距離Fsおよび入射位置比が0.9である入射光の焦点距離Frを、それぞれ光拡散剤の粒径Dに対する比として示す。なお、表1には、光拡散剤37の屈折率ncと光拡散剤33を含有する基材の屈折率nとの比(屈折率比)を10通りに変化させ、各屈折率比に対する結果を示している。
【表1】

ところで、光拡散剤37への入射位置比が1である入射光の焦点距離Fsは、スネルの法則を用いて算出することができる。具体的には、各屈折率比の界面に入射角が90°で入射する光として、図8における角度θを以下の式(22)により算出する。
θ=sin-1(n/nc) ・・・式(22)
次に、式(23)により、入射位置比が1である入射光の焦点距離Fsを算出することができる。
Fs=(tanθ)×D/2=(tan(sin-1(n/nc)))×D/2
・・・式(23)
【0064】
一方、光拡散剤37への入射位置比が0.9である入射光の焦点距離Frは、当該入射光の光路をシミュレーションし、当該シミュレーションされた光路から焦点距離を実測することにより求めた。そして、基材の屈折率nに対する光拡散剤37の屈折率ncの屈折率比(x=nc/n)を横軸にとり、焦点距離Frの粒径Dに対する比を縦軸にとったグラフ(図10)上に、結果をプロットした。図10に示されているように、屈折率比(x=nc/n)に対応した焦点距離Frの粒径Dに対する比の変動は、以下の式(24)でよく近似される(相関係数0.9983)。
Fr/D=
(exp(7x4)−6exp(7x)+exp(8x)−7exp(7x)+2exp(7))/2
・・・式(24)
したがって、式(25)により、入射位置比が0.9である入射光の焦点距離Frを算出することができる。
Fr=D×
(exp(7x4)−6exp(7x)+exp(8x)−7exp(7x)+2exp(7))/2
・・・式(25)
【0065】
このようにして得られたFr(式(25))を、上述した式(15)に適用することが好ましい。上述したように、光拡散剤33に入射した光束LFに含まれる略90%の光束が、焦点距離Frにおいて、実質的に集光する。すなわち、光拡散剤33に入射する光束LFの輝度分布が均一であれば、この光束LF中に含まれる前記略90%の光束も均一輝度を有するようになる。したがって、焦点距離Frが適用された式(15)が満たされる場合には、第3光学シート29のシート面に直交する方向から一つの光拡散剤33へ入光した光束LFが、当該光拡散剤33から出射して集光した後に通過する領域S内に、第3光学シート29シート面に直交する方向に沿って平均離間距離Mだけずれて配置された他の光拡散剤33であって、光束LFが次に入射すべき光拡散剤33が入り込むことが可能となり、基材31中に分散された光拡散剤33の光拡散機能を効果的に発揮させることができる。
【0066】
一方、焦点距離Fsが適用された式(15)が満たされる場合、光拡散剤33に入射する光束LFに含まれた光であって光拡散剤33の両端に接するように入射する光(入射位置比1の光)のその後の通過光路内に、光束LFが次に入射すべき光拡散剤33が入り込むことが可能となる。しかしながら、図8、図9および表1から理解できるように、焦点距離Fsは焦点距離Frよりも大幅に短くなる。したがって、焦点距離Fsが適用された式(15)が満たされ、一つの光拡散剤33が、前記一つの光拡散剤の入光側に配置された他の光拡散剤33の両端に接するように入射した光(入射位置比1の光)の光路間に入り込んだとしても、前記他の光拡散剤33に入射した光束LFの略90%をなすとともに均一な輝度を有し得る前記略90%の光束の通過領域内に入り込まない可能性が十分にある。この場合、前記略90%の光束LFは、一つの光拡散剤33のレンズ面の一部のみに片寄って入射し、この光拡散剤33の光拡散機能を効果的に発揮させることができないだけでなく、シンチレーションを引き起こし得る。したがって、上述した式(15)に対し、Fr(式(25))を適用することが好ましい。
【0067】
ここで、式(25)で表される焦点距離Frを、基材31中に混入され粒径がDである光拡散剤33の焦点距離Fとして、式(15)を書き直すと、以下の式(26)が得られる。なお、式中のxは、光拡散剤33の屈折率ncの基材31の屈折率nに対する比(この場合は、x=nc/n)である。
2Fr=D×exp(7x4)−6exp(7x)+exp(8x)−7exp(7x)+2exp(7))
≦T/(((3×T×C×Sa)/(2×D×Sc))+1) ・・・式(26)
【0068】
式(26)を満たすように設計された光拡散層30においては、第3光学シート29のシート面に直交する方向から一つの光拡散剤33へ入光した光束LFが、当該光拡散剤33から出射して集光した後に通過する領域S内に、第3光学シート29シート面に直交する方向に沿って平均離間距離Mだけずれて配置された他の光拡散剤33であって、前記一つの光拡散剤33に対して光束LFが次に入射すべき光拡散剤33が入り込むことが可能となる。
【0069】
ところで、上述したように、シート面に直交して基材31を透過する光L7は、平均すると、離間距離M(式(21))の間隔で光拡散剤33を透過する。言い換えると、図11に示すように、ある一つの光拡散剤と、前記一つの光拡散剤の中心に第3光学シートのシート面に直交する方向において重なる他の一つの光拡散剤のうち、シート面に直交する方向において隣り合う他の一つの光拡散剤と、の二つの光拡散剤33は、平均すると、基材31中において、第3光学シート29のシート面に直交する方向に沿って離間距離M(式(21))の間隔で離間している。しかしながら、隣り合う二つの光拡散剤33の各中心が、シート面に直交する方向に沿った一直線上に配置されるわけではない。すなわち、シート面に直交する方向からの視野において、一方の光拡散剤33の中心が、他方の光拡散剤33の外輪郭内に入り込むに過ぎない。具体的には、図11に示すように、二つの光拡散剤33が光学シート29のシート面に平行な方向に粒径の半分(D/2)だけずれ得る。この場合、図11に示すように、一方の光拡散剤33の中心を通りシート面に直交する方向に進む光L11は、他方の光拡散剤33の表面に入射するようになる。
【0070】
図1を用いて説明したように、個々の光拡散剤33が効果的に発揮されるようにするには、一方の光拡散剤33に入光した光束LFがその後に通過する領域S内に、当該光束Lが次に入光すべき光拡散剤33を入り込ませることが有効である。このためには、以下の式(27)を満たすよう、光拡散層30が構成されていることが好ましい。
3×F≦T/(((3×T×C×Sa)/(2×D×Sc))+1) ・・・式(27)
【0071】
また、式(15)と同様に、上述のFr(式(25))を、この式(27)に適用すると、以下の式(28)が得られる。
3×Fr=
3×D×(exp(7x4)−6exp(7x)+exp(8x)−7exp(7x)+2exp(7))/2
≦T/(((3×T×C×Sa)/(2×D×Sc))+1) ・・・式(28)
これらの式を満たす場合には、第3光学シート29のシート面に直交する方向から一つの光拡散剤33へ入光した光束LFが、当該光拡散剤33から出射して集光した後に通過する領域S内に、第3光学シート29のシート面に直交する方向に沿って平均離間距離Mだけずれて配置された他の光拡散剤であって、光束LFが次に入射すべき光拡散剤33を入り込ませることができる。
【0072】
なお、今日において、光拡散剤の屈折率の値を特定するための方法として、種々の公知な方法がある。精度良く光拡散剤の屈折率の値を特定する代表的な方法として、ベッケ線法が挙げられる。また、基材中に分散された光拡散剤については、基材中から光拡散剤を取り出し、当該取り出した光拡散剤に対してベッケ線法を適用し、屈折率の値を特定することができる。
【0073】
また、基材の屈折率は、高性能かつ容易であることから、通常、アッベ屈折計によって特定される。アッベ屈折計としては、例えば、(株)アタゴのDR−M2を用いることができる。
【0074】
一方、今日において、光拡散剤の粒径の平均値(平均粒径)を特定する方法として、種々の公知な方法がある。このうち、高性能かつ容易であることから、レーザ回折散乱法が、光拡散剤の平均粒径を特定する方法として主流となっている。また、三次元電子顕微鏡を用いた場合、基材中に分散された光拡散剤を基材中から取り出すことなく、基材中に含有された状態で光拡散剤の平均粒径を精度良く特定することもできる。
【0075】
以上のような光拡散層30を含む第3光学シート29は、公知の製造方法、例えば押し出し成形法により製造することができる。そして、例えば押し出し成形された各層を積層することにより、第3光学シート29を製造した場合、あるいは、互いに異なる材料を共押し出し成形することにより、第3光学シート29を製造した場合、光拡散層30の基材31と、支持層41の基材41aおよび/または表面層42の基材42aとの間に界面が形成され得る。このように、界面が形成される場合には、当該界面を通過する光は、当該界面において屈折する。
【0076】
なお、光拡散層30の基材31の屈折率が支持層41の基材41aの屈折率よりも小さい場合、光拡散層30の基材31と支持層41の基材41aとの界面を通過する光は、当該界面で屈折し、より広い範囲に拡散させられるようになる。同様に、表面層42の基材42aの屈折率が光拡散層30の基材31の屈折率よりも小さい場合、表面層42の基材42aと光拡散層30の基材31との界面を通過する光は、当該界面で屈折し、より広い範囲に拡散させられるようになる。このような場合には、一つの光拡散剤33へ入射する光束が当該光拡散剤から出射した後に通過する領域内に、次に配置されるべき単位拡散要素、本実施の形態においては、表面層42の表面を形成する一つの単位レンズ形状部を入り込みやすくすることができ、当該次に配置されるべき単位拡散要素の光拡散機能を効果的に発揮させるという観点において都合がよい。
【0077】
一方、互いに隣接する光拡散層30の基材31を、支持層41の基材41aおよび/または表面層42の基材42aと同一材料から形成する等して、光拡散層30の基材31と、支持層41の基材41aおよび/または表面層42の基材42aとの間に界面が形成されないようにしてもよい。そして、この場合、流動性を有する材料を所望の形状で硬化させることにより、光拡散層30と支持層41および/または表面層42とをそれぞれ形成するキャスト法を用いることができる。
【0078】
キャスト法を用いる場合には、まず、流動性を有する材料中に、当該材料の比重とは異なる比重を有した光拡散剤33を混入し、その後、流動性材料中において光拡散剤33を沈降させる。これにより、流動性を有した材料中において光拡散剤33が片寄って配置された状態となる。すなわち、ここで、「流動性を有する材料」とは、材料内に混入された光拡散剤37の比重と材料の比重との相違に起因して、混入された光拡散剤37が材料内で移動し得る程度の流動性を有した材料を、意味する。
【0079】
その後、この状態で、光拡散層30の基材31および例えば支持層41の基材41aをなすようになる材料を硬化させることにより、図12に示すように、光拡散剤33が片寄って配置されている部分から光拡散層30が形成され、その他の部分から支持層41が形成され得る。このような方法で得られた光拡散層30と支持層41においては、光拡散層30の基材31と支持層41の基材41aとが同一材料から一体に形成され、光拡散層30の基材31と支持層41の基材41aとの間に界面(境界)が存在しない。
【0080】
なお、図12に示す例において、光拡散層30と支持層41とが一体に形成される例を示したが、これに代えて、光拡散層30と表面層42とを一体に形成してもよいし、光拡散層30と支持層41と表面層42とを一体に形成してもよい。また同様に、共押し出し成形により、光拡散層30と支持層41および/または表面層42とが同一材料から一体に形成された第3光学シート29を容易かつ安価に形成することができる。共押し出し成形法を用いた場合、とりわけ、三つ以上の層を備えるとともに各層の基材が同一材料から一体的に形成された第3光学シート29を、容易かつ安価に製造することができる。
【0081】
以上のような本実施の形態によれば、ある一つの光拡散剤と、前記一つの光拡散剤の中心と光学シートのシート面に直交する方向において重なる他の一つの光拡散剤33のうち、前記一つの光拡散剤と光学シートのシート面に直交する方向に沿って隣り合う他の一つの光拡散剤と、の二つの光拡散剤における、光学シートのシート面に直交する方向に沿った当該二つの光拡散剤の中心間の平均離間長さMが、基材31中の粒径がDである光拡散剤の焦点距離の2倍以上、さらには、3倍以上となるようになっている。したがって、一つの光拡散剤33に入光した光束LFがその後に通過する領域S内に、当該光束LFが次に入射すべき光拡散剤33が入り込むことが可能となっている。これにより、光拡散層30の基材31中に分散されている各光拡散剤33の光拡散機能を効果的に発揮することができるようになっている。すなわち、例えば光拡散層30に光拡散剤33を大量に含有させることなく、第3光学シート29の光拡散機能を増強することができる。これにより、過度のゲインの低下や過度のコントラストの低下等、不必要な映像の劣化を回避しながら、シンチレーション等の映像のギラツキを抑制することができる。
【0082】
なお、上述した第1の実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0083】
例えば、上述した透過型スクリーン20は第1乃至第3の光学シート21,25,29を有する例を示したが、これに限られない。透過型スクリーン20は1以上の任意の数の光学シートを備え得る。また、上述した実施の形態において、光拡散層30が最出光側の光学シートのみに含まれる例を示したが、これに限られない。光拡散層30は最出光側に配置される光学シート以外の光学シートに含まれるようにしてもよいし、複数の光学シートに含まれるようにしてもよい。
【0084】
このような変形の一例を図13に示す。図13に示す例において、透過型スクリーン20aは、第1光学シート21aと、第1光学シート21aの出光側に配置された第2光学シート25aと、を備えている。第1光学シート21aは、光偏向層22と、光偏向層22の入光側に設けられた光拡散層30と、を有している。第2光学シート25aは、視野角拡大層26と、視野角拡大層26の出光側に設けられた光拡散層30と、光拡散層30の出光側に設けられた表面層42と、を有している。なお、図13に示す透過型スクリーン20aにおいて、図1乃至図12を用いて説明した実施の形態と同一に構成され得る部分には同一符号を付している。
【0085】
また、上述した第1の実施の形態において、基材31中に、一種類の光拡散剤33が分散されている例を示したが、これに限られない。基材31中に、上述した光拡散剤33とは異なる種類のさらなる光拡散剤、例えば、上述した光拡散剤33の平均粒径とは異なる平均粒径を有した光拡散剤や、上述した光拡散剤33の屈折率とは異なる屈折率を有した光拡散剤が、さらに分散されていてもよい。さらなる光拡散剤は、上述した光拡散剤と同様に構成されてもよいし、異なるように構成されてもよい。ただし、さらなる光拡散剤も、上述した構成、例えば上述した設計方法にしたがっていることが好ましい。また、一つの光拡散剤133が一種類の材料からなっている必要はない。例えば、複数種類の材料から構成され、部分的に異なる屈折率を有する光拡散剤(例えば、特開平2−120702)を用いるようにしてもよい。
【0086】
<第2の実施の形態>
次に、主に図14乃至図23を参照し、光学シートおよび透過型スクリーンの第2の実施の形態について説明する。なお、図2乃至図13を用いて説明した第1の実施の形態およびその変形例と同一部分には同一符号を付し、重複する詳細な説明を省略する。
【0087】
図14に示すように、本実施の形態における透過型スクリーン120は、第1乃至第3の光学シート21,25,129を備えている。第1光学シート21および第2光学シート25は、上述した第1の実施の形態の対応する構成要素と同一に構成することができる。また、このような透過型スクリーン120は、図2および図3に示す背面投射型表示装置10の構成部材として用いられ得る。
【0088】
次に、第3光学シート129について詳述する。
【0089】
図14および図15に示すように、本実施の形態における第3光学シート129は、第1基材131と第1基材131内に分散された複数の第1光拡散剤(拡散性粒子)133とを有する第1光拡散層130と、第1基材131よりも出光側に配置された第2基材136と第2基材136内に分散された複数の第2光拡散剤(拡散性粒子)138とを有する第2光拡散層135と、を備えている。第1光拡散層130の第1光拡散剤133あるいは第2光拡散層135の第2光拡散剤138に入射した光は、各基材131,136と当該各基材131,136にそれぞれ含有された光拡散剤133,138との界面で屈折して進行方向を変える。これにより、第3光学シート129を透過する光は、二次元的に指向性無く拡散させられるようになる。
【0090】
図14に示すように、本実施の形態において、第1光拡散層130(第1基材131)と、第2光拡散層135(第2基材136)と、は隣接して配置されている。また、本実施の形態において、第1光拡散層130は第3光学シート129の最入光側に配置されており、第1基材131の入光側面は第3光学シート129の入光側面をなしている。一方、第2光拡散層135は第3光学シート129の最出光側に配置されており、第2基材136の出光側面は第3光学シート129の出光側面および透過型スクリーン120の出光側面をなしている。
【0091】
第1光拡散剤133および第2光拡散剤138は略球形状を有している。第1光拡散剤133および第2光拡散剤138としては、有機ビーズ、無機ビーズあるいは硝子ビーズ等の公知の光拡散剤を用いることができる。また、第1基材131および第2基材136の材料として、例えば、アクリル、アクリル/スチレン共重合、スチレン、ポリカーボネイト、アクリロニトリル/スチレン共重合等の樹脂を用いることができる。
【0092】
ただし、第1光拡散剤133の屈折率nc1は第1基材131の屈折率naよりも大きくなっている。この場合、第1光拡散剤133に入光した光束LFは、第1光拡散剤133から出射した後にいったん集光し、その後に広い範囲に広がるようになる(第1の実施の形態の説明において用いた図6参照)。ここで、個々の第1光拡散剤133の光拡散機能が効果的に発揮されるようにするには、図1を用いて既に説明したように、一つの第1光拡散剤133に入光した光束LFがその後に通過する領域S内に、当該光束LFが次に入光すべき第1光拡散剤133を入り込ませることが有効である。すなわち、第1光拡散剤133は、第1基材131内において、ある程度離間して配置されていることが好ましい。
【0093】
本実施の形態では、一つの第1光拡散剤と、前記一つの第1光拡散剤の中心と第3光学シート129のシート面に直交する方向において重なる他の一つの第1光拡散剤のうち、前記一つの第1光拡散剤と第3光学シート129のシート面に直交する方向に沿って隣り合う他の一つの第1光拡散剤と、の二つの第1光拡散剤133における、第3光学シート129のシート面に直交する方向に沿った当該二つの第1光拡散剤133の中心間の離間長さの平均値(平均離間距離)Mを、第1基材131中に含まれた粒径D1を有する第1光拡散剤133の焦点距離(集光距離)F1の二倍以上とすべく、式(29)を満たすようになっている。ここで、第1基材131内に含有される多数の第1光拡散剤133の平均粒径はD1となっている。
2×F1≦T1/(((3×T1×C1×Sa1)/(2×D1×Sc1))+1)・・・式(29)
【0094】
なお、式(29)中において、第1基材131中における第1光拡散剤133の重量比(第1基材131と第1光拡散剤133とのみによって第1光拡散層130が形成される本実施の形態においては、第1光拡散層130に対する第1光拡散剤133の重量比に相当)をC1とし、第1光拡散剤133の比重をSc1とし、第1光拡散剤133を含む第1基材131の比重(第1基材131と第1光拡散剤133とのみによって第1光拡散層130が形成される本実施の形態においては、第1光拡散層130の比重に相当)をSa1とし、第3光学シート129のシート面に直交する方向に沿った第1基材131の厚みをT1としている。
【0095】
このように設計された第1光拡散層130においては、第1の実施の形態において既に説明したように、第3光学シート129のシート面に直交する方向から一つの第1光拡散剤133へ入光した光束LFが、第1光拡散剤133から出射して集光した後に通過する領域S内に、第3光学シート129のシート面に直交する方向に沿って平均離間距離Mだけずれて配置された他の第1光拡散剤133であって、当該光束LFが次に入射すべき第光拡散剤133を入り込ませることが可能となる。
【0096】
また、図11を用いて第1の実施の形態において既に説明したように、以下の式(30)を満たすように、第1光拡散層130が構成されていることが好ましい。
3×F1≦T1/(((3×T1×C1×Sa1)/(2×D1×Sc1))+1)・・・式(30)
【0097】
式(30)を満たす場合には、第3光学シート129のシート面に直交する方向から一つの第1光拡散剤133へ入光した光束LFが、第1光拡散剤133から出射して集光した後に通過する領域S内に、第3光学シート129のシート面に直交する方向に沿って平均離間距離Mだけずれて配置された他の第1光拡散剤133であって、光束LFが次に入射すべき第1光拡散剤133を入り込ませることができる。
【0098】
ここで、式(29)および式(30)中における粒径がD1である第1光拡散剤133の焦点距離Fとして、第1の実施の形態において既に説明したように、入射位置比が0.9である入射光の焦点距離Frを用いることができる。
【0099】
そこで、第1光拡散剤133の屈折率をnc1とし、第1基材131の屈折率をnaとし、第1基材131の屈折率に対する第1光拡散剤133の屈折率の比をxa(=nc1/na)として、第1の実施の形態で説明した式(25)を書き直すと、以下の式(31)が得られる。
Fr1=D1×
(exp(7xa4)−6exp(7xa)+exp(8xa)−7exp(7xa)+2exp(7))/2
・・・式(31)
そして、この式(31)を用いることにより、式(29)が式(32)として表され、式(30)が式(33)として表されるようになる。
D1×(exp(7xa4)−6exp(7xa)+exp(8xa)−7exp(7xa)+2exp(7))
≦T1/(((3×T1×C1×Sa1)/(2×D1×Sc1))+1) ・・・式(32)
D1×3/2
×(exp(7xa4)−6exp(7xa)+exp(8xa)−7exp(7xa)+2exp(7))
≦T1/(((3×T1×C1×Sa1)/(2×D1×Sc1))+1) ・・・式(33)
【0100】
次に、第2光拡散層135について説明する。第2光拡散層135においては、第2光拡散剤138の屈折率nc2が、第2基材136の屈折率nbよりも小さくなっていてもよいし、第2基材136の屈折率nbよりも大きくなっていてもよい。第2光拡散剤138の屈折率nc2が第2基材136の屈折率nbよりも大きくなっている場合、図15に示すように、第2光拡散層135の第2光拡散剤138に入射する光束LFaは、いったん集光し、その後、広い範囲に広がるようになる。この場合には、以下の式(34)を満たすことが好ましい。
2×F2≦T2/(((3×T2×C2×Sa2)/(2×D2×Sc2))+1) ・・・式(34)
【0101】
なお、式(34)中において、第2光拡散剤138の平均粒径をD2とし、第2基材136中に含まれた粒径がD2である第2光拡散剤138の焦点距離をF2とし、第2基材136中における第2光拡散剤138の重量比(第2基材136と第2光拡散剤138とのみによって第2光拡散層135が形成される本実施の形態においては、第2光拡散層135に対する第2光拡散剤138の重量比に相当)をC2とし、第2光拡散剤138の比重をSc2とし、第2光拡散剤138を含む第2基材136の比重(第2基材136と第2光拡散剤138とのみによって第2光拡散層135が形成される本実施の形態においては、第2光拡散層135の比重に相当)をSa2とし、第2基材131の厚みをT2としている。
【0102】
このように設計された第2光拡散層135においては、第1光拡散層130と同様に、第3光学シート129のシート面に直交する方向から一つの第2光拡散剤138へ入光した光束が、第2光拡散剤138から出射して集光した後に通過する領域S2内に、第3光学シート129のシート面に直交する方向に沿って平均離間距離Mだけずれて配置された他の第1光拡散剤133であって、当該光束が次に入射すべき第光拡散剤138を入り込ませることが可能となる。
【0103】
また、第1光拡散層130と同様に、以下の式(35)を満たすように、第2光拡散層135が構成されていることがさらに好ましい。
3×F2≦T2/(((3×T2×C2×Sa2)/(2×D2×Sc2))+1) ・・・式(35)
【0104】
式(35)を満たす場合には、第3光学シート129のシート面に直交する方向から一つの第2光拡散剤138へ入光した光束が、第2光拡散剤138から出射して集光した後に通過する領域S2内に、第3光学シート129のシート面に直交する方向に沿って平均離間距離Mだけずれて配置された他の第2光拡散剤138であって、光束が次に入射すべき第2光拡散剤138を入り込ませることができる。
【0105】
ここで、式(34)および式(35)中における粒径がD2である第2光拡散剤138の焦点距離F2として、第1光拡散層130と同様に、入射位置比が0.9である入射光の焦点距離Frを用いることができる。
【0106】
そこで、第2光拡散剤138の屈折率をnc2とし、第2基材136の屈折率をnbとし、第2基材136の屈折率に対する第2光拡散剤138の屈折率の比をxb(=nc1/nb)として、上述した式(25)を書き直すと、以下の式(36)が得られる。
Fr2=D2×
(exp(7xb4)−6exp(7xb)+exp(8xb)−7exp(7xb)+2exp(7))/2
・・・式(36)
そして、この式(36)を用いることにより、式(34)が式(37)として表され、式(35)が式(38)として表されるようになる。
D2×(exp(7xb4)−6exp(7xb)+exp(8xb)−7exp(7xb)+2exp(7))
≦T2/(((3×T2×C2×Sa2)/(2×D2×Sc2))+1) ・・・式(37)
D2×3/2
×(exp(7xb4)−6exp(7xb)+exp(8xb)−7exp(7xb)+2exp(7))
≦T2/(((3×T2×C2×Sa2)/(2×D2×Sc2))+1) ・・・式(38)
【0107】
これに対し、第2光拡散剤138の屈折率nc2が第2基材136の屈折率nbよりも小さくなっている場合、図16に示すように、第2光拡散層135の第2光拡散剤138に入射する光束LFaは、集光することなく、広い範囲に広がるようになる。したがって、複数の微小な単位拡散層要素を含むさらなる光拡散層が、第2光拡散層135の出光側に設けられるような場合には、当該さらなる光拡散層の光拡散機能を効果的に発揮させるため、第2光拡散層135中の一つの第2光拡散剤138に入射した光束LFaがその後に通過する領域S2内に一つの単位拡散層要素が入り込むよう、第2光拡散剤138の屈折率nc2が、第2基材31の屈折率nbよりも小さくなっていることが好ましい。
【0108】
次に、第1光拡散層130および第2光拡散層135との関係について説明する。
【0109】
第1光拡散層130の第1基材131の屈折率naおよび第1光拡散剤133の屈折率nc1のうちの大きい方の屈折率の値を第1基材131の屈折率naおよび第1光拡散剤133の屈折率nc1のうちの小さい方の屈折率の値で割ることによって得られる値と、第2光拡散層135の第2基材136の屈折率nbおよび第2光拡散剤138の屈折率nc2のうちの大きい方の屈折率の値を第2基材136の屈折率nbおよび第2光拡散剤138の屈折率nc2のうちの小さい方の屈折率の値で割ることによって得られる値と、が相違していることが好ましい。そして、第1光拡散層130の第1基材131の屈折率naおよび第1光拡散剤133の屈折率nc1のうちの大きい方の屈折率の値を第1基材131の屈折率naおよび第1光拡散剤133の屈折率nc1のうちの小さい方の屈折率の値で割ることによって得られる値が、第2光拡散層135の第2基材136の屈折率nbおよび第2光拡散剤138の屈折率nc2のうちの大きい方の屈折率の値を第2基材136の屈折率nbおよび第2光拡散剤138の屈折率nc2のうちの小さい方の屈折率の値で割ることによって得られる値よりも大きいことがさらに好ましい。これらの知見は、本件発明者による以下の実験結果に基づくものである。
【0110】
本件発明者は、まず、第1の実験として、基材の屈折率nと光拡散剤の屈折率ncとの関係に基づく拡散度合いについて検討した。屈折率nを有した基材中に含まれた屈折率ncを有する光拡散剤へ、均一な輝度分布を有する光束が入射した場合の、光束のその後の光路についてシミュレーションした。シミュレーションは、基材の屈折率nおよび光拡散剤の屈折率ncを種々変更して、行った。なお、シミュレーションにおいて採用した基材の屈折率nおよび光拡散剤の屈折率ncは、市販されている透過型スクリーン用の材料として今日において現実的に用いられ得る材料の屈折率の値の範囲内とした。具体的には、基材の屈折率nおよび光拡散剤の屈折率ncは、共に、1.45以上1.60以下とした。
【0111】
シミュレーション結果に基づき、各光拡散剤から出射される出射光の輝度を種々の測定角度から調査するとともに、半値角を検討した。ここで測定角度とは、測定方向と、光拡散剤への光束の入射方向と、がなす角度のことである。また、半値角とは、ピーク輝度の半分の輝度を有するようになる測定角度のことである。
【0112】
図17に、各光拡散剤および基材の屈折率比と半値角との関係を、グラフとして示す。図17に示すグラフにおいて、各光拡散剤および基材の屈折率比を横軸に取り、測定された半値角を縦軸に取っている。また、図中の○印は、基材の屈折率nが光拡散剤の屈折率ncよりも大きい場合、すなわち、光拡散剤に入射した光束が集光させられることなく広い範囲に拡散させられる場合の結果である。一方、図中の×印は、基材の屈折率nが光拡散剤の屈折率ncよりも小さい場合、すなわち、光拡散剤に入射した光束がいったん集光した後に広い範囲に拡散させられる場合の結果である。
【0113】
なお、「光拡散剤および基材の屈折率比」とは、基材の屈折率nおよび光拡散剤の屈折率ncのうちの大きい方の屈折率の値を基材の屈折率nおよび光拡散剤の屈折率ncのうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値としている。したがって、○印については、光拡散剤および基材の屈折率比」とは、基材の屈折率nを光拡散剤の屈折率ncで割った値となる。一方、×印については、「光拡散剤および基材の屈折率比」とは、光拡散剤の屈折率nを基材の屈折率ncで割った値となる。
【0114】
既知のように、スネルの法則から、界面への入射角度θ1と界面からの出射角度θ2との間には、以下の式(39)の関係が成り立つ。ここで、式(39)中のn1は、界面の入光側領域をなす材料が有する屈折率の値であり、式(39)中のn2は、界面の出光側領域をなす材料が有する屈折率の値である。
n1×sinθ1=n2×sinθ2 ・・・式(39)
式(39)を変形した式(40)から理解されるように、入射角度が同一である場合、出射角度は、界面の入光側領域をなす材料が有する屈折率n1の、界面の出光側領域をなす材料が有する屈折率n2に対する比が大きくなるにつれて、大きくなっていく。
θ2=sin-1((n1/n2)×sinθ1) ・・・式(40)
【0115】
したがって、光拡散剤の屈折率ncが基材の屈折率nよりも大きい場合、および、光拡散剤の屈折率ncが基材の屈折率nよりも小さい場合のいずれの場合においても、光拡散剤および基材の屈折率比が大きくなるにつれて(基材の屈折率nに対する光拡散剤ncの屈折率の比が1から離れるにつれて)、光拡散剤からの出射光がより広い範囲に拡散させられるようになった。また、図17に示す実験結果とも合致するように、光拡散剤の屈折率ncが基材の屈折率nよりも大きい場合(図17における集光有)、および、光拡散剤の屈折率ncが基材の屈折率nよりも小さい場合(図17における集光無)のいずれの場合においても、光拡散剤および基材の屈折率比が大きくなるにつれて、半値角がより大きくなる。すなわち、光拡散剤の屈折率ncが基材の屈折率nよりも大きい場合、および、光拡散剤の屈折率ncが基材の屈折率nよりも小さい場合のいずれの場合においても、入射光束LFが拡散される度合いは、光拡散剤および基材の屈折率比が大きいほど、大きくなっていく。
【0116】
また、ここで注目すべきは、図17に示すように、基材の屈折率nおよび光拡散剤の屈折率ncが市販されている透過型スクリーン用の材料として今日において現実的に用いられ得る材料の屈折率の値の範囲内にある場合、より具体的には、基材の屈折率nおよび光拡散剤の屈折率ncが共に1.45以上1.60以下の範囲内となっている場合、言い換えると、光拡散剤および基材の屈折率比が1以上1.10(=1.60/1.45)以下の範囲内となっている場合、光拡散剤の屈折率ncおよび基材の屈折率nのいずれが大きいかに関わらず、基材中に含まれた光拡散剤の拡散度合いは、光拡散剤および基材の屈折率比が大きいほど、大きくなる。すなわち、いったん集光させて拡散させる場合か、集光させることなく拡散させる場合か、を区別することなく、基材中に含まれた光拡散剤の拡散度合いの大小を、光拡散剤および基材の屈折率比によって評価することができる。
【0117】
次に、本件発明者は、第2の実験として、基材の屈折率nと当該基材中に含まれる光拡散剤の屈折率ncとの屈折率比がそれぞれ異なる複数の光学シートを作製した。そして、各光学シートについて、実際に光を投射して種々の測定角度から輝度を測定した。ここで測定角度とは、測定方向と光学シートのシート面への垂線とがなす角度のことである。なお、光学シートの厚さは、各光学シート間で略同一にした。また、光学シートにおける光拡散剤の平均粒径は、各光学シート間で略同一にした。さらに、光学シートにおける光拡散剤の量は、各光学シート間で略同一にした。
【0118】
ここで、実験用の光学シートに用いられた材料は、市販されている透過型スクリーン用の材料として今日において現実的に用いられ得る材料を採用している。具体的には、基材の屈折率nおよび光拡散剤の屈折率ncは、共に、1.45以上1.60以下であった。
【0119】
実験結果を測定角度に対する輝度分布として図18に示す。図18において、点線は、光学シートにおける光拡散剤および基材の屈折率比y=1.10である場合の輝度分布を示している。このような光拡散剤および基材の屈折率比yは、実際に透過型スクリーンにおいて用いられ得る光学シートにおいて最も大きい典型的な値である。また、図18において、一点鎖線は、光学シートにおける光拡散剤および基材の屈折率比y=1.01である場合の輝度分布を示している。このような光拡散剤および基材の屈折率比yは、実際に透過型スクリーンにおいて用いられ得る光学シートにおいて小さい範囲に属する典型的な値である。
【0120】
図18に一点鎖線で示すように、光拡散剤および基材の屈折率比yが小さい場合の輝度分布CL2は、光拡散剤および基材の屈折率比yが大きい場合の輝度分布CL1よりも変化がなだらかである点において好ましい。しかしながら、光拡散剤および基材の屈折率比yが小さい場合の輝度分布CL2は、測定角度が大きくなると、つまり斜めから光学シートを見ると、輝度が低くなるという不都合がある。
【0121】
一方、図18に点線で示すように、光拡散剤および基材の屈折率比yが大きい場合の輝度分布CL1においては、光拡散剤および基材の屈折率比yが小さい場合の輝度分布CL2に比べ、大きな測定角度における輝度が高く維持される点において好ましい。しかしながら、ピーク輝度、つまり光学シートのシート面への垂線に沿った方向から測定した輝度が突出し過ぎている。また、ピーク輝度を有するようになる測定角度の周辺において、わずかな測定角度の変化で輝度が大幅に変化してしまうという不都合があり、いわゆるホットスポット現象を生じ得る。
【0122】
また、図18の実線は、含有される光拡散剤の重量比をそのままにしながら、輝度分布CL1を呈する光学シートの厚さを半分にして得られたシートと、含有される光拡散剤の重量比をそのままにしながら、輝度分布CL2を呈する光学シートの厚さを半分にして得られたシートと、を積層した光学シートの輝度分布CL3を示している。したがって、この光学シートの厚みは、輝度分布CL1を呈する光学シートおよび輝度分布CL2を呈する光学シートの厚みと略同一となっている。また、この光学シートに含まれた光拡散剤の平均粒径は、輝度分布CL1を呈する光学シートおよび輝度分布CL2を呈する光学シートに含まれた光拡散剤の平均粒径と略同一となっている。さらに、この光学シートに含まれた光拡散剤の総量は、輝度分布CL1を呈する光学シートおよび輝度分布CL2を呈する光学シートに含まれた光拡散剤の量と略同一となっている。
【0123】
図18に実線で示すように、グラフ上において、輝度分布CL3は、輝度分布CL1と輝度分布CL2との間に位置している。具体的には、輝度分布CL3はなだらかに変化している。また、輝度分布CL3においては、大きな測定角度での輝度が比較的に高く維持されている。したがって、光学シート内に、光拡散剤および基材の屈折率比が大きい層と、光拡散剤および基材の屈折率比小さい層と、を設けることにより、理想的な輝度分布を実現することができる。
【0124】
すなわち、本実施の形態に当てはめると、第1光拡散層130の第1基材131の屈折率naおよび第1光拡散剤133の屈折率nc1のうちの大きい方の屈折率の値を第1基材131の屈折率naおよび第1光拡散剤133の屈折率nc1のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値(第1光拡散層130における第1光拡散剤133および第1基材131の屈折率比)y1と、第2光拡散層135の第2基材136の屈折率nbおよび第2光拡散剤138の屈折率nc2のうちの大きい方の屈折率の値を第2基材136の屈折率nbおよび第2光拡散剤138の屈折率nc2のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値(第2光拡散層135における第2光拡散剤138および第2基材136の屈折率比)y2と、が相違していることが好ましい。
【0125】
また、第1の実験結果を考慮すると、光拡散剤および基材の屈折率比が大きい場合には、光拡散剤および基材の屈折率比が小さい場合に比べ、当該光拡散剤に入射した光束LFを広い範囲に拡散させることができる。本実施の形態に当てはめると、第1光拡散層130の第1基材131の屈折率naおよび第1光拡散剤133の屈折率nc1のうちの大きい方の屈折率の値を第1基材131の屈折率naおよび第1光拡散剤133の屈折率nc1のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値(第1光拡散層130における第1光拡散剤133および第1基材131の屈折率比)y1が大きければ、第1光拡散剤133に入射した光束LFのその後の通過範囲を広い範囲に広げることができる。したがって、一つの第1光拡散剤133に入射した光束LFがその後に通過する領域S内に、第2光拡散剤138を入り込ませやすくすることができる。この結果、第1光拡散剤133によって拡散させられる光を、第2光拡散剤138によって効率的にさらに拡散させることができる。
【0126】
以上のことから、第1光拡散層130の第1基材131の屈折率naおよび第1光拡散剤133の屈折率nc1のうちの大きい方の屈折率の値を第1基材131の屈折率naおよび第1光拡散剤133の屈折率nc1のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値(第1光拡散層130における第1光拡散剤133および第1基材131の屈折率比)y1と、第2光拡散層135の第2基材136の屈折率nbおよび第2光拡散剤138の屈折率nc2のうちの大きい方の屈折率の値を第2基材136の屈折率nbおよび第2光拡散剤138の屈折率nc2のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値(第2光拡散層135における第2光拡散剤138および第2基材136の屈折率比)y2と、が相違していることが好ましい。そして、第1光拡散層130の第1基材131の屈折率naおよび第1光拡散剤133の屈折率nc1のうちの大きい方の屈折率の値を第1基材131の屈折率naおよび第1光拡散剤133の屈折率nc1のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値(第1光拡散層130における第1光拡散剤133および第1基材131の屈折率比)y1が、第2光拡散層135の第2基材136の屈折率nbおよび第2光拡散剤138の屈折率nc2のうちの大きい方の屈折率の値を第2基材136の屈折率nbおよび第2光拡散剤138の屈折率nc2のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値(第2光拡散層135における第2光拡散剤138および第2基材136の屈折率比)y2よりも大きいことがさらに好ましい。
【0127】
さらに、第1光拡散層130の個々の第1光拡散剤133に入射した光束LFがその後に通過する範囲S内に、第2光拡散層135の個々の第2光拡散剤138が入り込むようにするためには、図19から理解できるように、第2光拡散層135中の第2光拡散剤138の平均粒径は小さいことが好ましく、また、第1光拡散層130中の第1光拡散剤133の平均粒径は大きいことが好ましい。典型的には、第1光拡散層130の第1光拡散剤133の平均粒径が、第2光拡散層135の第2光拡散剤138の平均粒径よりも大きいことが好ましい。
【0128】
このような第1光拡散層130および第2光拡散層135を含む第3光学シート129は、公知の製造方法、例えば押し出し成形法等により製造することができる。そして、例えば押し出し成形された各層を積層することにより、第3光学シート129を製造した場合、あるいは、互いに異なる材料を共押し出し成形することにより、第3光学シート129を製造した場合、第1光拡散層130の第1基材131と第2光拡散層135の第2基材136との間に界面が形成され得る。このように、第1基材131と第2基材136との間に界面が形成される場合には、当該界面を通過する光は、当該界面において屈折する。
【0129】
ここで、図20に示すように、第2基材136の屈折率nbが、第1基材131の屈折率naよりも小さい場合、第1基材131と第2基材136との界面を通過する光束LFは、当該界面で屈折し、より広い範囲を通過するよう拡散させられるようになる。したがって、一つの第1光拡散剤133に入射した光束LFがその後に通過する領域S内に、第2光拡散剤138を入り込みやすくすることができ、第2光拡散層135の光拡散機能を効果的に発揮させると言う観点において都合がよい。
【0130】
一方、互いに隣接する第1光拡散層130の第1基材131と第2光拡散層135の第2基材136とを同一材料から形成する等して、第1光拡散層130の第1基材131と第2光拡散層135の第2基材136との間に界面が形成されないようにしてもよい。そして、この場合、流動性を有する材料を所望の形状で硬化させることにより、第1光拡散層130および第2光拡散層135をそれぞれ形成するキャスト法を用いることができる。
【0131】
キャスト法を用いる場合には、まず、流動性を有する材料中に、当該材料の比重とは異なる比重を有した第1光拡散剤133および第2光拡散剤138を混入し、その後、流動性材料中において第1光拡散剤133および第2光拡散剤138を沈降させる。そして、第1光拡散剤133および第2光拡散剤138に用いられる材料(とりわけ、比重)および平均粒径を予め適宜選択しておくことにより、第1光拡散剤133の沈降速度と第2光拡散剤138の沈降速度との相違に基づき、第1光拡散剤133と第2光拡散剤138とが、流動性を有した材料中においてそれぞれ片寄って配置された状態となる。すなわち、後に第1基材131および第2基材136をなすようになる材料中において、第1光拡散剤133と第2光拡散剤138とが分離して配置された状態となる。ここで、「流動性を有する材料」とは、材料内に混入された第1光拡散剤133の比重および第2光拡散剤138の比重と、材料の比重との相違に起因して、混入された第1光拡散剤133および第2光拡散剤138が材料内で移動し得る程度の流動性を有した材料を、意味する。
【0132】
その後、この状態で、第1光拡散層130の第1基材131および第2光拡散層135の第2基材136をなすようになる材料を硬化させることにより、第1光拡散剤133が片寄って配置されている部分から第1光拡散層130が形成され、第2光拡散剤138が片寄って配置されている部分から第2光拡散層135が形成され得る。このような方法で得られた第1光拡散層130と第2光拡散層135においては、図21に示すように、第1基材131と第2基材136とが同一材料から一体に形成され、第1基材131と第2基材136との間に界面(境界)が存在しない。
【0133】
また同様に、共押し出し成形により、第1基材131と第2基材136とが同一材料から一体に形成された第3光学シート129を容易かつ安価に形成することができる。共押し出し成形法を用いた場合、三層以上の第3光学シート129を容易かつ安価に製造することができる。
【0134】
次に、第1光拡散層130と第2光拡散層135とを備える第3光学シート129の設計方法について詳述する。
【0135】
上述したように、第1光拡散層130の第1光拡散剤133に入射した光束LFは一旦集光し、その後に拡散する。図1を用いて説明したように、第2光拡散層135の個々の第2光拡散剤138の光拡散機能をより効率的に発揮させるためには、一つの第1光拡散剤133へ入射した光束LFがその後に通過する領域S内に、第2光拡散剤138が入り込むように配置されていることが好ましい。この場合、第2光拡散剤138の全表面が、第1光拡散剤133によって拡散させられる光束LFをさらに拡散させることに寄与し得るようになるからである。
【0136】
そして、第1光拡散層130と第2光拡散層135とが隣接して配置されている場合には、一つの第1光拡散剤133へ入射した光束LFが、当該第1光拡散剤133から出射した後であって集光する前に通過する領域S内に、第2光拡散剤138が入り込み得るようにすることが好ましい。一つの第1光拡散剤133へ入射した光束LFが、当該第1光拡散剤133から出射した後であって集光する前に通過する領域S内に、第2光拡散剤138が入り込み得るようにするには、第1基材131中の最入光側に配置された第1光拡散剤133、および、第2基材136中の最出光側に配置された第2光拡散剤138を基準にして、第3光学シート129を設計することが好ましい。第1光拡散剤133に入射した光束LFは、当該第1光拡散剤133を出射した後、集光点に向けて次第に収束していく。したがって、互いから最も離間するように配置された第1光拡散剤133および第2光拡散剤138を基準にして、当該第1光拡散剤133へ入射した光束LFがその後に通過する領域S内に、当該第2光拡散剤138が入り込むよう、第3光学シート129を設計することが好ましい。
【0137】
すなわち、第1光拡散剤133の平均粒径D1を第2光拡散剤138の平均粒径D2よりも大きくするとともに、第1基材131中の最入光側に配置され平均粒径D1を有する第1光拡散剤133へ光学シート129のシート面に直交する方向から入光した光束LFが、第1光拡散剤133から出射した後であって集光する前に通過する領域S内に、第2基材136中の最出光側に配置され平均粒径D2を有する第2光拡散剤138が入り込み得るよう、第3光学シート129が構成されることが好ましい。
【0138】
このような第1光拡散層130および第2光拡散層135を備えた第3光学シート129の設計方法について、図22を用いてより具体的に説明する。図22においては、上述したように、第1光拡散剤133の平均粒径をD1とし、粒径がD1の第1光拡散剤133の焦点距離をF1とし、第2光拡散剤138の平均粒径をD2としている。また、第3光学シート129のシート面に直交する方向に沿った第1基材131(第1光拡散層130)の入光側面から第2基材136(第2光拡散層135)の出光側面までの長さをL1とする。
【0139】
第1光拡散層130(第1基材131)内の最入光側に配置され粒径D1を有する第1光拡散剤133への入射光束LFが、集光前の通過領域S内に、第2基材136(第2光拡散層135)内の最出光側に配置され粒径D2を有する第2光拡散剤138を含み得るとすると、三角形の相似関係から以下の式(41)が成り立つ。
D1:F1=D2:(F1+D1/2−L1+ D2/2) ・・・式(41)
したがって、第1光拡散層130(第1基材131)内の最入光側に配置され粒径D1を有する第1光拡散剤133への入射光束L1の通過領域Sが、第2基材136(第2光拡散層135)内の最出光側に配置され粒径D2を有する第2光拡散剤138を含み得るようにするには、第3光学シート129のシート面に直交する方向に沿った第1基材131(第1光拡散層130)の入光側面から第2基材136(第2光拡散層135)の出光側面までの長さL1が以下の式(42)を満たすようにすればよい。
L1≦((D1−D2)×F1/D1)+(D1+D2)/2 ・・・式(42)
【0140】
ここで、式(42)中における粒径がD1の第1光拡散剤133の焦点距離F1として、入射位置比が1である入射光の焦点距離Fs(式(23))および入射位置比が0.9である入射光の焦点距離Fr(式(25))を用いることができる。
【0141】
第1の実施の形態において図8乃至図10および表1を参照して説明したように、略球形状を有した第1光拡散剤133に入射した光束LFに含まれる略90%の光束が、焦点距離Frにおいて、実質的に集光する。すなわち、第1光拡散剤133に入射する光束LFの輝度分布が均一であれば、この光束LF中に含まれる前記略90%の光束も均一輝度を有するようになる。したがって、焦点距離Frが適用された式(42)が満たされる場合には、第3光学シート129のシート面に直交する方向から、第1基材131中の最入光側に位置する第1光拡散剤133へ入光した光束LFが、当該第1光拡散剤133から出射して集光した後に通過する領域S内に、第2基材136中の最出光側に位置する第2光拡散剤138が入り込むことが可能となる。したがって、第2基材136中に分散された第2光拡散剤138には、いずれかの第1光拡散剤133によって拡散された光束が均一な輝度分布で入射するようになる。これにより、第2光拡散層135の光拡散機能を効果的に発揮させることができる。
【0142】
また、第1の実施の形態において図8乃至図10および表1を参照して説明したように、入射位置比が1である入射光Lsの焦点距離Fsは、入射位置比が0.9である入射光の焦点距離Frよりも短くなる。したがって、一つの第1光拡散剤133への入射した入射位置比が0.9以下である光束は、当該第1光拡散剤133から出射して集光する前に、入射位置比が1である入射光Lsの光路が焦点距離Fsまでに囲む領域内を、略均一な輝度分布で通過する。このため、図8からも理解できるように、入射位置比が1である入射光の焦点距離Fsが適用された式(42)が満たされる場合、入射位置比が0.9以下である均一な光束の通過領域内にも一つの第2光拡散剤138が入り込み得る。したがって、入射位置比が1である入射光の焦点距離Fsが適用された式(42)が満たされる場合、一つの第1光拡散剤133から出射される光束LFが、一つの第2光拡散剤138に均一に入射することが実質的に可能になる。
【0143】
ここで、式(23)で表される焦点距離Fsを、第1基材131中に混入された粒径がD1である第1光拡散剤133の焦点距離F1として、式(42)を書き直すと、以下の式(43)が得られる。
L1≦(tan(sin-1(na/nc1))×(D1−D2)/2)+(D1+D2)/2
・・・式(43)
【0144】
また、式(25)で表される焦点距離Frを考慮すると、第1基材131中に混入された粒径がD1である第1光拡散剤133の焦点距離F1として、式(42)を書き直すと、以下の式(44)が得られる。なお、式(44)中のxaは、第1基材131の屈折率naに対する第1光拡散剤133の屈折率nc1の比(この場合は、xa=nc1/na)である。
L1≦((exp(7xa4)−6exp(7xa)+exp(8xa)−7exp(7xa)+2exp(7))×(D1−D2)/2)+(D1+D2)/2
・・・式(44)
【0145】
以上のようにして、第3光学シート129のシート面に直交する方向に沿った第1基材131(第1光拡散層130)の入光側面から第2基材136(第2光拡散層135)の出光側面までの長さL1の上限値を設定することができる。一方、第3光学シート129のシート面に直交する方向に沿った第1基材131(第1光拡散層130)の入光側面から第2基材136(第2光拡散層135)の出光側面までの長さL1は、当然に、第1基材131(第1光拡散層130)の最小厚みと第2基材136(第2光拡散層135)の最小厚みとの和以上、すなわち、少なくとも第1光拡散剤133の平均粒径D1と第2光拡散剤138の平均粒径D2との和以上となっていなければならない。
【0146】
以上のような本実施の形態によれば、ある一つの第1光拡散剤と、前記一つの第1光拡散剤の中心と第3光学シートのシート面に直交する方向において重なる他の一つの第1光拡散剤133のうち、前記一つの第1光拡散剤と光学シートのシート面に直交する方向に沿って隣り合う他の一つの第1光拡散剤と、の二つの第1光拡散剤における、第3光学シートのシート面に直交する方向に沿った当該二つの第1光拡散剤の中心間の平均離間長さMが、第1基材131中の粒径がD1である第1光拡散剤の焦点距離の2倍以上、さらには、3倍以上となるようになっている。したがって、一つの第1光拡散剤133に入光した光束LFがその後に通過する領域S内に、第3光学シート129のシート面に直交する方向に沿って平均離間距離Mだけずれて配置された他の第1光拡散剤であって、当該光束LFが次に入射すべき第1光拡散剤133が入り込むことが可能となっている。これにより、第1光拡散層130の第1基材131中に分散されている各第1光拡散剤133の光拡散機能を効果的に発揮させることができるようになっている。すなわち、例えば第1光拡散層130に第1光拡散剤133を大量に含有させることなく、第3光学シート129の光拡散機能を増強することができる。これにより、過度のゲインの低下や過度のコントラストの低下等、不必要な映像の劣化を回避しながら、シンチレーション等の映像のギラツキを抑制することができる。
【0147】
また、第2光拡散層135についても、第1光拡散層130と同様に構成することにより、個々の第2光拡散剤138の光拡散機能を効果的に発揮させることができる。
【0148】
さらに、本実施の形態によれば、第1光拡散層130で拡散される光を、第1光拡散層130の出光側に配置された第2光拡散層135により、効率的に拡散させることができる。すなわち、例えば第1光拡散層130に第1光拡散剤133を大量に含有させたり、第2光拡散層135に第2光拡散剤138を大量に含有させたりして、第3光学シート129に含まれる個々の光拡散層130,135の光拡散機能を過度に増強することなく、第3光学シート129全体としての光拡散機能を増強することができる。これにより、過度のゲインの低下や過度のコントラストの低下等、不必要な映像の劣化を回避しながら、シンチレーション等の映像のギラツキを抑制することができる。
【0149】
なお、上述した第2の実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0150】
例えば、上述した透過型スクリーン120は第1乃至第3の光学シート21,25,129を有する例を示したが、これに限られない。透過型スクリーン120は1以上の任意の数の光学シートを備え得る。また、上述した実施の形態において、第1光拡散層130および第2光拡散層135が最出光側の光学シートのみに含まれる例を示したが、これに限られない。第1光拡散層130および第2光拡散層135は最出光側に配置される光学シート以外の光学シートに含まれるようにしてもよいし、複数の光学シートに含まれるようにしてもよい。
【0151】
このような変形の一例を図23に示す。図23に示す例において、透過型スクリーン120aは、第1光学シート21と、第1光学シート21の出光側に配置された第2光学シート125と、を備えている。第2光学シート125は、視野角拡大層26と、視野角拡大層26の出光側に設けられた第1光拡散層130と、第1光拡散層130の出光側に設けられた第2光拡散層135と、を有している。なお、図23に示す透過型スクリーン120aにおいて、図1乃至図13を用いて説明した第1の実施の形態およびその変形例、並びに、図14乃至図22を用いて説明した第2の実施の形態と同一に構成され得る部分には同一符号を付している。
【0152】
また、上述した第2の実施の形態において、第1光拡散層130の第1基材131中に一種類の光拡散剤133が分散され、第2光拡散層135の第2基材136中に一種類の光拡散剤138が分散されている例を示したが、これに限られない。第1基材131中に、上述した第1光拡散剤133とは異なる種類のさらなる光拡散剤、例えば、上述した第1光拡散剤133の平均粒径とは異なる平均粒径を有した光拡散剤や、上述した第1光拡散剤133の屈折率とは異なる屈折率を有した光拡散剤が、さらに分散されていてもよい。同様に、第2基材136中に、上述した第2光拡散剤138とは異なる種類のさらなる光拡散剤、例えば、上述した第2光拡散剤138の平均粒径とは異なる平均粒径を有した光拡散剤や、上述した第2光拡散剤138の屈折率とは異なる屈折率を有した光拡散剤が、さらに分散されていてもよい。ただし、さらなる光拡散剤も、上述した構成、例えば上述した設計方法にしたがっていることが好ましい。また、上述した実施の形態においては、第1光拡散層130および第2光拡散層135のみが光拡散剤133,138を含有している例を示したが、これに限られない。さらに、一つの第1光拡散剤133および一つの第2光拡散剤138が一種類の材料からなっている必要はない。例えば、複数種類の材料から構成され、部分的に異なる屈折率を有する光拡散剤(例えば、特開平2−120702)を用いるようにしてもよい。
【0153】
<第3の実施の形態>
次に、主に図24乃至図26を参照し、光学シートおよび透過型スクリーンの第3の実施の形態について説明する。なお、図2乃至図13を用いて説明した第1の実施の形態およびその変形例、並びに、図14乃至図23を用いて説明した第2の実施の形態およびその変形例と同一部分には同一符号を付し、重複する詳細な説明を省略する。
【0154】
図24に示すように、本実施の形態における透過型スクリーン220は、第1乃至第3の光学シート21,25,229を備えている。第1光学シート21および第2光学シート25は、上述した第1の実施の形態の対応する構成要素と同一に構成することができる。また、このような透過型スクリーン220は、図2および図3に示す背面投射型表示装置10の構成部材として用いられ得る。
【0155】
また、第3の光学シート229は、最入光側に配置された第1光拡散層130と、最出光側に配置された第2光拡散層135と、第1光拡散層130と第2光拡散層135との間に配置された中間層43と、を備えている。このうち、第1光拡散層130および第2光拡散層135は、第2の実施の形態において既に説明したように構成することができる。また、中間層43は、例えば、第1の実施の形態において説明した支持層41と同様に構成することができる。さらに、中間層43が、複数の層を有するように構成することもできる。
【0156】
このような第1光拡散層130、第2光拡散層135および中間層43を含む第3光学シート229は、第1の実施の形態および第2の実施の形態において説明したように、公知の製造方法、例えば押し出し成形法等により製造することができる。
【0157】
そして、互いに隣接する第1光拡散層130の第1基材131と中間層43の基材43aとを異なる材料から形成し、第1光拡散層130の第1基材131と中間層43の基材43aとの間に界面を形成するようにしてもよい。この場合、第2の実施の形態において図20を参照しながら説明したように、中間層43の基材43aの屈折率を第1光拡散層130の第1基材131の屈折率よりも小さくすることにより、第1光拡散層130から中間層43に入射する光束を広い範囲に拡散させることができる点において都合が良い。その一方で、共押し出し成形法やキャスト法を用い、互いに隣接する第1光拡散層130の第1基材131と中間層43の基材43aとを同一材料から一体に形成するようにしてもよい。
【0158】
同様に、互いに隣接する中間層43の基材43aと第2光拡散層135の第2基材136とを異なる材料から形成し、中間層43の基材43aと第2光拡散層135の第1基材136との間に界面を形成するようにしてもよい。この場合、第2光拡散層135の第2基材136の屈折率を中間層43の基材43aの屈折率よりも小さくすることにより、中間層43から第2光拡散層135に入射する光束を広い範囲に拡散させることができる点において都合が良い。その一方で、共押し出し成形法やキャスト法を用い、互いに隣接する中間層43の基材43aと第2光拡散層135の第2基材136とを同一材料から一体に形成するようにしてもよい。
【0159】
次に、第1光拡散層130と第2光拡散層135と中間層43とを備える第3光学シート229の設計方法について詳述する。
【0160】
上述したように、第1光拡散層130の第1光拡散剤133に入射した光束LFは一旦集光し、その後に拡散する。図1を用いて説明したように、第2光拡散層135の個々の第2光拡散剤138の光拡散機能をより効率的に発揮させるためには、一つの第1光拡散剤133へ入射した光束LFがその後に通過する領域S内に、第2光拡散剤138が入り込むように配置されていることが好ましい。この場合、第2光拡散剤138の全表面が、第1光拡散剤133によって拡散させられる光束LFをさらに拡散させることに寄与し得るようになるからである。
【0161】
そして、第1光拡散層130と第2光拡散層135との間に中間層43が配置されている場合には、一つの第1光拡散剤133へ入射した光束LFが、当該第1光拡散剤133から出射して集光した後に通過する領域S内に、第2光拡散剤138が入り込み得るようにすることが好ましい。一つの第1光拡散剤133へ入射した光束LFが、当該第1光拡散剤133から出射して集光した後に通過する領域S内に、第2光拡散剤138が入り込み得るようにするには、第1基材131中の最出光側に配置された第1光拡散剤133、および、第2基材136中の最入光側に配置された第2光拡散剤138を基準にして、第3光学シート229を設計することが好ましい。第1光拡散剤133に入射した光束LFは、当該第1光拡散剤133を出射して集光した後、次第に広い範囲に拡散していく。したがって、最も近接して配置された第1光拡散剤133および第2光拡散剤138を基準にして、当該第1光拡散剤133へ入射した光束LFがその後に通過する領域S内に、当該第2光拡散剤138が入り込むよう、第3光学シート229を設計することが好ましい。
【0162】
すなわち、第1基材131中の最出光側に配置され平均粒径D1を有する第1光拡散剤133へ光学シート229のシート面に直交する方向から入光した光束LFが、第1光拡散剤133から出射して集光した後に通過する領域S内に、第2基材136中の最入光側に配置され平均粒径D2を有する第2光拡散剤138が入り込み得るよう、第3光学シート229が構成されていることが好ましい。
【0163】
このような第1光拡散層130、第2光拡散層135および中間層43を備えた第3光学シート229の設計方法について、図25を用いてより具体的に説明する。図25においては、第2の実施の形態における説明と同様に、第1光拡散剤133の平均粒径をD1とし、第1基材131中に含まれ粒径D1を有する第1光拡散剤133の焦点距離をF1とし、第2光拡散剤138の平均粒径をD2としている。また、第3光学シート229のシート面に直交する方向に沿った第1基材131(第1光拡散層130)の出光側面から第2基材136(第2光拡散層135)の入光側面までの長さL2としている。
【0164】
第1光拡散層130(第1基材131)内の最入光側に配置され粒径D1を有する第1光拡散剤133への入射光束LFが、集光後の通過領域S内に、第2基材136(第2光拡散層135)内の最入光側に配置され粒径D2を有する第2光拡散剤138を含み得るとすると、三角形の相似関係から以下の式(45)が成り立つ。
D1:F1=D2:(L2−F1+D1/2+ D2/2) ・・・式(45)
したがって、第1光拡散層130(第1基材131)内の最入光側に配置され粒径D1を有する第1光拡散剤133への入射光束LFの通過領域Sが、第2基材136(第2光拡散層135)内の最出光側に配置され粒径D2を有する第2光拡散剤138を含み得るようにするには、第3光学シート229のシート面に直交する方向に沿った第1基材131(第1光拡散層130)の出光側面から第2基材136(第2光拡散層135)の入光側面までの長さL2が以下の式(46)を満たすようにすればよい。
L2≧((D1+D2)×F1/D1)−(D1+D2)/2 ・・・式(46)
【0165】
ここで、式(46)中における粒径がD1の第1光拡散剤133の焦点距離F1として、入射位置比が0.9である入射光の焦点距離Fr(式(25))を用いることができる。
【0166】
上述したように、第1光拡散剤133に入射した光束LFに含まれる略90%の光束が、焦点距離Frにおいて、実質的に集光する。すなわち、第1光拡散剤133に入射する光束LFの輝度分布が均一であれば、この光束LF中に含まれる前記略90%の光束も均一輝度を有するようになる。したがって、焦点距離Frが適用された式(46)が満たされる場合には、一つの第1光拡散剤133から出射される光束LFが、一つの第2光拡散剤138に均一に入射し得るようになり、当該第2光拡散剤138の光拡散機能を効果的に発揮させることができる。
【0167】
一方、焦点距離Fsが適用された式(46)が満たされる場合、第1光拡散剤133の両端に接するように入射する光(入射位置比1の光)のその後の通過光路内に、一つの第2光拡散剤138が入り込み得る。しかしながら、図8、図9および表1から理解できるように、焦点距離Fsは焦点距離Frよりも大幅に短くなる。したがって、焦点距離Fsが適用された式(46)が満たされ、一つの第2光拡散剤138が、第1光拡散剤133の両端に接するように入射した光(入射位置比1の光)の光路間に入り込んだとしても、第1光拡散剤133に入射した光束LFの略90%をなすとともに均一な輝度を有し得る前記略90%の光束LFの通過領域内に入り込まない可能性が十分にある。この場合、前記略90%の光束LFは、一つの第2光拡散剤138の表面の一部のみに片寄って入射し、この第2光拡散剤138の光拡散機能を効果的に発揮させることができないだけでなく、シンチレーションを引き起こし得る。したがって、上述した式(46)に対し、Fr(式(25))を適用することが好ましい。
【0168】
ここで、式(25)で表されるFrを第1基材中に混入された粒径がD1で第1光拡散剤133の焦点距離F1として、式(46)を書き直すと、以下の式(47)が得られる。なお、式(47)中のxaは、第1基材131の屈折率naに対する第1光拡散剤133の屈折率nc1の比(この場合は、xa=nc1/na)である。
L2≧((exp(7xa4)−6exp(7xa)+exp(8xa)−7exp(7xa)+2exp(7))×(D1+D2)/2)−(D1+D2)/2
・・・式(47)
【0169】
以上のようにして、第3光学シート229のシート面に直交する方向に沿った第1基材131(第1光拡散層130)の出光側面から第2基材136(第2光拡散層135)の入光側面までの長さL2の下限値を設定することができる。一方、第3光学シート229のシート面に直交する方向に沿った第1基材131(第1光拡散層130)の出光側面から第2基材136(第2光拡散層135)の入光側面までの長さL2は、長ければ長い程良いというものではない。例えば、第3光学シート229のシート面に直交する方向に沿った第1基材131(第1光拡散層130)の出光側面から第2基材136(第2光拡散層135)の入光側面までの長さL2が長過ぎると、解像度が悪化してしまうという不具合が生じる。この観点から、第3光学シート29のシート面に直交する方向に沿った第1基材131(第1光拡散層130)の出光側面から第2基材136(第2光拡散層135)の入光側面までの長さL2は、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがさらに好ましく、1mm以下であることがさらにより好ましい。
【0170】
ところで、以上の検討において、一つの第1光拡散剤133へ、第3光学シート229のシート面に直交する方向から、入射した光束LFが当該第1光拡散剤133から出射して集光した後に通過する領域S内に、一つの第2光拡散剤138が入り込み得るよう、第3光学シート229を設計した。その一方で、一つの第1光拡散剤133へ、第3光学シート229のシート面に直交する方向から、入射した光束LFが当該第1光拡散剤133から出射した後であって集光する前に通過する領域S内に、一つの第2光拡散剤138が入り込み得るよう、第3光学シート29を設計することができる。このような設計は、例えば、第3光学シートのシート面に直交する方向に沿った第3光学シート129の厚さが薄い場合に、非常に有効である。
【0171】
この場合、第2の実施の形態において図22を参照しながら説明したように、第1基材131中の最入光側に配置され平均粒径D1を有する第1光拡散剤133へ光学シート129のシート面に直交する方向から入光した光束LFが、第1光拡散剤133から出射した後であって集光する前に通過する領域S内に、第2基材136中の最出光側に配置され平均粒径D2を有する第2光拡散剤138が入り込み得るよう、第3光学シート229を設計すればよい。具体的には、既に説明したように、第3光学シート229のシート面に直交する方向に沿った第1基材131(第1光拡散層130)の入光側面から第2基材136(第2光拡散層135)の出光側面までの長さをL1として、上述の式(42)、あるいは、式(42)を書き直した式(43)および式(44)が満たされるように、第3光学シート229を設計すればよい。
【0172】
以上のような本実施の形態によれば、第1光拡散層130および第2光拡散層135は、第2の実施の形態で説明した作用効果を有し得る。例えば、ある一つの第1光拡散剤と、前記一つの第1光拡散剤の中心と第3光学シートのシート面に直交する方向において重なる他の一つの第1光拡散剤のうち、前記一つの第1光拡散剤と光学シートのシート面に直交する方向に沿って隣り合う他の一つの第1光拡散剤と、の二つの第1光拡散剤における、第3光学シートのシート面に直交する方向に沿った当該二つの第1光拡散剤の中心間の平均離間長さMが、第1基材131中の粒径がD1である第1光拡散剤の焦点距離の2倍以上、さらには、3倍以上にすることができる。この場合、一つの第1光拡散剤133に入光した光束LFがその後に通過する領域S内に、第3光学シート229のシート面に直交する方向に沿って平均離間距離Mだけずれて配置された他の第1光拡散剤であって、当該光束LFが次に入射すべき第1光拡散剤133が入り込むことが可能となる。これにより、第1光拡散層130の第1基材131中に分散されている各光拡散剤133の光拡散機能を効果的に発揮させることができるようになる。すなわち、例えば第1光拡散層130に第1光拡散剤133を大量に含有させることなく、第3光学シート229の光拡散機能を増強することができる。これにより、過度のゲインの低下や過度のコントラストの低下等、不必要な映像の劣化を回避しながら、シンチレーション等の映像のギラツキを抑制することができる。また、第2光拡散層135についても、第1光拡散層130と同様に構成することにより、個々の第2光拡散剤138の光拡散機能を効果的に発揮させることができる。
【0173】
また、本実施の形態によれば、第1光拡散層130で拡散される光を、第1光拡散層130の出光側に配置された第2光拡散層135により、効率的に拡散させることができる。すなわち、例えば第1光拡散層130に第1光拡散剤133を大量に含有させたり、第2光拡散層135に第2光拡散剤138を大量に含有させたりして、第3光学シート229に含まれる個々の光拡散層130,135の光拡散機能を過度に増強することなく、第3光学シート229全体としての光拡散機能を増強することができる。これにより、過度のゲインの低下や過度のコントラストの低下等、不必要な映像の劣化を回避しながら、シンチレーション等の映像のギラツキを抑制することができる。
【0174】
なお、上述した第3の実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0175】
例えば、上述した透過型スクリーン220は第1乃至第3の光学シート21,25,229を有する例を示したが、これに限られない。透過型スクリーン220は1以上の任意の数の光学シートを備え得る。また、上述した実施の形態において、第1光拡散層130および第2光拡散層135が最出光側の光学シートのみに含まれる例を示したが、これに限られない。第1光拡散層130および第2光拡散層135は最出光側に配置される光学シート以外の光学シートに含まれるようにしてもよいし、複数の光学シートに含まれるようにしてもよい。
【0176】
このような変形の一例を図26に示す。図26に示す例において、透過型スクリーン220aは、第1光学シート21と、第1光学シート21の出光側に配置された第2光学シート225と、を備えている。第2光学シート225は、視野角拡大層26と、視野角拡大層26の出光側に設けられた第1光拡散層130と、第1光拡散層130の出光側に設けられた第2光拡散層135と、第1光拡散層130と第2光拡散層135との間に設けられた中間層43と、を有している。なお、図26に示す透過型スクリーン220aにおいて、図1乃至図13を用いて説明した第1の実施の形態およびその変形例、図14乃至図23を用いて説明した第2の実施の形態およびその変形例、並びに、図23および図24を用いて説明した第3の実施の形態と同一に構成され得る部分には同一符号を付している。
【0177】
また、上述した第3の実施の形態において、第1光拡散層130の第1基材131中に一種類の光拡散剤133が分散され、第2光拡散層135の第2基材136中に一種類の光拡散剤138が分散されている例を示したが、これに限られない。第1基材131中に、上述した第1光拡散剤133とは異なる種類のさらなる光拡散剤、例えば、上述した第1光拡散剤133の平均粒径とは異なる平均粒径を有した光拡散剤や、上述した第1光拡散剤133の屈折率とは異なる屈折率を有した光拡散剤が、さらに分散されていてもよい。同様に、第2基材136中に、上述した第2光拡散剤138とは異なる種類のさらなる光拡散剤、例えば、上述した第2光拡散剤138の平均粒径とは異なる平均粒径を有した光拡散剤や、上述した第2光拡散剤138の屈折率とは異なる屈折率を有した光拡散剤が、さらに分散されていてもよい。ただし、さらなる光拡散剤も、上述した構成、例えば上述した設計方法にしたがっていることが好ましい。また、上述した実施の形態においては、第1光拡散層130および第2光拡散層135のみが光拡散剤133,138を含有している例を示したが、これに限られない。例えば、第1光拡散層130と第2光拡散層135との間に配置された中間層43が光拡散剤を含有するようにしてもよい。さらに、一つの第1光拡散剤133および一つの第2光拡散剤138が一種類の材料からなっている必要はない。例えば、複数種類の材料から構成され、部分的に異なる屈折率を有する光拡散剤(例えば、特開平2−120702)を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】図1は、入光側に配置された単位拡散要素と出光側に配置された単位拡散要素との関連について説明するための図である。
【図2】図2は、本発明による背面投射型映像表示装置の一実施の形態を示す斜視図である。
【図3】図3は、背面投射型表示装置における光学系の概略構成を示す図である。
【図4】図4は、本発明による透過型スクリーンの第1の実施の形態を示す斜視図である。
【図5】図5は、本発明による透過型スクリーンおよび光学シートの第1の実施の形態を示す図である。
【図6】図6は、図5に示された光学シートの一例を示す図である。
【図7】図7は、光拡散層の厚さ方向に沿った光拡散剤間の平均離間距離を導出する方法を説明するための図である。
【図8】図8は、光拡散剤の各位置に入射する光の光路を示す図である。
【図9】図9は、光拡散剤への入射位置と、各入射位置に入射した光の焦点距離との関係を示すグラフである。
【図10】図10は、基材の屈折率に対する光拡散剤の屈折率の比と、焦点距離Frの粒径Dに対する比と、の関係を示す図である。
【図11】図11は、光拡散層の設計方法を説明するための図である。
【図12】図12は、図5に示された光学シート他の例を示す図である。
【図13】図13は、図5に示された透過型スクリーンおよび光学シートの変形例を示す図である。
【図14】図14は、本発明による透過型スクリーンおよび光学シートの第2の実施の形態を示す図である。
【図15】図15は、図14に示された光学シートの一例を示す図である。
【図16】図16は、図14に示された光学シートの他の例を示す図である。
【図17】図17は、一つの光拡散剤に光束を透過させた場合における、基材および光拡散剤の屈折率比と、半値角との関係を表したグラフを示す図である。
【図18】図18は、基材および光拡散剤の屈折率の差の絶対値と、輝度分布と、の関係を示すグラフを示す図である。
【図19】図19は、図14に示された光学シートの作用を説明するための図である。
【図20】図20は、図14に示された光学シートの作用を説明するための図である。
【図21】図21は、図14に示された光学シートさらに他の例を示す図である。
【図22】図22は、図14に示された光学シートの設計方法を説明するための図である。
【図23】図23は、図14に示された透過型スクリーンおよび光学シートの変形例を示す図である。
【図24】図24は、本発明による透過型スクリーンおよび光学シートの第3の実施の形態を示す図である。
【図25】図25は、図24に示された光学シートの設計方法を説明するための図である。
【図26】図26は、図24に示された透過型スクリーンおよび光学シートの変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0179】
10 背面投射型表示装置
20 透過型スクリーン
20a 透過型スクリーン
21a 光学シート
25a 光学シート
29 光学シート
30 光拡散層
31 基材
33 光拡散剤
43 中間層
43a 基材
120 透過型スクリーン
125 光学シート
120a 光学シート
129 光学シート
130 第1光拡散層
131 第1基材
133 第1光拡散剤
135 第2光拡散層
136 第2基材
138 第2光拡散剤
220 透過型スクリーン
220a 透過型スクリーン
225 光学シート
229 光学シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過型スクリーン用の光学シートにおいて、
基材と、前記基材内に分散された複数の光拡散剤と、を有する光拡散層を備え、
前記光拡散剤の屈折率は前記基材の屈折率よりも大きく、
前記光拡散剤の平均粒径をDとすると、
一つの光拡散剤と、前記一つの光拡散剤の中心と光学シートのシート面に直交する方向において重なる他の一つの光拡散剤のうち、前記一つの光拡散剤と光学シートのシート面に直交する方向に沿って隣り合う他の一つの光拡散剤と、の二つの光拡散剤における、光学シートのシート面に直交する方向に沿った当該二つの光拡散剤の中心間の平均離間距離が、粒径がDである光拡散剤の焦点距離の2倍以上であることを特徴とする光学シート。
【請求項2】
前記光拡散剤を含んだ前記基材中における前記光拡散剤の重量比をCとし、前記光拡散剤の比重をScとし、前記光拡散剤を含んだ前記基材の比重をSaとし、前記基材の厚みをTとし、粒径がDである光拡散剤の焦点距離をFとすると、以下の式(1)が満たされることを特徴とする請求項1に記載の光学シート。
2×F≦T/(((3×T×C×Sa)/(2×D×Sc))+1) ・・・式(1)
【請求項3】
透過型スクリーン用の光学シートにおいて、
基材と、前記基材内に分散された複数の光拡散剤と、を有する光拡散層を備え、
前記光拡散剤の屈折率は前記基材の屈折率よりも大きく、
前記光拡散剤の平均粒径をDとし、前記光拡散剤を含んだ前記基材中における前記光拡散剤の重量比をCとし、前記光拡散剤の比重をScとし、前記光拡散剤を含んだ前記基材の比重をSaとし、前記基材の厚みをTとし、粒径がDである光拡散剤の焦点距離をFとすると、以下の式(2)が満たされることを特徴とする光学シート。
2×F≦T/(((3×T×C×Sa)/(2×D×Sc))+1) ・・・式(2)
【請求項4】
透過型スクリーン用の光学シートにおいて、
基材と、前記基材内に分散された複数の光拡散剤と、を有する光拡散層を備え、
前記光拡散剤の屈折率は前記基材の屈折率よりも大きく、
前記光拡散剤の平均粒径をDとすると、
一つの光拡散剤と、前記一つの光拡散剤の中心と光学シートのシート面に直交する方向において重なる他の一つの光拡散剤のうち、前記一つの光拡散剤と光学シートのシート面に直交する方向に沿って隣り合う他の一つの光拡散剤と、の二つの光拡散剤における、光学シートのシート面に直交する方向に沿った当該二つの光拡散剤の中心間の平均離間距離が、粒径がDである光拡散剤の焦点距離の3倍以上であることを特徴とする光学シート。
【請求項5】
前記光拡散剤を含んだ前記基材中における前記光拡散剤の重量比をCとし、前記光拡散剤の比重をScとし、前記光拡散剤を含んだ前記基材の比重をSaとし、前記基材の厚みをTとし、粒径がDである光拡散剤の焦点距離をFとすると、以下の式(3)が満たされることを特徴とする請求項4に記載の光学シート。
3×F≦T/(((3×T×C×Sa)/(2×D×Sc))+1) ・・・式(3)
【請求項6】
透過型スクリーン用の光学シートにおいて、
基材と、前記基材内に分散された複数の光拡散剤と、を有する光拡散層を備え、
前記光拡散剤の屈折率は前記基材の屈折率よりも大きく、
前記光拡散剤の平均粒径をDとし、前記光拡散剤を含んだ前記基材中における前記光拡散剤の重量比をCとし、前記光拡散剤の比重をScとし、前記光拡散剤を含んだ前記基材の比重をSaとし、前記基材の厚みをTとし、粒径がDである光拡散剤の焦点距離をFとすると、以下の式(4)が満たされることを特徴とする光学シート。
3×F≦T/(((3×T×C×Sa)/(2×D×Sc))+1) ・・・式(4)
【請求項7】
前記光拡散剤の屈折率をncとし、前記基材の屈折率をnaとし、前記基材の屈折率に対する前記光拡散剤の屈折率の比をxa(=nc/na)として、以下の式(5)によって得られた値を、前記粒径がDである光拡散剤の焦点距離Fの値とすることを特徴とする請求項2,3,5または6に記載の光学シート。
F=D×
(exp(7xa4)−6exp(7xa)+exp(8xa)−7exp(7xa)+2exp(7))/2
・・・式(5)
【請求項8】
透過型スクリーン用の光学シートにおいて、
第1基材と、前記第1基材内に分散された複数の第1光拡散剤と、を有する第1光拡散層と、
第1基材よりも出光側に配置された第2基材と、前記第2基材内に分散された複数の第2光拡散剤と、を有する第2光拡散層と、を備え、
前記第1光拡散剤の屈折率は前記第1基材の屈折率よりも大きいことを特徴とする光学シート。
【請求項9】
前記第1基材の屈折率および前記第1光拡散剤の屈折率のうちの大きい方の屈折率の値を前記第1基材の屈折率および前記第1光拡散剤の屈折率のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値と、前記第2基材の屈折率および前記第2光拡散剤の屈折率のうちの大きい方の屈折率の値を前記第2基材の屈折率および前記第2光拡散剤の屈折率のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値と、は異なることを特徴とする請求項8に記載の光学シート。
【請求項10】
前記第1基材の屈折率および前記第1光拡散剤の屈折率のうちの大きい方の屈折率の値を前記第1基材の屈折率および前記第1光拡散剤の屈折率のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値は、前記第2基材の屈折率および前記第2光拡散剤の屈折率のうちの大きい方の屈折率の値を前記第2基材の屈折率および前記第2光拡散剤の屈折率のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値よりも、大きいことを特徴とする請求項8または9に記載の光学シート。
【請求項11】
前記第2光拡散剤の屈折率は前記第2基材の屈折率よりも小さいことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項12】
前記第1基材と前記第2基材とは隣接して配置され、前記第1基材の屈折率と前記第2基材の屈折率とは異なることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項13】
前記第2基材の屈折率は前記第1基材の屈折率よりも小さいことを特徴とする請求項12に記載の光学シート。
【請求項14】
前記第1光拡散層と前記第2光拡散層との間に配置された中間層をさらに備えたことを特徴とする請求項請求項8乃至13のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項15】
前記第1基材と前記第2基材とは同一材料により一体に形成されていることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項16】
前記第1光拡散層と前記第2光拡散層との間に配置された中間層をさらに備え、
中間層の基材は、前記第1基材および前記第2基材の少なくとも一方と、同一材料により一体に形成されていることを特徴とする請求項15に記載の光学シート。
【請求項17】
前記第1光拡散剤の平均粒径をD1とし、前記第2光拡散剤の平均粒径をD2とすると、粒径がD1であり前記第1基材中の最入光側に配置された第1光拡散剤へ、光学シートのシート面に直交する方向から、入射した光束が第1光拡散剤から出射した後であって集光する前に通過する領域内に、粒径がD2であり前記第2基材中の最出光側に配置された第2光拡散剤が入り込み得るよう、光学シートのシート面に直交する方向に沿った前記第1基材の入光側面から前記第2基材の出光側面までの長さが設定されていることを特徴とする請求項8乃至16に記載の光学シート。
【請求項18】
前記第1光拡散剤の平均粒径をD1とし、前記第2光拡散剤の平均粒径をD2とし、粒径がD1である第1光拡散剤の焦点距離をF1とすると、光学シートのシート面に直交する方向に沿った前記第1基材の入光側面から前記第2基材の出光側面までの長さL1は、以下の式(6)を満たすことを特徴とする請求項8乃至17のいずれか一項に記載の光学シート。
L1≦(F1×(D1−D2)/D1)+(D1+D2)/2
・・・式(6)
【請求項19】
前記第1光拡散剤の屈折率をnc1とし、前記第1基材の屈折率をnaとして、以下の式(7)によって得られた値を、前記粒径がD1である第1光拡散剤の焦点距離F1の値とすることを特徴とする請求項18に記載の光学シート。
F1=D1×tan(sin-1(na/nc1))/2 ・・・式(7)
【請求項20】
前記第1光拡散剤の平均粒径をD1とし、前記第2光拡散剤の平均粒径をD2とすると、粒径がD1であり前記第1基材中の最出光側に配置された第1光拡散剤へ、光学シートのシート面に直交する方向から、入射した光束が第1光拡散剤から出射して集光した後に通過する領域内に、粒径がD2であり前記第2基材中の最入光側に配置された第2光拡散剤が入り込み得るよう、光学シートのシート面に直交する方向に沿った前記第1基材の出光側面から前記第2基材の入光側面までの長さが設定されていることを特徴とする請求項8乃至16のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項21】
前記第1光拡散剤の平均粒径をD1とし、前記第2光拡散剤の平均粒径をD2とし、粒径がD1である第1光拡散剤の焦点距離をF1とすると、光学シートのシート面に直交する方向に沿った前記第1基材の出光側面から前記第2基材の入光側面までの長さL2は、以下の式(8)を満たすことを特徴とする請求項8乃至16および20のいずれか一項に記載の光学シート。
L2≧(F1×(D1+D2)/D1)−(D1+D2)/2 ・・・式(8)
【請求項22】
前記第1光拡散剤の平均粒径をD1とすると、
一つの第1光拡散剤と、前記一つの第1光拡散剤の中心と光学シートのシート面に直交する方向において重なる他の一つの第1光拡散剤のうち、前記一つの第1光拡散剤と光学シートのシート面に直交する方向に沿って隣り合う他の一つの第1光拡散剤と、の二つの第1光拡散剤における、光学シートのシート面に直交する方向に沿った当該二つの第1光拡散剤の中心間の平均離間距離が、粒径がD1である第1光拡散剤の焦点距離の2倍以上であることを特徴とする請求項1乃至21のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項23】
前記第1光拡散剤の平均粒径をD1とし、前記第1光拡散剤を含んだ前記第1基材中における前記第1光拡散剤の重量比をC1とし、前記第1光拡散剤の比重をSc1とし、前記第1光拡散剤を含んだ前記第1基材の比重をSa1とし、前記第1基材の厚みをT1とし、粒径がD1である第1光拡散剤の焦点距離をF1とすると、以下の式(9)が満たされることを特徴とする請求項8乃至22のいずれか一項に記載の光学シート。
2×F1≦T1/(((3×T1×C1×Sa1)/(2×D1×Sc1))+1) ・・・式(9)
【請求項24】
前記第1光拡散剤の平均粒径をD1とすると、
一つの第1光拡散剤と、前記一つの第1光拡散剤の中心と光学シートのシート面に直交する方向において重なる他の一つの第1光拡散剤のうち、前記一つの第1光拡散剤と光学シートのシート面に直交する方向に沿って隣り合う他の一つの第1光拡散剤と、の二つの第1光拡散剤における、光学シートのシート面に直交する方向に沿った当該二つの第1光拡散剤の中心間の平均離間距離が、粒径がD1である第1光拡散剤の焦点距離の3倍以上であることを特徴とする請求項8乃至21のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項25】
前記第1光拡散剤の平均粒径をD1とし、前記第1光拡散剤を含んだ前記第1基材中における前記第1光拡散剤の重量比をC1とし、前記第1光拡散剤の比重をSc1とし、前記第1光拡散剤を含んだ前記第1基材の比重をSa1とし、前記第1基材の厚みをT1とし、粒径がD1である第1光拡散剤の焦点距離をF1とすると、以下の式(10)が満たされることを特徴とする請求項8乃至21および24のいずれか一項に記載の光学シート。
3×F1≦T1/(((3×T1×C1×Sa1)/(2×D1×Sc1))+1) ・・・式(10)
【請求項26】
前記第1光拡散剤の屈折率をnc1とし、前記第1基材の屈折率をnaとし、前記第1基材の屈折率に対する前記第1光拡散剤の屈折率の比をxa(=nc1/na)として、以下の式(11)によって得られた値を、前記粒径がD1である第1光拡散剤の焦点距離F1の値とすることを特徴とする請求項18,21,23および25のいずれか一項に記載の光学シート。
F1=D1×
(exp(7xa4)−6exp(7xa)+exp(8xa)−7exp(7xa)+2exp(7))/2
・・・式(11)
【請求項27】
前記第2光拡散剤の平均粒径をD2とすると、
一つの第2光拡散剤と、前記一つの第2光拡散剤の中心と光学シートのシート面に直交する方向において重なる他の一つの第2光拡散剤のうち、前記一つの第2光拡散剤と光学シートのシート面に直交する方向に沿って隣り合う他の一つの第2光拡散剤と、の二つの第2光拡散剤における、光学シートのシート面に直交する方向に沿った当該二つの第2光拡散剤の中心間の平均離間距離が、粒径がD2である第2光拡散剤の焦点距離の2倍以上であることを特徴とする請求項1乃至26のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項28】
前記第2光拡散剤の平均粒径をD2とし、前記第2光拡散剤を含んだ前記第2基材中における前記第2光拡散剤の重量比をC2とし、前記第2光拡散剤の比重をSc2とし、前記第2光拡散剤を含んだ前記第2基材の比重をSa2とし、前記第2基材の厚みをT2とし、粒径がD2である第2光拡散剤の焦点距離をF2とすると、以下の式(12)が満たされることを特徴とする請求項8乃至27のいずれか一項に記載の光学シート。
2×F2≦T2/(((3×T2×C2×Sa2)/(2×D2×Sc2))+1)・・・式(12)
【請求項29】
前記第2光拡散剤の平均粒径をD2とすると、
一つの第2光拡散剤と、前記一つの第2光拡散剤の中心と光学シートのシート面に直交する方向において重なる他の一つの第2光拡散剤のうち、前記一つの第2光拡散剤と光学シートのシート面に直交する方向に沿って隣り合う他の一つの第2光拡散剤と、の二つの第2光拡散剤における、光学シートのシート面に直交する方向に沿った当該二つの第2光拡散剤の中心間の平均離間距離が、粒径がD2である第2光拡散剤の焦点距離の3倍以上であることを特徴とする請求項1乃至26のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項30】
前記第2光拡散剤の平均粒径をD2とし、前記第2光拡散剤を含んだ前記第2基材中における前記第2光拡散剤の重量比をC2とし、前記第2光拡散剤の比重をSc2とし、前記第2光拡散剤を含んだ前記第2基材の比重をSa2とし、前記第2基材の厚みをT2とし、粒径がD2である第2光拡散剤の焦点距離をF2とすると、以下の式(13)が満たされることを特徴とする請求項8乃至26および29のいずれか一項に記載の光学シート。
3×F2≦T2/(((3×T2×C2×Sa2)/(2×D2×Sc2))+1)・・・式(13)
【請求項31】
前記第2光拡散剤の屈折率をnc2とし、前記第2基材の屈折率をnbとし、前記第2基材の屈折率に対する前記第2光拡散剤の屈折率の比をxb(=nc2/nb)として、以下の式(14)によって得られた値を、前記粒径がD2である第2光拡散剤の焦点距離F2の値とすることを特徴とする請求項28または30に記載の光学シート。
F2=D2×
(exp(7xb4)−6exp(7xb)+exp(8xb)−7exp(7xb)+2exp(7))/2
・・・式(14)
【請求項32】
請求項1乃至31のいずれか一項に記載の光学シートを備えたことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項33】
請求項32に記載の透過型スクリーンを備えたことを特徴とする背面投射型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2008−32849(P2008−32849A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203748(P2006−203748)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】