説明

光学シート接面の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造

【課題】 密着性と傷付き性の相反する要求を両立して解消させることのできる、光学シート接面の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造を提供する。
【解決手段】 光学シート接面における10点平均の表面粗さを可視光の上限波長以上かつ1.0μm以下とした。また前記10点平均の表面粗さの下限値Dbminが、視感度の波長上限値λmaxと前記有効視野角の上限値θmaxとに基づいて算出された次式による算出値である。Dbmin=λmax(2cos(θmax))

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、拡散シートやレンズシートといった光学シートに接する光学シート接面において、緩衝縞抑制と低スクラッチとを両立させる緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のバックライトシステムにおいては、特許文献1に記載のように、光源(LED光源)と、液晶表示パネルをその裏面から照明する導光体の入射面との間に、フレネルレンズ状のレンズ面を有するレンズシートや、光を拡散させる拡散シートといった光学シートを重ね合わせて使用する。
【0003】
上記バックライトシステムの光学シート間或いは導光体と光学シート間の光学シート接面においては、重ね合わされる光学シート間の密着によって干渉縞が発生する問題がある。この干渉縞発生防止のために、従来、対向する光学シートのバックコート構造に微粒子ビーズを含んだものが存在した。例えば、光学シート間の一接面にコーテイング層を設け、このコーティング層は、透光性樹脂バインダーに、これより比重の小さい透光性ビーズを混合したインキを、上側にセットされた裏面に塗布し、比重差により透明ビーズをコーティング層の表面に浮上、偏在して硬化させ、表面から微小丘状突起を突出形成したものが存在した(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−289023号公報
【特許文献2】特開平11−95013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、密着性解消のために対向する光学シートに微粒子ビーズを含めると、この微粒子ビーズが、対向面に擦り傷を発生させる要因となる。すなわち、微粒子ビーズを多量に含むほど密着性が解消するとともに傷付き性の問題が大きくなり、密着性の解消と傷付き性の問題は相反する要求項目となる。
【0005】
そこで本発明は、密着性と傷付き性の問題といった相反する要求を両立して解消させることのできる、光学シート接面の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、下記(1)ないし(4)の手段を講じている。
【0007】
(1)この発明の光学シート接面の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造は、光学シート接面における10点平均の表面粗さを可視光の上限波長以上(0.5μm以上)かつ1.0μm以下としたことを特徴としている。
【0008】
(2)また前記光学シート接面の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造は、所定の有効視野角を有する液晶表示ユニット内の光学シートにおけるバックコート構造であって、光学シート接面における10点平均の表面粗さの下限値Rzminが、視感度の波長上限値λmaxと前記有効視野角の上限値θmaxとに基づいて算出された下記式による算出値であることが好ましい。
【0009】
(数1)Rzmin=λmax/(2cos(θmax))
すなわち光学シート接面における10点平均の表面粗さの下限値Rzminが、視感度の波長上限値λmaxを、前記有効視野角の上限値θmaxの余弦で除した値の半分であることが好ましい。さらにこの下限値Rzminとして、接面に散設された複数の透光性球体2の球径Dbの設定の下限値dbminを採用することが好ましい。
【0010】
(3)また前記光学シート接面の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造は、光学シート接面の全面に亘って均一塗工厚で塗工され硬化した透光性バインダー樹脂1と、透光性バインダー樹脂1に離散埋設した複数の透光性球体2とからなるバックコート構造であって、複数の透光性球体2の平均球径Dbが0.85μm以上1.65μm以下であることが好ましい。
【0011】
(4)また前記光学シート接面の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造は、透光性バインダー樹脂1の均一塗工厚が1μm以上7μm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0012】
なお前記光学シート接面の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造は、全光線透過率が所定値以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明の光学シート接面の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造は、上述のような構成を有しており、密着性の解消と傷付き性の問題といった相反する要求を両立して解消させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の好適な実施形態を、各実施形態を示す図面を参照して説明する。図1は、この発明の実施例1の光学シート接面の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造を用いたバックライトの構成を示した斜視分解説明図である。図2及び図3は、それぞれレンズシート40裏面に適用した実施例1、および拡散シート50裏面に適用した実施例2の光学シートの断面構造図である。図4は、光路差による干渉縞の発生のメカニズムを説明したバックコート構造の断面説明図であり、図5は、波長と視感度の関係を示すグラフであり、図6は、プリズムレンズの視野角対輝度特性を示すグラフである。
【0015】
この発明の光学シート接面の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造は、図1のように、光源と導光体60の間であって、光学シート接面、すなわち重ねあわされる光学シート同士、或いは光学シートと導光体60の間の接面のいずれかに用いられる。光学シート接面とは具体的には、レンズシート40の上に重ねあわされる上拡散シート51についていえば、レンズシート40のレンズ部分と接する上拡散シート51裏面である。また下拡散シート52の上に重ねあわされるレンズシート40についていえば、下拡散シート52の上面と接するレンズシート40裏面である。また導光体60の上に重ねあわされる下拡散シート52について言えば、導光体60の上面と接する下拡散シート52の裏面である。本発明のバックコート構造は、これらのいずれの接面に或いはその複数の接面に採用しても良い。
【0016】
但し上記の中で、導光体60の上面と接する下拡散シート52の裏面のバックコート構造とすることが好ましい態様の一つといえる。これは、下拡散シート52の接面は対向する接面がフラットに近い導光体60であるため、本発明による平均粗さの値調節による効果が顕著に現れるためである。
【0017】
或いは上記の中で、バックライトユニットにおいて多数重ねられる光学シートにおいて、最も上部に現れる光学シート、例えば上拡散シート51の裏面のバックコート構造とすることも、好ましい別の態様の一つといえる。これは、最も上部の上拡散シート51の裏面において緩衝縞を解消することで表示面への緩衝縞の発生を確実に防ぐことができるからである。
【0018】
図2は、この発明の実施例1の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造を用いた光学シートの断面説明図である。実施例1の光学シートは基材部3の上面にプリズムレンズ部4を連設したレンズシート40であり、同レンズシート40の裏面であって拡散シート50等と接する裏接面に、本発明の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造を設けている。
【0019】
図3は、この発明の実施例2の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造を用いた光学シートの断面説明図である。実施例2の光学シートは基材部3の上面に光拡散用の凹凸構造部5を設けた拡散シート50であり、同拡散シート50の裏面であってレンズシート40等と接する裏接面に、本発明の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造を設けている。
【0020】
(具体的構成)
本発明の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造は、バックコートあるいはマット処理と言われるものであり、具体的構成として、光学シート接面の全面に亘って均一塗工厚で塗工され、その後表面揮発と共に硬化した透光性バインダー樹脂11と、透光性バインダー樹脂1内においてランダムに離散して埋設した複数の透光性球体22とからなる。透光性球体22は、光学シート接面の密着性を解消する手段として配設された微粒子ビーズであり、透光性バインダー樹脂11のコーティングによって層形成された中に散設してなる。
【0021】
透光性バインダー樹脂11は表面揮発によって塗工時よりも厚さが減少した形で硬化する。この減少量は、透光性球体22の球径Dbの50%〜70%程度の範囲内、更には6割程度であることが好ましい。
【0022】
このバックコートの透光性球体22の球径Dbすなわちビーズ径と、コーティング後の表面粗さとを制御して、傷つき性も同時に解消することとしたのが本発明である。すなわち本発明は10点平均粗さRz(10)とビーズ径、そして視感度の上限と有効視野角に着目して、傷つき性という課題を確実に解消したものとしている。
【0023】
(10点平均粗さ)
10点平均の表面粗さRz(10)は数式2のように設定している。
【0024】
(数2)1μm≧Rz(10)≧0.5μm
ここで実施例においては、接面に散設した透光性球体によって表面粗さRzが設定され、さらに表面粗さRzと透光性球体の球径Dbとが一定の比例関係(Dbの六割がRz)にあるため、この表面粗さRzを、接面に散設した透光性球体の球径Dbに換算することができる。
【0025】
数式2の下限は密着性即ちシート面法線に対し±45°の視野角内で干渉縞発生を抑制するためのシート間隔条件であり、45°方向から観察した時のシート間隔が可視光上限波長の1/2波長であることに基づく。また数式2の上限は傷つき性を解消するための表面粗さの条件である。
【0026】
干渉縞は、理論上は可視光の半波長λ/2となるときを原始単位として、GAPすなわち光路差が半波長λ/2の整数倍となるごとに発生する。
【0027】
上記を換言するに、図4に示すように近接する反射面1と反射面2とを考えたとき、2つの反射面それぞれに反射する光の光路差は2h*cosθである。そして、この光路差2h*cosθが波長λの整数倍mλとなるときに明るくなり、波長λの整数倍mλプラスλ/2となるときに暗くなることで干渉縞(等高線)が発生する。このことから発生する干渉縞(等高線)の間隔hは、λ/(2*cosθ)となる。特に垂直入射の場合はh=λ/2である。
【0028】
但し実際には、波長が短い短波長すなわち高調波のときは減衰によって見えなくなり、長波長すなわち低調波のときは反射しやすいため見えなくなる。これらに基づいて、GAPすなわち光路差が大きいと干渉縞は出ない。
【0029】
(干渉縞と視野角特性)
干渉縞については外光による干渉縞とバックライト光による干渉縞がある。このうち外光は液晶パネル20で十分減光されるため、外光による干渉縞は問題とはならず、したがってバックライト光による干渉縞が問題となる。ここで実際には、明るいところで順応する視感度(図5)とプリズムレンズの視野角特性(図6)が問題になる。明るいところの視感度ピークは、図5に示すように555nm、683lm/Wであり、表示に有効な視野角は図6に示すように±45°内ということができる。
【0030】
本発明ではバックライト光による干渉縞が問題となることに基づき、明るいところで順応するし感度の波長上限と、レンズの有効な視野角の上限に着目して、接面の表面粗さRzの下限値を最適値とすることに思到した。
【0031】
すなわち、Rzmin=λmax/(2cos(θmax))であること、すなわち光学シート接面における10点平均の表面粗さの下限値Rzminが、視感度の波長上限値λmaxを、前記有効視野角の上限値θmaxの余弦で除した値の半分であることが好ましい。
【0032】
干渉縞と波長・入射角・間隔の関係は下記表1のようになる。
【0033】
【表1】

(球径Db)
一方、光路差たるGAPが大きいと干渉縞は発生しにくいものの、透光性球体2すなわちビーズ径Dbが大きすぎると、傷つきやすいものとなる。このため上限値を設定することが必要である。この見地に基づき、球径Dbすなわちビーズ径は数式3のように設定している。
【0034】
(数3)1.65μm≧Db≧0.85μm
数式3は通常、表面粗さとビーズ径は一般的にRz(10)=Db×60%であることによる。
【0035】
(対比試験)
対比試験として、Db=5,3,2.5,1.8,1.5,1.2μmとした6種類のそれぞれについて、干渉縞および傷つき性を対比した。その結果を表2に示す。表2より、ビーズ径1.5,1.2μmが干渉縞および傷つき性共に良好な結果が得られたことが理解できる。
【0036】
【表2】

また、本バックコート構造を採用した場合の各ヘイズ値における透過率は、所定値以上であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施例1の光学シート接面の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造を用いたバックライトシステムの構成を示した斜視分解配置説明図。
【図2】レンズシート40裏面に適用した実施例1の光学シート接面の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造を用いたバックライトの構成の断面構造図。
【図3】拡散シート50裏面に適用した実施例2の光学シート接面の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造を用いたバックライトの構成の断面構造図。
【図4】光路差による干渉縞の発生のメカニズムを説明したバックコート構造の断面説明図。
【図5】波長と視感度の関係を示すグラフ。
【図6】プリズムレンズの視野角対輝度特性を示すグラフ。
【符号の説明】
【0038】
1 透光性バインダー樹脂
2 透光性球体
3 基材部
4 プリズムレンズ部
5 凹凸構造部
10 表偏光シート
20 液晶パネル
30 裏偏光シート
40 レンズシート
41 縦配列レンズシート
42 横配列レンズシート
50 拡散シート
51 上拡散シート
52 下拡散シート
60 導光体
70 光源ユニット
80 反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学シート接面における10点平均の表面粗さを可視光の上限波長以上かつ1.0μm以下としたことを特徴とする光学シート接面の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造。
【請求項2】
所定の有効視野角を有する液晶表示ユニット内の光学シートにおけるバックコート構造であって、光学シート接面における10点平均の表面粗さの下限値Rzminが、視感度の波長上限値λmaxと前記有効視野角の上限値θmaxとに基づく下式の算出値である請求項1記載の光学シート接面の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造。
Rzmin=λmax/(2cos(θmax))
【請求項3】
光学シート接面の全面に亘って均一な塗工厚で塗工され硬化した透光性バインダー樹脂と、透光性バインダー樹脂に離散埋設した複数の透光性球体とからなるバックコート構造であって、複数の透光性球体の平均球径が0.85μm以上1.65μm以下である請求項1または2記載の光学シート接面の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造。
【請求項4】
透光性バインダー樹脂の均一な塗工厚が1μm以上7μm以下の範囲内にある請求項3記載の光学シート接面の緩衝縞抑制低スクラッチバックコート構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−175646(P2009−175646A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16853(P2008−16853)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(591018660)サンテックオプト株式会社 (11)
【Fターム(参考)】