説明

光学シート用エネルギー線硬化型樹脂組成物及びその硬化物

【課題】
離型性、型再現性、安定性、基板フィルムとの密着性に優れ、基材上に成型する光学シートに適した樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
ポリエーテルグリコール構造を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、芳香族環を有しない単官能(メタ)アクリレート、及び、光重合開始剤を含み、エネルギー線を照射せしめて得られる硬化物の屈折率が導光板の屈折率の±0.02である光学シート用エネルギー線硬化型樹脂塑性物。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
紫外線硬化型樹脂組成物は、液晶表示装置に搭載されている光学シート、例えば、拡散シート、ARフィルム、導光板、プリズムレンズシートや、プロジェクションテレビ等に使用されるフレネルレンズ、レンチキュラーレンズに用いられている。
【0002】
LED化されている光源では、導光板のみでは液晶表示装置全体を一様な輝度とすることができないため、導光板上に光学シートが設けられている。導光板上に用いられる光学シートは、光源のムラの除去、ディスプレイの視域の確保、ディスプレイの剛性の維持などの様々な機能の他、導光板の基板そのものとの密着性が求められる。これは液晶表示装置が運搬されたり、用いられるにあたり、剥離して他の部材と接触や摩擦がおきて光学シートそのものが損傷を受ける可能性、または、光源からの発熱等によりで基板上の光学シートが変形し、剥離してしまう可能性があるためである。このため、光学シートと導光板の密着性を向上させることを目的として各種検討が行われてきている。
【0003】
密着性向上については基材側、或いは、樹脂組成物側から技術検討が重ねられており、必要な密着力を発現することは容易に可能である。例えば特許文献1及び特許文献2には密着性に優れた光学シート用樹脂組成物が記載されている。しかしながら、導光板の基板として用いられるポリメチルメタクリレートに代表されるアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の透明樹脂は既存の光学シート、特に、無溶剤型紫外線硬化型樹脂組成物から得られる光学シートを密着させることが難しい。また、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の透明樹脂自体の屈折率と光学シートの屈折率が乖離していると、輝度が落ちたり、光が使用者側に反射しないなどの問題がある。しかしながら、既存の光学シートの屈折率は高く、導光板用の光学シートとしては不適であった。また、一般的に基材密着性に優れるとされるウレタンプレポリマーを含む樹脂組成物は低温での安定性が悪く、結晶化してしまう点も問題があった。特許文献3には低温での安定性が高いウレタンプレポリマーが記載されているが、屈折率、密着性を兼ね備えた樹脂組成物が得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−106046号公報
【特許文献2】特開2010−189534号公報
【特許文献3】特開平8−104724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂を材質とする基材との密着性と樹脂組成物の低温における安定性に優れ、かつ、導光板の基材との屈折率が乖離しない光学シートに適した樹脂組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究の結果、特定の組成を有する紫外線硬化性樹脂組成物及びその硬化物が前記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は
(1)下記一般式(1)または、(1)及び(2)で表されるポリエーテルグリコール構造を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)、芳香族環を有しない単官能(メタ)アクリレート(B)、及び、光重合開始剤(C)を含み、エネルギー線を照射せしめて得られる硬化物の屈折率が導光板の屈折率の±0.02である光学シート用エネルギー線硬化型樹脂組成物、
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R、Rは水素原子またはメチル基を表し、R、Rのうち一つはメチル基である。)
【0011】
(2)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)を30〜70質量部、芳香族環を有しない単官能(メタ)アクリレート(B)を30〜70質量部、光重合開始剤(C)を3〜15質量部含む(1)に記載の光学シート用エネルギー線硬化型樹脂組成物、
(3)芳香族環を有さない複数の反応性基を有する(メタ)アクリレートモノマー(D)を含む(1)又は(2)に記載の光学シート用エネルギー線硬化型樹脂組成物、
(4)有機または無機のフィラーを含む(1)乃至(3)の何れか一項に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物、
(5)フィラーが金属酸化物である(4)に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物、
(6)ポリメチルメタクリレート基材上に成型する(1)乃至(5)の何れか一項に記載の光学シート用エネルギー線硬化型樹脂組成物、
(7)E型粘度計で測定した25℃での粘度が2000〜20000mPa・sである(1)乃至(6)のいずれか一項に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物、
(8)(1)乃至(7)の何れか一項に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化せしめて得られる硬化物、
(9)(8)に記載の硬化物を有する光学シート、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂組成物は、安定性が良く、硬化性、プラスチック基材、特にアクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂を素材とする基材との密着性が良い。そのため特にレンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ、パターニングされた導光板等の基材上に設けられる反射ドットに適している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の樹脂組成物に含有されるポリエーテルグリコール構造を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)とは、前記一般式(1)または、(1)及び(2)で表されるポリエーテルグリコール構造を有するものであり、例えば、ジオール化合物と有機ポリイソシアネートを反応させ、次いで水酸基含有(メタ)アクリレートを付加した反応物等が挙げられる。
【0014】
本発明において利用することのできるジオール化合物は、下記一般式(3)又は(4)で表されるものである。例えば、ポリテトラメチレングリコール、3−メチルテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0015】
【化3】

【0016】
【化4】

【0017】
(式中、R、Rは水素原子またはメチル基を表し、R、Rのうち一つはメチル基である。また、m及びnは、それぞれ独立して9〜50の正数を表す)
【0018】
本発明において利用することのできる有機ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の鎖状飽和炭化水素イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等の環状飽和炭化水素イソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート等を挙げることができ、環構造を有するイソシアネートが好ましく、中でもトリレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0019】
本発明において利用することのできる水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0020】
本発明に使用するポリエーテルグリコール構造を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、前記ジオール化合物と有機ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを用いて常法で合成することにより得ることができる。例えば、ジオール化合物と有機ポリイソシアネートとを付加することにより反応物(I)を得て、次いで反応物(I)に水酸基含有(メタ)アクリレートを付加することによりウレタン(メタ)アクリレートが得られる。
【0021】
反応物(I)の合成に際しては、前記ジオールの水酸基1当量に対して、有機ポリイソシアネートのイソシアネート基1.1〜2.0当量を反応させることが好ましく、1.3〜2.0当量を反応させることが特に好ましい。反応温度は、60〜100℃が好ましい。イソシアネート基が反応前の5.0質量%以下となったときを反応終点とする。
【0022】
なお反応に際しては粘度を下げるために、反応に関与しない化合物を希釈剤として添加することも出来る。具体的には、水酸基を持たない構造の(メタ)アクリレートを希釈剤として用いることができる。
【0023】
反応物(I)と水酸基含有(メタ)アクリレートの反応においては、反応物(I)のイソシアネート基1当量あたり、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基0.95〜1.1当量を反応させることが好ましい。反応温度は、60〜100℃が好ましい。イソシアネート基が反応前の0.1質量%以下となったときを反応終点とする。なお、これら反応を促進するために、例えば、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン等の第3級アミン類、ジブチルスズラウリレート、ジオクチルスズラウリレート等のジラウリレート化合物を触媒として用いることができる。触媒の添加量は反応混合物全体に対して0.001〜5質量%であることが好ましく、0.01〜1質量%であることが特に好ましい。また、反応中の重合を防止するために、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−メトキシフェノール、p−ベンゾキノン等の重合禁止剤を用いることができる。重合禁止剤の添加量は反応混合物全体に対して0.001〜5質量%であることが好ましく、0.01〜1質量%であることが特に好ましい。なお、本発明の樹脂組成物においては、テトラメチレングリコール構造を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は単独で用いても良いし、複数種を混合して用いても良い。
【0024】
本発明の樹脂組成物に使用する芳香族環を有しない単官能(メタ)アクリレート(B)としては、以下のものが挙げることができる。イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート、イミド環構造を有するイミド(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0025】
本発明の樹脂組成物に含有される光重合開始剤(C)としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシド等のホスフィンオキサイド類等を挙げることができる。好ましくは、アセトフェノン類であり、さらに好ましくは2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンを挙げることができる。なお、本発明の樹脂組成物においては、光重合開始剤(C)は単独で用いてもよく、複数を用いてもよい。
【0026】
芳香族環を有さない複数の反応性基を有する(メタ)アクリレート(D)としては、2官能(メタ)アクリレート、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0027】
2官能(メタ)アクリレートとしては、ヒドロピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジアクリル化イソシアヌレート等のイソシアネートのアクリル化物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等の直鎖メチレン構造を有する(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールのジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0028】
分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート環を有する多官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの多官能(メタ)アクリレート、前記の(メタ)アクリレートが(ポリ)エチレンオキサイド、(ポリ)プロピレンオキサイド、(ポリ)カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0029】
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、ジオール化合物と二塩基酸又はその無水物との反応物であるポリエステルジオールと、(メタ)アクリル酸の反応物等が挙げられる。
【0030】
本発明の樹脂組成物の各成分の使用割合は、所望の屈折率やガラス転移温度(Tg)や粘度や密着性等を考慮して決められるが、成分(A)+成分(B)を100質量部とした場合に、成分(A)の含有量は30〜70質量部であり、好ましくは40〜60質量部である。成分(B)の含有量は30〜70質量部であり、好ましくは40〜60質量部である。成分(C)は成分(A)+成分(B)総量100質量部に対して、3〜15質量部であり、好ましくは5〜10質量部である。成分(D)の含有量は成分(A)+成分(B)総量100質量部に対して、0〜40質量部である。
【0031】
本発明の樹脂組成物には、前記成分以外に取り扱い時の利便性等を改善するために、離型剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤、酸化防止剤、重合禁止剤、帯電防止剤等を状況に応じて併用して含有することができる。更に、必要に応じて、アクリルポリマー、ポリエステルエラストマー、ウレタンポリマー及びニトリルゴム等のポリマー類も添加することができる。溶剤を加えることもできるが、溶剤を添加しないものが好ましい。
【0032】
本発明の樹脂組成物は、各成分を常法に従い混合溶解することにより調製することができる。例えば、撹拌装置、温度計のついた丸底フラスコに各成分を仕込み、40〜80℃にて0.5〜6時間撹拌することにより得ることができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物の粘度は、基材上に成型する光学レンズを製造する際の形状の転写性や加工性の作業性に適した粘度として、E型粘度計(TV−200:東機産業社製)を用いて測定した粘度が25℃で2000〜20000mPa・sである組成物が好ましい。
【0034】
本発明の樹脂組成物はエネルギー線によって容易に硬化させることができる。ここでエネルギー線の具体例としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、レーザー光線等の電磁波、アルファー線、ベータ線、電子線等の粒子線等が挙げられる。本発明においては、これらのうち、紫外線、レーザー光線、可視光線、または電子線が好ましい。
【0035】
常法に従い、本発明の樹脂組成物に前記エネルギー線を照射することにより、本発明の硬化物を得ることができる。本発明の硬化物の屈折率は通常、導光板の基材であるアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂又はシクロオレフィン系樹脂の屈折率±0.02である。±0.02を超えると輝度が低下したり、光が使用者側に飛ばなくなる。導光板の基材がアクリル樹脂、特にPMMAの場合は本発明の硬化物の屈折率は通常1.47〜1.51であり、好ましくは1.48〜1.50である。本発明の硬化物の屈折率はポリカーボネート樹脂の場合は通常1.54〜1.59である。本発明の硬化物の屈折率はシクロオレフィン系樹脂の場合は通常1.50〜1.56である。屈折率はアッベ屈折率計(型番:DR−M2、(株)アタゴ製)等で測定することができる。
【0036】
本発明の硬化物は光学レンズシートとしても用いられる。光学レンズシートとしてはレンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、フレネルレンズ等が挙げられる。光学レンズシートとして用いる場合、例えば、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ等の形状を有するスタンパー上に塗布して本発明の樹脂組成物の層を設け、その層の上に透明基材を接着させ、次いで該透明基材側またはスタンパー側から高圧水銀灯等によりエネルギー線を照射して該樹脂組成物を硬化させた後、該スタンパーから剥離して得ることができる。
【0037】
本発明の硬化物を反射ドットとしてを導光板上に設けるには、例えば、導光板の基材にスクリーン印刷により本発明の樹脂組成物の層を設け、エネルギー線を照射して該樹脂組成物を硬化させて得ることができる。また、立体形状を設けるには、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ等の形状を有するスタンパー上に塗布して該樹脂組成物の層を設け、その層の上に透明基材である導光板を接着させ、次いで該透明基材側またはスタンパー側から高圧水銀灯等によりエネルギー線を照射して該樹脂組成物を硬化させた後、該スタンパーから剥離して得ることでもできる。
【0038】
本発明において用いられる導光板の基材の材質はエネルギー線を透過せしめ、かつ、液晶表示装置の光源からの光を全反射する性質を有するものであれば特段限定はない。本発明においては透明基材であるアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及び、シクロオレフィン系樹脂が挙げられる。アクリル樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA;屈折率:1.49)が挙げられ、株式会社クラレ製:パラルーナSタイプ A2、日東樹脂工業株式会社製:クラレックス DR−IV、住友化学株式会社製:スミルックシリーズなどが市場より入手可能である。ポリカーボネート樹脂(PC)としては三菱ガス化学株式会社製:ユーピロン H−3300、ユーピロン H−3700、ユーピロン H−4000、・住化スタイロンポリカーボネート株式会社製:SDポリカ SD2201W、SDポリカ SD2221W、帝人化成株式会社製:パンライト AD5503などが市場より入手可能である。ポリカーボネート樹脂の場合は通常屈折率は1.56〜1.57である。シクロオレフィン系樹脂(COP)としては、日本ゼオン株式会社製ゼオノアなどが市場より入手可能である。シクロオレフィン系樹脂の場合は通常屈折率は通常1.52〜1.54である。
【実施例】
【0039】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、数値の単位「部」は質量部を示す。
【0040】
以下の実施例に示すような組成にて本発明の紫外線硬化型樹脂組成物及び硬化物を得た。合成例におけるイソシアネート基の質量比の分析は、滴定分析法で行った。
滴定分析法
(1)試料(ウレタンアクリレートオリゴマー)を0.1〜3.0g精秤し、MEK25mlを加えて試料を溶解させ、さらにN/2(0.5規定)のジブチルアミン/MEK溶液25mlを加える。
(2)30分間静置した後、メタノール150mlを加え、ブロムフェノールブルー指示薬を約0.2g加える。
(3)過剰量のアミンをN/2塩酸溶液で逆滴定し、イソシアネート基の質量比を算出する。
【0041】
合成例1
乾燥容器中に、PTG−3500L(保土谷化学工業(株)製:ポリテトラメチレングリコールと3−メチルテトラメチレングリコールの共重合ポリオール、数平均分子量3507、水酸基価32)を1672.7部、イソホロンジイソシアネート212.1部を仕込み、90℃で攪拌し、約13時間反応を行った。イソシアネート基が2.1質量%になったところで2−ビドロキシエチルアクリレート114.1部とp−メトキシフェノール1.0部とジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ0.2部を仕込み、80℃で約13時間反応を行い、イソシアネート基が0.1質量%以下になったところで反応を終了した。屈折率は1.469であった。
【0042】
合成例2
乾燥容器中に、PTG−2000L(保土谷化学工業(株)製:ポリテトラメチレングリコールと3−メチルテトラメチレングリコールの共重合体、数平均分子量2040、水酸基価55)を1497.1部、イソホロンジイソシアネートを326.2部仕込み、90℃で攪拌し、約13時間反応を行った。イソシアネート基が3.4質量%になったところで2−ビドロキシエチルアクリレート175.5部とp−メトキシフェノール1.0部とジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ0.2部を仕込んで80℃で約13時間反応を行い、イソシアネート基が0.1質量%以下になったところで反応を終了した。屈折率は1.475であった。
【0043】
樹脂組成物及び硬化膜についての評価方法及び評価基準は以下の通り行った。
(1)粘度:E型粘度計(TV−200:東機産業(株)製)を用い、25℃にて測定した。
【0044】
(2)屈折率(25℃):硬化した紫外線硬化性樹脂層の屈折率(25℃)をアッベ屈折率計(DR−M2:(株)アタゴ製)で測定した。
【0045】
(3)密着性:型再現性評価で用いたサンプルにて、JIS K5600−5−6に準じて密着性評価を行った。
評価結果は0〜2を○とし、3〜5を×とした。
【0046】
(4)安定性:10℃冷蔵保管にて結晶化等の変化が発生するか確認した。
評価結果は変化無しを○とし、変化有りを×とした。
【0047】
実施例1
成分(A)として合成例1で得た化合物を40部、成分(B)としてIBXA(大阪有機化学工業(株)製:イソボルニルアクリレート)を20部、同じく成分(B)としてアクリエステルHO(三菱レイヨン(株):メタクリル酸2−ヒドロキエチル)を30部、成分(C)としてIrgacure 184(BASFジャパン(株)製:1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン)を8部、成分(D)としてTPGDA(ダイセル・サイテック(株)製:トリプロピレングリコールジアクリレート)を10部、60℃に加温、混合し、本発明の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物に高圧水銀ランプで1000mJ/cmの照射量の紫外線を照射して硬化膜を得て屈折率を測定した。
また、この樹脂組成物をプリズムレンズ樹脂型の上に膜厚が約50μmになるように塗布し、その上に基材としてPMMA(三菱レイヨン(株)製:アクリライトL N865、2mm厚;屈折率1.490)を接着させ、更にその上から高圧水銀ランプで1000mJ/cmの照射量の紫外線を照射させ、硬化させた後剥離して、本発明の光学レンズシートを得た。
評価結果
粘度:14800mPa・s、屈折率:1.490、密着性:○、安定性:○
【0048】
実施例2
成分(A)としてKAYARAD UX−0937(日本化薬(株)製:ポリテトラメチレングリコールウレタンアクリレートオリゴマー;m=11〜12、n=0)を70部、成分(B)としてアクリエステルHOを30部、成分(C)としてIrgacure 184を8部、60℃に加温、混合し、本発明の樹脂組成物を得た。また、実施例1と同様にして得た樹脂層の屈折率を測定した。
得られた樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして本発明の光学レンズシートを得た。
評価結果
粘度:2400mPa・s、屈折率:1.517、密着性:○、安定性:○
【0049】
実施例3
成分(A)として合成例2で得た化合物を60部、成分(B)としてIBXAを10部、同じく成分(B)としてアクリエステルHOを10部、同じく成分(B)としてビスコートV#150(大阪有機化学工業(株)製:テトラヒドロフルフリルアクリレート)を10部、成分(C)としてIrgacure 184を8部、成分(D)としてTPGDAを10部、60℃に加温、混合し、本発明の樹脂組成物を得た。また、実施例1と同様にして得た樹脂層の屈折率を測定した。
得られた樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして本発明の光学レンズシートを得た。
評価結果
粘度:3400mPa・s、屈折率:1.497、密着性:○、安定性:○
【0050】
比較例1
特許文献1(特開2010−106046)の実施例に従い、該文献の合成例1のフルオレン骨格ジアクリレートを合成し、得られた化合物を5部、KAYARAD OPP−1を85部、Darocur 1173を3部、ACMO((株)興人製:アクリロイルモルフォリン)を10部、60℃に加温、混合し、樹脂組成物を得た。また、実施例1と同様にして得た樹脂層の屈折率を測定した。
得られた樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして光学レンズシートを得た。
評価結果
粘度:120mPa・s、屈折率:1.604、密着性:×、安定性:○
【0051】
比較例2
特許文献2(特開2010−189534)の実施例1に従いKAYRAD OPP−1を31部、文献中の合成例1で得た化合物を20部、Irgacure 184を3部、Speedcure TPO(DKSHジャパン(株)製:ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシドを0.1部、KAYARAD R−551(日本化薬(株)製:ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート)を20部、KAYARAD R−115(日本化薬(株)製:ビスフェノールAエポキシジアクリレート)を4部、アロニックスM−315(東亞合成(株)製:トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート)を18部、ACMO((株)興人製:アクリロイルモルホリン)を7部、60℃に加温、混合し、樹脂組成物を得た。また、実施例1と同様にして得た樹脂層の屈折率を測定した。
得られた樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして光学レンズシートを得た。
評価結果
粘度:900mPa・s、屈折率:1.587、密着性:×、安定性:○
【0052】
実施例1〜3及び比較例1〜2の評価結果から明らかなように、本発明の樹脂組成物は安定性、基板フィルムとの密着性が良好であり、その屈折率は基板の屈折率と近い。そのため他の光学シートとの接触によって発生する形状の欠点を抑制することができ、導光板上に成型する光学レンズシートに適している。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の紫外線硬化性樹脂組成物及びその硬化物は、主に、導光板上に成型される光学レンズシートに特に適するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)または、(1)及び(2)で表されるポリエーテルグリコール構造を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)、芳香族環を有しない単官能(メタ)アクリレート(B)、及び、光重合開始剤(C)を含み、エネルギー線を照射せしめて得られる硬化物の屈折率が導光板の屈折率の±0.02である光学シート用エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【化1】

【化2】

(式中、R、Rは水素原子またはメチル基を表し、R、Rのうち一つはメチル基である。)
【請求項2】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)を30〜70質量部、芳香族環を有しない単官能(メタ)アクリレート(B)を30〜70質量部、及び、光重合開始剤(C)を3〜15質量部含む請求項1に記載の光学シート用エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
芳香族環を有しない複数の反応性基を有する(メタ)アクリレートモノマー(D)を含む請求項1又は請求項2に記載の光学シート用エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
有機または無機のフィラーを分散させて得られる請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
フィラーが金属酸化物である請求項4に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
ポリメチルメタクリレート基材上に成型する請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の光学シート用エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
E型粘度計で測定した25℃での粘度が2000〜20000mPa・sである請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化せしめて得られる硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化物を有する光学シート。

【公開番号】特開2013−23678(P2013−23678A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163008(P2011−163008)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】