説明

光学シート用シリコーンゴム組成物及び光学シート

【解決手段】(A)下記平均組成式(I)
1aSiO(4-a)/2 (I)
(R1は同一又は異種の非置換又は置換の1価炭化水素基を示し、aは1.95〜2.05の正数。)
で表され、重合度が100以上のオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)比表面積が200m2/gを超える煙霧質シリカ 70〜150質量部、
(C)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.1〜30質量部、
(D)ヒドロシリル化反応触媒 0.1〜10質量部
を必須成分とする光学シート用ミラブルタイプのシリコーンゴム組成物。
【効果】本発明のシリコーンゴム組成物は、押し出し成形、カレンダー成形等が可能なミラブルタイプの材料であり、その硬化物はシリカを含有していても、高い透明性を持ち、集光型太陽電池の光学シート、及び携帯電話等のキーパッド照光用LEDバックライト装置の光導波板として最適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に集光型太陽電池の光学シートやLEDのバックライト装置の光学シートを形成するのに有用な光学シート用シリコーンゴム組成物及びその硬化物からなる光学シートに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電パネルの方式として、太陽光の受光面に通称セルと呼ばれる太陽電池を一面に敷き詰めた平板方式が多く用いられている。しかし、この受光面積に応じて敷き詰める太陽電池が高価なため、太陽光発電パネルのコストを下げることが困難であった。このような背景から、集光レンズにより、小径の太陽電池に太陽光の受光面での光を集光させる集光型太陽光発電パネルの開発が行われてきた。この集光型太陽光発電パネルは、光を数百倍に集光することで(例えば、特開2003−258291号公報:特許文献1参照)、平板方式に比較して、太陽電池の使用量を大幅に削減することができる。しかし、光を数百倍に集光させる集光型太陽光発電パネルでは、太陽光受光面を太陽光の向きに二軸で追尾することが必要となる。更には、この追尾のための架台も屋外での使用環境を考慮して、頑丈なものが求められるために、その設置費用を含めると、当初の高価な太陽電池の使用量を大幅に削減したコストメリットが相殺されている。このような理由から、現在、太陽光の追尾を簡便にして低コスト化を図る目的で、一軸での追尾あるいは追尾を行わない、集光レンズに樹脂製のフレネルレンズあるいは、プリズム型シートを配置して外部からの入射光を受光面に対し法線方向に集光したうえでその光を所定方向に反射、透過又は屈折によって配光し、更にその光を全反射により導光して最終的に入射光のエネルギー密度を高めることが提案されている(例えば、特開2009−229581号公報:特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、太陽光発電パネルが地球温暖化の問題の解決策として広く普及するためには、系統商用電力システムによる電力コストと拮抗する程の低コスト化が達成される必要がある。そのコストは太陽光発電パネルが100円/Wpと言われており、耐久性に優れ、かつ、材料費及びフレネルレンズ、プリズムレンズ等の太陽光集光部の形状の加工費用が安価であることが求められている。
【0004】
樹脂製のフレネルレンズ、プリズムレンズ等の太陽光集光部では、その材料として一般にはアクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂が用いられている。しかし、太陽光下で20年超の長期耐久性が求められる集光型太陽電池パネルでは、これらの汎用樹脂より更に紫外線耐性の高いシリコーン樹脂が好適である。しかし、フレネルレンズ、プリズムレンズ等の太陽光集光部形状に加工する場合、汎用で用いられるアクリル樹脂等と同じく、インジェクションモールディングにより金型に樹脂を注入し、成形後に製品を取り出す生産性の低い加工プロセスで生産するために生産性が低く、結果として、製造コストが高くなっていた。このような理由から、樹脂製のフレネルレンズ、プリズムレンズ等の太陽光集光部を用いて簡便・軽量な集光型太陽光発電パネルは実用化が困難となっていた。
【0005】
一方、携帯電話の高機能化に伴い、照光用バックライト装置にも薄型化、軽量化、高輝度化、コストダウンの要求が高まっており、液晶ディスプレイ(LCD)でも採用されている光導波板による照光用バックライト装置が提案されている。これは、LED光源と、該光源に対向する端面から光を内部に導入して拡散し、照光したいキー部分に設置した反射面で光を反射して反射光を外部に投射する光導波板から構成されている(特許文献3:特開2003−59321号公報参照)。この装置の特徴は、LEDを横方向に設置することで薄型化が可能になり、従来の裏側にLEDを設置したタイプに比べてLED個数を減少してもキーパッド全面を均一に、高輝度に照光可能となった。また、消費電力も低下したので電池の小型、軽量化も進み、低コスト化にも寄与した。
【0006】
また、LCDバックライト装置の光導波板は、光学的特性のみを要求されるが、キーパッド照光用バックライト装置の光導波板は、キー入力の変位(クリック)をスイッチング素子に伝達する役目も担うので、高透明であることに加え、弾性やその温度依存性が小さいこと、薄く均一な厚みで表面平滑なフィルムを成形できること等も必要となる。一般にアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂は高透明でフィルム成形性は良好であるが、弾性の温度依存性、特に低温領域では脆化のため、キー入力時にクラックが発生することがあった。そこで、LEDの封止材等の光学材料にも応用されている高透明なシリコーン系樹脂(特許文献4:特開2002−265787号公報、特許文献5:特開2006−202952号公報、特許文献6:特開2006−342200号公報参照)が低温特性に優れている点で注目された。しかしながらこれらに用いられている材料は液状タイプの材料であり、光導波板を製造する際の工程が煩雑となり、コストアップの要因となる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−258291号公報
【特許文献2】特開2009−229581号公報
【特許文献3】特開2003−59321号公報
【特許文献4】特開2002−265787号公報
【特許文献5】特開2006−202952号公報
【特許文献6】特開2006−342200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、特に一軸での追尾あるいは追尾を行なわなくとも集光可能な集光型太陽光電池の有機材料光学シートとして用いられて太陽光照射に対して耐久性が優れ、また、液状タイプに比べ、カレンダー成形、押し出し成形性に優れ、太陽光集光部形状の加工を簡便に行うことができ、集光型太陽電池の光学シート並びにLEDバックライト装置の光学シートとして好適な光学シートを得るための光学シート用ミラブルタイプのシリコーンゴム組成物、及びこれを硬化して得られる光学シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、光学シート用ミラブルタイプのシリコーンゴム組成物に、所定量以上の比表面積が200m2/gを超えるシリカを分散させることにより、シリカが充填された系でも高透明の材料が得られることを見出し、本発明に至ったものである。
【0010】
即ち、本発明は下記光学シート用ミラブルタイプのシリコーンゴム組成物及び光学シートを提供する。
請求項1:
(A)成分として下記平均組成式(I)
1aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、R1は同一又は異種の非置換又は置換の1価炭化水素基を示し、aは1.95〜2.05の正数である。)
で表され、重合度が100以上のオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)比表面積が200m2/gを超える煙霧質シリカ 70〜150質量部、
(C)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.1〜30質量部、
(D)ヒドロシリル化反応触媒 0.1〜10質量部
を必須成分とすることを特徴とする光学シート用ミラブルタイプのシリコーンゴム組成物。
請求項2:
集光型太陽電池の光学シート用である請求項1記載のシリコーンゴム組成物。
請求項3:
LEDのバックライト装置の光学シート用である請求項1記載のシリコーンゴム組成物。
請求項4:
(B)成分が、表面処理されたシリカであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
請求項5:
シリカの表面処理剤がヘキサメチルジシラザンである請求項4記載のシリコーンゴム組成物。
請求項6:
該シリコーンゴム組成物の厚さ2mmの硬化物シートの全光線透過率が90%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
請求項7:
該シリコーンゴム組成物の厚さ2mmの硬化物フィルムのヘイズ値が10以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
請求項8:
請求項1〜7のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物の硬化物からなる光学シート。
請求項9:
請求項1〜7のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物をカレンダーロール加工又は押し出し成形加工することにより形成された請求項8記載の光学シート。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシリコーンゴム組成物は、押し出し成形、カレンダー成形等が可能なミラブルタイプの材料であり、その硬化物はシリカを含有していても、高い透明性を持ち、集光型太陽電池の光学シート、及び携帯電話等のキーパッド照光用LEDバックライト装置の光導波板として最適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】集光型太陽電池の光学シートの一例を示す断面図である。
【図2】LEDバックライト装置の光学シートの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のシリコーンゴム組成物において、(A)成分は下記平均組成式(I)で表される重合度が100以上のオルガノポリシロキサンである。
1aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、R1は同一又は異種の非置換又は置換の1価炭化水素基を示し、aは1.95〜2.05の正数である。)
【0014】
上記平均組成式(I)中、R1は同一又は異種の非置換又は置換の1価炭化水素基を示し、通常、炭素数1〜12、特に炭素数1〜8のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、シクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基、あるいはこれらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換した基が挙げられ、メチル基、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましく、特にメチル基、ビニル基が好ましい。
【0015】
具体的には、該オルガノポリシロキサンの主鎖がジメチルシロキサン単位の繰り返しからなるもの、又はこの主鎖を構成するジメチルシロキサン単位の繰り返しからなるジメチルポリシロキサン構造の一部にフェニル基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等を有するジフェニルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位、メチルビニルシロキサン単位、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン単位等を導入したもの等が好適である。
【0016】
特に、オルガノポリシロキサンは、1分子中に2個以上のアルケニル基、シクロアルケニル基等の脂肪族不飽和基を有するものが好ましく、特にビニル基であることが好ましい。この場合、全R1中0.01〜20モル%、特に0.02〜10モル%が脂肪族不飽和基であることが好ましい。なお、この脂肪族不飽和基は、分子鎖末端でケイ素原子に結合していても、分子鎖の途中のケイ素原子に結合していても、その両方であってもよいが、少なくとも分子鎖末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。また、aは1.95〜2.05、好ましくは1.98〜2.02、より好ましくは1.99〜2.01の正数である。
【0017】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、分子鎖末端がトリメチルシロキシ基、ジメチルフェニルシロキシ基、ジメチルヒドロキシシロキシ基、ジメチルビニルシロキシ基、メチルジビニルシロキシ基、トリビニルシロキシ基等のトリオルガノシロキシ基で封鎖されたものを好ましく挙げることができる。
特に好ましいものとしては、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルビニルポリシロキサン、メチルトリフルオロプロピルビニルポリシロキサン等を挙げることができる。
【0018】
このようなオルガノポリシロキサンは、例えばオルガノハロゲノシランの1種又は2種以上を(共)加水分解縮合することにより、あるいは環状ポリシロキサン(シロキサンの3量体、4量体等)をアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。これらは基本的に直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、(A)成分としては、分子量(重合度)や分子構造の異なる2種又は3種以上の混合物であってもよい。
【0019】
なお、上記オルガノポリシロキサンの重合度は100以上、好ましくは100〜100,000、特に好ましくは3,000〜20,000である。なお、この重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によるポリスチレン換算の重量平均重合度として測定することができる。
【0020】
(B)成分のBET比表面積200m2/gを超える補強性シリカは、透明性に優れ、また機械的強度の優れたゴム組成物を得るために添加されるものである。この場合、シリコーンゴム組成物の透明性向上のため、BET比表面積が200m2/gを超える必要があり、好ましくは250m2/g以上である。BET比表面積が200m2/g以下だと、硬化物の透明性が低下してしまう。なお、その上限は特に制限されないが、通常500m2/g以下である。
【0021】
通常、シリコーンゴム組成物に使用されるシリカとしては煙霧質シリカ、沈降シリカ等が挙げられるが、沈降シリカを用いると透明性が低下するため、煙霧質シリカが用いられる。
【0022】
また、これらの表面をクロロシラン、アルコキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等で疎水化処理したものも好適に用いられる。特にヘキサメチルジシラザンによる処理が、透明性が高くなり、好ましい。
【0023】
なお、このようなヘキサメチルジシラザン等のシリカ表面処理剤は、これを用いて予めシリカの表面処理したものを(A)成分と配合するようにしてもよく、あるいは(A)成分をシリカと混練する際に表面処理剤を配合し、混練することで、シリカの表面処理を行うようにしてもよい。この場合、表面処理剤の使用量は、煙霧質シリカ100質量部に対して0.1〜20質量部とすることが好ましい。
【0024】
(B)成分の補強性シリカの添加量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して、70〜150質量部、特に70〜120質量部である。70質量部未満だと、シリコーンゴムコンパウンドを硬化させたシートの透明性が低下する。150質量部を超えると、シリコーンポリマー中へのシリカの分散が困難となる。
【0025】
本発明のシリコーンゴム組成物の(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子(SiH基)を含有するもので、下記平均組成式(II)
2bcSiO(4-b-c)/2 (II)
(ここで、R2は炭素数1〜6の非置換又は置換の1価炭化水素基で、好ましくは脂肪族不飽和結合を有さないものである。具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、フェニル基等の非置換の1価炭化水素基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記1価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基等の置換の1価炭化水素基である。bは0.7〜2.1、cは0.18〜1.0、かつb+cは0.8〜3.0、好ましくはbは0.8〜2.0、cは0.2〜1.0、かつb+cは1.0〜2.5を満足する正数で示される。)
で示される従来から公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが適用可能である。また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよい。この場合、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は2〜300個、特に4〜200個程度の室温で液状のものが好適に用いられる。なお、ケイ素原子に結合する水素原子(SiH基)は分子鎖末端にあっても側鎖にあっても、その両方にあってもよく、一分子中に少なくとも2個(通常2〜300個)、好ましくは3個以上(例えば3〜200個)、より好ましくは4〜150個程度含有するものが使用される。
【0026】
上記の(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体等や上記各例示化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基やフェニル基等のアリール基で置換されたものなどが挙げられる。
【0027】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜10質量部とすることが好ましい。
【0028】
また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基に対する(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)のモル比が0.5〜5モル/モル、好ましくは0.8〜4モル/モル、より好ましくは1〜3モル/モルとなる量で配合することが好ましい。
【0029】
(D)成分のヒドロシリル化反応触媒は、公知のものが適用可能で、例えば、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。なお、このヒドロシリル化反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常、白金族金属として(A)成分100質量部に対し、0.1〜10質量部である。
【0030】
本発明のシリコーンゴム組成物には、上記成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、難燃性付与剤、着色剤等を添加することができる。
【0031】
本発明のシリコーンゴム組成物は、上述した成分の所定量を2本ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等で混練りすることによって得ることができる。
【0032】
本発明のシリコーンゴム組成物を成形する場合、成形方法としては、特に限定されないが、プレス成形、押し出し成形、カレンダー成形等が可能である。
また、その硬化条件は特に限定されない。一般的には、80〜300℃、特に100〜250℃で5秒〜1時間、特に30秒〜30分程度加熱硬化させることができる。また、100〜200℃で10分〜10時間程度ポストキュアーしてもよい。
【0033】
本発明のシリコーンゴム組成物は、プレス成形等の方法で成形、硬化することにより高透明なシリコーンゴムが得られ、これらは携帯電話のキーパッド照光用バックライト装置の光導波板等に好適に用いられるものである。
【0034】
また、厚さ2mmの硬化物シートの全光線透過率が、スガ試験機(株)製直読ヘイズコンピューターHGM−2による測定値で90%以上であることが好ましい。該全光線透過率が90%未満であると光導波板等に使用したときの光拡散が大きすぎ、入射光が光導波板の最遠部まで届かず、輝度にムラが生じてしまう。
【0035】
更に、厚さ2mmの硬化物シートのヘイズ値が、スガ試験機(株)製直読ヘイズコンピューターHGM−2による測定値が10以下、特に8以下であることが好ましい。該ヘイズ値が10を超える場合は光拡散が大きすぎて、光導波板等に使用したときの入射光が光導波板の最遠部まで届かず、輝度にムラが生じてしまう。
【0036】
本発明のシリコーンゴム組成物は、光学シート用であり、集光型光学シート、特に集光型太陽電池の光学シートや、LEDのバックライト装置の光学シート用として好適に用いられる。形状としては、集光型太陽電池の光学シートでは、太陽光をフレネルレンズシートの法線方向に揃えるために、プリズムシートに入射する前に、太陽光の入射を法線方向に揃えるマイクロレンズシートあるいはプリズムレンズシートも発明の一態様であり、光を集光させる凸レンズシート、フレネルレンズシートも発明の一態様である。更には、LEDのバックライト装置における、点光源と見なされるLEDからの光を空間的に分散させるプリズムレンズシートも一態様である。裏面からの照射光の射出により、暗闇での操作性を改善したキーパッドのスイッチにおいて、ゴム弾性を付与した光学シートも本発明の一態様であり、特定の光源の光を所望の形状の光学シートにより反射又は屈折、透過させることで所望の出射光を得ることができれば、その光学シートの形状に制限を加えるものではなく、生産性において優れたカレンダーロール加工、あるいは押し出し成形加工により形成可能な形状であれば、本発明の一態様である。
【0037】
なお、図1は集光型太陽電池の光学シート1の一例を示し、図2はLEDバックライト装置の光学シート2の一例を示すが、光学シートの形状はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
以下、実施例と比較例によりこの発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、配合量の単位の部は質量部である。また、重量平均分子量、重量平均重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算値である。
【0039】
[実施例1]
ジメチルシロキサン単位99.425モル%、メチルビニルシロキサン単位0.50モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約6,000であるオルガノポリシロキサン100部、BET比表面積300m2/gのシリカ(商品名アエロジル300、日本アエロジル(株)製)70部、分散剤としてヘキサメチルジシラザン16部、水4部を添加し、ニーダーにて混練りし、170℃にて2時間加熱処理してコンパウンドを調製した。
【0040】
上記コンパウンド100部に対し、付加架橋硬化剤としてC−25A(白金触媒)/C−25B(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)(共に、信越化学工業(株)製)をそれぞれ0.5部/2.0部を2本ロールで混練後添加し均一に混合した後、120℃、70kgf/cm2の条件で10分間プレスキュアーを行い、次いで200℃で4時間ポストキュアーを行い、試験用シートを作製した。
【0041】
[実施例2]
BET比表面積300m2/gのシリカ(商品名アエロジル300、日本アエロジル(株)製)の添加量を80部、ヘキサメチルジシラザンを18.5部、水を4.6部とした以外は実施例1と同様な方法によりシートを成形した。
【0042】
[実施例3]
BET比表面積300m2/gのシリカ(商品名アエロジル300、日本アエロジル(株)製)の添加量を100部、ヘキサメチルジシラザンを23部、水を5.7部とした以外は実施例1と同様な方法によりシートを成形した。
【0043】
[実施例4]
BET比表面積380m2/gのシリカ(商品名アエロジル380、日本アエロジル(株)製)の添加量を70部、ヘキサメチルジシラザンを20.3部、水を5.1部とした以外は実施例1と同様な方法によりシートを成形した。
【0044】
[比較例1]
BET比表面積300m2/gのシリカ(商品名アエロジル300、日本アエロジル(株)製)の添加量を50部、ヘキサメチルジシラザンを11.4部、水を2.9部とした以外は実施例1と同様な方法によりシートを成形した。
【0045】
[比較例2]
BET比表面積200m2/gのシリカ(商品名アエロジル200、日本アエロジル(株)製)の添加量を70部、ヘキサメチルジシラザンを16部、水を4部とした以外は実施例1と同様な方法によりシートを成形した。
【0046】
得られたゴム組成物、シートについて、可塑度、硬さと全光線透過率、ヘイズ値を測定した。結果を表1に示す。
物性特性測定法
可塑度はJIS K6249に準じて測定した。
ゴム組成物を120℃/10分の条件で硬化させ、JIS K6249に準じて、硬さ(デュロメーターA)を測定した。
透明性評価方法:2mmシートの全光線透過率、ヘイズ値を測定した。
(スガ試験機(株)製直読ヘイズコンピューターHGM−2による測定値)
【0047】
【表1】

【符号の説明】
【0048】
1、2 光学シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として下記平均組成式(I)
1aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、R1は同一又は異種の非置換又は置換の1価炭化水素基を示し、aは1.95〜2.05の正数である。)
で表され、重合度が100以上のオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)比表面積が200m2/gを超える煙霧質シリカ 70〜150質量部、
(C)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.1〜30質量部、
(D)ヒドロシリル化反応触媒 0.1〜10質量部
を必須成分とすることを特徴とする光学シート用ミラブルタイプのシリコーンゴム組成物。
【請求項2】
集光型太陽電池の光学シート用である請求項1記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項3】
LEDのバックライト装置の光学シート用である請求項1記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項4】
(B)成分が、表面処理されたシリカであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項5】
シリカの表面処理剤がヘキサメチルジシラザンである請求項4記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項6】
該シリコーンゴム組成物の厚さ2mmの硬化物シートの全光線透過率が90%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項7】
該シリコーンゴム組成物の厚さ2mmの硬化物フィルムのヘイズ値が10以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物の硬化物からなる光学シート。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物をカレンダーロール加工又は押し出し成形加工することにより形成された請求項8記載の光学シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−149234(P2012−149234A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−279201(P2011−279201)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】