光学シート
【課題】スクリーンを着脱することなく、モアレを利用して画像が変化して見え、店頭のディスプレーや包装容器などに利用することのできる光学シートを提供する。
【解決手段】光学シート1は、第一面(表面)にレンチキュラーレンズ12を有し、第2面(裏面)に印刷層22を有し、前記印刷層22は複数の色彩の複数の線を略平行に配列して構成してある。レンチキュラーレンズのピッチをPLとし、印刷層の線のピッチをPPとし、レンチキュラーレンズと印刷層の線の位相をIとし、前記レンチキュラーレンズのレンズの軸方向Yと印刷層の線の方向Xの角度をθとしたとき、光学シートの一又は複数の特定の領域において、PLとPPの差、位相I、または角度θの内少なくとも1つが0以外とすることにより特定領域での画像の見え方を特定領域以外の部分と異ならせることができる。
【解決手段】光学シート1は、第一面(表面)にレンチキュラーレンズ12を有し、第2面(裏面)に印刷層22を有し、前記印刷層22は複数の色彩の複数の線を略平行に配列して構成してある。レンチキュラーレンズのピッチをPLとし、印刷層の線のピッチをPPとし、レンチキュラーレンズと印刷層の線の位相をIとし、前記レンチキュラーレンズのレンズの軸方向Yと印刷層の線の方向Xの角度をθとしたとき、光学シートの一又は複数の特定の領域において、PLとPPの差、位相I、または角度θの内少なくとも1つが0以外とすることにより特定領域での画像の見え方を特定領域以外の部分と異ならせることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モアレを利用して画像が変化してみることのできる光学シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レンチキュラーレンズと印刷のピッチを意図的にずらし、それによりモアレを生じさせ、これが虹色に見えるようにする技術は知られている。
一方、従来のレンチキュラーレンズを用いた3D画像または画像のチェンジングは、面内で、1ピッチ内の画素数N又は色数M(またはそれらの色、反射率、吸収光率、濃度)が領域ごとに変化するものはあったが、レンチキュラーレンズのピッチPLと印刷層のピッチPPとに差をつけたり、位相Iをずらしたり、又は角度θが変化しているものはなかった。
【特許文献1】特開昭55−95983号公報
【0003】
特開昭55−95983号公報に記載されている発明は、図柄を表した表示面の一部において網点パターンや万線パターンを他の部分と異なるものとし、表示面に透明スクリーンを重ねてモワレを発生させることにより、前記パターンの異なる部分の図柄を顕在化させるようにした表示器である。
この発明においては、スクリーンを重ねていないときとスクリーンを重ねたときとで図柄を変化させることができる。
しかしながら、図柄を変化させるためにはスクリーンの着脱作業が必要である。そのために、この発明の技術を店頭のディスプレーや包装容器などに利用することはできなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、スクリーンを着脱することなく、モアレを利用して画像が変化して見え、店頭のディスプレーや包装容器などに利用することのできる光学シートを得ることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の光学シートは、図1に示すように第一面(表面)にレンズ群を有し、第2面(裏面)に印刷層を有した光学シートであって、前記レンズ群はかまぼこ形状をしたレンチキュラーレンズからなっており、前記印刷層は複数の色彩の複数の線を略平行に配列した印刷層である。
前記レンチキュラーレンズのピッチをPLとし、前記印刷層の線のピッチをPPとし、前記レンチキュラーレンズと前記印刷層の線の位相をIとし、前記レンチキュラーレンズのレンズの軸方向Yと前記印刷層の線の方向Xの角度をθとしたとき、前記光学シートの一又は複数の特定の領域において、PLとPPの差、位相I、または角度θの内少なくとも1つが0以外であることを特徴としている。
【0006】
前記光学シートは、表面にレンチキュラーレンズが形成された透明シートの裏面に直接印刷する構成、透明シートの裏面に印刷が施された別のシートを貼り合わせる構成、透明シートと印刷が施されたシートを摺動可能に重ね合わせる構成など、適宜採用することができる。
前記印刷層は、図2に示すように、複数の略平行な線を密集させて1ピッチを構成し(1ピッチを構成する線の数を「画素数」という。)、1ピッチを構成する線の色彩は2色以上とする。なお、この発明において「略平行」は、複数の線の縁が全て平行移動によって重なることをいい、線が屈曲しているものも含む概念である(図3参照)。
【0007】
従来のレンチキュラーレンズを用いた3D画像や画像のチェンジグにおいては、レンチキュラーレンズのピッチPLと印刷層の線のピッチPPとは一致し、位相もなく、レンチキュラーレンズの軸方向の角度と印刷層の線方向の角度とは一致している。そのために、印刷層の画像は見る角度に従い1ピッチを構成する複数の色彩の内一つ又は複数の色彩があるがままに見え(3Dの場合は右目・左目各1本)、複数の色彩が混ざって見えることはない。
この発明では、特定の領域においてPLとPPの差、位相I、または角度θの内少なくとも1つを0以外としてあり、この特定の領域においては複数本の線がモアレとなり混ざって見える。その結果、複数本の線が混ざって見えて色彩が変化する特定の領域は、上記各要素が一致して単色又は複数本の線として見える他の領域と異なる色彩が表れる。なお、ピッチに差を設ける場合、より効果的に、モアレが発生する条件は、PPはPLより小さいことが望ましい。あるいは、PPがPLより大きい場合でも、PPの中の一つの画素の幅がPLより小さいことが望ましい。
【0008】
前記位相とは、レンズ群のピッチと印刷層のピッチとが等しい場合における繰り返し周期の開始位置のずれをいう(図4参照)。そして、レンズ群のピッチと印刷層のピッチに位相(図3中符号i)がある場合、印刷層に線の集合で表示された画像の一部は隣接する二つのレンズに跨って透視されるのでモアレが生じ、他の領域(例えば両者のピッチの位相が0の領域)とは異なる色彩が視認できる。
また、レンズ群のピッチPLと印刷層の線のピッチPPとの差が0以外の場合、すなわち両者が一致しない場合やレンズの軸方向Yと印刷層の線の方向Xとの角度θの差が0以外の場合、すなわち両者が平行でない場合(図5参照)も同様である。
したがって、PLとPPの差、位相I、または角度θの内少なくとも1つが0以外となるように構成することにより、特定の領域内にその領域以外とは異なる色彩が現れ、領域がひとまとまりの画像として認識できる。
前記特定の領域は単数でも複数でもよい。特定の領域を複数設ける場合は、領域毎にPLとPPの差など上記3つの要件を異なるものとすることにより、領域毎に異なる光学的変化が得られ、特定の領域が隣接していても個別の領域毎にそれぞれ個別の画像を認識することができる。
【0009】
請求項2の発明は、複数の領域間での、PLとPPの差、位相のずれI、または角度θなど特定の領域を視認させるための要件を連続的に変化させるようにするものである。ここでいう複数の領域にはPLとPPの差、位相のずれI、角度θ全てが0である領域も含むものである。
このように構成することにより、特定領域の輪郭部分において、特定領域内外での色彩変化が連続的に発現し、非常に特異な色彩を得ることができる。
請求項3の発明は、一又は複数の特定領域においてレンチキュラーレンズのレンズ方向YまたはピッチPLを異なるものとしてある。レンチキュラーレンズを使用した場合にはレンチキュラーレンズと直交する成分を持つ方向に視角を変えた時に色彩の変化が現れるのに対し、このように、一又は複数の特定領域においてレンチキュラーレンズのレンズ方向Yを変えることにより、一つの視角方向だけでなく、複数の視角方向で色彩変化を得ることができる。また、一又は複数の特定領域においてレンチキュラーレンズのピッチPLを異なるものとすることで、印刷層は一定のピッチの画像であっても、特定領域の色彩に変化を得ることができる。このようなレンチキュラーレンズは例えばUV硬化樹脂をシルク印刷することなどにより製造することができる。
請求項4の発明は、複数の領域間で、レンチキュラーレンズのレンズ方向Yまたは、ピッチPLを連続的に変化させるものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1ないし4の発明を偽造検出装置として利用するものであって、かまぼこ形状のレンズ群を有するレンチキュラーシートと印刷層を有するシートを組み合わせてなり、前記印刷層が複数の色彩の複数の線を略平行に配列した印刷層であり前記レンチキュラーレンズのピッチをPLとし、前記印刷層の線のピッチをPPとし、前記PLとPPとに差を設けて偽造検出装置を構成する。
偽造防止が要求されるシートの一部に印刷層を設けておく。コピーすると印刷層のピッチや位相、角度にずれが発生してしまうため、印刷層にレンチキュラーシートを重ねて観察することにより、真贋を判別することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、特定領域において印刷層とレンチキュラーレンズとにピッチ差、位相又は角度の差を設けたので、特定領域にモアレが発生し印刷層の色彩が変化するので、個別の画像を認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
実施例1はピッチを異なるものとした例である
図6に示すように、透明樹脂からなる光学シート1の第一面(表面)11にかまぼこ形状のレンチキュラーレンズ12を複数形成して構成されたレンズ群2が設けてあり、第二面(裏面)21に印刷層22が形成してある。この印刷層22は、図2に示すように、1ピッチを6色・10画素で構成してある。画素の線の太さは皆同じであるが、図2においてはC1,C2,C5,C6は2画素の太い線として表され、C3,C4は1画素の細い線として表されている。そして、10画素を1ピッチとして繰り返し印刷されている。レンチキュラーレンズのピッチPLは336.20μmであった。
本実施例の構造は図7に示すように、4つの特定の領域(31(a)〜(d))および特定領域以外の部分32に分かれている。特定領域以外の部分32においては、レンチキュラーレンズ12のピッチPLと印刷層22の画素ピッチPP、位相、角度は全て一致しており、印刷層のC1ないしC6の色彩がレンチキュラーレンズを通して認識できる。すなわち、視角を変えることにより、C1ないしC6の6つの色が次第に変化して現れる。この色の変化は特定領域以外の全ての領域で同じ変化を示すに過ぎない。
一方、特定領域31においては、印刷層22の画素ピッチPPをレンチキュラーレンズ12のピッチPLと異なる値とした。本実施例では、4つの特定の領域31(a)〜(d)では、画素ピッチPPは410.10μm、392.24μm、332.10μm、280.17μmであり、レンチキュラーレンズのピッチPLに対し、それぞれ122.0%、116.7%、98.8%、83.3%であった。その結果、特定領域では、C1ないしC6の色彩の縞は、図8に示すがごとく、モアレをおこし、色に濃淡が表れる。この濃淡は特定領域31内で種々の色彩の変化をもたらし、さらに視角を変えることにより、より高次な色彩変化を発現する。
このように、特定領域の内外でレンチキュラーレンズ毎に観察者の目に入る色彩が異なることとなり、複数の色彩が混ざった状態で認識される。すなわち、特定領域とその他の領域とでは認識できる色彩が異なる。そして、見る角度により視認できる画素が異なるので、見る角度により色彩が変化する。
上記においては特定領域において印刷層のピッチを他の領域と異なるものとしたが、印刷層のピッチは変えずにレンチキュラーレンズのピッチを変えることによっても同じ効果を得ることができる。
さらに、印刷層の画素ピッチの値を領域ごとに変えることにより、それを両目で視認したとき、左右の視差により遠近感が異なり、立体的な色彩模様を得られる。
【実施例2】
【0014】
実施例2は角度を変化させたものである。
図9において、特定領域31以外においては、印刷層22の画素の向きとレンチキュラーレンズ12の向きは一致している。他方特定領域31においては印刷層22の画素の向きが15度程度傾斜しており、レンチキュラーレンズ12と15度程度の角度をなしている。その結果、特定領域においてはモアレをおこし複数の色彩が混ざった状態で認識され、他の領域と異なる色彩を認識できる。
上記においては特定領域において印刷層の角度を他の領域と異なるものとしたが、印刷層の角度は変えずにレンチキュラーレンズの角度を変えることによっても同じ効果を得ることができる。途中で角度の変わるレンチキュラーレンズは、シルク印刷を利用することにより容易に製造することができる。
なお、図9の右側の図面は印刷層の画素又はレンチキュラーレンズの方向の種々の例を示すものである。図に示した態様においては4つの特定領域が形成されている。
【実施例3】
【0015】
実施例3は偽造検出装置の例である。
図10において、偽造を防止しようとする書面7の一隅に印刷層4が形成してある。この印刷層4は4色・4画素で1ピッチを構成し、そのピッチPPは真贋検査に使用するレンチキュラーレンズ12(図10では拡大して示してある)のピッチPL=254.1μmに対して98%とした。一方、画像8は、レンチキュラーレンズを重ねても重ねなくても画像が見えるように、複数の線で分解せず、レンチキュラーレンズのピッチとは異なるピッチで通常の方法で印刷されている。このような構成をとることにより、印刷層4はレンチキュラーレンズと重ねることにより特殊な色彩・模様が見える。これに対し、書面7をコピーすると印刷層のピッチや位相、角度にずれが発生してしまうため、レンチキュラーシートを重ねて観察するとモアレによる色彩・模様が、コピー前のものと異なったものとなり、真贋を判別することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
この発明は、簡易な構造で視覚的な変化を得ることのできる光学シートであって、包装容器、店頭のPOPや宣伝ポスターなどの販促ツールなどに広く使用することのできるものである。又この発明の偽造検出装置は、レンチキュラーレンズを当てるのみで容易に偽造を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】光学シートの説明図
【図2】印刷層のピッチと画素の説明図
【図3】印刷層のピッチと画素の説明図
【図4】位相の説明図
【図5】角度の説明図
【図6】実施例1の説明図
【図7】実施例1の特定領域の説明図
【図8】実施例1の特定領域における画像の見え方の説明図
【図9】実施例2の正面図
【図10】実施例3の斜視図
【符号の説明】
【0018】
1:光学シート
2:レンズ群
4:印刷層
5:モアレ
7:書面
8:画像
11:第一面
12:レンチキュラーレンズ
21:第二面
22:印刷層
31:特定の領域
32:特定領域以外の部分
【技術分野】
【0001】
この発明は、モアレを利用して画像が変化してみることのできる光学シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レンチキュラーレンズと印刷のピッチを意図的にずらし、それによりモアレを生じさせ、これが虹色に見えるようにする技術は知られている。
一方、従来のレンチキュラーレンズを用いた3D画像または画像のチェンジングは、面内で、1ピッチ内の画素数N又は色数M(またはそれらの色、反射率、吸収光率、濃度)が領域ごとに変化するものはあったが、レンチキュラーレンズのピッチPLと印刷層のピッチPPとに差をつけたり、位相Iをずらしたり、又は角度θが変化しているものはなかった。
【特許文献1】特開昭55−95983号公報
【0003】
特開昭55−95983号公報に記載されている発明は、図柄を表した表示面の一部において網点パターンや万線パターンを他の部分と異なるものとし、表示面に透明スクリーンを重ねてモワレを発生させることにより、前記パターンの異なる部分の図柄を顕在化させるようにした表示器である。
この発明においては、スクリーンを重ねていないときとスクリーンを重ねたときとで図柄を変化させることができる。
しかしながら、図柄を変化させるためにはスクリーンの着脱作業が必要である。そのために、この発明の技術を店頭のディスプレーや包装容器などに利用することはできなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、スクリーンを着脱することなく、モアレを利用して画像が変化して見え、店頭のディスプレーや包装容器などに利用することのできる光学シートを得ることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の光学シートは、図1に示すように第一面(表面)にレンズ群を有し、第2面(裏面)に印刷層を有した光学シートであって、前記レンズ群はかまぼこ形状をしたレンチキュラーレンズからなっており、前記印刷層は複数の色彩の複数の線を略平行に配列した印刷層である。
前記レンチキュラーレンズのピッチをPLとし、前記印刷層の線のピッチをPPとし、前記レンチキュラーレンズと前記印刷層の線の位相をIとし、前記レンチキュラーレンズのレンズの軸方向Yと前記印刷層の線の方向Xの角度をθとしたとき、前記光学シートの一又は複数の特定の領域において、PLとPPの差、位相I、または角度θの内少なくとも1つが0以外であることを特徴としている。
【0006】
前記光学シートは、表面にレンチキュラーレンズが形成された透明シートの裏面に直接印刷する構成、透明シートの裏面に印刷が施された別のシートを貼り合わせる構成、透明シートと印刷が施されたシートを摺動可能に重ね合わせる構成など、適宜採用することができる。
前記印刷層は、図2に示すように、複数の略平行な線を密集させて1ピッチを構成し(1ピッチを構成する線の数を「画素数」という。)、1ピッチを構成する線の色彩は2色以上とする。なお、この発明において「略平行」は、複数の線の縁が全て平行移動によって重なることをいい、線が屈曲しているものも含む概念である(図3参照)。
【0007】
従来のレンチキュラーレンズを用いた3D画像や画像のチェンジグにおいては、レンチキュラーレンズのピッチPLと印刷層の線のピッチPPとは一致し、位相もなく、レンチキュラーレンズの軸方向の角度と印刷層の線方向の角度とは一致している。そのために、印刷層の画像は見る角度に従い1ピッチを構成する複数の色彩の内一つ又は複数の色彩があるがままに見え(3Dの場合は右目・左目各1本)、複数の色彩が混ざって見えることはない。
この発明では、特定の領域においてPLとPPの差、位相I、または角度θの内少なくとも1つを0以外としてあり、この特定の領域においては複数本の線がモアレとなり混ざって見える。その結果、複数本の線が混ざって見えて色彩が変化する特定の領域は、上記各要素が一致して単色又は複数本の線として見える他の領域と異なる色彩が表れる。なお、ピッチに差を設ける場合、より効果的に、モアレが発生する条件は、PPはPLより小さいことが望ましい。あるいは、PPがPLより大きい場合でも、PPの中の一つの画素の幅がPLより小さいことが望ましい。
【0008】
前記位相とは、レンズ群のピッチと印刷層のピッチとが等しい場合における繰り返し周期の開始位置のずれをいう(図4参照)。そして、レンズ群のピッチと印刷層のピッチに位相(図3中符号i)がある場合、印刷層に線の集合で表示された画像の一部は隣接する二つのレンズに跨って透視されるのでモアレが生じ、他の領域(例えば両者のピッチの位相が0の領域)とは異なる色彩が視認できる。
また、レンズ群のピッチPLと印刷層の線のピッチPPとの差が0以外の場合、すなわち両者が一致しない場合やレンズの軸方向Yと印刷層の線の方向Xとの角度θの差が0以外の場合、すなわち両者が平行でない場合(図5参照)も同様である。
したがって、PLとPPの差、位相I、または角度θの内少なくとも1つが0以外となるように構成することにより、特定の領域内にその領域以外とは異なる色彩が現れ、領域がひとまとまりの画像として認識できる。
前記特定の領域は単数でも複数でもよい。特定の領域を複数設ける場合は、領域毎にPLとPPの差など上記3つの要件を異なるものとすることにより、領域毎に異なる光学的変化が得られ、特定の領域が隣接していても個別の領域毎にそれぞれ個別の画像を認識することができる。
【0009】
請求項2の発明は、複数の領域間での、PLとPPの差、位相のずれI、または角度θなど特定の領域を視認させるための要件を連続的に変化させるようにするものである。ここでいう複数の領域にはPLとPPの差、位相のずれI、角度θ全てが0である領域も含むものである。
このように構成することにより、特定領域の輪郭部分において、特定領域内外での色彩変化が連続的に発現し、非常に特異な色彩を得ることができる。
請求項3の発明は、一又は複数の特定領域においてレンチキュラーレンズのレンズ方向YまたはピッチPLを異なるものとしてある。レンチキュラーレンズを使用した場合にはレンチキュラーレンズと直交する成分を持つ方向に視角を変えた時に色彩の変化が現れるのに対し、このように、一又は複数の特定領域においてレンチキュラーレンズのレンズ方向Yを変えることにより、一つの視角方向だけでなく、複数の視角方向で色彩変化を得ることができる。また、一又は複数の特定領域においてレンチキュラーレンズのピッチPLを異なるものとすることで、印刷層は一定のピッチの画像であっても、特定領域の色彩に変化を得ることができる。このようなレンチキュラーレンズは例えばUV硬化樹脂をシルク印刷することなどにより製造することができる。
請求項4の発明は、複数の領域間で、レンチキュラーレンズのレンズ方向Yまたは、ピッチPLを連続的に変化させるものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1ないし4の発明を偽造検出装置として利用するものであって、かまぼこ形状のレンズ群を有するレンチキュラーシートと印刷層を有するシートを組み合わせてなり、前記印刷層が複数の色彩の複数の線を略平行に配列した印刷層であり前記レンチキュラーレンズのピッチをPLとし、前記印刷層の線のピッチをPPとし、前記PLとPPとに差を設けて偽造検出装置を構成する。
偽造防止が要求されるシートの一部に印刷層を設けておく。コピーすると印刷層のピッチや位相、角度にずれが発生してしまうため、印刷層にレンチキュラーシートを重ねて観察することにより、真贋を判別することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、特定領域において印刷層とレンチキュラーレンズとにピッチ差、位相又は角度の差を設けたので、特定領域にモアレが発生し印刷層の色彩が変化するので、個別の画像を認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
実施例1はピッチを異なるものとした例である
図6に示すように、透明樹脂からなる光学シート1の第一面(表面)11にかまぼこ形状のレンチキュラーレンズ12を複数形成して構成されたレンズ群2が設けてあり、第二面(裏面)21に印刷層22が形成してある。この印刷層22は、図2に示すように、1ピッチを6色・10画素で構成してある。画素の線の太さは皆同じであるが、図2においてはC1,C2,C5,C6は2画素の太い線として表され、C3,C4は1画素の細い線として表されている。そして、10画素を1ピッチとして繰り返し印刷されている。レンチキュラーレンズのピッチPLは336.20μmであった。
本実施例の構造は図7に示すように、4つの特定の領域(31(a)〜(d))および特定領域以外の部分32に分かれている。特定領域以外の部分32においては、レンチキュラーレンズ12のピッチPLと印刷層22の画素ピッチPP、位相、角度は全て一致しており、印刷層のC1ないしC6の色彩がレンチキュラーレンズを通して認識できる。すなわち、視角を変えることにより、C1ないしC6の6つの色が次第に変化して現れる。この色の変化は特定領域以外の全ての領域で同じ変化を示すに過ぎない。
一方、特定領域31においては、印刷層22の画素ピッチPPをレンチキュラーレンズ12のピッチPLと異なる値とした。本実施例では、4つの特定の領域31(a)〜(d)では、画素ピッチPPは410.10μm、392.24μm、332.10μm、280.17μmであり、レンチキュラーレンズのピッチPLに対し、それぞれ122.0%、116.7%、98.8%、83.3%であった。その結果、特定領域では、C1ないしC6の色彩の縞は、図8に示すがごとく、モアレをおこし、色に濃淡が表れる。この濃淡は特定領域31内で種々の色彩の変化をもたらし、さらに視角を変えることにより、より高次な色彩変化を発現する。
このように、特定領域の内外でレンチキュラーレンズ毎に観察者の目に入る色彩が異なることとなり、複数の色彩が混ざった状態で認識される。すなわち、特定領域とその他の領域とでは認識できる色彩が異なる。そして、見る角度により視認できる画素が異なるので、見る角度により色彩が変化する。
上記においては特定領域において印刷層のピッチを他の領域と異なるものとしたが、印刷層のピッチは変えずにレンチキュラーレンズのピッチを変えることによっても同じ効果を得ることができる。
さらに、印刷層の画素ピッチの値を領域ごとに変えることにより、それを両目で視認したとき、左右の視差により遠近感が異なり、立体的な色彩模様を得られる。
【実施例2】
【0014】
実施例2は角度を変化させたものである。
図9において、特定領域31以外においては、印刷層22の画素の向きとレンチキュラーレンズ12の向きは一致している。他方特定領域31においては印刷層22の画素の向きが15度程度傾斜しており、レンチキュラーレンズ12と15度程度の角度をなしている。その結果、特定領域においてはモアレをおこし複数の色彩が混ざった状態で認識され、他の領域と異なる色彩を認識できる。
上記においては特定領域において印刷層の角度を他の領域と異なるものとしたが、印刷層の角度は変えずにレンチキュラーレンズの角度を変えることによっても同じ効果を得ることができる。途中で角度の変わるレンチキュラーレンズは、シルク印刷を利用することにより容易に製造することができる。
なお、図9の右側の図面は印刷層の画素又はレンチキュラーレンズの方向の種々の例を示すものである。図に示した態様においては4つの特定領域が形成されている。
【実施例3】
【0015】
実施例3は偽造検出装置の例である。
図10において、偽造を防止しようとする書面7の一隅に印刷層4が形成してある。この印刷層4は4色・4画素で1ピッチを構成し、そのピッチPPは真贋検査に使用するレンチキュラーレンズ12(図10では拡大して示してある)のピッチPL=254.1μmに対して98%とした。一方、画像8は、レンチキュラーレンズを重ねても重ねなくても画像が見えるように、複数の線で分解せず、レンチキュラーレンズのピッチとは異なるピッチで通常の方法で印刷されている。このような構成をとることにより、印刷層4はレンチキュラーレンズと重ねることにより特殊な色彩・模様が見える。これに対し、書面7をコピーすると印刷層のピッチや位相、角度にずれが発生してしまうため、レンチキュラーシートを重ねて観察するとモアレによる色彩・模様が、コピー前のものと異なったものとなり、真贋を判別することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
この発明は、簡易な構造で視覚的な変化を得ることのできる光学シートであって、包装容器、店頭のPOPや宣伝ポスターなどの販促ツールなどに広く使用することのできるものである。又この発明の偽造検出装置は、レンチキュラーレンズを当てるのみで容易に偽造を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】光学シートの説明図
【図2】印刷層のピッチと画素の説明図
【図3】印刷層のピッチと画素の説明図
【図4】位相の説明図
【図5】角度の説明図
【図6】実施例1の説明図
【図7】実施例1の特定領域の説明図
【図8】実施例1の特定領域における画像の見え方の説明図
【図9】実施例2の正面図
【図10】実施例3の斜視図
【符号の説明】
【0018】
1:光学シート
2:レンズ群
4:印刷層
5:モアレ
7:書面
8:画像
11:第一面
12:レンチキュラーレンズ
21:第二面
22:印刷層
31:特定の領域
32:特定領域以外の部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一面にレンズ群を有し、第2面に印刷層を有した光学シートにおいて、
前記レンズ群がかまぼこ形状をしたレンチキュラーレンズからなっており、前記印刷層が複数の色彩の複数の線を略平行に配列した印刷層であり
前記レンチキュラーレンズのピッチをPLとし、
前記印刷層の線のピッチをPPとし、
前記レンチキュラーレンズと前記印刷層の線の位相をIとし、
前記レンチキュラーレンズのレンズの軸方向Yと前記印刷層の線の方向Xの角度をθとしたとき、
前記光学シートの一又は複数の特定の領域において、PLとPPの差、位相I、または角度θの内少なくとも1つが0以外であることを特徴とする光学シート。
【請求項2】
請求項1記載の光学シートにおいて、一つの特定の領域と他の領域間での、PLとPPの差、位相のずれI、または角度θの内少なくとも1つが連続的に変化していることを特徴とする光学シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学シートにおいて、複数の領域ごとにレンチキュラーレンズのレンズ方向YまたはピッチPLが異なっていることを特徴する光学シート。
【請求項4】
請求項3記載の光学シートにおいて、複数の領域間で、レンチキュラーレンズのレンズ方向Yまたは、ピッチPLが連続的に変化していることを特徴する光学シート。
【請求項5】
かまぼこ形状のレンズ群を有するレンチキュラーシートと印刷層を有す
るシートを組み合わせてなり、
前記印刷層が複数の色彩の複数の線を略平行に配列した印刷層であり
前記レンチキュラーレンズのピッチをPLとし、
前記印刷層のピッチをPPとし、
前記PLとPPとに差を設けた、偽造検出装置。
【請求項1】
第一面にレンズ群を有し、第2面に印刷層を有した光学シートにおいて、
前記レンズ群がかまぼこ形状をしたレンチキュラーレンズからなっており、前記印刷層が複数の色彩の複数の線を略平行に配列した印刷層であり
前記レンチキュラーレンズのピッチをPLとし、
前記印刷層の線のピッチをPPとし、
前記レンチキュラーレンズと前記印刷層の線の位相をIとし、
前記レンチキュラーレンズのレンズの軸方向Yと前記印刷層の線の方向Xの角度をθとしたとき、
前記光学シートの一又は複数の特定の領域において、PLとPPの差、位相I、または角度θの内少なくとも1つが0以外であることを特徴とする光学シート。
【請求項2】
請求項1記載の光学シートにおいて、一つの特定の領域と他の領域間での、PLとPPの差、位相のずれI、または角度θの内少なくとも1つが連続的に変化していることを特徴とする光学シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学シートにおいて、複数の領域ごとにレンチキュラーレンズのレンズ方向YまたはピッチPLが異なっていることを特徴する光学シート。
【請求項4】
請求項3記載の光学シートにおいて、複数の領域間で、レンチキュラーレンズのレンズ方向Yまたは、ピッチPLが連続的に変化していることを特徴する光学シート。
【請求項5】
かまぼこ形状のレンズ群を有するレンチキュラーシートと印刷層を有す
るシートを組み合わせてなり、
前記印刷層が複数の色彩の複数の線を略平行に配列した印刷層であり
前記レンチキュラーレンズのピッチをPLとし、
前記印刷層のピッチをPPとし、
前記PLとPPとに差を設けた、偽造検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2008−185963(P2008−185963A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21633(P2007−21633)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(599137312)田中産業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(599137312)田中産業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
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