説明

光学フィルタおよびディスプレイ装置

【課題】PDP装置の意匠性や表示画像の画質を良好にでき、また映り込みも抑制できる光学フィルタを提供する。
【解決手段】光学フィルタ3は、第1のフィルタ部4と、第2のフィルタ部5とを有する。第1のフィルタ部4は、PDP本体2に積層され、着色層52以外の機能層を少なくとも1層有する。第2のフィルタ部5は、第1のフィルタ部とは分離して設けられ、第1のフィルタ部5の視認側に配置される。第2のフィルタ部5は、透明基板51と、この透明基板51のPDP本体側に積層される着色層52とを有する。また、第1のフィルタ部4と第2のフィルタ部5とは、第1のフィルタ部4のヘイズ値が第2のフィルタ部5のヘイズ値よりも大きくなるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルタおよびディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP: Plasma Display Panel)装置は、CRT(Cathode Ray Tube)に比べて大型化および薄型化を同時に満たすことができ、近年その需要が高まっている。また、PDP装置は、表示容量、輝度、コントラスト、残像、視野角等、各種表示能力に優れている。
【0003】
PDP装置は、ガス放電現象を用いて画像を表示するものであり、電極に印加された直流または交流電圧によって電極間のガスから放電させ、これに伴う紫外線によって蛍光体を励起させて発光させる。しかし、発光原理上、電磁波および近赤外線の放出量が多い。電磁波、近赤外線は、人体に影響を与えるおそれがあり、また無線電話機やリモコン等の精密機器の誤作動を誘発するおそれがある。
【0004】
従って、PDP装置には、電磁波を遮蔽するための電磁波遮蔽層や、近赤外線を遮蔽するための近赤外線遮蔽層等の機能層が設けられる。これらの機能層は、通常、主たる表示部であるPDP本体の視認側、すなわち前面に配置されるガラス基板等からなる前面板に積層される。前面板には、これらの機能層の他、例えば、コントラストを向上させるためのコントラスト向上層、色調を補正するための色調補正層等が設けられる。前面板は、PDP本体から間隔を設けて配置される他、PDP本体に粘着層によって密着して配置される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−183645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、前面板には、電磁波遮蔽層、近赤外線遮蔽層、コントラスト向上層、色調補正層等の機能層が設けられる。しかし、前面板に全ての機能層を設けた場合、前面板の透明性が低下し、表示画像の画質が低下しやすい。前面板をPDP本体に近づけることで画質を向上できるが、必ずしも良好な画質を得ることができない。
【0007】
前面板を廃止し、PDP本体に各機能層を直接積層することも考えられる。しかし、前面板を廃止した場合、基板材料であるガラス等の質感を付与できず、また画像表示領域の周縁に配置されるコネクタ等の部品を隠蔽する黒色枠等の隠蔽層を形成できず、意匠性の観点から必ずしも好ましくない。また、前面板を基板のみ、または基板と一部の機能層のみとし、他の機能層をPDP本体に設けることも考えられる。しかし、単に機能層の一部をPDP本体に設けただけでは、必ずしも良好な画質を得ることができず、また前面板への映り込みも発生しやすい。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、PDP装置の意匠性や表示画像の画質を良好にでき、また映り込みも抑制できる光学フィルタを提供することを目的とする。また、本発明は、該光学フィルタを有するPDP装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光学フィルタは、第1のフィルタ部と、第2のフィルタ部とを有する。第1のフィルタ部は、プラズマディスプレイパネル本体に積層され、着色層以外の機能層を少なくとも1層有する。第2のフィルタ部は、第1のフィルタ部とは分離して設けられ、第1のフィルタ部の視認側に配置される。第2のフィルタ部は、透明基板と、この透明基板のプラズマディスプレイパネル本体側に積層される着色層とを有する。また、第1のフィルタ部と第2のフィルタ部とは、第1のフィルタ部のヘイズ値が第2のフィルタ部のヘイズ値よりも大きくなるように構成される。
【0010】
本発明のプラズマディスプレイパネル装置は、プラズマディスプレイパネル本体と、このプラズマディスプレイパネル本体に設けられる光学フィルタとを有する。本発明のプラズマディスプレイパネル装置は、光学フィルタとして、上記した本発明の光学フィルタを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学フィルタによれば、第1のフィルタ部と第2のフィルタ部とから構成し、かつ各部の構成を所定構成とすることで、PDP装置の意匠性や表示画像の画質を良好とし、また映り込みも抑制できる。
【0012】
本発明のプラズマディスプレイパネル装置によれば、上記した本発明の光学フィルタを設けることで、意匠性や表示画像の画質を良好とし、また映り込みも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の光学フィルタおよびプラズマディスプレイパネル装置の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の光学フィルタおよびプラズマディスプレイパネル装置について詳細に説明する。なお、以下の説明では、プラズマディスプレイパネル装置をPDP装置と記し、プラズマディスプレイパネル本体をPDP本体と記す。
【0015】
本発明の光学フィルタは、第1のフィルタ部と、第2のフィルタ部とを有することを特徴とする。第1のフィルタ部は、PDP本体に積層され、着色層以外の機能層を少なくとも1層有する。第2のフィルタ部は、第1のフィルタ部とは分離され、第1のフィルタ部の視認側に配置される。第2のフィルタ部は、透明基板と、この透明基板のPDP本体側に積層される着色層とを有する。また、第1のフィルタ部と第2のフィルタ部とは、第1のフィルタ部のヘイズ値が第2のフィルタ部のヘイズ値よりも大きくなるように構成される。
【0016】
本発明の光学フィルタによれば、PDP本体に積層される第1のフィルタ部の視認側に、第1のフィルタ部とは分離された第2のフィルタ部、特に透明基板を設けることで、基板材料の質感、例えば、ガラスの質感を付与できる。さらに、透明基板を設けることで、画像表示領域の周縁に配置されるコネクタ等の部品を隠蔽する隠蔽層である黒色枠等を付与でき、意匠性を向上できる。
【0017】
そして、第1のフィルタ部に、従来のPDP用光学フィルタにおける着色層以外の機能層を少なくとも1層設けることで、第2のフィルタ部における着色層以外の機能層を省略し、その透明性を高めて表示画像の画質を向上できる。なお、本発明における着色層以外の機能層には、後述する防眩層および反射防止層は含めないものとする。着色層以外の機能層としては、例えば、電磁波遮蔽層、コントラスト向上層等の透明性を低下させるものが挙げられるが、必ずしもこれらのものに限定されない。
【0018】
特に、PDP本体側となる第1のフィルタ部のヘイズ値を視認側となる第2のフィルタ部のヘイズ値よりも大きくすることで、言い換えれば第2のフィルタ部のヘイズ値を小さくすることで、第2のフィルタ部の透明性を十分にして表示画像の画質を向上できる。第1のフィルタ部のヘイズ値は、2〜40%が好ましく、5〜30%がより好ましく、5〜20%が特に好ましい。また、第2のフィルタ部のヘイズ値は、第1のフィルタ部のヘイズ値より小さい範囲で、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。各ヘイズ値を上記範囲内とすることで、より表示画像の画質を向上できる。
【0019】
一方、第2のフィルタ部における透明基板のPDP本体側に着色層を設けることで、透明基板の周縁に黒色枠を付与した場合、視認側からの黒色枠の視認性を良好にして意匠性を向上できる。また、上記位置に着色層を設けることで、光学フィルタ内における反射光を効果的に吸収でき、光学フィルタへの映り込みも抑制できる。
【0020】
本発明の光学フィルタにおいては、第1のフィルタ部の視感透過率が第2のフィルタ部の視感透過率よりも大きいことが好ましい。第1のフィルタ部の視感透過率を第2のフィルタ部の視感透過率よりも大きくすることで、表示画像の画質を向上できる。第1のフィルタ部の視感透過率は、55〜80%が好ましく、第2のフィルタ部の視感透過率は、40〜65%が好ましい。
【0021】
また、本発明の光学フィルタの視感反射率は、5%以下が好ましい。視感反射率を5%以下とすることで、光学フィルタへの映り込みを効果的に抑制できる。視感反射率は4%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。
【0022】
以下、光学フィルタ、PDP装置について、一例を挙げて具体的に説明する。
図1は、光学フィルタ、PDP装置の一例を示す断面図である。
【0023】
PDP装置1は、画像表示部であるPDP本体2と、PDP本体2の視認側に配置される光学フィルタ3とを有する。光学フィルタ3は、PDP本体2に積層される第1のフィルタ部4と、この第1のフィルタ部とは分離され、第1のフィルタ部4の視認側に配置される第2のフィルタ部5とを有する。
【0024】
第1のフィルタ部4は、例えば、PDP本体2側から順に、電磁波遮蔽フィルム41、コントラスト向上フィルム42、反射防止フィルム43を有する。各フィルムは、粘着層44によって貼り合わされる。
【0025】
電磁波遮蔽フィルム41は、例えば、透明基体上に電磁波遮蔽層としての金属メッシュ層を有する。電磁波遮蔽フィルム41は透明性が必ずしも高くないことから、第1のフィルタ部4に設けることで、第2のフィルタ部5の透明性を高めて表示画像の画質を向上できる。このような電磁波遮蔽フィルム41は、通常、透明基体上に銅箔を貼りあわせた後、この銅箔をメッシュ状に加工することにより、又は銅や銀などの導電性インクを透明基体上にメッシュ状に印刷することにより製造される。
【0026】
また、電磁波遮蔽フィルム41としては、透明基体上に、スパッタ法により電磁波遮蔽層を形成したものが挙げられる。電磁波遮蔽層は、例えば、金属酸化物層と金属層とが交互に積層されたものであって、金属層の層数がnであり、金属酸化物層の層数がn+1である(ただし、nは1以上の整数である。)。金属酸化物層は、インジウムとスズとの酸化物、チタンと亜鉛との酸化物、アルミニウムと亜鉛との酸化物、ニオブの酸化物等からなるものが好ましい。また、金属層は、銀、銀合金等からなるものが好ましい。
【0027】
電磁波遮蔽フィルム41の透明基体は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂からなる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースが透明性や加工性の観点から好ましい。
【0028】
電磁波遮蔽フィルム41の透明基体の厚さは、10〜500μmが好ましく、30〜300μmがより好ましく、50〜200μmがさらに好ましい。透明基体の厚さを10μm以上とすることで、製造時における破れなどの破損を抑制できる。また、透明基体の厚さを500μm以下とすることで、加工性が向上し、また可視光線透過率が高くなり好ましい。
【0029】
コントラスト向上フィルム42は、外光によるコントラストの低下を抑制する。コントラスト向上フィルム42についても透明性が必ずしも高くないことから、第1のフィルタ部4に設けることで、第2のフィルタ部5の透明性を高め、すなわちヘイズ値を低下させて、表示画像の画質を向上できる。また、コントラスト向上フィルム42を第1のフィルタ部4に設けることで、第2のフィルタ部5に設ける場合に比べて、表示画像のコントラストを向上する効果を大きくできる。
【0030】
コントラスト向上フィルム42は、例えば、透明基体42aと、この透明基体42a上に形成され、水平方向に延び、かつ互いに平行に配置される複数の透光性領域42bと、これら透光性領域42b間に形成される断面形状がくさび形の暗色部42cとを有する。暗色部42cは暗色粒子を含有するものであり、その断面形状は、くさび形状の他、略台形状、正方形状、長方形状等であってもよい。
【0031】
透明基体42aは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂からなる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースが透明性や加工性の観点から好ましい。透光性領域42bおよび暗色部42cは、通常、紫外線硬化性樹脂および光重合開始剤を含有する樹脂組成物を用いて形成される。
【0032】
透明基体42aの厚さは、10〜500μmが好ましく、30〜300μmがより好ましく、50〜200μmがさらに好ましい。透明基体42aの厚さを10μm以上とすることで、製造時における破れなどの破損を抑制できる。また、透明基体42aの厚さを500μm以下とすることで、加工性が向上し、また可視光線透過率が高くなり好ましい。
【0033】
このようなコントラスト向上フィルム42によれば、暗色粒子を含有する暗色部42cによって外光を吸収して表示画像のコントラストを向上でき、また透光性領域42bは暗色粒子を含有しないことから光透過性が過度に低下せず、表示画像が暗くなることによる視認性の低下を抑制できる。
【0034】
反射防止フィルム43は、可視光線の反射を抑制する。第1のフィルタ部4の視認側の最表面には、このような反射防止フィルム43、または後述する防眩フィルムもしくは反射防止効果を有する防眩フィルムが設けられることが好ましい。これらのフィルムを設けることで、映りこみを抑制でき、または表示画像のコントラストを向上できる。
【0035】
反射防止フィルム43は、透明基体上に反射防止層を有するものである。反射防止フィルム43の透明基体は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂からなる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースが透明性や加工性の観点から好ましい。
【0036】
反射防止フィルム43の透明基体の厚さは、10〜500μmが好ましく、30〜300μmがより好ましく、50〜200μmがさらに好ましい。樹脂フィルムの厚さを10μm以上とすることで、製造時における破れなどの破損を効果的に抑制することができる。また、樹脂フィルムの厚さを500μm以下とすることで、加工性が向上し、また可視光線透過率も高くなるために好ましい。
【0037】
反射防止層としては、屈折率の低い無機化合物と屈折率の高い無機化合物とを交互に積層した積層膜や、屈折率の低い無機化合物からなる膜、屈折率の低い樹脂からなる膜等が挙げられる。屈折率の低い無機化合物としては、例えば、二酸化珪素等が挙げられる。屈折率の低い樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0038】
反射防止フィルム43としては、特にポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に含フッ素重合体からなる低屈折率材料の反射防止層が形成されたものが好ましい。この場合、低屈折率材料の屈折率は、1.1〜1.6が好ましく、1.2〜1.5がより好ましく、1.3〜1.48がさらに好ましい。
【0039】
第1のフィルタ部4には、反射防止フィルム43の代わりに、可視光線の反射による映りこみを低減する防眩フィルム(アンチグレアフィルム)を設けてもよいし、反射防止効果を有する防眩フィルムを設けてもよい。防眩フィルムは、表面に設けられる凹凸部からなる防眩層を有する。防眩層は、表面に設けられた凹凸部により、この表面に映る反射像を拡散させて輪郭をぼかす効果、および第1のフィルタ部4と第2のフィルタ部5の界面におけるニュートンリングの発生を抑制する効果を有する。
【0040】
防眩フィルムとしては、透明基体の表面に、シリカ等の無機微粒子、またはアクリル系樹脂等の有機微粒子をバインダ中に分散した溶液をコーティングし、溶媒を揮発させて凹凸部からなる防眩層としたものや、サンドブラスト、またはエッチング等により透明基体自身に凹凸部からなる防眩層を形成したものが挙げられる。また、防眩層上に反射防止層を形成することで、反射防止効果を有する防眩フィルムとすることができる。
【0041】
防眩フィルムの透明基体は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂からなる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースが透明性や加工性の観点から好ましい。
【0042】
粘着層44は、各フィルムを貼り合わせるものであり、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ブタジエン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等からなり、特にアクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤は、アクリル系単量体単位を主成分として含む重合体からなる。アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸、(無水)フマル酸、クロトン酸、これらのアルキルエステルが挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸を総称するものとして使用する。(メタ)アクリレートも同様である。
【0043】
第1のフィルタ部4は、例えば、コントラスト向上フィルム42、電磁波遮蔽フィルム41、および反射防止フィルム43のそれぞれに粘着層44を設けた後、それぞれの粘着層44により貼り合わせて一体化することにより製造される。一体化物は、貼り合わせに利用されなかった粘着層44によりPDP本体2に貼り合わせることができる。なお、第1のフィルタ部4は、例えば、PDP本体2に、コントラスト向上フィルム42、電磁波遮蔽フィルム41、反射防止フィルム43を、順次、粘着層44により貼り合わせて形成してもよい。
【0044】
第2のフィルタ部5は、第1のフィルタ部4とは分離され、第1のフィルタ部4の視認側に配置される。第2のフィルタ部5は、第1のフィルタ部4との間に間隔を設けて配置されてもよいし、第1のフィルタ部4に接触して配置されてもよい。なお、第2のフィルタ部5は、第1のフィルタ部4と接触してもよいが、粘着層等による粘着等が行われないものである。第1のフィルタ部4と第2のフィルタ部5との間の間隔は、通常、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。
【0045】
第2のフィルタ部5は、透明基板51を有する。透明基板51のPDP本体2側には、例えば、着色層52、PDP本体側反射防止フィルム53が、この順に設けられる。また、透明基板51の視認側には、視認側反射防止フィルム54が設けられる。なお、PDP本体側反射防止フィルム53は、着色層52によって透明基板51に貼り合わされ、視認側反射防止フィルム54は、粘着層44によって透明基板51に貼り合わされる。
【0046】
透明基板51は、例えば、ガラス板(風冷強化ガラス板、化学強化ガラス板等の強化ガラス板を含む。)、ポリエチレンテレフタレート板、ポリブチレンテレフタレート板等のポリエステル系樹脂板、トリアセチルセルロース板等のセルロース系樹脂板、アクリル系樹脂板、又はポリカーボネート系樹脂板が挙げられる。中でも、ガラス板が、十分な剛性を有すること、PDPから発せられる熱に対して変形がほとんどないこと、質感等外観に優れること等の理由から好ましく用いられる。透明基板51の厚さは、0.5〜4mmが好ましく、0.7〜3.2mmがより好ましい。透明基板51の厚さを0.5mm以上とすることで、自身の強度を確保し、製造工程における損傷等を抑制できる。また、透明基板51の厚さを4mm程度とすることで強度を十分とし、これ以下の厚さとすることで重量の増加も抑制できる。
【0047】
透明基板51には、PDP本体2側の周縁部に、PDP本体2の画像表示領域の周縁に配置されるコネクタ等の部品を隠蔽する黒色枠等の隠蔽層55を設けることが好ましい。隠蔽層55は、例えば、低融点ガラスと顔料を含む組成物や、光遮蔽性樹脂を含むインクの印刷により形成される。
【0048】
着色層52は、着色色素を含有する。着色色素は、色調補正色素および近赤外線吸収色素から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。このような着色層52を第2のフィルタ部5に設けることで、光学フィルタ3への映り込みを効果的に抑制できる。着色層52は、例えば、粘着剤中に着色色素が分散含有されたものであり、色調補正層や近赤外線吸収層として機能するとともに、粘着層として機能する。上記した反射防止フィルム43は、このような着色層52によって透明基板51に貼り合わされる。
【0049】
色調補正色素は、可視光の特定波長域の一部を吸収し、透過可視光の色調を改善する。色調補正色素としては、例えば、アゾ系、縮合アゾ系、ジイモニウム系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、インジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、キナクリドン系、メチン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、ピロール系、チオインジゴ系、金属錯体系、ポルフィリン系、テトラアザポルフィリン系等の周知の有機顔料および有機染料、無機顔料が挙げられる。
【0050】
色調補正色素の中でも、耐候性が良好であるとともに粘着剤との相溶性または分散性が良好な色素、例えば、アンスラキノン系色素、キノフタロン系色素、およびテトラアザポルフィリン系色素から選ばれる1種、または2種以上を適宜組み合わせて用いることが好ましい。また、アンスラキノン系色素、およびテトラアザポルフィリン系色素から選ばれる1種、または2種以上を適宜組み合わせて用いることがより好ましい。
【0051】
「アンスラキノン系色素」
アンスラキノン系色素としては、例えば下記一般式(1)、(2)で表される化合物が好ましく挙げられる。
【0052】
【化1】

【0053】
式中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、シアノ基、ベンジル基、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されている炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されているフェニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されている炭素数1〜12のアルコキシル基、−CO−R(ただし、Rは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−ナフチル基または2−ナフチル基のいずれかである。)、−S−R(ただし、Rは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−ナフチル基または2−ナフチル基のいずれかである。)または−NH−Ph(ただし、Phは、フェニル基または、1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基および炭素数1〜10のアルコキシル基のいずれかに置換されているフェニル基。)のいずれかである。
【0054】
式(1)で表される化合物のうち、Rは−NH−Ph(ただし、Phは、フェニル基または、1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基および炭素数1〜10のアルコキシル基のいずれかに置換されているフェニル基。)であることが好ましい。また、R、R、R、およびRは、前記4つの基のうち1つが水酸基、フェニル基および1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されているフェニル基から選ばれる1つであり、残りの3つの基が水素原子であることが好ましい。R、R、Rは水素原子であることが好ましい。置換基が前記である化合物であると、溶剤への溶解性が優れるので好ましい。
【0055】
【化2】

【0056】
式中、R〜R22は、それぞれ独立に水素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、シアノ基、ベンジル基、炭素数1〜12のアルキル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されている炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されているフェニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されているアルコキシル基、−CO−R(ただし、Rは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−ナフチル基または2−ナフチル基のいずれかである。)、−S−R(ただし、Rは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−ナフチル基または2−ナフチル基のいずれかである。)または−NH−Ph(ただし、Phは、フェニル基または、1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基および炭素数1〜10のアルコキシル基のいずれかに置換されているフェニル基。)のいずれかである。
【0057】
アンスラキノン系色素としては、式(1)で表される化合物が溶剤への溶解性の観点で好ましい。式(1)で表されるアンスラキノン系色素として、例えば、日本化薬社製商品名「カヤセットViolet A−R」、「カヤセットBlue N」、「カヤセットBlue FR」、「カヤセットGreen A−B」等が挙げられる。
【0058】
「テトラアザポルフィリン系色素」
また、テトラアザポルフィリン系色素としては式(3)で表される構造を有することが好ましい。
【0059】
【化3】

【0060】
式中、R23〜R30は、それぞれ独立に水素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、シアノ基、ベンジル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されているベンジル基、フェニル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されているフェニル基、炭素数1〜10のアルキル基、1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されている炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基または1以上の水素原子がフッ素原子、臭素原子または塩素原子に置換されている炭素数1〜10のアルコキシル基のいずれかである。
は、Cu、Ni、Zn、Pd、Pt、VO、CoおよびMgのいずれかである。
23〜R30は、炭素数1〜6のアルキル基であることが、溶剤への溶解性の観点で好ましい。Mは、CuまたはVOであることが好ましい。
【0061】
式(3)で表されるテトラアザポルフィリン系色素としては、例えば、山田化学社製商品名「TAP−2」「TAP−18」「TAP−45」等が挙げられる。
【0062】
テトラアザポルフィリン系色素は、PDPが発する波長590nm付近のオレンジ色の不要光を効率的に吸収できるため好ましく使用できる。また、耐久性の観点からは、アンスラキノン系色素が好ましい。テトラアザポルフィリン系色素およびアンスラキノン系色素を組み合わせて用いることがより好ましい。
【0063】
近赤外線吸収色素としては、例えば、ポリメチン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、アミニウム系色素、イモニウム系色素、ジイモニウム系色素、アンスラキノン系色素、ジチオール金属錯体系色素、ナフトキノン系色素、インドールフェノール系色素、アゾ系色素、トリアリルメタン系色素、酸化タングステン系色素等が挙げられる。熱線吸収や電子機器のノイズ防止の用途には、最大吸収波長が750〜1100nmである近赤外線吸収色素が好ましく、アミニウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素、酸化タングステン系色素が特に好ましい。
【0064】
近赤外線吸収色素は1種類としてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。近赤外線吸収色素の耐久性の観点から、1種類のみまたは2種以上のフタロシアニン系色素を組み合わせて用いることが好ましい。また、耐久性の観点に加え、近赤外線を充分にかつ効率的に吸収できることから、2種以上のフタロシアニン系色素を組み合わせて用いることがより好ましい。また、ジイモニウム系色素も近赤外線を効率的に吸収できることから好ましい。
【0065】
「ジイモニウム系色素」
ジイモニウム系色素は、下記一般式(4)で表される化合物である。
【0066】
【化4】

【0067】
式中、R31〜R38は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換基を有するアルキル基、アルケニル基、置換基を有するアルケニル基、アリール基、置換基を有するアリール基、アルキニル基または置換基を有するアルキニル基を表し、Zは陰イオンを表す
【0068】
31〜R38において、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第二ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、n−ペンチル基、第三ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、または第三オクチル基等が挙げられる。該アルキル基はアルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホ基、またはカルボキシル基等の置換基を有してもよい。
【0069】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、またはオクテニル基等が挙げられる。該アルケニル基は、ヒドロキシル基、カルボキシ基等の置換基を有してもよい。
【0070】
アリール基としては、例えば、ベンジル基、p−クロロベンジル基、p−メチルベンジル基、2−フェニルメチル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、α−ナフチルメチル基、またはβ−ナフチルエチル基等が挙げられる。該アリール基は、ヒドロキシル基、カルボキシ基等の置換基を有してもよい。
【0071】
アルキニル基としては、例えば、プロピニル基、ブチニル基、2−クロロブチニル基、ペンチニル基、またはヘキシニル基等が挙げられる。該アルキニル基は、ヒドロキシル基、カルボキシ基等の置換基を有してもよい。
【0072】
31〜R38は、n−ブチル基またはイソブチル基であることが好ましい。n−ブチル基またはイソブチル基であることで、湿気に対する耐久性が優れるため好ましい。特にイソブチル基であることが好ましい。
【0073】
は、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、硝酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、P−トルエンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、プロピル硫酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ヘキサフルオリン酸イオン、ベンゼンスルフィン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酢酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、マロン酸イオン、オレイン酸イオン、ステアリン酸イオン、クエン酸イオン、一水素二リン酸イオン、二水素一リン酸イオン、ペンタクロロスズ酸イオン、クロロスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロヒ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、(RSOまたは(RSO[Rは炭素数1〜4のフルオロアルキル基を表す]等の陰イオンを表す。
【0074】
これらの陰イオンのうち、過塩素酸イオン、ヨウ素イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、(RSO、(RSO等が好ましく、特に(RSO、(RSOが熱安定性に最も優れるため好ましい。
【0075】
「フタロシアニン系色素」
フタロシアニン系色素としては、フタロシアニン骨格(下記化学式(5)参照)を有する化合物であれば特に制限されない。式(5)中のMは、Cu、Ni、Zn、Pd、Pt、VO、CoおよびMgのいずれかであり、CuまたはVOであることが好ましい。フタロシアニン系色素の中でも、粘着剤組成物の近赤外線吸収性が高くなることから、800〜1100nmに極大吸収波長を有する近赤外線吸収色素であることが好ましい。800〜1100nmに極大吸収波長を有するフタロシアニン系色素としては、例えば、日本触媒社製、商品名「イーエクスカラーIR−12」、商品名「イーエクスカラーIR−14」、商品名「TX−EX−906B」、商品名「TX−EX−910B」)等の市販品が挙げられる。
【0076】
【化5】

【0077】
「酸化タングステン系色素」
酸化タングステン系色素は、W(ただし、2.2≦s/r≦2.999である。)で表される酸化タングステン微粒子、またはA(ただし、AはH、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される元素、0.001≦t/u≦1.1、2.2≦v/u≦3.0である。)で表される複合タングステン酸化物微粒子であることが好ましい。
【0078】
着色色素の含有量は、粘着剤100質量部に対し、0.1〜20質量部が好ましく、1.0〜15質量部がより好ましい。着色色素の含有量を0.1質量部以上とすることで、着色色素の効果を充分に得ることができる。また、着色色素の含有量を20質量部以下とすることで、着色層52の耐久性を高くすることができる。
【0079】
着色層52は、通常、粘着剤と、着色色素である色調補正色素および近赤外線吸収色素から選ばれる少なくとも1種とを有機溶剤に溶解させて色素組成物を調製し、これをPDP本体側反射防止フィルム53に塗工し、乾燥させて有機溶剤を蒸発させることにより形成することができる。なお、色素組成物は、必要に応じて、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤等を含有できる。
【0080】
有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン系、メタノール、エタノール、i−プロピルアルコール等のアルコール系、ヘキサン等の炭化水素系、および、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いてもよく、必要に応じて適宜混合して用いてもよい。
【0081】
塗工方法としては、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法、スリットダイコーター法、グラビアコーター法、スリットリバースコーター法、マイクログラビア法、コンマコーター法等のコーティング法を採用できる。
【0082】
着色層52の厚さは、0.3〜50μmであることが好ましく、0.5〜30μmであることがより好ましい。0.3μm以上とすることで、色調補正効果、近赤外線吸収効果等を充分に発揮することができ、50μm以下とすることで成形時の有機溶剤の残留を低減することができる。
【0083】
PDP本体側反射防止フィルム53、及び視認側反射防止フィルム54は、第1のフィルタ部4における反射防止フィルム43と同様とすることができる。なお、PDP本体側反射防止フィルム53、視認側反射防止フィルム54についても、防眩フィルム、反射防止効果を有する防眩フィルムに適宜変更できる。
【0084】
粘着層44も、第1のフィルタ部4における粘着層44と同様とすることができる。なお、粘着層44、すなわち第2のフィルタ部5における視認側に配置される粘着層については、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、オキザニリド系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0085】
紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収剤の種類によっても異なるが、粘着剤100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、2〜50質量部が好ましい。1質量部以上とすることで、光学フィルタ3の耐久性を向上でき、100質量部以下とすることで、光学フィルタ3に求められる他の物性を確保できる。
【0086】
第2のフィルタ部5は、例えば、PDP本体側反射防止フィルム53の透明基板51側に着色層52を形成し、この着色層52を利用して透明基板51に貼り合わせるとともに、視認側反射防止フィルム54の透明基板51側に粘着層44を形成し、この粘着層44を利用して透明基板51に貼り合わせることで製造できる。なお、第2のフィルタ部5の製造方法は、上記方法に限られない。
【0087】
以上、PDP装置1、光学フィルタ3について一例を挙げて説明したが、第1のフィルタ部4には、電磁波遮蔽フィルム41およびコントラスト向上フィルム42の双方が設けられることが好ましいが、一方のみが設けられてもよく、所定のヘイズ値の関係を満たす場合、一方が第1のフィルタ部4に設けられ、他方は第2のフィルタ部5に設けられてもよい。また、電磁波遮蔽フィルム41とコントラスト向上フィルム42との位置関係は、適宜変更することができる。
【0088】
反射防止層は、第1のフィルタ部4の視認側の主面および第2のフィルタ部5の両側の主面の全てに設けられることが好ましいが、必ずしも全ての主面に設けられる必要はなく、全ての主面に設けられていなくてもよい。防眩層は、第1のフィルタ部4の視認側の主面および第2のフィルタ部5の両側の主面から選ばれる少なくとも1つの主面に設けられることが好ましいが、必ずしも設けられる必要はない。さらに、第1のフィルタ部4、第2のフィルタ部5には、必要に応じて、かつ本発明の目的の範囲内において、他の層、例えば、ハードコート層等が適宜設けられてもよい。
【実施例】
【0089】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
なお、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
【0090】
まず、光学フィルタの製造に用いる粘着フィルムA〜Hを作製した。
【0091】
<粘着フィルムA>
反射防止フィルム(日油社製、商品名「リアルック1700」)のロールを準備し、反射防止層が形成された面とは反対側の面に、380nmにおける透過率が7%以下となるように紫外線吸収剤を混合した透明アクリル樹脂製粘着剤(厚さ25μm)を積層し、粘着フィルムAを得た。
【0092】
<粘着フィルムB>
反射防止フィルム(日油社製、商品名「リアルック1700」)のロールを準備し、反射防止層が形成された面とは反対側の面に、PDPの色調補正および近赤外線吸収用の着色色素入りのアクリル樹脂製粘着剤(厚さ25μm)を積層し、粘着フィルムBを得た。
【0093】
着色色素には、ネオンカット色素(波長590nm付近に吸収極大を有する色素)(山田化学社製、商品名「TAP2」)および、色調補正色素(日本化薬社製、商品名「KAYASORB VIOLET A−R」、「KAYASORB GREEN A−B」)および近赤外線吸収色素(日本触媒社製、商品名「IR−14」、「IR−20」、「IR−915」)等を使用し、後述する加飾用光学フィルタ(第2のフィルタ部)の視感透過率が50%、近赤外線透過率(850nm〜950nm)が20%以下となるように調整した。
【0094】
<粘着フィルムC>
透明基体の表面に凹凸部からなる防眩層が形成されるとともに、この防眩層上に反射防止層が形成されたアンチグレアフィルム(日油社製、商品名「リアルック7300」)のロールを準備し、防眩層や反射防止層が形成された面とは反対側の面に、粘着フィルムBと同じ着色色素入りのアクリル樹脂製粘着剤(厚さ25μm)を積層し、粘着フィルムCを得た。
【0095】
<粘着フィルムD>
反射防止フィルム(日油社製、商品名「リアルック1700」)のロールを準備し、反射防止層が形成された面とは反対側の面に、透明アクリル樹脂製粘着剤(厚さ25μm)を積層し、粘着フィルムDを得た。
【0096】
<粘着フィルムE>
防眩フィルム(日油社製、商品名「リアルック7300」)のロールを準備し、凹凸部からなる防眩層が形成された面とは反対側の面に透明アクリル樹脂製粘着剤(厚さ25μm)を積層し、粘着フィルムEを得た。
【0097】
<粘着フィルムF>
透明基体の表面に凹凸部からなる防眩層が形成されるとともに、この防眩層上に反射防止層が形成されたアンチグレアフィルム(日油社製、商品名「リアルックTX090」)のロールを準備し、防眩層や反射防止層が形成された面とは反対側の面に透明アクリル樹脂製粘着剤(厚さ25μm)を積層し、粘着フィルムFを得た。
【0098】
<粘着フィルムG>
反射防止フィルム(日油社製、商品名「リアルック1700」)のロールを準備し、反射防止層が形成された面とは反対側の面に、PDPの色調補正および近赤外線吸収用の着色色素および紫外線吸収剤入りのアクリル樹脂製粘着剤(厚さ25μm)を積層し、粘着フィルムGを得た。
【0099】
着色色素には、ネオンカット色素(波長590nm付近に吸収極大を有する色素)(山田化学社製、商品名「TAP2」)および、色調補正色素(日本化薬社製、商品名「Kayaset VIOLET A−R」、「Kayaset GREEN A−B」)および近赤外線吸収色素(日本触媒社製、商品名「イーエクスカラーIR−14」、「イーエクスカラーIR−20」、「イーエクスカラーIR−915」)等を使用し、後述する加飾用光学フィルタ(第2のフィルタ部)の視感透過率が50%、近赤外線透過率(850nm〜950nm)が20%以下、380nmにおける透過率が7%以下となるように調整した。
【0100】
次に、加飾用光学フィルタ(第2のフィルタ部)の黒色枠付きガラス基板を作製した。なお、黒色枠付きガラス基板は、第2のフィルタ部における隠蔽層を有する透明基板に相当する。
【0101】
<黒色枠付きガラス基板>
縦横の寸法が42インチのディスプレイ用であり、面取りが施されたガラス基板(形状:長方形、寸法:607mm×1012mm、厚さ2.5mm)を準備した。このガラス基板のPDP本体側となる面に、スクリーン印刷法により該ガラス基板の周縁部全周に黒色枠(幅40mm)を印刷し、黒色枠付きガラス基板を得た。黒色インクには、ガラスペースト(旭硝子製、「TP24K」)を使用した。また、黒色枠の長辺のうちの1辺には、印刷面とは逆の面の方向から視認できるようにロゴ用の文字を印刷した。
【0102】
次に、PDP本体への貼り付け用光学フィルタ(本体用光学フィルタ;第1のフィルタ部)、加飾用光学フィルタ(第2のフィルタ部)を作製した。
【0103】
(実施例1)
黒色枠付きガラス基板に、粘着フィルムA(形状:長方形、寸法:605mm×1010mm)と粘着フィルムB(形状:長方形、寸法:535mm×938mm)を積層し、加飾用光学フィルタを得た。ロゴの文字が視認側から見た時に粘着フィルムBによって着色して見えるのを防ぐため、粘着フィルムAを視認側に、粘着フィルムBをPDP本体側に積層した。粘着フィルムAはガラス基板全面を覆うように、粘着フィルムBは黒色枠に4mm重なる大きさとなるように積層した。
【0104】
透明粘着層を有する電磁波遮蔽エッチングメッシュフィルム(凸版印刷社製、商品名「TPJ39A2−E4211」、形状:長方形、寸法:547mm×951mm)の上に、同じく透明粘着層を有するコントラスト向上フィルム(大日本印刷社製、商品名「CRF A0P51T48−4201」、形状:長方形、寸法:532mm×937mm)、および粘着フィルムE(形状:長方形、寸法:530mm×935mm)を、この順に貼り合わせた後、温度60℃、圧力0.95MPaでオートクレーブ処理を施し、本体用光学フィルタを得た。エッチングメッシュフィルムのサイズをコントラスト向上フィルムおよび粘着フィルムEのサイズより大きくすることで、フィルタ周辺部において、エッチングメッシュフィルムを剥き出しの状態とし、接地部を形成した。
【0105】
(実施例2)
粘着フィルムEを粘着フィルムF(形状:長方形、寸法:530mm×935mm)に変えた以外は、実施例1と同様に加飾用光学フィルタおよび本体用光学フィルタを作製した。
【0106】
(実施例3)
粘着フィルムBを粘着フィルムC(形状:長方形、寸法:535mm×938mm)に、粘着フィルムEを粘着フィルムD(形状:長方形、寸法:530mm×935mm)変えた以外は、実施例1と同様に加飾用光学フィルタおよび本体用光学フィルタを作製した。
【0107】
(比較例1)
粘着フィルムA(形状:長方形、寸法:605mm×1010mm)を黒色枠付きガラス基板の視認側に積層した。また、黒色枠付きガラス基板のPDP本体側に、透明粘着層を有するコントラスト向上フィルム(大日本印刷社製、商品名「CRF A0P51T48−4201」、形状:長方形、寸法:545mm×948mm)、透明粘着層を有する電磁波遮蔽エッチングメッシュフィルム(凸版印刷社製、商品名「TPJ39A2−E4211」、形状:長方形、寸法:545mm×948mm)、粘着フィルムC(形状:長方形、寸法:532mm×935mm)をこの順に貼り合わせた後、温度60℃、圧力0.95MPaでオートクレーブ処理を施し、PDP本体の前面に配置される前面板としての単一の光学フィルタを得た。粘着フィルムCのサイズをエッチングメッシュフィルムのサイズをより小さくすることで、フィルタ周辺部において、エッチングメッシュフィルムを剥き出しの状態とし、接地部を形成した。
【0108】
(比較例2)
電磁波遮蔽エッチングメッシュフィルム(凸版印刷社製、商品名「TPJ39A2−E4211」、形状:長方形、寸法:547mm×951mm)の上に、同じく透明粘着層を有するコントラスト向上フィルム(大日本印刷社製、商品名「CRF A0P51T48−4201」、形状:長方形、寸法:532mm×937mm)、および粘着フィルムG(形状:長方形、寸法:530mm×935mm)を、この順に貼り合わせた後、温度60℃、圧力0.95MPaでオートクレーブ処理を施し、PDP本体に積層される単一の光学フィルタを得た。
【0109】
(比較例3)
粘着フィルムBを粘着フィルムD(形状:長方形、寸法:535mm×938mm)に、粘着フィルムEを粘着フィルムC(形状:長方形、寸法:530mm×935mm)に変えた以外は、実施例1と同様に加飾用光学フィルタおよび本体用光学フィルタを作製した。
【0110】
(比較例4)
粘着フィルムA(形状:長方形、寸法:605mm×1010mm)を黒色枠付きガラス基板の視認側に積層し、加飾用光学フィルタを得た。また、粘着フィルムEを粘着フィルムC(形状:長方形、寸法:530mm×935mm)に変えた以外は、実施例1と同様に、本体用光学フィルタを作製した。
【0111】
次に、以下の手順によって、実施例および比較例の加飾用光学フィルタおよび本体用光学フィルタを評価した。
【0112】
(ヘイズ)
ヘイズは、JIS K7150に基づき、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH5000W)にて測定した。測定は、加飾用光学フィルタと本体用光学フィルタとについて、それぞれ単独で行った。
【0113】
(視感反射率)
視感透過率は、C光源を用いて、分光光度計(島津製作所製、製品名:Solid Spec 3700)により、JIS Z8701に基づき測定した。測定は、加飾用光学フィルタと本体用光学フィルタを重ね合わせた状態で行った。
【0114】
(視感透過率)
視感透過率は、C光源を用いて、分光光度計(島津製作所製、製品名:Solid Spec 3700)により、JIS Z8701に基づき測定した。測定は、加飾用光学フィルタと本体用光学フィルタとについて、それぞれ単独で行った。
【0115】
(画質、映り込み)
画質および映り込みの評価は、42インチのプラズマテレビ(パナソニック社製、TH−42PZ800)からPDP本体の前面に設置された光学フィルタを取り外した後、該PDP本体の表面に、本体用光学フィルタを貼り、その上に加飾用光学フィルタをセットして目視にて行った。
【0116】
画質については、外光を遮断した暗所環境下において、白色と黒色の画像を同時に表示させ、白と黒の境界部が鮮明に見える場合を「○」、やや不鮮明に見える場合を「△」、不鮮明に見える場合を「×」と評価した。なお、評価は、加飾用光学フィルタと本体用光学フィルタとのギャップ(間隔)を0mmにした場合、および7mmにした場合について行った。
【0117】
映り込みについては、明所環境下(F10光源、150lx トプコン社製、照度計IM−5Mで測定)において、目視にて反射像を確認し、反射像を視認しにくい場合を「○」、やや視認しやすい場合を「△」、視認しやすい場合を「×」と評価した。
【0118】
結果を表1に示す。なお、表中、「AR」は反射防止層を有するもの、「AG」は防眩層を有するもの、「UV」は紫外線吸収剤を含有するもの、「着色」は着色色素を含有するもの、「透明」は着色色素を含有しないものを示す。
【0119】
【表1】

【0120】
表1から明らかなように、実施例1〜3の光学フィルタによれば、黒色枠等の加飾を行うことができるために意匠性に優れており、また表示画像の画質を良好にできるとともに、映り込みも抑制できる。一方、比較例1の光学フィルタによれば、前面板を有するために加飾を行うことができるが、前面板に全ての機能層を設けるために表示画像の画質が低下する。比較例2の光学フィルタによれば、前面板を有しないために加飾を行うことができない。比較例3の光学フィルタによれば、実施例1と基本的な構成は同様であるが、着色層の位置が異なるために、映り込みを十分に抑制できない。比較例4の光学フィルタによれば、比較例3の光学フィルタに比べて反射防止層が少ないために、比較例3よりさらに映り込みが発生しやすい。
【符号の説明】
【0121】
1…PDP装置、2…PDP本体、3…光学フィルタ、4…第1のフィルタ部、5…第2のフィルタ部、41…電磁波遮蔽フィルム、42…コントラスト向上フィルム、43…反射防止フィルム、44…粘着層、51…透明基板、52…着色層、53…PDP本体側反射防止フィルム、54…視認側反射防止フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマディスプレイパネル本体に積層される第1のフィルタ部と、前記第1のフィルタ部とは分離して設けられ、前記第1のフィルタ部の視認側に配置される第2のフィルタ部とを有する光学フィルタであって、
前記第1のフィルタ部は、着色層以外の機能層を少なくとも1層有し、
前記第2のフィルタ部は、透明基板と、前記透明基板の前記プラズマディスプレイパネル本体側に積層される着色層とを有し、かつ
前記第1のフィルタ部のヘイズ値が前記第2のフィルタ部のヘイズ値よりも大きい
ことを特徴とする光学フィルタ。
【請求項2】
前記着色層は、粘着剤と、前記粘着剤中に含有される着色色素とを有することを特徴とする請求項1記載の光学フィルタ。
【請求項3】
前記着色色素は、近赤外線吸収色素および色調補正色素から選ばれる少なくとも1種を有することを特徴とする請求項2記載の光学フィルタ。
【請求項4】
前記着色層以外の機能層は、電磁波遮蔽層およびコントラスト向上層から選ばれる少なくとも1種を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の光学フィルタ。
【請求項5】
前記第1のフィルタ部の主面および前記第2のフィルタ部の主面から選ばれる少なくとも1つの主面に、反射防止層、防眩層、およびハードコート層から選ばれる少なくとも1種を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の光学フィルタ。
【請求項6】
前記第1のフィルタ部の視感透過率が前記第2のフィルタ部の視感透過率よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の光学フィルタ。
【請求項7】
プラズマディスプレイパネル本体と、前記プラズマディスプレイパネル本体に設けられる光学フィルタとを有するプラズマディスプレイパネル装置であって、
前記光学フィルタが請求項1乃至6のいずれか1項記載の光学フィルタであることを特徴とするプラズマディスプレイパネル装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−234028(P2012−234028A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102040(P2011−102040)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】