説明

光学フィルター

【課題】色補正機能層および/または近赤外線カット機能層を含む光学フィルターにおいて、色補正機能層および/または近赤外線カット機能層の製造工程が効率化され、表示装置の種類が多くかつ各々に用いるフィルターの生産量の数量が少ない場合すなわち少量他品種生産に適し、しかも色相斑が少ない表示装置用光学フィルターを提供することにある。
【解決手段】色補正機能層および/または近赤外線カット機能層が昇華性色素の昇華転写により形成されて成ることを特徴とする光学フィルター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルターに関するものであり、詳しくは、光学表示装置の前面に配置し又は貼り付けられる色補正機能層および/または近赤外線カット機能層の機能および製造工程が改良された光学フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスオートメーション機器、工場オートメーション機器等における各種のコンピューターディスプレイや、ゲーム機、テレビ等の表示面の大型化に伴って表示装置は、奥行きが厚い従来のブラウン管方式から薄い液晶表示装置やプラズマ表示パネル装置(PDP)など、所謂フラットパネルディスプレイに移行しつつある。
【0003】
PDPや冷陰極線管(CRT)は、前面からの漏洩電磁波の強度が強いことから、優れた電磁波カット機能が求められており、その表示面の前面に電磁波カット機能層が設けられている。そして特にPDPにおいては、さらにその前面から発光光源のセル内のNeガスやXeガス等の不活性ガスの発光に由来する近赤外線が放出されるが、この近赤外線の波長は各種家電機器のリモコン装置の動作波長に近く、当該家電機器の誤動作の原因となることから、この近赤外線は、通常、近赤外線を吸収する色素を含む薄膜の層(近赤外線カット機能層)を透過させてカットされている。
【0004】
しかし、上記の近赤外線を吸収するこの色素は、一般に可視部領域でも吸収があるため近赤外線カット機能層を設けることにより表示画像に色相の偏りが生じており、また、PDPは、一般に、その発光光源の三原色のバランスに色相の偏りがあり、これらの色相の偏りによりいずれもきれいな白色の表現が困難である。そこで、それらの色相の偏りを中立化してきれいな白色を表現するため、通常、近赤外線カット層にさらに色補正色素を組み合わせるか、またはこの色補正機能を有する別の層(色補正機能層)が設けられている。また、液晶表示装置の場合は、通常、白色光を光源とし、これを、様々な形に微細パターン化された色素の層(三原色発生機能層、所謂カラーフィルター)を透過させて三原色の光源を発生させている。
【0005】
また、上記の光学表示装置表面には、視認性向上の観点から、通常、反射防止機能層や防眩機能層が設けられており、上記の電磁波カット機能層、近赤外線カット機能層、色補正機能層、三原色発生機能層などと共にこれらの各機能層を纏めて光学フィルターとして構成し、前面板として表示面の前面に配置したり、表示面に直接貼り付けて使用されている。このように、光学表示装置には、それぞれ求められる機能の組み合わせに違いはあるが、種々の光学的機能層を含む光学フィルターが使用されている。
【0006】
上記の光学フィルターを構造の面から見ると、例えば、要求される機能に応じて電磁波カット機能、近赤外線カット機能、色補正機能、反射防止機能、防眩機能などの各種機能層を組み合わせてこれらをガラス板、アクリル板などの透明基材上に積層して前面板とし、表示装置の前面に配置する方法が提案されている。(特許文献1参照)。しかし、上記の前面板は、各種機能を有する層を順次組合せてガラス、アクリル板などの透明基材上に積層されて構成されるため、全体が堅い板状でしかも厚さが厚くなり、使用する際には表示装置の前面に重ねて配置されるため、表示装置全体としても重く且つ厚いものとなってしまう。このため、ガラス、アクリル板などの透明基材を省き、全体を表示面の前面に粘着剤層を介して直接貼り付けるタイプの光学フィルムも提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2002−123182号公報
【特許文献2】特開2004−069931号公報
【0008】
ところで、それらの機能を有する層の中で、液晶表示装置の三原色発生機能層や、近赤外線カット色素を含有する層または色補正色素を含有する近赤外線カット機能層としては、通常、(1)透明樹脂中に色補正色素を配合したり含浸して染色した着色フィルムを使用したり、(2)溶媒により溶解した樹脂溶液中にこれらの色素を混合し均一に分散させた塗布溶液を透明性ベースフィルム上に均一に又はパターン状に塗布したり印刷し、乾燥して色素含有層を形成させた着色層被覆フィルムを使用したり、(3)これらの色素を、各機能層間の接合に使用されている粘着剤層に添加して着色粘着剤層とする方法などが挙げられる。
【0009】
ところで、上記の近赤外線カット機能層および色補正機能層の内、近赤外線カット機能層は、カットされる近赤外線が目に見えない波長帯であるため色素の近赤外線カット特性の波長分布が多少変化しても、また、その色素の濃度分布に斑があっても視聴者には感知されないが、近赤外線カット色素の可視光線領域での色相の偏りおよびPDPでの光源による偏りの中立化のために使用される色補正色素の分布斑は、可視光領域で表示される画像の画質を損なう原因となる。例えば、前記の着色フィルムや着色層被覆フィルムを製造したり、あるいは、着色粘着剤層を設ける場合、それらの中での色素の分布斑や、それらの層の厚さ斑や塗り斑があると、結果的に、色相斑の原因となり、表示される画像の画質を損なう原因となる。また、これらのフィルムは、光源の種類、近赤外線カット機能層および色補正機能層に使用する色素の種類に応じて多品種の規格が生じるにも関わらず製造する工程が長いため大量生産が必要であり、また、粘着剤を使用するばあいは、生産後の残余粘着剤はロスとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
すなわち、本発明の課題は、色相斑が少なく、しかも色補正色素および近赤外線カット色素を含む層(色補正機能層、近赤外線カット機能層)の製造工程が効率化された、例えば、少量多品種生産に適した光学フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、色補正機能層および/または近赤外線カット機能層を含む光学フィルターにおいて、色補正機能層および/または近赤外線カット機能層が昇華性色素の昇華転写により形成されて成ることを特徴とする光学フィルターに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光学フィルターは、色補正機能層が昇華性色素を昇華し転写して形成されるため、従来の着色フィルムや着色層被覆フィルム等のような湿式のプロセスで必要とされる乾燥工程が不要となり、さらに、昇華性色素は短時間で基材へ転写されるので、色補正機能層の形成に要する時間が大いに短縮され製造工程の簡略化が図られるため、品種切り替えが容易となり、多品種少量生産が効率化される。また、製品特性では、色補正機能層および/または近赤外線カット機能層の専用の基材および透明粘着剤層を希望により省略することが出来るため、軽薄化が可能となる。また、色補正機能層の主要要素である昇華性色素層は、昇華性色素の昇華・転写機構により形成されるためその厚さ斑が小さく、従って表示面の色斑が生じにくい。それと同時に色補正機能層(昇華性色素層)表面が平滑に形成されるため光学フィルター全体の平滑性も改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の光学フィルターの色補正機能層および/または近赤外線カット機能層は、実質的には昇華性色素の層から成る。
【0014】
上記の光学フィルターは、色補正機能層および/または近赤外線カット機能層の他、必要により、反射防止機能層または防眩機能層、電磁波カット機能層などの各種機能層と組み合わせて構成することが出来るが、通常、反射防止機能層または防眩機能層、電磁波カット機能層をもすべて組み合わせて構成される。かかる光学フィルターの層構成としては、例えば、ガラス、アクリル板などの透明基材上に上記の各層を適当な順に組合せて積層された前面板タイプ、および、上記のガラス、アクリル板などの透明基材を使用しないで各機能層のみを相互に積層し、粘着剤層を介して表示装置前面に直接貼り付けるフィルムタイプのものを含む。
【0015】
上記の前面板タイプの光学フィルターを構成する各機能層の積層順および積層形態は、特に限定されないが、典型的構成例として、次のような例が挙げられる。
(反射防止機能層)/(色補正機能層)/(透明粘着剤層)/半強化ガラス板/(透明粘着剤層)/(電磁波カット機能層)/(透明粘着剤層)/(近赤外線カット機能層)/
【0016】
また、上記のフィルムタイプの光学フィルターを構成する各機能層の積層順および積層形態は、特に限定されないが、構成例として、次のような例が挙げられる。
(反射防止機能層)/(色補正機能層)/(透明粘着剤層)/(電磁波カット機能層)/(透明粘着剤層)/(近赤外線カット機能層)/(透明粘着剤層)/(離型紙)
【0017】
本発明の光学フィルターに組み込まれる機能層としては、上記の構成例に示された機能層に限定されず、例えば、近赤外線カット色素が昇華性である場合は、近赤外線カット機能層を色補正機能層と纏めて一つの層として構成することが出来る。また、各層の積層順を変更したり、反射防止機能層を防眩機能層と置き換えたり、さらに光量調節機能層、その他の機能層を追加して組み込むことが出来る。なお、上記の構成例中の色補正機能層および近赤外線カット機能層は、通常それぞれに基材層を含んでいるが、当該機能層の本質部分(基材を含まない部分)を透明粘着剤層の介在なく隣接する他の機能層面(機能層の本質部分面または基材層面)に直接積層することも出来る。
【0018】
上記の各機能層同士を貼り合わせる際には、使用される透明粘着剤として、例えば、天然ゴム系、SBR系、ブチルゴム系、再生ゴム系、アクリル系、ポリイソブチレン系、シリコーンゴム系、ポリビニルブチルエーテルなどを挙げることができ、中でもアクリル系が好ましい。粘着剤に関しては、高分子学会編「高機能接着剤・粘着剤」などに記載されているものを用いることができる。透明粘着剤層は、これらの粘着剤を水または他の溶媒に溶解あるいは分散した塗布液を接着面に直接塗布し、乾燥して得られるが、あらかじめ剥離性の良好なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの支持体上に粘着剤層を転写して粘着剤層を設けることもできる。
【0019】
前記の近赤外線カット機能層を構成する近赤外線カット色素としては、近赤外線カット機能があり、且つ可視光領域はよく透過する色素が使用され、公知のものから選択することが出来る。かかる色素としては、例えば、有機物質であるニトロソ化合物及びその金属錯塩、ポリメチン系色素(シアニン系、オキソノール系、クロコニウム系、スクワリリウム系、ピリリウム系、アズレニウム系、)、チオピリリウム系色素、テトラデヒドロコリン系色素、トリフェニルメタン系色素、ジチオール錯塩系化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、トリアリルメタン系色素、インモニウム系色素、ジインモニウム系色素、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミノ化合物、アミニウム塩系化合物、または、無機物であるカーボンブラックや、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、周期律表4A、5Aまたは6A族に属する金属の酸化物、もしくは炭化物、またはホウ化物などが挙げられる。
【0020】
上記の近赤外線カット色素の具体例としては、イーエックスカラー802K、イーエックスカラー803K、イーエックスカラー814K(以上いずれも日本触媒社製の商品名)、IR−750、IRG−002、IRG−003、IRG−022、IRG−023、IRG−820、CY−2、CY−4、CY−9、CY−20(以上いずれも日本化薬社製の商品名)、PA−001、PA−1005、PA−1006、SIR−114、SIR−128、SIR−130、SIR−159(以上いずれも三井東圧化学社製の商品名)が挙げられる。その中で、近赤外線カット機能が、例えば波長750〜1200nmの近赤外線の光線透過率が30%以下のものが好ましく、25%以下のものがより好ましく、20%以下のものが更に好ましく、且つ波長450〜650nmの可視光領域の全光線透過率が45%以上のものが好ましく、60%以上のものがより好ましく、80%以上のものがさらに好ましい。
【0021】
上記の近赤外線カット色素には、必要であればさらに他の近赤外線カット剤を組み合わせて使用することが出来、特に可視部での透明性と、赤外線カット性能の面から、上記の色素とポリメチン系色素、ジインモニウム系色素、フタロシアニン化合物及びナフタロシアニン化合物から選ばれる近赤外色素と組み合わせることが好ましい。
【0022】
上記の近赤外線カット色素を用いて近赤外線カット機能層を形成する方法としては、当該近赤外線カット色素を(1)透明樹脂中に分散させて着色フィルムにする方法、(2)溶媒により溶解した樹脂溶液中にこれらの色素を混合、均一に分散させた塗布溶液を透明性ベースフィルム上に塗布し、乾燥して近赤外線カット樹脂層を形成させて着色塗布フィルムにする方法、(3)各機能層間の接合に使用する粘着剤層に上記の色素を添加する方法など公知の方法を採用することが出来るが、色素が昇華・熱転写性を有する場合は、次に述べる色補正機能層の場合と同様に昇華転写法を適用することも出来るし、この色素を色補正機能層の色補正色素に配合することも出来る。
【0023】
前記の色補正機能層は、通常、昇華性色素を含むインクリボン等から基材上に昇華して転写することにより形成することが出来る。上記の色補正機能層が形成される面として、特に色補正機能層のための専用基材を準備してその表面としてもよいが、他の機能層の外面、例えば、前記の反射防止機能層、電磁波カット機能層、近赤外線カット機能層などの面を兼用することが出来る。兼用する場合は、専用基材を使用しないことにより原料の節約、製品としての光学フィルターの質量や厚さを軽薄化することが出来る。基材の色素が昇華転写される面は、その基材が専用として準備される場合および他の機能層の基材が兼用される場合の何れの場合においても、転写される色素の安定性を保持したり、熱転写持にインクリボンが貼り付くのを防止するため、受容性の改善処理を行うのが好ましい。
【0024】
上記の受容性の改善処理方法としては、特に制限されないが、たとえば、基材層素材を改質する方法、および基材表面に直接あるいは接着剤を介して受容層を形成する方法、が挙げられる。
【0025】
上記の基材層素材を改質する方法としては、例えば、基材を構成する熱可塑性樹脂にシリコーン化合物を含有させる方法が挙げられる。かかる基材を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂のエチレングリコール成分の10〜70モル%をシクロヘキサンジメタノールに置換してなる共重合ポリエステル樹脂100質量部と、エチレンと酢酸ビニル、酢酸エチル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸及びアイオノマーからなる群より選ばれた1種以上を添加して共重合した共重合体0.1〜2質量部、好ましくは0.5〜1.5質量部とを含有したものを使用することもできる。上記のエチレン共重合体を0.1〜2質量部添加することによりで、印刷時のインクリボンの貼り付きを抑制することが可能となり上記のシリコーン化合物の添加量を抑えることができる。
【0026】
上記のシリコーン化合物としては、シリコーンオイル、シリコーン変性樹脂からなる群より選ばれた1種以上を含有した化合物が挙げられる。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、ビニル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、アルキルアラルキルポリエーテル変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられる。シリコーン変性樹脂としては、シリコーン・アクリル共重合体、シリコーン架橋アクリル樹脂、シロキサン架橋型アクリル樹脂、シリコーン・ウレタン共重合体、シリコーン変性ポリイミド樹脂、シランブロックアクリル樹脂等が挙げられる。また、前述のシリコーンオイルをグラフト化した樹脂も使用することが可能である。
【0027】
上記のシリコーン化合物の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1〜10質量部が好ましく、さらに好ましくは0.5〜8質量部である。0.1質量部未満では、昇華転写持にインクリボンが貼り付き不具合が発生しやすく、また、10質量部より大きくなると、熱可塑性樹脂との相溶性が悪くブツやムラ等の欠点が増える。そして、上記の熱可塑性樹脂には、必要により、透明性を実質的に損なわない範囲において、さらに、相溶化剤、安定剤、滑剤、補強剤、加工助剤、顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、分散剤、増粘剤、その他無機充填剤や樹脂改質剤等を含有させることが出来る。
【0028】
上記の受容層を形成する方法としては、例えば、昇華性色素受容層として使用されている長鎖ジカルボン酸ポリオ−ルを反応させたポリエステル樹脂などのポリエステル樹脂、ポリビニルブチラ−ル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリ酢酸ビニル、スチレンアクリレート樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ビニルトルエンアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン)、尿素樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオ−ル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等を、トルエン、メチルエチルケトン、メタルイソブチルケトン等の有機溶媒に溶解して公知の塗工方法もしくは印刷方法によって、基材の表面に塗布し乾燥して形成する方法、或いは、上記の樹脂を基材表面に溶融押出しラミネートする方法等が挙げられる。これらの樹脂には、色素安定剤として金属錯塩、紫外線吸収剤、フェノ−ル誘導体などを含有させることができ、また熱昇華性インクリボンと昇華性色素受容層とのスティックを防止するためのシリコーン化合物、その他種々の添加剤も含有させることができる。
【0029】
上記の受容性をさらに改良した受容層を形成する樹脂としては、例えば、特開平9−118836に記載の酸価が80以上、好ましくは80〜250程度、より好ましくは90〜200程度、更に好ましくは95〜180程度、もっと好ましくは98〜170程度の樹脂を含む光硬化性樹脂組成物をあげることが出来る。上記の樹脂としては、例えばカルボン酸基またはカルボン酸エステル基を含有する樹脂や(メタ)アクリル酸(エステル)の重合物があげられる。これらは併用してもよい。また、かかる光硬化性樹脂組成物には、通常、光重合開始剤、及び、その他に、必要に応じ、光架橋剤、光重合性硬化膜改質剤や熱硬化剤等の各成分が配合される。
【0030】
上記の光重合開始剤としては、例えばジベンジル;ベンゾインエーテル;ベンゾインイソブチルエーテル;ベンゾインイソプロピルエーテル;ベンゾフェノン;ベンゾイル安息香酸;ベンゾイル安息香酸メチル;4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド;ベンジルメチルケタール;2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート;2−クロロチオキサントン;2,4−ジエチルチオキサントン;2,4−ジイソプロピルチオキサントン;ジメチルアミノメチルベンゾエート;p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル;3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン;2,4−ジメチルチオキサントン;1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン;1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン;イソプロピルチオキサントン;メチロベンゾイルフォーメート;2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独又は2種以上を混合して使用することができ、光重合性化合物の総質量に対し、0.5〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%の範囲内で添加される。
【0031】
また、前記の光架橋剤は光により架橋または重合可能なモノマー、オリゴマー、プレポリマー等である。このようなモノマー、オリゴマー、プレポリマーの例としては、例えばエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレングリコールジメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレートのような1価又は多価アルコールのアクリル酸又はメタクリル酸のエステル類;多価アルコールと1塩基酸又は多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに(メタ)アクリル酸を反応して得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を反応させた後(メタ)アクリル酸を反応して得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸グリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の通常の光重合性樹脂が挙げられる。
【0032】
また、光重合性硬化膜改質剤としては、例えば上記の易現像性の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂以外の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸グリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂などのエポキシ基と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるヒドロキシ基に酸無水物を反応させたエポキシ(メタ)アクリレート−カルボン酸付加物;無水マレイン酸と共重合可能な、エチレン、プロペン、イソブチレン、スチレン、ビニルフェノール、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド等のモノマーとの共重合体の無水マレイン酸部にヒドロキシエチルアクリレート等のアルコール性のヒドロキシ基を持つアクリレートやグリシジルメタクリレート等のエポキシ基をもつアクリレートを反応させハーフエステル化した化合物;アクリル酸、アクリル酸エステルとヒドロキシエチルアクリレート等のアルコール性のヒドロキシ基を持つアクリレートの共重合体の−OH基にさらにアクリル酸を反応せしめた化合物等も挙げられる。
【0033】
上記のような光重合性化合物は、単独又は混合して使用されその合計量が、上記の易現像性の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂の質量を100部とした場合、50〜150部、さらに好ましくは、80〜120部の範囲で使用される。
【0034】
上記の熱硬化剤は、熱により架橋又は重合可能な化合物であり、例えばエポキシ化合物を挙げる事ができる。エポキシ化合物は上記の易現像性の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂等と熱的に反応し架橋する事により耐熱性を向上させる。具体的なエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸グリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂などが挙げられる。このようなエポキシ化合物は単独又は混合して使用され、その合計量が、上記の易現像性の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂の質量を100部とした場合、5〜30部、さらに好ましくは、10〜20部の範囲で使用される。
【0035】
なお、前記の酸価が80以上の樹脂として、例えば上記の(メタ)アクリル酸(エステル)の重合物を使用する場合、この重合物は光非硬化性なので、光重合開始剤の他に多官能性の樹脂や光架橋剤が必要であり、さらに必要に応じ、光重合性硬化膜改質剤や熱硬化剤等の各成分が配合される。多官能性の樹脂としては、例えば上記の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂があげられる。尚、光重合開始剤、光架橋剤、光重合性硬化膜改質剤や熱硬化剤等としては、例えば上記したものがあげられる。
【0036】
本発明で使用する透明基板の色素受容層に使用する光硬化性樹脂組成物は前記した各成分を前記したような割合に混合することによって得られる。混合は、通常有機溶剤中で行われ、光硬化性樹脂組成物溶液が得られる。上記の有機溶剤の具体例としては、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルセロソルブアセテート、イソプロピルセロソルブアセテート、メトキシイソプロピルグリコールアセテート、エトキシイソプロピルグリコールアセテート、ジグライムなどがあるが、これらに制限されるものではない。この溶液を後述する様な塗工機に適正な粘度まで有機溶剤により希釈することが望ましい。
【0037】
上記のようにして得られた光硬化性樹脂組成物溶液は、異物を除去する目的で、フィルターリングした後に基材面に塗布、乾燥される。フィルターリングは通常の濾過機を用いて実施される。
【0038】
上記の塗布方法は、透明基板への塗布は、スピンコーターやロールコーター等の各種コーターを用い、公知の方法で行われる。透明基板に塗布、乾燥された光硬化性樹脂組成物の薄膜に、電子線、紫外線、可視光線等の活性エネルギー線が照射され、その硬化膜となる。この硬化膜が色素受容層となる。硬化膜の膜厚は0.1〜5μm、好ましくは0.5〜3μm程度である。
【0039】
前記のインクリボンは、基材シートに昇華性色素の層が形成されたものである。
上記の昇華性色素としては、上記の昇華性色素としては、特に限定されないが、大気圧下、70〜260℃の温度で昇華または蒸発する色素が好ましい。そのような色素としては、例えば、アゾ化合物、アントラキノン類、キノフタロン類、スチリル類、ジフェニルメタン類、トリフェニルメタン類、オキサジン類、トリアジン類、キサンテン類、メチン化合物、アゾメチン化合物、アクリジン類、ジアジン類等の色素および塩基性色素が挙げられる。中でも、1,4−ジメチルアミノアントラキノン、臭素化または塩素化1,5−ジヒドロキシ−4,8−ジアミノ−アントラキノン、1,4−ジアミノ−2,3−ジクロロ−アントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシ−2−(β−メトキシエトキシ)アントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシ−2−フェノキシアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン−2−カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルまたはブチルエステル、1,4−ジアミノ−2−メトキシアントラキノン、1−アミノ−4−アニリノアントラキノン、1−アミノ−2−シアノ−4−アニリノ(またはシクロヘキシルアミノ)アントラキノン、1−ヒドロキシ−2−(p−アセトアミノフェニルアゾ)−4−メチルベンゼン、3−メチル−4−(ニトロフェニルアゾ)ピラゾロン、3−ヒドロキシキノフタロン等が好ましい。
【0040】
また、上記の昇華性色素としては、別の観点から、例えば、キノリン系色素、スチリル系色素、アゾ色素等があげられる。上記のキノリン系色素としては、例えば下記式(i)の化合物が、スチリル系色素としては、例えば下記式(ii)の化合物があげられる。また、上記のアゾ色素としては、カップリング成分に注目すると、例えばピラゾール系アゾ色素(例えば下記式(iii)の化合物)、アニリン系アゾ色素(例えば下記式(iv)、式(v)の化合物)、ピリドン系アゾ色素(例えば下記式(vi)の化合物)等のモノアゾ色素が具体例として挙げられるが、昇華性及び色相の観点からピリドン系モノアゾ色素、ピラゾール系モノアゾ色素が好ましい。
【0041】

【0042】
また、具体的な色素としては、例えば、黄色色素として、C.I.ディスパーズイエローの1,3,8,9,14−1,16,41,42,54,60,77,116,125(S)等、赤色色素としては、C.I.ディスパーズレッドの1,4,6,11,15,17,50,55,59,60,73,83,111,135,228(S)等、青色色素としては、C.I.ディスパーズブルーの33,56,106,241やC.I.ソルベントブルーの36,83,90,105,112,114(S)等が挙げられる。
【0043】
次に、上記のインクリボンは、耐熱性且つ表面滑性が優れた基材シート(フィルム)上に上記昇華性色素とバインダー樹脂を溶剤に溶解し、公知の方法で塗布、乾燥して昇華性色素含有層を形成することにより該シートが得られる。上記の色素は通常赤・緑・青(R,G,B)の3原色を別々に含むインクリボンに構成され、使用時に色補正機能層として必要な色相に合わせてそれぞれの転写濃度を調節することも出来るが、対応する表示装置の光源の種類、近赤外線カット機能層の色相が変動しない場合は、上記のインクリボンの昇華性色素含有層に含まれる色素を上記の色補正機能層に必要な色相を転写できるような多種類の昇華性色素の配合処方とするのが実用的である。上記の昇華性色素の配合処方は、各色素の色相と昇華転写条件における昇華特性と、前記の近赤外線カット機能層による色相の偏り及び表示装置の光源色相の偏りとを考慮して色相が中立となるように適宜設定される。
【0044】
上記の基材シートとしては、例えばポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリプロピレンフィルム等が用いられる。
【0045】
上記のバインダー樹脂は、昇華性色素をできるだけ単分散状態に溶解或いは分散保持させ、かつ該色素との親和性が低く、加熱された場合にこの色素を放出し易い樹脂が好ましく、例えばブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリメチルメタクリレート変性アセタール樹脂があげられる。昇華性色素とバインダー樹脂との混合比は、通常、1:9〜8:2である。上記の昇華性色素含有層の厚さは、使用目的により異なるが、通常0.5〜10μm程度であり、好ましくは4〜8μm程度である。
【0046】
前記の色補正機能層は、前記の専用または兼用される基材面またはその面に形成された受容層に、以上のようにして得られたインクリボンのインク面を重ね合わせ、サーマルヘッドやレーザ光等の加熱手段でインク層を加熱し、インク中の昇華性色素を本発明の昇華性色素を転写して形成される。この際、上記のインクリボンの色素の配合処方が三原色などの様に色補正機能層に必要な色相と一致しない場合は、必要な色相に合あうように各々の色相のリボンについて転写濃度を調節しつつ重ねて転写処理される。尚、転写処理の際、転写される基材面とインクリボン表面との間は、密着していてもよく、又500μm程度まで、好ましくは300μm程度まで、さらに好ましくは200μm程度までの間隔があってもよい。
【0047】
また、前記の液晶表示装置用の三原色発生機能層としての光学フィルターは、通常、光の三原色のインクリボンを使用し、微細な単位三原色光源の配置パターンに対応する電子データを原稿として上記の色補正機能層の形成の場合と同様にサーマルヘッドやレーザ光等の加熱手段を有するプリンター等を用いてインク層を加熱し、インク層中の昇華性色素を昇華・転写して三原色パターン配列の色素層を形成することにより製造することが出来る。
【0048】
上記の反射防止機能層としては、公知のものを組み合わせて使用することが出来るが、たとえば、特開2004−069931号公報に記載の反射防止層が例示される。上記の公報に記載の反射防止層は、ポリエステル等からなる基材上に屈折率の高い材料と低い材料を基材上に交互に積層し、多層化(マルチコート)することにより形成されるもので、表面の反射が抑えられ、良好な反射防止効果を得ることができる。この反射防止層は、通常、SiOに代表される低屈折率材料の層と、TiO、ZrO等に代表される高屈折率材料の層とを交互に、蒸着等により成膜する気相法や、ゾルゲル法等によって積層することにより形成することが出来る。
【0049】
上記の低屈折率層の屈折率は、反射防止効果を向上させるためには、1.45以下であることが好ましい。これらの特徴を有する材料としては、例えばLiF(屈折率n=1.4)、MgF(n=1.4)、3NaF・AlF(n=1.4)、AlF(n=1.4)、NaAlF(n=1.33)、SiO(n=1.45)等の無機材料を微粒子化し、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂等に含有させた無機系低反射材料や、フッ素系、シリコーン系の有機化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、放射線硬化型樹脂等の有機低反射材料を挙げることができる。さらに、5〜30nmのシリカ超微粒子を水もしくは有機溶剤に分散したゾルとフッ素系の皮膜形成剤を混合した材料を使用することもできる。
【0050】
上記の5〜30nmのシリカ超微粒子を水もしくは有機溶剤に分散したゾルとしては、ケイ酸アルカリ塩中のアルカリ金属イオンをイオン交換等で脱アルカリする方法やケイ酸アルカリ塩を鉱酸で中和する方法等で知られた活性ケイ酸を縮合して得られる公知のシリカゾル、アルコキシシランを有機溶媒中で塩基性触媒の存在下に加水分解と縮合することにより得られる公知のシリカゾル、さらには上記の水性シリカゾル中の水を蒸留法等により有機溶剤に置換することにより得られる有機溶剤系のシリカゾル(オルガノシリカゾル)が用いられる。
【0051】
これらのシリカゾルは水系および有機溶剤系のどちらでも使用することができる。有機溶剤系シリカゾルの製造に際し、完全に水を有機溶剤に置換する必要はない。前記シリカゾルは通常、SiOとして0.5〜50質量%濃度の固形分を含有する。シリカゾル中のシリカ超微粒子の構造は球状、針状、板状等様々なものが使用可能である。また、皮膜形成剤としては、アルコキシシラン、金属アルコキシドや金属塩の加水分解物や、ポリシロキサンをフッ素変性したものなどを用いることができる。
【0052】
上記の低屈折率層は、上記で述べた材料を例えば溶剤に希釈し、スピンコーター、ロールコーティングや印刷等によるウェットコーティング法で塗布し乾燥した後、熱や放射線(紫外線の場合は上述の光重合開始剤を使用する)等により硬化させる方法によって、また、真空蒸着、スパッタリング、プラズマCVD、イオンプレーティング等による気相法によって、設けることができる。
【0053】
前記の高屈折率層は、屈折率を高くするために高屈折率のバインダー樹脂を使用するか、高い屈折率を有する超微粒子をバインダー樹脂に添加するか、あるいはこれらを併用することによって達成することが出来る。高屈折率層の屈折率は1.55〜2.70の範囲にあることが好ましい。
【0054】
上記のバインダー樹脂としては、透明なものであれば任意であり、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、放射線(紫外線を含む)硬化型樹脂などを用いることができる。熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を用いることができ、これらの樹脂に、必要に応じて架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等を加えることができる。
【0055】
上記の高い屈折率を有する超微粒子としては、例えば、紫外線カットの効果をも得ることができる、ZnO(屈折率n=1.9)、TiO(n=2.3〜2.7)、CeO(n=1.95)の微粒子、また、帯電防止効果が付与されて埃の付着を防止することもできる、アンチモンがドープされたSnO(n=1.95)またはITO(n=1.95)の微粒子が挙げられる。その他の微粒子としては、Al(n=1.63)、La(n=1.95)、ZrO(n=2.05)、Y(n=1.87)等を挙げることができる。これらの超微粒子は単独または混合して使用され、有機溶剤または水に分散したコロイド状になったものが分散性の点において良好であり、その粒径としては、1〜100nm、塗膜の透明性から好ましくは、5〜20nmであることが望ましい。
【0056】
上記の高屈折率層および低屈折率層を形成するには、上記で述べた材料の組合せを例えば溶剤に希釈し、スピンコーター、ロールコーター、印刷等の方法で基体上に設けて乾燥後、熱や放射線(紫外線の場合は上述の光重合開始剤を使用する)等により硬化させれば良い。
【0057】
前記の電磁波カット機能層としては、電磁波カット機能を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、導電性繊維メッシュ、透明導電膜、導電性金属網状体などを挙げることが出来る。
【0058】
上記の導電性繊維メッシュは、軽量でかつ耐久性、柔軟性に優れた金属化繊維織物から構成されるものが好ましい。金属化繊維織物の製法自体は、重要ではなく、いかなる製法で得られた金属化繊維織物であっても使用することができる。こうした金属化繊維織物の中でも、例えば、ポリエステル等の合成繊維製織物等に表面樹脂処理した後、その上にニッケル、又は銅、ニッケルのような導電性金属を15〜30質量%無電解メッキ加工した導電布、或いは、ポリエステル等の合成繊維製メッシュに銅、銀又はニッケルのような導電性金属を無電解メッキし、さらに黒色化処理を施した導電性メッシュなどは、耐久性と柔軟性に優れ、導電性部材として適している。上記導電性メッシュの繊維径は、通常10〜60μmであり、また、メッシュサイズは、40〜200メッシュの範囲が好適である。なお、上記メッシュサイズとは、タイラー標準ふるいで規定されるサイズである。
【0059】
前記の透明導電膜としては、例えば金属および/または金属酸化物等からなる1層以上の透明導電層を真空蒸着やスパッタリング等の手段により形成させたものや、金属微粒子および/または金属酸化物微粒子等の導電性を有する微粒子を分散させた樹脂をコートしたものを挙げることが出来る。
【0060】
上記の金属としては、例えば金、銀、白金、パラジウム、銅、チタン、クロム、モリブデン、ニッケル、ジルコニウム等が挙げられる。中でも、銀は、導電性に一層優れた導電層が得られること、近赤外線の波長領域を反射し、近赤外線カット機能を有することから特に好ましい。なお、導電層としてこの金属層を設けた場合には、金属層の反射を防止するために誘電体層との多層膜とするのが好ましい。このような誘電体層としては、例えば各種金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物などからなる層を例示することができる。
【0061】
上記の金属酸化物としては、例えば酸化ケイ素、酸化チタン、酸化タンタル、酸化錫、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化インジウムと酸化錫の複合酸化物などが挙げられる。これらの金属及び金属酸化物は、この中から1種を単独で用いても良いし、あるいは2種以上を併用して用いても良い。また、上記導電膜を形成する場合は、必ずしも透明基材上に形成する必要は無く、ポリエステル等の樹脂フィルムの表面に形成し、導電性フィルムとしても良い。
【0062】
前記の導電性金属網状体としては、導電性インキ等を用いて透明基材表面に格子状パターンを印刷する方法、或いは透明基材表面に銅、銀、アルミニウム等の金属薄膜を設けた後、エッチング等の手段で格子状パターンを形成する方法等を例示できる。また、銅、銀、アルミニウム等の素材金属を圧延加工等の塑性加工により得た所定の厚さの金属箔をパンチング加工等により多数の孔を設け、格子状パターンしたものも、上記導電性金属網状体として例示できる。上記格子状パターンは、ライン幅5〜50μm、厚さ1〜100μm、ライン部のピッチは、150〜800μmの範囲が電磁波シールド性能及び透明性の面から好ましい。
【0063】
本発明において、電磁波カット機能層は、透明基材と光学系フィルムの間に挿入するように積層して一体化されるのが好ましい。このような位置に挿入配置することにより表示装置用前面板の反りを低減することができる。具体的には、例えば透明基材、導電性部材、光学系フィルムをこの順序で配置し、各部材間に接着層を設け、透明接着剤を使用し又は熱圧着により一体化すれば良い。また、本発明での導電性部材は、透明基材の少なくとも1面上において積層されていればよいが、透明基材の両面に積層されていてもよい。さらに導電性部材は、1種類の導電性部材を複数用いてもよいし、また異なる種類の導電性部材を複数用いてもよい。さらにまた、複数の導電性部材を用いる場合には、透明基材に対して1面上に用いてもよく、また両面に用いることもでき、種類および組合せは特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のようにして得られる本発明の光学フィルターは、製造工程では、色補正機能層および/または近赤外線カット機能層が昇華性色素を昇華し転写して形成されるため、製造工程の簡略化が図られ、また、製造時間の短縮化が図られ、その結果、他品種少量生産が可能となる。また、製品特性では、色補正機能層および/または近赤外線カット機能層専用の基材および透明粘着剤層を省略することが出来るため軽薄化が向上し、また、色補正機能層および/または近赤外線カット機能層、あるいは三原色発生機能層が昇華性色素の昇華により転写して形成されるため、その表面がおのずから平滑に形成され、それに伴い光学フィルター全体の平滑性も改善される、また色補正機能層の厚さ斑が改善されて表示面の色斑が生じにくい。以上のように、製造工程および製品特性において多くの利点があり、その産業上の利用効果は大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色補正機能層および/または近赤外線カット機能層を含む光学フィルターにおいて、色補正機能層および/または近赤外線カット機能層が昇華性色素の昇華転写により形成されて成ることを特徴とする光学フィルター。

【請求項2】
光学フィルターがプラズマディスプレイパネル用であることを特徴とする光学フィルター。



【公開番号】特開2007−322571(P2007−322571A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150841(P2006−150841)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(591145335)パナック株式会社 (29)
【Fターム(参考)】