説明

光学フィルター

【課題】
色補正色素を含む層(色補正層)の製造工程が効率化され、ディスプレイの種類が多くかつ各々に用いるフィルターの生産量の数量が少ない場合であっても、必要に応じた在庫を持てばよく、しかも色相斑が少ないディスプレイパネル用光学フィルターを提供する。
【解決手段】
光学フィルターは、複数の機能層1・2・4・45・5からなり、ディスプレイパネルに接合される光学フィルターにおいて、前記複数の機能のうち少なくとも1層が、昇華性色素が昇華転写されて着色した色補正層45である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイパネルに接合する光学フィルター、特にはディスプレイの光学特性の調整に有用な光学フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピューター、ゲーム機、テレビ等のディスプレイは、画面の大型化に伴って、奥行きが厚いブラウン管表示装置から薄い液晶表示装置やプラズマディスプレイ装置に移行しつつある。プラズマディスプレイは、表示の応答性がブラウン管並に優れている一方で、液晶ディスプレイと比較して漏洩電磁波の強度が強い。そのため、プラズマディスプレイには、優れた電磁波遮蔽機能を要請されている。さらに、プラズマディスプレイは、前面からセル内のNeガスやXeガス等の不活性ガスの発光に由来する赤外線乃至近赤外線(以下、単に「赤外線」と記載し、近赤外線領域まで含む概念を指称する)が放出される。かかる赤外線の波長は、各種家電機器のリモートコントロール機器の動作波長に近く、誤動作の原因となることが多いため、プラズマディスプレイからの赤外線を遮断することも要請されている。
【0003】
またディスプレイ全般に云えることであるが、画質向上、視認性向上の観点から、画面のちらつきなどを防止する等の反射防止機能や防眩機能も要請されている。
【0004】
各種ディスプレイは、使用される用途、形態等に応じて、上記のような電磁波遮蔽機能、赤外線遮断機能、反射防止機能、防眩機能などの各種機能を具備することが要求され、このような要求に対して従来から、これら各種機能のうちのいくつかを適宜に備えた前面板をこのディスプレイパネルの前面に配置する方法が広く採用されている。
【0005】
ディスプレイパネルの前面板は、各機能を具備した複数の部材から構成される。代表的な例として、特許文献1に示すように、ガラス板、アクリル板などの透明基材上に、要求される性能に応じて電磁波遮蔽機能、赤外線遮断機能、反射防止機能、防眩機能などの各種機能等の機能を有する層を順次組合せて積層することにより構成されている。そのため、全体が硬い板で厚みもあり、使用する際にはディスプレイパネルの前面に重ねて配置し、表示装置全体として重く且つ厚いものとなってしまう。
【0006】
かかるディスプレイパネルの前面板を軽量化するため、特許文献2には、ガラス、アクリル板などの透明基材を省き、全体をディスプレイパネル前面に粘着剤層を介して直接貼り付けるタイプの光学フィルムも提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−123182号公報
【特許文献2】特開2004−069931号公報
【0008】
上記の各機能層の中で、赤外線遮断層は、赤外線吸収色素により赤外線をカットするが、赤外線吸収色素を使用することにより生じる着色すなわち色相の偏り、さらに例えば元々ディスプレイ装置の光源自体に存在している色相の偏りを修正するために、赤外線吸収色素を含む層にさらに色補正色素を組み合わせている。または、この色補正機能の部分を別の層として組み合わせて、この色相の偏りが調整されている。
【0009】
上記の赤外線吸収色素による赤外線遮断機能は、全体として赤外線吸収能力が高ければ高いほどよい。赤外線は目に見えない波長帯であることを考慮すると、カット特性の波長分布が多少変化しても視聴者には感知されないから、専ら赤外線遮断機能だけを請け負う層は、多くのタイプのプラズマディスプレイパネルに同じ赤外線吸収色素を使用しても特に問題は無い。従って、赤外線遮断機能だけを請け負う層は、多くのタイプのプラズマディスプレイパネルに共用の部材として、同一の処方のものを大量生産して在庫を持つことが出来る。
【0010】
一方、色補正のための層は、赤外線吸収色素と色補正色素とを共に含む場合または色補正色素のみからなる場合であっても、また、その層の形態が着色フィルム、着色塗布フィルムあるいは色素を含有する接着剤層の何れであっても、使用した赤外線吸収色素の種類やプラズマディスプレイのタイプに応じてそれぞれ最適の色補正色素の配合処方を調整する必要がある。
【0011】
従って、それらの組合せに対応して多品種の在庫を持つ必要がある。各品種はおのずから小ロットとなり、製造が非効率となるという難点がある。さらに、これらの層がプラズマディスプレイから発せられる光情報が透過してくる層であることから、色補正のための層を形成する色素の配合時の混合斑、着色層および粘着剤層塗布時の塗布斑などによる色斑が目立ち易いという難点がある。各々の着色塗布フィルムおよび着色粘着剤の場合は一定のロットの生産後に残った色素を含む塗布溶液や粘着剤残液は、ロスとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような不都合を解消するため、色補正色素を含む層(色補正層)の製造工程が効率化され、プラズマディスプレイの種類が多くかつ各々に用いるフィルターの生産量の数量が少ない場合であっても、必要に応じた在庫を持てばよく、しかも色相斑が少ないプラズマディスプレイパネル用光学フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するための特許請求の範囲、請求項1に係る発明の光学フィルターは、複数の機能層からなり、ディスプレイパネルに接合される光学フィルターにおいて、前記複数の機能のうち少なくとも1層が、昇華性色素が昇華転写されて着色した色補正層であることを特徴とする。
【0014】
同じく請求項2に係る発明の光学フィルターは、請求項1に係る発明の光学フィルターであって、前記色補正層が色素受容層に昇華性色素が昇華転写されて着色した色補正層であることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明の光学フィルターは、請求項1に係る発明の光学フィルターであって、前記色補正層が他の複数の機能層から独立した層であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明の光学フィルターは、請求項1に係る発明の光学フィルターであって、前記複数の機能層が赤外線遮断層、電磁波遮蔽層、および反射防止層から選ばれる少なくとも1層であり、その1層に前記した昇華性色素が昇華転写されて着色していることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る発明の光学フィルターは、請求項1に係る発明の光学フィルターであって、前記複数の機能層が少なくとも電磁波遮蔽層を有し、プラズマディスプレイパネル、陰極線管パネル、または電界放射ディスプレイパネルに粘着されることを特徴とする。
【0018】
請求項6に係る発明の光学フィルターは、請求項1に係る発明の光学フィルターであって、前記色補正層が、該赤外線遮断層の可視光線透過強度分布に対して、該昇華性色素の可視光線吸収特性が補色関係にあることで前記色補正機能を有することを特徴とする。
【0019】
請求項7に係る発明の光学フィルターは、請求項1に係る発明の光学フィルターであって、該昇華性色素が1,4−ジメチルアミノアントラキノン、臭素化または塩素化1,5−ジヒドロキシ−4,8−ジアミノ−アントラキノン、1,4−ジアミノ−2,3−ジクロロ−アントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシ−2−(β−メトキシエトキシ)アントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシ−2−フェノキシアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン−2−カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルまたはブチルエステル、1,4−ジアミノ−2−メトキシアントラキノン、1−アミノ−4−アニリノアントラキノン、1−アミノ−2−シアノ−4−アニリノ(またはシクロヘキシルアミノ)アントラキノン、1−ヒドロキシ−2−(p−アセトアミノフェニルアゾ)−4−メチルベンゼン、3−メチル−4−(ニトロフェニルアゾ)ピラゾロン、および3−ヒドロキシキノフタロンから選ばれる色素であることを特徴とする。
【0020】
請求項8に係る発明の光学フィルターは、請求項2に係る発明の光学フィルターであって、前記色素受容層が、長鎖ジカルボン酸ポリオ−ルを反応させたポリエステル樹脂、ポリビニルブチラ−ル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリ酢酸ビニル、スチレンアクリレート樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ビニルトルエンアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン)、尿素樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオ−ル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂から選ばれる樹脂層であることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルター。
【0021】
また、前記課題を解決するための特許請求の範囲、請求項9に係る発明の光学フィルターの製造方法は、複数の機能層を有するディスプレイパネルに接合される光学フィルターの製造方法において、前記複数の機能層のうち色補正機能層が、基材に昇華性色素を昇華転写して着色されることを特徴とする。
【0022】
請求項10に係る発明の光学フィルターの製造方法は、請求項9に係る発明の光学フィルターの製造方法であって、前記基材の表面に色素受容層を形成し、該色素受容層に前記昇華性色素を昇華転写して着色されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の光学フィルターは、色補正層が昇華性色素を昇華し転写して形成されるため、従来の染色法や電着法等のような湿式のプロセスで必要とされる乾燥工程が不要となる。さらに、昇華性色素は短時間で基材へ転写されるので、色補正層の形成に要する時間が大いに短縮され、製造工程の簡略化が図られる。したがって、生産品種の切り替えが容易となり、他品種少量生産が効率化できる。製品特性の面では、独立した色補正層のための基材および透明粘着剤層を所望により省略することが出来るため、軽量化が可能となる。
【0024】
また、色補正層の主要要素である昇華性色素は、昇華性色素の昇華・転写機構により形成され厚さ斑が小さいため、ディスプレイ面の色斑が生じにくい。同時に色補正層(昇華性色素を含む層)表面が平滑に形成されるので光学フィルター全体の平滑性も改善される。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0025】
本発明の光学フィルターの色補正層は、昇華性色素を含む層から成る。光学フィルターは、色補正層の他、必要により、赤外線遮断層、反射防止層または防眩層、電磁波遮蔽層などの各種機能層と組み合わせて構成する。赤外線遮断層は、昇華性の赤外線吸収色素を色補正層に配合した場合は省略することが出来る。
【0026】
かかる光学フィルターの層構成としては、例えばガラス、アクリル板などの透明基材上に上記の各層を適当な順に組合せて積層された前面板タイプがある。前面板タイプの光学フィルターを構成する各機能層の積層順および積層形態は、例えば図1に示すように、樹脂フィルム11と粘着層12からなる保護層1、反射防止の多層薄膜23を積層した樹脂フィルム21と粘着層22からなる反射防止層2、粘着層32が付され構造基板の役割をするガラス板3、金属メッシュ43を付した樹脂フィルム41の電磁波遮蔽層4と、粘着層42と、緑〜青の可視光を吸収する色補正の昇華性色素が昇華転写され着色した色補正層45と、樹脂フィルム51上に赤外吸収多層薄膜52を積層した赤外線遮断層5で構成される。
【0027】
また、ガラス、アクリル板などの透明基材を使用しないで各機能層のみを相互に積層し、粘着剤層を介してプラズマディスプレイパネルの前面に直接貼り付けるフィルムタイプがある。例えば図2に示すように、樹脂フィルム11と粘着層12からなる保護層1、多層薄膜23を積層した樹脂フィルム21からなる反射防止層2、金属メッシュ43を付した樹脂フィルム41からなる電磁波遮蔽層4と、基材の上の色素受容層に緑〜青の可視光を吸収する色補正の昇華性色素が昇華転写され着色した色補正層45、色補正層45の裏側には赤外線吸収の色素が練り込まれた粘着層6で構成される。この光学フィルターは粘着層6によりパネル10に接合される。
【0028】
本発明の光学フィルターに組み込まれる機能層としては、上記の構成例に示された機能層に限定されず、例えば積層順を変更したり、反射防止層を防眩層と置き換えたり、さらに光量調節層、その他の機能層を組み込むことが出来る。上記の構成例中の各機能層には、基材層を含んでいるが、当該機能層の本質部分(基材を含まない部分)を透明粘着剤層を介在させないで直接積層してあってもよい。
【0029】
上記の各機能層同士を貼り合わせる際には、使用される透明粘着剤として、例えば、天然ゴム系、SBR系、ブチルゴム系、再生ゴム系、アクリル系、ポリイソブチレン系、シリコーンゴム系、ポリビニルブチルエーテルなどを挙げることができ、中でもアクリル系が好ましい。
【0030】
上記の光学用保護層/透明粘着剤層は、光学フィルターまたはこれを貼り付けたプラズマディスプレイ装置の製造工程中、搬送中および使用前の保管中に擦り傷、汚損などの物理的欠陥を防止するために光学フィルター表面を保護する層である。この保護層は、プラズマディスプレイ装置を設置し、視聴する際には、希望により剥離することもある。
【0031】
上記の反射防止層としては、公知のものを組み合わせて使用することが出来るが、たとえば、特開2004−069931号公報に記載の反射防止層が例示される。上記の公報に記載の反射防止層は、ポリエステル等からなる基材上に屈折率の高い材料と低い材料を基材上に交互に積層し、多層薄膜にすることにより形成されるもので、表面の反射が抑えられ、良好な反射防止効果を得ることができる。この反射防止層は、通常、SiOに代表される低屈折率材料の層と、TiO、ZrO等に代表される高屈折率材料の層とを交互に、蒸着等により成膜する気相法や、ゾルゲル法等によって積層することにより形成することが出来る。
【0032】
低屈折率層の屈折率は、1.45以下であることが好ましい。例えばLiフィルム(屈折率n=1.4)、MgF(n=1.4)、3NaF・AlF(n=1.4)、AlF(n=1.4)、NaAlF(n=1.33)、SiO(n=1.45)等の無機材料を微粒子化し、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂等に含有させた無機系低反射材料や、フッ素系、シリコーン系の有機化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、放射線硬化型樹脂等の有機低反射材料を挙げることができる。さらに、5〜30nmのシリカ超微粒子を水もしくは有機溶剤に分散したゾルとフッ素系の皮膜形成剤を混合した材料を使用することもできる。上記の5〜30nmのシリカ超微粒子を水もしくは有機溶剤に分散したゾルとしては、ケイ酸アルカリ塩中のアルカリ金属イオンをイオン交換等で脱アルカリする方法やケイ酸アルカリ塩を鉱酸で中和する方法等で知られた活性ケイ酸を縮合して得られる公知のシリカゾル、アルコキシシランを有機溶媒中で塩基性触媒の存在下に加水分解と縮合することにより得られる公知のシリカゾル、さらには上記の水性シリカゾル中の水を蒸留法等により有機溶剤に置換することにより得られる有機溶剤系のシリカゾル(オルガノシリカゾル)が用いられる。
【0033】
高屈折率層は、屈折率を高くするために高屈折率のバインダー樹脂を使用するか、高い屈折率を有する超微粒子をバインダー樹脂に添加するか、あるいはこれらを併用することによって達成することが出来る。高屈折率層の屈折率は1.55〜2.70の範囲にあることが好ましい。
【0034】
上記のバインダー樹脂としては、透明なものであれば任意であり、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、放射線(紫外線を含む)硬化型樹脂などを用いることができる。熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を用いることができ、これらの樹脂に、必要に応じて架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等を加えることができる。
【0035】
高い屈折率を有する超微粒子としては、例えば、紫外線遮断の効果をも得ることができる、ZnO(屈折率n=1.9)、TiO(n=2.3〜2.7)、CeO(n=1.95)の微粒子、また、帯電防止効果が付与されて埃の付着を防止することもできる、アンチモンがドープされたSnO(n=1.95)またはITO(n=1.95)の微粒子が挙げられる。その他の微粒子としては、Al(n=1.63)、La(n=1.95)、ZrO(n=2.05)、Y(n=1.87)等を挙げることができる。これらの超微粒子は単独または混合して使用され、有機溶剤または水に分散したコロイド状になったものが分散性の点において良好であり、その粒径としては、1〜100nm、塗膜の透明性から好ましくは、5〜20nmであることが望ましい。
【0036】
前記の電磁波遮蔽層としては、電磁波遮蔽機能を有するものであれば、特に限定されないが、例えば導電性繊維メッシュ、透明導電膜、導電性金属網状体などを挙げることが出来る。
【0037】
上記の導電性繊維メッシュは、軽量でかつ耐久性、柔軟性に優れた金属化繊維織物から構成されるものが好ましい。金属化繊維織物の製法自体は、重要ではなく、いかなる製法で得られた金属化繊維織物であっても使用することができる。こうした金属化繊維織物の中でも、例えば、ポリエステル等の合成繊維製織物等に表面樹脂処理した後、その上にニッケル、又は銅のような導電性金属を15〜30質量%無電解メッキ加工した導電布、或いは、ポリエステル等の合成繊維製メッシュに銅、銀又はニッケルのような導電性金属を無電解メッキし、さらに黒色化処理を施した導電性メッシュなどは、耐久性と柔軟性に優れ、導電性部材として適している。上記導電性メッシュの繊維径は、通常10〜60μmであり、また、メッシュサイズは、40〜200メッシュの範囲が好適である。なお、上記メッシュサイズとは、タイラー標準ふるいで規定されるサイズである。
【0038】
透明導電膜としては、例えば金属および/または金属酸化物等からなる1層以上の透明導電層を真空蒸着やスパッタリング等の手段により形成させたものや、金属微粒子および/または金属酸化物微粒子等の導電性を有する微粒子を分散させた樹脂をコートしたものを挙げることが出来る。金属としては、例えば金、銀、白金、パラジウム、銅、チタン、クロム、モリブデン、ニッケル、ジルコニウム等が挙げられる。中でも、銀は、導電性に一層優れた導電層が得られること、赤外線の波長領域を反射し、赤外線遮断機能を有することから特に好ましい。なお、導電層としてこの金属層を設けた場合には、金属層の反射を防止するために誘電体層との多層膜とするのが好ましい。
【0039】
このような誘電体層としては、例えば各種金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物などからなる層を例示することができる。金属酸化物としては、例えば酸化ケイ素、酸化チタン、酸化タンタル、酸化錫、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化インジウムと酸化錫の複合酸化物などが挙げられる。これらの金属及び金属酸化物は、この中から1種を単独で用いても良いし、あるいは2種以上を併用して用いても良い。また、上記導電膜を形成する場合は、必ずしも透明基材上に形成する必要は無く、ポリエステル等の樹脂フィルムの表面に形成し、導電性フィルムとしても良い。
【0040】
導電性金属網状体としては、導電性インキ等を用いて透明基材表面に格子状パターンを印刷する方法、或いは透明基材表面に銅、銀、アルミニウム等の金属薄膜を設けた後、エッチング等の手段で格子状パターンを形成する方法等を例示できる。また、銅、銀、アルミニウム等の素材金属を圧延加工等の塑性加工により得た所定の厚さの金属箔をパンチング加工等により多数の孔を設け、格子状パターンにしたものも、上記導電性金属網状体として例示できる。上記格子状パターンは、ライン幅5〜50μm、厚さ1〜100μm、ライン部のピッチは、150〜800μmの範囲が電磁波シールド性能及び透明性の面から好ましい。
【0041】
本発明において、電磁波遮蔽層は、前板タイプの場合、透明基材と光学系フィルムの間に挿入するように積層して一体化されるのが好ましい。このような位置に挿入配置することによりプラズマディスプレイパネル用前面板の反りを低減することができる。具体的には、例えば透明基材、導電性部材、光学系フィルムをこの順序で配置し、各部材間に接着層を設け、透明接着剤を使用し又は熱圧着により一体化すれば良い。また、本発明での導電性部材は、透明基材の少なくとも1面上において積層されていればよいが、透明基材の両面に積層されていてもよい。さらに導電性部材は、1種類の導電性部材を複数用いてもよいし、また異なる種類の導電性部材を複数用いてもよい。さらにまた、複数の導電性部材を用いる場合には、透明基材に対して1面上に用いてもよく、また両面に用いることもでき、種類および組合せは特に限定されない。
【0042】
赤外線遮断層を構成する赤外線吸収色素としては、赤外線吸収能があり、且つ可視光領域はよく透過する色素が使用され、公知のものから選択することが出来る。かかる色素としては、例えば、有機物質であるニトロソ化合物及びその金属錯塩、ポリメチン系色素(シアニン系、オキソノール系、クロコニウム系、スクワリリウム系、ピリリウム系、アズレニウム系、)、チオピリリウム系色素、テトラデヒドロコリン系色素、トリフェニルメタン系色素、ジチオール錯塩系化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、トリアリルメタン系色素、インモニウム系色素、ジインモニウム系色素、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミノ化合物、アルミニウム塩系化合物、または、無機物であるカーボンブラックや、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、周期律表4A、5Aまたは6A族に属する金属の酸化物、もしくは炭化物、またはホウ化物などが挙げられる。
【0043】
赤外線吸収色素の具体例としては、イーエックスカラー802K、イーエックスカラー803K、イーエックスカラー814K(以上いずれも日本触媒社製の商品名)、IR−750、IRG−002、IRG−003、IRG−022、IRG−023、IRG−820、CY−2、CY−4、CY−9、CY−20(以上いずれも日本化薬社製の商品名)、PA−001、PA−1005、PA−1006、SIR−114、SIR−128、SIR−130、SIR−159(以上いずれも三井東圧化学社製の商品名)が挙げられる。その中で、例えば波長750〜1200nmの近赤外線の光線透過率が30%以下のものが好ましく、25%以下のものがより好ましく、20%以下のものが更に好ましく、且つ波長450〜650nmの可視光領域の全光線透過率が45%以上のものが好ましく、60%以上のものがより好ましく、80%以上のものがさらに好ましい。
【0044】
色素には、必要であればさらに他の赤外線吸収剤を組み合わせて使用することが出来、特に可視部での透明性と、赤外線遮断性能の面から、上記の色素とポリメチン系色素、ジインモニウム系色素、フタロシアニン化合物及びナフタロシアニン化合物から選ばれる近赤外色素と組み合わせることが好ましい。
【0045】
赤外線吸収色素を用いて赤外線遮断層を形成する方法としては、当該赤外線吸収色素を(1)透明樹脂中に分散させて着色フィルムにする方法、(2)溶媒により溶解した樹脂溶液中にこれらの色素を混合、均一に分散させた塗布溶液を透明性ベースフィルム上に塗布し、乾燥して赤外線遮断樹脂層を形成させて着色塗布フィルムにする方法、(3)各機能層間の接合に使用する粘着剤層に上記の色素を添加する方法などが挙げられる。
【0046】
本発明における色補正層は、元々、ディスプレイ装置自体が白色画像を表示したときに必ずしも白色にはならず着色して見える傾向、すなわち色相の偏りを示したり、また上記の赤外線遮断層に赤外線吸収色素を使用することにより、可視光線領域の光を吸収しても着色して見える傾向、すなわち色相の偏りを示したり、これらの色相の偏りをまとめて修正するために設けられる。したがって色補正層を構成する色補正用色素は、ディスプレイ装置自体と赤外線遮断機能層による可視光線領域の色相の偏りの強度分布に対して、通常複数の昇華性色素を補色関係になることを意図して配合される。かかる配合割合は、あらかじめ検討された配合処方の昇華性色素を含むインクリボンから昇華転写する方法によって行うことも出来るが、例えばカラープリンター方式の場合のように三原色など複数の単色領域を有するインクリボンの各単色領域から昇華転写して色補正層において上記の補色関係になるように調節することもできる。
【0047】
色補正層は、昇華性色素を含むインクリボン等から基材上に昇華して転写することにより形成することが出来る。上記の色補正層が形成される基材として、特に色補正層のための基材を準備してもよいが、他の機能層の外面、例えば、前記の反射防止層、電磁波遮蔽層、赤外線遮断層などの基材面を兼用することが出来る。兼用する場合は、独立した色補正層の基材を使用しないことにより原料の節約、製品としての光学フィルターの質量や厚さを薄くすることが出来る。基材の色素が昇華転写される面は、その基材が独立した色補正層として準備される場合および他の機能層の基材が兼用される場合の何れの場合においても、転写される色素の安定性を保持したり、熱転写持にインクリボンが貼り付くのを防止するため、受容性の改善処理を行うのが好ましい。
【0048】
受容性の改善処理方法としては、特に制限されないが、例えば基材層素材を改質する方法、および基材表面に直接あるいは接着剤を介して色素受容層を形成する方法が挙げられる。基材層素材を改質する方法としては、例えば基材を構成する熱可塑性樹脂にシリコーン化合物を含有させる方法が挙げられる。かかる基材を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂のエチレングリコール成分の10〜70モル%をシクロヘキサンジメタノールに置換してなる共重合ポリエステル樹脂100質量部と、エチレンと酢酸ビニル、酢酸エチル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸及びアイオノマーからなる群より選ばれた1種以上を添加して共重合した共重合体0.1〜2質量部、好ましくは0.5〜1.5質量部とを含有したものを使用することもできる。上記のエチレン共重合体を0.1〜2質量部添加することで、印刷時のインクリボンの貼り付きを抑制することが可能となり上記のシリコーン化合物の添加量を抑えることができる。
【0049】
上記のシリコーン化合物としては、シリコーンオイル、シリコーン変性樹脂からなる群より選ばれた1種以上を含有した化合物が挙げられる。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、ビニル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、アルキルアラルキルポリエーテル変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられる。シリコーン変性樹脂としては、シリコーン・アクリル共重合体、シリコーン架橋アクリル樹脂、シロキサン架橋型アクリル樹脂、シリコーン・ウレタン共重合体、シリコーン変性ポリイミド樹脂、シランブロックアクリル樹脂等が挙げられる。また、前述のシリコーンオイルをグラフト化した樹脂も使用することが可能である。
【0050】
シリコーン化合物の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1〜10質量部が好ましく、さらに好ましくは0.5〜8質量部である。0.1質量部未満では、昇華転写持にインクリボンの貼り付き不具合が発生しやすく、また、10質量部より大きくなると、熱可塑性樹脂との相溶性が悪くブツやムラ等の欠点が増える。そして、上記の熱可塑性樹脂には、必要により、透明性を実質的に損なわない範囲において、さらに、相溶化剤、安定剤、滑剤、補強剤、加工助剤、顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、分散剤、増粘剤、その他無機充填剤や樹脂改質剤等を含有させることが出来る。
【0051】
上記の色素受容層を形成する方法としては、例えば、色素受容層として使用されている長鎖ジカルボン酸ポリオ−ルを反応させたポリエステル樹脂などのポリエステル樹脂、ポリビニルブチラ−ル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリ酢酸ビニル、スチレンアクリレート樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ビニルトルエンアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン)、尿素樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオ−ル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等を、トルエン、メチルエチルケトン、メタルイソブチルケトン等の有機溶媒に溶解して公知の塗工方法もしくは印刷方法によって、基材の表面に塗布し乾燥して形成する方法、或いは、上記の樹脂を基材表面に溶融押出しラミネートする方法等が挙げられる。これらの樹脂には、色素安定剤として金属錯塩、紫外線吸収剤、フェノ−ル誘導体などを含有させることができ、また熱昇華性インクリボンと色素受容層とのスティックを防止するためのシリコーン化合物、その他種々の添加剤も含有させることができる。
【0052】
受容性をさらに改良した色素受容層を形成する樹脂としては、例えば、特開平9−118836に記載の酸価が80以上、好ましくは80〜250程度、より好ましくは90〜200程度、更に好ましくは95〜180程度、もっと好ましくは98〜170程度の樹脂を含む光硬化性樹脂組成物をあげることが出来る。上記の樹脂としては、例えばカルボン酸基またはカルボン酸エステル基を含有する樹脂や(メタ)アクリル酸(エステル)の重合物があげられる。これらは併用してもよい。また、かかる光硬化性樹脂組成物には、通常、光重合開始剤、及び、その他に、必要に応じ、光架橋剤、光重合性硬化膜改質剤や熱硬化剤等の各成分が配合される。
【0053】
光重合開始剤としては、例えばジベンジル;ベンゾインエーテル;ベンゾインイソブチルエーテル;ベンゾインイソプロピルエーテル;ベンゾフェノン;ベンゾイル安息香酸;ベンゾイル安息香酸メチル;4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド;ベンジルメチルケタール;2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート;2−クロロチオキサントン;2,4−ジエチルチオキサントン;2,4−ジイソプロピルチオキサントン;ジメチルアミノメチルベンゾエート;p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル;3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン;2,4−ジメチルチオキサントン;1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン;1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン;イソプロピルチオキサントン;メチロベンゾイルフォーメート;2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独又は2種以上を混合して使用することができ、光重合性化合物の総質量に対し、0.5〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%の範囲内で添加される。
【0054】
光架橋剤は光により架橋または重合可能なモノマー、オリゴマー、プレポリマー等である。このようなモノマー、オリゴマー、プレポリマーの例としては、例えばエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレングリコールジメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレートのような1価又は多価アルコールのアクリル酸又はメタクリル酸のエステル類;多価アルコールと1塩基酸又は多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに(メタ)アクリル酸を反応して得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を反応させた後(メタ)アクリル酸を反応して得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸グリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の通常の光重合性樹脂が挙げられる。
【0055】
また、光重合性硬化膜改質剤としては、例えば上記の易現像性の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂以外の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸グリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂などのエポキシ基と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるヒドロキシ基に酸無水物を反応させたエポキシ(メタ)アクリレート−カルボン酸付加物;無水マレイン酸と共重合可能な、エチレン、プロペン、イソブチレン、スチレン、ビニルフェノール、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド等のモノマーとの共重合体の無水マレイン酸部にヒドロキシエチルアクリレート等のアルコール性のヒドロキシ基を持つアクリレートやグリシジルメタクリレート等のエポキシ基をもつアクリレートを反応させハーフエステル化した化合物;アクリル酸、アクリル酸エステルとヒドロキシエチルアクリレート等のアルコール性のヒドロキシ基を持つアクリレートの共重合体の−OH基にさらにアクリル酸を反応せしめた化合物等も挙げられる。
【0056】
上記のような光重合性化合物は、単独又は混合して使用されその合計量が、上記の易現像性の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂の質量を100部とした場合、50〜150部、さらに好ましくは、80〜120部の範囲で使用される。
【0057】
上記の熱硬化剤は、熱により架橋又は重合可能な化合物であり、例えばエポキシ化合物を挙げる事ができる。エポキシ化合物は上記の易現像性の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂等と熱的に反応し架橋する事により耐熱性を向上させる。具体的なエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸グリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂などが挙げられる。このようなエポキシ化合物は単独又は混合して使用され、その合計量が、上記の易現像性の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂の質量を100部とした場合、5〜30部、さらに好ましくは、10〜20部の範囲で使用される。
【0058】
なお、前記の酸価が80以上の樹脂として、例えば上記の(メタ)アクリル酸(エステル)の重合物を使用する場合、この重合物は光非硬化性なので、光重合開始剤の他に多官能性の樹脂や光架橋剤が必要であり、さらに必要に応じ、光重合性硬化膜改質剤や熱硬化剤等の各成分が配合される。多官能性の樹脂としては、例えば上記の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂があげられる。尚、光重合開始剤、光架橋剤、光重合性硬化膜改質剤や熱硬化剤等としては、例えば上記したものがあげられる。
【0059】
透明基板の色素受容層に使用する光硬化性樹脂組成物は前記した各成分を前記したような割合に混合することによって得られる。混合は、通常有機溶剤中で行われ、光硬化性樹脂組成物溶液が得られる。上記の有機溶剤の具体例としては、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルセロソルブアセテート、イソプロピルセロソルブアセテート、メトキシイソプロピルグリコールアセテート、エトキシイソプロピルグリコールアセテート、ジグライムなどがあるが、これらに制限されるものではない。この溶液を後述する様な塗工機に適正な粘度まで有機溶剤により希釈することが望ましい。
【0060】
上記のようにして得られた光硬化性樹脂組成物溶液は、異物を除去する目的で、フィルターリングした後に基材面に塗布、乾燥される。フィルターリングは通常の濾過機を用いて実施される。塗布方法は、透明基板への塗布は、スピンコーターやロールコーター等の各種コーターを用い、公知の方法で行われる。透明基板に塗布、乾燥された光硬化性樹脂組成物の薄膜に、電子線、紫外線、可視光線等の活性エネルギー線が照射され、その硬化膜となる。この硬化膜が色素受容層となる。硬化膜の膜厚は0.1〜5μm、好ましくは0.5〜3μm程度である。
【0061】
インクリボンは、基材シートに昇華性色素を含む層が形成されたものである。
【0062】
上記の昇華性色素は、特に限定されないが、大気圧下、70〜260℃の温度で昇華または蒸発する色素が好ましい。そのような色素としては、例えば、アゾ化合物、アントラキノン類、キノフタロン類、スチリル類、ジフェニルメタン類、トリフェニルメタン類、オキサジン類、トリアジン類、キサンテン類、メチン化合物、アゾメチン化合物、アクリジン類、ジアジン類等の色素および塩基性色素が挙げられる。中でも、1,4−ジメチルアミノアントラキノン、臭素化または塩素化1,5−ジヒドロキシ−4,8−ジアミノ−アントラキノン、1,4−ジアミノ−2,3−ジクロロ−アントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシ−2−(β−メトキシエトキシ)アントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシ−2−フェノキシアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン−2−カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルまたはブチルエステル、1,4−ジアミノ−2−メトキシアントラキノン、1−アミノ−4−アニリノアントラキノン、1−アミノ−2−シアノ−4−アニリノ(またはシクロヘキシルアミノ)アントラキノン、1−ヒドロキシ−2−(p−アセトアミノフェニルアゾ)−4−メチルベンゼン、3−メチル−4−(ニトロフェニルアゾ)ピラゾロン、3−ヒドロキシキノフタロン等が好ましい。
【0063】
上記の昇華性色素としては、別の観点から、例えばキノリン系色素、スチリル系色素、アゾ色素等があげられる。上記のキノリン系色素としては、例えば下記式(i)
【化1】

の化合物、スチリル系色素としては例えば下記式(ii)
【化2】

の化合物があげられる。アゾ色素としては、カップリング成分に注目すると、例えばピラゾール系アゾ色素、例えば下記式(iii)
【化3】

の化合物、アニリン系アゾ色素は、例えば下記式(iv)
【化4】

の化合物、並びに下記式(v)
【化5】

の化合物、ピリドン系アゾ色素は、例えば下記式(vi)
【化6】

の化合物のモノアゾ色素が具体例として挙げられる。
【0064】
なかでも昇華性及び色相の観点からピリドン系モノアゾ色素、ピラゾール系モノアゾ色素が好ましい。
【0065】
具体的な色素としては、例えば、黄色色素として、C.I.ディスパーズイエローの1,3,8,9,14−1,16,41,42,54,60,77,116,125(S)等、赤色色素としては、C.I.ディスパーズレッドの1,4,6,11,15,17,50,55,59,60,73,83,111,135,228(S)等、青色色素としては、C.I.ディスパーズブルーの33,56,106,241やC.I.ソルベントブルーの36,83,90,105,112,114(S)等が挙げられる。
【0066】
インクリボンは、耐熱性且つ表面滑性の基材シート(フィルム)上に上記昇華性色素とバインダー樹脂を溶剤に溶解し、公知の方法で塗布、乾燥して昇華性色素含有層を形成することにより該シートが得られる。上記の色素は例えば赤・緑・青(R,G,B)の3原色を別々に含むインクリボンとして使用時に色補正層に必要な色相に合わせてそれぞれの転写濃度を調節することも出来るが、対応するプラズマディスプレイの種類、赤外線遮断層の色相が変動しない場合は、上記のインクリボンの昇華性色素含有層に含まれる色素として上記の色補正層に必要な色相を転写できる他種類の色相の配合処方とするのが実用的である。
【0067】
上記の昇華性色素の配合処方は、各色素の色相と昇華転写条件における昇華特性と、前記の赤外線遮断層による色相の偏り及びプラズマディスプレイパネルの発光色相の偏りとを考慮して色相が中立となるように適宜設定される。
【0068】
上記の基材シートとしては、例えばコンデンサペーパ、ポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロフィン等の紙もしくはフィルム等が用いられる。
【0069】
上記のバインダー樹脂は、昇華性色素をできるだけ単分散状態に溶解或いは分散保持させ、かつ該色素との親和性が低く、加熱された場合にこの色素を放出し易い樹脂が好ましく、例えばブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリメチルメタクリレート変性アセタール樹脂があげられる。昇華性色素とバインダー樹脂との混合比は、通常、1:9〜8:2である。上記の昇華性色素含有層の厚さは、使用目的により異なるが、通常0.5〜10μm程度であり、好ましくは4〜8μm程度である。
【0070】
色補正層は、前記の独立した基材または兼用される基材面またはその面に形成された色素受容層に、以上のようにして得られたインクリボンのインク面を重ね合わせ、サーマルヘッドやレーザ光等の加熱手段でインク層を加熱し、インク中の昇華性色素を転写して形成される。この際、上記のインクリボンの色素の配合処方が三原色などの様に色補正層に必要な色相と一致しない場合は、必要な色相に合うように各々の色相のリボンについて転写濃度を調節しつつ重ねて転写処理される。尚、転写処理の際、転写される基材面とインクリボン表面との間は、密着していてもよく、又500μm程度まで、好ましくは300μm程度まで、さらに好ましくは200μm程度までの間隔があってもよい。
【実施例】
【0071】
以下、本発明の実施例を記載するが、本発明の範囲はこの実施例に限定されるものではない。
【0072】
本発明の光学フィルターの色補正層は、基材フィルムの上に色素受容層を形成し、昇華染料を加熱転写することで作成された。尚、色補正層以外の機能層は公知の方法により作成され、実施例による色補正層と組み合わされる。
【0073】
(1)色素受容層用塗布液の調製
ポリエステル樹脂(商品名:バイロン290、東洋紡績株式会社製)15質量部を、メチルエチルケトンとトルエンとの1:1混合溶媒85質量部に溶解させ、固形分が15質量%の塗布溶液を調製した。この溶液の粘度は、B型粘度計(No.1ローターを使用)で25.1mPa・sであった。
【0074】
(2)基材フィルム上へ色素受容層を形成
上記の塗布液をNo.4メイヤーバーを使用して、A4サイズのポリエステルフィルム(ルミラー100S10、厚さ100μm、東レ株式会社製)表面に、乾燥後の塗布厚さが2.5μmになる様に塗布し、100℃に調節したCTチャンバーで1分間乾燥し、色素受容層を形成した基材フィルムを得た。
【0075】
(3)加熱転写
上記の基材フィルムの色素受容層面に、インクリボンの昇華染料を含むインク層面が対面する様に重ね、加熱ニップロールの押え空気圧4Kg/cmを使用して加熱条件を変えつつ、適正条件を探索する試験を行った。加熱条件は、70,80,90,100,110℃である。ライン速度は、0.2,0.4,0.6,0.8,1.0,2.0m/min.
【0076】
(4)試験結果
1.昇華の挙動は、80℃×0.2m/min.と、100℃×1.0m/min.で結ぶ条件より強い(温度が高い又はライン速度が遅い)条件で、全面が均等に転写された。
【0077】
2.転写された部分の染料の密着強度は、指先で擦っても脱落が全くない程度で、色相斑は観察されなかった。
【0078】
3.不完全な転写の条件では、転写そのものが行われず、部分的に転写された部分の密着強度は、2.の場合と同様であった。
【0079】
4.転写された色素の層の、転写条件による転写量(厚さ)の影響を見るため、被転写基材上の色素の層について測色を行った。(その結果は別紙の通り)
その結果、転写時の温度およびライン速度が異なっていても、転写された層については殆ど差が無かった。
【0080】
また、光学フィルターの製造方法において、昇華性色素を昇華転写することにより、強固に密着した色補正層を形成することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明を適用する光学フィルターの一実施形態を示す模式断面図である。
【0082】
【図2】本発明を適用する光学フィルターの別な施形態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1は保護層、2は反射防止層、3はガラス板、4は電磁波遮蔽層、5は赤外線遮断層、6は赤外線吸収色素粘着層、10はパネル、11は樹脂フィルム、12は粘着層、21は樹脂フィルム、22は粘着層、23は多層薄膜、41は樹脂フィルム、42は粘着層、43は金属メッシュ、45は色補正層、51は樹脂フィルム、52は赤外吸収多層膜である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機能層からなり、ディスプレイパネルに接合される光学フィルターにおいて、前記複数の機能のうち少なくとも1層が、昇華性色素が昇華転写されて着色した色補正層であることを特徴とする光学フィルター。
【請求項2】
前記色補正層が色素受容層に昇華性色素が昇華転写されて着色した色補正層であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項3】
前記色補正層が他の複数の機能層から独立した層であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項4】
前記複数の機能層が赤外線遮断層、電磁波遮蔽層、および反射防止層から選ばれる少なくとも1層であり、その1層に前記した昇華性色素が昇華転写されて着色していることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項5】
前記複数の機能層が少なくとも電磁波遮蔽層を有し、プラズマディスプレイパネル、陰極線管パネル、または電界放射ディスプレイパネルに粘着されることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項6】
前記色補正層は、ディスプレイの発光強度分布と、該赤外線遮断層の透過強度分布との可視光線領域における偏りに対して、該昇華性色素の可視光線吸収特性が補色関係にあることで前記色補正機能を発現することを特徴とする請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項7】
該昇華性色素が1,4−ジメチルアミノアントラキノン、臭素化または塩素化1,5−ジヒドロキシ−4,8−ジアミノ−アントラキノン、1,4−ジアミノ−2,3−ジクロロ−アントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシ−2−(β−メトキシエトキシ)アントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシ−2−フェノキシアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン−2−カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルまたはブチルエステル、1,4−ジアミノ−2−メトキシアントラキノン、1−アミノ−4−アニリノアントラキノン、1−アミノ−2−シアノ−4−アニリノ(またはシクロヘキシルアミノ)アントラキノン、1−ヒドロキシ−2−(p−アセトアミノフェニルアゾ)−4−メチルベンゼン、3−メチル−4−(ニトロフェニルアゾ)ピラゾロン、および3−ヒドロキシキノフタロンから選ばれる色素であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項8】
前記色素受容層が、長鎖ジカルボン酸ポリオ−ルを反応させたポリエステル樹脂、ポリビニルブチラ−ル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリ酢酸ビニル、スチレンアクリレート樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ビニルトルエンアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン)、尿素樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオ−ル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂から選ばれる樹脂層であることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルター。
【請求項9】
複数の機能層を有するディスプレイパネルに接合される光学フィルターの製造方法において、前記複数の機能層のうち色補正機能層が、基材に昇華性色素を昇華転写して着色されることを特徴とする光学フィルターの製造方法。
【請求項10】
前記基材の表面に色素受容層を形成し、該色素受容層に前記昇華性色素を昇華転写して着色されることを特徴とする請求項9に記載の光学フィルターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−58598(P2008−58598A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235373(P2006−235373)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(591145335)パナック株式会社 (29)
【Fターム(参考)】