説明

光学フィルムの製造方法、光学フィルム及び光学素子

【課題】優れた透明性を有し、複屈折性が非常に低く制御された光学フィルムの製造方法の提供。
【解決手段】無機粒子と高分子樹脂を混練する混練工程と、前記混練工程により得られた前記無機粒子を含有する高分子樹脂を延伸する延伸工程と、を含む光学フィルムの製造方法において、前記無機粒子は光学異方性を有する針状または棒状の無機粒子であり、前記混練工程は、前記高分子樹脂に二酸化炭素を含有させた状態で行うことを特徴とする光学フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの製造方法に関し、特に透明性に優れ、且つ複屈折性の改良された光学フィルムの製造方法及びこの製造方法により製造された光学フィルムに関する。さらには、この複屈折の改良された光学フィルムを用いた光学素子にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量であること、耐衝撃性に強いこと、加工性、量産性などより眼鏡レンズや透明板などの一般光学部品はもとよりオプトエレクトロニクス用の光学部品の材料などとして、従来のガラス系材料に代えて、高分子樹脂を用いる傾向が強まっている。
【0003】
液晶ディスプレイについても広く用いられるようになってきている。また、用途拡大に伴ってより一層の軽量化や薄型化、更には耐衝撃性などの強度面での性能向上も求められるようになってきている。このように、近年においては、光学フィルムの素材として高分子樹脂を用いる傾向が強まっている。
【0004】
高分子樹脂に対する期待が高まっているが、現時点においては、寸法安定性、線膨張係数、剛性、複屈折性等に解決すべき課題があり、普及の妨げになっている。
【0005】
光学材料として通常使用される多くの高分子樹脂材料はそのポリマーを形成するモノマーが屈折率に関し光学的異方性を有しており、このモノマーの光学的異方性がポリマーの一定方向への配列つまり配向により発現することで、高分子樹脂材料に複屈折性を生じる。より具体的には、重合反応により生成した状態のままのポリマーではその結合鎖がランダムに絡み合った状態となっておりポリマーの結合鎖に配向を生じていないため、この状態では各モノマーの光学的異方性が相互に打ち消し合い、従ってポリマーは複屈折性を示さないが、フィルム製膜時の延伸操作を行うと、その際に加わる外力によりランダムであったポリマー結合鎖が配向し、この結果ポリマーは複屈折性(配向複屈折)を示すようになる。
【0006】
一方、無機物質は、有機化合物に比べ格段に大きい複屈折性を示す場合が多く、ポリマーのように配向することによって複屈折性を生じるものではなく、本来の結晶構造によって複屈折性を有している。特に無機微粒子など光の波長より大幅に小さい不均一性が系に存在するときに複屈折現象を生じ(構造複屈折)、特に針状などの長細い形状の粒子をマトリックス内部に一方方向に配向させた状態で混合されている場合に大きな構造複屈折性を示す。
【0007】
上記のような課題の解決のために、高分子樹脂中に無機微粒子を混在させる技術が検討されている。特に、光学フィルムの複屈折性を改善するために、無機微粒子を高分子樹脂中に混在させる技術の検討が活発である。
【0008】
特許文献1は、透明性の高分子樹脂材料中に、使用する光の波長より小さいサイズを有する分子配向抑制粒体を混入した状態で配向処理することで、複屈折性を低減した光学樹脂材料を得ることを開示している。この技術は、分子配向抑制粒体の存在により、高分子樹脂材料のポリマー鎖に生ずる配向の程度を抑制することで、配向処理によって発現する複屈折性を低減したものである。
【0009】
特許文献2には、透明な高分子樹脂に、高分子樹脂の配向複屈折性を打ち消す複屈折性を有する無機物質を添加することで、配向複屈折性を低減した光学樹脂材料を得る技術が開示されている。ここで添加される無機物質には、高分子樹脂の成形時に結合鎖が外力により配向するのに伴って同結合鎖の配向方向と同じ方向に配向する性質と、そのような同方向の配向により、高分子樹脂が持つ配向複屈折性を打ち消すことができるような複屈折性を持つものが選ばれる。
【0010】
上記特許文献1や特許文献2に記載の技術では樹脂中の粒子の分散性が悪くまた粒子の配向状態も良好でないために充分な複屈折性の低減効果が得られなかった。
【0011】
一方、二酸化炭素を含浸させて樹脂の可塑性を上げ、微粒子の分散性を上げる技術が特許文献3、4に開示されている。しかしながら、これらの技術は成形加工用のものである。本発明のような、光学異方性を有する針状または棒状の無機粒子を含有する高分子樹脂からなる光学フィルムとはまったく異なる技術である。
【特許文献1】特開2001−208901号公報
【特許文献2】国際公開01/25364号パンフレット
【特許文献3】特開2000−53871号公報
【特許文献4】特開2004−307720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上述の通り従来の技術では十分に達成できなかった課題を解決しようとするものであり、本発明の目的は、優れた透明性を有し、複屈折性が非常に低く制御された光学フィルムの製造方法、およびこの製造方法により製造された光学フィルム、更にはこの光学フィルムを用いた光学素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、以下の手段により達成することができる。
【0014】
すなわち、本発明の光学フィルムの製造方法は、無機粒子と高分子樹脂を混練する混練工程と、前記混練工程により得られた前記無機粒子を含有する高分子樹脂を延伸する延伸工程と、を含む光学フィルムの製造方法において、前記無機粒子は光学異方性を有する針状または棒状の無機粒子であり、前記混練工程は、前記高分子樹脂に二酸化炭素を含有させた状態で行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高分子樹脂中に含有させる無機粒子としては、光学異方性を有する針状または棒状の無機粒子を用いるので、高分子樹脂の配向複屈折を低減できる。これに加えて、本発明は、混練工程を二酸化炭素を高分子樹脂中に含有させた状態で行っているので、高分子樹脂に二酸化炭素が含有された状態で延伸工程も行うことになるので、高分子樹脂中における光学異方性を有する針状または棒状の無機粒子のモビリティが上がり、分散性及び高分子樹脂に対する配向性が著しく向上する。その結果として、本発明によれば、複屈折性が低減した透明性の高い優れた特性を有した光学フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳述する。
【0017】
1.高分子樹脂
本発明の光学フィルムの製造方法に用いる高分子樹脂としては、光学材料として一般的に用いられる透明性の高い樹脂であれば特に限定されるものではない。これに加えて、耐熱性や加工性の観点から、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、セルロースエステル樹脂であることが好ましい。更には、吸水性が低く、透明性に優れることから脂環式ポリオレフィン樹脂およびセルロースエステル樹脂がより好ましい。
【0018】
脂環式ポリオレフィン樹脂としては、ノルボルネン系樹脂、シクロヘキサジエン系ポリマー、オレフィンマレイミド交互共重合体などが挙げられる。
【0019】
ノルボルネン系樹脂としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びその水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加型重合体、ノルボルネン系単量体とオレフィンとの付加型重合体などが挙げられる。
【0020】
例えば、TFT液晶表示装置用基板のように製造工程で高温に曝される可能性のある用途に用いられる高分子樹脂としては、耐熱性のあるノルボルネン系単量体の付加型重合体が好ましい。
【0021】
ノルボルネン系単量体としては、ノルボルネン、ノルボルネンのアルキル置換誘導体、ノルボルネンのアルキリデン置換誘導体、ノルボルネンの芳香族置換誘導体、及びこれらにハロゲン、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基等の極性基が置換した置換体が挙げられる。例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネン等が挙げられる。また、ノルボルネンに1つ以上のシクロペンタジエンが付加した単量体、その上記と同様の誘導体や置換体、例えば、1,4:5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−2,3−シクロペンタジエノナフタレン、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4:5,10:6,9−トリメタノ−1,2,3,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a−ドデカヒドロ−2,3−シクロペンタジエノアントラセン等が挙げられる。更には、シクロペンタジエンの多量体である多環構造の単量体、その上記と同様の誘導体や置換体、例えば、ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等が挙げられる。また、シクロペンタジエンとテトラヒドロインデン等との付加物、その上記と同様の誘導体や置換体、例えば、1,4−メタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロフルオレン、5,8−メタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−2,3−シクロペンタジエノナフタレン等が挙げられる。
【0022】
セルロースエステル樹脂としては、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート及びセルロースフタレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0023】
混合脂肪酸エステルの置換度として、更に好ましいセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートの低級脂肪酸エステルは炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロース樹脂である。尚、アセチル基の置換度と他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96により求めたものである。
【0024】
式(I) 2.5≦X+Y≦2.9
式(II) 0.1≦X≦2.0
この内特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.0≦X≦2.5であり、0.5≦Y≦2.5であることが好ましい。アシル基の置換度の異なるセルロ−スエステルをブレンドして、光学フィルム全体として上記範囲に入っていてもよい。上記アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているのものである。これらは公知の方法で合成することが出来る。アセチル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することが出来る。
【0025】
2.無機粒子
本発明に係る無機粒子は、光学異方性を有する針状または棒状の無機粒子である。また、光学異方性を有する針状または棒状の無機粒子は、複屈折性を有するものが好ましい。
【0026】
無機粒子の素材としては特に制限はなく、例えば、各種金属、金属酸化物、炭酸塩、ホウ酸塩、ガラス組成物、及びそれらの混合物または複合微粒子など、公知のあらゆる種類の無機粒子を用いることが可能である。具体的には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、酸化亜鉛、酸化コバルト、酸化鉄、YVO4、LiNbO4、PbMoO4、MgCO3、CaCO3、SrCO3、BaCO3、MnCO3、CoCO3、ZnCO3、BaB24などを挙げることができる。
【0027】
無機粒子は、ポリマーの結合鎖の配向に伴って無機粒子の軸方向が結合鎖と平行になるような状態で配向する必要がある。この配向は、例えばポリマーにおける結合鎖に配向を生じさせる外部からの成形力などにより生じさせることができる。このことから、無機粒子の形状としては棒状または針状であり、その軸方向の長さ(長軸径)と軸方向に垂直な直径(短軸系)とのアスペクト比が1.5以上であることが好ましく、2以上であることが更に好ましく、3以上であることが更に好ましい。上限については特に制限はないが、概ね10程度である。
【0028】
なお、「ポリマーの結合鎖の配向に伴って無機微粒子の軸方向が結合鎖と平行に配向する」とは、必ずしも全ての無機粒子の軸方向がポリマーの結合鎖と平行に配向することを意味するものではなく、統計的な見地から、軸方向が平行に配向している無機粒子が多数であるということを含むものである。また、無機粒子の結晶構造としては、正方晶系、三方晶系、六方晶系、斜方晶系、単斜晶系、三斜晶系に属する結晶構造を有することが好ましい。更に、これらの単結晶構造のみならず、多結晶体またはこれらの凝集体であってもよい。
【0029】
無機粒子の平均粒子径は、光の散乱を低く抑えるために一般的には波長程度以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。また、平均粒子径が小さく制御されていても粗大な粒子が混在していると光の散乱の影響が大きくなることから、粒子径が300nm以上である粒子の割合が30個数%以下であることが好ましく、10個数%以下であることがより好ましい。ここで、粒子径とは、針状または棒状の無機粒子の長軸径を指し、平均粒子径とはその平均値である。
【0030】
本発明で用いる無機粒子の製造方法としては特に限定は無く、公知のあらゆる製造方法を適用することが可能である。粒子径分布が狭く均一な無機粒子を用いることが好ましいことから、反応晶析法やゾルゲル法などの液相法により製造することが好ましい。
【0031】
本発明の無機粒子は、その表面にシリカ層が形成され、更にシリカ層の表面は疎水化処理が施されていてもよい。無機粒子の表面にシリカ層を形成するための処理剤としては、3官能基シランカップリング剤、4官能基シランカップリング剤、ポリシラザン等のケイ素を含有する化合物の層を形成する公知の処理剤を用いることが可能である。具体的には、ポリシラザン、メチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランを用いることが好ましく、特にシリカ層を形成する速さ及びシリカ層の緻密さの観点から、ポリシラザンを用いることが好ましい。
【0032】
高分子樹脂中に分散されている無機粒子の含有率は、高分子樹脂100質量部に対して5質量部以上、80質量部以下であることが好ましい。無機粒子の含有率が10質量部以上であれば、複屈折低減効果を発揮させることができ、また80質量部以下であれば、元来の高分子樹脂の長所である加工性などの特性が損なわれることがない。
【0033】
3.添加剤
光学フィルムの製造工程及び成形工程においては、必要に応じて各種添加剤(以下、配合剤ともいう)を添加することができる。添加剤については、特に限定はないが、主に、可塑剤、酸化防止剤、耐光安定剤等が挙げられる。それ以外にも、熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤、滑剤等の樹脂改質剤、軟質重合体、アルコール性化合物等の白濁防止剤、染料や顔料等の着色剤、帯電防止剤、難燃剤、フィラー等が挙げられる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることが可能であり、その配合量は本発明に記載の効果を損なわない範囲で適宜選択される。特に、少なくとも可塑剤または酸化防止剤が含有されていることが好ましい。
【0034】
(3−1)可塑剤
可塑剤としては、特に限定されるものではないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等が挙げられる。
【0035】
可塑剤は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
【0036】
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等が挙げられる。トリメリット酸系可塑剤としては、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等が挙げられる。ピロメリット酸エステル系可塑剤としては、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等が挙げられる。グリコレート系可塑剤としては、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が挙げられる。クエン酸エステル系可塑剤としては、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等が挙げられる。
【0037】
(3−2)酸化防止剤
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、成形時の酸化劣化等による着色や強度低下を防止できる。
【0038】
酸化防止剤は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、高分子樹脂100質量部に対して、0.001〜5質量部の範囲であることが好ましく、0.01〜1質量部の範囲であることがより好ましい。
【0039】
フェノール系酸化防止剤としては、従来公知のものが適用可能であり、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート等の特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))]、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)等のアルキル置換フェノール系化合物、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン基含有フェノール系化合物等が挙げられる。
【0040】
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のモノホスファイト系化合物、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)等のジホスファイト系化合物等が挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等が特に好ましい。
【0041】
イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0042】
(3−3)耐光安定剤
耐光安定剤としては、ベンゾフェノン系耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系耐光安定剤、ヒンダードアミン系耐光安定剤等が挙げられる。本発明においては、透明性、耐着色性等の観点から、ヒンダードアミン系耐光安定剤を用いるのが好ましい。ヒンダードアミン系耐光安定剤(以下、HALS)の中でも、テトラヒドロフランを溶媒として用いた液体クロマトグラフィーによるポリスチレン換算の分子量Mnが1,000〜10,000であるものが好ましく、2,000〜5,000であるものがより好ましく、2,800〜3,800であるものが特に好ましい。Mnが小さすぎると、HALSをブロック共重合体に加熱溶融混練して配合する際に、揮発のため所定量を配合できない、または、射出成形等の加熱溶融成形時に発泡やシルバーストリークが生じるなど加工安定性が低下するといった問題が生じるからである。
【0043】
上述したHALSとしては、N,N′,N″,N′″−テトラキス−〔4,6−ビス−{ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ}−トリアジン−2−イル〕−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンと、N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)と、モルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ〔(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕等のピペリジン環がリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物等のピペリジン環がエステル結合を介して結合した高分子量HALS等が挙げられる。
【0044】
これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンと、N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物等のMnが2,000〜5,000の範囲であるものが好ましい。
【0045】
耐光安定剤の配合量は、高分子樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲であることが好ましく、0.02〜15質量部の範囲であることがより好ましく、0.05〜10質量部であることが特に好ましい。これは、添加量が少なすぎると耐光性の改良効果が十分に得られないため、特に画像表示装置の基板として使用する場合、例えばバックライト等の照射によって着色が生じてしまい、HALSの配合量が多すぎると、その一部がガスとなって発生するとともに、高分子樹脂への分散性が低下するため、基材の透明性が低下するからである。
【0046】
また、最も低いガラス転移温度が30℃以下である化合物を配合することが好ましい。これによって、透明性、耐熱性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止できるからである。
【0047】
4.二酸化炭素
本発明においては、混練工程で、無機粒子と高分子樹脂を混練するに際して、二酸化炭素を含有させた状態で行う。
【0048】
二酸化炭素は高圧の条件下で高分子樹脂中に溶解するが、圧力20MPa程度までは圧力と溶解量が比例するヘンリーの法則が成り立つ。本発明においては、2〜10MPaの高圧の二酸化炭素、あるいは超臨界流体の状態の二酸化炭素を溶融状態の高分子樹脂に接触させて混合することによって、二酸化炭素を高分子樹脂に含有させることができる。
【0049】
混合に用いることのできる装置としては、ラボプラストミル、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等のような密閉式装置、バッチ式装置を挙げることができる。また、単軸押出機、二軸押出機等のように連続式の溶融混練装置を用いることにより、混合と混練を同時に行うこともできる。
【0050】
本発明では、高分子樹脂中の二酸化炭素の含有量が重要であり、二酸化炭素の含有量が少ないと改善効果が小さく、また二酸化炭素の含有量が多いと、高分子樹脂をフィルムとしたときに発泡する可能性があるので好ましくない。高分子樹脂中の二酸化炭素の含有量は、概ね、高分子樹脂に対し、0.5質量%から5質量%、好ましくは0.5質量%から3.0質量%であり、より好ましくは0.5質量%から2.5質量%である。
【0051】
二酸化炭素は超臨界流体の状態であってもよい。ここでいう超臨界流体とは、臨界温度以上、臨界圧力以上の状態で気体と液体の中間的な性質を有しているものをいう。
【0052】
5.混練工程
高分子樹脂と無機粒子を混練する混練工程においては、二酸化炭素を含有した高分子樹脂と無機粒子を一括で添加して混練してもよいし、段階的に分割添加して混練してもよい。段階的に分割添加する場合には、押出機などの溶融混練装置では、段階的に添加する成分をシリンダーの途中から添加することも可能である。また、高分子樹脂と無機粒子とを予め混練した後、高分子樹脂以外の成分で予め添加しなかった成分を添加して更に溶融混練する際も、これらを一括で添加して混練してもよいし、段階的に分割添加して混練してもよい。分割して添加する方法としては、一成分を数回に分けて添加する方法や、一成分を一括で添加し、他の成分を段階的に添加する方法、これらを組合せた方法を用いることができる。
【0053】
また、無機粒子は、粉体ないし凝集状態のまま添加しても良いし、液中に分散した状態で添加しても良い。但し、液中に分散した状態で無機粒子を添加する場合は、混練後に脱気を行うことが好ましい。また、液中に分散した状態で添加する場合は、あらかじめ凝集粒子を一次粒子に分散して添加することが好ましい。凝集粒子の分散には、各種分散機が使用可能であるが、特にビーズミルが好ましい。ビーズミルのビーズとしては、各種の素材のものがあるが、その大きさは1mm以下が好ましく、さらに0.1mm以下、0.001mm以上のものが好ましい。
【0054】
また、光学フィルムの原料となる無機化合物を含有する高分子樹脂の粉体またはペレットを熱風乾燥または真空乾燥した後、可塑剤、酸化防止剤、耐光安定剤等の光学フィルム構成材料と共に加熱し溶融して、二酸化炭素と接触させながら混合し、二酸化炭素を高分子樹脂中に含有させてから、混練工程に入ることも可能である。
【0055】
本発明においては、混練工程中における二酸化炭素の導入タイミングは、溶融混練前、混練中のどの時点でも構わない。
【0056】
混練工程の具体的な手順は次の二つの何れかが好ましい。
【0057】
一つは、溶融混練前に高分子樹脂と二酸化炭素を接触させて混合し、二酸化炭素を高分子樹脂中に含有させて、その後に無機粒子と高分子樹脂とを混練する手順である。もう一つは、高分子樹脂及び無機粒子の混合物と二酸化炭素を接触させて混合し、無機粒子を含有する高分子樹脂中に二酸化炭素を含有させて、混練する手順である。
【0058】
後者の手順によれば、可塑化した高分子樹脂に二酸化炭素を含有させることになるため、混練物の低粘度化を図ることができる。この手順を用いる場合には、混練装置内の高分子樹脂に直接、二酸化炭素を導入することができる。
【0059】
混練工程に先立って、高分子樹脂や無機粒子に吸着しているガスを予め除去しておくことが好ましい。また、無機粒子を分散液として混練に用いる場合は、溶存酸素を除去しておくことが好ましい。
【0060】
6.光学フィルムの形成方法
本発明の光学フィルムの形成方法としては特に限定は無く、公知の樹脂フィルムを形成する方法を適宜用いることが可能で、例えば、ダイコーターを利用してフィルム状に押し出す押出し成形法(溶融成膜法)など、様々な方法を挙げることができる。
【0061】
低複屈折性、機械強度、寸法精度等の特性に優れたフィルムを得るためには溶融成膜法が好ましい。溶融成膜する際の溶融温度は120℃〜280℃の範囲が好ましく、200℃〜250℃であることがより好ましい。
【0062】
、例えば、T型ダイよりフィルム状に押出して、例えば、静電印加法等により冷却ドラム或いはエンドレスベルト等に密着させ、冷却固化させ、未延伸フィルムを得る。冷却ドラムの温度は90〜150℃に維持されていることが好ましい。
【0063】
冷却ドラムから剥離され得られた未延伸フィルムは、1つまたは複数のロール群及び/または赤外線ヒーター等の加熱装置を介して、再度加熱して長手方向に一段または多段縦延伸後冷却することが好ましい。
【0064】
延伸倍率は通常1.1〜10倍、好ましくは1.1〜4倍であり、延伸温度は、本発明の光学フィルムのガラス転移温度をTgとすると(Tg−30)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg−20)〜(Tg+80)℃の範囲内で加熱して搬送方向(長手方向;MD)あるいは幅手方向(TD)に延伸することが好ましい。(Tg−20)〜(Tg+20)℃の温度範囲内で横延伸し次いで熱固定することが好ましい。
【0065】
延伸する方法は、特に制限はないが、公知のピンテンターやクリップ式のテンターなどを好ましく用いることができる。
【0066】
延伸工程の後、緩和処理を行うことも好ましい。また、フィルムを形成した後、表面に平滑化コーティングを施すなど、表面の平滑性を向上させる処理を行ってもよい。
【0067】
本発明の製造法により得られた光学フィルムは、25℃〜160℃における線膨張係数が5.00×10-5/℃以下であることが好ましく、4.00×10-5/℃以下であることがより好ましく、3.00×10-5/℃以下であることが特に好ましい。線膨張係数は、例えばJIS規格K−7197に記載のTMA法によって測定し、下記式1より算出できる。下記式1において、△Is(T1)、△Is(T2)は、それぞれサンプル測定時の温度T1(℃)及びT2(℃)におけるTMA測定値(μm)を示し、L0は、室温におけるサンプルの長さ(mm)のことである。
【0068】
【数1】

【0069】
本発明の製造法により得られた光学フィルムの表面粗さは、が1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが特に好ましい。フィルムがこれより粗くなると、例えば液晶表示素子用基板として用いる場合、フィルムに接触している液晶部分に厚みムラを生じ、表示不良の問題が起こりうる。
【0070】
本発明の製造法により得られた光学フィルムは、種々の用途において必要に応じて、ガスバリア層、ハードコート層、カール防止層、導電膜層、各層間との密着性を増すため接着層等、種々の機能層を積層してもよい。
【0071】
7.光学フィルムの用途
本発明の製造法により得られた光学フィルムは、その用途として特に限定は無く、様々な分野に適用することができる。具体的には、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、太陽電池用基板、液晶ディスプレイなどの画像表示装置に用いる導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム等の光学フィルム;画像表示装置用基板などを挙げることができる。
【0072】
本発明の製造法により得られた光学フィルムは、特に透明性に優れることから、上記の様々な用途の中でも種々の光学フィルムや画像表示装置用基板として特に好適に用いられる。
【実施例】
【0073】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)
本実施例では、無機粒子として炭酸ストロンチウムの針状結晶を使用し、延伸、配向時に二酸化炭素が高分子樹脂中に含有していることの優位性を説明する。
【0075】
特開2004−35347号公報の実施例2を参考にして、均一沈殿法にて反応温度及び反応時間を適宜調整し、平均粒子径(長軸径)200nmと40nmの2種類の炭酸ストロンチウム粒子を作製した。
【0076】
〈試料1〉
減圧下において200℃の温度で乾燥させた平均粒子径200nm、アスペクト比7の炭酸ストロンチウム30gを、キシレン720ml中で超音波で分散を行い、ゲル化させた。得られた溶液に対し、アルゴン雰囲気下で5%ポリシラザン溶液(NP110:AZエレクトロマテリアルズ社製)180mlを加えた。この溶液を10分撹拌した後、更に、大気雰囲気下で撹拌しながら200℃の温度で1時間加熱した。その後、噴霧乾燥を行い、得られた粒子を、更に大気雰囲気下において200℃の温度で1時間加熱した。
【0077】
次に、得られた粉体30gに対してアルゴン雰囲気下で攪拌しながらメチルトリメトキシシラン(LS−530:信越化学製)4gを加えた。更に、200℃の温度で30分間加熱した後、100℃まで減圧することにより、未反応のヘキサメチルジシラザンや、粒子に吸着した副生成物のアンモニアを除去して、表面が疎水化された粉体を得た。これを試料1とする。
【0078】
〈試料2〉
試料1において炭酸ストロンチウムを平均粒径200nmのものに代えて、平均粒径40nm、アスペクト比8の炭酸ストロンチウムを用いた以外は、試料1と同様の方法で表面が疎水化された粉体を得た。これを試料2とする。
【0079】
《光学組成物及び光学フィルムの作製》
上述した製法によって作製した試料1、試料2を、ポリラボシステム(HAAKE社製)を用いて、高分子樹脂である脂環式ポリオレフィン樹脂(ZEONEX330R:日本ゼオン株式会社)100質量部に対して10質量%の無機粒子を溶融混練することにより、無機粒子を含有する高分子樹脂を得た。
【0080】
得られた無機粒子を含有する高分子樹脂を、空気中、常圧下で110℃2時間乾燥し、減圧に維持されたストックタンクで室温まで放冷しペレットを作製した。このペレットを2軸押し出し機に投入し、230℃の溶融温度で加熱溶融した後、二酸化炭素ボンベより二酸化炭素を供給し、高分子樹脂に二酸化炭素を混合して含有させ、高分子樹脂中に二酸化炭素を含有させた状態で混練した。高分子樹脂に二酸化炭素を含有させる量は、ボンベ圧力により調整した。混練後、T型ダイより溶融押出成形し、次いで延伸して光学フィルムを得た。延伸条件は、延伸倍率1.4,延伸温度140℃、熱固定140℃である。
【0081】
二酸化炭素の含有量は溶融混練物の一部を取り出し、取り出した直後と一定時間経過し質量減少がなくなった時点での質量を測定し、この差分より算出した。
【0082】
得られた光学フィルムは、表1に示す通り、それぞれフィルム1〜14とした。
【0083】
《評価方法》
1)光線透過率
各フィルム1〜14を加熱溶融した後、それら各フィルム1〜14を厚さ寸法が3mmのプレート状に成型した。得られたプレート状の各フィルム1〜14について、分光光度計(株式会社島津製作所製:UV−3150)により、波長588nmにおける厚さ方向の透過率を測定した。
【0084】
2)屈折性
偏光顕微鏡を利用し、クロスニコル下でサンプルの観察を行うことにより、ミクロの複屈折性を判定した。
【0085】
フィルム1〜14について、それぞれ光線透過率、複屈折性を評価し、その評価結果を表1に示した。
【0086】
【表1】

【0087】
複屈折性 複屈折性小(良い) ◎>○>△>× 複屈折性大(悪い)
表1より、二酸化炭素を含有させて混練した本発明では、フィルム中での無機粒子の配向性が良好で、高透明性と、複屈折性の低減との両立という課題を解決していることが分る。更に、二酸化炭素の含有量が0.5−3.0質量%の場合、さらには、0.5−2.5の場合に、透明性の向上及び複屈折性の低減という効果をより顕著に発現していることがわかる。
【0088】
(実施例2)
実施例1におけるフィルム1、2、5を用いて、簡易的に液晶表示素子用基板として使用し比較検討を行った結果、実施例1と同様の実験結果を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子と高分子樹脂を混練する混練工程と、前記混練工程により得られた前記無機粒子を含有する高分子樹脂を延伸する延伸工程と、を含む光学フィルムの製造方法において、前記無機粒子は光学異方性を有する針状または棒状の無機粒子であり、前記混練工程は、前記高分子樹脂に二酸化炭素を含有させた状態で行うことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記光学異方性を有する針状または棒状の無機粒子が複屈折性を有することを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記高分子樹脂に含有させる二酸化炭素の量は、該高分子樹脂に対し0.5〜3.0質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法により製造されたことを特徴とする光学フィルム。
【請求項5】
請求項4に記載の光学フィルムを用いた光学素子。