説明

光学フィルムの製造方法

【課題】薄膜で表面平滑性に優れ、高い全光線透過性を有しつつ、高い光拡散性を有する光学フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】透明樹脂と金属酸化物を含む、全光線透過率が70%以上、ヘイズ値が20%以上100%未満であり、かつ中心線表面粗さ(Ra)が100nm以下の光学フィルムを、(A)ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物を、溶媒中でゾル−ゲル反応させる工程、(B)透明樹脂を溶質とする溶液を準備する工程、(C)前記(A)工程で得た混合物と(B)工程で得た溶液を混合する工程、および(D)前記(C)工程で得た混合物を基板または容器に塗布あるいは展開した後、加熱し溶媒を蒸発させて膜を形成する工程を含む方法で製造する。
ただし、前記透明樹脂のヒルデブランド法による溶解度パラメータであるSP値((cal/cm0.5)を、1(cal/cm0.5で除した無次元SP値と、
前記金属酸化物の下記方法により求めた親水親油バランスHLB値に1を加えた値が、以下の式(1)の関係を満たす。
2.1<|HLB値+1−無次元SP値| ・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイにおいては、冷陰極管等の光源から発光された光が導光板を通りディスプレイ画面に導光される。その際に、ディスプレイ画面上で輝度ムラが生じないように、画面全体の輝度を均一化するための光拡散フィルムが用いられている。光拡散フィルムには光源から発せられた光を拡散させて光源の像を見えないようにする機能と、光源の明るさを損なわずに画面全体の輝度を保持する機能が求められる。従って、光拡散フィルムには反射や吸収によるロスを最小限に抑え、散乱光を通過させ、平行光を通過させない性質が求められる。
【0003】
従来、光拡散フィルムとして、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステルなどの透明なシートまたはフィルムの表面をマット状にしたものが用いられている。また、光拡散フィルムとして、炭酸カルシウム、シリカ粒子等の無機微粒子やポリスチレン、PMMA等の透明樹脂粒子を添加した透明なシートまたはフィルム、あるいは、透明シート等の表面に前記粒子を添加した樹脂をコート膜として設けたものなども使用されている(例えば特許文献1〜3)。
【0004】
近年、液晶ディスプレイにおいては以前にも増して高輝度化および薄型化が強く求められている。そのため導光板方式における光拡散フィルムは、良好な光透過性と適切な範囲のヘイズ値を両立し、かつ膜厚が薄いものが要求されている。
【0005】
ところで、ゾル−ゲル反応を利用すると溶液状態から金属酸化物を比較的低温で合成できることが知られている。ゾル−ゲル反応(「ゾル−ゲル法」ともいう)とは、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレートなどを加水分解・重縮合反応(ゾル−ゲル反応)させて金属酸化物を得る方法である。ゾル−ゲル反応を用いると、高温では分解してしまうような有機材料と金属酸化物を複合化できる(非特許文献1等参照)。また、ゾル−ゲル反応は分子レベルで原料を反応させて金属酸化物を合成できるため、特に金属酸化物と透明樹脂材料とのナノコンポジットを作製する方法として応用されている。このような透明樹脂材料と数十nm以下の大きさの金属酸化物からなる複合材料は、樹脂本来の透明性を失うことなく、熱的、機械的特性を向上させられることが一般的に知られており、種々の樹脂について多くの報告例がある。
【0006】
例えば、特許文献4には、3−アミノプロピルトリメトキシシランを含む透明樹脂溶液の塗布膜を乾燥させて得たフィルムが開示されている。本フィルムは、アルコキシシランのアミノ基と強い相互作用を有する透明樹脂を用いているため、加熱乾燥過程において金属酸化物の粒子が大きくならず、透明性に優れるとされている。また、特許文献5には、セルローストリアセテート樹脂と、金属アルコキシドを含む溶液を塗布して乾燥させて得たフィルムが開示されている。さらに、特許文献6には、ポリビニルピロリドン樹脂と、金属アルコキシドを含む溶液を塗布して乾燥させて得たフィルムが開示されている。これらのフィルムも、特許文献4に記載のフィルム同様に、いずれも樹脂と金属酸化物との相互作用が高いため、透明性の高いフィルムとされている。
【特許文献1】実公平3−26481号公報
【特許文献2】特開2004−198743号公報
【特許文献3】特開2005−55861号公報
【特許文献4】特開2004−224941号公報
【特許文献5】特開2006−330175号公報
【特許文献6】特開2000−122038号公報
【非特許文献1】「ゾル−ゲル法の応用」、作花済夫著、アグネ承風社、1997年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献に開示されている、表面をマット状に加工する方法は、サンドブラスト加工を行った金型や、エンボス加工用のロールを用いてフィルム表面に凹凸を転写する方法である。しかしこの方法は50μm以下の膜厚の薄膜フィルムに適用することが困難である。薄膜フィルムはフィルム自体の強度が当該加工に耐えられず、反り等の変形を生じるからである。また、液晶ディスプレイにおいて、表面をマット状に加工された光学フィルムが、当該面がプリズムシートと接するようにして使用されるとプリズムを傷つけてしまうことがある。このことは光の集光性が低下する等の問題を引き起こすことがある。
【0008】
また、屈折率の異なる透明粒子を光散乱材として透明なシートまたはフィルム内部に添加する、あるいはそれらを含むコート膜を表面に設ける方法では、平滑性に優れた薄膜フィルムを得るために、使用する光拡散材粒子の大きさを膜厚に対して十分に小さくする必要が生じる。しかし、当該粒子の粒径を小さくすることは、光学フィルムの散乱効率を低下させる。さらに粒径の小さな粒子は、樹脂中での凝集しやすく、得られるフィルムの光拡散性や均一性を低下させるという問題があった。
【0009】
非特許文献1に開示のゾル−ゲル法は、既述のとおり金属酸化物をポリマー中に凝集を抑えつつ分散できる方法である。しかし、もともと当該粒子をナノレベルでポリマー中に分散させるために開発された方法であるため、当該方法で得られるポリマー中に金属酸化物がナノレベルで分散した複合体は透明であり光拡散効果が高くない。従って、従来のゾル−ゲル反応により得られたフィルムは、光拡散のための光学フィルムとしては好適ではない場合がある。一般に、十分な光拡散効果を発するためにはポリマー中に金属酸化物がサブミクロン程度の粒径で分散している必要がある。非特許文献1に記載の方法を用いて、ポリマー中にサブミクロン以上の大きさの金属酸化物を分散させた複合体を得る方法はこれまで報告されてこなかった。金属酸化物の粒径がサブミクロン以上になると、複合体の透明性が失われ、さらには熱的・機械的特性の向上効果も小さくなる。さらにはサブミクロンサイズの金属酸化物は焼結・粉砕によって作製することも容易になるため、ゾル−ゲル法を用いる必要性が薄れるということが理由と思われる。特許文献6には、ゾル−ゲル法を用いた複合体が開示されているが、当該複合体は、金属酸化物をナノレベルで分散させた透明な複合体である。つまり、従来は、光拡散性に優れた光学フィルムをゾル−ゲル法を用いて作製するという発想自体が存在しなかった。
【0010】
すなわち、薄膜で表面平滑性に優れ、高い全光線透過性を有しつつ、高い光拡散性を有する光学フィルムが求められていたが、これまでこのようなフィルムを得る方法は提案されてこなかった。このような事情に鑑み、本発明は、薄膜で表面平滑性に優れ、高い全光線透過性を有しつつ、高い光拡散性を有する光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは鋭意検討の結果、特定の透明樹脂と、特定のゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物を用いて、ゾル−ゲル反応により製造した光学フィルムにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、前記課題は、以下の本発明により解決される。
【0012】
[1]透明樹脂と金属酸化物を含む、全光線透過率が70%以上、ヘイズ値が20%以上100%未満であり、かつ中心線表面粗さ(Ra)が100nm以下の光学フィルムの製造方法であって、
(A)ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物を、溶媒中でゾル−ゲル反応させる工程、
(B)透明樹脂を溶質とする溶液を準備する工程、
(C)前記(A)工程で得た混合物と(B)工程で得た溶液を混合する工程、および
(D)前記(C)工程で得た混合物を基板または容器に塗布あるいは展開した後、加熱し溶媒を蒸発させて膜を形成する工程、を含み、
前記透明樹脂のヒルデブランド法による溶解度パラメータであるSP値((cal/cm0.5)を、1(cal/cm0.5で除した無次元SP値と、
前記金属酸化物の下記方法により求めた親水親油バランスHLB値が、以下の式(1)の関係を満たす、光学フィルムの製造方法。
2.1<|(HLB値+1)−無次元SP値| ・・・(1)
[金属酸化物のHLB値は、以下の工程により求められる;
前記金属化合物の金属原子の価数、および前記金属化合物が加水分解された化合物の金属原子上の有機基Rの数に応じて、金属酸化物の構造単位を、一般式(i)〜(v)のいずれかとみなす工程、
一般式(i)〜(v)で表される金属酸化物の構造単位のR、OH、Oの官能基について、デービス法で定義される基数を求め、下記式(2)に基づいて、金属酸化物のHLB値を算出する工程;
HLB値=7+基数の合計 ・・・(2)
【化1】

【化2】

【化3】

式(i)〜(iii)において、Mは4価の金属元素、Rはアルコキシル基以外の一価の有機基である;
【化4】

【化5】

式(iv)〜(v)において、Xは3価の金属元素、Rはアルコキシル基以外一価の有機基である]
[2]前記(D)工程の前に、前記(C)工程で得た混合物中に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物、溶媒、水、または触媒を混合してゾル−ゲル反応を進行させる工程をさらに含む、[1]に記載の光学フィルムの製造方法。
[3]前記(B)工程の前に、前記(A)工程で得た混合物中に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物、溶媒、水、または触媒を混合してゾル−ゲル反応を進行させる工程をさらに含む、[1]または[2]に記載の光学フィルムの製造方法。
[4]透明樹脂と金属酸化物を含む、全光線透過率が70%以上、ヘイズ値が20%以上100%未満であり、かつ中心線表面粗さ(Ra)が100nm以下の光学フィルムの製造方法であって、
(E)透明樹脂を溶質とする溶液を準備する工程、
(F)前記(E)工程で得た溶液中に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物を混合してゾル−ゲル反応を行う工程、および
(G)前記(F)工程で得た混合物を基板または容器に塗布あるいは展開した後、加熱し溶媒を蒸発させて膜を形成する工程、を含み、
前記透明樹脂のヒルデブランド法による溶解度パラメータであるSP値((cal/cm0.5)を、1(cal/cm0.5で除した無次元SP値と、
前記金属酸化物の下記方法により求めた親水親油バランスHLB値が、以下の式(1)の関係を満たす、光学フィルムの製造方法。
2.1<|(HLB値+1)−無次元SP値| ・・・(1)
[金属酸化物のHLB値は、以下の工程により求められる;
前記金属化合物の金属原子の価数、および前記金属化合物が加水分解された化合物の金属原子上の有機基Rの数に応じて、金属酸化物の構造単位を、一般式(i)〜(v)のいずれかとみなす工程、
一般式(i)〜(v)で表される金属酸化物の構造単位のR、OH、Oの官能基について、デービス法で定義される基数を求め、下記式(2)に基づいて、金属酸化物のHLB値を算出する工程;
HLB値=7+基数の合計 ・・・(2)
【化6】

【化7】

【化8】

式(i)〜(iii)において、Mは4価の金属元素、Rはアルコキシル基以外の一価の有機基である;
【化9】

【化10】

式(iv)〜(v)において、Xは3価の金属元素、Rはアルコキシル基以外一価の有機基である]
[5]前記(G)工程の前に、前記(F)工程で得た混合物に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物、溶媒、水または触媒を混合して、ゾル−ゲル反応を進行させる工程をさらに含む、[4]に記載の光学フィルムの製造方法。
[6]前記溶媒の、酢酸ブチルの蒸発速度を1とした相対値で表される相対蒸発速度が、0.03〜0.6である、[1]〜[5]いずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
[7]前記透明樹脂は、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、またはポリアクリル酸である、[1]〜[6]いずれかにに記載の光学フィルムの製造方法。
[8]前記金属酸化物は、珪素、チタン、ジルコニウムまたはアルミニウム元素を含む、[1]〜[7]いずれかにに記載の光学フィルムの製造方法。
[9]前記ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物が、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネートまたは金属カルボキシレート、もしくはこれらの重縮合物である、[1]〜[8]いずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
[10]前記透明樹脂は、ポリメチルメタクリレートであり、前記金属酸化物を生成する金属化合物は、テトラメトキシシランまたはテトライソプロポキシチタンである、[1]〜[9]いずれかにに記載の光学フィルムの製造方法。
[11]前記透明樹脂は、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸の混合樹脂であり、前記金属酸化物を生成する金属化合物は、メチルトリメトキシシランまたはテトラメトキシシランである、[1]〜[10]いずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
[12]前記光学フィルムは、前記透明樹脂の中に分散された前記金属酸化物粒子を含み、
前記光学フィルムの破断面を電子顕微鏡で観察して得た像から得た、総ての金属酸化物粒子の面積の合計Tと、粒径が1μm以上である粒子の面積の合計Sが、下記式(3)の関係を満たす、[1]〜[11]いずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
S/T≧0.6 ・・・(3)
[13]前記フィルムの厚さは30μm以下である、[1]〜[12]いずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により薄膜で表面平滑性に優れ、高い全光線透過性を有しつつ、高い光拡散性を有する光学フィルムを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
1.本発明の光学フィルムの製造方法
本発明で得られる光学フィルムは、後述する製法によって得られ、かつ全光線透過率が70%以上であって、ヘイズ値が20%以上100%未満であり、かつ中心線表面粗さ(Ra)が100nm以下という特徴を有する。
【0015】
光学フィルムとは、表示材料等の光学用途に用いられる膜状部材をいう。また、本発明の光学フィルムは光拡散フィルムであってもよい。光拡散フィルムとは表示板等において、光源から発された光が導光板を通りディスプレイ画面に導光される際に、輝度ムラが生じないように画面全体の輝度を均一化するための部材である。
【0016】
本発明の光学フィルムは次の方法(以下「第一の方法」という)により製造されることを特徴とする。
(A)ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物を、溶媒中でゾル−ゲル反応させる工程、
(B)透明樹脂を溶質とする溶液を準備する工程、
(C)前記(A)工程で得た混合物と(B)工程で得た溶液を混合する工程、および
(D)前記(C)工程で得た混合物を基板または容器に塗布あるいは展開した後、加熱し溶媒を蒸発させて膜を形成する工程、を含む製造方法。
【0017】
また、本発明の光学フィルムは次の方法(以下「第二の方法」という)により製造されることを特徴とする。
(E)透明樹脂を溶質とする溶液を準備する工程、
(F)前記(E)工程で得た溶液中に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物を混合してゾル−ゲル反応を行う工程、および
(G)前記(F)工程で得た混合物を基板または容器に塗布あるいは展開した後、加熱し溶媒を蒸発させて膜を形成する工程、を含む製造方法。
ただし、本発明においては、透明樹脂と金属酸化物が特定の関係を満たすことが必要である。
【0018】
1−1 「無次元SP値」と金属酸化物の「HLB値」の関係
本発明においては、「無次元SP値」と金属酸化物の「HLB値」が、以下の式(1)の関係を満たすことが必要である。
2.1<|(HLB値+1)−無次元SP値| ・・・(1)
本発明の光学フィルムは、良好な光拡散性を有するために、光学フィルム中の金属酸化物粒子の粒径は、数百nm〜十数μm程度に調整される。本発明においては、金属酸化物粒子はゾル−ゲル反応により形成され、反応の進行により金属酸化物の粒子は大きくなる(「成長する」ともいう)、あるいは反応の途中で形成された金属酸化物同士が凝集することによっても金属酸化物粒子は大きくなる。
【0019】
後述するとおり、本発明では、ポリマー溶液中でゾル−ゲル反応が行われ金属酸化物が形成される。そのため金属酸化物の粒径は、透明樹脂と金属酸化物の相互作用に影響を受ける。すなわち、両者の相互作用が大きい場合は、ゾル−ゲル反応の原料である金属化合物は、金属化合物同士で接近するよりも、樹脂と接近しやすいため、ゾル−ゲル反応が進行しにくくなる。あるいは、反応により生成された金属酸化物は凝集しにくくなる。従って、透明樹脂と金属酸化物の相互作用が大きい場合は、光学フィルム中に含まれる金属酸化物の粒径は小さくなる。逆に、両者の相互作用が小さい場合は、光学フィルム中に含まれる金属酸化物の粒径は大きくなる。
【0020】
そこで、本発明では、透明樹脂と金属酸化物の相互作用の強さを最適な範囲とすることにより、光学フィルム中の金属酸化物粒子の粒径を前記範囲に調整する。本発明において透明樹脂と金属酸化物の相互作用の強さは、透明樹脂の溶解度パラメータ(SP値)と金属酸化物の親水親油バランス(HLB値)の差で規定される。
【0021】
透明樹脂の溶解度パラメータ(SP値)はHildebrandの正則溶液論により定義される。「SP値」は透明樹脂の親水性の度合いを表すパラメータであり、SP値の値が大きい樹脂は、親水性であることを意味する。本発明では、透明樹脂の親水性の度合いを表すSP値と、後述する「金属酸化物の親水親油バランスを示すHLB値」との差の絶対値により、透明樹脂と金属酸化物の相互作用の度合いが求められる。SP値は単位((cal/cm0.5)を有するが、HLB値は単位をもたない無次元数である。そのため、本発明においては、SP値を1(cal/cm0.5で除した「無次元SP値」を用いる。
【0022】
一般にSP値の近い溶媒とポリマーは溶解し易い。混合物のSP値は、SP値が知られている溶媒やポリマーとの相対比較で考えることができる。例えばポリビニルアルコール(PVA)とポリアクリル酸(PAA)の混合物の場合、PAAはPVAよりも水への溶解性が高い。水のSP値は24.2、PVAのSP値は12.6である。よってPAAのSP値はPVAよりも高いと考えられる。
【0023】
金属酸化物の親水親油バランスはDavies法(「界面活性剤−物性・応用・化学生態学−」北原文雄他 編、第9刷、株式会社講談社)により計算される値を用いる。「HLB値」とは、主として界面活性剤の親水親油バランスを測るのに用いられる値であり、その物質が親水性であるか親油性であるかを示す値である。HLB値が大きいとその物質は親水性であることを示し、小さいとその物質は親油性であることを示す。
【0024】
本発明においては、金属酸化物の金属元素に結合している有機基について、基数を算出して求められる。基数とは、表1にその一例を示すとおり、有機基に対して与えられる無次元の値である。HLB値は、以下の式(2)により計算されるが、金属酸化物のHLB値の具体的計算方法は後で詳しく述べる。
HLB値=7+「基数の合計」 ・・・(2)
【0025】
【表1】

【0026】
こうして得られた「HLB値」と「無次元SP値」は以下の関係を満たすことが必要である。
2.1<|(HLB値+1)−無次元SP値| ・・・(1)
ところでHLB値は一般に炭素原子を主骨格とする化合物について用いられる。しかし、本発明では、炭素原子を主骨格とする化合物よりも親水性が高い金属酸化物についてHLB値を用いる。従って、金属酸化物のHLB値を、親水性へシフトさせることが必要と考えられるため、本発明では、「HLB値に1を加えた値」と「無次元SP値」の差により、透明樹脂と金属酸化物の相互作用を規定する。
【0027】
|HLB値+1−無次元SP値|は「HLB値+1−無次元SP値」の絶対値を意味する。この値を「相互作用パラメータ」ともいう。相互作用パラメータが小さいと、透明樹脂と金属酸化物の相互作用が強くなり、金属酸化物粒子の成長が抑制され、光学フィルム中の金属酸化物の粒径は小さくなる。反対に、相互作用パラメータが大きいと、透明樹脂と金属酸化物の相互作用が弱くなり、金属酸化物粒子の成長が促進され、金属酸化物粒子の粒径は大きくなる。光学フィルム中の金属酸化物の粒径は大きくなる。
本発明においては、相互作用パラメータは2.1より大きいことが必要であるが、2.2以上であることが好ましい。さらに、相互作用パラメータは10.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは8.0以下である。
【0028】
1−2 フィルム用混合物を調整する工程
本発明の製造方法は、(A)〜(C)あるいは(E)〜(F)を含む「フィルム用混合物を調製する工程」と、(D)あるいは(G)を含む「製膜工程」に二分される。まず「フィルム用混合物を調製する工程」について説明する。
【0029】
(1)第一の方法のA工程
本発明において、ゾル−ゲル反応とは、金属化合物のアルコキシド基等の有機基を酸またはアルカリ触媒により加水分解し水酸基を生成させる反応(以下「加水分解反応」)と、生成した金属水酸化物の水酸基を脱水重縮合する反応(以下「重縮合反応」)を意味する。
本工程に用いられるゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物とは、ゾル−ゲル反応を起こして、金属酸化物に変化しうる化合物をいう。金属化合物は、金属原子に官能基等の有機基が結合した構造である。以下、当該金属化合物を単に「金属化合物」と呼ぶことがある。
【0030】
1)金属酸化物
本発明の金属酸化物はゾル−ゲル反応により形成される。ゾル−ゲル反応により金属酸化物を形成する金属化合物(以下単に「金属化合物」ともいう)の例には、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート等の金属有機化合物や、金属硝酸塩、金属オキシ塩化物、金属塩化物等の金属無機化合物が含まれる(作花済夫著、「ゾル−ゲル法の科学」、アグネ承風社、p17)。
【0031】
ゾル−ゲル反応においては、一般に、金属化合物が加水分解されて、金属原子に水酸基が結合した化合物が生成され、これらが重縮合されることにより金属酸化物が生成される。ゾル−ゲル反応が100%進行して得られる金属酸化物は、MO等の化学式(Mは4価の金属元素)で表される。しかし、ゾル−ゲル反応は一般に80%程度しか反応が進行しないということが知られているので、本発明では、反応率が80%である金属酸化物についてHLB値を算出する。
【0032】
反応率が80%である金属酸化物は、本発明では以下のように定義される。
まず、価数が4である金属の酸化物である珪素酸化物を例に説明する。
珪素酸化物は、テトラアルコキシシランを原料とすると、スキーム1で示されるゾル−ゲル反応により生成される。まずテトラアルコキシシランは加水分解されてシラノールが生成される。次にゾル−ゲル反応が25%進行すると、一つの水酸基が他の分子の水酸基と縮合反応し、化合物2が生成される。化合物2の酸素原子は、他の分子の珪素原子と結合しているが、スキームでは省略してある。化合物2は、化学式Si(OH)(O)0.5で表される。
【0033】
【化11】

【0034】
同様に本ゾル−ゲル反応が50%進行して生成された化合物3は、Si(OH)(O)で表される。本ゾル−ゲル反応が100%進行して生成された化合物5は化学式SiOで表される。このように考えると、金属(4価)テトラアルコキサイドを用いて得られる金属酸化物であって、ゾル−ゲル反応率が80%である金属酸化物は、化学式(i)で表される。
【化12】

【0035】
同様に、金属(4価)トリアルコキサイド、金属(4価)ジアルコキサイドを用いて得られる金属酸化物であって、ゾル−ゲル反応率が80%である金属酸化物は、化学式(ii)、(iii)で表される。
【化13】

【化14】

式(i)〜(iii)において、Mは4価の金属元素、Rは一価の有機基である。
【0036】
金属(3価)トリアルコキサイド、金属(3価)ジアルコキサイドを用いて得られる金属酸化物であって、ゾル−ゲル反応率が80%である金属酸化物は、それぞれ化学式(iv)、(v)で表される。
【化15】

【化16】

式(iv)〜(v)において、Xは3価の金属元素、Rは一価の有機基である。
【0037】
すなわち、生成する金属酸化物は、原料とした金属化合物の金属元素の価数、および金属化合物が加水分解されて生成した化合物の、金属原子に結合する有機基Rの数により、上記一般式(i)〜(v)のいずれかとみなすことができる。
【0038】
ただし、上記のスキームは酸を触媒に用いた場合の反応式である。アルカリを触媒に用いた場合は、加水分解が生じることなく反応が進行することがあるため、必ずしも反応は上記スキームと一致しない。しかし、この場合でも生成する金属酸化物の構造は同じであるとみなして構わない。そこで、アルカリを触媒に用いた場合も、上記のスキームに基づいてHLB値を求めてよい。
【0039】
金属化合物として金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート、金属硝酸塩、金属オキシ塩化物、金属塩化物等を用いた場合も、加水分解されて化合物1が生成され、上記スキームのように反応が進行する。よって、金属化合物として金属アセチルアセトネート等を用いた場合も、上記のスキームに基づいてHLB値を求めてよい。
【0040】
二種以上の金属酸化物を用いる場合のHLB値は、次のように計算される。まず、金属化合物Pと金属化合物Qの各化合物についてHLB値を求める。化合物P、QのHLB値をPH、QHとする。次に各化合物のモル分率を算出する。化合物P、Qのモル分率をそれぞれm、nとする。このとき金属化合物Pと金属化合物Qから得られた金属酸化物のHLB値は、PH×m+QH×nで表される。
また、加水分解されてヒドロキシル基(OH基)となる官能基(例えばイソプロポキシ基)のHLB値はヒドロキシル基として計算する。
【0041】
本発明では、金属化合物を適宜選択することにより、最終的に得られる光学フィルム中の金属酸化物が決定される。本発明に用いられる金属化合物は、ゾル−ゲル法により金属酸化物を生成するものであって、かつ金属化合物から得られる金属酸化物が透明樹脂との関係で相互作用パラメータの上記値を満足するものであれば特に限定されない。金属酸化物の例には、「ゾル−ゲル法の科学」(作花済夫著、アグネ承風社、P13、P20)に開示されているように、リチウム、ナトリウム、銅、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、珪素、ゲルマニウム、鉛、リン、アンチモン、バナジウム、タンタル、タングステン、ランタン、ネオジム、チタン、ジルコニウムから選ばれる1種以上の金属元素を含む金属酸化物が含まれる。
【0042】
ところで、本発明の光学フィルムの光拡散性は、透明樹脂と金属酸化物の屈折率差に大きな影響を受ける。透明樹脂と金属酸化物の屈折率差は、0.03〜0.9となることが好ましく、0.03〜0.4となることよりが好ましい。屈折率差がこの範囲であると、光拡散効果と全光線透過率のバランスに優れるからである。金属酸化物の屈折率は、金属の種類により決定される。そのため、金属化合物は、所望の屈折率を実現できる金属元素を含むように選択されることが好ましい。透明樹脂の屈折率は一般に1.4〜1.6である。従って、金属酸化物の屈折率が、1.43〜2.5程度であれば、前記の好ましい屈折率差を満足できる。このような屈折率を有する金属酸化物の例には、珪素、ジルコニウム、チタン、またはアルミニウムの酸化物が含まれる。従って、本発明の金属化合物は、これらの金属元素を含んでいることが好ましい。さらに、これらの金属元素を含む金属化合物は、種類が豊富であり、かつ入手が容易である。また、本発明では、これらの一部の官能基を重縮合して得られる重縮合物(「部分加水分解重縮合化合物」ともいう。)を用いてもよい。
【0043】
金属アルコキシドの具体例には以下のものが含まれる。以下の例示において[ ]内の数字は、金属アルコキシドが80%ゾル−ゲル反応することにより生成された金属酸化物のHLB値を示す。
【0044】
テトラメトキシシラン(「TMOS」ともいう)[10.60]、テトラエトキシシラン(「TEOS」ともいう)[10.60]、テトラプロポキシシラン[10.60]、テトライソプロポキシシラン[10.60]、メチルトリメトキシシラン(「MTMOS」ともいう)[9.225]、メチルトリエトキシシラ[9.225]ン、メチルトリプロポキシシラン[9.225]、メチルトリブトキシシラン[9.225]、エチルトリメトキシシラン[8.75]、エチルトリエトキシシラン[8.75]、n−プロピルトリメトキシシラン[8.275]、n−プロピルトリエトキシシラン[8.275]、イソプロピルトリメトキシシラン[8.275]、イソプロピルトリエトキシシラン[8.275]、ジメチルジメトキシシラン[7.85]、ジメチルジエトキシシラン[7.85]、ジフェニルジメトキシシラン[3.1]、ジフェニルジエトキシシラン[3.1]、トリフルオロメチルトリメトキシシラン[8.83]、トリフルオロメチルトリメトキシシラン[8.83]、ビニルトリメトキシシラン[8.75]、ビニルトリエトキシシラン[8.75]、フェニルトリメトキシシラン[6.85]、フェニルトリエトキシシラン[6.85]、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン[7.20]、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン[9.45]、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン[9.45]、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン[8.075]、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン[8.075]、p−スチリルトリメトキシシラン[5.90]、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン[7.875]、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン[7.875]、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン[9.25]、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン[9.25]、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン[9.725]、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン[9.725]、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシチタン[10.60]、テトラエトキシチタン[10.60]、チタニウムイソプロポキシド[10.60]、アルミニウムブトキシド[9.700]、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド[10.60]、ジルコニウムテトライソプロポキシド[10.60]、バリウムイソプロポキシド[8.80]、カルシウムエトキシド[8.80]。
【0045】
金属アセチルアセトネートの具体例には、以下のものが含まれる。以下の例示において[ ]内の数字は、金属アセチルアセトネートが80%ゾル−ゲル反応することにより生成された金属酸化物のHLB値を示す。
ジルコニウムアセチルアセトネート[10.60]、チタニウムアセチルアセトネート[10.60]、アルミニウムアセチルアセトネート[9.700]、インジウムアセチルアセトネート[9.700]や亜鉛アセチルアセトネート[8.80]。中でも、金属アセチルアセトネートとしては、ジルコニウムアセチルアセトネート、チタニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセトネート。
【0046】
金属カルボキシレートの具体例には、酢酸鉛[10.60]、ステアリン酸イットリウム[9.700]、シュウ酸バリウム[8.80]が含まれる。この例示において[ ]内の数字は、金属カルボキシレート80%ゾル−ゲル反応することにより生成された金属酸化物のHLB値を示す。
【0047】
既に述べたとおり、本発明において金属化合物は、生成した金属酸化物の「HLB値」が、透明樹脂の「無次元SP値」と前述の式(1)の関係を満たすように選択される。本発明で好ましく用いられる透明樹脂については後述するが、当該樹脂の「無次元SP値」との関係から、本発明で用いられる金属化合物は、有機基の総てがアルコキシ基であるTMOS、TEOS、チタニウムイソプロポキシドや、有機基の一つがアルキル基で残りはアルコキシ基であるメチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等が好ましい。これらの金属化合物は、さらにゾル−ゲル反応が制御しやすいという利点も有する。
【0048】
これらの金属化合物は異なる種類を併用してもよい。特に、金属元素が異なる金属化合物を用いると、生成される金属酸化物の屈折率を調整できるので好ましい。このような組み合わせの好ましい例には、アルコキシシランと、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、チタニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、チタニウムアセチルアセトネートまたはアルミニウムアセチルアセトネート等との組合せが含まれる。
【0049】
本(A)工程においては、前記金属化合物を溶媒中でゾル−ゲル反応させる。ゾル−ゲル反応において金属化合物がアルコキシド基等の官能基を有する場合は、当該金属化合物を加水分解してアルコキシド基を水酸基にしてから重縮合反応することが好ましい。そのため必要に応じて水を添加してもよい。当該水は触媒を含んでいてもよい。
上記反応は、例えば溶媒に予め前記金属化合物を溶解し、必要に応じて触媒を含んでいてもよい水を添加し、室温であるいは所定温度に加熱するなどして行うことができる。この際に前述のとおり二種類以上の金属化合物を用いてもよい。あるいは第一の金属化合物、第二の金属化合物を別個にゾル−ゲル反応させておき、これらを混合してもよい。さらに当該混合物をゾル−ゲル反応させてもよい。
【0050】
2)溶媒
本反応に用いる溶媒は、前記金属化合物を溶解するものであれば限定されない。しかしながら、蒸発速度が比較的遅い溶媒が好ましい。一般に溶媒の蒸発速度は、酢酸ブチルの蒸発速度を1としたときの相対値(「相対蒸発速度」ともいう)で表される。本発明に用いられる溶媒は、相対蒸発速度が0.03〜0.6であることが好ましい。相対蒸発速度が0.6より大きい溶媒を用いると、本工程の後に行う製膜工程において、金属酸化物の粒子があまり大きくならないことがある。これは、ゾル−ゲル反応が進行して金属酸化物の粒子が大きく成長する前に、溶媒が蒸発してフィルムの流動性が低下してしまうので、ゾル−ゲル反応が抑制されるためと考えられる。
一方、相対蒸発速度が0.03より小さい溶媒を用いると、製膜工程において、乾燥に高温または長時間を要するため、金属酸化物が大きくなりすぎることがある。これは、フィルムの流動性が低下しないため、ゾル−ゲル反応が過剰に進行してしまうためと考えられる。
【0051】
溶媒の相対蒸発速度は、塗料分野でよく用いられる指標であり、公知の文献等から調べることができる。例えば、以下のサイト「エムケーオー企画」に記載されている値を用いてよい。
http://www.mko-kikaku.com/1/toryougaido/toryou/1/youzai/youzaiitiran.htm
【0052】
本工程に用いられる好ましい溶媒の例には、以下のものが含まれる。以下の例示において( )内の数字は、相対蒸発速度を示す。
水、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(0.17)、N−メチル−2−ピロリドン(0.03)、DMSO、シクロペンタノン、シクロヘキサノン(0.23)、メチルセルソルブ(0.47)、エチルセルソルブ(0.32)。
溶媒の相対蒸発速度の測定方法は、ASTM.D3539.76に準じて求めてよい。
【0053】
(A)工程において用いられる溶媒と前記金属化合物の配合比は特に限定されないが、溶媒10gに対して前記金属化合物0.1〜100gであることが好ましい。
【0054】
(A)工程において用いられる水の添加量は、前記金属化合物1モルに対して40モル当量以下であることが好ましく、より好ましくは10モル当量以下、さらに好ましくは5モル当量以下である。
また、本工程において用いられる触媒は、前記加水分解、または重縮合反応を促進させる目的で添加される。このような触媒には公知のものを用いることができる(平島碩著、「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作製技術」、株式会社総合技術センター、p29、または作花済夫著、「ゾル−ゲル法の科学」、アグネ承風社、p154等参照)。これらの例には酸触媒、アルカリ触媒が含まれる。酸触媒の例には、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、蓚酸、酒石酸、トルエンスルホン酸等の無機および有機酸類が含まれる。
【0055】
アルカリ触媒の例には、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム水酸化物、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、モルホリン、ピリジン、ピペリジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン類が含まれる。
【0056】
その他の例には、有機スズ化合物、チタニウムテトライソプロポキシド、ジイソプロポキシチタニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトナート、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリスエチルアセトナート、トリメトキシボランなどの金属アルコキシドが含まれる。
【0057】
触媒は、前記金属化合物1モルに対して2モル当量以下の添加量とすることが好ましく、1モル当量以下とすることがより好ましい。ただし、前記金属化合物が前記触媒作用を示す官能基(例えばアミノ基やカルボキシル基等)を有する場合は、触媒添加量を調整することが好ましい。
【0058】
ゾル−ゲル反応は前述のとおり、加水分解反応、重縮合反応の二つの反応が存在するが、それぞれの反応は同時並行的に進行する。従って、両反応を反応操作に対応づけて区別することはできないが、反応初期の段階では前者の加水分解反応が主として起こり、反応後期の段階では後者の反応が主として起こる。また、触媒の種類により両反応の進行過程が異なることが知られている。一般に酸触媒を用いると加水分解反応が進行しやすく、アルカリ触媒を用いると重縮合反応が進行しやすい。
【0059】
ゾル−ゲル反応は加熱、マイクロ波照射、赤外線照射等を行って反応を促進してよい。従って、本(A)工程においては、水または触媒の量、上記加熱手段の有無、反応時間等によりゾル−ゲル反応の進行度合いを制御することができる。ゾル−ゲル反応の進行に伴い、金属酸化物の粒子は大きくなる。
【0060】
本発明においては後述するように、主に製膜工程において金属酸化物の粒径制御が可能である。しかしその前工程である本(A)工程においても反応の進行度合いを調整しておくことが好ましい。
本工程で得られた混合物中の金属酸化物の粒径が、数nm程度である場合には、最終的に得られる光学フィルム中の金属酸化物が小さすぎて、十分な光拡散効果が得られないことある。一方、本工程で得られた混合物中の金属酸化物の粒径が、数μmのように、大きくなりすぎると、最終的に得られるフィルムの平滑性が失われてしまうことがある。以上から、本工程後の混合物中の金属酸化物の粒径は1μm以下であることが好ましく、数十nm〜数百nmであることが好ましい。本発明において記号「〜」は、その両端の値を含む。
【0061】
本工程において、金属酸化物の粒子を前記範囲に調整する手段は、調整すべき因子が多数に及ぶため一概にはいえない。しかし、例えば、本工程において、溶媒として水、金属化合物としてメチルトリメトキシシラン、触媒に酸触媒を用いて、30℃で反応させると、0.5時間から3時間で、混合物中の金属酸化物の粒径を数十nmから数百nmに成長させられる。また、溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような有機溶媒、金属化合物としてテトラメトキシシラン、触媒に酸触媒を用いて、30℃で反応させると、1時間から6時間で、混合物中の金属酸化物の粒径を数十nmから数百nmに成長させることができる。
【0062】
本発明は、次に述べる(B)工程の前に、本(A)工程で得た混合物中に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物、溶媒、水、または触媒を混合してゾル−ゲル反応を進行させる工程(以下「追加反応工程」ともいう)をさらに含んでいてもよい。この際に、既に混合物中に存在している金属化合物とはゾル−ゲル反応性が異なる金属化合物を添加すると、反応性の違いから、最終的な光学フィルムに含まれる金属酸化物の粒径を調整することができる。また、既に混合物中に存在している金属化合物とは金属元素の異なる金属化合物を添加すると、最終的な光学フィルムに含まれる金属酸化物の屈折率等を調整することができる。
【0063】
(2)第一の方法の(B)工程
1)透明樹脂
本発明の(B)工程は透明樹脂を溶質とする溶液(「樹脂溶液」という。)を準備する。透明樹脂とは、膜厚を30μmとした場合、70%以上の平行光線透過率を示す有機重合体(ポリマー)である。本発明に用いる透明樹脂は、水あるいは水と混和可能な溶媒に溶解性を有するものが好ましい。さらに、透明樹脂は「SP値」が、前述の式(1)の関係を満たすように選択されるが、本発明で用いられる透明樹脂のSP値は、8〜14(cal/cm0.5が好ましく、9〜13(cal/cm0.5がより好ましい。透明樹脂の好ましい例には、以下のものが含まれる。以下の例示において( )内の数字は、SP値(単位:(cal/cm0.5)を示す。
【0064】
ポリメタクリレート(9.2)、ポリアクリレート、ポリイミド(10〜13)、ポリカーボネート(9.8)、ポリスチレン(9.1)、ポリビニルアルコール(12.6)、ポリアクリル酸。
これらの樹脂は、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0065】
SP値は、以下の文献に記載の値を用いてよい。
「プラスチック・データブック」p189〜190(工業調査会)
「ポリイミドは最新ポリイミド〜基礎と応用〜」p278(エヌ・ティー・エヌ) 「考え方合成ゴム基礎講座」p13(大成社)
【0066】
本発明の透明樹脂としては、これらの中でも、本工程に用いる溶媒に可溶であること、かつ前述の金属酸化物のHLB値との関係から、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、またはポリアクリル酸が好ましい。
【0067】
また、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸のように、水に溶解する透明樹脂の場合や、耐熱性の低い樹脂を使用する場合には、得られるフィルムの耐水性や耐熱性を向上させるために、架橋して用いることが好ましい。ポリビニルアルコールを用いる場合は、ポリアクリル酸やポリアミック酸等の官能基を有する樹脂と組合せて混合樹脂とすると、架橋構造を有する樹脂となる。このため樹脂の耐水性が向上する。ポリビニルアルコールとポリアクリル酸の架橋反応は一般的には熱処理により行なわれるが、処理温度を下げ、処理時間を短くするためにPCT/JP2006/310193に記載のエステル化触媒を用いてもよい。
【0068】
2)溶媒
(B)工程で使用される溶媒は、透明樹脂を溶解できる溶媒であれば限定されないが、前述の(A)工程で述べたものを用いることが好ましい。特に(B)工程で使用される溶媒は前記(A)工程で用いる溶媒と同一か、相溶可能な溶媒であることが好ましい。
【0069】
本発明の透明樹脂を溶質とする溶液を準備する工程は、前記溶媒に前記透明樹脂を溶解することにより行える。溶解の際には必要に応じて加熱、あるいは超音波を照射してもよい。市販されている透明樹脂を溶質とする溶液を購入して準備してもよい。当該溶液の濃度は1〜50質量%が好ましく、さらには5〜30質量%であることが好ましい。
【0070】
(3)第一の方法の(C)工程
本発明の(C)工程は、上記(A)工程で得た混合物と(B)工程で得た溶液を混合する。混合の方法は特に限定されないが、(B)工程で得た溶液に(A)工程で得た混合物を注入し攪拌機等で攪拌することにより行うことができる。この際の混合比は特に限定されないが、最終的に得られる光学フィルム中の金属酸化物が所望の量となるように調整することが好ましい。
【0071】
必要に応じて、本(C)工程の後であって(D)工程の前に、(C)工程で得た混合物中に存在する金属化合物のゾル−ゲル反応を進行させる追加反応工程を行ってもよい。追加反応工程においては、加熱、マイクロ波照射、赤外線照射等を行ってもよい。追加反応の条件は、前記(A)工程の反応条件と同様にすることが好ましいが、20〜60℃で1〜30時間程度反応させることがより好ましい。
【0072】
追加反応工程は、(A)工程の後に行われる追加反応工程と同様に行ってよい。特に、透明樹脂と金属酸化物の相互作用が弱すぎて、今後の工程で乾燥時に粒子が成長しすぎることが想定される場合は、透明樹脂と相互作用の強い金属化合物を添加することが好ましい。最終的に光学フィルム中に含まれる金属酸化物の粒径を制御することができるからである。また追加反応において、アルカリ触媒を新たに添加すると、金属化合物の重縮合反応を促進することも可能である。
【0073】
(C)工程、および(C)工程の後に行われた追加反応工程で得られた混合物中の金属酸化物の粒径は、前述した理由から1μm以下であることが好ましく、数十nm〜数百nmであることが好ましい。もし、粒径が1μm以上である粒子を含む場合は、濾過によりこれらの粒子を除去してもよい。濾過は公知の方法で行ってよいが、孔径サイズが5μm以下のフィルターを用いることが好ましく、孔径サイズが1μm以下のフィルターを用いることがより好ましい。
【0074】
(4)第二の方法の(E)工程について
(E)工程は既に述べた(B)工程と同様に行うことが好ましい。ただし、本(E)工程で用いる溶媒は、次工程の(F)工程に用いる金属化合物を溶解できるものであって、かつ(A)工程で述べたものと同じものであることが好ましい。
【0075】
(5)第二の方法の(F)工程について
本工程では、前(E)工程で得た透明樹脂を溶質とする溶液(樹脂溶液)にゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物を混合し、ゾル−ゲル反応を行う。前述の(A)工程同様、金属化合物がアルコキシド基等の官能基を有する場合は、加水分解して水酸基にしてから重縮合反応することが好ましい。そのため必要に応じて水を添加してもよい。さらに、水は触媒を含んでいてもよい。
上記反応は、例えば(E)工程で得た樹脂溶液に前記金属化合物を溶解し、必要応じて触媒を含んでいてもよい水を添加し、室温であるいは所定温度に加熱するなどして行うことができる。この際に、二種類以上の金属化合物を用いてもよい。
【0076】
本工程における樹脂溶液と前記金属化合物の混合比は、前述のとおり最終的に得られる光学フィルム中の金属酸化物の含有量が所望の量になるように調整される。本工程で混合される金属化合物はまだゾル−ゲル反応していないので溶媒に解けやすく、樹脂溶液に直接混合することができる。ただし、金属化合物が樹脂溶液に溶けにくい場合は、一度溶媒に溶解してから混合してもよい。その際に用いる溶媒は、樹脂溶液と相溶することが好ましい。
【0077】
例えば、樹脂溶液の濃度の高い場合に、高い反応温度、あるいは長い時間反応させると、金属酸化物の分子量が上がり、高粘度化やゲル化する可能性がある。樹脂溶液の粘度が高くなり攪拌が不十分となるのでゾル−ゲル反応が不均一で進行しやすくなるためである。樹脂溶液中の透明樹脂の分子量が大きい場合も樹脂溶液の粘度が上昇するので、同様の現象が起きやすくなる。従って、本反応は、溶液中の固形分濃度を1〜50質量%、さらには5〜30質量%として行うことが好ましい。前記固形分とは、樹脂および金属化合物・金属酸化物をいう。また、反応温度は0〜150℃、さらには1〜100℃、よりさらには20〜60℃とすることが好ましい。反応時間は1〜50時間程度、さらには1〜30時間程度とすることが好ましい。
【0078】
さらに(C)工程と同様に、(F)工程の後であって次の(G)工程の前に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物、溶媒、触媒または水を新たに混合して、当該金属化合物と、(G)工程で得た混合物中に既に存在している金属化合物のゾル−ゲル反応を進行させる、追加反応工程を行ってもよい。
この際に新たに加えられる溶媒は、水、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、DMSO、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、THF、ジオキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、メチルセルソルブまたはエチルセルソルブであることが好ましい。前記溶媒は、(E)工程で用いる溶媒と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0079】
既に述べたとおり、(F)工程、および(F)工程の後に行われた追加反応工程で得られた混合物中の金属酸化物の粒径は、前述した理由から1μm以下であることが好ましく、数十nm〜数百nmであることが好ましい。もし、粒径が1μm以上の粒子が存在する場合は、混合物を濾過して、1μm以上の粒子を除去してもよい。
【0080】
1−3 製膜工程
(1) (D)、(G)工程について
本発明の(D)、(G)工程は、前記工程において得られた混合物(前記追加反応工程を行ったものも含む)を、基板または容器に塗布あるいは展開した後、加熱して媒を蒸発させて製膜する。本工程においては、溶媒を蒸発させる際に加熱を行うため、さらにゾル−ゲル反応が進行する。
【0081】
展開とは、ガラス、金属、プラスチックなどの容器に前記混合物を注入し、容器を回転させるなどして容器の壁等に混合物を付着させ、混合物を膜状に成形することをいう。この膜状に形成された溶媒を含む混合物をフィルム前駆体と呼ぶ。
塗布とは、基板等の上に前記混合物を略一定の厚みに塗りフィルム前駆体を得ることをいう。基板とは、平らな部材のことであり、基板の例にはガラス、石英、金属、セラミックス、プラスチック、ゴム等の基板、ロール、ベルト等ガラス板、高分子フィルムが含まれる。塗布は公知の方法で行ってよい。塗布方法の例には、流し塗り法、浸漬法、スプレー法が含まれる。その際には、バーコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ダイコーター、コンマコーター、ロールコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スピンコーター等の公知の塗工機を使用できる。
さらには前記混合物を透明フィルムの片面あるいは両面に塗布して、コーティングフィルムとして得てもよい。この他に、前記混合物と別種の塗布液を基板に塗工した複層フィルムとしてもよい。複層フィルムとして製膜する場合、フィルム用混合液と別種の塗布液を透明フィルムに塗布する順序は任意としてよい。
【0082】
本工程において、塗布等を行ったフィルム前駆体の溶媒を蒸発させる(乾燥する)方法は、通常の加熱乾燥炉を用いて行われる。この際、減圧、送気、赤外線照射、極超短波照射等の処理を行ってもよい。乾燥は、空気、イナートガス(窒素、アルゴン)等の雰囲気で行うことができる。
【0083】
(2)製膜工程における粒径制御について
既に述べたとおり、製膜工程で金属酸化物を成長させる場合、透明樹脂と金属酸化物との間の相互作用を制御することによって金属酸化物の粒径を調整できる。
例えば、透明樹脂としてポリビニルアルコールやポリアクリル酸、金属酸化物原料としてテトラメトキシシランを用いた場合などは、ポリビニルアルコールのヒドロキシル基やポリアクリル酸のカルボキシル基とテトラメトキシシランの加水分解物のシラノール基とが水素結合による強い相互作用により、乾燥時の粒子の成長を妨げ、金属酸化物の粒径は小さくなる。
【0084】
一方、透明樹脂としてポリビニルアルコールやポリアクリル酸、金属酸化物原料としてメチルトリメトキシシランを用いた場合や、透明樹脂としてポリメチルメタクリレート、金属酸化物原料としてテトラメトキシシランを用いた場合などは、水素結合による相互作用が小さいため、乾燥時の粒子の成長が促進され、金属酸化物の粒径は大きくなる。
【0085】
金属酸化物のHLB値は、金属原子に結合している有機基により決定される。そのため、「相互作用パラメータ」を2.1より大きくするには、透明樹脂と相互作用しにくい有機基を有する金属化合物が選択される。
【0086】
以上から、透明樹脂と金属酸化物について、「相互作用パラメータ」および既に述べた「屈折率差」から、好ましい組み合わせが選ばれる。本発明における両者の好ましい組み合わせは、相互作用パラメータが2.1より大きく、かつ屈折率差が0.03〜0.4である組み合わせである。このような好ましい組合せの例には、以下の組み合わせが含まれる。
【0087】
PMMA/TMOS(屈折率差0.05、相互作用パラメータ=2.400)。
PMMA/TMOSおよびTIPT(TMOS:TIPT=52:48(質量比)、屈折率差0.24、相互作用パラメータ=2.400)。
PVAおよびPAA/MTMOS(屈折率差0.09、相互作用パラメータ=2.375)。
PVAおよびPAA/MTMOSおよびTMOS(TMOS:TIPT=88:12(質量比)、屈折率差0.09、相互作用パラメータ=2.223)。
【0088】
この他に、本発明においては、既に述べたとおりフィルム前駆体に含まれる溶媒の蒸発の状態と、ゾル−ゲル反応の進行度合いにより、金属酸化物の粒径を調整できる。本発明では、蒸発速度が特定の範囲にある溶媒を使うことが好ましく、さらに本工程における乾燥条件を40〜180℃で1〜50時間とすることが好ましい。中でも乾燥温度は、60℃以上、さらには100℃以上とすることが好ましい。また、乾燥温度は一定ではなく、段階的に上昇させてもよい。その場合、昇温速度は0.1〜25℃/分とすることが好ましく、0.1〜15℃/分とすることがより好ましく、0.5〜10/分とすることがさらに好ましい。
【0089】
2.本発明の光学フィルム
(1)光学特性
本発明の光学フィルムは、相互作用が比較的弱い透明樹脂と金属酸化物を用いて、前述の方法により得られる。そのため、優れた光拡散能力、および優れた全光線透過性を示す。
【0090】
全光線透過率とは、サンプルに入射された入射光と、入射された光がサンプル中で拡散されて透過する拡散透過光、および入射された方向に直進して透過する平行透過光から以下の式で表される。
「全光線透過率」(%)=(「拡散透過光」+「平行透過光」)/「入射光」×100
上式から明らかなように、全光線透過率が高いということは、拡散された光も含めて光を透過しやすいことを意味する。
【0091】
ヘイズ値とは、以下の式で表される値であり光拡散能力の指標となる。ヘイズ値が高いということは、透過光のうち、拡散透過光の割合が高いことを意味する。
「ヘイズ値」(%)={1―(平行透過率/全光線透過率)}×100
【0092】
本発明の光学フィルムは、全光線透過率が70%以上であって、ヘイズ値が20%以上100%未満である。ヘイズ値は50%以上95%以下であることが好ましい。 すなわち、本発明の特定光学物性フィルムは全光線透過率が高く、かつ透過光線のうち、平行透過光ではなく拡散透過光が高い、つまり光拡散性が高い(光拡散性に優れる)という特徴を有する。
これらの光学物性は、光学フィルム中に分散する金属酸化物粒子の粒径が比較的大きく、かつ粒子の数がある程度存在する構造に起因していると推察される。
またすでに述べたように、金属酸化物と透明樹脂の屈折率差も光学特性に大きく影響する。適切な屈折率を有する金属酸化物が得られる金属化合物と透明樹脂を選択すること、本発明の方法によって金属酸化物粒子を成長させることで、全光線透過率が高く、光拡散性が高い光学フィルムが得られる。
【0093】
すなわち、本発明の光学フィルムはフィルム中に金属酸化物が粒子となって分散している。金属酸化物の含有量は、透明樹脂と金属酸化物の複合体100質量部に対して、好ましくは0.1〜70質量部、より好ましくは1〜50質量部、さらに好ましくは5〜45重量部である。金属酸化物の含有量が70質量部を超えると、膜強度を損なうことがある。金属酸化物の含有量は、光学フィルムを空気中800℃で焼成した後に残る灰分量である。
【0094】
金属酸化物の形態およびその大きさは、透過電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)観察やX線散乱により確認できる。
本発明における金属酸化物の形状はどのような構造であってもよいが、金属酸化物はゾル−ゲル反応により形成されることから、通常は球状である。ただし、(D)や(G)工程のような製膜工程により金属酸化物は形成される場合、フィルム前駆体から溶媒が蒸発する際に、金属酸化物粒子は、フィルムの厚み方向に押しつぶされるような応力を受けることがある。そのため、金属酸化物粒子は、楕円体であってもよい。
【0095】
本発明の光学フィルムの金属酸化物の大きさは、顕微鏡像により求めてよい。金属酸化物が球状以外の形状である場合、その粒径は、得られた像を画像解析して円相当径により求めることが好ましい。本発明の光学フィルム中に存在する金属酸化物粒子は、0.01μm〜15μmであることが好ましく、0.1μm〜8μmであることがより好ましい。金属酸化物の粒径が0.01μm未満であると光拡散能が不十分となることがある。一方、金属酸化物の粒径が15μmを超える構造体ではフィルムが不均一となることがあるが、表面の平滑性に悪影響を及ぼさない場合は、15μmを超える粒子が含まれていてもよい。
【0096】
また、本発明の光学フィルムは、光学フィルムの破断面を電子顕微鏡で観察して得た像から得た、総ての金属酸化物粒子の面積の合計Tと、粒径が1μm以上である粒子の面積の合計Sが、下記式(3)の関係を満たすことがこのましい。
S/T≧0.6 ・・・(3)
すなわち、「粒径が1μm以上である粒子の面積の合計」が、「総ての金属酸化物粒子の面積の合計」の60%以上であることが好ましい。S/Tは、以下のように測定される。
【0097】
1)光学フィルムの断面をTEM等により観察し、画像を得る。
2)当該画像から前述したとおり金属酸化物の円相当径を求め、金属酸化物の粒径とする。
3)粒径が1μm以上の粒子について、それぞれの面積を計算し合計して「粒径が1μm以上の粒子の面積の合計S」を算出する。
4)総ての粒子について、それぞれの体積を計算し合計して「全粒子の面積の合計T」を算出する。
【0098】
本発明の光学フィルムの物性は、金属酸化物と透明樹脂の組合せ、金属酸化物の添加量、金属酸化物の粒径、フィルムの厚みにより調整可能である。本発明の光学フィルムは、フィルム中に含まれる金属酸化物粒子により光を散乱させるため、膜厚を厚くするとヘイズ値を高められる。また、フィルムの厚みを変えずにヘイズ値を高くするには、金属酸化物と透明樹脂の屈折率差を大きくする、金属酸化物の複合量を増やすことが好ましい。さらに、金属酸化物の粒子径を大きくしてもヘイズ値を高めることができるが、粒子の数が減少してしまうとヘイズ値は低下するため、粒径と、粒子数のバランスに配慮する必要がある。
【0099】
(2)膜厚
本発明の光学フィルムの好ましい膜厚は、1〜100μmであり、より好ましくは1〜50μmであり、さらに好ましくは1〜30μmである。本発明の製造方法によれば、膜厚が1〜30μmであって、比較的粒径の大きな金属酸化物が分散されていても、表面平滑性に優れたフィルムが得られる。
前述のとおり、膜厚により本発明の光学フィルムのヘイズ値は変化する。本発明の光学フィルムは、膜厚が16μmで、ヘイズ値が20〜100%であることが好ましく、膜厚が16μmで、ヘイズ値が50〜95%であることがより好ましい。
【0100】
(3)平滑性
本発明の光学フィルムは、(A)〜(C)あるいは(E)〜(F)工程、すなわち「フィルム用混合物を調整する工程」において、金属酸化物をある程度の大きさまで成長させ、さらに、(D)または(G)工程、すなわち「製膜工程」で再度金属酸化物を成長させる点に特徴がある。つまり、製膜した状態で、金属酸化物の粒子を大きくするため、金属酸化物粒子がフィルムから突き出しにくく、表面平滑性に優れる。
【0101】
本発明の光学フィルムは原子間力顕微鏡(AFM)により測定した走査範囲200μm角の中心線表面粗さ(Ra)(以下単に「表面粗さ」ともいう)で評価される。本発明の光学フィルムは、Raが300nm以下であり、100nm以下であることが好ましい。Raが100nm以下になると液晶ディスプレイの光拡散フィルムとして用いた際に、当該フィルムと密着させて用いられる「プリズムシート」を傷つけることなく使用することができる。
【0102】
特に、本発明の光学フィルムは、金属酸化物の量を増やしたり、粒径を大きくしたりしても、フィルムの均一性を保つことができ、かつ表面平滑性の高いフィルムを作製できる。しかし、金属酸化物粒子の大きさが1μm以上になる、あるいはそれ以下の大きさであっても凝集状態を形成する場合には表面の平滑性が損なわれることがある。したがって、粒径が1μm以下程度の金属酸化物を含む光学フィルムにおいて、表面平滑性を高めるには、金属酸化物粒子の分散性を向上させればよい。具体的には、「相互作用パラメータ」を比較的低めにする、透明樹脂と金属酸化物との組み合わせを選択すればよい。
【0103】
一方、粒径が1μmより大きい程度の金属酸化物を含む光学フィルムにおいて、表面平滑性を高めるには、粒径の低下を伴わずにかつ表面の平滑性を維持できるように、製膜過程で金属酸化物粒子を成長させるように製造することが好ましい。具体的には製膜工程の前の「フィルム用混合物を調整する工程」で行われるゾル−ゲル反応を、酸触媒のみを使用することや、その使用量を少なくする、反応温度を下げる等して行えばよい。あるいは、同反応において、金属化合物として、反応性が比較的低い金属アセチルアセトネート、酢酸やアセチルアセトンやアセト酢酸エチルなどを添加すればよい。
【0104】
(4)その他の特性
本発明の光学フィルムは、引張り弾性率、耐擦傷性などの機械的性質や、熱変形温度、熱重量減少、線熱膨張率などの耐熱性、耐薬品性などに優れている。
【0105】
(5)その他の成分
本発明の光学フィルムは、透明樹脂と金属酸化物以外に添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例には、紫外線吸収剤、架橋剤、増粘剤、充填剤、増感剤、可塑剤、光
重合開始剤、モノマー、オリゴマー、安定剤、湿潤剤、流動剤、顔料、染料、接着促進剤、反応触媒、脱水剤が含まれる。これらは、本発明の製造方法のいずれの工程で添加してもよいが、製膜工程で添加することが好ましい。
【0106】
3.本発明の光学フィルムの用途
本発明の光学フィルムは、全光線透過率が70%以上かつヘイズ値が20%以上100%未満である。このため全光線透過率が高く、かつ透過光線のうち平行透過光ではなく拡散透過光の割合が高い、すなわち光拡散性が高い(光拡散性に優れる)という特徴を有する。
本発明の光学フィルム、透過光を拡散するタイプ(前方散乱)であってもよく、反射光を拡散するタイプ(後方散乱)であってもよい。また、本発明の光学フィルムは透過光と反射光の両者、もしくはコーティング膜中やフィルム中を伝播する光に対し、拡散を生じさせるタイプのものであってもよい。
【0107】
このような特性から、本発明の光学フィルムは、光学用途の光拡散性コーティング、光拡散性フィルムとして用いることができる。例えば、プラスチックやガラスなどの透過光性フィルムやシート、鏡、ハーフミラー、あるいは公知の表示素子の防眩や反射防止用のコーティングあるいはフィルムとして利用できる。本発明の光学フィルムをコーティングに用いた場合は、ベース基材にコーティング膜を有する複合フィルムの全光線透過率が70%以上であり、かつヘイズ値が20%以上100%未満であることが好ましい。
【0108】
さらに、本発明の光学フィルムは、FPDなどの表示装置に好適である。具体的には、LCD等の表示素子を用いたプロジェクション式表示装置のスクリーン、あるいは液晶表示素子の輝度や色度の面内分布を改善する為の光拡散板や光拡散性反射体として好適である。これらのFPD分野においては、特に小型軽量化やトータルコストダウンが求められているが、本発明の光学フィルムはその要求に応えられるからである。例えばLCDに用いられている多層構造の光拡散フィルムの代わりに本発明の光学フィルムを用いると、多層であったフィルムを単層とできるので、表示装置の薄型化に寄与できる。このような用途においては、本特定光学物性フィルムは、ヘイズ値が70%以上、Raが100nm以下、ならびに膜厚が30μm以下であることが好ましい。
もちろん本発明の光学フィルムは、ヘイズ値として70%以下の値が求められる用途に対しても、好適に用いられる。
【実施例】
【0109】
実施例中の略語は以下を意味する。
DMAc:ジメチルアセトアミド
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
THF:テトラヒドロフラン
TMOS:テトラメトキシシラン
APTMOS:アミノプロピルトリメトキシシラン
MTMOS:メチルトリメトキシシラン
PMMA:ポリメチルメタクリレート
PVA:ポリビニルアルコール
PAA:ポリアクリル酸
HCl:塩酸
HNO:硝酸
DCDA:ジシアノジアミド
NUCシリコーンL−7001:シリコーン系レベリング剤
TIPT:テトライソプロポキシチタン
【0110】
各種測定方法は以下のとおりである。
(光学測定)
紫外/可視分光光度計(UV3100PC/(株)日立製作所製)を用いて、光学フィルムの平行透過率、全光線透過率、および、反射率を測定した。測定は、測定波長:1000〜300nm、波長分解能:1nm、測定モード:中速で行った。また、波長550nmの平行透過率、および全光線透過率を用いて、次式によりヘイズを計算した。
ヘイズ(%)={1―(平行透過率/全光線透過率)}×100
【0111】
(表面粗さ測定)
卓上小型プローブ顕微鏡(Nanopics 1000/(株)セイコーインスツルメンツ製)を用いて、光学フィルムの中心線表面粗さRaを測定した。走査範囲200μm角のRaを5回測定し、その平均値を求めた。
【0112】
(スクラッチ試験)
3cm角のプリズムシート(五洋紙工(株)社製、PC、50μmピッチ、高さ21μm、頂角100度、シート厚240μm)を、上皿天秤の上にプリズム面が上側になるように向けて静置した。その上に同じ大きさの光学フィルムを、製膜時に空気界面となった面が下側になるようにして載せた。さらに当該フィルムの上に1cm角の板を載せ、その上から10g、20g、50gの荷重をかけながら当該板を、光学フィルム上で2cm往復させて動かした。続いて、プリズムシートを取り出し、目視にてシートの傷つき程度を評価した。全く傷がつかないものを○、目視では確認できないが光学顕微鏡で傷が確認できるものを△、目視で傷が確認できるものを×とした。
【0113】
実施例1
(E)工程:PMMA(1.0g)とNMP(4.0g)を混合し、20重量%のPMMA/NMP溶液5gを調製した。
(F)工程:(E)工程で得られた20重量%のPMMA/NMP溶液5gを、20mlの反応容器に装入し、得られる光学フィルム中の金属酸化物含有率が30重量%になるように、TMOS(1.0857g)、0.1NのHCl水溶液(0.5136g)を加え、室温で5時間反応させた。0.1NのHCl水溶液は、NMPで50重量%に希釈して加えた。
(G)工程:得られた溶液をガラス基板上に乾燥膜厚がおよそ28μmとなるようにベーカーアプリケーターを用いて塗布し、フィルム前駆体(「塗布膜」ともいう)を得た。当該フィルム前駆体をイナートオーブンを用いて、窒素雰囲気下で50℃から120℃まで、昇温速度3℃/分で昇温し、120℃で2時間乾燥させ、PMMA/シリカ複合フィルムをガラス基板上に作製した。
【0114】
PMMA/シリカ複合フィルムをガラス基板から剥離し、膜厚28μmのPMMA/シリカ複合フィルムを得た。得られたフィルムの光学測定を行ったところ、全光線
透過率91.0%、全光線反射率7.3%、ヘイズ32.5%であり、表面粗さRaを測定したところ、58nmであった。
PMMAの無次元SP値は9.2であり、TMOSから得られる金属酸化物のHLB値は10.6であるため、本例における相互作用パラメータは、|10.6+1−9.2|=2.400であった。
【0115】
本例で得られた光学フィルムの断面のTEM像を図1に示す。図1中、1は透明樹脂であり、2は光学フィルムを薄切片とする際に金属酸化物粒子が脱落した跡である。3は、金属酸化物粒子である。
【0116】
実施例2
得られる光学フィルム中の金属酸化物含有率が20重量%になるように、TMOS(0.6333g)、0.1NのHCl水溶液(0.2996g)を加えた以外は、実施例1と同様にして膜厚28μmのPMMA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの光学測定を行ったところ、全光線透過率92.0%、全光線反射率75%、ヘイズ22.8%であり、表面粗さRaを測定したところ、46nmであった。
【0117】
実施例3
(A)工程:TMOS(0.3800g)、DMAc(0.3749g)を10mLの反応容器に装入し、1.0NのHCl水溶液(0.1798g)を加え、室温で3時間反応させた。別途、TIPT(0.3559g)を10mLの反応容器に装入し、酢酸(0.3153g)を加え、室温で1時間反応させた。次に、両液を混合して室温で1時間反応させた。
(B)工程:PMMA(1.0g)とNMP(3.0g)を混合し、25重量%のPMMA/NMP溶液4gを調製した。
(C)工程:(A)工程で得られた溶液と(B)工程で得られた溶液を混合して室温で1時間反応させ、NUCシリコーンL−7001(0.0250g)を加え、室温で10分間攪拌した。NUCシリコーンL−7001は、DMAcで10重量%に希釈して加えた。
(D)工程:得られた溶液をガラス基板上に乾燥膜厚がおよそ20μmとなるようにベーカーアプリケーターを用いて塗布し、フィルム前駆体を得た。当該フィルム前駆体をイナートオーブンを用いて、窒素雰囲気下で50℃から120℃まで、昇温速度3℃/分で昇温し、120℃で2時間乾燥させ、金属酸化物含有率20重量%、TMOS/TIPT=52重量%/48重量%のPMMA/シリカ/チタニア複合フィルムをガラス基板上に作製した。
【0118】
その後、PMMA/シリカ/チタニア複合フィルムをガラス基板から剥離し、膜厚20μmのPMMA/シリカ/チタニア複合フィルムを得た。得られたフィルムの光学測定を行ったところ、全光線透過率90.6%、全光線反射率9.0%、ヘイズ92.4%であり、表面粗さRaを測定したところ、88nmであった。
PMMAの無次元SP値は9.2であり、TMOS/TIPTから得られる金属酸化物のHLB値は10.6であるため、本例における相互作用パラメータは、|10.6+1−9.2|=2.400であった。
本例で得られた光学フィルムの断面のTEM像を図2に示す。図中の符号は、図1で定義されたものと同じである。
【0119】
実施例4、5
得られるフィルム中の金属酸化物含有率が15、10重量%になるようにし、膜厚を16μmとした以外は、実施例3と同様にしてPMMA/シリカ/チタニア複合フィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚、光学特性、表面粗さを表2、3に示す。
【0120】
実施例6
(A)工程:MTMOS(1.17g)を10mLの反応容器に装入し、0.06NのHNO水溶液(0.46g)を加え、室温で1時間30分反応させた。
(B)工程:20重量%PVA水溶液(1.50g)、20重量%PAA水溶液(3.53g)を20mLの反応容器に装入し、純水(1.95g)、DCDA(0.173g)を加え、室温で15分攪拌した。
(C)工程:(A)工程で得られた溶液と(B)工程で得られた溶液を混合して室温で1時間反応させた。
(D)工程:得られた溶液を孔径1μmのディスクフィルターで濾過し、濾液を膜厚110μmのPETフィルム上に乾燥膜厚がおよそ24μmとなるようにベーカーアプリケーターを用いて塗布した。当該塗布膜を、室温で10分間、送風オーブンを用いて40℃で10分間、120℃で1時間乾燥させ、PVA/PAA=3/7(重量比)、金属酸化物含有率33重量%のPVA/PAA/シリカ複合フィルムをPETフィルム上に作製した。
【0121】
得られたフィルムの光学測定を行ったところ、全光線透過率88.5%、全光線反射率10.6%、ヘイズ91.7%であり、表面粗さRaを測定したところ、88nmであった。得られたフィルムの表面粗さRaとスクラッチ試験の結果を表2に示す。
本例において、PVAの無次元SP値は12.6、PAAの無次元SP値は不明であるため、PVA/PAA=3/7(重量比)の無次元SP値は12.6として計算した。
MTMOSから得られる金属酸化物のHLB値は9.225であるため、PVAのSP値を用いて計算した相互作用パラメータは、|9.225+1−12.6|=2.375となる。PAAの無次元SP値は不明であるが、既に述べたとおり、PVAの12.6より大きいことは明らかである。よって、PVA/PAA混合物を用いた場合の相互作用パラメータは、PVA単独とした場合の2.375より大きくなる。以上から、本発明においては、PVA/PAA混合物の無次元SP値は、PVAの無次元SP値である12.6として計算した。
本例で得られた光学フィルムの断面のTEM像を図3に示す。図中の符号は、図1で定義されたものと同じである。
【0122】
実施例7〜10
得られるフィルム中の金属酸化物含有率が25、20、15、10重量%になるように、厚みを表2に示したとおりに変更した以外は実施例6と同様にして、PVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚、光学特性を表2に示す。また、得られたフィルムの表面粗さRaとスクラッチ試験の結果を表3に示す。
【0123】
実施例11
(A)工程:MTMOS(1.50g)を10mLの反応容器に装入し、0.06NのHNO水溶液(0.58g)を加え、室温で1時間30分反応させた。
(B)工程:20重量%PVA水溶液(3.50g)、20重量%PAA水溶液(1.52g)を20mLの反応容器に装入し、純水(1.86g)、DCDA(0.075g)を加え、室温で15分攪拌した。
(C)工程:(A)工程で得られた溶液と(B)工程で得られた溶液を混合して室温で1時間反応させた。
(D)工程:得られた溶液を孔径1μmのディスクフィルターで濾過し、濾液を膜厚110μmのPETフィルム上に乾燥膜厚がおよそ16μmとなるようにベーカーアプリケーターを用いて塗布した。当該塗布膜を送風オーブンを用いて50℃で10分間、120℃で1時間乾燥させ、重量比PVA/PAA=7/3、金属酸化物含有率40重量%のPVA/PAA/シリカ複合フィルムをPETフィルム上に作製した。得られたフィルムの光学測定を行ったところ、全光線透過率89.2%、全光線反射率10.2%、ヘイズ90.7%であり、表面粗さRaを測定したところ、57nmであった。
【0124】
実施例12〜14
得られるフィルム中の金属酸化物含有率が30、20、10重量%になるようにした以外は実施例11と同様にしてPVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚、光学特性、表面粗さRaを表2に示す。
【0125】
実施例15〜20
得られるフィルム中の金属酸化物含有率が25重量%になるようにし、厚みを4、8、12、16、20、24μmに変更した以外は実施例11と同様にして、PVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚、光学特性、表面粗さRaを表2に示す。
実施例15で得られた光学フィルムの断面のTEM像を図4に示す。図中の符号は、図1で定義されたものと同じである。
【0126】
実施例21〜22
(A)工程の反応時間を0.5、3時間とし、得られるフィルム中の金属酸化物含有率が25重量%なるようにした以外は実施例11と同様にして、PVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚、光学特性、表面粗さRaを表2に示す。
【0127】
実施例23〜26
得られるフィルム中の金属酸化物含有率が25重量%なるようにし、(D)工程の塗布膜乾燥時間を、「50℃で10分間乾燥」、「50℃で10分+120℃で10分間乾燥」、「50℃で10分+120℃で20分間乾燥」、「50℃で10分+120℃で30分間乾燥」と変更した以外は実施例11と同様にして、PVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚、光学特性、表面粗さRaを表2に示す。
【0128】
実施例27
(A)工程:MTMOS(0.71g)、TMOS(0.028g)を10mLの反応容器に装入し、0.06NのHNO水溶液(0.29g)を加え、室温で1時間30分反応させた。
(B)工程:20重量%PVA水溶液(3.50g)、20重量%PAA水溶液(1.52g)を20mLの反応容器に装入し、純水(1.20g)、DCDA(0.075g)を加え、室温で15分攪拌した。
(C)工程:(A)工程で得られた溶液と(B)工程で得られた溶液を混合して室温で1時間反応させた。
(D)工程:得られた溶液を孔径1μmのディスクフィルターで濾過し、濾液を膜厚110μmのPETフィルム上に乾燥膜厚がおよそ14μmとなるようにベーカーアプリケーターを用いて塗布した。当該塗布膜を送風オーブンを用いて50℃で10分間、120℃で1時間乾燥させ、PVA/PAA=7/3(重量比)、金属酸化物含有率25重量%、金属化合物MTMOS/TMOS=96/4(重量比)のPVA/PAA/シリカ複合フィルムをPETフィルム上に作製した。
【0129】
得られたフィルムを剥離して、光学測定を行ったところ、全光線透過率88.2%、全光線反射率9.9%、ヘイズ74.1%であり、表面粗さRaを測定したところ、65nmであった。
【0130】
PVAの無次元SP値は、12.6である。MTMOSのHLB値は9.225であり、TMOSのHLB値は10.6である。よって、MTMOS/TMOS=96/4(重量比)=96/4(モル比)から、得られる金属酸化物のHLB値は、9.225×0.96+10.6×0.04から9.28と求められる。以上から、本例における相互作用パラメータは、|9.28+1−12.6|=2.32であった。
本例で得られた光学フィルムの断面のTEM像を図5に示す。図中の符号は、図1で定義されたものと同じである。
【0131】
実施例28〜29
金属化合物を、重量比でMTMOS/TMOS=94/6、88/12用いた以外は実施例27と同様にしてPVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚、光学特性、表面粗さRaを表2に示す。本例における相互作用パラメータは、それぞれ2.299と2.233であった。
【0132】
実施例30
(A)工程の反応時間を3時間した以外は、実施例29と同様にしてPVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚、光学特性、表面粗さRaを表2に示す。
【0133】
比較例1
PMMA(1.0g)とDMAc(4.0g)を混合し、20重量%のPMMA/NMP溶液5gを調整した。得られた20重量%のPMMA/DMAc溶液5gを、20mlの反応容器に装入し、得られるフィルム中の金属酸化物含有率が30重量%になるように、SiO粒子(0.4285g、宇部日東化成社製、商品名ハイプレシカTS、平均粒径5.0μm)を加え、室温で1時間攪拌し、その後超音波で1時間処理した。得られた溶液をガラス基板上に乾燥膜厚がおよそ14μmとなるようにベーカーアプリケーターを用いて塗布した。当該塗布膜をイナートオーブンを用いて、窒素雰囲気下で50℃から120℃まで、昇温速度3℃/分で昇温し、120℃で2時間乾燥させ、PMMA/SiO粒子複合フィルムをガラス基板上に作製した。
【0134】
PMMA/SiO粒子複合フィルムをガラス基板から剥離し、膜厚14μmのPMMA/SiO粒子複合フィルムを得た。得られたフィルムの光学測定を行ったところ、全光線透過率89.9%、全光線反射率7.1%、ヘイズ52.6%であった。また、表面粗さRaを測定したところ、498nmであった。スクラッチ試験を行ったところ、荷重10gで、プリズムシートに目視で確認できる傷が発生した。
【0135】
比較例2
PVA(0.3g)、PAA(0.71g)を10mLの反応容器に装入し、純水(1.9g)、DCDA(0.172g)を加え、室温で15分攪拌した。さらに得られるフィルム中の金属酸化物含有率が33重量%になるように、SiO粒子(0.4975g、宇部日東化成社製、商品名ハイプレシカTS、平均粒径5.0μm)を加え、室温で1時間攪拌し、その後超音波で1時間処理した。得られた溶液を膜厚110μmのPETフィルム上に乾燥膜厚がおよそ16μmとなるようにベーカーアプリケーターを用いて塗布した。当該塗布膜を室温で10分間、送風オーブンを用いて50℃で10分間、120℃で1時間乾燥させ、金属酸化物含有率33重量%のPVA/PAA/SiO粒子複合フィルムをPETフィルム上に作製した。
【0136】
得られたフィルムの光学測定を行ったところ、全光線透過率86.2%、全光線反射率11.8%、ヘイズ88.0%であり、表面粗さRaを測定したところ、720nmであった。スクラッチ試験を行ったところ、荷重10gで、プリズムシートに目視で確認できる傷が発生した。
【0137】
比較例3
(E)工程:PMMA(1.0g)とNMP(4.0g)を混合し、20重量%のPMMA/NMP溶液5gを調製した。
(F)工程:(E)工程で得られた20重量%のPMMA/NMP溶液5gを、20mlの反応容器に装入し、得られるフィルム中の金属酸化物含有率が30重量%になるように、TMOS(1.08g)、0.1NのHNO水溶液(0.51g)を加え、室温で2時間反応させた。0.1NのHNO水溶液は、NMPで50重量%に希釈して加えた。次に、APTMOS(0.013g)を加え、室温で2時間反応させた。APTMOSは、NMPで10重量%に希釈して加えた。
得られた溶液を孔径1.0μmのフィルターで濾過しようとしたが、粒子が凝集し濾過できなかった。
(G)工程:得られた溶液を濾過せずに、ガラス基板上に乾燥膜厚がおよそ15μmとなるようにベーカーアプリケーターを用いて塗布し、イナートオーブンを用いて、窒素雰囲気下で50℃から120℃まで、昇温速度3℃/分で昇温し、120℃で2時間乾燥させ、PMMA/シリカ複合フィルムをガラス基板上に作製した。
【0138】
その後、PMMA/シリカ複合フィルムをガラス基板から剥離し、膜厚15μmのPMMA/シリカ複合フィルムを得た。得られたフィルムの光学測定を行ったところ、全光線透過率85.0%、全光線反射率15.0%、ヘイズ95.1%であり、表面粗さRaを測定したところ、1700nmであった。スクラッチ試験を行ったところ、荷重10gで、プリズムシートに目視で確認できる傷が発生した。本例においては、アミノ基が、ゾルゲル反応の塩基触媒となり、金属酸化物粒子が凝集したため、得られた光学フィルムの表面平滑性が優れなかったと思われる。
【0139】
比較例4
得られるフィルム中の金属酸化物含有率が50重量%になるようにした以外は、実施例11と同様にしてPVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの光学測定を行ったところ、全光線透過率89.5%、全光線反射率9.9%、ヘイズ88.7%であり、表面粗さRaを測定したところ、370nmであった。
【0140】
比較例5
(A)工程の反応時間を5時間とし、得られるフィルム中の金属酸化物含有率が25重量%なるようにした以外は実施例11と同様にしてPVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの光学測定を行ったところ、全光線透過率88.4%、全光線反射率10.3%、ヘイズ88.7%であり、表面粗さRaを測定したところ、237nmであった。
【0141】
比較例6
金属化合物を重量比でMTMOS/TMOS=55/45用いた以外は実施例29と同様にして、PVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの光学測定を行ったところ、全光線透過率89.9%、全光線反射率9.8%、ヘイズ2.6%であり、表面粗さRaを測定したところ、14.5nmであった。本例における相互作用パラメータは、1.788であった。
【0142】
比較例7
金属化合物を重量比でMTMOS/TMOS=78/22用いた以外は実施例29と同様にしてPVA/PAA/シリカ複合フィルムを作製した。得られたフィルムの膜厚、光学特性、表面粗さRaを表2に示す。本例における相互作用パラメータは、2.075であった。
【0143】
【表2】

【0144】
【表3】

【0145】
実施例と比較例から、本発明の光学フィルムは、光拡散性、全光線透過性、表面平滑性に優れることが明らかである。特に実施例と比較例6、7から、相互作用パラメータの値が2.1を超えると、光拡散性、全光線透過性に優れることが明らかである。また、実施例11と比較例4から、金属酸化物の含有量が多すぎると、フィルムの表面平滑性が優れないことが明らかである。さらに、実施例11と比較例5から、(A)工程での反応時間が長すぎると、フィルムの表面平滑性が優れないことが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明方法によって得られる光学用フィルムは薄膜でありながら光散乱性が良好であり、かつ表面の平滑性に優れる。本発明の光学フィルムは、特に光拡散フィルムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】実施例1で得た光学フィルムの断面のTEM像
【図2】実施例3で得た光学フィルムの断面のTEM像
【図3】実施例6で得た光学フィルムの断面のTEM像
【図4】実施例15で得た光学フィルムの断面のTEM像
【図5】実施例27で得た光学フィルムの断面のTEM像
【符号の説明】
【0148】
1 透明樹脂
2 金属酸化物の脱落した跡
3 金属酸化物粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂と金属酸化物を含む、全光線透過率が70%以上、ヘイズ値が20%以上100%未満であり、かつ中心線表面粗さ(Ra)が100nm以下の光学フィルムの製造方法であって、
(A)ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物を、溶媒中でゾル−ゲル反応させる工程、
(B)透明樹脂を溶質とする溶液を準備する工程、
(C)前記(A)工程で得た混合物と(B)工程で得た溶液を混合する工程、および
(D)前記(C)工程で得た混合物を基板または容器に塗布あるいは展開した後、加熱し溶媒を蒸発させて膜を形成する工程、を含み、
前記透明樹脂のヒルデブランド法による溶解度パラメータであるSP値((cal/cm0.5)を、1(cal/cm0.5で除した無次元SP値と、
前記金属酸化物の下記方法により求めた親水親油バランスHLB値が、以下の式(1)の関係を満たす、光学フィルムの製造方法。
2.1<|(HLB値+1)−無次元SP値| ・・・(1)
[金属酸化物のHLB値は、以下の工程により求められる;
前記金属化合物の金属原子の価数、および前記金属化合物が加水分解された化合物の金属原子上の有機基Rの数に応じて、金属酸化物の構造単位を、一般式(i)〜(v)のいずれかとみなす工程、
一般式(i)〜(v)で表される金属酸化物の構造単位のR、OH、Oの官能基について、デービス法で定義される基数を求め、下記式(2)に基づいて、金属酸化物のHLB値を算出する工程;
HLB値=7+基数の合計 ・・・(2)
【化1】

【化2】

【化3】

式(i)〜(iii)において、Mは4価の金属元素、Rはアルコキシル基以外の一価の有機基である;
【化4】

【化5】

式(iv)〜(v)において、Xは3価の金属元素、Rはアルコキシル基以外一価の有機基である]
【請求項2】
前記(D)工程の前に、前記(C)工程で得た混合物中に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物、溶媒、水、または触媒を混合してゾル−ゲル反応を進行させる工程をさらに含む、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記(B)工程の前に、前記(A)工程で得た混合物中に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物、溶媒、水、または触媒を混合してゾル−ゲル反応を進行させる工程をさらに含む、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
透明樹脂と金属酸化物を含む、全光線透過率が70%以上、ヘイズ値が20%以上100%未満であり、かつ中心線表面粗さ(Ra)が100nm以下の光学フィルムの製造方法であって、
(E)透明樹脂を溶質とする溶液を準備する工程、
(F)前記(E)工程で得た溶液中に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物を混合してゾル−ゲル反応を行う工程、および
(G)前記(F)工程で得た混合物を基板または容器に塗布あるいは展開した後、加熱し溶媒を蒸発させて膜を形成する工程、を含み、
前記透明樹脂のヒルデブランド法による溶解度パラメータであるSP値((cal/cm0.5)を、1(cal/cm0.5で除した無次元SP値と、
前記金属酸化物の下記方法により求めた親水親油バランスHLB値が、以下の式(1)の関係を満たす、光学フィルムの製造方法。
2.1<|(HLB値+1)−無次元SP値| ・・・(1)
[金属酸化物のHLB値は、以下の工程により求められる;
前記金属化合物の金属原子の価数、および前記金属化合物が加水分解された化合物の金属原子上の有機基Rの数に応じて、金属酸化物の構造単位を、一般式(i)〜(v)のいずれかとみなす工程、
一般式(i)〜(v)で表される金属酸化物の構造単位のR、OH、Oの官能基について、デービス法で定義される基数を求め、下記式(2)に基づいて、金属酸化物のHLB値を算出する工程;
HLB値=7+基数の合計 ・・・(2)
【化6】

【化7】

【化8】

式(i)〜(iii)において、Mは4価の金属元素、Rはアルコキシル基以外の一価の有機基である;
【化9】

【化10】

式(iv)〜(v)において、Xは3価の金属元素、Rはアルコキシル基以外一価の有機基である]
【請求項5】
前記(G)工程の前に、前記(F)工程で得た混合物に、ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物、溶媒、水または触媒を混合して、ゾル−ゲル反応を進行させる工程をさらに含む、請求項4に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記溶媒の、酢酸ブチルの蒸発速度を1とした相対値で表される相対蒸発速度が、0.03〜0.6である、請求項1または4に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記透明樹脂は、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、またはポリアクリル酸である、請求項1または4に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記金属酸化物は、珪素、チタン、ジルコニウムまたはアルミニウム元素を含む、請求項1または4に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記ゾル−ゲル反応により金属酸化物を生成する金属化合物が、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネートまたは金属カルボキシレート、もしくはこれらの重縮合物である、請求項1または4に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記透明樹脂は、ポリメチルメタクリレートであり、前記金属酸化物を生成する金属化合物は、テトラメトキシシランまたはテトライソプロポキシチタンである、請求項1または4に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記透明樹脂は、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸の混合樹脂であり、前記金属酸化物を生成する金属化合物は、メチルトリメトキシシランまたはテトラメトキシシランである、請求項1または4に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記光学フィルムは、前記透明樹脂の中に分散された前記金属酸化物粒子を含み、
前記光学フィルムの破断面を電子顕微鏡で観察して得た像から得た、総ての金属酸化物粒子の面積の合計Tと、粒径が1μm以上である粒子の面積の合計Sが、下記式(3)の関係を満たす、請求項1または4に記載の光学フィルムの製造方法。
S/T≧0.6 ・・・(3)
【請求項13】
前記フィルムの厚さは30μm以下である、請求項12に記載の光学フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−169372(P2008−169372A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243096(P2007−243096)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】