説明

光学フィルムの製造方法

【課題】凸部先端に、平滑度に優れた平坦面を有する凹凸が付与された光学フィルムを製造する方法を提供する。
【解決手段】表面に凹凸が形成されたポリマーフィルム1の凹凸形成面に平滑ロール4を押し当てて、凸部の先端に平坦面を形成する凸部矯正工程を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法。凸部の先端に形成された平坦面の総面積が凹凸形成面全体に対して20〜80%であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。平坦面形成後における凸部高さが、平坦面形成前の凸部高さに対して20〜80%であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸部先端に平坦面を有する凹凸が付与された光学フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学フィルムとして、表面に付与された凹凸における凸部先端に平坦面を有するものが知られている。そのような凸部平坦フィルムは、凸部頂部での光散乱が少なく、視認性に優れるため、プリズムシート、レンズシート、回折格子、無反射構造体として有用である。
【0003】
凸部平坦フィルムは、鋳型が有する凹凸を100%の転写率で転写させることによって製造されることが一般的である。例えば、特許文献1では、フィルムに鋳型で凹凸パターンを熱転写させるに際し、鋳型におけるフィルムの凸部先端に対応する部分に予め平坦面を形成しておく。
【0004】
しかしながら、上記した技術では、フィルムから鋳型を離型するときに、樹脂がフィルムから引き剥がされて、鋳型に移行し、鋳型に樹脂の剥離残りが生じた。特に鋳型の平坦面において樹脂の剥離残りは顕著に生じた。その結果、フィルムにおける凸部先端の平坦面においてフィルム欠陥が発生したり、異物が付着したりして、平滑度が低下した。そのため、フィルムの樹脂組成を鋳型と離型しやすい樹脂処方にするなど、改良がなされてきているが、十分な改良には至っていない。
【0005】
さらに、上記技術では、一つの鋳型から一種類の凹凸形状しか形成できないため、フィルムに付与される凹凸形状の自由度が低かった。
【特許文献1】特開平9−26503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、凸部先端に、平滑度に優れた平坦面を有する凹凸が付与された光学フィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、表面に凹凸が形成されたポリマーフィルムの凹凸形成面に平滑ロールを押し当てて、凸部の先端に平坦面を形成する凸部矯正工程を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、凸部先端に、平滑度に優れた平坦面を有する凹凸が付与された光学フィルムを製造できる。
しかも、本発明では、フィルムに凹凸を形成した後、平滑ロールを押し当てて、凸部の先端に平坦面を形成するので、平滑ロールの押し当て条件を適宜調整するだけで、平坦面の面積割合や平滑度および凸部高さ等の凹凸形状を制御できる。そのため、形成される凹凸形状の自由度が比較的高い。
平滑ロールの表面粗さ、および平坦面形成後における凸部高さの、平坦面形成前の凸部高さに対する割合をそれぞれ所定の範囲内に調整することによって、平坦面の平滑度をより一層向上させることができる。さらに、本発明の特有の課題である凹部潰れを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る光学フィルムの製造方法は、表面に凹凸が形成されたポリマーフィルムの凹凸形成面に平滑ロールを押し当てて、凸部を矯正する凸部矯正工程を行うものである。以下、図1および図2を用いて、凹凸形成工程および凸部矯正工程について詳しく説明する。図1は、本発明の光学フィルムの製造方法を実施する装置の一実施形態を示す概略構成図である。図2(A)は、平坦面形成直前の凹凸形状の一例を示すポリマーフィルムの概略断面図であり、図2(B)は平坦面形成後の凹凸形状の一例を示すポリマーフィルムの概略断面図である。本明細書中、凹凸は形成されているが、凸部に平坦面は未形成のポリマーフィルムを単に「凹凸フィルム」と呼び、凸部に平坦面が形成されたポリマーフィルムを単に「凸部平坦フィルム」と呼ぶものとする。また、凹凸が形成されるポリマーフィルムの表面を第1表面(図中、1a)と呼び、その裏側の表面を第2表面(図中、1b)と呼ぶものとする。
【0010】
(凹凸形成工程)
ポリマーフィルム1の第1表面1aに凹凸を形成する方法は特に制限されず、例えば、図1に示すように、熱によってポリマーフィルム1の少なくとも第1表面1aを軟化させながら、鋳型ロール2の押圧によって凹凸を転写させるホットプレス法、基材に塗布された活性線硬化樹脂に鋳型を転写させながら、基材側から活性線を照射して活性線硬化樹脂を硬化した後、鋳型から離型する活性線硬化転写法、溶液製膜や溶融製膜中のフィルムが軟化している状態で鋳型転写する製膜転写法等が採用可能である。
【0011】
図1において示されるホットプレス法で使用される鋳型ロール2は表面に凹凸を、全体としてパターンが形成されるように規則的に有してもよいし、または不規則的に有してもよい。鋳型ロール2の材質はプレス圧に耐えられる剛性を有するものであればよく、金属、ガラス、セラミックス、合成樹脂、合成樹脂と金属および/またはガラスとのコンポジットなど、限定されず使用できる。鋳型はガラスや金属の表面に凹凸を形成する種々の方法で製造できる。鋳型ロール表面に凹凸を形成する方法としては、放電加工、ショット加工、エッチング加工、レーザー加工等が利用できる。鋳型に用いられる金属は所望の凹凸を付与できる限り特に制限されず、例えば、高炭素鋼、クロム−モリブデン鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などが挙げられる。鋳型表面を硬化する目的で、焼き入れ処理を施したり、ハードクロムなどのメッキ処理の他、カナック処理などの窒化表面処理等を行ってもよい。
【0012】
鋳型ロール2が有する凹凸形状は、所望の凹凸形状を有する凹凸フィルムを形成できる形状であればよい。
【0013】
凹凸フィルムが有する凹凸形状は、本発明において最終的に得られる凸部平坦フィルムの用途などにより任意に選択してよい。凹凸フィルムが有する凹凸は、鋳型ロールに対する樹脂の離型性の観点から、凸部先端に頂部を有する断面形状を有することが好ましい。そのような凸部の断面形状として、例えば、略三角形状が挙げられる。凹凸フィルムが有する凸部の断面形状としての略三角形状は、フィルムの幅手方向に対する垂直断面または搬送方向に対する垂直断面において有していればよい。凹凸フィルムが有する凸部は通常、フィルムの幅手方向に対する垂直断面においてフィルムの幅手方向で連続して略三角形状を有する。
【0014】
凹凸フィルムが有する凹凸の寸法は特に制限されず、例えば、凸部高さ(図2(A)中、h)は100nm〜100μm、および凹凸ピッチ(図2(A)中、p)は100nm〜100μmであってよい。特に凹凸フィルムの凸部が略三角形状の断面を有する場合、頂角(図2(A)中、α)は70〜130°、特に80〜120°が好ましい。
【0015】
鋳型ロール2の外径は特に限定はなく、ロールとして製作できる50mm以上3000mm以下の外径を適用することができるが、フィルムに凹凸を精度良く付与する点、ならびに重量の肥大化を避ける点により、実質的には50mm以上2000mm以下の外径である。
【0016】
鋳型ロール2に対向して設置されるバックロール3の材質もプレス圧に耐えられる剛性を有するものであればよく、金属、セラミックス、合成樹脂、合成樹脂と金属および/またはガラスのコンポジットなど、限定されず使用できる。
【0017】
バックロール3の外径に特に限定はない。ロールとして製作できる50mm以上3000mm以下の外径が適用できるが、フィルムに凹凸を精度良く付与する点、ならびに重量の肥大化を避ける点において、実質的には50mm以上2000mm以下の外径である。バックロール3の代わりに、ここでも鋳型ロール2を用いることによって、フィルムの両面に凹凸を精度よく形成できる。
【0018】
プレス加重およびプレス時間は、鋳型の凹凸をフィルムに十分に転写できれば特に制限されない。プレス加重は通常、0.01〜10N/mmであり、特に0.05〜5N/mmが好ましい。プレス時間は通常、0.001〜0.1秒間であることが好ましい。
【0019】
凹凸フィルムの厚み(図2(A)中、T)は本発明の目的が達成される限り特に制限されず、通常は10〜200μm、好ましくは30〜150μmである。
【0020】
特にホットプレス法を採用する場合におけるフィルムの搬送速度は、10〜150m/分が好ましく、20〜120m/分がさらに好ましい。
【0021】
ポリマーフィルム1を形成するポリマーは特に制限されず、例えば、光学フィルムの分野で従来より使用されている樹脂が使用可能である。具体的には、セルロースエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。より好ましくはセルロースエステル系樹脂からなるフィルムが使用される。
【0022】
セルロースエステル系樹脂を用いる場合、セルロースエステル系樹脂の原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることが出来る。又それらから得られたセルロースエステル系樹脂はそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。これらのセルロースエステル系樹脂は、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることが出来る。
【0023】
アシル化剤が酸クロライド(CHCOCl、CCOCl、CCOCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には、特開平10−45804号に記載の方法等を参考にして合成することが出来る。又、本発明に用いられるセルロースエステル系樹脂は各置換度に合わせて上記アシル化剤を混合して反応させたものであり、アシル化剤がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度(モル%)と言う。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している(実際には2.6〜3.0)。
【0024】
セルロースエステル系樹脂は、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、又はセルロースアセテートプロピオネートブチレート樹脂のようなアセチル基の他にプロピオネート基又はブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルであってもよい。尚、プロピオネート基を置換基として含むセルロースアセテートプロピオネート樹脂は耐水性に優れ、液晶画像表示装置用のフィルムとして有用である。
【0025】
セルロースエステル系樹脂の数平均分子量は、40000〜200000が、成形した場合の機械的強度が強く、且つ、溶液流延法の場合は適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、50000〜150000である。又、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.4〜4.5の範囲であることが好ましい。
【0026】
本明細書中、平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することが出来る。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することが出来る。
【0027】
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0028】
ポリマーフィルム1を形成するポリマーのTgは本発明の目的が達成される限り特に制限されず、例えば50〜200℃、特に70〜180℃であってよい。
本明細書中、TgはTMA8310(RIGAKU社製)によって測定された値を用いている。
【0029】
ポリマーフィルム1には紫外線吸収剤、可塑剤、マット剤、酸化防止剤、導電性物質、帯電防止剤、難燃剤、滑剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0030】
ポリマーフィルム1は公知のいかなる方法によって製造されてよく、例えば、いわゆる溶液流延法や溶融流延法等によって製造可能である。
【0031】
ポリマーフィルム1は延伸処理されていてよく、例えば、直交する2軸において、それぞれの軸方向で1.1〜3倍に延伸させたものを使用してもよい。
【0032】
ポリマーフィルム1は上記樹脂からなる単層構造を有していてもよいし、または上記樹脂からなる表面層を基材層上に有してなる多層構造を有していてもよい。
【0033】
(凸部矯正工程)
本工程では、第1表面1aに凹凸が形成されたポリマーフィルム1の凹凸形成面に平滑ロール4を押し当てて、凸部6の先端に平坦面7を形成し、凸部平坦フィルムを得る。凹凸形成面とは上記凹凸形成工程において鋳型ロール2が接触する面である。
【0034】
平滑ロール4をポリマーフィルム1の凹凸形成面に押し当てるに際しては、図1に示すように、平滑ロール4とバックロール5との間を、ポリマーフィルム1に通過させればよい。
【0035】
矯正温度および矯正加重を調整することによって、凸部平坦フィルムにおける平坦面の総面積および平滑度、凸部高さ、ならびに最大凸部高さを制御できる。矯正温度を高くしたり、矯正加重を大きくすると、凸部高さおよび最大凸部高さは低くなり、平坦面の総面積は大きくなり、平坦面の平滑度は向上する。矯正温度を低くしたり、矯正加重を小さくすると、凸部高さおよび最大凸部高さは高くなり、平坦面の総面積は小さくなり、平坦面の平滑度は低下する。
【0036】
矯正温度は、凹凸フィルムと平滑ロールとの接触時において凹凸フィルムの少なくとも凸部先端が有すべき温度であり、本明細書中では平滑ロール4の表面温度を用いているが、例えば、本工程を実施する雰囲気温度であってもよい。矯正温度は、ポリマーフィルムのガラス転移温度をTgとしたとき、通常はTg−80〜Tg+70℃であり、平坦面平滑度の向上、平坦面の総面積および凸部高さの制御、ならびに凹部潰れの防止の観点から好ましくはTg−60〜Tg+40℃、特にTg−50〜Tg+30℃である。
平滑ロールの表面温度は、ロール内部に設けたヒータによって制御可能で、非接触温度計によって測定できる。
【0037】
矯正加重は、平滑ロール4のフィルムに対するプレス圧であり、通常は1〜400N/mmであり、平坦面の平滑度の向上、平坦面の総面積および凸部高さの制御、ならびに凹部潰れの防止の観点から好ましくは2〜300N/mm、特に5〜250N/mmである。
【0038】
矯正時間、すなわちフィルムと平滑ロールとの接触時間は、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、通常は10−5〜1秒間であり、特に10−4〜10−1秒間が好ましい。
【0039】
平滑ロール4は、表面に平滑面を有し、プレス圧に耐えられる剛性を有するものであればよい。平滑ロール4の材質として、鋳型ロール2の材質として例示した同様の材質が挙げられる。平滑ロール表面を硬化する目的で、焼き入れ処理を施したり、ハードクロムなどのメッキ処理の他、カナック処理などの窒化表面処理等を行ってもよい。
【0040】
平滑ロール4の表面粗さRaは小さいほど好ましく、通常、0.5〜70nmであり、平坦面の平滑度向上の観点から好ましくは1〜50nm、特に1〜20nmである。Raが1nm以下の平滑ロールは作製に大幅なコストがかかり、現実的ではない。
表面粗さRaはJIS B 0601に基づく値であり、一次元表面粗さ計SV−3000(Mitutoyo社製)によって測定できる。
【0041】
平滑ロール4の外径は特に限定はなく、ロールとして製作できる50mm以上3000mm以下の外径を適用することができるが、凸部平坦面に平滑性を精度良く付与する点、ならびに重量の肥大化を避ける点により、実質的には50mm以上2000mm以下の外径である。
【0042】
平滑ロール4に対向して設置されるバックロール5の材質もプレス圧に耐えられる剛性を有するものであればよく、金属、セラミックス、合成樹脂、合成樹脂と金属および/またはガラスのコンポジットなど、限定されず使用できる。
【0043】
バックロール5の外径に特に限定はない。ロールとして製作できる50mm以上3000mm以下の外径が適用できるが、凸部平坦面に平滑性を精度良く付与する点、ならびに重量の肥大化を避ける点において、実質的には50mm以上2000mm以下の外径である。バックロール3の代わりに鋳型ロール2を用いた場合において、バックロール5の代わりに、ここでも平滑ロール4を用いることによって、フィルム両面の凸部に平坦面を精度よく形成できる。
【0044】
得られた凸部平坦フィルムは、平坦面7の総面積が凹凸形成面全体に対して通常、10〜90%であり、平坦面の平滑度向上と凸部潰れの抑制の観点から、20〜80%であることが好ましい。凹凸形成面全体とは、凹凸形成面の総面積を意味し、フィルムの幅手方向両端に、巻き取り時のズレ防止等を目的としてエンボス加工やナーリング加工がなされている場合は、当該加工領域を除いた凹凸形成面の総面積を意味するものとする。
【0045】
凸部平坦フィルムは、凸部高さ(図2(B)中、H)が、平坦面形成前の凸部高さ(図2(A)中、h)に対して通常、10〜90%であり、平坦面の平滑度向上と凸部潰れの抑制の観点から、20〜80%であることが好ましい。凸部高さHは0.05〜50μmであることが好ましい。凸部高さを上記範囲内とすることによって、プリズムシート、レンズシート、回折格子、無反射構造体として用いることができる。
【0046】
凸部平坦フィルムの厚み(図2(B)中、T)は本発明の目的が達成される限り特に制限されず、通常は8〜190μm、好ましくは20〜140μmである。
【0047】
凸部平坦フィルムを得た後は、通常、巻き取りロールによって巻き取ればよい。
【0048】
(用途)
以上の方法で製造された凸部平坦フィルムは光学フィルム、例えば、プリズムシート、レンズシート、回折格子、無反射構造体等としての使用に特に適している。
【0049】
例えば、凸部平坦フィルムをプリズムシートとして使用する場合、液晶ディスプレイ用バックライト用輝度向上フィルムとして好ましく用いられる。
【0050】
また例えば、凸部平坦フィルムを無反射構造体として使用する場合、ディスプレイ最表面の反射防止フィルムとして好ましく用いられる。
【実施例】
【0051】
[セルロースエステルフィルムの製造]
密閉容器にメチレンクロライド440重量部およびエタノール35重量部を投入し、攪拌しながら、セルロースエステル(アセチル基置換度2.9、Mn=16万、Mw/Mn=2.0)100重量部、トリメチロールプロパントリベンゾエート5重量部、エチルフタリルエチルグリコレート5重量部、チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)社製)1重量部、チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)社製)1重量部、およびアエロジルR972V(日本アエロジル(株)社製)0.3重量部を順に投入し、加熱、攪拌しながら完全に溶解し、混合した。微粒子は溶剤の一部で分散して添加した。溶液を流延する温度まで下げて一晩静置し、脱泡操作を施した後、溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、セルロースエステル溶液を得た。
【0052】
次に、33℃に温度調整したセルロースエステル溶液を、ダイに送液して、ダイスリットからステンレスベルト上に均一に流延した。ステンレスベルトの流延部は裏面から37℃の温水で加熱した。流延後、金属支持体上のドープ膜(ステンレスベルトに流延以降はウェブということにする)に44℃の温風を当てて乾燥させ、剥離の際の残留溶媒量が120質量%で剥離し、剥離の際の張力をかけて所定の縦延伸倍率となるように延伸し、次いで、テンターでウェブ端部を把持し、幅手方向に表に示した延伸倍率となるように延伸した。延伸後、その幅を維持したまま数秒間保持した後、幅手方向の張力を緩和させた後、幅保持を解放し、更に125℃に設定された第3乾燥ゾーンで20分間搬送させて、乾燥を行い、幅1.4〜2mの、かつ端部に幅1.5cm、高さ8μmのナーリングを有する所定の膜厚のセルロースエステルフィルムを製造した。
製造したセルロースエステルフィルムについて、縦延伸倍率は1.1倍、横延伸倍率は1.1倍、膜厚は100μm、製膜幅は2000mm、Tgは160℃であった。
【0053】
[実施例1〜14]
図1に示す装置を用いて、上記セルロースエステルフィルム1を搬送速度50m/minで搬送しながら、凹凸形成工程および凸部矯正工程を実施した。詳しくは、加熱室10中、鋳型ロール2(アルミニウム製、直径φ=100mm、ロール長l=2000mm)と表面が鏡面加工されたバックロール3(アルミニウム製、直径φ=100mm、ロール長l=2000mm、表面粗さRa=15nm)との間を通過させて、第1表面1aに対して、図2(A)に示すような頂角90°、高さ10μm、ピッチ20μmの一次元プリズム形状の凹凸パターンを形成した(凹凸形成工程)。凹凸フィルムが有する凸部はフィルムの幅手方向に対する垂直断面において略三角形状を有し、フィルムの幅手方向で連続して形成されていた。続いて、凹凸パターンが形成されたフィルム1を、表面が鏡面加工された平滑ロール4(アルミニウム製、直径φ=80mm、ロール長l=2000mm、表面粗さRa=15nm)と表面が鏡面加工されたバックロール5(アルミニウム製、直径φ=80mm、ロール長l=2000mm、表面粗さRa=15nm)との間を通過させて、図2(B)に示すように凸部先端の頂部に平坦面を形成し(凸部矯正工程)、巻き取った。凸部矯正工程では、平滑ロール4の表面温度(矯正温度)、フィルムに対する加重(矯正加重)、および表面粗さを表1に示すように調整した。矯正時間は10−2秒間であった。
【0054】
[比較例1]
鋳型ロールを以下に示す凹凸形状を有するものに変更したこと、加熱室におけるフィルム表面温度および鋳型ロールによる加重を表1に示すように変更したこと、凸部矯正工程を実施しなかったこと以外、実施例1と同様の方法によりフィルムを製造した。
鋳型ロールが有する凹凸形状は、フィルムの凸部がフィルムの幅方向に対する垂直断面において台形形状を有し、かつフィルムの幅方向で連続した形状であった。フィルムが有する台形形状の凸部は、詳しくはフィルムの幅方向に対する垂直断面において高さ5μm、上底10μm、下底20μmの寸法を有しており、ピッチは20μmであった。
【0055】
[評価手法]
最終的に製造されたフィルムにおける凹凸形成面のAFM画像を観測し、以下の項目について評価した。
【0056】
(平滑度)
任意の10点における平坦面の表面粗さRaをAFMにより計測し、それらの平均値に基づいて評価した。
○:Raの平均値が20nm以下であった;
△:Raの平均値が50nm以下であった;
×:Raの平均値が50nmより大きかった。
【0057】
(凹部潰れ)
図3に示すような、平坦面と当該平坦面に隣接する搬送方向上流側凹部との境界での凹部潰れ20の大きさLを、任意の10点において計測し、それらの平均値に基づいて評価した。
○:Lの平均値が50nm以下であった;
△:Lの平均値が100nm以下であった;
×:Lの平均値が100nmより大きかった。
【0058】
(平坦面割合)
凸部の先端に形成された平坦面の総面積の、凹凸形成面全体に対する割合をAFM画像より求めた。当該値は任意の10ヶ所におけるAFM画像についての平均値である。
【0059】
(凸部高さ割合)
図2に示すような平坦面形成後における凸部高さHの、平坦面形成前の凸部高さhに対する割合をAFM画像より求めた。当該値は任意の10ヶ所におけるAFM画像についての平均値である。
【0060】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の光学フィルムの製造方法を実施する装置の一実施形態を示す概略構成図である
【図2】(A)は平坦面形成前の凹凸形状の一例を示すポリマーフィルムの概略断面図であり、(B)は平坦面形成後の凹凸形状の一例を示すポリマーフィルムの概略断面図である。
【図3】平坦面形成後の凹凸形状の一例を示すポリマーフィルムの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1:ポリマーフィルム、1a:第1表面、1b:第2表面、2:鋳型ロール、3:バックロール、4:平滑ロール、5:バックロール、20:凹部潰れ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸が形成されたポリマーフィルムの凹凸形成面に平滑ロールを押し当てて、凸部の先端に平坦面を形成する凸部矯正工程を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
凸部の先端に形成された平坦面の総面積が凹凸形成面全体に対して20〜80%であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
平坦面形成後における凸部高さが、平坦面形成前の凸部高さに対して20〜80%であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
凸部矯正工程における矯正温度が、ポリマーフィルムのガラス転移温度をTgとしたとき、Tg−60〜Tg+40℃であり、
平滑ロールを凹凸形成面に押し当てる際の矯正加重が2〜300N/mmであり、
平滑ロールの表面粗さRaが1〜50nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
平坦面形成後における最大凸部高さが0.05〜50μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−89298(P2010−89298A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259368(P2008−259368)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】