光学フィルム剥離装置
【課題】基板表面から光学フィルムの一部を剥離除去する際に刃物が基板に食い込むことによる傷の発生を低減する。
【解決手段】光学フィルム剥離装置は、基板100上に貼られた光学フィルム106を部分的に剥離するための装置であって、直線状に前後移動可能な可動部40を備える。可動部40は、可動部本体48と、光学フィルム106をすくい取るように切除するための刃物82を前向きに保持するツールホルダ46とを備える。ツールホルダ46は、可動部本体48に対して、進行方向と垂直かつ水平な回転軸49を中心に回動自在に取り付けられており、回転軸49は刃物82の前端よりも前方に位置する。
【解決手段】光学フィルム剥離装置は、基板100上に貼られた光学フィルム106を部分的に剥離するための装置であって、直線状に前後移動可能な可動部40を備える。可動部40は、可動部本体48と、光学フィルム106をすくい取るように切除するための刃物82を前向きに保持するツールホルダ46とを備える。ツールホルダ46は、可動部本体48に対して、進行方向と垂直かつ水平な回転軸49を中心に回動自在に取り付けられており、回転軸49は刃物82の前端よりも前方に位置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム剥離装置に関するものである。特に、平坦な面に貼られた光学フィルムを剥離除去するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示パネルには、表面に位相差板や偏光板などの光学フィルムが貼り付けられる場合がある。たとえば、液晶表示パネルにおいては、ガラス基板の表面に偏光板などが貼り付けられており、液晶の光学的性質と偏光板の作用との組合せによって表示が制御される。
【0003】
図7に、液晶表示パネル70の概略断面図を示す。液晶表示パネル70は、2枚のガラス基板71,72の間に液晶74が封入された構成を有する。
【0004】
ガラス基板71の液晶74側の表面にはCF(Color Filter)が設けられている。ガラス基板72の液晶74側の表面には液晶74を駆動するためのTFT(Thin Film Transistor)が設けられている。2枚のガラス基板71,72は、シール材73によって互いに貼り合わせられている。液晶74は、2枚のガラス基板71,72とシール材73とによって封入されている。
【0005】
ガラス基板71,72において、液晶74が封入されている側と反対側の主表面には、光学フィルムとしての偏光板76が貼付けられている。このような構成を有する液晶表示パネル70の製造においては、大型の基板に対して複数の液晶セルを含む貼合せ基板を形成して、後にこの貼合せ基板を液晶セルごとに分断することによって複数の液晶表示パネルを得るという、いわゆる「多面取り」による方法がある。
【0006】
従来技術に基づく液晶表示パネルの製造方法の一例は、特開2004−4636号公報(特許文献1)に開示されている。図8〜図13を参照して、従来技術に基づく液晶表示パネルの製造方法の一例について説明する。この製造方法は、多面取りによる製造方法である。
【0007】
図8に、大型の基板同士を貼り合せる工程を示す。ここでは、ガラス基板71,72の元となる大型のガラス基板101,102が用いられている。貼り合わせる工程に先立って、ガラス基板101の主表面には複数の液晶表示パネルに相当する分のCFなど(図示せず)を形成しておく。また、ガラス基板102の主表面には複数の液晶表示パネルに相当する分のTFTなど(図示せず)を形成しておく。
【0008】
次に、ガラス基板101の表面にシール材73を配置する。シール材73は、液晶を封入するための空間(「液晶セル」という。)が複数形成されるように複数の枠形に配置する。ただし、図8に示す例においては、閉じた枠形ではなく、開口部77を有するようにシール材73を配置する。シール材73の材料としては、熱硬化樹脂などを用いる。
【0009】
次に、ガラス基板101とガラス基板102とをシール材73によって互いに貼り合せ、シール材73を加熱などの方法により硬化する。シール材を硬化することにより、2枚のガラス基板101,102が貼り合せられた大型の貼合せ基板を形成する。
【0010】
次に、大型のガラス基板101,102の外側の主表面に、偏光板を貼り付ける。次に、この大判の貼合せ基板を液晶セルごとに分断する。この結果、単一の液晶セルを含むいわゆる単品サイズの貼合せ基板が得られる。
【0011】
図9に、単品サイズの貼合せ基板78の概略平面図を示す。一般に「液晶セル」といった場合、液晶が封入された後の状態のものを指すことが多いが、図9などの段階でいう「液晶セル」はシール材73によって形状が規定されているのみであって液晶が未封入のものである。貼合せ基板78においては、2枚のガラス基板がシール材73によって互いに貼合せられている。貼合せ基板78の一方の端面には、図8にも示したシール材73の開口部77が配置されている。
【0012】
図10および図11に、液晶を封入する工程を示す。図10に示すように、貼合せ基板78を真空装置の内部に配置して、シール材73の内側および外側をともに真空にする。次に、シール材73の開口部77の部分を液晶74に浸す。この状態で、真空装置の内部を徐々に大気圧に戻す。液晶74は、シール材73の内側および外側の圧力差と毛細管現象とによって、矢印96に示すように、シール材73の内側に隙間なく充填される。
【0013】
次に、図11に示すように、シール材73の開口部77を封止樹脂79で封止する。封止樹脂79としては、たとえば、紫外線硬化樹脂が用いられる。紫外線を封止樹脂79に照射することによって、封止樹脂79が硬化する。このように、シール材73で囲まれた領域に液晶74を封入することができる。図11では、説明の便宜上、開口部77および封止樹脂79を誇張して大きく描いているが、実際には、図12に示すような外観の液晶表示パネル70が得られる。これは図7に示した液晶表示パネル70である。
【0014】
ところで、上述の液晶表示パネルの製造方法の中には、複数の液晶セルが形成された大型の貼合せ基板(「多面取り基板」ともいう。)を、それぞれ単一の液晶セルを含む貼合せ基板に分断する工程(以下「分断工程」という。)があったが、この分断工程においては、多面取り基板の表面に貼り付けられた大型の偏光板の一部を切除する作業がまず行なわれ、その後に大型の多面取り基板そのものが分断される。
【0015】
図13に、分断工程の作業の様子の概略斜視図を示す。ガラス基板101とガラス基板102とが互いに貼り合せられ、この大型の貼合せ基板114の中には複数の液晶セルが既に形成されている。ガラス基板102の表面には、ガラス基板102同様に大型の偏光板106が貼り付けられている。図13に示すように、偏光板106のうち、液晶セル同士の間の分断線に対応する帯状領域の偏光板106の除去を行なう。さらに、この分断線に沿ってガラス基板102表面にスクライブ線85を形成する。貼合せ基板114の表裏両面にスクライブ線85を形成し終えた後にスクライブ線85に沿って貼合せ基板114を割ることにより、単一の液晶セルを含む液晶表示パネル70(図12参照)を得る。
【0016】
この分断工程を行なうための装置は、図13に示すように移動ユニット81を備える。移動ユニット81は、矢印97に示す向きに移動可能に形成されている。移動ユニット81は、偏光板の一部を切除するための刃物82を備える。
【0017】
移動ユニット81は、ガラス基板の表面にスクライブ線を形成するためのホイルカッター31を有する。ホイルカッター31は、カッター支持部材32を介して移動ユニット本体に固定されている。ホイルカッター31は、回転しながらガラス基板の表面に亀裂を形成できるように構成されている。移動ユニット81は、移動ユニット81自身の位置を検知するためのセンサ83も備えている。
【0018】
移動ユニット81が矢印97の向きに移動することによって、刃物82が偏光板106の一部を帯状に切除して、切除領域86が形成される。ホイルカッター31は、切除領域86の内部を移動する。ホイルカッター31は、ガラス基板102の表面にスクライブ線85を形成しながら進行する。
【0019】
図13に示す例では刃物82が偏光板106の一部を帯状に切除して切除領域86を形成していたが、このような偏光板の切除作業は、貼合せ基板114の全面にわたってすべての液晶セル同士の間の境界線に沿って行なわれる。
【特許文献1】特開2004−4636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述の液晶表示パネルの製造方法の中で行なわれる分断工程においては、上述の例では刃物82を備える移動ユニット81の例を模式的に示したが、この刃物82近傍の構造をより具体的に拡大して示すと、たとえば図14に示すようになっている。偏光板106を剥離する刃物82は基板表面に対して斜めに対向するようにツールホルダ46に固定されている。ツールホルダ46は高さ調節機構47を介して上下に平行移動することによって、刃物82の切込み深さを調整できるようになっている。この移動ユニット81を走行させることによって、図14に示すように偏光板106が削り取られ、切りくず14は刃物82の上側を後方または上方に向かって流れていく。
【0021】
しかし、このような作業を行なった結果、刃物先端が基板に食い込んで傷が発生する場合があった。
【0022】
そこで、本発明は、基板表面から光学フィルムの一部を剥離除去する際に刃物が基板に食い込むことによる傷の発生を低減することができる光学フィルム剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するため、本発明に基づく光学フィルム剥離装置は、基板上に貼られた光学フィルムを部分的に剥離するための装置であって、直線状に前後移動可能な可動部を備え、上記可動部は、可動部本体と、上記光学フィルムをすくい取るように切除するための刃物を前向きに保持するツールホルダとを備え、上記ツールホルダは、上記可動部本体に対して、進行方向と垂直かつ水平な回転軸を中心に回動自在に取り付けられており、上記回転軸は上記刃物の前端よりも前方に位置する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ツールホルダが回転軸を中心として回転することによって刃物ごと基板から離れる向きに逃げることができるので、刃物先端が基板に食い込むことによる傷の発生を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
刃物が基板に食い込んで基板に傷が発生するという現象について、発明者らは、以下のように考察した。
【0026】
まず、図1(a)に示すように刃物82を矢印93の向きに進行させて基板100の表面に貼られた光学フィルムを切除する場合を考える。刃物と基板表面との間の摩擦抵抗が刃物の摩耗や基板表面の状態によって増加した場合、刃物が基板表面を円滑に滑らず、基板100に引きずられて刃物先端は後ろ向き(図中右向き)の力を受ける。その結果、図1(b)に示すように刃物82全体が反る。あるいは、図2(a)に示すようにツールホルダ46に保持された刃物82による切除を考えた場合、図2(b)に示すように刃物82からツールホルダ46に力がかかり、高さ調節機構47に存在するガタの分だけツールホルダ46が傾くこともある。高さ調節機構47が他の構造であったとしてもツールホルダ46と上側構造との間の接続箇所に存在するガタの分だけツールホルダが傾き得る。
【0027】
図1(b)に示すように刃物82全体が反った場合や、図2(b)に示すようにツールホルダ46が刃物先端よりも後方の点を支点として傾いた場合、刃物先端は元の位置よりも下方に移動してしまう。したがって、本来予定していた切込み深さよりも深い位置で刃物先端が基板100に食い込むことになってしまう。その結果、基板100に傷が発生してしまう。
【0028】
(実施の形態1)
(構成)
図3〜図6を参照して、本発明に基づく実施の形態1における光学フィルム剥離装置について説明する。
【0029】
この光学フィルム剥離装置は、図3に示すように、基板100上に貼られた光学フィルムを部分的に剥離するための装置であって、直線状に前後移動可能な可動部40を備え、可動部40は、可動部本体48と、前記光学フィルムをすくい取るように切除するための刃物82を前向きに保持するツールホルダ46とを備え、ツールホルダ46は、可動部本体48に対して、進行方向と垂直かつ水平な回転軸49を中心に回動自在に取り付けられており、回転軸49は刃物82の前端よりも前方に位置する。
【0030】
光学フィルムをすくい取るように切除する刃物82は、たとえば図4、図5に示すような形状を有している。図5は図4に示す刃物82を正面から見たところである。この刃物82は図6に示すように使用される。すなわち、矢印93の向きに進行させることによって、基板100の表面に貼られた光学フィルムとしての偏光板116を帯状に削り取り、切りくず14を排出する。図3に示すように、ツールホルダ46は、回転軸49を中心として矢印92の向きに回転することができるようになっている。
【0031】
(作用・効果)
本実施の形態における光学フィルム剥離装置では、刃物82が基板100から抵抗力を受けたときには、ツールホルダ46が回転軸49を中心として矢印92の向きに回転することによって逃げることができる。ツールホルダ46がこのように基板から離れる向きに逃げることによって刃物先端が基板100に食い込む確率を低減することができる。したがって、刃物先端が基板に食い込むことによる傷の発生を低減することができる。
【0032】
なお、図3に示すように、可動部40は、ツールホルダ46の回転軸49まわりの自由な回転に抵抗力を与えてツールホルダ46を一定の姿勢に近づけるための付勢手段を備えることが好ましい。このような構成になっていることで、刃物は必要以上に逃げることなくなるべく一定の姿勢に保たれ、安定して加工を続けることができる。
【0033】
このように用いられる付勢手段は、ツールホルダ46の上側と可動部本体48の下側との間に介在する弾性体であることが好ましい。このようになっていれば、簡単な構造で付勢手段としての役割をもたせることができるからである。図3に示した例では、弾性体はコイルばね50となっている。コイルばね50の代わりに、板ばね、弾性変形可能なブロック、エアシリンダなど、他の手段によって弾性体を実現してもよい。
【0034】
さらに、図3に示すように、この弾性体は、刃物82の前端よりも後ろ側に配置されていることが好ましい。このようになっていれば、ツールホルダ46の回転軸49まわりの回転に効率良く抵抗力を与えることができるからである。
【0035】
特に、弾性体は図3に示すようにばねであることが好ましい。ばねであれば、ツールホルダ46の後端が重力などによって必要以上に下がってしまうことを簡素な構造で容易に防止でき、また、作業開始前の状態での刃物82の姿勢をほぼ一定に保つことができるからである。
【0036】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a),(b)は、本発明に先立って発明者らが刃物の挙動について検討した結果の説明図である。
【図2】(a),(b)は、本発明に先立って発明者らがツールホルダの挙動について検討した結果の説明図である。
【図3】本発明に基づく実施の形態1における光学フィルム剥離装置の説明図である。
【図4】本発明に基づく実施の形態1における光学フィルム剥離装置が備える刃物の斜視図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態1における光学フィルム剥離装置が備える刃物の正面図である。
【図6】本発明に基づく実施の形態1における光学フィルム剥離装置が備える刃物の使用状態の説明図である。
【図7】従来技術に基づく液晶表示パネルの概略断面図である。
【図8】従来技術に基づく液晶表示パネルの製造方法に含まれる、大型の基板同士を貼り合せる工程の説明図である。
【図9】従来技術に基づく液晶表示パネルの単品サイズの貼合せ基板の概略平面図である。
【図10】従来技術に基づく液晶表示パネルの製造方法に含まれる、液晶を封入する工程の説明図である。
【図11】従来技術に基づく液晶表示パネルの製造方法に含まれる、シール材の開口部を封止する工程の説明図である。
【図12】従来技術に基づく液晶表示パネルの斜視図である。
【図13】従来技術に基づく液晶表示パネルの製造方法に含まれる分断工程の作業の様子の概略斜視図である。
【図14】従来技術に基づく光学フィルム剥離装置の説明図である。
【符号の説明】
【0038】
14 切りくず、31 ホイルカッター、32 カッター支持部材、40 可動部、46 ツールホルダ、47 高さ調節機構、48 可動部本体、49 回転軸、70 液晶表示パネル、71,72 (単品サイズの)ガラス基板、73 シール材、74 液晶、76 偏光板、77 開口部、78 (単品サイズの)貼合せ基板、79 封止樹脂、81 移動ユニット、82 刃物、83 センサ、85 スクライブ線、86 切除領域、92,93,94,96 矢印、100 基板、101,102 (大型の)ガラス基板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム剥離装置に関するものである。特に、平坦な面に貼られた光学フィルムを剥離除去するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示パネルには、表面に位相差板や偏光板などの光学フィルムが貼り付けられる場合がある。たとえば、液晶表示パネルにおいては、ガラス基板の表面に偏光板などが貼り付けられており、液晶の光学的性質と偏光板の作用との組合せによって表示が制御される。
【0003】
図7に、液晶表示パネル70の概略断面図を示す。液晶表示パネル70は、2枚のガラス基板71,72の間に液晶74が封入された構成を有する。
【0004】
ガラス基板71の液晶74側の表面にはCF(Color Filter)が設けられている。ガラス基板72の液晶74側の表面には液晶74を駆動するためのTFT(Thin Film Transistor)が設けられている。2枚のガラス基板71,72は、シール材73によって互いに貼り合わせられている。液晶74は、2枚のガラス基板71,72とシール材73とによって封入されている。
【0005】
ガラス基板71,72において、液晶74が封入されている側と反対側の主表面には、光学フィルムとしての偏光板76が貼付けられている。このような構成を有する液晶表示パネル70の製造においては、大型の基板に対して複数の液晶セルを含む貼合せ基板を形成して、後にこの貼合せ基板を液晶セルごとに分断することによって複数の液晶表示パネルを得るという、いわゆる「多面取り」による方法がある。
【0006】
従来技術に基づく液晶表示パネルの製造方法の一例は、特開2004−4636号公報(特許文献1)に開示されている。図8〜図13を参照して、従来技術に基づく液晶表示パネルの製造方法の一例について説明する。この製造方法は、多面取りによる製造方法である。
【0007】
図8に、大型の基板同士を貼り合せる工程を示す。ここでは、ガラス基板71,72の元となる大型のガラス基板101,102が用いられている。貼り合わせる工程に先立って、ガラス基板101の主表面には複数の液晶表示パネルに相当する分のCFなど(図示せず)を形成しておく。また、ガラス基板102の主表面には複数の液晶表示パネルに相当する分のTFTなど(図示せず)を形成しておく。
【0008】
次に、ガラス基板101の表面にシール材73を配置する。シール材73は、液晶を封入するための空間(「液晶セル」という。)が複数形成されるように複数の枠形に配置する。ただし、図8に示す例においては、閉じた枠形ではなく、開口部77を有するようにシール材73を配置する。シール材73の材料としては、熱硬化樹脂などを用いる。
【0009】
次に、ガラス基板101とガラス基板102とをシール材73によって互いに貼り合せ、シール材73を加熱などの方法により硬化する。シール材を硬化することにより、2枚のガラス基板101,102が貼り合せられた大型の貼合せ基板を形成する。
【0010】
次に、大型のガラス基板101,102の外側の主表面に、偏光板を貼り付ける。次に、この大判の貼合せ基板を液晶セルごとに分断する。この結果、単一の液晶セルを含むいわゆる単品サイズの貼合せ基板が得られる。
【0011】
図9に、単品サイズの貼合せ基板78の概略平面図を示す。一般に「液晶セル」といった場合、液晶が封入された後の状態のものを指すことが多いが、図9などの段階でいう「液晶セル」はシール材73によって形状が規定されているのみであって液晶が未封入のものである。貼合せ基板78においては、2枚のガラス基板がシール材73によって互いに貼合せられている。貼合せ基板78の一方の端面には、図8にも示したシール材73の開口部77が配置されている。
【0012】
図10および図11に、液晶を封入する工程を示す。図10に示すように、貼合せ基板78を真空装置の内部に配置して、シール材73の内側および外側をともに真空にする。次に、シール材73の開口部77の部分を液晶74に浸す。この状態で、真空装置の内部を徐々に大気圧に戻す。液晶74は、シール材73の内側および外側の圧力差と毛細管現象とによって、矢印96に示すように、シール材73の内側に隙間なく充填される。
【0013】
次に、図11に示すように、シール材73の開口部77を封止樹脂79で封止する。封止樹脂79としては、たとえば、紫外線硬化樹脂が用いられる。紫外線を封止樹脂79に照射することによって、封止樹脂79が硬化する。このように、シール材73で囲まれた領域に液晶74を封入することができる。図11では、説明の便宜上、開口部77および封止樹脂79を誇張して大きく描いているが、実際には、図12に示すような外観の液晶表示パネル70が得られる。これは図7に示した液晶表示パネル70である。
【0014】
ところで、上述の液晶表示パネルの製造方法の中には、複数の液晶セルが形成された大型の貼合せ基板(「多面取り基板」ともいう。)を、それぞれ単一の液晶セルを含む貼合せ基板に分断する工程(以下「分断工程」という。)があったが、この分断工程においては、多面取り基板の表面に貼り付けられた大型の偏光板の一部を切除する作業がまず行なわれ、その後に大型の多面取り基板そのものが分断される。
【0015】
図13に、分断工程の作業の様子の概略斜視図を示す。ガラス基板101とガラス基板102とが互いに貼り合せられ、この大型の貼合せ基板114の中には複数の液晶セルが既に形成されている。ガラス基板102の表面には、ガラス基板102同様に大型の偏光板106が貼り付けられている。図13に示すように、偏光板106のうち、液晶セル同士の間の分断線に対応する帯状領域の偏光板106の除去を行なう。さらに、この分断線に沿ってガラス基板102表面にスクライブ線85を形成する。貼合せ基板114の表裏両面にスクライブ線85を形成し終えた後にスクライブ線85に沿って貼合せ基板114を割ることにより、単一の液晶セルを含む液晶表示パネル70(図12参照)を得る。
【0016】
この分断工程を行なうための装置は、図13に示すように移動ユニット81を備える。移動ユニット81は、矢印97に示す向きに移動可能に形成されている。移動ユニット81は、偏光板の一部を切除するための刃物82を備える。
【0017】
移動ユニット81は、ガラス基板の表面にスクライブ線を形成するためのホイルカッター31を有する。ホイルカッター31は、カッター支持部材32を介して移動ユニット本体に固定されている。ホイルカッター31は、回転しながらガラス基板の表面に亀裂を形成できるように構成されている。移動ユニット81は、移動ユニット81自身の位置を検知するためのセンサ83も備えている。
【0018】
移動ユニット81が矢印97の向きに移動することによって、刃物82が偏光板106の一部を帯状に切除して、切除領域86が形成される。ホイルカッター31は、切除領域86の内部を移動する。ホイルカッター31は、ガラス基板102の表面にスクライブ線85を形成しながら進行する。
【0019】
図13に示す例では刃物82が偏光板106の一部を帯状に切除して切除領域86を形成していたが、このような偏光板の切除作業は、貼合せ基板114の全面にわたってすべての液晶セル同士の間の境界線に沿って行なわれる。
【特許文献1】特開2004−4636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述の液晶表示パネルの製造方法の中で行なわれる分断工程においては、上述の例では刃物82を備える移動ユニット81の例を模式的に示したが、この刃物82近傍の構造をより具体的に拡大して示すと、たとえば図14に示すようになっている。偏光板106を剥離する刃物82は基板表面に対して斜めに対向するようにツールホルダ46に固定されている。ツールホルダ46は高さ調節機構47を介して上下に平行移動することによって、刃物82の切込み深さを調整できるようになっている。この移動ユニット81を走行させることによって、図14に示すように偏光板106が削り取られ、切りくず14は刃物82の上側を後方または上方に向かって流れていく。
【0021】
しかし、このような作業を行なった結果、刃物先端が基板に食い込んで傷が発生する場合があった。
【0022】
そこで、本発明は、基板表面から光学フィルムの一部を剥離除去する際に刃物が基板に食い込むことによる傷の発生を低減することができる光学フィルム剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するため、本発明に基づく光学フィルム剥離装置は、基板上に貼られた光学フィルムを部分的に剥離するための装置であって、直線状に前後移動可能な可動部を備え、上記可動部は、可動部本体と、上記光学フィルムをすくい取るように切除するための刃物を前向きに保持するツールホルダとを備え、上記ツールホルダは、上記可動部本体に対して、進行方向と垂直かつ水平な回転軸を中心に回動自在に取り付けられており、上記回転軸は上記刃物の前端よりも前方に位置する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ツールホルダが回転軸を中心として回転することによって刃物ごと基板から離れる向きに逃げることができるので、刃物先端が基板に食い込むことによる傷の発生を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
刃物が基板に食い込んで基板に傷が発生するという現象について、発明者らは、以下のように考察した。
【0026】
まず、図1(a)に示すように刃物82を矢印93の向きに進行させて基板100の表面に貼られた光学フィルムを切除する場合を考える。刃物と基板表面との間の摩擦抵抗が刃物の摩耗や基板表面の状態によって増加した場合、刃物が基板表面を円滑に滑らず、基板100に引きずられて刃物先端は後ろ向き(図中右向き)の力を受ける。その結果、図1(b)に示すように刃物82全体が反る。あるいは、図2(a)に示すようにツールホルダ46に保持された刃物82による切除を考えた場合、図2(b)に示すように刃物82からツールホルダ46に力がかかり、高さ調節機構47に存在するガタの分だけツールホルダ46が傾くこともある。高さ調節機構47が他の構造であったとしてもツールホルダ46と上側構造との間の接続箇所に存在するガタの分だけツールホルダが傾き得る。
【0027】
図1(b)に示すように刃物82全体が反った場合や、図2(b)に示すようにツールホルダ46が刃物先端よりも後方の点を支点として傾いた場合、刃物先端は元の位置よりも下方に移動してしまう。したがって、本来予定していた切込み深さよりも深い位置で刃物先端が基板100に食い込むことになってしまう。その結果、基板100に傷が発生してしまう。
【0028】
(実施の形態1)
(構成)
図3〜図6を参照して、本発明に基づく実施の形態1における光学フィルム剥離装置について説明する。
【0029】
この光学フィルム剥離装置は、図3に示すように、基板100上に貼られた光学フィルムを部分的に剥離するための装置であって、直線状に前後移動可能な可動部40を備え、可動部40は、可動部本体48と、前記光学フィルムをすくい取るように切除するための刃物82を前向きに保持するツールホルダ46とを備え、ツールホルダ46は、可動部本体48に対して、進行方向と垂直かつ水平な回転軸49を中心に回動自在に取り付けられており、回転軸49は刃物82の前端よりも前方に位置する。
【0030】
光学フィルムをすくい取るように切除する刃物82は、たとえば図4、図5に示すような形状を有している。図5は図4に示す刃物82を正面から見たところである。この刃物82は図6に示すように使用される。すなわち、矢印93の向きに進行させることによって、基板100の表面に貼られた光学フィルムとしての偏光板116を帯状に削り取り、切りくず14を排出する。図3に示すように、ツールホルダ46は、回転軸49を中心として矢印92の向きに回転することができるようになっている。
【0031】
(作用・効果)
本実施の形態における光学フィルム剥離装置では、刃物82が基板100から抵抗力を受けたときには、ツールホルダ46が回転軸49を中心として矢印92の向きに回転することによって逃げることができる。ツールホルダ46がこのように基板から離れる向きに逃げることによって刃物先端が基板100に食い込む確率を低減することができる。したがって、刃物先端が基板に食い込むことによる傷の発生を低減することができる。
【0032】
なお、図3に示すように、可動部40は、ツールホルダ46の回転軸49まわりの自由な回転に抵抗力を与えてツールホルダ46を一定の姿勢に近づけるための付勢手段を備えることが好ましい。このような構成になっていることで、刃物は必要以上に逃げることなくなるべく一定の姿勢に保たれ、安定して加工を続けることができる。
【0033】
このように用いられる付勢手段は、ツールホルダ46の上側と可動部本体48の下側との間に介在する弾性体であることが好ましい。このようになっていれば、簡単な構造で付勢手段としての役割をもたせることができるからである。図3に示した例では、弾性体はコイルばね50となっている。コイルばね50の代わりに、板ばね、弾性変形可能なブロック、エアシリンダなど、他の手段によって弾性体を実現してもよい。
【0034】
さらに、図3に示すように、この弾性体は、刃物82の前端よりも後ろ側に配置されていることが好ましい。このようになっていれば、ツールホルダ46の回転軸49まわりの回転に効率良く抵抗力を与えることができるからである。
【0035】
特に、弾性体は図3に示すようにばねであることが好ましい。ばねであれば、ツールホルダ46の後端が重力などによって必要以上に下がってしまうことを簡素な構造で容易に防止でき、また、作業開始前の状態での刃物82の姿勢をほぼ一定に保つことができるからである。
【0036】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a),(b)は、本発明に先立って発明者らが刃物の挙動について検討した結果の説明図である。
【図2】(a),(b)は、本発明に先立って発明者らがツールホルダの挙動について検討した結果の説明図である。
【図3】本発明に基づく実施の形態1における光学フィルム剥離装置の説明図である。
【図4】本発明に基づく実施の形態1における光学フィルム剥離装置が備える刃物の斜視図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態1における光学フィルム剥離装置が備える刃物の正面図である。
【図6】本発明に基づく実施の形態1における光学フィルム剥離装置が備える刃物の使用状態の説明図である。
【図7】従来技術に基づく液晶表示パネルの概略断面図である。
【図8】従来技術に基づく液晶表示パネルの製造方法に含まれる、大型の基板同士を貼り合せる工程の説明図である。
【図9】従来技術に基づく液晶表示パネルの単品サイズの貼合せ基板の概略平面図である。
【図10】従来技術に基づく液晶表示パネルの製造方法に含まれる、液晶を封入する工程の説明図である。
【図11】従来技術に基づく液晶表示パネルの製造方法に含まれる、シール材の開口部を封止する工程の説明図である。
【図12】従来技術に基づく液晶表示パネルの斜視図である。
【図13】従来技術に基づく液晶表示パネルの製造方法に含まれる分断工程の作業の様子の概略斜視図である。
【図14】従来技術に基づく光学フィルム剥離装置の説明図である。
【符号の説明】
【0038】
14 切りくず、31 ホイルカッター、32 カッター支持部材、40 可動部、46 ツールホルダ、47 高さ調節機構、48 可動部本体、49 回転軸、70 液晶表示パネル、71,72 (単品サイズの)ガラス基板、73 シール材、74 液晶、76 偏光板、77 開口部、78 (単品サイズの)貼合せ基板、79 封止樹脂、81 移動ユニット、82 刃物、83 センサ、85 スクライブ線、86 切除領域、92,93,94,96 矢印、100 基板、101,102 (大型の)ガラス基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に貼られた光学フィルムを部分的に剥離するための装置であって、直線状に前後移動可能な可動部を備え、前記可動部は、可動部本体と、前記光学フィルムをすくい取るように切除するための刃物を前向きに保持するツールホルダとを備え、前記ツールホルダは、前記可動部本体に対して、進行方向と垂直かつ水平な回転軸を中心に回動自在に取り付けられており、前記回転軸は前記刃物の前端よりも前方に位置する、光学フィルム剥離装置。
【請求項2】
前記可動部は、前記ツールホルダの前記回転軸まわりの自由な回転に抵抗力を与えて前記ツールホルダを一定の姿勢に近づけるための付勢手段を備える、請求項1に記載の光学フィルム剥離装置。
【請求項3】
前記付勢手段は、前記ツールホルダの上側と前記可動部本体の下側との間に介在する弾性体である、請求項2に記載の光学フィルム剥離装置。
【請求項4】
前記弾性体は、前記刃物の前端よりも後ろ側に配置されている、請求項3に記載の光学フィルム剥離装置。
【請求項1】
基板上に貼られた光学フィルムを部分的に剥離するための装置であって、直線状に前後移動可能な可動部を備え、前記可動部は、可動部本体と、前記光学フィルムをすくい取るように切除するための刃物を前向きに保持するツールホルダとを備え、前記ツールホルダは、前記可動部本体に対して、進行方向と垂直かつ水平な回転軸を中心に回動自在に取り付けられており、前記回転軸は前記刃物の前端よりも前方に位置する、光学フィルム剥離装置。
【請求項2】
前記可動部は、前記ツールホルダの前記回転軸まわりの自由な回転に抵抗力を与えて前記ツールホルダを一定の姿勢に近づけるための付勢手段を備える、請求項1に記載の光学フィルム剥離装置。
【請求項3】
前記付勢手段は、前記ツールホルダの上側と前記可動部本体の下側との間に介在する弾性体である、請求項2に記載の光学フィルム剥離装置。
【請求項4】
前記弾性体は、前記刃物の前端よりも後ろ側に配置されている、請求項3に記載の光学フィルム剥離装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−271680(P2007−271680A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93861(P2006−93861)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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