説明

光学ポインティングデバイスにおける光源制御

【課題】安定性の高い光学ポインティングデバイスを低コストで実現する。
【解決手段】駆動電流に応じて少なくとも一部コヒーレントな光を生成し、撮像面を照明することにより反射画像を生成するように構成された光源を有する光学ポインティングデバイス。ナビゲーションセンサは、反射画像に基づいてデジタル画像を生成し、該デジタル画像に基づいて、撮像面と光学ポインティングデバイスの間の相対移動を示す移動データを生成するように構成される。光源駆動回路は、光源に駆動電流を供給するように構成される。駆動電流コントローラは、選択されたデジタル画像に基づいて駆動電流を較正するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
コンピュータやその表示装置に使用される手で操作するポインティングデバイスは非常に一般的になった。種々のタイプのポインティングデバイスのうちの1つの形は、マウスパッドとともに使用される従来の(機械式)マウスである。機械式マウスは一般に、マウスを動かしたときにマウスパッドの上を転がるゴムの表面を有する金属ボールを有する。マウスの中には、ボールの赤道に接触するローラ又はホイールがあり、ボールの回転は、マウスの動きに関する2つの直交成分を表わす電気信号に変換される。それらの電気信号はコンピュータに渡され、コンピュータのソフトウェアは、それらの電気信号に応じて、マウスの動きに従ってポインタ(カーソル)の表示位置をΔX及びΔYだけ変化させる。
【0002】
従来の機械式マウスのような機械タイプのポインティングデバイスの他に、光学ポインティングデバイスも開発されている。光学ポインティングデバイスの一形態では、ボールのような機械的要素を動かすのではなく、指や机上面のような撮像面と、光学ポインティングデバイス内の画像センサとの間の相対移動を光学的に検出し、それを移動情報に変換している。
【0003】
光学ポインティングデバイスで一般的に使用されるような電気的画像センサには、主に次の2つのタイプがある。すなわち、電荷結合素子(CCD)タイプと、金属酸化膜半導体−アクティブピクセルセンサ(CMOS−APS)タイプである。いずれのタイプのセンサも一般に、あるパターンを成すように配置されたフォトディテクタ(すなわち、ピクセル)のアレイを含む。各フォトディテクタは、そのフォトディテクタの部位に対する入射光の強度に比例する大きさの信号を出力する。次に、それらの出力信号が処理され、操作され、複数の画素(ピクセル)を含む画像が生成される。画像内の各ピクセルは、画像センサにおけるフォトディテクタ(すなわち、ピクセル)のうちの1つに対応する。
【0004】
光学ポインティングデバイスの一形態は、発光ダイオード(LED)のようなインコヒーレント光源を有し、撮像面又はナビゲーション面を照明することにより反射画像を生成し、光学ポインティングデバイスの画像センサによってその反射画像を検出する。光学ポインティングデバイスの他の形態は、レーザーのようなコヒーレント光源を有し、撮像面を照明することにより反射画像を生成し、その反射画像を光学ポインティングデバイスの画像センサによって検出する。コヒーレント光源を利用した光学ポインティングデバイスの光学ナビゲーションは、従来のインコヒーレント光源光学ポインティングデバイスによって得られるものに比べて、優れた画像表面範囲と、優れたトラッキング性能が得られる。
【0005】
レーザーのようなコヒーレント光源は、LEDのようなインコヒーレント光源に比べて、非常に厳しい目の安全基準を有する。例えば、国際電気標準会議(IEC)規格は、ビーム内観察のための光学機器の使用を含む無理なく予測可能な動作条件下において安全なレーザーとして、クラス1レーザーを規定している。クラス1分類に適合するためには、レーザーの正面に置かれた拡大器を使用して誰かがそのレーザーを長い時間見ていたとしても、目のダメージが発生しないものでなければならない。光学ポインティングデバイスの内部におけるクラス1レーザーの最大光パワー出力は、IEC規格によって規定され、レーザー出力の波長及びレーザーの動作モードに基づいて制限される。例えば、IEC規格は、公称波長840ナノメートル(nm)の単一モードの面発光レーザー(VCSEL)がクラス1仕様を満たすためには、面発光レーザー(VCSEL)のピーク光パワーを連続波(CW)モードにおいて700マイクロワット(μW)未満にすることを規定している。
【0006】
光学ポインティングデバイスにおけるコヒーレント光源は、センサ画像の適切な露光を達成するだけの十分なレベルの光出力(すなわち、最小光パワー出力)を提供するものでなければならない。光学ポインティングデバイスにおける一般的なVCSELの最小光パワー出力の例は、約200μWである。最小光パワー出力は、光学ポインティングデバイスの種々の環境動作条件に従って変更される場合がある。例えば、色調の暗い表面や、表面の粗さが大きい表面からは、光があまり反射されない。こうした反射の少ない表面上で光学ポインティングデバイスを適切に操作するためには、一般に、コヒーレント光源からの最小光パワー出力を増加させる。あるいは、センサの露出時間を増やすことにより、センサ画像の適当なレベルの露光を達成する。ただし、露光時間を長くすると、光学ポインティングデバイスのトラッキング速度は制限される。
【0007】
従って、光学ポインティングデバイスにおけるコヒーレント光源の動作枠は、センサ画像の適切な露光が可能となる最小光パワー出力と、IEC規格のクラス1分類に規定されるような目の安全規格を満たすコヒーレント光源の最大光パワー出力とによって決まる。
【0008】
光学ポインティングデバイスの場合、レーザーのようなコヒーレント光源は通常、電流調整回路によって制御される。電流調整回路は、光源駆動回路から光源に供給される駆動電流を変化させることにより、コヒーレント光源の光パワー出力を調節する。光学ポインティングデバイスに使用される一般的なコヒーレント光源(例えば、VCSEL)は通常、駆動電流に対して極端に敏感であり、光源駆動回路から供給される駆動電流の小さな揺らぎによって、コヒーレント光源の光パワー出力には大きな変化が生じる。コヒーレント光源のこのような動作枠を受け入れるためには、光学ポインティングデバイスにおけるコヒーレント光源に、安定した正確な電流源を与えることが望ましい。
【0009】
レーザー光源(例えば、VCSEL)を備えた光学ポインティングデバイスの一形態は、光源駆動回路を制御して固定駆動電流をレーザーに供給するための電流調整回路を有する。そのような固定駆動電流回路を備えた光学ポインティングデバイスの場合、レーザーの動作モードおよび光パワー出力は、レーザーの閾電流及びSlope Efficiencyに基づいて決定される。レーザーの閾電流は、レーザーからレーザーを放射させる最小駆動電流である。レーザーのSlope Efficiencyは、レーザの光パワー出力と駆動電流の比である。光学ポインティングデバイスに一般的に使用されるVCSELその他のレーザーには、一般に、大きな製造ばらつきがあるため、こうしたレーザーの閾電流やSlope Efficiencyには大きなばらつきがある。レーザーに目に安全な動作をさせ、最小光パワー出力を出力させるために、固定電流駆動回路を備えた光学ポインティングデバイスには通常、光学ポインティングデバイスの個別較正が使用される。個別較正の後であっても、レーザの光パワー出力は、レーザの使用期間や動作温度条件の変化といった、他の要因の影響を受けることがある。
【0010】
上記の問題の幾つかを解消する固定駆動電流回路を備えた光学ポインティングデバイスの一形態として、閉ループレーザー駆動回路を備えたものがある。光学ポインティングデバイスのこの形態では、通常、監視フォトダイオードを使用してレーザーの光パワー出力を常時監視し、閉ループレーザー駆動回路にフィードバックを提供する。閉ループレーザー駆動回路によれば、製造プロセスばらつきによるレーザーの閾電流やSlope Efficientyのばらつきを許容することが可能になる。また、レーザーの使用期間や動作温度条件も、閉ループレーザー駆動回路によって許容される。しかしながら、閉ループレーザー駆動回路は実施が難しく、コストも高い。例えば、閉ループレーザー駆動回路は、レーザーから監視フォトダイオードまでの高価な光学フィードバック経路を有する場合がある。
【0011】
光学ポインティングデバイスの一形態として、開ループレーザー駆動回路を備えたものがある。開ループレーザー駆動回路を備えた光学ポインティングデバイスを製造する方法の一例は、レーザー(例えば、VCSEL)を事前テストし、レーザー閾電流、Slope Efficiency、及び、温度係数を決定するというものである。事前テストされたレーザーは、並び替えられ、グループ分けに従って無数の箱の中に分類される。レーザーの各箱は、対応する開ループ電流調整回路に適合する。対応する開ループ電流調整回路は、対応するレーザーがそのレーザに規定された動作枠内で確実に動作し、最小光パワー出力を出力し、目に安全な動作をするように、そのレーザーに合わせて駆動電流を適切に調節する。この製造プロセスによれば、レーザーの適切な動作枠が確実に達成されるが、この製造プロセスは、激しく時間がかかり、コストもかかる。また、この製造プロセスによれば、一般に、選択可能な開ループ電流調整回路の数が限られていて、補正範囲に制限があることから、かなりの割合のレーザーが使用されないことになる。
【0012】
これらの理由及びその他の理由から、本発明が必要とされる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
概要
本発明の一態様は、光源、ナビゲーションセンサ、光源駆動回路、及び、駆動電流コントローラを含む光学ポインティングデバイスを提供する。光源は、駆動電流に応じて少なくとも一部コヒーレントな光を生成し、撮像面を照明することにより、反射画像を生成するように構成される。ナビゲーションセンサは、反射画像に基づいてデジタル画像を生成し、該デジタル画像に基づいて、撮像面と光学ポインティングデバイスの間の相対移動を示す移動データを生成するように構成される。光源駆動回路は、光源に駆動電流を供給するように構成される。駆動電流コントローラは、選択されたデジタル画像に基づいて駆動電流を較正するように構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
下記の詳細な説明では、本明細書の一部を形成するとともに、本発明を実施することが可能な特定の幾つかの実施形態を例として示す図面を参照する。これに関し、「上」、「下」、「前」、「後ろ」、「先行する」、「後続の」、等々のような方向を示す言葉は、説明中の図面(複数の場合もあり)の向きを基準にして使用される。本発明の構成要素は種々の向きに配置することが可能であるから、方向を示す言葉は、例示の目的で使用されるものであり、制限のためのものではない。また、本発明の範囲から外れることなく、他の実施形態を使用したり、構造的又は論理的変更を行うことも可能であると考えられる。従って、下記の詳細な説明を制限の意味で解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって規定される。
【0015】
図1は、一実施形態による光学ポインティングデバイス100の主な構成要素を示すブロック図である。光学ポインティングデバイス100は、光学ナビゲーションセンサ集積回路(IC)102、光源118、光学レンズ120、及び、光学レンズ128を含む。光学ナビゲーションセンサ102は、デジタル入出力回路106、ナビゲーションプロセッサ108、アナログデジタルコンバータ(ADC)112、フォトディテクタアレイ(フォトアレイ)114、及び、光源駆動回路116を含む。一形態において、光学ポインティングデバイス100は、デスクトップパーソナルコンピュータ、ワークステーション、形態コンピュータ、又は他の装置のための光学マウスである。他の実施形態において、光学ポインティングデバイス100は、光学的指紋検出ポインティングデバイス、又は他のポインティングデバイスである。
【0016】
動作時には、光源118は、机上面や他の適当な撮像面であるナビゲーション面に光112を放射し、反射画像を生成する。一実施形態において、光源は、レンズ128を通してナビゲーション面124へ差し向けられる光122を放射する。一実施形態において、光源118は、コヒーレント光源、又は、少なくとも一部コヒーレントな光源である。一実施形態において、光源118はレーザーである。一実施形態において、光源118は、端面発光型レーザーダイオードである。一実施形態において、光源118は、発光ダイオード(LED)のような広帯域光源又はインコヒーレント光源と、その広帯域光をフィルタリングすることにより少なくとも一部コヒーレントな光を生成する狭大域フィルタとからなる。光源118は駆動回路116によって制御され、駆動回路116は制御ライン110を介してナビゲーションプロセッサ108によって制御される。一実施形態において、ナビゲーションプロセッサ108は、制御ライン110を使用して駆動回路116の電源をオン/オフし、対応する光源118の電源をオン/オフする。
【0017】
ナビゲーション面124からの反射光は、フォトディテクタアレイ114に向けて反射される。一実施形態において、表面124からの反射光は、レンズ120によってフォトディテクタアレイ114へと導かれる。レンズ120及び128は、オプショナルレンズと呼ばれる。なぜなら、レーザーのようなコヒーレント光源や、少なくとも一部コヒーレントな光源として実施される光源118を有する光学ポインティングデバイス100の実施形態は、レンズ120及び128がなくても実施することができ、レンズ120と128が両方ともなくても、また、片方だけなくても実施することができるからである。
【0018】
フォトディテクタアレイ中の各フォトディテクタは、そのフォトディテクタに入射する光の強度に応じて大きさが変化する信号を生成する。フォトディテクタアレイ114からの信号はアナログデジタルコンバータ112に渡され、アナログデジタルコンバータ112は、それらの信号を適当な分解能(例えば、8ビット)のデジタル値に変換する。これらのデジタル値は、光学ポインティングデバイス100の下にある机上面その他のナビゲーション面の一部を表わすデジタル画像又はデジタル表現に相当する。アナログデジタルコンバータ112によって生成されたデジタル値は、ナビゲーションプロセッサ108に渡される。ナビゲーションプロセッサ108によって受信されたそれらのデジタル値は、フレームとしてメモリ111内に記憶される。
【0019】
フォトディテクタアレイ114の全体的サイズは、複数の特徴を有する画像を受け取れるくらい大きいことが望ましい。そのような空間的特徴の画像は、光学ポインティングデバイス100がナビゲーション面124の上で移動するときに、ピクセル情報の平行移動パターンを生成する。アレイ114内のフォトディテクタの数、及び、それらの内容を取り込んでデジタル化する時のフレームレートは、合わせて、光学ポインティングデバイス100をトラッキングされた状態に保ちながら表面上で動かすことが可能な速度に影響を与える。トラッキングは、ナビゲーションプロセッサ108によって行われ、新たに撮影されたサンプルフレームを1つ前に撮影された基準フレームと比較し、移動方向及び移動量を推定することによって行われる。
【0020】
一実施形態において、ナビゲーションプロセッサ108は、連続したフレーム間の相関の計算を実施することにより、移動情報を判定する。この実施形態の一形態では、ナビゲーションプロセッサ108は、フレームのうちの一枚の全内容を1画素オフセット試行シフト(1つ向こう、1つ向こう且つ1つ下、1つ下、1つ上、1つ上且つ1つ向こう、別の方向に1つ向こう、等々)によって可能な8個の方向のそれぞれに1画素の距離だけ次々とシフトさせる。これを8個の試行まで加算する。なにも移動がない場合もありうるので、ヌルシフトと呼ばれる9番目の試行も使用される。処理の一例としては、各試行シフトの後、互いに重なり合うフレームの部分をナビゲーションプロセッサ108によってピクセル単位に差し引き、好ましくは、得られた差を二乗して、加算することにより、その重なり合う領域内における類似性の尺度(相関)が形成される。一実施形態では、もっと大きな試行シフト(例えば、2つ向こう且つ1つ下)を使用する場合がある。
【0021】
差が最小である(すなわち、相関が最大である)試行シフトは、2つのフレーム間の動きの指標として使用することができる。すなわち、この試行シフトによれば、拡大縮小や累積により有用な精度の移動情報(例えば、ΔX及びΔY)を情報交換に適した速度で得ることが可能な生の移動情報が得られ、その移動情報は、デジタル入出力回路106により、データライン及び制御ライン104を介してホスト装置に渡される。また、光学ポインティングデバイス100は、データライン及び制御ライン104を介してホスト装置からデータ信号及び制御信号を受信するように構成される。
【0022】
一実施形態において、光源118は、レーザー(例えば、VCSEL)として実施され、レーザーは、連続波(CW)モードではなくパルスモードで動作する。光源118は、常時点灯させておくのではなく、ナビゲーションセンサ102が検出画像を取り込んでいないときはオフされる。換言すれば、この実施形態では、ナビゲーションプロセッサ108によって、光源118(例えば、VCSEL)が、ナビゲーションセンサ102のフレームレートに同期される。ナビゲーションプロセッサ108は、光源駆動回路116を制御し、パルス駆動電流を光源118に供給する。
【0023】
CWモードで動作するレーザーを備えた従来の光学ポインティングデバイスの場合、レーザーのデューティサイクルが100%であるため、レーザーのピーク光パワー出力は大幅に制限される。例えば、公称波長840nmのシングルモードVCSELは、IEC規格により、CWモードにおいてクラス1分類に適合する700μW未満のピーク光パワー出力を有するものとして規定される。
【0024】
IEC規格は、平均パルス列パワーはCWモード限界以下でなければならない、1パルスのエネルギーは1パルスエネルギー限界未満でなければならない、及び、パルス列における1パルスあたりの平均エネルギーは1パルスのエネルギー限界から周波数ファクタを差し引いたもの未満でなければならないといった、パルスシステムが準拠しなければならない種々の基準を考慮している。分かり易くするために、下記の例は、ナビゲーションプロセッサ108及びパルスモードの光源駆動回路116によって駆動され、パルス幅が400マイクロ秒(μs)でデューティサイクルが例えば18%であるナビゲーションセンサ102のフレームレートに同期する公称波長840nmのシングルモードVCSELを光源118として有する光学ポインティングデバイス100の実施形態の一例として、IEC規格の平均パルス列パワー基準だけを考慮している。光学ポインティングデバイス100のこの実施形態では、18%のデューティサイクルでパルス発信されるVCSEL光源118は、IEC規格のクラス1平均パルス列パワー分類を達成するために、ピーク光パワー出力3.9mWを有することが許される。この実施形態の場合、IEC規格のクラス1平均パルス列パワー分類によって制限されるようなVCSEL光源118のピーク光パワー出力は、CWモードで動作するVCSELを備えた従来の光学ポインティングデバイスよりも遥かに大きい。しかしながら、光学ポインティングデバイスを設計する場合、IEC規格に規定される単一パルスのエネルギー限界や周波数ファクタのような他のファクタによって、ピーク光パワーが制限されることもある。
【0025】
上記のレーザーパルス技術によれば、レーザー光源118の動作範囲が大幅に拡大され、それによって、開ループ電流駆動回路やレーザー選択規準に対する要件が大幅に緩和される。例えば、背景技術のセクションで述べたCWモードで動作する開ループレーザー駆動回路を備えた光学ポインティングデバイスのための並び替え及び箱入れ製造技術は、ナビゲーションセンサ102のフレームレートに同期してレーザー光源118にパルスを与える光学ポインティングデバイス100の実施形態には必要ない。
【0026】
図2は、種々のVCSELについて、光パワー出力値と駆動電流の関係をプロットしたグラフである。第1のVCSELは、202に示す閾電流と、204に示すSlope Efficiencyとを有する。第2のVCSELは、202に示す閾電流と、206に示すSolope Efficiencyとを有する。第3のVCSELは、208に示す閾電流と、210に示すSlope Efficiencyとを有する。第4のVCSELは、208に示す閾電流と、212に示すSlope Efficiencyとを有する。
【0027】
ナビゲーションに必要とされる最小光パワーは、214に示されている。CWモードの目に安全な光パワー限界は、216に示されている。パルスモードの目に安全な光パワー限界は、218に示されている。
【0028】
図2に示す実施形態において、CWモードで動作するVCSELは、220に示されている低電流限界と222に示されている高電流限界の間の電流動作範囲を有し、216に示されているCWモードの目に安全な光パワー限界と、214で示されているナビゲーションに必要とされる最小光パワーとの両方を達成する。分かり易くするために、閾電流202が1つであるものと仮定すれば、この例のCWモード動作には、202に示す閾電流及び204に示すSlope Efficiencyを有する第1のVCSELと、202に示す閾電流及び206に示すSlope Efficiencyを有する第2のVCSELとによって画定される範囲内のSlope Efficiencyを有するVCSELを使用することができる。ナビゲーションに必要とされる最小光パワーに適合するであろう閾電流とSlope Efficiencyの組み合わせは他にもある。208に示す閾電流及び210に示すSlope Efficiencyを有する第3のVCSELと、208に示す閾電流及び212に示すSlope Efficiencyを有する第4のVCSELは、同じレーザー駆動回路を使用した場合、214に示すナビゲーションに必要とされる最小光パワーを達成しないであろう。
【0029】
図2に示す実施形態において、ナビゲーションセンサのフレームレートに同期してパルス発信されるVCSEL光源は、218に示すパルスモードの目に安全な光パワー限界を有する場合がある。従って、220に示す低電流限界と、224に示す高電流限界との間にある許容パルスモード電流動作範囲は大幅に広がる。電流動作範囲を広げれば、図2にプロットされた4つのVCSEL全てによって画定される範囲内の閾電流及びSlope Efficiencyを有するVCSELは全て、この例のパルスモード動作に使用することが可能である。
【0030】
一実施形態において、ナビゲーションプロセッサ108は、自己較正プロセスを実施し、光源駆動回路116から光源118(例えば、VCSELのようなレーザー)へ供給すべき駆動電流の適切なレベルを決定する。一実施形態において、この自己較正プロセスは、ナビゲーションプロセッサ108のメモリ111に記憶されたソフトウェアによって制御される。
【0031】
自己較正プロセスの一実施形態において、ナビゲーションプロセッサ108は、光源118に必要な駆動電流を表わすデジタル値を光源駆動回路116のデジタルアナログコンバータ(DAC)126に供給する。DAC126は、そのデジタル値を光源駆動回路116から光源118へ供給されるアナログ駆動電流に変換する。自己較正プロセスの一実施形態では、光学ポインティングデバイス100をリセット(例えば、コンピュータシステムの電源投入やリブート)した後、初期自己較正プロセスは、駆動電流値のうちの1つによって、フォトディテクタアレイ114からナビゲーション面124に反射された光から適当な画像が生成されるまで、全ての使用可能な駆動電流値を循環使用する。一実施形態において、初期自己較正プロセスは、駆動電流値のうちの1つによって適当な画像が生成されるまで、可能な最小駆動電流値から可能な最大駆動電流値まで、全ての駆動電流値を循環使用する。一実施形態において、初期自己較正プロセスは、駆動電流値のうちの1つによって適当な画像が生成されるまで、可能な最大駆動電流値から可能な最小駆動電流値まで、全ての駆動電流値を循環使用する。一実施形態において、可能な最小駆動電流値から可能な最大駆動電流値までの適当な範囲は、約2ミリアンペア〜約11ミリアンペアである。ただし、他の実施形態は、種々の適当な使用可能な駆動電流値を有する場合もある。
【0032】
一実施形態において、初期自己較正プロセスは、リセットの後、レーザーの電流閾値よりも大きい駆動電流を推定する。ただし、ナビゲーション面124が非常に暗い場合、駆動電流の推定値は、所望のものより高くしなければならないことや、低くしなければならないこともある。従って、一実施形態において、ナビゲーションプロセッサ108は、再較正プロセスを更に実施する場合がある。一実施形態において、光学ポインティングデバイスのユーザの混乱を避けるために選択された、光学ポインティングデバイスが長い時間休止される適当な時間の後、この再較正プロセスは開始される。一実施形態において、この再較正プロセスは、約10分又は他の時間のような適当な長い時間だけ光学ポインティングデバイス100が休止された後、ナビゲーションプロセッサ108によって実施される。
【0033】
ナビゲーションプロセッサ108によって実施される再較正プロセスの一実施形態は初期自己較正プロセスに類似したものであり、駆動電流値によって、ナビゲーション面124からフォトディテクタアレイ114に反射される光から適当な画像が生成されるまで、範囲内の使用可能な駆動電流値が循環使用される。一実施形態において、再較正プロセスは、範囲内の使用可能な駆動電流値を循環使用し、適当な画像を生成する駆動電流値がなければ、再較正プロセスは終了し、駆動電流値は、再較正プロセスの開始時に取得された以前の値に設定される。
【0034】
一実施形態において、ナビゲーションプロセッサ108は、光源駆動回路116から光源118へ供給される駆動電流の動作モード調節を更に実施する。この動作モード調節は、光源駆動回路116が光源118に駆動電流を供給し、ナビゲーション面124からフォトディテクタアレイ114へ反射される光から画像が生成されるときに、その駆動電流によってナビゲーションセンサ102が事実上飽和する場合に、駆動電流を減少させるものである。この動作モード調節の一実施形態では、自動露光制御が最小に設定され、フォトディテクタアレイ114のピクセルがADC112の出力を最大にする画像を生成し、ADC112からナビゲーションプロセッサ108へ渡されるデジタル画像が、ピクセルで飽和するような場合に、駆動電流をステップ電流値だけ減少させる。
【0035】
ナビゲーションプロセッサ108によって実施される初期自己較正プロセスの一実施形態が、図3の300に示されている。302において、コンピュータの起動、コンピュータのリブート、バッテリ駆動型光学ポインティングデバイスへの電池の取り付け、及び、他のリセット条件のようなリセット条件がナビゲーションセンサIC102において発生したときに、この初期自己較正プロセスは開始される。302でリセット条件が検出された後、304において、光源駆動回路118は駆動電流を最小電流値に設定する。
【0036】
306において、最小電流値を使用してデジタル画像を取得する。最小電流値は、ナビゲーション面124からフォトディテクタアレイ114へ反射される光122を生成する。上記のように、フォトディテクタアレイ114は、対応するフォトディテクタに入射する光の強度に基づいて大きさの変化する信号をADC112に供給する。ADC112は、それらの信号をナビゲーションプロセッサ108に渡されるデジタル画像を表わすデジタル値に変換する。
【0037】
308において、ナビゲーションプロセッサ108は、ADC112から渡されたデジタル画像が良い画像であるか否かを判定する。一実施形態において、この判定は、メモリ111に記憶された画像アレイ中のピクセルから導出される、画質に関する2つの測定値に基づいて行われる。
【0038】
一実施形態において、画質の第1の測定値は、ナビゲーション適合度測定値と呼ばれる。ナビゲーション適合度は、画像中に見られる多数の特徴に関連する。ナビゲーション適合度は、適当なハイパスフィルタを画像に適用することによって判定することができる。適当なハイパスフィルタの一例としては、ラプラシアンフィルタがある。ハイパスフィルタの出力がナビゲーション適合度閾値を超える画像アレイ中のピクセル数は、ナビゲーションのための表面品質の指標(ナビゲーション適合度)となる。光学ポインティングデバイス100(例えば、光学マウス)が持ち上げられているとき、ナビゲーション適合度測定値は通常、0又は非常に小さい数になる。なぜなら、光学ポインティングデバイス100の下方にあるナビゲーション面124の画像の焦点が外れるからである。
【0039】
光学ポインティングデバイス100を持ち上げているときは通常、光源駆動回路116から光源118へ供給される駆動電流を設定することができない。なぜなら、得られる画像が通常、ナビゲーションのためには暗すぎたり、周囲光の影響を受けたりするからである。従って、一実施形態において、ナビゲーションプロセッサ108は、ナビゲーション適合度測定値をナビゲーション適合度閾値と比較し、光学ポインティングデバイス100が表面上又は表面に非常に近い位置にあるか否かを判定する。この実施形態では、ナビゲーション適合度測定値がナビゲーション適合度閾値よりも小さい場合、その画像は悪い画像であるものとして判定される。
【0040】
また、ナビゲーション適合度測定値は、ノイズにより大きくなることもある。なぜなら、ノイズは非常に高い周波数成分を有するからである。従って、一実施形態において、308において使用される画質の第2の測定値には、取得画像における測定最大ピクセル値を使用する場合がある。一実施形態において、取得画像における測定最大ピクセル値が最大ピクセル閾値未満である場合、取得画像は悪い画像であるものと判定される。
【0041】
一実施形態において、取得画像のナビゲーション適合度測定値がナビゲーション適合度閾値未満であるか、又は、取得画像の測定最大ピクセル値が最大ピクセル閾値未満である場合、308においてその取得画像は悪い画像であるものと判定され、初期自己較正プロセス300は310へ進む。310では、駆動電流値をステップ電流値だけ増やす。適当なステップ電流値の一例は、0.3475ミリアンペアである。ただし、他の実施形態は、種々の適当なステップ電流値を有する。312において、増加後の駆動電流値が最大電流値よりも大きい場合、プロセス300は304へ戻り、駆動電流は最小電流値に設定され、プロセス300は306へ進み、その最小電流値を使用して画像を得る。312において、駆動電流値が最大電流値以下である場合、プロセス300は306へ進み、増加後の駆動電流を使用して画像を得る。
【0042】
308において、取得画像の測定ナビゲーション適合度が、ナビゲーション適合度閾値未満でない場合や、取得画像の測定最大ピクセル値が最大ピクセル値未満でない場合、取得画像は良い画像であるものと判定され、プロセス300は314へ進む。
【0043】
他の実施形態の308では、デジタル画像の測定最大ピクセル値の代わりに、又はそれに加えて、デジタル画像の測定平均ピクセル値、デジタル画像の測定最小ピクセル値、及び/又は、デジタル画像の測定ピクセル比値のような他のピクセル統計値を使用して画質を測定し、取得画像が良い画像であるか否かを判定する場合がある。
【0044】
314において、ナビゲーションプロセッサ108は、良い画像が第1の良い画像であるか否かを判定する。画像が第1の良い画像であれば、316において、光源118の閾電流が直ぐにクリアされることを回避するために、駆動電流値は、駆動電流値+電流パッド値に設定される。318において、ナビゲーションプロセッサ108は、316で設定された新たな駆動電流値が最大電流値よりも大きいか否かを判定する。駆動電流値が最大電流値よりも大きい場合、320において、駆動電流を最大電流値に設定し、プロセス300は306へ戻り、その最大電流値を使用して画像を取得する。駆動電流値が最大電流値以下である場合、プロセスは306へ戻り、パッド電流値を加えた駆動電流値を使用して、画像を取得する。
【0045】
314において、プロセッサ108が、良い画像が第1の良い画像ではないという判定をした場合、プロセスは322へ進み、そこで、ナビゲーションプロセッサ108は、良い画像が第Mの良い画像であるか否かを判定する。322において、良い画像が第Mの良い画像でない場合、プロセスは306へ戻り、その駆動電流を使用して画像を取得する。322において、良い画像が第Mの良い画像であった場合、プロセスは324へ進み、そこでナビゲーションプロセッサ108は、M個の良い画像を生成する、最小電流値から適当な高い電流値までのN回の駆動電流値設定の連続スウィープがあるか否かを判定する。最初の連続スウィープによってM個の良い画像が得られた後、N回のスウィープがカウントされる。324においてプロセス300がN回のスウィープを完了すると、プロセス300は終了する。プロセス300がN回のスウィープを終えていない場合、プロセス300は304へ戻る。
【0046】
初期自己較正プロセス300の上記の実施形態は、駆動電流値のうちの1つによって適当が画像が生成されるまで、可能な最小駆動電流値から可能な最大駆動電流値まで全ての駆動電流値を循環使用することにより、全ての使用可能な駆動電流値を循環使用する。初期自己較正プロセスの他の実施形態は、駆動電流値のうちの1つによって適当な画像が生成されるまで、可能な最大駆動電流値から可能な最小駆動電流値まで全ての使用可能な駆動電流値を循環使用するといったように、全ての使用可能な駆動電流値を別の方法で循環使用する場合がある。
【0047】
ナビゲーションプロセッサ108によって実施される完全な再較正プロセスの一実施形態が、図の400に概略的に示されている。402において、完全な再較正プロセスは、光学ポインティングデバイス100が長い時間休止された適当な時間の後に、開始される。この長い時間は、光学ポインティングデバイスのユーザの混乱を避けるために選択される。一実施形態において、完全な再較正プロセス400は、約10分又は他の適当な時間のような長い時間だけ光学ポインティングデバイス100が休止された後、ナビゲーションプロセッサ108によって開始される。
【0048】
404において、適当な長い休止時間の後、駆動電流値は最小電流値に設定される。406において、ナビゲーションプロセッサ108は、駆動電流値が最大電流値よりも大きいか否かを判定する。プロセス400中の第1パスでは、404において駆動電流値が最小電流値に設定され、その結果、駆動電流値は最大電流値以下になり、プロセス400は408へ進む。
【0049】
408では、最小電流値を使用してデジタル画像を取得する。最小電流値は、ナビゲーション面124からフォトディテクタアレイ114へ反射される光122を生成する。上記のように、フォトディテクタアレイ114は、対応するフォトディテクタに入射する光の強度に基づいて大きさの変化する信号をADC112に供給する。ADC112は、それらの信号を、ナビゲーションプロセッサ108へ供給される画像を表わすデジタル値に変換する。
【0050】
410において、ナビゲーションプロセッサ108は、ADC112から渡されたデジタル画像が良い画像であるか否かを判定する。一実施形態では、初期較正プロセス300と同様に、この画質判定は、ナビゲーション適合度測定値、及び、最大ピクセル値測定値に基づいて行われ、それらは両方とも、メモリ111に記憶された画像アレイ中のピクセルから導出される。
【0051】
一実施形態において、取得画像のナビゲーション適合度測定値がナビゲーション適合度閾値未満である場合や、取得画像の最大ピクセル値測定値が最大ピクセル閾値未満である場合、410においてその取得画像は悪い画像であるものと判定され、完全な再較正プロセス400は412へ進む。412では、駆動電流値をステップ電流値だけ増加させる。増加後の駆動電流値が最大電流体よりも大きい場合、プロセス400は414へ進む。414において、完全な再較正プロセス400は終了し、駆動電流は、プロセス400を開始したときに取得された以前の駆動電流値に設定される。406において、駆動電流値が最大電流値以下であった場合、プロセス400は408へ進み、増加後の駆動電流を使用して画像を得る。
【0052】
410において、取得画像の測定ナビゲーション適合度がナビゲーション適合度閾値未満でない場合や、取得画像の測定最大ピクセル値が最大ピクセル値未満でない場合、その取得画像はよい画像であるものと判定され、プロセス400は416へ進む。
【0053】
他の実施形態の410では、デジタル画像の測定最大ピクセル値の代わりに、又はそれに加えて、デジタル画像の測定平均ピクセル値、デジタル画像の測定最大ピクセル値、及び/又は、デジタル画像の測定ピクセル比値といった、他のピクセル統計値を使用して画質を測定し、取得画像が良い画像であるか否かを判定する場合がある。
【0054】
416において、ナビゲーションプロセッサ108は、良い画像が第1の良い画像であるか否かを判定する。画像が第1の良い画像であった場合、418において、光源118の閾電流が直ぐにクリアされるのを回避するために、駆動電流値は、駆動電流値+電流パッド値に設定される。406において、ナビゲーションプロセッサ108は、418で設定された新たな駆動電流値が、最大電流値よりも大きいか否かを判定する。駆動電流値が最大駆動電流値よりも大きい場合、完全な再較正プロセス400は414へ進み、そこでプロセス400は終了し、駆動電流は、プロセス400を開始したときに取得された以前の駆動電流値に設定される。駆動電流値が最大電流値以下であった場合、プロセス400は408へ戻り、電流パッド値を加えた駆動電流値を使用して画像を取得する。
【0055】
416において、ナビゲーションプロセッサ108が、良い画像が第1の良い画像ではないという判定をした場合、プロセス400は420へ進み、そこでナビゲーションプロセッサ108は、良い画像が第Mの良い画像であるか否かを判定する。420において、良い画像が第Mの良い画像ではなかった場合、プロセス400は406へ戻り、そこでナビゲーションプロセッサ108は、駆動電流値が最大電流値よりも大きいか否かを判定する。駆動電流値が最大電流値よりも大きい場合、プロセス400は414へ進み、そこでプロセス400は終了し、駆動電流は、プロセス400が開始されたときに取得された以前の駆動電流値に設定される。駆動電流値が最大電流値以下であった場合、プロセス400は408へ戻り、その駆動電流を使用して画像を取得する。420において、良い画像が第Mの良い画像であった場合、完全な再較正プロセスは終了する。
【0056】
完全な再較正プロセス400の上記の実施形態において、再較正は、長い休止期間に入るときにそれぞれ一回しか行われない。この実施形態では、完全な再較正プロセスは、光学ポインティングデバイスが再駆動され、次の長い休止期間に入るときに実施することができる。プロセス400が完全な再較正プロセスである理由は、プロセス400は、最小電流値から適当な最大電流値まで循環使用することにより、全ての使用可能な駆動電流値を循環使用し、M個の連続した良い画像を生成するからである。完全な再較正プロセスの他の実施形態は、最大電流値から適当な最小電流値まで全ての使用可能な駆動電流値を循環使用するといったように、他の方法で全ての使用可能な駆動電流値を使用し、M個の連続した良い画像を生成する場合がある。
【0057】
ナビゲーションプロセッサ108によって実施される部分的な再較正プロセスの一実施形態が、図5の500に概略的に示されている。502において、完全な再較正プロセスは、光学ポインティングデバイス100が短い時間休止している適当な時間の後、開始される。この短い時間は、完全な再較正プロセス400を開始するための閾値として使用される長い休止時間に比べて非常に短くなるように選択される。一実施形態において、部分的な再較正プロセス500は、10秒又は他の適当な時間のような適当な短い時間だけ光学ポインティングデバイス100が休止した後、ナビゲーションプロセッサ108によって開始される。
【0058】
504において、適当な短い休止時間の後、駆動電流値は、[駆動電流−P×ステップ電流値]に設定される。506において、ナビゲーションプロセッサ108は、駆動電流値が[以前の電流値+(P−Q)×ステップ電流値]よりも大きいか否かを判定する。ここで、この以前の駆動電流値は、プロセス500が開始されたときに取得されたものである。一実施形態において、PはQよりも大きい。プロセス500中の第1パスでは、504において、駆動電流値が[駆動電流−P×ステップ電流値]に設定され、その結果、駆動電流値は、[以前の電流値+(P−Q)×ステップ電流値]以下になり、プロセス500は508へ進む。
【0059】
508では、[駆動電流−P×ステップ電流値]を使用してデジタル画像を取得する。この電流値は、ナビゲーション面124からフォトディテクタアレイ114へ反射される光122を生成する。上記のように、フォトディテクタアレイ114は、対応するフォトディテクタに入射する光の強度に基づいて大きさの変化する信号をADC112に供給する。ADC112は、それらの信号をナビゲーションプロセッサ108に供給されるデジタル画像を表わすデジタル値に変換する。
【0060】
510において、ナビゲーションプロセッサ108は、ADC112から供給されたデジタル画像が良い画像であるか否かを判定する。一実施形態では、初期自己較正プロセス300と同様に、この画質判定は、ナビゲーション適合度測定値、及び、最大ピクセル値測定値に基づいて行われ、それらの値はいずれも、メモリ111内の画像アレイ中の画素から導出される。
【0061】
一実施形態において、取得画像のナビゲーション適合度測定値がナビゲーション適合度閾値未満である場合や、取得画像の最大ピクセル値が最大ピクセル閾値未満である場合、510においてその取得画像は悪い画像であるものと判定され、部分的な再較正プロセス500は512へ進む。512では、駆動電流をステップ電流値だけ増加させる。506において、増加後の駆動電流値が[以前の電流値+(P−Q)×ステップ電流値]よりも大きい場合、プロセス500は514へ進む。514において、部分的な再較正プロセス500は終了し、駆動電流は、プロセス500を開始したときに取得された以前の駆動電流値に設定される。506において、駆動電流値が[以前の電流値+(P−Q)×ステップ電流値]以下であった場合、プロセス500は508へ進み、その増加後の駆動電流を使用して画像を取得する。
【0062】
510において、取得画像の測定ナビゲーション適合度がナビゲーション適合度閾値未満でない場合や、取得画像の測定最大ピクセル値が最大ピクセル値未満でない場合、取得画像は良い画像として判定され、プロセス500は516へ進む。
【0063】
他の実施形態の510では、デジタル画像の測定最大ピクセル値の代わりに、又はそれに加えて、デジタル画像の測定平均ピクセル値、デジタル画像の測定最小ピクセル値、及び/又は、デジタル画像の測定ピクセル比値のような他のピクセル統計値を使用して画質を測定し、取得画像が良い画像であるか否かを判定する場合がある。
【0064】
516において、ナビゲーションプロセッサ108は、良い画像が第1の良い画像であるか否かを判定する。画像が良い画像である場合、518において、光源118の閾電流が直ぐにクリアされるのを回避するために、駆動電流値は、駆動電流値+電流パッド値に設定される。506において、ナビゲーションプロセッサ108は、518で設定された新たな駆動電流値が、[以前の電流値+(P−Q)×ステップ電流値]よりも大きいか否かを判定する。駆動電流値が[以前の電流値+(P−Q)×ステップ電流値]よりも大きい場合、部分的な再較正プロセス500は514へ進み、そこでプロセス500は終了し、駆動電流は、プロセス500が開始されたときに取得された以前の駆動電流値に設定される。駆動電流値が[以前の電流値+(P−Q)×ステップ電流値]以下であった場合、プロセス500は508へ戻り、パッド電流値が加算された駆動電流値を使用して、画像を取得する。
【0065】
516において、ナビゲーションプロセッサ108が、良い画像が第1の良い画像であるという判定をした場合、プロセス500は520へ進み、そこで、ナビゲーションプロセッサ108は、その良い画像が第Mの良い画像であるか否かを判定する。520において、良い画像が第Mの良い画像ではなかった場合、プロセス500は506へ戻り、そこでナビゲーションプロセッサ108は、駆動電流値が[以前の電流値+(P−Q)×ステップ電流値]よりも大きいか否かを判定する。駆動電流値が[以前の電流値+(P−Q)×ステップ電流値]よりも大きい場合、プロセス500は514へ進み、そこでプロセス500は終了し、駆動電流は、プロセス500が開始されたときに取得された駆動電流値に設定される。駆動電流値が[以前の電流値+(P−Q)×ステップ電流値]以下であった場合、プロセス500は508へ戻り、その駆動電流を使用して画像を取得する。520において、良い画像が第Mの良い画像であった場合、部分的な再較正プロセス500は終了する。
【0066】
部分的な再較正プロセス500の上記の実施形態において、部分的な再較正プロセスは、短い休止時間に入るたびに一回だけしか実施されない。この実施形態では、部分的な再較正プロセス500は、光学ポインティングデバイス100が再駆動され、次の短い休止期間に入った後、開始することができる。再較正プロセス500は、非常に短い休止時間の後に開始される。この休止時間は、完全な再較正プロセス400を開始するための閾値として使用される長い休止時間に比べて非常に短い(例えば、短い休止時間の一例は10秒である)。ただし、部分的な再較正プロセス500は、使用可能な駆動電流値として、[(以前の駆動電流−P×ステップ電流値)+電流パッド値]から[(以前の電流値+(P−Q)×ステップ電流値)+電流パッド値]までの駆動電流値しか考慮しない。例えば、Pが5で、Qが2で、電流パッド値がステップ電流値に等しい実施形態の場合、良い画像を得るために9個の駆動電流値(すなわち、以前の駆動電流−4ステップ、以前の駆動電流−3ステップ、以前の駆動電流−2ステップ、以前の駆動電流−1ステップ、以前の駆動電流、以前の駆動電流+1ステップ、以前の駆動電流+2ステップ、以前の駆動電流+3ステップ、及び、以前の駆動電流+4ステップ)を考慮する場合がある。
【0067】
上記の初期自己較正プロセス300、完全な再較正プロセス400、及び、部分的な再較正プロセス500、並びに、適当な自己較正プロセスの他の実施形態は、プログラム可能な不揮発性メモリを使用しなくても、また、光学ポインティングデバイス100の製造時に較正を行わなくても、実施することが可能である。また、これらの較正の実施形態は、光学ポインティングデバイスが使用されるどのような面においても繰り返すことができる。再較正プロセスの実施形態は、光学ポインティングデバイスの光源に加わる動作温度の影響を軽減する。また、上記の実施形態は全て、製造プロセスが単純化されているため、光学ポインティングデバイスの製造コストや製造時間を減らすことができる。
【0068】
上記の実施形態において、自己較正プロセス300、完全な再較正プロセス400、部分的な再較正プロセス500、光源パルスモード動作の制御、及び、駆動電流の動作モード調節は、光学ポインティングデバイス100のナビゲーションプロセッサ108によって実施される。他の実施形態では、駆動電流制御機能を実施するナビゲーションプロセッサ108の他に、又はそれに加えて、ナビゲーションセンサIC102の外にあるプロセッサが、駆動電流制御機能を実施する場合がある。光学ポインティングデバイス100によって実施されるこれらの電流制御機能及び他の機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、及び、それらの組み合わせのいずれによって実施してもよいことが、当業者には分かるであろう。実施形態は、マイクロプロセッサによるものでも、プログラマブルロジックデバイスによるものでも、ステートマシンによるものであってもよい。本発明の構成要素は、ソフトウェアとして1以上のコンピュータ読取可能媒体に入れてもよい。本明細書で使用されるようなコンピュータ読取可能媒体という用語は、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、CDROM、フラッシュメモリ、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)といった、任意の種類の揮発性又は不揮発性のメモリを含む。
【0069】
特定の実施形態について図示説明してきたが、本発明の範囲から外れることなく、図示説明したそれらの実施形態に代えて、種々の代替実施形態、及び/又は、等価実施形態を使用することも可能であることは、当業者には明らかであろう。本願は、本明細書で説明した特定の実施形態の任意の変形及び変更を含めることを意図している。従って、本発明は、特許請求の範囲及びその均等によってのみ制限されることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】一実施形態による光学ポインティングデバイスの主要構成要素を示すブロック図である。
【図2】種々のVCSELについて、光出力パワーと駆動電流の関係をプロットしたグラフである。
【図3】光学ポインティングデバイスの光源に駆動電流を供給するための初期較正プロセスの一実施形態を示すフロー図である。
【図4】光学ポインティングデバイスの光源に駆動電流を供給するための完全な再較正プロセスの一実施形態を示すフロー図である。
【図5】光学ポインティングデバイスの光源に駆動電流を供給するための部分的な再較正プロセスの一実施形態を示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動電流に応じて少なくとも一部コヒーレントな光を生成し、撮像面を照明することにより、反射画像を生成するように構成された光源と、
前記反射画像に基づいてデジタル画像を生成し、該デジタル画像に基づいて、前記撮像面と光学ポインティングデバイスとの間の相対移動を示す移動データを生成するように構成されたナビゲーションセンサと、
前記光源に駆動電流を供給するように構成された光源駆動回路と、
前記光源駆動回路を制御し、選択されたデジタル画像に基づいて前記駆動電流を較正するように構成された駆動電流コントローラと
からなる光学ポインティングデバイス。
【請求項2】
前記光源はレーザーからなる、請求項1に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項3】
前記光源は、面発光レーザー(VCSEL)からなる、請求項1に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項4】
前記光源は、広帯域の光を生成するように構成された広帯域光源と、前記広帯域の光をフィルタリングし、少なくとも一部コヒーレントな光を出力するように構成された狭帯域フィルタとからなる、請求項1に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項5】
前記ナビゲーションセンサは、或るフレームレートの前記デジタル画像のフレームを取得し、前記フレームレートに同期したデューティサイクルの前記駆動電流のパルスを出力するように構成される、請求項1に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項6】
前記ナビゲーションセンサは、前記反射画像に基づいて生成されたデジタル画像がナビゲーションセンサを飽和させる場合に、動作モードにおける前記駆動電流を減らすように構成される、請求項1に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項7】
前記ナビゲーションセンサは、該ナビゲーションセンサにおいてリセット条件が発生した後、前記駆動電流を較正するように構成される、請求項1に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項8】
前記ナビゲーションセンサは、駆動電流値のうちの1つによって前記反射画像に基づいて適当な質のデジタル画像が生成されるまで、使用可能な駆動電流値を循環使用するように構成される、請求項7に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項9】
前記ナビゲーションセンサは、前記デジタル画像、前記デジタル画像の測定平均ピクセル値、前記デジタル画像の測定最小ピクセル値、前記デジタル画像の測定ピクセル比値、及び、前記デジタル画像の測定最大ピクセル値から導出されたナビゲーション適合度測定値のうちの少なくとも1つに基づいて、前記デジタル画像が適当な質のデジタル画像であるか否かを判定するように構成される、請求項8に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項10】
前記ナビゲーションセンサは、前記光学ポインティングデバイスが休止している選択された休止時間の後、前記駆動電流を較正するように構成される、請求項1に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項11】
前記選択された休止時間は、前記光学ポインティングデバイスのユーザの混乱を回避するように選択される、請求項10に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項12】
前記ナビゲーションセンサは、前記駆動電流値のうちの1つによって前記反射画像に基づいて適当な質のデジタル画像が生成されるまで、使用可能な駆動電流値を1回だけ循環使用するように構成される、請求項10に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項13】
前記ナビゲーションセンサは、前記反射画像に基づいて適当な質のデジタル画像を生成する使用可能な駆動電流値が存在しない場合、選択された休止時間の後、前記駆動電流値を前記較正が開始されたときに取得された以前の駆動電流値に設定するように構成される、請求項12に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項14】
前記ナビゲーションセンサは、前記デジタル画像、前記デジタル画像の測定平均ピクセル値、前記デジタル画像の測定最小ピクセル値、前記デジタル画像の測定ピクセル比値、及び、前記デジタル画像の測定最大ピクセル値から導出されたナビゲーション適合度測定値のうちの少なくとも1つに基づいて、前記デジタル画像が適当な質のデジタル画像であるか否かを判定するように構成される、請求項12に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項15】
前記ナビゲーションセンサは、駆動電流値のうちの1つによって前記反射画像に基づいて適当な質のデジタル画像が生成されるまで、選択された数の駆動電流値を循環使用するように構成され、前記選択された数は前記使用可能な駆動電流値全部の数よりも小さい数である、請求項10に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項16】
前記ナビゲーションセンサは、前記反射画像に基づいて適当な質のデジタル画像を生成する使用可能な駆動電流値が前記選択された数の駆動電流値の中に存在しない場合、選択された休止時間の後、前記駆動電流値を前記較正が開始されたときに取得された以前の駆動電流値に設定するように構成される、請求項15に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項17】
前記ナビゲーションセンサは、前記デジタル画像、前記デジタル画像の測定平均ピクセル値、前記デジタル画像の測定最小ピクセル値、前記デジタル画像の測定ピクセル比値、及び、前記デジタル画像の測定最大ピクセル値から導出されたナビゲーション適合度測定値のうちの少なくとも1つに基づいて、前記デジタル画像が適当な質のデジタル画像であるか否かを判定するように構成される、請求項15に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項18】
前記ナビゲーションセンサは、前記光源駆動回路及び前記駆動電流コントローラのうちの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項19】
前記光源駆動回路及び前記駆動電流コントローラのうちの少なくとも一方は、前記ナビゲーションセンサの外に配置される、請求項1に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項20】
光学ポインティングデバイスを動作させる方法であって、
光源に駆動電流を供給するステップと、
前記駆動電流に応じた前記光源からの少なくとも一部コヒーレントな光で撮像面を照明することにより反射画像を生成するステップと、
前記反射画像に基づいてデジタル画像を生成するステップと、
前記デジタル画像に基づいて移動データを生成するステップと、
選択されたデジタル画像に基づいて前記駆動電流を較正するステップと
からなる方法。
【請求項21】
スクリーンポインタの位置を制御するための移動データを生成するナビゲーションセンサであって、
駆動電流を生成するように構成された光源駆動回路と、
前記駆動電流に応じた少なくとも一部コヒーレントな光によって生成される撮像面からの反射画像を検出ように構成されたセンサアレイと、
前記センサアレイの出力に基づいてデジタル画像を生成するように構成されたアナログデジタルコンバータと、
前記デジタル画像に基づいて移動データを生成し、前記光源駆動回路に所望の駆動電流値を供給し、選択されたデジタル画像に基づいて前記駆動電流を較正するように構成されたプロセッサと
からなるナビゲーションセンサ。
【請求項22】
前記プロセッサは、或るフレームレートの前記デジタル画像のフレームを取得し、前記光源駆動回路を制御して、前記フレームレートに同期したデューティサイクルの駆動電流のパルスを出力させるように構成される、請求項21に記載のナビゲーションセンサ。
【請求項23】
駆動電流に応じて少なくとも一部コヒーレントな光を生成し、撮像面を照明することにより反射画像を生成するように構成された光源と、
前記反射画像に基づいてデジタル画像を生成し、或るフレームレートの前記デジタル画像のフレームを取得し、前記デジタル画像に基づいて、前記撮像面と光学ポインティングデバイスとの間の相対移動を示す移動データを生成するように構成されたナビゲーションセンサと、
前記光源に駆動電流を供給するように構成された光源駆動回路と、
前記光源駆動回路を制御し、前記フレームレートに同期したデューティサイクルの駆動電流のパルスを出力させるように構成された駆動電流コントローラと
からなる光学ポインティングデバイス。
【請求項24】
前記ナビゲーションセンサは、前記光源駆動回路及び前記駆動電流コントローラのうちの少なくとも一方を含む、請求項23に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項25】
前記光源駆動回路及び前記駆動電流コントローラのうちの少なくとも一方は、前記ナビゲーションセンサの外部に配置される、請求項23に記載の光学ポインティングデバイス。
【請求項26】
スクリーンポインタの位置を制御するための移動データを生成するナビゲーションセンサであって、
駆動電流を生成するように構成された光源駆動回路と、
前記駆動電流に応じた少なくとも一部コヒーレントな光によって生成される撮像面からの反射画像を検出するように構成されたセンサアレイと、
前記センサアレイの出力に基づいてデジタル画像を表わすデジタル値を生成するように構成されたアナログデジタルコンバータと、
或るフレームレートの前記デジタル値のフレームを取得し、取得したフレームに基づいて移動データを生成し、前記光源駆動回路を制御して、前記フレームレートに同期したデューティサイクルの駆動電流のパルスを出力させるように構成されたプロセッサと
からなるナビゲーションセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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