説明

光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーン

【課題】光干渉性繊維の濃色性、深色性の改善され、光干渉による発色効果を一段と際立たせることができる光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンを提供する。
【解決手段】屈折率の異なる少なくとも2種の重合体が偏平断面の長軸方向と並行に積層してなる偏平状の光干渉性フィラメントで構成されており、該光干渉性フィラメントの表面に微細孔を有している光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーン。前記2種の重合体は、ポリエステルおよびナイロンであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率の異なる少なくとも2種の重合体を、偏平断面の長軸方向と並行に交互に積層してなる、偏平状の光干渉性フィラメントから構成される、発色性の改善された光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自然光の反射、干渉作用によって可視光線領域の波長の色を発色する多層薄膜構造を有するフィラメントとしては、例えば、フィラメント基材の上に透明金属化合物を薄膜蒸着させた構造のもの、屈折率の異なる2種の透明性重合体を交互に積層した薄膜多層状構造のものが知られている。
【0003】
前者については、薄膜蒸着の生産技術が確立されており、既にそのような薄膜蒸着フィラメントが実用に供されている。しかし、このフィラメントは、それから布帛や製品を作る工程で受ける摩擦や、製品使用の経日的変化によって蒸着膜が剥離するという問題がある。
【0004】
一方、後者については、フィラメントそのものが光干渉性を有するので、使用上の耐剥離性は蒸着構造のものに比べて格段に優れている。また、かかるマルチフィラメントヤーンは、例えば、特許文献1などに開示されている。
【0005】
しかしながら、上記マルチフィラメントヤーンは、ポリエステルとポリアミドを中心に構成されており、互いの屈折率差が小さいため布帛にした際に充分な発色が得られないことがあり、さらなる濃色化、深色化が期待されている。
【特許文献1】特開平11−124748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、光干渉性繊維の濃色性、深色性の改善され、光干渉による発色効果を一段と際立たせることができる光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者の研究によれば、上記課題は、屈折率の異なる少なくとも2種の重合体が偏平断面の長軸方向と並行に積層してなる、偏平状の光干渉性フィラメントで構成されたマルチフィラメントヤーンであって、該光干渉性フィラメントの表面に微細孔を有することを特徴とする光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンにより達成できることが見出された。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、微細孔が表面に光干渉性フィラメントの表面に存在することにより、濃色性、深色性に極めて優れ、光干渉による発色効果を一段と際立たせるため、従来にない色調に優れた光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンを提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、詳細に本発明の光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンについて説明する。本発明の光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンは、屈折率の異なる少なくとも2種の重合体が偏平断面の長軸方向と並行に積層してなる偏平状の光干渉性フィラメントで構成された光干渉性を有するマルチフィラメントヤーンである。
【0010】
図1は、本発明の光干渉性フィラメントの断面形態を模式的に示した図である。該図から明らかなように、光干渉性フィラメントの断面は偏平状であり、かつ、2種の重合体が偏平断面の長軸方向と並列に積層されており、これによって光干渉に有効な、広い面積を構成している。
【0011】
本発明の光干渉性フィラメントを構成する2種の重合体は、屈折率に差がある組み合わせとする必要がある。一般に重合体の屈折率は1.30〜1.82の範囲にあり、そのうち汎用重合体では1.35〜1.75の範囲にある。この中から高屈折率側の重合体成分の屈折率をnとし、低屈折率側の重合体成分の屈折率をnで表したとき、両重合体の屈折率の比n/nが1.1〜1.4の範囲となるものを選べばよい。具体的には、ポリエステルと、ナイロン、ポリオレフィンなどとの組合せがあげられる。
【0012】
本発明の光干渉性フィラメントにおいては、その偏平率は2.0〜15.0の範囲にあることが好ましく、2.5以上、さらには3.0以上と大きい方がより好ましい。ここで偏平率は、偏平断面の長軸の長さWと短軸の長さTとの比W/Tで表した値である。また、図2に示したように、偏平断面の外層部に保護層を形成しているときは、偏平率はその外層部も含めて算出する。偏平率の上限については、その値が15.0を越えると、過度に薄平な形状となるため、偏平断面を保ち難くなり、一部が断面内で折れ曲がる等の懸念も出てくる。この点から、扱いやすい偏平率は高々15.0であり、特に10.0以下が好ましい。
【0013】
光干渉性フィラメントにおける重合体の積層数は、光学干渉理論によれば、層の厚みが全て基準の厚さに等しいときには、高々10層もあれば得られる干渉光量は飽和状態に達し、それ以上層数を増やすことはフィラメント成形の工程を複雑困難にするだけとなってしまう。ところが、偏平率を2.0以上とすると、各積層単位の厚みにゆらぎが生じやすくなり、積層数を15以上にしないと、干渉光量が不十分な場合も生じる。よって、積層数は15以上が好ましい。さらに、偏平率を大きくすればするほど、積層数は多い方が好ましく、20層以上、25層以上がより好ましい。この積層数は多い方が前記厚みのゆらぎを補償して干渉性を高めることができるが、その製造技術の難しさ、特に紡糸口金の複雑さ、溶融ポリマー流れのコントロールの点から、扱いやすいのは120層までである。それを越えると、また積層の厚みのゆらぎ幅が広がり、積層を増しただけの効果を得にくくなる。
【0014】
本発明においては、上記の光干渉性フィラメントの繊維表面に微細孔が存在していることが肝要である。これにより、深色性、深色性に優れた光干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンとすることができる。
【0015】
上記の繊維表面に微細孔が存在する形態としては、図1に示す偏平断面においては表面層の少なくともどちらか一方に微細孔を有していても良いし、図2に示すように2種類の重合体が積層された積層部の外側に積層を包む保護層が存在し、その保護層の繊維表面に微細孔を有していてもよいが、特に、濃色性、深色性や力学特性の面からは後者の方が好ましい。
【0016】
この微細孔のサイズは、度数分布の最大値が、繊維軸に直角方向の幅が0.1〜0.5μm、繊維軸方向の長さが0.1〜5μmの範囲にあることが特に好ましい。このサイズとすることにより、光干渉発色の濃色化、深色化が極めて優れていることがわかった。
【0017】
上記の濃色性、深色性の具体的な指標として、マルチフィラメントのK/S値が20以上であることが望ましく、上記微細孔がフィラメントの表面に形成されていることにより、かかるK/S値を満足する光干渉性フィラメントを得ることができる。この光干渉性フィラメントは染色を施すことなく、光沢に色の付いた独特の上品な色合いを呈している。また、従来の光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンでは、このK/S値は高々15程度であった。なお、ここでいうK/S値とは、黒色板に40ターン/cmで巻き付けたものを分光反射測定し、波長400〜700nmの範囲における分光反射率のピーク反射率値Rから、下記のクベルカームンク(KubelkaMunk)の式から求めたものである。この値が大きいほど深色効果が大きいことを表す。
K/S=(1−R)2/2R
【0018】
本発明においては、光干渉性フィラメントの表面にポリエステルが配され、該ポリエステルが、テレフタル酸を主とするジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と少なくとも1種のグリコールとを反応せしめてジカルボン酸のグリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させる第1段階の反応及び該反応生成物を重縮合させる第2段階の反応とによって合成されたポリエステルであり、該ポリエステルの合成が完了するまでの任意の段階で、(a)ポリエステルを構成する酸成分に対して0.5〜3モル%の下記一般式、
【化1】

(式中、R及びRは一価の有機基であって、R及びRは同一でも異なっていてもよく、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であって、mはMがアルカリ金属の場合は1、Mがアルカリ土類金属の場合は1/2である)で表される含金属リン化合物及び、
(b)該含金属リン化合物に対して0.5〜1.2倍モルのアルカリ土類金属化合物を、(a)と(b)とを予め反応させることなく添加し、しかる後ポリエステルの合成を完了したポリエステルであり、さらに光干渉性フィラメントがアルカリ化合物の水溶液で処理され、その表面に微細孔が形成されていることが好ましい。
【0019】
なお、上記アルカリ化合物の水溶液による処理で減量する量は、マルチフィラメント全重量を基準として2重量%以上であることが好ましい。
【0020】
上記のポリエステルは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、少なくとも1種のグリコール、好ましくはエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールから選ばれた少なくとも1種のアルキレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。
【0021】
また、テレフタル酸成分の一部を他の二官能性カルボン酸成分で置換えたポリエステルであってもよく、及び/又はグリコール成分の一部を主成分以外の上記グリコール、若しくは他のジオール成分で置換えたポリエステルであってもよい。
【0022】
ここで使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフエニルジカルボン酸、ジフエノキシエタンジカルボン酸、β―ヒドロキシエトキシ安息香酸、p―オキシ安息香酸、5―ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4―シクロヘキサンジカルボン酸の如き芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸をあげることができる。また、上記グリコール以外のジオール化合物としては例えばシクロヘキサン―1,4―ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフエノールA、ビスフエノールSの如き脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物およびポリオキシアルキレングリコール等をあげることができる。
【0023】
かかるポリエステルは任意の方法によって合成したものでよい。例えばポリエチレンテレフタレートについて説明すれば、通常、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルの如きテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかしてテレフタル酸のグリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させる第1段階の反応と、第1段階の反応生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第2段階の反応によって製造される。
【0024】
本発明で使用する含金属リン化合物は下記一般式(1)で表わされるリン化合物であり、式中、R及びRは一価の有機基である。
【化2】

【0025】
この一価の有機基は具体的にはアルキル基、アリール基、アラルキル基又は下記一般式(2)で表される有機基等が好ましく、RとRとは同一でも異なっていてもよい。Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、Li,Na,K,Mg,Ca,Sr,Baが好ましく、特にCa,Sr,Baが好ましい。mはMがアルカリ金属のとき1であり、Mがアルカリ土類金属のとき1/2である。
【0026】
【化3】

(但し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基、lは2以上の整数、kは1以上の整数)
【0027】
上記含金属リン化合物に代えてR及び/又はRが金属(特にアルカリ金属、アルカリ土類金属)で置換えたリン化合物を使用したのでは、得られるポリエステル繊維に生成する微細孔が大きくなって、目的とする深色効果が得られにくくなる。
【0028】
上記含金属リン化合物を製造するには、通常対応する正リン酸エステル(モノ、ジ又はトリ)と所定量の対応する金属の化合物とを溶媒の存在下加熱反応させることによって容易に得られる。なお、この際溶媒として、対象ポリエステルの原料として使用するグリコールを使用するのが最も好ましい。
【0029】
上記含金属リン化合物と併用するアルカリ土類金属化合物としては、上記含金属リン化合物と反応してポリエステルに不溶性の塩を形成するものであれば特に制限はなく、アルカリ土類金属の酢酸塩、しゆう酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩、ステアリン酸塩のような有機カルボン酸塩、硼酸塩、硫酸塩、珪酸塩、炭酸塩、重炭酸塩の如き無機酸塩、塩化物のようなハロゲン化物、エチレンジアミン4酢酸錯塩のようなキレート化合物、水酸化物、酸化物、メチラート、エチラート、グリコレート等のアルコラート類、フエノラート等をあげることができる。特にエチレングリコールに可溶性である有機カルボン酸塩、ハロゲン化物、キレート化合物、アルコラートが好ましく、なかでも有機カルボン酸塩が特に好ましい。上記のアルカリ土類金属化合物は1種のみ単独で使用しても、また2種以上併用してもよい。
【0030】
含金属リン化合物の添加量はポリエステルを構成する酸成分に対して0.5〜3モル%の範囲であり、特に0.6〜2モル%の範囲が好ましい。また、含金属リン化合物に対するアルカリ土類金属化合物の添加量は、0.5〜1.2倍モルの範囲であり、特に0.5〜1.0倍モルの範囲が好ましい。
【0031】
上記含金属リン化合物とアルカリ土類金属化合物とは予め反応させることなくポリエステル反応系に添加する。こうすることによって、不溶性粒子をポリエステル中に均一な超微粒子状態で生成せしめることができるようになる。
【0032】
上記の含金属リン化合物及びアルカリ土類金属化合物の添加は、それぞれポリエステルの合成が完了するまでの任意の段階において、任意の順序で行なうことができる。しかし、含金属リン化合物のみを第1段階の反応が未終了の段階で添加したのでは、第1段階の反応の完結が阻害されることがあり、またアルカリ土類金属化合物のみを第1段階の反応終了前に添加すると、この反応がエステル化反応のときは、この反応中粗大粒子が発生したり、エステル交換反応のときは、その反応が異常に早く進行し突沸現象を引起すことがあるので、この場合、その20重量%程度以下にするのが好ましい。アルカリ土類金属化合物の少なくとも80重量%及び含金属リン化合物全量の添加時期は、ポリエステルの合成の第1段階の反応が実質的に終了した段階以降であることが好ましい。
【0033】
以上に説明した本発明の光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンは、以下の方法により製造することができる。すなわち、特開平11−124748号公報の図3に示されているような、2種の重合体を交互に積層した状態で矩形状の吐出孔から、偏平断面の長軸方向と平行に積層されるように吐出する。
【0034】
この際、フィラメントの表面に配される重合体を前述した含金属リン化合物及びアルカリ土類金属塩をポリエステルの合成において含有させたポリエステルを用いる。特に、図2のように2種類の重合体が積層された積層部の外側に積層を包む保護層を設け、該保護層に含金属リン化合物及びアルカリ土類金属塩をポリエステルの合成において含有させたポリエステルを用いることが特に好ましい。
【0035】
上記の吐出孔から溶融吐出された糸条は、500〜8000m/分で引取り、必要に応じて、延伸、熱処理を行い、伸度を15〜50%として巻き取ることにより製造することができる。上記で延伸は、未延伸糸を一旦巻き取り、別途延伸しても良いし、未延伸糸を巻き取らずに連続して延伸してもよい。
【0036】
なお、微細孔の繊維軸方向の幅、繊維長方向の長さを前述した範囲とするのは、紡糸の引取速度を好ましくは500〜3000m/分、より好ましくは500〜2000m/分とし、延伸倍率を好ましくは2〜5倍、より好ましくは2.5〜4.5倍とすることにより達成できる。
【0037】
得られたマルチフィラメントは、アルカリ化合物の水溶液で処理することによりフィラメントの表面に微細孔を形成することができる、ここでいう、アルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましい。また、アルカリ化合物の水溶液で溶解除去する量は2%以上が好ましく、5〜20重量%である。
【0038】
本発明の光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンは、その使用形態によって様々に異なる発色外観を呈し、それが故に、広汎な用途分野で用いることができる。例えば、地糸を濃色特に黒色フィラメントとし、本発明のマルチフィラメントヤーンを浮き糸として、ドビーやジヤカードで柄を表現した布帛は、日本古来の雅趣があり、和服、帯、帯留め、巾着袋、風呂敷、草履、ハンドバッグ、ネクタイ、緞帳等に適している。
【0039】
また、地糸を白として、本発明のマルチフィラメントヤーンでジャカード柄を織り込んだ薄手の布帛は、透け感があって、またジャカード柄が上品で優美なパール光沢に輝き、ウェディングドレス等のブライダルウェアー、パーティードレス、舞台衣装、ギフト用品の包装紙、リボン、テープ、カーテン等に適している。
【0040】
さらに、本発明のマルチフィラメントヤーン独特の金属光沢カラーを生かして、従来、光沢糸や蛍光糸が使用されてきたスポーツウェアーの分野で、一段と視認性に優れたウェアーを提供できる。例えば、スキーウェアー、テニスウェアー、水着、レオタード等であり、テントや日傘、リュックサック、靴特にスニーカー等のスポーツ用品にも適している。
【0041】
同様に、金属光沢カラーやパール調カラーによって人目を引く用途として、エンブレム、ワッペン、アートフラワー等の美術工芸品、刺繍、壁紙、人工毛髪、カーシート、パンティストッキング等がある。
【0042】
また、本発明のマルチフィラメントヤーンからなる布帛に、加熱エンボスロールや型アイロンを当てて熱処理すると、その型柄の部分だけが収縮して、干渉を示す交互積層の層厚みが異なり、地の部分とは違った色が発現するので、衣服にワンポイントマークや絵柄を付けることができる。
【0043】
さらに、本発明のマルチフィラメントヤーンは、用途に合わせ、例えば0.01mm〜10cmの範囲に切断して用いることもできる。そのカットしたフィラメントの偏平面を表として物品の表面に透明樹脂によって固定するのもよく、例えば自動車のドア表面にモルフォ蝶を形取って固定すると、太陽の光を受けてモルフォ蝶の如く、金属光沢をもって青く輝いて見える。また、0.01〜100mmにカットしたものを化粧品に混ぜて使用すると、これもまた太陽の光を受けて優美に輝いて見える。
【0044】
また、上記光輝材は、化粧品、特に、顔およびヒトの体の皮膚、唇ならびに爪、まつ毛または髪などの表層成長部のための化粧品(以下、化粧品組成物と称することがある)に含有させて用いることができる。
【0045】
光輝材は、化粧品組成物中に、該組成物の全量に対して0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは、0.3〜20重量%の範囲で含有させることができる。
【0046】
さらに具体的には、肌用の製品(ファンデーション)、頬またはアイシャドーのためのメイクアップ製品、リップ製品、コンシーラー、頬紅、マスカラ、アイライナー、まゆ毛のためのメイクアップ製品、リップまたはアイ・ペンシル、爪用製品、体用のメイクアップ製品、髪のためのメイクアップ製品(ヘア・マスカラまたはヘア・スプレー)などをあげることができる。これらの化粧品組成物は、ケラチン物質に付与するためのように使用することができるか、ケラチン物質の上に既に堆積しているメイクアップの上に、例えば、メイクアップを改質するために使用することができる(組成物を、通常トップ・コートと称されるトップ製品として付与する)。
【0047】
化粧品組成物は、付け爪、付けまつ毛、人工頭髪、かつら、皮膚または唇に付着しているパステルまたはパッチ(つけボクロタイプのもの)などのメイクアップ・アクセサリ(支持体)の上に付与することもできる。
この際、上記光輝材は、親水性媒体または親油性媒体に含有させ、化粧品組成物とすることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。
(1)偏平率
顕微鏡により長軸方向の長さ/短軸方向の長さ(の比)を求めた。
(2)積層数
顕微鏡により各層を直接観察して求めた。
(3)K/S値(深色性)
マルチフィラメントヤーンを5%濃度の水酸化ナトリウム水溶液で沸騰温度にて処理し、黒色板に40ターン/cmで巻き付けたものを、マクベス社製分光測色計Color−Eye3100にて分光反射測定し、波長400〜700nmの範囲における分光反射率のピーク反射率値Rから、下記クベルカ−ムンク(KubelkaMunk)の式により求めた。
K/S=(1−R)2/2R
(4)微細孔の形状
マルチフィラメントから任意に5本のフィラメントを選び、このフィラメントの表面の電子顕微鏡にて1000倍で微細孔を観察し、繊維軸と直角方向の幅が最大なものと、繊維軸方向の長さが最大なものにつき、それぞれ長さを測定した。
【0049】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル100部、エチレングリコール60部、酢酸カルシウム1水塩0.06部(テレフタル酸ジメチルに対して0.066モル%)をエステル交換缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下4時間かけて140℃から230℃まで昇温して生成するメタノールを系外に留去しながらエステル交換反応を行なつた。続いて得られた反応生成物に、0.5部のリン酸トリメチル(テレフタル酸ジメチルに対して0.693モル%)と0.31部の酢酸カルシウム1水塩(リン酸トリメチルに対して1/2倍モル)とを8.5部のエチレングリコール中で120℃の温度において全環流下60分間反応せしめて調製したリン酸ジエステルカルシウム塩の透明溶液9.31部に室温下0.57部の酢酸カルシウム1水塩(リン酸トリメチルに対して0.9倍モル)を溶解せしめて得たリン酸ジエステルカルシウム塩と酢酸カルシウムとの混合透明溶液9.88部を添加し、次いで三酸化アンチモン0.04部を添加して重合缶に移した。次いで1時間かけて760mmHgから1mmHgまで減圧し、同時に1時間30分かけて230℃から285℃まで昇温した。1mmHg以下の減圧下、重合温度285℃で更に3時間、合計4時間30分重合して固有粘度0.64、軟化点259℃の微細孔形成ポリエステルを得た。
【0050】
さらに、5−ナトリウムスルホイソフタル酸が0.9モル%共重合された固有粘度0.55のポリエチレンテレフタレート系ポリエステル(帝人ファイバー株式会社製)と、固有粘度1.20のナイロン6とが偏平断面の積層部分に配置され、該積層部を包む保護層部分に上記の微細孔形成ポリエステルが配置される3成分系複合溶融紡糸パック及び口金を用い、紡糸口金温度280℃、引取速度1000m/分で紡糸した。次いで延伸倍率3.4倍、延伸温度(供給ローラの表面温度)90℃、セット温度180℃(延伸ローラの表面温度)で延伸し巻き取った。得られたフィラメントの断面形態は偏平率3.5の偏平形状であり、重合体の交互積層数は30層であった。
【0051】
得られたマルチフィラメントヤーンを、5%濃度の水酸化ナトリウム水溶液で沸騰温度にて処理し、10%減量した。得られたマルチフィラメントには、幅の最大値が0.5μm、長さの最大値が5μmの微細孔が形成されていた。また、上記マルチフィラメントヤーンのK/S値は21であり、良好な濃色性、深色性を有していた。
【0052】
[比較例1]
保護層に、実施例1の積層部に用いたものと同じ5−ナトリウムスルホイソフタル酸が0.9モル%共重合された固有粘度0.55のポリエチレンテレフタレート系ポリエステルを配した以外は、実施例1と同様にした。得られたマルチフィラメントヤーンは光干渉機能を有していたが、フィラメント表面には微細孔はなくK/S値は15であり、実施例1のマルチフィラメント対比、濃色性、深色性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンは、新規な深色性を伴う光干渉性を有しているので、各種和装、洋装分野に展開できるだけでなく、スポーツ分野においては、一段と視認性に優れた製品を提供することができる。また、パウダー状に成形することにより化粧品や塗料などの用途に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明にかかる光干渉性フィラメントの横断面の一概略図である。
【図2】本発明にかかる非積層部を有する光干渉性フィラメントの横断面の一概略図である。
【符号の説明】
【0055】
A:積層部を構成する一方のポリマー層
B:Aとは屈折率の異なる積層部を構成する他方のポリマー層
C:保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率の異なる少なくとも2種の重合体が偏平断面の長軸方向と並行に積層してなる、偏平状の光干渉性フィラメントで構成されたマルチフィラメントヤーンであって、該光干渉性フィラメントの表面に微細孔を有することを特徴とする光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーン。
【請求項2】
微細孔の大きさの最大値が、繊維軸と直角方向の幅が0.1〜0.5μm、繊維軸方向の長さが0.1〜5μmである請求項1記載の光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーン。
【請求項3】
深色度K/S値が20以上である請求項1または2に記載の光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーン。
【請求項4】
屈折率の異なる2種の重合体がポリエステルおよびナイロンであり、光干渉性フィラメントの偏平率が2.0〜15.0、積層数が10〜120層である請求項1〜3いずれかに記載の光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーン。
【請求項5】
光干渉性フィラメントの表面にポリエステルが配され、該ポリエステルが、テレフタル酸を主とするジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と少なくとも1種のグリコールとを反応せしめてジカルボン酸のグリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させる第1段階の反応及び該反応生成物を重縮合させる第2段階の反応とによって合成されたポリエステルであり、該ポリエステルの合成が完了するまでの任意の段階で、(a)ポリエステルを構成する酸成分に対して0.5〜3モル%の下記一般式、
【化1】

(式中、R及びRは一価の有機基であって、R及びRは同一でも異なっていてもよく、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であって、mはMがアルカリ金属の場合は1、Mがアルカリ土類金属の場合は1/2である)で表される含金属リン化合物及び、
(b)該含金属リン化合物に対して0.5〜1.2倍モルのアルカリ土類金属化合物を、(a)と(b)とを予め反応させることなく添加し、しかる後ポリエステルの合成を完了したポリエステルであり、さらに光干渉性フィラメントがアルカリ化合物の水溶液で処理され、その表面に微細孔が形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーン。
【請求項6】
光干渉性フィラメントが、屈折率の異なる少なくとも2種の重合体が偏平断面の長軸方向と並行に積層されている積層部の外側に該積層部を包む保護層が存在し、該保護層の表面に微細孔を有する請求項1〜5のいずれかに記載の光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−163483(P2008−163483A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351760(P2006−351760)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】