説明

光学式エンコーダ用反射板、エンコーダ及び光学式エンコーダ用反射板の製造方法

【課題】検出精度の低下を防ぐことができる光学式エンコーダ用反射板、エンコーダ及び光学式エンコーダ用反射板の製造方法を提供すること。
【解決手段】基板と、当該基板の表面に形成され、光を反射する第一金属からなる光反射層と、当該光反射層の表面のうち所定領域を空けて形成され、光を吸収すると共に第一金属よりも標準電極電位の低い第二金属からなる光吸収層とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式エンコーダ用反射板、エンコーダ及び光学式エンコーダ用反射板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モーターの回転軸などを含む回転体の回転数、回転角度、回転位置といった回転情報を検出する装置として、エンコーダが知られている。このようなエンコーダの一種として、例えば反射型の光学式エンコーダが知られている。反射型の光学式エンコーダは、例えば表面に反射領域と非反射領域とが形成されたエンコーダディスクを有し、当該反射領域で反射する光を受光素子で検出して位置決めをする構成である。
【0003】
例えば、特許文献1には、光吸収層と光反射層とが積層された構成の反射型エンコーダディスク(光学式エンコーダ用反射板)が開示されている。この光吸収層及び光反射層としては、例えば金属膜が用いられている。このように光学ディスクに金属膜を重ねて形成する場合、例えば真空蒸着やスパッタリングなどの真空プロセスや、メッキ法、電解酸化法などの成膜法が採用されることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−121142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、上記のように金属膜が積層される構成においては、該金属層が腐食されやすい傾向にある。例えば光反射層が腐食されると、反射板における光反射特性が低下してしまう可能性がある。そうなると、当該反射板を光学式エンコーダに用いた場合、受光素子における検出結果に影響し、検出精度が低下する可能性がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明は、光反射特性の低下を防ぐことができる光学式エンコーダ用反射板、エンコーダ及び光学式エンコーダ用反射板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様に従えば、基板と、当該基板の表面に形成され、光を反射する第一金属からなる光反射層と、当該光反射層の表面のうち所定領域を空けて形成され、光を吸収すると共に第一金属よりも標準電極電位の低い第二金属からなる光吸収層とを備える光学式エンコーダ用反射板が提供される。
【0008】
本発明の第二の態様に従えば、本発明の第一の態様に従う光学式エンコーダ用反射板を備えることを特徴とするエンコーダが提供される。
【0009】
本発明の第三の態様に従えば、光を反射する第一金属からなる光反射層を基板の表面に形成する工程と、光を吸収すると共に第一金属よりも標準電極電位の低い第二金属からなる光吸収層を光反射層の表面のうち所定領域を空けて形成する工程とを含む光学式エンコーダ用反射板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様によれば、光反射特性の低下を防ぐことができる光学式エンコーダ用反射板、エンコーダ及び光学式エンコーダ用反射板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の構成を示す平面図。
【図2】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の一の構成を示す断面図。
【図3】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の他の構成を示す断面図。
【図4】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の他の構成を示す断面図。
【図5】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の他の構成を示す断面図。
【図6】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図7】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図8】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図9】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図10】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図11】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図12】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図13】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図14】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図15】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図16】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図17】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図18】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図19】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図20】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図21】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図22】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図23】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図24】本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板の製造過程を示す図。
【図25】本発明の第二実施形態に係るエンコーダの構成を示す断面図。
【図26】本実施形態に係るエンコーダの一部の構成を示す斜視図。
【図27】本発明に係る光学式エンコーダ用反射板の他の構成を示す断面図。
【図28】本発明に係る光学式エンコーダ用反射板の他の構成を示す断面図。
【図29】本発明に係る光学式エンコーダ用反射板の他の構成を示す断面図。
【図30】本発明に係る光学式エンコーダ用反射板の他の構成を示す断面図。
【図31】本発明に係る光学式エンコーダ用反射板の他の構成を示す断面図。
【図32】本発明に係る光学式エンコーダ用反射板の他の構成を示す断面図。
【図33】本発明に係る光学式エンコーダ用反射板の他の構成を示す断面図。
【図34】本発明に係る光学式エンコーダ用反射板の他の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第一実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板10の構成を示す平面図である。図2は、図1におけるA−A´断面に沿った構成を示す図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、光学式エンコーダ用反射板10(10A)は、基板1と、当該基板1の表面1aに形成された光反射層Mと、当該光反射層Mの表面Maに形成された光吸収層3と、を有している。光学式エンコーダ用反射板10は、例えば一般的な光学式エンコーダに備えられている反射板に代えて配置することができ、ロータリエンコーダ、リニアエンコーダ等、様々なタイプのエンコーダにも適用可能である。
【0014】
基板1は、例えばアルミニウムやその合金などの金属材料を用いて形成されている。当該基板1は、上記金属材料とは異なる金属材料によって形成された構成であっても勿論構わない。基板1は、例えば均一な厚さで円環状に形成されている。当該基板1の厚み、寸法、形状については、例えば用途に応じて適宜決定することができる。
【0015】
光反射層Mは、基板1の表面1a(図2参照)のほぼ全面を覆うように薄膜状に形成されている。光反射層Mは、光を反射する金属(第一金属)を用いて形成されている。このような第一金属としては、例えば銅、銀及び金などが挙げられる。光反射層Mの表面Ma(図2参照)は、平坦に形成されており、光を反射可能な鏡面となっている。光反射層Mの厚みとしては、例えば、約0.2μm、0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μmとすることができ、又は5μm以上とすることができる。光反射層Mにおいて十分な光反射率を確保するため、例えば1μm以上とすることができる。
【0016】
光反射層Mは、表面Maの光反射率が例えば、約40%、50%、60%、70%、80%とすることができ、又は90%以上となるように形成することができる。光反射層Mの表面Maにおいて十分な光反射率を確保するため、例えば光反射率が70%以上となるように光反射層Mを形成することができる。なお、「光反射率」とは、例えば光学式エンコーダで用いられる検出光に対する光反射率を意味する。
【0017】
光吸収層3は、光反射層Mの表面Maのうち所定の領域(所定領域)15を空けた領域に薄膜状に形成されている。この光吸収層3は、当該領域15において光反射層Mの表面Maが露出するように当該表面Maを覆っている。光吸収層3は、光反射層Mの表面Maに直接積層されている。光吸収層3は、光を吸収する金属材料を用いて形成されている。
【0018】
光吸収層3を構成する第二金属としては、光を吸収する金属のうち例えば光反射層Mを構成する第一金属に比べて標準電極電位(「平衡電極電位」又は「標準単極電位」ともいう)の低い金属(第二金属)が用いられている。このような第二金属として、例えばニッケル、クロム、鉄及び亜鉛などの金属が挙げられる。
【0019】
また、第二金属としては、例えば銅を用いることができる。第二金属として銅を用いる場合には、第一金属として、銅よりも標準電極電位の高い金属、例えば銀や金などを用いることができる。また、第二金属として、例えば銀を用いることもできる。第二金属として銀を用いる場合には、第一金属として、銀よりも標準電極電位の高い金属、例えば金などを用いることができる。以下、表1に第一金属と第二金属との組み合わせの一例を示す。
【0020】
【表1】

【0021】
光反射層Mを構成する第一金属の標準電極電位が、光吸収層3を構成する第二金属の標準電極電位よりも高くなるように第一金属及び第二金属を選択することにより、例えば光反射層Mの表面Maに光吸収層3が直接積層された構成であっても、光反射層Mが腐食されにくい構成となっている。このため、光反射層Mにおける光反射特性が低下しにくい構成となっている。
【0022】
上記構成の光学式エンコーダ用反射板10Aに対して例えば図2の上側から光(例えば光学式エンコーダの検出光など)が照射される場合、光反射層Mの表面Maが露出する領域(所定領域)15においては当該光反射層Mの表面Maで光が反射され、所定領域15から外れた領域においては光吸収層3によって光が吸収されるようになっている。このように、所定領域15は、光学式エンコーダ用反射板10Aにおける光反射領域となっている。以下、所定領域15を光反射領域15と表記する。
【0023】
光学式エンコーダ用反射板10Aにおいて、当該光反射領域15は、位置検出用の光反射パターンの一部として用いられる。図1に示すように、光反射領域15は、例えば光学式エンコーダ用反射板10A上に円周方向に沿って複数形成されている。勿論、光学式エンコーダ用反射板10Aの形状に応じて、所望の方向(例えば直線方向あるいは曲線方向など)に形成しても構わない。各光反射領域15は、図中上側から見た形状が例えば矩形となるように形成されている。
【0024】
各光反射領域15の最小線幅又は最小ピッチは、光学式エンコーダの分解能に応じて設定されている。例えば当該最小線幅又は最小ピッチを100μm、90μm、80μm、70μm、60μm、50μm、40μm、30μm、20μmのいずれかに設定することができる。また、当該最小線幅又は最小ピッチは、例えば10μm以下あるいは100μm以上とすることもできる。
【0025】
約20μm以下の最小線幅又は最小ピッチを有するパターンを備えた光学式エンコーダ用反射板10Aは、高い分解能を有する光学式エンコーダに対応できる。また、約10μm又は5μm以下の最小線幅又は最小ピッチを有するパターンを備えた光学式エンコーダ用反射板10Aは、より高い分解能を有する光学式エンコーダに対応できる。
【0026】
高分解能の光学式エンコーダに対応した光学式エンコーダ用反射板10Aにおいて、パターンの最小線幅又は最小ピッチは、例えば、約20μm、18μm、16μm、14μm、12μm、10μm、8μm、6μm、4μmとすることができ、あるいは2μm以下とすることもできる。
【0027】
図3〜図5は、それぞれ本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板10の他の構成を示す断面図である。
図3に示す光学式エンコーダ用反射板10Bは、図1及び図2に示す光学式エンコーダ用反射板10Aに加えて、保護層4を有している。保護層4は、光反射領域15における光反射層Mの表面Ma及び光吸収層3の表面3aを含む基板1上のほぼ全面を覆うように形成されている。保護層4は、例えば光透過性を有する材料を用いて形成されている。このような材料としては、例えば樹脂などの有機材料、金属酸化物などの無機材料が挙げられる。保護層4が設けられていることにより、光反射層Mの表面Ma及び光吸収層3の表面Maが保護されるため、光反射層Mや光吸収層3の腐食が発生しにくくなる。
【0028】
図4に示す光学式エンコーダ用反射板10Cは、図1及び図2に示す光学式エンコーダ用反射板10Aに加えて、被覆層12aを有している。被覆層12aは、光反射領域15における光反射層Mの表面Maを覆うように形成されている。被覆層12aは、例えば光透過性を有する材料を用いて形成されている。このような材料としては、例えば上記保護層4と同様、樹脂などの有機材料、金属酸化物などの無機材料が挙げられる。被覆層12aが設けられていることにより、光反射領域15における光反射層Mの表面Maが保護されるため、当該光反射層Mの腐食が発生しにくくなる。
【0029】
図5に示す光学式エンコーダ用反射板10Dは、図1及び図2に示す光学式エンコーダ用反射板10Aに加えて、保護層4及び被覆層12aを有している。被覆層12aは、光反射領域15における光反射層Mの表面Maを覆うように形成されている。また、保護層4は、被覆層12aの表面12b及び光吸収層3の表面3aを含む基板1上のほぼ全面を覆うように形成されている。被覆層12a及び保護層4は、例えば光透過性を有する材料を用いて形成されている。被覆層12a及び保護層4が設けられていることにより、光反射領域15における光反射層Mの表面Maが二重に保護されると共に、光吸収層3の表面3aについても保護されることになる。当該光学式エンコーダ用反射板10Cは、被覆層12aと及び保護層4とが異なる材料を用いて形成された構成であっても構わないし、被覆層12aと及び保護層4とが同一の材料を用いて形成された構成であっても構わない。
【0030】
(製造方法A)
次に、上記のように構成された光学式エンコーダ用反射板10Aの製造方法を説明する。まず、図6に示すように、基板1の表面1aに上記第一金属からなる光反射層Mを形成する。光反射層Mは、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、メッキ法、電解酸化法など、の手法を用いて形成することができる。光反射層Mを形成した後、当該光反射層Mの表面Maを鏡面加工する。鏡面加工としては、例えば研磨加工や研削加工などの鏡面加工方法を適用することができる。
【0031】
次に、図7に示すように、光反射層Mの表面Maにフォトレジスト層2を形成する。例えばスピンナなどの塗工装置を用いて光反射層Mの表面Maにフォトレジストを一様に塗布することでフォトレジスト層2を形成する。フォトレジストは、ポジ型、ネガ型のいずれであっても構わない。フォトレジスト層2を形成した後、当該フォトレジスト層2に対して所定の条件で加熱処理(プレベーク)を施す。プレベーク条件は、使用するフォトレジストの種類などに応じて適宜設定することができる。
【0032】
次に、フォトレジスト層2に所定のパターンの像を投影し、当該フォトレジスト層2を露光する(露光処理)。露光処理後、フォトマスクを取り外し、所定の現像液を用いて現像する。当該現像処理により、図8に示すように、光反射層Mの表面Maにレジストパターン2aが形成される。必要に応じて、レジストパターン2aに所定の条件で加熱処理(ポストベーク)を施してもよい。ポストベーク条件は、使用するフォトレジストの種類などに応じて適宜設定することができる。
【0033】
現像処理において、現像液の種類および現像条件は、使用するフォトレジストの種類などに応じて決定することができる。例えばフォトレジスト層2がポジ型フォトレジスト層の場合には、現像処理により非露光部分が光反射層Mに残存してレジストパターン2aが形成され、露光部分は溶出して光反射層Mの表面Maの一部が露出する。例えばフォトレジスト層2がネガ型フォトレジスト層の場合には、露光部分が光反射層M上に残存してレジストパターン2aが形成され、非露光部分は溶出して光反射層Mの表面Maの一部が露出する。
【0034】
現像処理の後、必要に応じて、レジストパターン2aが形成された基板1及び光反射層Mの表面Ma全体を苛性処理液に浸漬させて苛性処理を施しても構わない。この苛性処理により光反射層Mの表面Maのうちレジストパターン2aに対する露出部分の汚れが除去される。苛性処理液の種類や苛性処理の条件(例えば、浸漬温度および浸漬時間)については、使用する基板1、光反射層Mの材料などに応じて適宜決定することができる。
【0035】
この苛性処理の後、当該基板1及び光反射層Mの表面Ma全体を中和処理液に浸漬し、光反射層Mの表面Maのうちレジストパターン2aに対する上記露出部分を中和する。中和処理液の種類、中和処理の条件(例えば、浸漬温度および浸漬時間)は、使用する基板1、光反射層Mの種類や苛性処理液の種類などに応じて適宜決定することができる。
【0036】
次に、図9に示すように、光反射層Mの表面Maのうちレジストパターン2aに対する上記露出部分に上記第二金属からなる光吸収層3を形成する。光吸収層3は、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、メッキ法、電解酸化法など、の手法を用いて形成することができる。
【0037】
メッキ法を行う場合について、本実施形態では光反射層Mを構成する第一金属の標準電極電位よりも光吸収層3を構成する第二金属の標準電極電位の方が小さい(第一金属のイオン化傾向よりも第二金属のイオン化傾向の方が大きい)ため、無電解メッキ法を採用することができず、例えば電解メッキ法などを採用する必要がある。
【0038】
光吸収層3を形成した後、フォトレジスト層2(レジストパターン2a)を除去する。レジストパターン2aの除去方法としては、例えば当該レジストパターン2aが形成された基板1をレジスト剥離液に浸漬する方法などが挙げられる。レジスト剥離液としては、使用したフォトレジストの種類に応じて適宜選択して使用することができる。また、浸漬処理条件は使用するレジスト剥離液の種類に応じて適宜設定することができる。レジストパターン2aを除去することにより、図10に示すように、光反射層Mの表面Maの一部が光吸収層3から露出する光反射領域15が形成される。このようにして、光学式エンコーダ用反射板10Aが得られる。
【0039】
次に、上記の光学式エンコーダ用反射板10Aの製造工程のうち、露光処理についてより詳細に説明する。当該露光処理では、フォトレジスト層2に対して露光パターンを形成する。当該露光パターンを形成する場合、例えば基板1の外周を基準位置として位置決めする方法と、基板1の内周を基準位置として位置決めする方法とがある。
【0040】
まず、図11〜図14に示すように、基板1の外周面1bを基準位置として露光パターンの形成位置を設定する方法について説明する。図11は、基板1の表面1aに光反射層Mを形成し、当該光反射層Mの表面Maにフォトレジスト層2を形成した状態を示す図である。図11は、基板1全体についての断面図である。
【0041】
露光処理を行う際には、まずフォトレジスト層2が形成された上記基板1を、図12に示すように工具50に取り付ける。工具50としては、例えば段部50aが形成されているものを用いる。当該段部50aには、基板1の外周面1bとほぼ同一の径を有する円形の壁部50bが形成されている。図12に示すように、基板1は外周面1bのほぼ全面が壁部50bに密接した状態で保持される。
【0042】
この状態で、図13に示すように、例えば所望のパターン(例えば光学式エンコーダの光反射パターンなど)PTが形成されたフォトマスク60を基板1に密着または近接させて設置させる。フォトマスク60は、例えば工具50との間で位置合わせが行われた状態で基板1に対して設置させる。したがって、基板1は、外周面1bを基準としてフォトマスク60(パターンPT)との間で位置決めされた状態となる。
【0043】
次に、図14に示すように、フォトマスク60の図中上方から所定の波長のエネルギー線(紫外線など)を水銀ランプなどの光源を用いてフォトレジスト層2に照射して所定時間露光する。露光条件は、使用するフォトレジストの種類などに応じて適宜設定することができる。フォトマスク60は特に限定されず、例えば、ガラス基板(好ましくは、石英ガラス基板)上にクロムなどを用いてパターンPTを形成したものなどが挙げられる。以上の処理により、フォトマスク60に形成されたパターンPTに対応する像がフォトレジスト層2に転写され、当該フォトレジスト層2が露光される。
【0044】
次に、図15〜図18に示すように、基板1の内周面1cを基準位置として露光パターンの形成位置を設定する方法について説明する。図15は、基板1の表面1aに光反射層Mを形成し、当該光反射層Mの表面Maにフォトレジスト層2を形成した状態を示す図である。図15は、基板1全体についての断面図である。
【0045】
露光処理を行う際には、まずフォトレジスト層2が形成された上記基板1を、図16に示すように工具50に取り付ける。工具50としては、例えば突出部70aが形成されているものを用いる。当該突出部70aには、基板1の内周面1cにほぼ一致するように円筒面70bが形成されている。図16に示すように、基板1は内周面1cのほぼ全面が円筒面70bに密接した状態で保持される。
【0046】
この状態で、図17に示すように、例えば所望のパターン(例えば光学式エンコーダの光反射パターンなど)PTが形成されたフォトマスク80を基板1に密着または近接させて設置させる。フォトマスク80としては、例えば基板1の内周と同一径の円形の開口部80aが形成されたフォトマスク80を用いることができる。フォトマスク80は、開口部80aが突出部70aに挿入された状態で基板1に対して設置させる。したがって、基板1は、内周を基準としてフォトマスク80(パターンPT)との間で位置決めされた状態となる。
【0047】
次に、図18に示すように、フォトマスク80の図中上方から所定の波長のエネルギー線(紫外線など)を水銀ランプなどの光源を用いてフォトレジスト層2に照射して所定時間露光する。露光条件は、使用するフォトレジストの種類などに応じて適宜設定することができる。以上の処理により、フォトマスク60に形成されたパターンPTに対応する像がフォトレジスト層2に転写され、当該フォトレジスト層2が露光される。
【0048】
上記のように円環状に形成された基板1に対する露光処理においては、当該基板1の外周面1b及び内周面1cのいずれを基準位置とすることもできる。この場合、外周面1b又は内周面1cの円形の形状を利用することにより、露光パターンひいては光反射領域15を外周面1b又は内周面1cと同心円上に複数並んだ状態で形成することができるなお、基板1が例えば円形などの場合(外周のみが設けられている場合)には、当該基板1の外周を基準位置とすることで、同様に複数の光反射領域15を当該外周と同心円上に並んだ状態で形成することができる。
【0049】
(製造方法B)
次に、図23(a)及び図23(b)を参照して、保護層4を有する光学式エンコーダ用反射板10Bの製造方法を説明する。
上記の製造方法によって製造された光学式エンコーダ用反射板10Aのうち、例えば図23に示すように、光反射層Mの表面Ma上及び光吸収層3の表面3a上の空間(図中破線部分)に対して、例えばスピンコーティングなどの塗装方法により耐酸化膜形成材料などを塗布したり、真空蒸着やスッパタリングなどの真空プロセスにより誘電体材料を付着させたりすることで、図23(b)に示すような保護層4が形成される。このようにして、保護層4を有する光学式エンコーダ用反射板10Bを得ることができる。
【0050】
(製造方法C)
次に、図19〜図22を参照して、被覆層12aを有する光学式エンコーダ用反射板10Cの製造方法を説明する。
まず、図19に示すように、基板1の表面1aに上記第一金属からなる光反射層Mを形成する。光反射層Mは、上記同様、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、メッキ法、電解酸化法など、の手法を用いて形成することができる。光反射層Mを形成した後、当該光反射層Mの表面Maを鏡面加工する。鏡面加工としては、例えば研磨加工や研削加工などの鏡面加工方法を適用することができる。
【0051】
次に、図20に示すように、光反射層Mの表面Maに光透過性フォトレジスト層12を形成する。上記同様、例えばスピンナなどの塗工装置を用いて光反射層Mの表面Maにフォトレジストを一様に塗布することで光透過性フォトレジスト層12を形成する。フォトレジストは、例えば光学式エンコーダに設けられる検出光を透過する材料であれば、ポジ型、ネガ型のいずれであっても構わない。光透過性フォトレジスト層12を形成した後、当該光透過性フォトレジスト層12に対して所定の条件で加熱処理(プレベーク)を施す。プレベーク条件は、使用するフォトレジストの種類などに応じて適宜設定することができる。
【0052】
次に、光透過性フォトレジスト層12に所定のパターンの像を投影して当該フォトレジスト層2を露光すると共に、露光処理後、所定の現像液を用いて現像する。これらの処理により、図21に示すように、光反射層Mの表面Maに光透過性レジストパターンである被覆層12aが形成される。
【0053】
次に、図22に示すように、光反射層Mの表面Maのうち被覆層12aに対する上記露出部分に上記第二金属からなる光吸収層3を形成する。光吸収層3は、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、メッキ法、電解酸化法など、の手法を用いて形成することができる。
【0054】
このように、当該光透過性フォトレジスト層12のパターンを用いて光吸収層3を形成すると共に、光透過性フォトレジスト層12を除去することなく、被覆層12aとして用いることができる。なお、上記の製造方法Aによって光学式エンコーダ用反射板10Aを製造し、その後露出された光反射領域15に被覆層12aを形成するようにしても構わない。
【0055】
(製造方法D)
次に、図24(a)及び図24(b)を参照して、被覆層12a及び保護層4を有する光学式エンコーダ用反射板10Dの製造方法を説明する。
上記の製造方法Cによって製造された光学式エンコーダ用反射板10Cのうち、例えば図24(a)に示すように、光反射層Mの表面Ma上及び光吸収層3の表面3a上の空間(図中破線部分)に対して、例えばスピンコーティングなどの塗装方法により耐酸化膜形成材料などを塗布したり、真空蒸着やスッパタリングなどの真空プロセスにより誘電体材料を付着させたりすることで、図24(b)に示すような保護層4が形成される。このようにして、被覆層12a及び保護層4を有する光学式エンコーダ用反射板10Dを得ることができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る光学式エンコーダ用反射板10(10A〜10D)は、基板1と、当該基板1の表面1aに形成され光を反射する第一金属からなる光反射層Mと、当該光反射層Mの表面Maのうち光反射領域15を空けて形成され光を吸収すると共に第一金属よりも標準電極電位の低い第二金属からなる光吸収層3とを備えることとしたので、このように、光反射層Mが劣化しにくい構成とすることができる。これにより、光学式エンコーダ用反射板10の光反射領域15における光反射特性が低下するのを防ぐことができる。
【0057】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を説明する。本実施形態では、第一実施形態で説明した光学式エンコーダ用反射板を搭載した光学式エンコーダ(以下、単にエンコーダと表記する)ECについて説明する。図25は、エンコーダECの構成を示す斜視図である。
【0058】
図25に示すように、エンコーダECは、モーター装置MTRの回転軸SFなどの回転体の回転情報(回転数、回転角度など)を検出する装置である。エンコーダECは、回転部R及び検出部Dを有している。エンコーダECは、回転部Rと検出部Dとが対向配置された状態で用いられる。図26は、エンコーダECの回転部Rの構成を示す斜視図である。以下、図25及び図26を参照して、エンコーダECの構成を説明する。
【0059】
回転部Rは、モーター装置MTRの回転軸SFに取り付けられ、回転軸SFと一体的に回転する。回転部Rは、回転軸SFに固定させるハブHBと、当該ハブHBに固定される反射板RFとを有している。ハブHBは、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金などによって形成されている。ハブHBは、回転軸SFを貫通させる貫通孔OPが形成された板状部90を有している。板状部90のうち図25の上側及び下側のそれぞれの面には、円筒状に形成された突出部90a及び90bが設けられている。突出部90aの径は、突出部90bの径よりもやや小さくなっている。このため、突出部90aと突出部90bとの間には段部90cが形成されている。
【0060】
反射板RFは、当該段部90cに取り付けられている。反射板RFとしては、例えば上記第一実施形態に記載の光学式エンコーダ用反射板10(10A〜10D)が用いられている。反射板RFは、内周面RFcが段部90cの壁面90dのほぼ全面に密着された状態でハブHBに取り付けられている。反射板RFとハブHBとが例えば不図示の接着剤などを介して接着された構成であっても構わない。
【0061】
反射板RFの表面RFaには、例えば2種類の光反射パターンRP1及びRP2が形成されている。当該光反射パターンRP1及びRP2は、それぞれ円周方向に沿って並んだ複数の光反射領域15を有している。光反射パターンRP1は反射板RFの外周面RFb側に1列に設けられており、光反射パターンRP2は反射板RFの内周面RFc側に1列に設けられている。
【0062】
反射板RFの内周面RFcの寸法精度としては、例えば2μm〜3μm以下の精度を得ることが可能である。反射板RFを形成する際、例えば内周面RFcと外周面RFbとを同時に加工することにより、外周面RFbの同心度についても同様に高い精度を得ることが可能となる。このため、上記第一実施形態に記載のように反射板RFの内周面RFc又は外周面RFbのいずれを基準として光反射領域15を形成することにより、高い同心度を持った光反射パターンRP1及びRP2が得られることになる。このため、検出精度の高いエンコーダECが得られることとなる。
【0063】
モーター装置MTRの回転軸SFには、不図示のベアリングが配置されている。当該ベアリングには、内部にグリースや油などが供給されている。回転軸SFが回転すると、当該ベアリング内部のグリースや油が回転によって飛散する場合がある。当該グリースや油が光反射パターンRP1及びRP2に付着すると、検出部Dにおける検出精度が低下してしまう。
【0064】
これに対して、流通低減部として突出部90a及び90bがハブHBに設けられているため、モーター装置MTRの回転軸SFに配置した不図示のベアリングから反射板RFの表面RFa側(光反射パターンRP1及びRP2側)に飛散するグリースや油などが塞き止められることになる。このため、光反射パターンRP1及びRP2にグリースや油などが付着するのを防ぐことができる構成となっている。このように、ハブHBの一部にラビリンスのような防油機能を付加することで、簡単な構造で、さらに信頼性を向上したエンコーダECが得られる。
【0065】
検出部Dは、上記の光反射パターンRP1及びRP2を検出する。検出部Dは、発光素子DL及び受光素子DR1及びDR2を有している。検出部Dは、例えばコップ状に形成された支持部Sの底部に取り付けられている。支持部Sは、縁部がモーター装置MTRの筐体に固定されており、かつ、どの部分も回転軸SFには固定されていない状態となっている。このため、回転軸SFが回転しても、支持部Sとモーター装置MTRの筐体との相対位置が変化しないようになっている。検出部Dは、不図示の制御装置に接続されており、検出結果が当該制御装置に送信されるようになっている。
【0066】
発光素子DLは、光反射パターンRP1及びRP2のそれぞれへ向けて検出光を射出する。発光素子DLとしては、例えばLEDなどが用いられる。受光素子DR1は、例えば光反射パターンRP1によって反射された検出光の進行方向上に配置されており、当該反射光を受光する。受光素子DR2は、例えば光反射パターンRP2によって反射された検出光の進行方向上に配置されており、当該反射光を受光する。受光素子DR1及びDR2としては、例えば光電素子などが用いられる。
【0067】
上記のように構成されたエンコーダECにおいては、モーター装置MTRの回転軸SFが回転すると、当該回転軸SFに取り付けられた回転部Rが回転軸SFと一体的に回転する。モーター装置MTRに固定された検出部Dについては、回転軸SFには接続されていないため、回転せずに静止した状態となる。
【0068】
回転部Rが回転すると、当該回転部Rの反射板RFに形成された光反射パターンRP1及びRP2が回転方向に移動する。制御装置は、検出部Dの発光素子DLから光反射パターンRP1及びRP2へ向けて検出光を射出させる。当該検出光は、光反射パターンRP1及びRP2においてそれぞれ反射される。各反射光は、それぞれ受光素子DR1及びDR2に入射し、電気信号に変換されて制御装置へ送信される。制御装置では、当該電気信号に基づいて回転軸SFの回転情報を検出する。
【0069】
反射板RFとして、第一実施形態の光学式エンコーダ用反射板10B〜10Dが用いられている場合、光反射層Mの表面Maのうち光反射領域15が保護層4あるいは被覆層12aで覆われた構成となっているが、保護層4及び被覆層12aが発光素子DLからの検出光に対して光透過可能な材料を用いて形成されているため、検出光は保護層4又は被覆層12aを透過して光反射領域15で反射され、反射光は保護層4及び被覆層12aを透過して受光素子DR1及びDR2に到達することとなる。
【0070】
以上のように、本実施形態によれば、回転部Rの反射板RFとして、上記第一実施形態に記載の光学式エンコーダ用反射板10を用いることとしたので、光反射領域15における光反射特性が低下するのを防ぐことができる。これにより、検出精度が安定した信頼性の高いエンコーダECを得ることができる。
【0071】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、基板1の材料として、アルミニウム若しくはアルミニウム合金を用いた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば図27〜図30に示すように、例えばガラスや樹脂などの他の無機材料若しくは有機材料からなる基板Gが用いられた構成であっても構わない。図27〜図30に示す光学式エンコーダ用反射板10を製造する場合、基板G上には、例えばスパッタリング法やリフトオフ法などによって光反射層Mを形成することができる。
【0072】
図27に示す光学式エンコーダ用反射板10GAは、基板Gの表面Gaのほぼ全面に光反射層Mが形成されており、当該光反射層Mの表面Maの一部に光吸収層3が形成された構成となっている。光学式エンコーダ用反射板10GAは、光反射層Mの表面Maのうち光吸収層3が設けられていない光反射領域15が露出した構成となっている。
【0073】
図28に示す光学式エンコーダ用反射板10GBは、図27に示す光学式エンコーダ用反射板10GAに加えて、保護層4を有している。保護層4は、光反射領域15における光反射層Mの表面Ma及び光吸収層3の表面3aを含む基板1上のほぼ全面を覆うように形成されている。保護層4は、例えば光透過性を有する有機材料、無機材料などを用いて形成されている。
【0074】
図29に示す光学式エンコーダ用反射板10GCは、図27に示す光学式エンコーダ用反射板10GAに加えて、被覆層12aを有している。被覆層12aは、光反射領域15における光反射層Mの表面Maを覆うように形成されている。被覆層12aは、例えば光透過性を有する有機材料、無機材料などを用いて形成されている。
【0075】
図30に示す光学式エンコーダ用反射板10GDは、図27に示す光学式エンコーダ用反射板10GAに加えて、保護層4及び被覆層12aを有している。被覆層12aは、光反射領域15における光反射層Mの表面Maを覆うように形成されている。また、保護層4は、被覆層12aの表面12b及び光吸収層3の表面3aを含む基板G上のほぼ全面を覆うように形成されている。被覆層12a及び保護層4は、例えば光透過性を有する有機材料、無機材料などを用いて形成されている。
【0076】
また、上記実施形態においては、光吸収層3の端辺が光学式エンコーダ用反射板10の外周及び内周に一致するように形成された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば図31〜図34に示すように、光吸収層3が光学式エンコーダ用反射板10の外周面1b及び内周面1cにはみ出した構成であっても構わない。なお、図31〜図34においては、保護層4が形成された構成が一例として示されているが、当該保護層4が設けられて無い構成であっても構わない。
【0077】
例えば、図31に示す光学式エンコーダ用反射板10MAは、基板1の表面1aのほぼ全面に光反射層Mが形成されており、当該光反射層Mの表面Maの一部に光吸収層3が形成された構成となっている。また、光反射領域15における光反射層Mの表面Ma及び光吸収層3の表面3aを含む基板1上のほぼ全面を覆うように保護層4が形成されている。保護層4は、例えば光透過性を有する有機材料、無機材料などを用いて形成されている。
【0078】
これに加えて、光吸収層3は、光学式エンコーダ用反射板10の基板1の外周面1b及び内周面1cにはみ出した部分(はみ出し部分)3bを有している。外周面1b及び内周面1cは、基板1の表面1a及び裏面1dを接続する側面である。はみ出し部分3bは、光反射層Mの表面Maから基板1の外周面1b及び内周面1cにかけて光反射層Mを覆うように形成されている。これにより、光反射層Mをより確実に保護することが可能となる。当該はみ出し部分3bは、例えば光反射層M上にレジストパターン2a(図8等参照)を形成した基板1の全体をメッキ槽に浸漬させてメッキ法を行うことで形成される。
【0079】
例えば、図32に示す光学式エンコーダ用反射板10MBは、図31に示す光学式エンコーダ用反射板10MAに加えて、被覆層12aを有している。被覆層12aは、光反射領域15における光反射層Mの表面Maを覆うように形成されている。被覆層12aは、例えば光透過性を有する有機材料、無機材料などを用いて形成されている。この場合にもはみ出し部分3bによって光反射層Mの側部が保護されることになる。
【0080】
例えば、図33に示す光学式エンコーダ用反射板10MCは、図31に示す光学式エンコーダ用反射板10MAの構成に対して、例えば基板1に代えて、例えばガラスや樹脂などの他の無機材料若しくは有機材料からなる基板Gが用いられた構成になっている。この場合、光吸収層3のはみ出し部分3bは、光反射層Mの表面Maから基板Gの外周面Gm及び内周面Gnにかけて当該光反射層Mを覆うように形成されている。外周面Gm及び内周面Gnは、基板Gの表面Ga及び裏面Gdを接続する側面である。この場合にも、はみ出し部分3bにより光反射層Mの側部が保護されることになる。
【0081】
例えば、図34に示す光学式エンコーダ用反射板10MDは、図33に示す光学式エンコーダ用反射板10MCの構成に加えて、被覆層12aを有している。被覆層12aは、光反射領域15における光反射層Mの表面Maを覆うように形成されている。被覆層12aは、例えば光透過性を有する有機材料、無機材料などを用いて形成されている。この場合にも、はみ出し部分3bにより光反射層Mの側部が保護されることになる。
【0082】
なお、図31〜図34に示す各構成においては、光吸収層3が基板1(基板G)の外周面1b及び内周面1cにはみ出し部3bを有する構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、光吸収層3のはみ出し部3bが外周面1b及び内周面1cから更に基板1の裏面1dに伸びるように形成されていても構わない。このように、基板1の表面1a上とは異なる部分に光吸収層3のはみ出し部3bが設けられていても構わない。
【符号の説明】
【0083】
10、10A〜10D、10GA〜10GD、10MA〜10MD…光学式エンコーダ用反射板 EC…エンコーダ M…光反射層 MTR…モーター装置 RP1、RP2…光反射パターン DR1、DR2…受光素子 SF…回転軸 R…回転部 D…検出部 RF…反射板 G…基板 1…基板 3…光吸収層 4…保護層 12a…被覆層 15…光反射領域 90a、90b…突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の表面に形成され、光を反射する第一金属からなる光反射層と、
前記光反射層の表面のうち所定領域を空けて形成され、前記光を吸収すると共に前記第一金属よりも標準電極電位の低い第二金属からなる光吸収層と
を備える光学式エンコーダ用反射板。
【請求項2】
光透過可能な材料を用いて形成され、前記所定領域を覆う被覆層
を備える請求項1に記載の光学式エンコーダ用反射板。
【請求項3】
前記光吸収層及び前記被覆層を覆う保護層
を備える請求項2に記載の光学式エンコーダ用反射板。
【請求項4】
前記基板は、前記表面に平行に形成された裏面、及び、前記表面と前記裏面とを接続する側面を有し、
前記光吸収層は、前記側面の少なくとも一部に形成される
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の光学式エンコーダ用反射板。
【請求項5】
前記光吸収層の一部は、前記基板の前記表面と前記基板のうち前記表面とは異なる部分とに跨って設けられている
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の光学式エンコーダ用反射板。
【請求項6】
前記第一金属は、銅、銀及び金のうちいずれか一つを含む
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光学式エンコーダ用反射板。
【請求項7】
前記第二金属は、ニッケル、クロム、鉄及び亜鉛のうちいずれか一つを含む
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光学式エンコーダ用反射板。
【請求項8】
前記第一金属は、銀及び金のうちいずれか一方を含み、
前記第二金属は、銅を含む
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光学式エンコーダ用反射板。
【請求項9】
前記第一金属は、金を含み、
前記第二金属は、銅及び銀のうちいずれか一方を含む
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光学式エンコーダ用反射板。
【請求項10】
前記基板は、円形に形成されており、
前記所定領域は、前記基板の外周に沿って複数配置されている
請求項1から請求項9のうちいずれか一項に記載の光学式エンコーダ用反射板。
【請求項11】
前記所定領域は、前記基板の基準位置を中心とした円の円周に沿って複数配置されている
請求項1から請求項10のうちいずれか一項に記載の光学式エンコーダ用反射板。
【請求項12】
前記基板は、外部に接続される被接続部を有し、
前記基準位置は、前記被接続部に設けられる
請求項11に記載の光学式エンコーダ用反射板。
【請求項13】
前記基板は、前記表面への液状体の流通を低減する流通低減部を有する
請求項1から請求項12のうちいずれか一項に記載の光学式エンコーダ用反射板。
【請求項14】
前記基板は、硝材を用いて形成されている
請求項1から請求項13のうちいずれか一項に記載の光学式エンコーダ用反射板。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の光学式エンコーダ用反射板を備える
エンコーダ。
【請求項16】
光を反射する第一金属からなる光反射層を基板の表面に形成する工程と、
前記光を吸収すると共に前記第一金属よりも標準電極電位の低い第二金属からなる光吸収層を前記光反射層の表面のうち所定領域を空けて形成する工程と
を含む光学式エンコーダ用反射板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2012−63199(P2012−63199A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206623(P2010−206623)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】