説明

光学式ポインティング装置および当該装置を搭載した電子機器

【課題】より薄く、しかも像の認識精度が高められた光学式ポインティング装置を提供する。
【解決手段】被写体10と接する接触面11と、接触面11に向かって照射光を照射する光源16と、接触面11からの反射光を複数の光路a・bへ分割するための複数の光路変換面を有する光路変換素子22・32・52と、を備え、複数の光路変換面は、接触面11との角度が45°以下となるように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は入力装置に関し、より詳細には、携帯電話等の電子機器に搭載可能な光学式ポインティング装置および当該装置を搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)などの電子機器では、キーパッドを利用したユーザーインターフェースが用いられている。このようなキーパッドは、数字および文字を入力するための複数個のボタンと、方向ボタンとによって構成されている。
【0003】
近年、ディスプレイの高性能化に伴って、電子機器においても、GUI(Graphical User Interface)を採用することが一般的になりつつある。このように、携帯情報端末等の電子機器の機能がコンピューターと類似して変化するのに伴って、電子機器の入力方法も、従来のメニューキーおよびその他の機能キーを方向キーとして用いることによって所望する機能の動作を行う方法では不便になりつつある。
【0004】
それ故に、電子機器においても、コンピューターに用いられているようなマウスやタッチパッドのような操作を可能とするポインティング装置が求められるようになりつつある。
【0005】
ポインティング装置としては、装置に接触する被写体(例えば、指先など)の模様を撮像素子で観察しながら接触面の変化を抽出する、光学式ポインティング装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この光学式ポインティング装置では、光源によって接触面を照明しながら、接触面の模様をレンズで撮像素子に結像させ、検出した模様の変化に基づいて指先の動きを入力信号に変換している。
【0006】
また、接触面の直下に光路を折り曲げるための光路変換素子(例えば、プリズムなど)を配置し、光路を水平方向に折り曲げることで、光路を長く保ちながら光学式ポインティング装置の厚さを薄くする方法が提案されている(例えば、特許文献2および3参照)。この技術では光路を水平方向に折り曲げているために、たとえ光路を長くしたとしてもポインティング装置の厚さには影響しない。このため光路を長く取りながら薄い光学式ポインティング装置を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2007−528554号公報(公表日:2007年10月11日)
【特許文献2】特表2008−507787号公報(公表日:2008年3月13日)
【特許文献3】特表2008−510248号公報(公表日:2008年4月3日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献では、光路変換素子を用いることにより、光路を長くとりながら薄い光学式ポインティング装置を実現しているが、接触面の全体の領域を撮像素子に結像する必要があるため、接触面の領域の広さに応じた厚さを確保する必要があり、薄い光学式ポインティング装置とするには限界があるという課題を有している。
【0009】
本発明は、前記従来の課題に鑑みなされたものであって、その目的は、より薄く、しかも像の認識精度が高められた光学式ポインティング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光学式ポインティング装置は、上記課題を解決するために、被写体と接する接触面と、前記接触面に向かって照射光を照射する光源と、前記接触面からの反射光を複数の光路へ分割するための複数の光路変換面を有する光路変換素子と、を備え、前記複数の光路変換面は、前記接触面との角度が45°以下となるように設けられていることを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、光路変換面によって、接触面からの反射光を分割させることができる。その結果、光学式ポインティング装置の厚さを薄くすることができる。更に、上記構成によれば、接触面に向かう照射光が、光路変換素子内で進行方向を変える度合い(換言すれば、屈折する角度)を小さくすることができる。つまり、照射光は、光路変換素子内を小さな屈折角度にて進むので、接触面全体に対して、均一に光を照射することができる。その結果、不感帯を小さくすることができ、像の認識精度を高めることができる。
なお、前記複数の光路変換面は、前記接触面との角度が45°よりも小さくなるように設けられていることが更に好ましい。
【0012】
本発明の光学式ポインティング装置では、前記光路変換面同士が、90°以上の角度をなすように設けられていることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、光路変換面によって、接触面からの反射光を分割させることができる。その結果、光学式ポインティング装置の厚さを薄くすることができるとともに、不感帯を小さくすることで、像の認識精度を高めることができる。
【0014】
更に、上記構成によれば、より効果的に不感帯を小さくすることができる。なお、前記複数の光路変換面が、前記接触面との角度が45°よりも小さくなるように設けられている場合には、当該光路変換面同士が、90°よりも大きな角度をなすように設けられていることが更に好ましい。
【0015】
本発明の光学式ポインティング装置では、前記光路変換面の数は、前記光路変換素子の数よりも多いことが好ましい。
【0016】
複数の光路変換面を有する光路変換素子を用いることによって、部品数を削減することができるとともに、コスト削減を実現することができる。また、光路変換素子の位置合わせや組み立てを容易にできるばかりでなく、光学式ポインティング装置の小型化も実現できる。
【0017】
本発明の光学式ポインティング装置は、撮像素子を更に備え、前記複数の光路へ分割された反射光を前記撮像素子へ合成するための画像合成素子を備えていることが好ましい。
分割された複数の光路は、複数の像を生成する。したがって、画像合成素子を備えることによって、分割された光路を再度一つに合成することができる。
【0018】
本発明の光学式ポインティング装置では、前記複数の光路変換面の少なくとも1つは、前記接触面上において別の光路変換面と交わっていることが好ましい。
【0019】
接触面と光路変換面との距離が小さくなるように、複数の光路変換面が接触面上で交わる(連結される)ことによって、光学式ポインティング装置の厚さを薄くすることができる。また、接触面と光路変換面との距離が小さければ、分割される各光路へのクロストークが低減され、信号のS/N比を良くすることができる。
【0020】
本発明の電子機器は、上記課題を解決するために、本発明の光学式ポインティング装置を備えていることを特徴としている。
【0021】
本発明の光学式ポインティング装置は薄いので、本発明の光学式ポインティング装置を備えた電子機器の厚さも薄くすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明であれば、光路変換素子によって被写体検出エリアを複数の領域に分割して撮像することによって、光学式ポインティング装置の厚さを薄くすることができる。
【0023】
本発明であれば、光学式ポインティング装置の不感帯を狭くすることができる。それゆえイメージセンサーにおける像の認識精度を上げることができる。
【0024】
本発明であれば、光路変換素子の角度を適切に設定することによって、不感帯を狭くすることができる。これによって、被写体に光を有効に照射することができ、被写体の照度が均一な領域を拡大することができる。そして、イメージセンサーにおける像の認識精度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の光学式ポインティング装置の第1実施形態を示した断面図である。
【図2】(a)および(b)は、図1に示す光学式ポインティング装置の接触面における照度の分布を示す概念図である。
【図3】本発明の光学式ポインティング装置の第1実施形態の変形例を示した断面図である。
【図4】(a)および(b)は、図3に示す光学式ポインティング装置の接触面における照度の分布を示す概念図である。
【図5】本発明の光学式ポインティング装置に用いる光路変換素子の一例を示した斜視図である。
【図6】本発明の光学式ポインティング装置に用いる光路変換素子の一例を示した斜視図である。
【図7】図6の光路変換素子のA−Aに沿った断面図の一例である。
【図8】図6の光路変換素子のA−Aに沿った断面図の一例である。
【図9】本発明の光学式ポインティング装置の第1実施形態の変形例を示した断面図である。
【図10】本発明の光学式ポインティング装置の第2実施形態を示した斜視図である。
【図11】図10に示す光学式ポインティング装置のB−Bに沿った断面図である。
【図12】図10に示す光学式ポインティング装置のC−Cに沿った断面図である。
【図13】図10に示す光学式ポインティング装置のD−Dに沿った断面図である。
【図14】第2実施形態の光学式ポインティング装置にて得られる像を示した模式図である。
【図15】(a)および(b)本発明の光学式ポインティング装置の第3実施形態における、光学部品を組み立てる前の各構成を示す斜視図である。
【図16】本発明の光学式ポインティング装置の第3実施形態における、光学部品を組み立てた後の各構成を示す斜視図である。
【図17】(a)は、図16に示す光学式ポインティング装置のE−Eに沿った断面図であり、(b)は、図16に示す光学式ポインティング装置のF−Fに沿った断面図であり、(c)は、図16に示す光学式ポインティング装置のG−Gに沿った断面図である。
【図18】本発明の光学式ポインティング装置の第4実施形態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明者らは、光学式ポインティング装置を小型化および/または薄型化する方法を検討している過程で、接触面に光が照射されないために生じる、または照射されていても光量が極めて少ないために生じる不感帯が、イメージセンサーなどによる像の認識精度を低下させるという問題があることを独自に見出した。
【0027】
この課題に対して、本発明者らは鋭意検討した結果、特定の光路変換素子(後述する、光路変換素子22、32および52)上に設けられた光路変換面と、接触面とがなす角度を調節することによって、不感帯を小さくすることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。なお、本発明であれば、不感帯を小さくすることができるのみならず、光学式ポインティング装置の厚さを薄くすることも可能である。まず、図2(a)および図2(b)を用いて、不感帯の一例について説明する。
【0028】
図2(a)に示すように、光源16、光路変換素子22、被写体10の順で配置すると、光路変換素子22を介して、光源16から被写体10へ光を照射することになる。この場合、光源16からの照射光は、光路変換素子22によって屈折してしまい、その進行方向が変わる。図2(a)では、図の装置の外側へ屈折している。光路変換素子22の上面が接触面11として機能するが、照射光の進行方向が変わるため、接触面11の中央部に光が照射されない領域、または、照射されていても極めて少ない光しか照射されない領域が生じる。図2(b)は接触面11を上部から見た図であるが、この図中、Xにて示される領域が当該領域であり、本発明では当該領域を不感帯とよぶ。本発明であれば、不感帯を小さくすることができるので、その結果、イメージセンサーにおける像の認識精度を上げることができる。
【0029】
以下、本発明の光学式ポインティング装置の一実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、指紋認証システム等のスキャナー装置、および、光入力インターフェイス全般に適用可能である。
【0030】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態の光学式ポインティング装置の断面図である。
【0031】
本実施形態の光学式ポインティング装置1は、被写体10(例えば、指先など)と接する接触面11、接触面11に向かって光(照射光)を照射する光源16(例えば、LED光源)、被写体10にて散乱されて接触面11を介して自身へ入射する光(反射光)を所定の方向の複数の光路へ分割するための光路変換面12aおよび光路変換面12bを有する光路変換素子22、分割された光を結像する結像素子14aおよび結像素子14b、結像された像を撮像する撮像素子15aおよび撮像素子15bを備えている。
【0032】
光路変換素子22は、2つのプリズムが接触面11上で連結された形態にて構成されており、接触面11、光路変換面12aおよび光路変換面12b以外に、反射光をプリズムの外へ出射するための出射面13a、13bを有している。
【0033】
図1において、光路変換面12aと光路変換面12bとが接触面11上で交わるように2つのプリズムが連結されているが、接触面11と、光路変換面12aおよび光路変換面12bとは離間していてもよい。つまり、光路変換面12aと光路変換面12bとの連結部は接触面11上になくても良い。
【0034】
光路変換素子22、結像素子14aおよび結像素子14bを形成するための材料は、光源16からの光を透過できるものであればよく、特に限定されない。例えば、樹脂(例えば、アクリルまたはポリカーボネイトなど)またはガラスであることが好ましい。
【0035】
被写体10を照明するための光源16を配置する位置は特に限定されないが、例えば、光路変換素子22の約1mm下側(接触面11を介して、被写体の配置との反対側)の空間に配置されていることが好ましい。更に好ましくは、光源16は、光路変換面12aと光路変換面12bとの間の空間内に配置されている。
【0036】
光源16から放射された光の一部は、光路変換素子22を透過して、光路変換素子22上に形成された接触面11に照射される。接触面11の上側には被写体10が存在しており、前記接触面11を介して被写体10に光が照射される。光源16からの光が被写体10に照射され、当該光は、指紋などの凹凸によって散乱および反射し、散乱および反射した光(反射光)が接触面11に照射される。この反射光の一部は、光路変換素子22の内部を透過した後、光路変換面12aおよび光路変換面12bによって反射(好ましくは、全反射)される。なお、図1では、被写体10が接触面11と離間して描かれているが、実際には被写体10は接触面11と接触している。
【0037】
光路変換面12aと光路変換面12bとは、角度θ1をなすように設けられている。この場合、接触面11と、光路変換面12aおよび光路変換面12bとは、角度θ3をなすように設けられている。なお、接触面11と光路変換面12aとがなす角度と、接触面11と光路変換面12bとがなす角度とは同じであってもよく異なっていてもよいが、光路変換面12a以降の光学設計と光路変換面12b以降の光学設計とを同じにすることによって光学式ポインティング装置1の光学設計を容易にするという観点からは、上記角度は同じであることが好ましい。
【0038】
図1のように光路変換面12aと光路変換面12bとが互いに垂直(θ1=90°、θ3=45°)となる形態にすれば、被写体10によって散乱および反射された光は、光路変換面12aと光路変換面12bとによって、反射(好ましくは、全反射)され、180°反対方向の2つの光路aおよび光路bへ分割される。この分割された光は、接触面に対して略平行な方向へ屈折している。
【0039】
光路aおよび光路bへ分割された光は、それぞれ光路変換素子22の出射面13aおよび出射面13bを介して、光路変換素子22の内部から外部へ出る。光路aおよび光路bに分割された光は、各々、レンズなどによって構成されている結像素子14aおよび結像素子14bによって、各々、撮像素子15aおよび撮像素子15b上に像を結ぶ。
【0040】
撮像素子15aおよび撮像素子15bの具体的な構成は、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂またはポリカーボネイト樹脂を表面にモールドすることによって保護されている撮像素子であることが好ましい。
【0041】
結像素子14aおよび結像素子14bの具体的な構成は特に限定されないが、図1で示したレンズの他にピンホールを用いることも可能である。ピンホールを用いる場合には、結像素子14aおよび結像素子14bを非常に薄くすることができるため、光学式ポインティング装置1の小型化に有利である。一方、レンズを用いた場合には、結像素子14aおよび結像素子14bは小さなサイズであっても、より多くの光を取り込むことができるので、撮像素子15上で得られる像を明るくすることができる。
【0042】
撮像素子15a上および撮像素子15b上に結ばれた像は、撮像素子15aおよび撮像素子15bから、図示されないDSP(Digital Signal Processor)内に画像データとして取り込まれた後、一つの画像へと合成される。
【0043】
撮像素子15aおよび撮像素子15bの具体的な構成は特に限定されず、適宜、公知の構成を用いることが可能である。例えば、撮像素子15aおよび撮像素子15bは、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサーまたはCCD(Charge Coupled Device)センサー等のイメージセンサーであり得、被写体10の像を一定の時間間隔にて撮像し続け、当該画像データは、例えばDSP内へ遂次データとして取り込まれる。
【0044】
被写体10が接触面11上を移動した場合には、撮像された画像は直前に撮影したものとは、所定量だけずれた画像となる。画像中の同一部分のずれ量をDSPにて比較することによって、被写体10の移動量と移動方向とを判断することが可能となる。また、イメージセンサーでは、指先などの被写体10の凹凸像が、ピクセルデータとしてDSP内へ取り込まれる。被写体10の移動量および移動方向の判定は、ピクセルデータの数が多いほど認識精度が高くなり、1つのピクセルデータとして取り込まれる光量差が大きいほどS/N比が上がり認識精度が高くなる。
【0045】
図1において各構成間の距離は特に限定されないが、例えば、接触面11から光路変換面12aの中心までの距離、および、接触面11から光路変換面12bの中心までの距離は、約0.5mmであることが好ましく、光路変換面12aの中心から射出面13aまでの距離、および、光路変換面12bの中心から射出面13bまでの距離は、約2.5mmであることが好ましく、射出面13aから結像素子14aまでの距離、および、射出面13bから結像素子14bまでの距離は、約0.7mmであることが好ましく、結像素子14aの曲率半径、および、結像素子14bの曲率半径は、約0.6mmであることが好ましい。
【0046】
結像素子14aおよび結像素子14bの具体的な構成は特に限定されないが、例えば、直径約0.2mmの球面レンズであって、光路aまたは光路bに沿った方向への厚さが約2.4mmである球面レンズであることが好ましい。
【0047】
光学式ポインティング装置1の厚さは、光路変換素子22の厚さによって制約されることは先に述べたが、本実施形態に用いられる光路変換素子22の厚さ(換言すれば、接触面11に対して垂直な方向への、光路変換素子22の最大距離)は、約1.5mm〜約0.5mmであることが好ましく、約1.0mm〜約0.7mmであることが更に好ましく、約0.8mm〜約0.9mmであることが最も好ましい。上記構成であれば、光学式ポインティング装置1の厚さを薄くすることができる。
【0048】
例えば、光路変換素子22の厚さが約0.8mm〜約0.9mmである場合には、光学式ポインティング装置1の全体の厚さは、光路変換素子22の厚さに対してセンサー基板、センサモールドおよびDSPなどの厚さを加えて、約1.5mm〜約2mmとなる。当該光学式ポインティング装置1の全体の厚さは、従来技術と比較して格段に薄いと言える。
【0049】
図1では、光路変換面12aおよび光路変換面12bの間の角度θ1は90°で配置されており、接触面11と、光路変換面12aおよび光路変換面12bとの間の角度θ3は45°で配置されている。この場合には、結像素子14a、結像素子14b、撮像素子15aおよび撮像素子15bなどを同一軸上に配置できるため、光学式ポインティング装置1の組立性が向上するというメリットがある。
【0050】
θ1=90°、θ3=45°とすれば、図2(a)に示すように、光源16からの光は、経路Mに沿って進む。それ故に、若干ではあるが、接触面11において、光が照射されないもしくは照射されていても光量が極めて少ない不感帯が生じる。この不感帯は、被写体10の像がイメージセンサー領域に取り込まれる際に、イメージセンサーの中心付近に結像するため、イメージセンサーにおける像の認識精度が低下し、光学式ポインティング装置の操作性が低下する。なお、図2(b)に、接触面11に生じた不感帯の幅Xを示す。
【0051】
図3に、第1実施形態の変形例1を示す。
【0052】
図3に示すように、光路変換面12aと光路変換面12bとは、接触面11上で連結する形態にて配置されている。
【0053】
図3において、光路変換面12aおよび光路変換面12bがなす角度θ2は、90°よりも大きく、接触面11と、光路変換面12aおよび光路変換面12bとがなす角度θ3は、45°よりも小さい。光路変換面12aおよび光路変換面12bがなす角度θ2が90°よりも大きく、接触面11と、光路変換面12aおよび光路変換面12bとがなす角度θ3は、45°よりも小さければ、光源16から接触面11へ到達する光の経路はM´となる(図4参照)。そして、図4と図2とに図示したように、光路変換面12aおよび光路変換面12bがなす角度θ2が90°よりも大きく、接触面11と、光路変換面12aおよび光路変換面12bとなす角度θ3が45°よりも小さければ、角度θ2が90°(この時の角度θ3は45°)の場合と比較して、不感帯を更に削減することができる。つまり、角度θ3が45°よりも小さい角度となるように配置することによって、光源16からの照射光の光軸を不感帯側に曲げることができ、被写体10の検出エリアが不感帯側にシフトして、不感帯領域を削減することができる。
【0054】
図4のように、光路変換面12aおよび光路変換面12bがなす角度θ2を90°よりも大きくすれば、光路変換面12aおよび光路変換面12bにて反射された、接触面11からの光の光軸は同一軸上に存在しなくなるため、角度θ2が90°である場合と比較して、光学式ポインティング装置1の組立性は悪くなる。しかしながら、接触面11に対して照射される光の角度を制御することによって、接触面11上の不感帯の面積を大幅に縮小できるので、イメージセンサー上での被写体10の認識率を上昇させることができる。その結果、光学式ポインティング装置1の操作性を大きく改善することができる。
【0055】
また、図2(a)および図4(a)に示したように、Y>Y´である。つまり、光路変換面12aおよび光路変換面12bがなす角度を90°よりも大きくすれば、角度が90°である場合と比較して、光路変換素子22の厚さを更に薄くすることができる。それ故に、光路変換面12aおよび光路変換面12bがなす角度を90°よりも大きくすれば、被写体10の撮像領域を広く確保したまま、光学式ポインティング装置1を更に薄型化することができる。
【0056】
なお、光路変換面12aおよび光路変換面12bがなす角度θ2は、90°よりも大きいことが好ましいが、より好ましくは90°〜110°、さらに90°〜100°であることが特に好ましい。換言すれば、接触面11と光路変換面12aおよび光路変換面12bとが形成する角度θ3は、45°より小さいことが好ましいが、より好ましくは35°〜45°、さらに40°〜45°であることが特に好ましい。この範囲内であれば、不感帯を小さくしつつ、かつ組立性を維持できるため、好ましい。
【0057】
本実施形態において、図2では、Y=0.83mmであったのに対し、図4では、Y´=0.68mmとなり、厚さ方向に関して約0.15mm薄くすることができる。このことは、光学式ポインティング装置1の全厚さを約1.5mmとした場合に、本発明によって、光学式ポインティング装置1の全厚さを約1割薄くすることが可能であることを示している。
【0058】
更に、図2(b)および図4(b)において、例えば、接触面11の面積を約0.75mm角であるとすれば、図2(b)における不感帯の幅Xは0.2mmであるのに対して、図4(b)における不感帯の幅X´は0.1mmとなる。つまり、光路変換面12aおよび光路変換面12bがなす角度を90°よりも大きくすれば、不感帯の面積は、光路変換面12aおよび光路変換面12bがなす角度が90°である場合の不感帯の面積の半分になる。その結果、結像素子を介して撮像素子上に結像される光の信号光量を増やすことができるとともに、光学式ポインティング装置1の操作性を更に改善することができる。
【0059】
以上、本実施形態を実施するための一例を示したが、具体的に示した値は本実施形態を実施するための一例であって、光路変換面の形状の最適化、光路変換素子や結像素子を形成する材料を任意に変更することによって、更なる薄型化効果を実現することが可能であるとともに、不感帯の面積を削減することが可能である。
【0060】
従来の光学式ポインティング装置では、接触面で散乱および反射された光は、被写体の像を、1つの光路変換面へ投影する。それ故に、従来の光学式ポインティング装置は、本発明と比較して1つの光路変換面へ照射される光の量が多くなる。したがって、従来の光学式ポインティング装置では、光路変換面のサイズ(換言すれば、面積)が大きい必要があり、その結果、光路変換面が垂直方向へ長くなる。従来の光学式ポインティング装置では、接触面上に十分な被写体検出エリアを確保するために、光路変換面を長く、すなわち光学式ポインティング装置の厚さを厚くせざるを得ず、光学式ポインティング装置の薄型化のメリットが損なわれ、携帯情報端末等の小型薄型化を競う装置への搭載に支障が出る。
【0061】
イメージセンサーに取り込まれる被写体10の像の面積を小さくすることも考えられるが、取り込まれる被写体の面積が小さくなると、被写体の特徴点を抽出することが難しくなり、イメージセンサーにおける被写体10の認識精度が低くなる。イメージセンサーにおいて、凹凸が存在する被写体10の認識精度を高く確保するためには、被写体の撮像面積は、例えば指紋であれば、凹凸模様2本分(約1mm)以上であることが望ましい。また、像の撮像面積を小さくすると、撮像素子上におけるピクセル数の減少、またはピクセルへ取り込まれる光量の減少をまねき、その結果、イメージセンサー上での像が暗くなるとともに、被写体10の認識精度が低下する。
【0062】
図5〜図8に光路変換素子22の一例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0063】
図5に、光路変換素子22の一例を示す。図5に示す光路変換素子22は、三角柱の形状をした2つのプリズム22aおよびプリズム22bが連結されて構成されている。そして、2つのプリズムが連結されることによって接触面11が形成されているとともに、2つのプリズムの連結部が接触面11上に存在している。当該接触面11の具体的な構成としては特に限定されないが、プリズム22aの一表面とプリズム22bの一表面とが連結されて、1つの平面として接触面11が形成されていることが好ましい。
【0064】
図6に光学変換素子22の別の一例を示す。図6に示す光路変換素子22では、光路変換面12aと光路変換面12bの端点が直接連結されているとともに、光路変換面12aと光路変換面12bの連結部が接触面11上に存在しない、1つの部材として一体成形されている。これによって、部品数を削減することができる。また、組立性を向上させることができるとともに、コストを低減させることができる。
【0065】
図7は、図6に示す光路変換素子22のA−Aに沿った断面図である。図7に示すように、例えば、光路変換面12a、光路変換面12bおよび接触面11が一体成形されている場合には、頂辺12c(上述した2つのプリズムの連結部に対応)と接触面11とが離れた構成となり、頂辺12cの周辺の機械的強度が強くなる。頂辺12cと接触面11との距離は特に限定されないが、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることが更に好ましい。
【0066】
図8は、図5〜図7に示す光路変換素子22の変形例であって、図6のA−Aに沿った断面に相当する。高い強度を必要としない用途や装置であれば、図8のように、光路変換素子22が分割された状態にて形成されてもよい。この場合、光路変換面は、光路変換面12aと光路変換面12bとに分割され、接触面は接触面11aと接触面11bとに分割されている。上記構成であれば、分割される各々の光のクロストークが低減され、信号のS/N比が良くなる。
【0067】
図9に、第1実施形態の変形例2を示す。
【0068】
図9に示す変形例では、図1または図3に示す構成とは異なり、結像素子14aと撮像素子15aとの間、および、結像素子14bと撮像素子15bとの間に、光路を折り曲げるための光路変換素子27aと光路変換素子27bとが設けられている。
【0069】
光路変換素子27aおよび光路変換素子27bの具体的な構成としては特に限定されず、適宜公知の構成を用いることができる。例えば、プリズムなどを用いることが可能である。
【0070】
光路変換素子27aおよび光路変換素子27bが折り曲げる光路の方向は特に限定されないが、光学式ポインティング装置1の厚さ方向に折り曲げることが好ましく、光学式ポインティング装置1の略垂直方向へ折り曲げることが更に好ましいといえる。上記構成によれば、撮像素子15aと撮像素子15bとを同一平面上に配置できるため、撮像素子や配線を容易に設けることができる。
【0071】
本発明の光学式ポインティング装置によれば、被写体からの散乱反射光の光路を、複数の光路変換面を有する光路変換素子によって分割するので、装置の薄型化を実現できる。さらに個々の光路変換面を小さく形成することができる。つまり、光路変換素子は、1つの大面積の光路変換面を備える必要がないので、光路変換素子を小さく形成することができる。光路変換素子の大きさは光学式ポインティング装置の厚さを決める重要な構成であるので、小さな光路変換素子を用いる本発明であれば、光学式ポインティング装置の薄型化および小型化を実現できる。
【0072】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態について図10を用いて説明する。なお、以下の実施形態において、上記第1実施形態と同一の機能および作用を示す部材については、同一の符号を付して、その説明を省略する。第2実施形態に関する理解を助けるために、図10のB−B、C−C、D−Dに沿った断面を、それぞれ図11、12、13に示す。
【0073】
第1実施形態では、分割された光路の数と同じ個数の撮像素子を使用したが、第2実施形態では分割された複数の光路を、第4光路変換素子36(画像合成素子)を用いて一つの撮像素子に合成することができる。
【0074】
図10に示すように、第2実施形態の光学式ポインティング装置は、第1光路変換素子32、第2光路変換素子37a、第2光路変換素子37b、第4光路変換素子36、第3光路変換素子38aおよび第3光路変換素子38bを備えている。各構成の配置は特に限定されないが、例えば、第1光路変換素子32は、第2光路変換素子37aと第2光路変換素子37bとの間に設けられていることが好ましく、第4光路変換素子36は、第3光路変換素子38aと第3光路変換素子38bとの間に用いられていることが好ましい。当該配置においては、更に、第1光路変換素子32と第4光路変換素子36とが対向するように配置され、第2光路変換素子37aと第3光路変換素子38aとが対向するように配置され、第2光路変換素子37bと第3光路変換素子38bとが対向するように配置されていることが好ましい。以下に、各構成について詳細に説明する。
【0075】
被写体10の像は、第1光路変換素子32の上側の面である接触面11から取り込まれる。なお、第1光路変換素子32としては、上述した光路変換素子22と同じ構成を用いることが可能である。
【0076】
第1光路変換素子32は、互いに垂直である二つの第1光路変換面42aおよび第1光路変換面42bを有している。勿論、第1光路変換面42aと第1光路変換面42bとは、90°よりも大きい角度をなすように設けられることも可能である。
【0077】
被写体10が接触面11と接する領域の像は、第1光路変換面42aおよび第1光路変換面42bによって反射(好ましくは全反射)され、二つの異なる光路aと光路bとに分割される。
【0078】
第1光路変換面42aと第1光路変換面42bとは、互いに90°の角度をなすように配置されており、光路aと光路bとに分割された光は、第1光路変換面42aまたは第1光路変換面42bで反射された後、同じ光軸上を逆向きに離れる方向へ進む。
【0079】
光路aと光路bとに分割された光は、それぞれ第2光路変換素子37aおよび第2光路変換素子37b中を進む。第2光路変換面47aおよび第2光路変換面47bは、それぞれ第2光路変換素子37aおよび第2光路変換素子37b上に、第1光路変換素子32上の接触面11に対して対称に配置されている。そして、第2光路変換面47aおよび第2光路変換面47bによって、光路aと光路bとに分割された光の進行方向が変えられる。
【0080】
第2光路変換素子37aおよび第2光路変換素子37bは光の方向を変えることができる構成であればよく、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、プリズムなどを用いることが可能であるが、これに限定されない。第2光路変換素子37aおよび第2光路変換素子37bの形状は特に限定されないが、例えば、柱状であることが好ましく、三角柱であることが更に好ましい。三角柱である場合には、その上面と下面とは、直角三角形の形状であることが更に好ましい。第2光路変換面47aおよび第2光路変換面47bの具体的な構成は特に限定されないが、例えば、光路aおよび光路bが、45°の入射角にて第2光路変換面47aおよび第2光路変換面47bに向かって入射できるように設けられていることが好ましい。上記構成によれば、光学式ポインティング装置1を小型化することができる。
【0081】
第2光路変換面47aおよび第2光路変換面47bによって進行方向が変えられた光(換言すれば、光路aおよび光路b)は、それぞれ第3光路変換素子38aおよび第3光路変換素子38b中を進む。第3光路変換面48aおよび第3光路変換面48bは、それぞれ第3光路変換素子38aおよび第3光路変換素子38b上に、撮像素子15に対して対称に配置されている。そして、第3光路変換面48aおよび第3光路変換面48bによって、光(換言すれば、光路aおよび光路b)の進行方向が変えられる。
【0082】
光路aと光路bとに分割された光は、それぞれ、第2光路変換面47aと第3光路変換面48aとにおける2回の反射、または、第2光路変換面47bと第3光路変換面48bとにおける2回の反射によって、同じ光軸上で向かい合う方向へ進むことになる。この向かい合った光路が交わる位置に、二つの光路を垂直方向に折り曲げる第4光路変換面46aおよび第4光路変換面46bを有する第4光路変換素子36を配置することによって、光路aと光路bとに分割された光が、一つの撮像素子15上に結像する。つまり、第4光路変換素子36は、複数の光路に分割された光を一つの撮像素子に結像するための画像合成素子として機能する。
【0083】
第3光路変換素子38aおよび第3光路変換素子38bは光の方向を変えることができる構成であればよく、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、プリズムなどを用いることが可能であるが、これに限定されない。第3光路変換素子38aおよび第3光路変換素子38bの形状は特に限定されないが、例えば、柱状であることが好ましく、三角柱であることが更に好ましい。三角柱である場合には、その上面と下面とは、直角三角形の形状であることが更に好ましい。第3光路変換面48aおよび第3光路変換面48bの具体的な構成は特に限定されないが、例えば、光路aおよび光路bが、45°の入射角にて第3光路変換面48aおよび第3光路変換面48bに向かって入射できるように設けられていることが好ましい。上記構成によれば、光学式ポインティング装置1を小型化することができる。
【0084】
第4光路変換素子36の具体的な構成は特に限定されないが、例えば、上述した光路変換素子22と同じ構成を用いることが可能である。この場合、第4光路変換素子36では、光路変換素子22における接触面11に相当する面上に撮像素子15が設けられることが好ましい。
【0085】
第4光路変換素子36として第1光路変換素子32と同じ構成を用いる場合には、第4光路変換素子36と第1光路変換素子32との配置様式は特に限定されない。例えば、図10に示すように、第4光路変換素子36と第1光路変換素子32とを逆向きに配置することも可能であるし、第4光路変換素子36と第1光路変換素子32とを同じ向きに配置することも可能である。接触面11と撮像素子15とをできるだけ離して設ければ光学式ポインティング装置の構成をより薄型化することができるので、当該観点に基づけば、第4光路変換素子36と第1光路変換素子32とを逆向きに配置することが好ましいといえる。
【0086】
第3光路変換素子38aおよび第3光路変換素子38b上には、それぞれ結像素子14aおよび結像素子14bが設けられていることが好ましい。この場合、第3光路変換素子38aと結像素子14aとを一体成形し、第3光路変換素子38bと結像素子14bとを一体成形することが好ましい。結像素子14aおよび結像素子14bを設ける位置は特に限定されない。例えば、第3光路変換素子38aの表面であって、第2光路変換素子37aに対向する面の上に結像素子14aが設けられ、第3光路変換素子38bの表面であって、第2光路変換素子37bに対向する面の上に結像素子14bを設けられていることが好ましい。上記構成であれば、複数の光路に分割された光を一つの像面に合成することができるので、撮像素子15の数を減少させることができる(例えば、撮像素子15の数を1つにすることができる)。
【0087】
第2実施形態では二つの光路に分割された光は、一つの撮像素子15上の異なる領域に結像する。
【0088】
図14の矢印よりも上の図面にて示すように、例えば、接触面11上の被写体である英字「A」が、本発明の光路変換素子によって上下二分割にて撮像された場合には、図14の矢印よりも下の図面にて示すように、二つの反転した像として撮像素子15上に結像される。
【0089】
この場合には、光路aを進む光が結像する領域と、光路bを進む光が結像する領域とに対して、それぞれ画像反転処理を行い、画像の向きを修正した後で被写体の動きを算出することが好ましい。
【0090】
第2実施形態の構成によれば、複数の光路に分割された光を合成するための画像合成素子を用いることによって、1つの撮像素子による像の取り込みが可能となり、低コスト化を実現できる。
【0091】
以上、主として、第1光路変換面42aと第1光路変換面42bとの間の角度が90°である場合について述べたが、2つの光路変換面の間の角度を90°よりも大きくすることも勿論可能である。この場合には、2つの光路変換面の間の角度が90°である場合と比較して、光学式ポインティング装置の組立性は低下するものの、光学式ポインティング装置をより薄型化できるとともに不感帯をより削減することができる。
【0092】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態について、図15〜図17を用いて説明する。
【0093】
本発明の光学式ポインティング装置を、電子機器に搭載する一部品として使用する場合には、接触面11以外の光学素子が被写体10と接触することを避けるために、本発明の光学式ポインティング装置にカバーを設けることが好ましい。このとき、当該カバーによって、光学式ポインティング装置の光学素子全体を覆うことが好ましい。この場合、図15および図16に示すカバー50の裏面が、接触面として機能し得る。カバー50の裏面は、被写体と直接接触することも可能であり、カバー50の上に施されたコーティングを介して被写体と接触することも可能である。カバー50の材質は特に限定されず、例えば、LED光源より放射される赤外光(波長850nm)を透過させ得る材質であり得る。
【0094】
垂直方向の厚さが約1mm〜2mm程度である本発明の光学式ポインティング装置においては、カバーを設けることによる垂直方向の厚さの増加は無視することができない。そこで、第3実施形態では、カバーと第1光路変換素子とを一体化させることによって、光学式ポインティング装置全体の垂直方向の厚さを薄くすることを実現している。なお、図15〜図17では、第1光路変換素子32のみならず第2光路変換素子37aおよび第2光路変換素子37bをもカバーとともに一体化させているが、本発明はこれに限定されない。第2光路変換素子とカバーとは必ずしも一体化させる必要はないが、接触面11以外の光学素子が被写体10と接触することを避けるためには、第1光路変換素子のみならず第2光路変換素子をもカバーとともに一体化させることが好ましいといえる。
【0095】
図15(a)は、第3実施形態の構成要素であるカバー50の斜視図である。当該カバー50は、例えば、第2実施形態における第1光路変換素子32、第2光路変換素子37aおよび第2光路変換素子37bと一体化して形成されている。図15(b)は、第3実施形態の構成要素である光学部品60の斜視図である。当該光学部品60には、例えば、第2実施形態における第4光路変換素子36、第3光路変換素子38aおよび第3光路変換素子38bが含まれている。
【0096】
図16は、カバー50と光学部品60とを組み立てたときの斜視図である。図16のE−E、F−FおよびG−Gにおける断面を、それぞれ図17(a)、図17(b)および図17(c)に示す。なお、図17(a)〜図17(c)は、図16に示す構成を、上下逆転させた状態で示している。
【0097】
被写体10の散乱光は、接触面11(図示せず)を透過した後、第1光路変換面42aおよび第1光路変換面42bで反射(好ましくは全反射)され、第2光路変換素子37aおよび第2光路変換素子37b上に設けられた第2光路変換面47aおよび第2光路変換面47bにて再び反射された後に空気中へ射出され、結像素子14aまたは結像素子14bから光学部品60内へ入射する。
【0098】
光学部品60に設けられた結像素子14aおよび結像素子14bによって集められた光は、第3光路変換面48aおよび第3光路変換面48bによって、互いに向かい合う光となる。そして、当該光は、第4光路変換面46aおよび第4光路変換面46bによって、光学式ポインティング装置の厚さ方向へ進行方向が変えられた後、撮像素子15上に結像する。
【0099】
図15(a)に示すように、カバー50は光学式ポインティング装置の光学素子全体を覆うように配置されている。さらにカバー50の一部には、第1光路変換面42aおよび第1光路変換面42bが設けられるとともに、第2実施形態の第1光路変換素子32に相当する光学部品がカバー50と一体化している。このような構成にすることによって、第2実施形態の第1光路変換素子32の上にさらにカバー50を配置する場合に比べて、光学式ポインティング装置の垂直方向の厚さを薄くすることができる。
【0100】
第3実施形態ではさらに、カバー50に第2光路変換面47aおよび第2光路変換面47bを設けることによって、第2実施形態の第2光路変換素子37aおよび第2光路変換素子37bに相当する光学部品をカバー50と一体化している。上記構成によれば、部品数を削減できるので、光学式ポインティング装置の生産性を向上させることができる。
【0101】
図15(b)に示すように、結像素子14aおよび結像素子14bと、第2実施形態の第3光路変換素子38aおよび第3光路変換素子38bに相当する光学部品と、第2実施形態の第4光路変換素子36に相当する光学部品も一体化し、一つの光学部品60を形成している。上記構成によれば、部品数を削減できるので、光学式ポインティング装置の生産性を向上させることができる。
【0102】
図16に示すように、光学部品60をカバー50の内部に嵌め込むことによって、光学式ポインティング装置を位置精度良く組み立てることが可能である。なお、結像素子14aおよび結像素子14bをカバー50と一体化すれば、カバー内部に結像素子14aおよび結像素子14bのレンズ面が配置されるため、成型加工が非常に困難になるとともに、レンズ面の形状精度を十分に得ることができない。したがって、カバーと一体化するのは第2光路変換面を備える構成までとすることによって、カバーの形状が平面のみで構成でき、その結果、一体成形によるカバーの作製が可能となるとともに、コストの低減および製造性の改善を実現できる。
【0103】
結像素子14aおよび結像素子14bに関しては、光学部品60と一体化することによって、結像素子14aおよび結像素子14bを光学部品60の外側の壁面上に設けることが可能となる。その結果、光学部品60の成型が容易になるとともに、レンズ面の形状精度を十分に得ることができる。
【0104】
以上に説明したように、第3実施形態の構成によれば、光学式ポインティング装置にカバー50を配置しながら、しかも、光学式ポインティング装置の垂直方向の厚さを薄くすることができる。また、部品数はカバー50と光学部品60との二つになるので、光学式ポインティング装置の組立工程を短縮化することが可能になるとともに、光学式ポインティング装置の生産性を向上させることが可能になる。また、カバー50の内部に光学部品60をはめ込むことで、特別な調整をすることなく光学部品60を位置精度良く組み立てることができる。
【0105】
〔第4実施形態〕
第1実施形態〜第3実施形態では、光路変換素子22または第1光路変換素子32によって分割された光路aと光路bとは、光路変換素子22または第1光路変換素子32に対して対称であったが、必ずしも対称である必要はない。また、光路の分割は2つに限定されない。
【0106】
第4実施形態では、光路を3分割する場合に関して説明するが本発明はこれに限定されない。光路を4つ以上に分割する場合も本発明に含まれる。なお、光路を4つ以上に分割する場合に用いられる、光路変換素子22または第1光路変換素子32に相当する構成は特に限定されず、例えば、光路を4つ以上に分割することができる公知のプリズムを用いることが可能である。
【0107】
第4実施形態では、光路変換素子52の光路変換面の数を増やすことによって、被写体の像を結像素子や撮像素子の方向に反射する際に、1つの光路変換面によって反射される光の量が少なくなる。それ故に、光路変換素子52を厚さ方向に短くすることができるため、薄型の光学式ポインティング装置が実現できる。
【0108】
図18は、三角錐の形状を有する光路変換素子52を用いて3つの光路へ光を分割する光学式ポインティング装置を示している。
【0109】
図示されない接触面上の被写体からの光は、光路変換素子52へ散乱および反射される。三角錐の光路変換素子52の表面上には反射膜(例えば、アルミなどで形成された金属製の反射膜)がスパッタ等で成膜されており、反射面である光路変換面62a、光路変換面62bおよび光路変換面62cが形成されていることが好ましい。
【0110】
接触面上の被写体からの光は、光路変換素子52によって光路a、光路bおよび光路cに三分割される。光路a、光路bおよび光路cに分割された光は、それぞれ各光路上に配置された結像素子14a、結像素子14bおよび結像素子14cによって、各光路上に配置された撮像素子15a、撮像素子15bおよび撮像素子15c上に結像する。
【0111】
撮像素子上に結像された像は、図示されないDSP(Digital Signal Processor)内に、各撮像素子からの画像データとして取り込まれた後、一つの画像へと合成される。
【0112】
撮像素子15a、撮像素子15bおよび撮像素子15cの具体的な構成としては限定されないが、例えばCMOSセンサー、CCDセンサー等のイメージセンサーを用いることが可能であって、被写体の像を一定間隔で撮像し続け、遂次データとしてDSP内に取り込まれることになる。
【0113】
被写体が移動した場合には、撮像された画像は直前に撮影したものとは、所定量だけずれた画像となる。画像中の同一部分のずれ量をDSPによって比較して、被写体の移動量と移動方向が判断される。
【0114】
〔第5実施形態〕
本発明の光学式ポインティング装置は、電子機器(例えば、携帯型電話機、電話機、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯型電子書籍、小型ノートPC、またはデジタルカメラなど)に搭載され得る。
【0115】
本実施形態の電子機器は、モニター側筐体、操作側筐体、マイク部、テンキー、モニター部、スピーカー部、および本発明の光学式ポインティング装置を備えていることが好ましい。本実施形態の電子機器では、光学式ポインティング装置は、テンキーの上部に配置されていることが好ましい。
【0116】
一般的に、携帯電話機などの電子機器の厚さを決定する部品は、マイク部、テンキー、および光学式ポインティング装置である。この中で、光学式ポインティング装置の厚さが最も厚く、光学式ポインティング装置の薄型化は、携帯型電話機の薄型化を実現する上で最も重要である。
【0117】
従来技術で達成できなかった薄型化と操作性の向上を両立させることが可能な本発明の光学式ポインティング装置は、携帯型電話機等の小型電子機器に好適に用いられ得る。
【0118】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の光学式ポインティング装置は、被写体の認識精度を低下させることなく、小型化および薄型化され得る。それ故に、薄型化や小型化が重要な意味を持つ電子機器(例えば、携帯型電話機、電話機、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯型電子書籍、小型ノートPC、またはデジタルカメラなど)に用いることができる。指紋認証システム等のスキャナー装置や、光入力インターフェイス全般に用いることができる。
【符号の説明】
【0120】
1 光学式ポインティング装置
10 被写体
11 接触面
12a・12b 光路変換面
12c 頂辺
13a、13b 出射面
14a・14b・14c 結像素子
15a・15b・15c 撮像素子
16 光源
22・52 光路変換素子
22a・22b プリズム
27a・27b 光路変換素子
32 第1光路変換素子
36 第4光路変換素子
37a・37b 第2光路変換素子
38a・38b 第3光路変換素子
42a・42b 第1光路変換面
46a・46b 第4光路変換面
47a・47b 第2光路変換面
48a・48b 第3光路変換面
50 カバー
60 光学部品
62a・62b・62c 光路変換面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体と接する接触面と、
前記接触面に向かって照射光を照射する光源と、
前記接触面からの反射光を複数の光路へ分割するための複数の光路変換面を有する光路変換素子と、を備え、
前記複数の光路変換面は、前記接触面との角度が45°以下となるように設けられていることを特徴とする光学式ポインティング装置。
【請求項2】
前記光路変換面同士が、90°以上の角度をなすように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光学式ポインティング装置。
【請求項3】
前記光路変換面の数は、前記光路変換素子の数よりも多いことを特徴とする請求項1または2に記載の光ポインティング装置。
【請求項4】
撮像素子を更に備え、
前記複数の光路へ分割された反射光を前記撮像素子へ合成するための画像合成素子を備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光学式ポインティング装置。
【請求項5】
前記複数の光路変換面の少なくとも1つは、前記接触面上において別の光路変換面と交わっていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の光学式ポインティング装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の光学式ポインティング装置を備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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