説明

光学式体組成測定装置

【課題】生体の広範囲にわたり体組成を正確に測定することのできる光学式体組成測定装置を提供する。
【解決手段】
測定部30には、皮膚に向けて光を照射する照射部と生体の内部を伝播した光を受光する第1受光部35及び第2受光部とが配設されている。また、この測定部30が皮膚に沿う方向においていずれの方向にも滑らかに移動可能となるために、球体21を備えた可動部20が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体表面に向けて光を照射する照射部と生体の内部を伝播した光を受光する受光部とを備える光学式体組成測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学式体組成測定装置として、生体表面に向けて照射した光の量に対する生体内部を伝播して再び生体表面にあらわれる光の量を測定することで、生体内部の皮下脂肪厚を測定する皮下脂肪測定装置が提案されている。
【0003】
同図26に示されるように、この皮下脂肪測定装置は、フラットな形状からなる測定板101を備えている。この測定板101の内部には、照射部102、第1受光部103及び第2受光部104が形成されている。第1受光部103は、照射部102から第1の距離をおいて設けられている。第2受光部104は照射部102から第1の距離よりも長い第2の距離をおいて設けられている。
【0004】
照射部102及び第1受光部103及び第2受光部104の内部には、発光素子及び第1受光素子及び第2受光素子(いずれも図示せず)がそれぞれ取り付けられている。発光素子は、皮膚111に向けて所定量の光を照射する。この照射された光は、図26に矢印にて示されるように、生体内部に入射してその一部が生体内部を伝播し、再び皮膚111上にあらわれる。このように再び皮膚111上に再びあらわれた光は、第1受光素子または第2受光素子により受光される。
【0005】
第1受光素子の受光量と第2受光素子の受光量との比(受光量比率)は、生体の皮下脂肪厚と一定の相関を有しているため、この受光量比率に基づいて、装置本体100が押し付けられる箇所の皮下脂肪厚を算出することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ところで、生体内における皮下脂肪厚の分布には大きなばらつきがあるため、皮下脂肪厚を正確に把握するためには生体の広範囲にわたり皮下脂肪厚の測定を行うことが必要となる。しかし、特許文献1の皮下脂肪測定装置では、特定の部位における生体内部の皮下脂肪厚を測定することはできるものの、広範囲にわたる皮下脂肪厚の測定を行うことはできない。
【0007】
一方、特許文献2の皮下脂肪測定装置では、生体において基準位置を予め定めておき、この基準位置から測定位置までの移動方向及び移動距離を測定することのできるセンサを設け、皮下脂肪厚を広範囲にわたり測定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−207626号公報
【特許文献2】特開平7−15835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、皮下脂肪厚の測定において、外部からの光(外乱光)が受光素子に入射したときには、皮下脂肪厚の測定精度が低下する。このため、皮下脂肪厚を正確に測定するためには、測定部を体表面に押し付けつつ測定を行うことが必要となる。すなわち、外乱光の影響による測定精度の低下を抑制しつつ皮下脂肪厚を広範囲にわたり測定するためには、測定部を体表面に押し付けた状態で皮下脂肪測定装置を体表面に対して移動させることが必要となる。
【0010】
一方、特許文献2の皮下脂肪測定装置を上記のように体表面上で移動させたときには、測定部と体表面との摩擦にともない体表面が測定部に引っ張られることにより、測定部位の形状が安定しないため、皮下脂肪厚を正確に測定することはできない。
【0011】
なお、こうした問題は、特許文献2に記載の皮下脂肪測定装置に限らず、体表面にあらわれる光の量を測定することで体組成を測定する測定装置にあれば、概ね共通したものとなっている。
【0012】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、生体の広範囲にわたり体組成を正確に測定することのできる光学式体組成測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、体表面に向けて光を照射する照射部と生体の内部を伝播した光を受光する受光部とが設けられた測定部と、同測定部を体表面上において同表面に沿って滑らかに移動させるための可動部とを備えることを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、上記可動部を備えるようにしているため、測定部を体表面上で移動させたときに体表面が測定部に引っ張られることが抑制される。従って、生体の広範囲にわたり体組成を正確に測定することができる。
【0015】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学式体組成測定装置において、当該体組成測定装置は、記測定部により受光した受光量に基づいて体脂肪量を演算する演算部と、同演算部により演算した体脂肪量を表示する表示部と、体表面上での測定部の位置を検出する位置検出部とを備えるものであり、前記演算部は、前記位置検出部により検出された前記測定部の位置と前記演算により求めた体脂肪量とを対応付けることにより体脂肪量の2次元分布を求めるものであることを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、可動部を備えるものにおいて上記演算部を備えるようにしているため、測定部を通じて広範囲にわたり正確に測定されたデータに基づいて、体組成の2次元分布が求められるようになる。これにより、ユーザに対してより正確な体組成の分布を伝達することができる。
【0017】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の光学式体組成測定装置において、当該体組成測定装置は、前記測定部及び前記可動部を有する装置本体を含めて構成されるものであり、前記可動部は、前記装置本体から突出して同本体に設けられるものであることを要旨とする。
【0018】
同構成によれば、体組成の測定を行うときに装置本体の底面全体を体表面に接触させる必要がないため、体表面に接触した状態で装置本体を移動させたときに、装置本体により体表面が引っ張られることを好適に抑制することができる。
【0019】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の光学式体組成測定装置において、前記可動部及び前記測定部は、それぞれの一部が前記装置本体の一の面から突出して同本体に設けられるものであり、前記装置本体からの前記可動部の突出量が前記装置本体からの前記測定部の突出量以下に設定されることを要旨とする。
【0020】
同構成によれば、装置本体からの可動部の突出量を装置本体からの測定部の突出量以下に設定するようにしているため、可動部を備えるようにしているものの、測定部と体表面との間に隙間が生じることを抑制することができる。従って、測定部を体表面に対して適切に接触させることができる。
【0021】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学式体組成測定装置において、前記可動部は、体表面との接触にともない回転する球体を含むことを要旨とする。
【0022】
同構成によれば、体表面に接触した状態で測定部を移動させたとき、可動部が体表面との接触にともない回転することにより、体表面上において測定部がいずれの方向にも滑らかに移動するようになる。
【0023】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学式体組成測定装置において、前記可動部は、体表面との回転にともない回転する自在キャスタを含むことを要旨とする。
【0024】
同構成によれば、体表面に接触した状態で測定部を移動させたとき、可動部が体表面との接触にともない回転することにより、体表面上において測定部がいずれの方向にも滑らかに移動するようになる。
【0025】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学式体組成測定装置において、前記可動部は、体表面との接触面に設けられて体表面との摩擦を小さくするコーティング層を含むことを要旨とする。
【0026】
同構成によれば、上記可動部を備えるようにしているため、体表面に接触した状態で測定部を移動させたとき、体表面が測定部に引っ張られることが抑制される。従って、生体の広範囲にわたり体組成を正確に測定することができる。
【0027】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学式体組成測定装置において、前記測定部に対して測定を開始するためのトリガーを与える発信部を備えることを要旨とする。
【0028】
同構成によれば、上記発信部を備えるようにしているため、例えば測定部を体表面上で移動させた後に体組成の測定を一時的に中断したいときには、発信部の操作を通じてそうした中断を容易に実行することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、生体の広範囲にわたり体組成を正確に測定することのできる光学式体組成測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態の皮下脂肪測定装置について、その構成を示すブロック図。
【図2】第1実施形態の皮下脂肪測定装置の底面構造を示す底面図。
【図3】第1実施形態の皮下脂肪測定装置の平面構造を示す平面図。
【図4】第1実施形態の皮下脂肪測定装置について、図2のX1−X1断面の構造を示す断面図。
【図5】第1実施形態の皮下脂肪測定装置について、図2のX2−X2断面の構造の一部分を示す部分断面図。
【図6】第1実施形態の皮下脂肪測定装置について、図2のX3−X3断面の構造を示す断面図。
【図7】第1実施形態の皮下脂肪測定装置の使用態様を示す模式図。
【図8】第2実施形態の皮下脂肪測定装置の底面構造を示す底面図。
【図9】第2実施形態の皮下脂肪測定装置について、図8のY1−Y1断面の構造を示す断面図。
【図10】第2実施形態の皮下脂肪測定装置について、図8のY2−Y2断面の構造を示す断面図。
【図11】第3実施形態の皮下脂肪測定装置について、位置センサの平面構造を示す平面図。
【図12】第3実施形態の皮下脂肪測定装置について、位置センサの構成要素である円盤の平面構造を示す平面図。
【図13】第3実施形態の皮下脂肪測定装置について、(a)〜(c)は位置センサの構成要素であるセンサ用受光素子の構成を示す模式図。
【図14】第3実施形態の皮下脂肪測定装置について、(a)及び(b)は位置センサの出力の一例を示すグラフ。
【図15】第3実施形態の皮下脂肪測定装置の平面構造を示す平面図。
【図16】第3実施形態の皮下脂肪測定装置を用いて皮下脂肪厚を測定するときの測定位置の一例を示す模式図。
【図17】第3実施形態の皮下脂肪測定装置について、(a)〜(g)は表示部の表示例を示す模式図。
【図18】第3実施形態の皮下脂肪測定装置について、(a)及び(b)は同装置により求められた皮下脂肪厚と測定位置との関係の一例を示すグラフ。
【図19】第3実施形態の皮下脂肪測定装置により測定された皮下脂肪厚と測定位置との関係の一例を示すテーブル。
【図20】第3実施形態の皮下脂肪測定装置について、その位置センサの測定結果から求められた測定位置と基準位置との関係を示すグラフ。
【図21】第4実施形態の皮下脂肪測定装置について、図2のX4−X4断面の構造を示す断面図。
【図22】第5実施形態の皮下脂肪測定装置の断面構造を示す断面図。
【図23】他の実施形態の皮下脂肪測定装置の断面構造を示す断面図。
【図24】他の実施形態の皮下脂肪測定装置について、可動部及びその周辺の断面構造を示す断面図。
【図25】他の実施形態の皮下脂肪測定装置の断面構造を示す断面図。
【図26】従来の皮下脂肪測定装置の断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1実施形態)
図1〜図7を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。なお本実施形態では、生体の皮下脂肪厚を測定する皮下脂肪測定装置として本発明を具体化した場合について例示している。また以下の説明においては、生体の皮膚の表面を体表面として示している。
【0032】
図1に示されるように、皮下脂肪測定装置は、測定部30をはじめとする各種の機器が設けられた装置本体10と、この装置本体10の底部に設けられて体表面上にて装置本体10を滑らかに移動させるための可動部20とを含めて構成されている。
【0033】
装置本体10には、体表面に対して光を照射するとともに生体内を伝搬した光を受ける測定部30と、測定部30に対する制御指令の送信を行う制御部42と、測定部30の測定結果に基づく皮下脂肪厚の演算を行う演算部43と、演算結果としての皮下脂肪厚を表示する表示部16とが設けられている。またこの他に、ユーザによる操作を通じて装置本体10の電源をオンまたはオフするための電源スイッチ14と、同じくユーザによる操作を通じて皮下脂肪厚の測定を実行または停止するための測定スイッチ15とが設けられている。
【0034】
制御部42は、発光素子34及び表示部16及び電源スイッチ14及び測定スイッチ15と電気的に接続されている。また演算部43は、第1受光素子36及び第2受光素子38と電気的に接続されている。また制御部42と演算部43とは、これらの間でデータの送受信ができるように伝送路により接続されている。
【0035】
測定部30には、生体に光を照射する発光素子34と、生体内を伝搬した光を受ける第1受光素子36及び第2受光素子38とが設けられている。測定部30の測定結果である各素子の受光量に相当する信号は、演算部43に送信される。
【0036】
制御部42は、測定スイッチ15がオンのときに光を照射する旨の信号を発光素子34に対して送信する。一方、測定スイッチ15がオフのときには発光素子34に対する信号の送信を停止する。
【0037】
演算部43は、皮下脂肪厚の値を算出するために予め格納された関数と、第1受光素子36及び第2受光素子38のそれぞれから送信されたデータとに基づいて皮下脂肪厚を算出する。算出された皮下脂肪厚のデータは、表示部16に送信される。
【0038】
表示部16は、制御部42から送信される信号に基づいて、皮下脂肪厚をはじめとする各種の情報を表示する。皮下脂肪測定装置のユーザは、同表示部16に表示される情報を通じて皮下脂肪厚の測定結果等を把握することができる。
【0039】
図2〜図6を参照して、皮下脂肪測定装置の具体的な構造について説明する。なお、図2は同装置の底面構造を、図3は同装置の平面構造を、図4は図2のX1−X1断面構造を、図5は図2のX2−X2断面構造を、図6は図2のX3−X3断面構造をそれぞれ示す。
【0040】
図3に示されるように、装置本体10の上面には、表示部16及び電源スイッチ14及び測定スイッチ15がそれぞれ設けられている。表示部16としては、液晶画面に皮下脂肪厚の測定結果を数値で表示するものが設けられている。
【0041】
図2に示されるように、装置本体10には4つの可動部20が設けられている。また、照射部33及び第1受光部35及び第2受光部37は、装置本体10の底面上において一列に配置されている。照射部33と第1受光部35との距離(第1素子間距離k1)は、皮膚色素及び吸光特性及び散乱特性の違いによる影響を補正するために短く設定される。照射部33と第2受光部37との距離(第2素子間距離k2)は、第1素子間距離k1よりも長く設定される。
【0042】
図4及び図6に示されるように、装置本体10には、半球状のカバー13及びその開口部を覆う測定板12により構成される筐体11が設けられている。この筐体11内の空間には、制御部42及び演算部43が形成された基板41が設けられている。
【0043】
測定板12には、可動部20を構成する球体21が筐体11から突出する態様で設けられている。また測定板12の底面上には、可動部20を構成して球体21を支持する球体固定部23が取り付けられている。
【0044】
図5に示されるように、可動部20は、上記の球体21及び球体固定部23と、測定板12にはめ込まれて球体21を支持する球体受け部22とを含めて構成されている。球体21の直径R1は、球体受け部22の内側の直径R2よりもわずかに小さく、且つ球体固定部23の下端部内側の弦の長さR3よりも大きく設定されている。そして、このように球体21が球体受け部22及び球体固定部23により支持されていることにより、球体21は測定板12に対していずれの方向にも回転することが許容される。
【0045】
図6に示されるように、測定部30は、発光素子34を有する照射部33と、第1受光素子36を有する第1受光部35と、第2受光素子38を有する第2受光部37とを含めて構成されている。照射部33には、発光素子34の周囲を覆う円筒状のゴム製のキャップ31が設けられている。第1受光部35には、第1受光素子36の周囲を覆う円筒状のゴム製のキャップ31が設けられている。第2受光部37には、第2受光素子38の周囲を覆うゴム製のキャップ31が設けられている。各キャップ31の開口部には、光を透過するレンズ32がはめ込まれている。発光素子34としては、LEDが用いられている。第1受光素子36及び第2受光素子38としては、フォトダイオードが用いられている。
【0046】
発光素子34は、生体の皮膚に対する光の照射ができるように測定板12の底面上に設けられている。第1受光素子36及び第2受光素子38は、皮膚からの光を受けることができるように測定板12の底面上に設けられている。
【0047】
図4及び図6に示されるように、筐体11からの可動部20の突出量、すなわち測定板12の底面から可動部20の球体21の頂部(体表面との接触側)までの距離L1は、筐体11からの測定部30の突出量、すなわち測定板12の底面から測定部30のキャップ31の頂部までの距離L2よりも小さく設定されている。なお、照射部33及び第1受光部35及び第2受光部37は、測定板12の底面からキャップ31の頂部までの距離L2が互いに同じ大きさに設定されている。
【0048】
さて、上記構成の皮下脂肪測定装置を用いて、生体1の各部位として腹部2の皮下脂肪厚を測定するには、まず、ユーザは測定板12を腹部2の皮膚3に押し当て、測定スイッチ15を押す。
【0049】
図6に示されるように、発光素子34から生体1の内部に照射された光は、腹部2の皮膚3、脂肪4、または筋肉5を伝播して第1受光素子36及び第2受光素子38に受光される。演算部43は、第1受光素子36の受光量と、第2受光素子38の受光量との比(受光量比率)を算出する。さらに、演算部43は、予め定められた所定の関数を参照し、得られた受光量比率に基づいて、生体1における測定部の皮下脂肪厚を算出(推定)する。次に、制御部42は、算出した皮下脂肪厚を表示部16に表示させる。
【0050】
続いて、ユーザは、図7に示されるように装置本体10を皮膚3に押し付けた状態で一方の端部から他方の端部まで腹部2の表面、すなわち皮膚3上を矢印方向に移動させる。球体21はいずれの方向にも回転可能となるように支持されているため、装置本体10は、球体21の回転により滑らかに且つ自在に移動する。また、球体21は測定板12よりもL1だけ突出しているため、測定板12と生体1表面との間に摩擦が生じることは抑制される。このため、装置本体10は、生体1の表面上を滑らかに移動することができるようになる。また、測定板からの測定部30の突出量(距離L2)が測定板からの可動部の突出量(距離L1)よりも大きいため、各キャップ31の端面全体が体表面に押し付けられた状態に維持される。これにより、第1受光素子36及び第2受光素子38が外乱光を受光することが抑制される。
【0051】
本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)装置本体10は、照射部33と第1受光部35と第2受光部37とが設けられた測定部30と、測定部30を皮膚3上において皮膚3に沿って滑らかに移動させるための可動部20とを備えている。従って、測定部30を皮膚3上で移動させたときに皮膚3が測定板12に引っ張られることが抑制される。従って、生体1の広範囲にわたり皮下脂肪厚を正確に測定することができる。
【0052】
(2)本実施形態では、可動部20は、装置本体10から突出して同装置本体10に設けられる。従って、皮下脂肪厚の測定を行うときに装置本体10の底面全体を皮膚3に接触させる必要がないため、皮膚3に接触した状態で装置本体10を移動させたときに、装置本体10により皮膚3が引っ張られることを好適に抑制することができる。
【0053】
(3)本実施形態では、可動部20と、測定部30は、それぞれの一部が装置本体10の一の面から突出して同装置本体10に設けられるものであり、装置本体10からの可動部20の突出量(距離L1)は、装置本体10からの測定部30の突出量(距離L2)以下に設定されている。従って、可動部20を備えるようにしているものの、測定部30と皮膚3との間に隙間が生じることを抑制することができる。このため、測定部30を皮膚3に対して適切に接触させることができるようになる。
【0054】
(4)本実施形態では、可動部20は、皮膚3との接触にともない回転する球体21を含む。従って、皮膚3に接触した状態で測定部30を移動させたとき、球体21が皮膚3との接触にともない回転することにより、皮膚3上において測定部30がいずれの方向にも滑らかに移動するようになる。
【0055】
(第2実施形態)
図8〜図10を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の皮下脂肪測定装置は、前記第1実施形態の構成に対して次の変更を加えたものとなっている。すなわち、前記第1実施形態の装置本体10に代えて、矩形形状を呈する装置本体61を備えるようにし、また可動部として、第1実施形態の球体21に変えて自在キャスタ63を備えている。以下、この変更にともない生じる前記第1実施形態の構成からの詳細な変更について説明する。なお、前記第1実施形態と共通する構成については同一の符合を付してその説明を省略する。
【0056】
図8に示されるように、本実施形態の皮下脂肪測定装置は、略矩形形状を呈する装置本体61、及び装置本体61の下面中央部に配設される矩形板状をなす測定板62を備える。測定板62の中央部には、照射部33及び第1受光部35及び第2受光部37が、一列に配置されている。
【0057】
装置本体61の四隅には、自在キャスタ63が取り付けられている。図9に示されるように、自在キャスタ63は、車軸65と、車軸65の軸回りに回転可能となるように車軸65に取り付けられるブラケット66と、ブラケット66の両端部の間に架設された軸69と、軸69を中心として回転可能に取り付けられるローラ68を含めて構成される。自在キャスタ63は、車軸65をステータ64に嵌入することで、装置本体10に固定されている。
【0058】
ユーザが装置本体61を皮膚3に押し付けた状態で、皮膚3に対して装置本体61を移動させると、自在キャスタ63のローラ68が回転する。これにより、装置本体61は、滑らかに移動することができる。また、ブラケット66が車軸65の軸回りに回転可能であるため、ローラ68はいずれの方向にも回転することができる。従って、装置本体61は、いずれの方向にも滑らかに移動することができる。
【0059】
図10に示されるように、装置本体61の底面から自在キャスタ63の頂部までの距離L4は、測定板62の底面から測定部30を構成する各キャップ31の頂部までの距離L3よりも小さく設定されている。なお、照射部33及び第1受光部35及び第2受光部37は、測定板62の底面からキャップ31の頂部までの距離L2が同じ互いに大きさに設定されている。
【0060】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)〜(4)に加えて、以下の効果を奏することができる。
(5)本実施形態では、可動部は皮膚3との相対移動にともない回転する自在キャスタ63を含む。従って、皮膚3に接触した状態で測定部30を移動させたとき、自在キャスタ63のローラ68が皮膚3との接触にともない回転することにより、皮膚3上において測定部30がいずれの方向にも滑らかに移動するようになる。
【0061】
(6)本実施形態では、装置本体61からの自在キャスタ63の突出量(距離L4)は、装置本体61からの測定部30の突出量(距離L3)以下に設定されている。従って、可動部を備えるようにしているものの、測定部30と皮膚3との間に隙間が生じることを抑制することができる。このため、測定部30を皮膚3に対して適切に接触させることができるようになる。
【0062】
(第3実施形態)
図1及び図11〜図15を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。なお以下では、前記第1実施形態の構成からの変更点を中心に説明し、同実施形態と共通する構成については同一の符合を付してその説明を省略する。
【0063】
図1に破線にて示されるように、本実施形態の皮下脂肪測定装置には、装置本体10の内部に装置本体10の移動方向及び移動距離を測定する位置検出部としての位置センサ70が設けられている。また、図15に示されるように、カバー13にリセットボタン79が設けられている。ユーザは、リセットボタン79を押すことにより、以下説明する測定データ及び現在の座標についての情報をリセットすることができる。
【0064】
図11に示されるように、この位置センサ70は、発光素子34及び第1受光素子36及び第2受光素子38の配列方向(図中のD1及びD2方向)に延びる第1シャフト71、及び第1シャフト71の軸線に直交する方向(図中のE1及びE2方向)に延びる第2シャフト72を備えている。
【0065】
第1シャフト71及び第2シャフト72は、それぞれ球体21に直接的に接触するように設けられている。第1シャフト71には、第1シャフト71と一体的に回転可能となるように第1円盤73が取り付けられている。第2シャフト72には、第2シャフト72と一体的に回転可能となるように第2円盤74が取り付けられている。
【0066】
第1円盤73と対向するところには、同円盤73に向けて光を照射するセンサ用第1発光素子75が設けられている。第2円盤74と対向するところには、同円盤74に向けて光を照射するセンサ用第2発光素子76が設けられている配設されている。
【0067】
第1円盤73を挟んでセンサ用第1発光素子75と対向するところには、このセンサ用第1発光素子75から照射された光を受光するセンサ用第1受光部77が設けられている。第2円盤74を挟んでセンサ用第2発光素子76と対向するところにも、センサ用第2発光素子76から照射された光を受光するセンサ用第2受光部78が設けられている。
【0068】
図12に示されるように、第1円盤73には等角度間隔をおいて周方向に複数のスリット73aが形成されている。第2円盤74にも同様に、等角度間隔をおいて周方向に複数のスリット74aが形成されている。
【0069】
図13に示されるように、センサ用第1受光部77にはセンサ用第1受光素子77a,77bが、センサ用第2受光部78にはセンサ用第2受光素子78a,78bが設けられている。センサ用第1受光素子77a,77b、及びセンサ用第2受光素子78a,78bは、演算部43と電気的に接続されている。
【0070】
図11〜図14を参照して、位置センサ70の動作態様について説明する。
装置本体10がD1方向に移動すると、球体21は図11の矢印方向、すなわち右回りに回転する。この球体21の回転に伴って第1シャフト71が第1円盤73と一体となって回転する。第1円盤73が回転すると、センサ用第1発光素子75とセンサ用第1受光部77との間にスリット73aが所定の回転角度毎に現れるようになる。これにより、センサ用第1発光素子75から照射された光は、図14に示されるように、所定の回転角度をおいてセンサ用第1受光素子77a,77bに入射する。これら入射する光は、演算部43に電気信号として入力される。
【0071】
図13(a)及び(b)並びに図14(a)を参照して、第1円盤73が左回転するときの第1受光素子77a,77bによる光の受光状態の変化について説明する。
図13(a)に示されるように、スリット73aがセンサ用第1受光素子77a,77bのいずれとも重ならない位置にあるとき(回転位置RA)、図14(a)のP4にて示されるように、センサ用第1受光素子77a,77bは、いずれもセンサ用第1発光素子75から照射された光を受光しない。
【0072】
回転位置RAから第1シャフト71が左回りに回転すると、図13(b)に示されるように、スリット73aがセンサ用第1受光素子77bと重なり且つセンサ用第1受光素子77aとは重ならない位置に移動する(回転位置RB)。このとき、図14(a)のP1にて示されるように、センサ用第1受光素子77bがセンサ用第1発光素子75から照射された光を受光し、センサ用第1受光素子77aはセンサ用第1発光素子75から照射された光を受光しない。すなわち、左回りのときには、センサ用第1受光素子77bがセンサ用第1受光素子77aよりも先に光を受光する。
【0073】
回転位置RBから第1シャフト71が左回りにさらに回転すると、スリット73aがセンサ用第1受光素子77b及びセンサ用第1受光素子77aの両方と重なる位置に移動する(回転位置RC)。このとき、図14(a)のP2にて示されるように、センサ用第1受光素子77a,77bともにセンサ用第1発光素子75から照射された光を受光する。
【0074】
回転位置RCから第1シャフト71が左回りにさらに回転すると、スリット73aがセンサ用第1受光素子77aと重なり且つセンサ用第1受光素子77bとは重ならない位置に移動する(回転位置RD)。このとき、図14(a)のP3にて示されるように、センサ用第1受光素子77aがセンサ用第1発光素子75から照射された光を受光し、センサ用第1受光素子77bはセンサ用第1発光素子75から照射された光を受光しない。すなわち、左回りのときには、センサ用第1受光素子77bがセンサ用第1受光素子77aよりも先に光を受光しなくなる。
【0075】
回転位置RDから第1シャフト71が左回りにさらに回転すると、スリット73aがセンサ用第1受光素子77b及びセンサ用第1受光素子77aの両方と重ならない位置に移動する(回転位置RA)。このとき、図14(a)のP4にて示されるように、センサ用第1受光素子77a,77bともにセンサ用第1発光素子75から照射された光を受光しない。これ以降、第1シャフト71が左回りにさらに回転すると、回転位置RB及び回転位置RC及び回転位置RD及び回転位置RAの順にスリット73aの位置が変化し、上記と同様に各受光素子77a,77bの光の受光状態が変化する。
【0076】
図13(a)及び(c)並びに図14(b)を参照して、第1円盤73が右回転するときの第1受光素子77a,77bによる光の受光状態の変化について説明する。
図13(a)に示されるように、スリット73aがセンサ用第1受光素子77a,77bのいずれとも重ならない位置にあるとき(回転位置RA)、図14(b)のQ4にて示されるように、センサ用第1受光素子77a,77bは、いずれもセンサ用第1発光素子75から照射された光を受光しない。
【0077】
回転位置RAから第1シャフト71が右回りに回転すると、図13(c)に示されるように、スリット73aがセンサ用第1受光素子77aと重なり且つセンサ用第1受光素子77bとは重ならない位置に移動する(回転位置RD)。このとき、図14(b)のQ1にて示されるように、センサ用第1受光素子77aがセンサ用第1発光素子75から照射された光を受光し、センサ用第1受光素子77bはセンサ用第1発光素子75から照射された光を受光しない。すなわち、右回りのときには、センサ用第1受光素子77aがセンサ用第1受光素子77bよりも先に光を受光する。
【0078】
回転位置RDから第1シャフト71が右回りにさらに回転すると、スリット73aがセンサ用第1受光素子77a及びセンサ用第1受光素子77bの両方と重なる位置に移動する(回転位置RC)。このとき、図14(b)のQ2にて示されるように、センサ用第1受光素子77a,77bともにセンサ用第1発光素子75から照射された光を受光する。
【0079】
回転位置RCから第1シャフト71が右回りにさらに回転すると、スリット73aがセンサ用第1受光素子77bと重なり且つセンサ用第1受光素子77aとは重ならない位置に移動する(回転位置RB)。このとき、図14(b)のQ3にて示されるように、センサ用第1受光素子77bがセンサ用第1発光素子75から照射された光を受光し、センサ用第1受光素子77aはセンサ用第1発光素子75から照射された光を受光しない。すなわち、右回りのときには、センサ用第1受光素子77aがセンサ用第1受光素子77bよりも先に光を受光しなくなる。
【0080】
回転位置RBから第1シャフト71が右回りにさらに回転すると、スリット73aがセンサ用第1受光素子77a及びセンサ用第1受光素子77bの両方と重ならない位置に移動する(回転位置RA)。このとき、図14(b)のQ4にて示されるように、センサ用第1受光素子77a,77bともにセンサ用第1発光素子75から照射された光を受光しない。これ以降、第1シャフト71が右回りにさらに回転すると、回転位置RD及び回転位置RC及び回転位置RB及び回転位置RAの順にスリット73aの位置が変化し、上記と同様に各受光素子77a,77bの光の受光状態が変化する。
【0081】
このように、第1シャフト71の回転方向によって、センサ用第1受光素子77a及びセンサ用第1受光素子77bの光の受光状態が異なる。これにより、位置センサ70を通じて装置本体10の移動方向が検出される。
【0082】
演算部43は、第1シャフト71が回転する際には、センサ用第1受光素子77a,77bからの入力情報に基づいて、装置本体10がD1方向へ移動しているのか、もしくはD2方向へ移動しているのか判断する。演算部43は、このように装置本体10の移動方向を判断するとともに、入射する光に基づく電気信号の数に基づいて、装置本体10のD軸方向における移動距離を算出する。
【0083】
また演算部43は、センサ用第2受光素子78a,78bからの入力情報に基づいて、上記での説明に準じた態様をもって装置本体10のE軸方向への移動距離及び移動方向を測定する。
【0084】
このように演算部43は、センサ用第1受光素子77a,77bからの入力情報、及びセンサ用第2受光素子78a,78bからの入力情報に基づいて、装置本体10の移動距離及び移動方向を算出する。
【0085】
以下、この位置センサ70を用いて皮下脂肪の2次元分布を測定する一例を説明する。
演算部43には、2次元分布を作成するために必要な生体1における測定ラインが予め設定されている。図16に、測定ラインA〜Fを例示する。
【0086】
測定ラインAの測定開始位置は、X座標が基準位置となるへそ部6に対して所定量XA1だけ右手側、且つY座標がへそ部6に対して所定量YA1だけ下側に設定されている。すなわち、測定開始位置が測定開始座標(XA1,YA1)に設定されている。
【0087】
測定ラインAの測定終了位置は、測定終了位置のX座標がへそ部6に対して所定量XA2だけ左手側、且つY座標がへそ部6に対して所定量YA2だけ下側に設定されている。すなわち、測定終了位置が測定終了座標(XA2,YA2)に設定されている。なお、測定ラインAは、X軸と平行となるように設定されているため、YA1はYA2と等しい値になる。
【0088】
測定ラインAと同様に、測定ラインBには測定開始座標(XB1,YB1)及び測定終了座標(XB2,YB2)が、測定ラインCには測定開始座標(XC1,YC1)及び測定終了座標(XC2,YC2)が、測定ラインDには測定開始座標(XD1,YD1)及び測定終了座標(XD2,YD2)が、測定ラインEには測定開始座標(XE1,YE1)及び測定終了座標(XE2,YE2)が、測定ラインFには測定開始座標(XF1,YF2)及び測定終了座標(XF2,YF2)がそれぞれ設定されている。
【0089】
制御部42は、装置本体10がこれら測定ラインA〜Fに沿って移動したときの測定データが得られたとき、これに基づいて予め定められた範囲(図16に示すG)の皮下脂肪の2次元分布を作成する。以下、その手順についての一例を説明する。
【0090】
まず、ユーザは装置本体10を2次元分布作成のための初期位置(ここではへそ部6)に移動させ、装置本体10の中心とへそ部6とを対応させた状態でリセットボタン79を押す。これによりへそ部6が座標の基準位置(0,0)として設定される。
【0091】
次に、制御部42は、図17(a)に示されるように、現在の座標(0,0)と、測定ラインAの測定開始座標(XA1,YA1)と、測定ラインAの測定終了座標(XA2,YA2)とを表示部16に表示する。
【0092】
ユーザは、この表示に基づいて、図17(b)に示されるように、現在の座標が測定開始座標と一致するところまで装置本体10を移動する。
制御部42は、現在の座標が測定ラインAの測定開始座標(XA1,YA1)となると、その旨ユーザに報知する。
【0093】
次に、ユーザは表示部16の表示に従い、装置本体10を測定ラインAの測定終了位置(XA2,YA2)に向けて移動させる。これにより、ユーザは、装置本体10を測定ラインAに沿って移動させることとなる。このように装置本体10を測定ラインAに沿って動かす間、表示部16には、図17(c)に示されるように現在の座標が連続的に表示される。
【0094】
制御部42は、図17(d)に示されるように、現在の座標が測定ラインAの測定終了座標(XA2,YA2)となると、その旨ユーザに報知する。このように、ユーザが測定ラインAに沿って装置本体10を移動させることにより、図18(a)に示されるように測定ラインAに沿って、皮下脂肪厚が測定されることとなる。
【0095】
次に、制御部42は、図17(e)に示されるように、測定ラインBの測定開始座標(XB1,YB1)を表示する。ユーザは、この表示に基づいて、装置本体10を(XB1,YB1)まで移動させた後、測定ラインBに沿って、皮下脂肪厚を測定する。測定ラインA〜Fについてこの操作を繰り返すことによって、これらの測定ラインにおける皮下脂肪厚が測定される。これにより、図18(a)及び(b)に示されるように、測定ラインA〜Fにおける皮下脂肪厚の測定データが得られる。
【0096】
範囲Gにおいて、測定ラインA〜F以外の部分、すなわち装置本体10による測定が直接行われていない部分の皮下脂肪厚については、測定ラインの測定データに基づいて推定の皮下脂肪厚を求めることにより補間する。
【0097】
制御部42は、これらのデータに基づいて、生体1における皮下脂肪の分布をマップ化することができる。または、図19に示されるように、X座標及びY座標と測定データをグラフ化することもできる。
【0098】
このように、位置センサ70を備える装置本体10によれば、基準位置を予め定めるとともに、この基準位置を基にした各座標における皮下脂肪厚を測定することができる。このため、ユーザは広い範囲における皮下脂肪厚の経時変化を測定することができるようになる。
【0099】
図20に示されるように、制御部42は、現在の測定ライン(測定ラインA〜Fのいずれか)とX軸またはY軸とのなす角を基準角として設定する。そして、装置本体10の実際の軌跡とX軸またはY軸とのなす角θ1を求め、基準角に対する実際のなす角のずれが許容範囲を超えたときには、実際の軌跡が測定ラインからずれている旨判定する。装置本体10の軌跡が測定ラインから外れているときには、制御部42は、その旨を表示部16に表示する。これによりユーザは、測定ラインA〜Fに沿った正確な皮下脂肪厚の分布を測定することができるようになる。
【0100】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)〜(4)に加えて、以下の効果を奏することができる。
(7)装置本体10は、可動部20を備えるものにおいて、第1受光素子36と第2受光素子38により受光した受光量に基づいて皮下脂肪厚を演算する演算部43と、演算部43により演算した皮下脂肪厚を表示する表示部16と、皮膚3上での測定部30の位置を検出する位置センサ70とを備えるものであり、演算部43は、位置センサ70により検出された測定部30の位置と前記演算により求めた皮下脂肪厚とを対応付けることにより体脂肪量の2次元分布を求めるものである。従って、測定部30を通じて広範囲にわたり正確に測定されたデータに基づいて、皮下脂肪の2次元分布が求められるようになる。これにより、ユーザに対してより正確な皮下脂肪の分布を伝達することができる。
【0101】
(第4実施形態)
図21を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。なお以下では、前記第1実施形態の構成からの変更点を中心に説明し、同実施形態と共通する構成については同一の符合を付してその説明を省略する。
【0102】
同図21に示されるように、装置本体10のカバー13には発信部としての光照射スイッチ81が設けられている。光照射スイッチ81は制御部42と電気的に接続されている。図21に実線の矢印にて示されるように光照射スイッチ81が押されている間は、制御部42からの指示により発光素子34から光が照射されて皮下脂肪厚の測定が実行され、測定結果が表示部16に表示される。そして、光照射スイッチ81が押されていないときには、発光素子34からの光の照射は中止される。
【0103】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)〜(5)に加えて、以下の効果を奏することができる。
(8)本実施形態では、測定部30に対して測定を開始するためのトリガーを与える光照射スイッチ81が備えられている。従って、例えば測定部30を皮膚3上で移動させた後に皮下脂肪厚の測定を一時的に中断したいときには、光照射スイッチ81の操作を通じてそうした中断を容易に実行することができる。
【0104】
(第5実施形態)
図22を参照して、本発明の第5実施形態について説明する。なお以下では、前記第1実施形態の構成からの変更点を中心に説明し、同実施形態と共通する構成については同一の符合を付してその説明を省略する。
【0105】
同図22に示されるように、本実施形態において、矩形形状からなる装置本体90は、同装置本体90の底部に形成されるフラットな形状の測定板91と、この測定板91に埋め込まれるように形成された照射部33と、第1受光部35及び第2受光部37とを備えている。これら照射部33及び第1受光部35及び第2受光部37は、装置本体90の底面上において一列に配置されている。
【0106】
測定板91の表面には、皮膚3との摩擦係数が低いシリコン系潤滑剤でコーティングがなされているコーティング層91aが形成されている。これら照射部33、第1受光部35及び第2受光部37の上面には、基板99が配設されており、この基板99上に制御部42及び演算部43が配設される。
【0107】
本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(9)可動部は、皮膚3との接触面となる測定板91に設けられて皮膚3との摩擦を小さくするコーティング層91aを含む。従って、測定板91を皮膚3上で移動させたときに皮膚3が測定板91に引っ張られることが抑制される。従って、生体1の広範囲にわたり皮下脂肪厚を正確に測定することができる。
【0108】
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば以下に示す態様をもって実施することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0109】
・第1実施形態において、測定板12の底面から球体21の頂部までの距離L1と、測定板12の底面からキャップ31の頂部までの距離L2とを同じ大きさに設定することもできる。本実施形態においても、上記(1)〜(4)に準じた作用効果を奏することができるようになる。また、第2実施形態において、装置本体10の底面から自在キャスタ63の頂部までの距離L4と、測定板12の底面から測定部30のキャップ31の頂部までの距離L3は等しくなるようにしてもよい。本実施形態においても、上記(5)に準じた作用効果を奏することができるようになる。
【0110】
・第1実施形態において、球体21は特定方向にのみ回転するように支持されていてもよい。本実施形態においても、上記(1)、(2)及び(4)に準じた作用効果を奏することができるようになる。
【0111】
・第2実施形態において、図25に示されるように、照射部33、第1受光部35及び第2受光部37の配列方向と直交する方向に軸69が固定されるとともに、ローラ68がこの軸69を中心として回転可能となるように支持されるようにしてもよい。本実施形態においても、装置本体10を皮膚3に押し付けた状態で移動させても、測定板12と皮膚3との間に摩擦が発生することを抑制させることができる。このため、装置本体10の移動に伴い皮膚3が引っ張られて、測定位置が不正確なものとなることを抑制することができるようになる。従って皮膚3の皮下脂肪の分布を測定するにあたって、その精度を向上させることができるようになる。
【0112】
・第3実施形態において、ユーザが装置本体10を任意の方向に自在に動かしながら、皮下脂肪厚を測定するようにしてもよい。本実施形態においては、演算部43は、位置センサ70からの情報に基づいて、現在の座標を算出する。図17(c)に示されるように算出したX座標、Y座標及び皮下脂肪厚のデータ配列を求める。このデータ配列に基づいて、生体1内における皮下脂肪の二次元分布を求めるようにしてもよい。
【0113】
・第4実施形態において、図23及び図24に示されるように、カバー13を第1カバー13aと第2カバー13bとに分割して形成し、且つ制御部42に電気的に接続される荷重センサ82を球体受け部22と球体固定部23との間に配設するようにしてもよい。本実施形態によれば、ユーザが第2カバー13bを保持した状態にて第1カバー13aを皮膚3に押し付けると、第1カバー13aが傾斜し、球体固定部23が皮膚3に押し付けられるようになる。このため、球体固定部23は球体21に対して上向きに移動しようとする。一方、球体受け部22は球体21に押し付けられるだけであるので、その位置は変位しない。従って、球体固定部23と球体受け部22との間に配設される荷重センサ82には、これら球体受け部22と球体固定部23より挟まれる力がかかる。荷重センサ82はこれを感知して、制御部42に皮下脂肪厚の測定を開始する旨の信号を発信する。本実施の形態によれば、上記(8)に準じた作用効果奏することができるようになる。
【0114】
・第5実施形態において、位置センサ70もしくは光照射スイッチ81を設けるようにしてもよい。本実施の形態においても、上記(6)〜(9)に準じた作用効果を奏することができるようになる。
【0115】
・上記各実施形態では、発光素子34としてLEDを採用したが、これに代えてレーザダイオードを採用することもできる。
・上記各実施形態では、測定部30の測定結果に基づいて皮下脂肪厚を算出する皮下脂肪測定装置に対して本発明を適用したが、皮下脂肪量を算出する皮下脂肪測定装置であれば、各実施形態に準じた態様をもって本発明を適用することができる。なお、皮下脂肪量としては、皮下脂肪面積と皮下脂肪体積と皮下脂肪厚と皮下脂肪重量の少なくとも1つを算出することができる。またこの他に、腹部皮下脂肪厚と腹筋厚と腹部皮下脂肪面積と内臓脂肪面積との少なくとも1つを算出することもできる。
【0116】
・上記各実施形態では、体組成測定装置としての皮下脂肪測定装置に対して本発明を適用したが、光学式の測定部の測定結果に基づいて体組成を算出する体組成測定装置であれば、その他の測定装置に対しても各実施形態に準じた態様をもって本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0117】
1…生体、2…腹部、3…皮膚、4…脂肪、5…筋肉、6…へそ部、10…装置本体、11…筐体、12…測定板、13…カバー、13a…第1カバー、13b…第2カバー、14…電源スイッチ、15…測定スイッチ、16…表示部、20…可動部、21…球体、22…球体受け部、23…球体固定部、30…測定部、31…キャップ、32…レンズ、33…照射部、34…発光素子、35…第1受光部、36…第1受光素子、37…第2受光部、38…第2受光素子、41…基板、42…制御部、43…演算部、61…装置本体、62…測定板、63…自在キャスタ、64…ステータ、65…車軸、66…ブラケット、68…ローラ、69…軸、70…位置センサ、71…第1シャフト、72…第2シャフト、73…第1円盤、73a…スリット、74…第2円盤、74a…スリット、75…センサ用第1発光素子、76…センサ用第2発光素子、77…センサ用第1受光部、77a…センサ用第1受光素子、77b…センサ用第1受光素子、78…センサ用第2受光部、78a…センサ用第2受光素子、78b…センサ用第2受光素子、79…リセットボタン、81…光照射スイッチ、82…荷重センサ、90…装置本体、91…測定板、91a…コーティング層、99…基板、100…装置本体、101…測定板、102…照射部、103…第1受光部、104…第2受光部、111…皮膚。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体表面に向けて光を照射する照射部と生体の内部を伝播した光を受光する受光部とが設けられた測定部と、同測定部を体表面上において同表面に沿って滑らかに移動させるための可動部とを備える
ことを特徴とする光学式体組成測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式体組成測定装置において、
当該体組成測定装置は、記測定部により受光した受光量に基づいて体脂肪量を演算する演算部と、同演算部により演算した体脂肪量を表示する表示部と、体表面上での測定部の位置を検出する位置検出部とを備えるものであり、
前記演算部は、前記位置検出部により検出された前記測定部の位置と前記演算により求めた体脂肪量とを対応付けることにより体脂肪量の2次元分布を求めるものである
ことを特徴とする光学式体組成測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学式体組成測定装置において、
当該体組成測定装置は、前記測定部及び前記可動部を有する装置本体を含めて構成されるものであり、
前記可動部は、前記装置本体から突出して同本体に設けられるものである
ことを特徴とする光学式体組成測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光学式体組成測定装置において、
前記可動部及び前記測定部は、それぞれの一部が前記装置本体の一の面から突出して同本体に設けられるものであり、前記装置本体からの前記可動部の突出量が前記装置本体からの前記測定部の突出量以下に設定される
ことを特徴とする光学式体組成測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学式体組成測定装置において、
前記可動部は、体表面との接触にともない回転する球体を含む
ことを特徴とする光学式体組成測定装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学式体組成測定装置において、
前記可動部は、体表面との回転にともない回転する自在キャスタを含む
ことを特徴とする光学式体組成測定装置。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学式体組成測定装置において、
前記可動部は、体表面との接触面に設けられて体表面との摩擦を小さくするコーティング層を含む
ことを特徴とする光学式体組成測定装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学式体組成測定装置において、
前記測定部に対して測定を開始するためのトリガーを与える発信部を備える
ことを特徴とする光学式体組成測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−67350(P2011−67350A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220460(P2009−220460)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】