説明

光学式宇宙望遠鏡の扇形分割ミラーのペタルを展開するためのシステム

【課題】使用環境下での熱膨張を吸収する高精度光学式宇宙望遠鏡のペタル展開システムを提供する。
【解決手段】光学式宇宙望遠鏡10のミラーペタル展開システムは、第1ヒンジアセンブリ100と第2ヒンジアセンブリ200とラッチアセンブリ300とを備える。第1ヒンジアセンブリ100はペタル20a〜20fにペタルヒンジ軸の周りの回転の自由を付与する。第2ヒンジアセンブリ200は、ペタル20a〜20fにペタルヒンジ軸の周りの回転の自由と、ペタルヒンジ軸に沿った熱膨張の自由とを付与する。ペタルを収納位置から展開位置にペタルヒンジ軸の周りに回転させたとき、ラッチアセンブリ300の一対の対向ラッチはクレビスと係合し、ペタル20a〜20fを熱膨張可能な状態で固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式宇宙望遠鏡の扇形に分割されたミラーのペタル(花弁状物)を展開するためのシステムに関し、特に、上記扇形に分割されたミラーのペタルを、扇形に分割されたミラーの中央のハブに独立して接続するための一組のヒンジに関し、又、上記中央のハブに上記ヒンジ付きペタルを展開位置に固定するためのラッチ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ハッブル宇宙望遠鏡の成功は、巨大な直径の1次ミラーを組み込んだものを含め、他の宇宙天文台の開発に拍車を掛けた。次世代宇宙望遠鏡(NGST)として知られる宇宙天文台を含めて多くの設計が、直径6乃至8メートルの光学機械レンズを中心に行なわれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような巨大な直径のミラーを持つ宇宙天文台を実現するためには、幾つかの問題を克服しなければならない。例えば、巨大直径のモノリシック(継目無)ミラーを企画する設計には、製造上の非常な困難さとリスクが伴う。さらに、巨大直径のミラーを有する天文台の大きさや形状は、現在の打上げロケットで利用できるペイロードすなわち貨物室の積荷容量や形状によって制限される。
【0004】
展開可能な巨大直径ミラーの企画設計には、その他の問題が在る。例えば、ミラーの反射部品(例えばセクターやセグメント或いはペタル)は、所望の表面精度および光学的な品質を達成するために、例えば約10ナノメートル以内という超高精度で位置調整されなければならない。さらに、宇宙天文台は、広範囲の熱勾配に直面するので、展開型反射部品の熱膨張および熱収縮を吸収する必要がある。
【0005】
したがって、高精度を示すと共に作動環境での熱変化を吸収する光学式宇宙望遠鏡反射部品の展開システムの提供は有益となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、光学式宇宙望遠鏡の扇形に分割されたミラーアセンブリのペタルを展開するための新規且つ有用なシステムを目指す。上記ミラーアセンブリは、中央ハブと、中央ハブの外周に配置された複数のペタルを含む。各ペタルは、上記ミラーアセンブリに中央ハブに個々にヒンジ付けされたペタル基部を有している。
【0007】
本発明のペタル展開システムは第1ヒンジアセンブリを含み、上記第1ヒンジアセンブリは、ペタル基部に固定された基部マウントと、上記中央ハブに固定されたハブマウントとを有する。上記第1ヒンジアセンブリは、第1ヒンジアセンブリに結合されたペタルに、ペタルヒンジ軸の周りの回転の自由を与えるように形成されている。
【0008】
また、ペタル展開システムは第2ヒンジアセンブリを含み、上記第2ヒンジアセンブリは、ペタル基部に固定された基部マウントと、中央ハブに固定されたハブマウントとを有する。上記第2ヒンジアセンブリは、第2ヒンジアセンブリに結合されたペタルに、ペタルヒンジ軸の周りの回転の自由を与えると共に熱的な膨張や収縮の自由を与え、ペタルがペタルヒンジ軸に沿って摩擦がなく拘束されずに無変形で移動するように形成されている。
【0009】
ペタル展開システムはラッチアセンブリをさらに含み、上記ラッチアセンブリは、ヒンジ軸から間隔の開いた位置においてペタル基部に固定されたクレビスと、横方向に対向した一対のラッチとを含む。上記一対のラッチは、中央ハブに作動可能に結合されていて、ペタルを収納位置から展開位置にヒンジ軸の周りに回転させた時、クレビスと係合する。
【0010】
好ましくは、第1ヒンジアセンブリは、ペタルヒンジ軸上に配置された第1ヒンジシャフトを含む。上記第1ヒンジシャフトは、第1ヒンジアセンブリの基部マウントに取付けられる、また、軸方向に間隔の開いた複数のアンギュラコンタクト軸受を支持している。アンギュラコンタクト軸受は、窒化珪素から形成されていて潤滑が不要であり、第1ヒンジアセンブリのハブマウントの中に収容されている。
【0011】
好ましくは、第2ヒンジアセンブリは、ペタルヒンジ軸上に配置された第2ヒンジシャフトを含む。上記第2ヒンジシャフトは、第2ヒンジアセンブリの基部マウントによって支持され、円筒形の軸受ケージの中に配置されている。軸受ケージは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から形成され、複数のボールベアリングを保持している。上記ボールベアリングは、窒化珪素から形成されていて、潤滑を要しない。軸受ケージは、インナー軸受レースとアウター軸受レースの間に配置され、第2ヒンジアセンブリのハブマウントの中に収容されている。
【0012】
好ましくは、本発明のラッチアセンブリは、ラッチアセンブリに結合したペタルに熱的な膨張および収縮の自由を与えて、ペタルがペタルヒンジ軸に平行なラッチ軸に沿って摩擦なく非拘束無変形で動くように形成されている。ラッチアセンブリの横方向に対向するラッチの各々はラッチシャフトを含み、上記ラッチシャフトはラッチ軸に沿って直線運動するように取付けられている。ラッチアセンブリのクレビスは、横方向に対向したラッチシャフトを収容するため、収容開口部を形成している。ラッチシャフトを移動させてクレビスと係合させるため、アクチュエータは各ラッチに作動可能に結合されている。
【0013】
各ラッチシャフトは円筒形軸受ケージの中に配置されている。また、各軸受ケージはPTFEから形成されている。各軸受シャフトは、窒化珪素から形成された複数のボールベアリングを保持し、インナー軸受レースとアウター軸受レースとの間に配置されている。各軸受ケージは、中央ハブに固定されたハブマウントの中に収容されている。各ハブマウントは基礎部と円筒形ハウジング部とを含んでいる。
【0014】
本発明のペタル展開システムの独特な特徴は、好ましい実施形態の説明に関連して用いた図面の説明によって一層明確になる。
【0015】
本発明の関連技術分野において通常の技術を有する者が、本発明のペタル展開システムの構築方法および使用方法をより容易に理解するために、図面を参照し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面を参照すると、同一の参照番号は、本発明のペタル展開システムの同一の構造的特徴を識別する。図1には、遍く参照番号10によって指定された光学式宇宙望遠鏡が示されている。光学式宇宙望遠鏡10は、(図1では展開位置で示された)1次ミラーアセンブリ12と、上記1次ミラーアセンブリ12の中心部から延びているタワー14と、上記中央のタワー14の頂部に取付けられた2次ミラー16とを含んでいる。1次ミラーアセンブリすなわち光学機械レンズ12は、6角形の中央ハブ18と、独立して上記中央ハブ18にヒンジ付けられた6つのペタル20a〜20fとを含む。
【0017】
図2に示されるように、3つのペタル20a,20c,20eは、収容場所の後部位置に取付けられ、3つのペタル20b,20d,20fは、収容場所の前部位置に取付けられる。各ペタル20a〜20fはペタルに付属した打上げラッチストラット22を有し、上記ストラット22は収納位置においてペタルを固定する。各ペタル20a〜20fは、融解石英製表面板から形成された形状制御可能な反射面24と、軽量カーボン複合材料から形成されたハウジング26とを有する。各ペタル20a〜20fの反射面24の形状は、ペタルハウジング26内に配置された複数の形状制御アクチュエータ(図示せず)によって制御される。
【0018】
各ペタルハウジング26の半径方向内側端は、一対のヒンジアセンブリ100,200を支持するペタル基部構造物30を形成している。上記ヒンジアセンブリ100,200は以下に詳細に検討する。ペタル20a〜20fの各々は、2つのヒンジアセンブリ100,200によって、1次ミラーアセンブリ12の中央ハブ18に作動可能に接続されている(図4を参照)。また、ペタル基部構造物30はクレビス50を支持し、クレビス50はラッチアセンブリ300の一部を形成している。ペタルが図2の収納位置から図1の展開位置に移動する際、上記ラッチアセンブリ300は、作動して上記クレビス50に係合するように、中央ハブ18に結合されている。
【0019】
図3を参照すると、各々対を成すヒンジアセンブリ100,200は、共通のヒンジ線すなわち軸Aを形成し、この軸Aの周りを、ヒンジアセンブリ100,200に結合したペタルが回転する。そして、上記軸Aに沿って、ペタル構造物が剛体運動をすると共に、熱膨張や熱収縮が吸収される。ラッチアセンブリ300はラッチ線すなわち軸Bを形成する。上記軸Bは、ヒンジ軸と間隔が開いていて平行である。ラッチアセンブリ300は、ペタル構造物がラッチ軸Bに沿って軸方向に剛体運動する以外に、熱膨張や熱収縮を吸収するように形成されている。
「自由度1のヒンジアセンブリ」
【0020】
図3〜5を参照すると、ヒンジアセンブリ100は、自由度1のヒンジアセンブリ(1DOF)である。ヒンジアセンブリ100は、ヒンジアセンブリ100に結合されたペタルに、ペタルヒンジ軸周りの回転の自由を与えるように形成されている。ヒンジアセンブリ100は、ペタル20の基部構造物30の取付面32に固定された基部マウント110と、1次ミラーアセンブリ12の中央ハブ18の取付面34に固定されたハブマウント120とを含んでいる。
【0021】
上記基部マウント110は、ベース112と、それに垂直な1対のトラス114a,114bとによって形成されている。ベース112は、複数のファースナー35によってペタル基部構造物の取付面32に固定される。トラス114a,114bは、それぞれ、軸方向ヒンジシャフト130を収容するために、円筒形のチャンネル(溝)116a,116bを有している。チャンネル116a,116bは、さらに、対応する溝付き基部マウントキャップ118a,118bによって限定され、包囲される。上記基部マウントキャップ118a,118bは、それぞれ、ファースナー37によってトラス114a,114bに固定される。
【0022】
ヒンジシャフト130は、1対の軸方向に間隔の開いたウッドラフキー(半月キー)140a,140bによって、ヒンジアセンブリ100の基部マウント110に固定される。さらに詳細に説明すると、ウッドラフキー140a,140bは、対応するスロット(細長い穴)115a,115bの中に座す。上記スロット115a,115bは、それぞれ、トラス114a,114bのチャンネル116a,116b内に形成されている。2つのキー140a,140bは、ヒンジシャフト130内に形成された補間スロット(図示せず)に係合するように配置され、基部マウント110に対するシャフト130の方位を固定する。
【0023】
ヒンジシャフト130は2つの部分130a,130bに分割され、上記2つの部分130a,130bは環状カラー132によって分離される。ヒンジシャフト130の第1シャフト部130aは、図4に最も良く示されているように、ヒンジアセンブリ100から横の方向に延びて、スタビライジングブロック160内で支持されている。上記スタビライジングブロック160は、ハブ部18の取付面34にしっかりと固定されている。第2シャフト部130bは、軸方向に間隔を置いて設けられた4つのアンギュラコンタクト軸受150a〜150dを支持する。上記アンギュラコンタクト軸受150a〜150dは、軸方向一直線上に並べられて、環状カラー132と保持カラー128との間に保持される。アンギュラコンタクト軸受150a〜150dは、好ましくは窒化珪素から形成され、潤滑注油を必要としない。各アンギュラコンタクト軸受150a〜150dは、相対的に動くインナーレース152とアウターレース154とを有している。各軸受のインナーレース152は、ヒンジシャフト130の第1シャフト部130bにぴたり嵌合する。
【0024】
ヒンジアセンブリ100のハブマウント120は、ベース122と、それに垂直な1対のトラス124a,124bとによって形成されている。ベース122は、複数のファスナー35によって、ペタル基部構造物30の取付け構造物32に固定される。トラス124a,124bは、円筒ハウジング126に移行していく。各アンギュラコンタクト軸受150a〜150dのアウターレース154は、ハブマウント120の円筒形ハウジング126内にぴたり嵌合する。4つのコンタクト軸受は、保持リング125によって円筒形ハウジング126の中に封入される。保持リング125は、螺子切りされた複数のファスナー137によって、ハウジング126の端部に固定される。
【0025】
操作時に、第1ミラーアセンブリ12のペタル20a〜20fが図2の収納位置から図1の展開位置に移動するとき、各アンギュラコンタクト軸受150a〜150dの相対移動可能なインナーレース152とアウターレース154とによって、基部マウント110は、ハブマウント120に対して、ヒンジシャフト130を軸として回転運動をする。ヒンジアセンブリ100は、ヒンジ軸に対するその他の動きを全て拘束する。
「自由度2のヒンジアセンブリ」
【0026】
図3,4,6を参照すると、ヒンジアセンブリ200は、自由度2のヒンジアセンブリ(2DOF)である。ヒンジアセンブリ200は、ヒンジアセンブリ200に結合されたペタルに、ペタルヒンジ軸の周りの回転の自由を与えると共に、熱膨張と熱収縮の自由を与えるように形成されていて、ペタルヒンジ軸に沿って摩擦無く拘束されずに移動できる。ヒンジアセンブリ200は、ペタル20の基部構造物30の取付面32に固定された基部マウント210と、1次ミラーアセンブリ12の中央ハブ18の取付面34に固定されたハブマウント220とを含んでいる。基部マウント210は、ベース212と、対になった直立トラス214a,214bとによって形成されている。ベース212は、複数のファースナー35によって、ペタル基部構造物30の取付け構造物32に固定されている。上記トラス214a,214bは、軸方向ヒンジシャフト230を収容するために、それぞれ、半円筒チャンネル216aと216bを有している。上記チャンネル216aと216bは、さらに、対応のチャネル付き基部マウントキャップ218a,218bによって限定され、包囲される。上記マウントキャップ218a,218bは、ファスナー37によって、それぞれトラス214a,214bに固定される。
【0027】
ヒンジシャフト230は、基部マウント210によって支持される。ヒンジシャフト230は、より詳細には、トラス214a,214bと基部マウントキャップ218a,218bとによって形成されるチャンネルの中に座す。唯一無二の軸受アセンブリ250は、ヒンジアセンブリ200に自由度2を付与することができて、ヒンジシャフト230に作動可能に結合されている。軸受アセンブリ250は円筒形軸受ケージ240を含み、円筒形軸受ケージ240は好ましくはPTFEから形成される。また、軸受アセンブリ250は、窒化珪素から形成された複数のボールベアリング245を保有する。ボールベアリング245はキー溝付きのパターン内に配置される。軸受アセンブリ250は、さらに、円筒形インナー軸受レース252と、円筒形アウター軸受レース254とを含む。上記インナー軸受レース252は、ヒンジシャフト230と密に係合し、環状のシャフトカラー232によって保持される。同様に、アウター軸受レース254はハブマウント220と密に係合する。
【0028】
ヒンジアセンブリ200のハブマウント220は、ベース222と、一対の直立トラス224a,224bとによって形成される。ベース222は、複数のファースナー35によって、ペタル基部構造物30の取付け構造物32に固定される。トラス224a,224bは円筒形ハウジング226内に移行していく。軸受アセンブリ250の円筒形アウターレース254は、ハブマウント220の円筒形ハウジング226内に収容される。
【0029】
操作時に、1次ミラーアセンブリ12のペタル20が図2の収納位置から図1の展開位置に移動するとき、軸受アセンブリ250の相対移動可能なインナーレース252とアウターレース254とによって、基部マウント210は、ハブマウント220に対し、ヒンジシャフト230を軸として回転運動および直線運動する。その結果、ペタル基部構造物がペタルヒンジ軸Aに沿って摩擦無く拘束されずに剛体運動をして、ペタル基部構造物の熱膨張および熱収縮が吸収される。ヒンジアセンブリ200は、ヒンジ軸に対するその他の動きを全て拘束する。
「双投ラッチアセンブリ」
【0030】
図3,4,7〜9を参照すると、ラッチアセンブリ300は、極めて安定な双投ラッチアセンブリであり、展開時に作動負荷を受けたとき、高剛性と低ヒステリシス(低履歴現象)を示す。ラッチアセンブリ300は、ラッチアセンブリ300に結合するペタルに、熱膨張および熱収縮の自由を与え、ラッチ軸Bに沿って変形することなく動けるように形成されている。より詳細には、ラッチアセンブリ300は、4つの自由度を拘束すると共に、ヒンジ軸Aに対して自由度2の拘束されない動きができるように設計されている。すなわち、ラッチアセンブリ300は、横方向の自由度とヒンジ軸A周りの2つの回転の自由度以外に、ペタルのヒンジ軸A周りの回転の自由度を拘束する。
【0031】
ラッチアセンブリ300は、ペタル基部構造物30の取付面32に固定されたクレビス50を含み、クレビス50は収容開口部52を形成している(図4を参照)。ラッチアセンブリ300は、さらに、横方向に対向する1対のラッチ302a,302bを含み、これらのラッチは、第1ミラーアセンブリ12の中央ハブ18の取付面34と結合していて、図2の収納位置から図1の展開位置へ移動する際に作動して、クレビス50の収容開口部52と係合する。
【0032】
図7を参照すると、横方向に対向しているラッチ302a,302bは、互いに、構造および機能の点で同一である。各ラッチは、ラッチ軸Bに沿って直線運動するラッチシャフト330を含む。アクチュエータ360は、中央ハブ18の取付面34に固定されたハウジング362の中に配置され、リンケージアセンブリ380によって各ラッチシャフト330の端部に結合される。上記アクチュエータ360は、クレビス50の収容開口部52に対して、ラッチシャフト330の軸方向の進行が容易にできるようになっている。リンケージアセンブリ380は、ラッチシャフト330の端部に固定される前部リンク382と、アクチュエータ駆動シャフト364に作動可能に結合される主中央リンク383と後部カップリング384とを含んでいる。上記中央リンク383は、付勢部材394を介して後部カップリング384と結合し、旋回部材を介して前部リンク382と結合している。
【0033】
各ラッチシャフト330は軸受アセンブリ350に作動可能に結合している。軸受アセンブリ350はPTFE製の円筒形軸受ケージ340を含み、上記軸受ケージ340は窒化珪素製の複数のボールベアリング345を保持するように形成されている。ボールベアリング345は、それぞれ開口部に座して、キー溝パターン内に配置される。各軸受ケージ340は、円筒形のインナー軸受レース352と円筒形のアウター軸受レース354との間に配置される。上記インナー軸受レース352は、ラッチシャフト330に密に係合し、環状シャフトカラー332によって部分的に保持される。上記アウター軸受レース354は、ハブマウント320内で支持されている。
【0034】
ハブマウント320は、直立型トラス324a,324bを有するベース322を含む。上記トラス324a,324bは、複数のファースナー335によって中央ハブ18の取付面34に固定されている。円筒形のアウター軸受レース354は、ハブマウント320の円筒形ハウジング326内に収容される。
【0035】
ペタルが展開されてラッチされた位置に在るとき、軸受アセンブリ350の相対移動可能なインナー軸受レース352とアウター軸受レース354とにより、基部マウント310は、クレビス50に対して、ヒンジシャフト330の軸に沿って回転運動と直線運動する。その結果、このラッチアセンブリ300によって、基部構造物が、ラッチ軸Bに対して摩擦無く拘束されずにヒンジ軸に沿った剛体運動をして、ペタル基部構造物の熱膨張および熱収縮が吸収される。
【0036】
引き続き図7を参照すると、テーパー軸受375が、サポートハブ395によってラッチシャフト330の自由端に取付けられ、ファスナー396によって固定されている。上記テーパー軸受375は、以下に詳細に論ずるように、複数の円筒形ローラ385を支持して、クレビス50の収容開口部52に係合するように形成されている。
【0037】
ミラーアセンブリ12のペタル20a〜20fがそれぞれ回転して図1の展開位置に至るとき、ラッチアセンブリ300の上記対向するラッチ302a,302bは、クレビス50に接触することなく、クレビス50を横切る。展開位置において、各ペタル基部30上のクレビス50の収容開口部52は、図8に最も良く示されているように、ラッチ302a,302bの対向するラッチシャフト330a,330bによって形成されるラッチ軸Bと一致する。このとき、ラッチシャフト330a,330bの端部のテーパー軸受375a,375bは、クレビス50から間隔を開けて存在する。適切な事例では、アクチュエータ360a,360bの各駆動シャフト364a,364bは、ラッチシャフト330a,330bにそれぞれ結合され、好ましくは同時に作動される。次に、これにより、図9に最も良く示されているように、テーパー軸受375a,375bが軸方向に移動してクレビス50の収容孔52に係合する。
【0038】
係合時には、各ラッチシャフト330a,330b端部のテーパー軸受375a,375b内に在るローラ385は、クレビス50の収容孔52内に固定された収容孔ライナー54に接触する。この係合の際に、ペタル基部構造物にはラッチ力は生じない。ラッチシャフト330a,330bがクレビス50の収容孔52に係合するために移動する距離は、ラッチシャフトの全長と比較してかなり小さい。これにより、確実に、各ラッチシャフト330a,330bに付随する軸受ケージ340が、ハブマウント320によって形成されるハウジングから変位しなくなる。
【0039】
対向するラッチ302a,302bによってクレビス50上に作用する噛合力は、互いに等しく逆向きであり、したがって、係合中には、クレビス50にモーメントが加わらないことが保証される。これは、本発明のラッチアセンブリ300が低履歴現象と高剛性とを提示する結果となる。特に、本発明の双投ラッチアセンブリ300は、1,000,000ポンド/インチ程度の軸方向剛性を示す。その結果、図9に示すように、対向するラッチ302a,302bが係合するとき、各ラッチシャフト330a,330b端部の軸受375a,375b内に在るローラ385でもって、クレビス50は回転することなく新たに座す。
【0040】
本発明は好ましい実施例に関して記載されているが、添付の請求の範囲によって定義される本発明の精神或いは本発明の範囲を逸脱することなく、本発明に対して修正や変更が行なわれ得ることは、当業者には容易に認識される。さらに、ここに開示されたヒンジアセンブリおよびラッチアセンブリは、NGST(次世代宇宙望遠鏡)などの光学式宇宙望遠鏡に関して記載され図示されているが、これらの機構は他の宇宙を基盤とした光学システムにも使用し得ることが想定されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は1次ミラーアセンブリを有する光学式宇宙望遠鏡の斜視図である。上記1次ミラーアセンブリは、6角形の中央ハブと、上記中央ハブに独立してヒンジ付けされた6つの反射面付ペタルとを含み、上記6つのペタルは、それぞれ展開位置に配置されている。
【図2】図2は図1の上記光学式宇宙望遠鏡の斜視図である。3つのペタルは中央ハブにヒンジで取付けられていると共に後部位置に収納され、また、他の3つのペタルは中央ハブにヒンジで取付けられていると共に前部位置に収納されている。
【図3】図3は図1と図2の光学式宇宙望遠鏡の中央ハブのペタル取付け部の正面図である。図3は、ペタル基部構造物の取付面に沿って見たもので、上記中央ハブ部に取付けられた本発明の双投ラッチアセンブリを平面図で示し、上記ペタル基部構造物と中央ハブ部に取付けられた本発明独自の2つのヒンジアセンブリを側面図で示す。
【図4】図4は、図1と図2の光学式宇宙望遠鏡のペタル基部構造物と中央ハブの間の接続領域の斜視図である。図4は、本発明の2つのヒンジアセンブリと、ラッチアセンブリに付随しペタル基部構造物に取付けられた破線のセルビスとを示している。
【図5】図5は、本発明の自由度1のヒンジアセンブリの分解斜視図である。上記ヒンジアセンブリは、図1および図2の光学式望遠鏡のペタル基部に固定される基部マウントと、中央ハブに固定されるハブマウントとを含んでいる。
【図6】図6は、本発明の自由度2のヒンジアセンブリの分解斜視図である。上記ヒンジアセンブリは、図1および図2の光学式望遠鏡のペタル基部に固定される基部マウントと、中央ハブに固定されるハブマウントとを含んでいる。
【図7】図7は、本発明の双投ラッチアセンブリのラッチ機構の分解斜視図である。上記ラッチ機構は軸方向に進行可能なラッチシャフトを含む。上記ラッチシャフトは、ペタルを図2の収納位置から図1の展開位置にヒンジ軸の周りに回転させたとき、図4に示す上記クレビスに係合するようになっている。
【図8】図8は、非ラッチ位置での本発明の双投ラッチアセンブリの転位側面図であり、対向するラッチシャフトはシャフト間に配置されたクレビスと非係合状態にある。
【図9】図9は、ラッチ位置での本発明の双投ラッチアセンブリの部分拡大転位側面図であって、対向するラッチシャフトはシャフト間に配置されたクレビスと係合状態にある。
【符号の説明】
【0042】
10 光学式宇宙望遠鏡
18 中央ハブ
20a〜20f ペタル
30 ペタル基部
50 クレビス
52 収容開口部
100 第1ヒンジアセンブリ
110,210 基部マウント
120,220,320 ハブマウント
126,226,326 円筒形ハウジング部
130 第1ヒンジシャフト
140a,140b ウッドラフキー
210 第2ヒンジアセンブリ
240,340 軸受ケージ
252,352 インナー軸受レース
254,354 アウター軸受レース
300 ラッチアセンブリ
302a,302b ラッチ
330a,330b ラッチシャフト
345,245 ボールベアリング
360a,360b アクチュエータ
A ペタルヒンジ軸
B ラッチ軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式宇宙望遠鏡の扇形に分割されたミラーのペタルを上記扇形に分割されたミラーの中央ハブに接続するためのペタル展開ヒンジアセンブリであって、
a) 上記ペタルの基部に固定された基部マウントと、
b) 上記中央ハブに固定されたハブマウントと、
c) 上記基部マウントに取り付けられた軸方向ヒンジシャフトと、
d) 上記ハブマウントに対する上記基部マウントの回転運動を上記ヒンジシャフトの軸に沿って付与するために、上記ヒンジシャフト上に支持されると共に上記ハブマウントの中に収容された軸方向に間隔の開いた複数のアンギュラコンタクト軸受とを
備えていることを特徴とするペタル展開ヒンジアセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載のペタル展開ヒンジアセンブリにおいて、
上記アンギュラコンタクト軸受は窒化珪素から形成されていることを特徴とするペタル展開ヒンジアセンブリ。
【請求項3】
請求項1に記載のペタル展開ヒンジアセンブリにおいて、
上記ヒンジシャフトは、軸方向に間隔を開けて設置された一対のウッドラフキーによって、上記基部マウントに固定されていることを特徴とするペタル展開ヒンジアセンブリ。
【請求項4】
光学式宇宙望遠鏡の扇形に分割されたミラーのペタルを、上記扇形に分割されたミラーの中央ハブに接続するためのペタル展開ヒンジアセンブリであって、
a) 上記ペタルの基部に固定された基部マウントと、
b) 上記中央ハブに固定されたハブマウントと、
c) 上記基部マウントによって支持された軸方向ヒンジシャフトと、
d) 上記ハブマウントに対する上記基部マウントの回転運動と軸方向運動とを上記ヒンジシャフトの軸に沿って付与するために、上記ヒンジシャフトの周りに配置されると共に上記ハブマウントの中に収容された上記ハブ円筒形軸受ケージとを
備えていることを特徴とするペタル展開ヒンジアセンブリ。
【請求項5】
請求項4に記載のペタル展開ヒンジアセンブリにおいて、
上記軸受ケージはポリテトラフルオロエチレンから形成されていることを特徴とするペタル展開ヒンジアセンブリ。
【請求項6】
請求項4に記載のペタル展開ヒンジアセンブリにおいて、
上記軸受ケージは複数のボールベアリングを保持していることを特徴とするペタル展開ヒンジアセンブリ。
【請求項7】
請求項6に記載のペタル展開ヒンジアセンブリにおいて、
上記ボールベアリングは窒化珪素から形成されていることを特徴とするペタル展開ヒンジアセンブリ。
【請求項8】
請求項7に記載のペタル展開ヒンジアセンブリにおいて、
上記軸受ケージはインナー軸受レースとアウター軸受レースとの間に配置されていることを特徴とするペタル展開ヒンジアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−323090(P2007−323090A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210998(P2007−210998)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【分割の表示】特願2003−290228(P2003−290228)の分割
【原出願日】平成15年8月8日(2003.8.8)
【出願人】(501348092)グッドリッチ コーポレイション (17)
【Fターム(参考)】