説明

光学式検出装置、表示システム及び情報処理システム

【課題】従来よりも小型な構成で対象物の位置を検出することができる光学式検出装置、表示システム及び情報処理システム等を提供すること。
【解決手段】光学式検出装置100は、照射光LTを出射する照射部EUと、照射光LTが対象物OBにより反射されることによる反射光LRを受光する受光部RUと、受光部RUの受光結果に基づいて対象物OBの位置情報を検出する検出部110とを含む。照射部EUは、第1〜第n(nは2以上の整数)の発光素子LD1〜LDnと、第1〜第nの電流調整部AJ1〜AJnとを有する。第i(iは1≦i≦nである整数)の電流調整部AJiは、第1の照射光強度分布を形成する第1の期間では、第iの発光素子LDiに流れる電流を第1期間用第iの電流値に設定し、第2の照射光強度分布を形成する第2の期間では、第iの発光素子LDiに流れる電流を第1期間用第iの電流値とは異なる第2期間用第iの電流値に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式検出装置、表示システム及び情報処理システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パーソナルコンピューター、カーナビゲーション装置、券売機、銀行の端末などの電子機器では、近年、表示部の前面にタッチパネルが配置された位置検出機能付きの表示装置が用いられる。この表示装置によれば、ユーザーは、表示部に表示された画像を参照しながら、表示画像のアイコン等をポインティングすることで、情報を入力することなどが可能になる。このような表示装置における位置検出方式としては、例えば、表示エリアに沿ってライトガイドを設け、複数の光源からライトガイドを介して照射光を照射し、対象物で反射した照射光を受光部で検出する方式が特許文献1に開示されている。このような構成の光学式位置検出装置では、受光部での受光結果に基づいて対象物の位置を検出する。
【0003】
一方、上述の特許文献1に開示される方式では、表示エリアと同等の大きさのライトガイドが必要となる。従って、投写型表示装置(プロジェクター)やデジタルサイネージ用の表示装置に適用した場合には、携帯電話やパーソナルコンピューターの表示装置に比べて、その表示エリアが広いために、位置検出装置の構成が大型になってしまう。そのために特許文献1に開示される方式を用いて位置検出をすることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−295318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の幾つかの態様によれば、従来よりも小型な構成で対象物の位置を検出することができる光学式検出装置、表示システム及び情報処理システム等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、照射光を出射する照射部と、前記照射光が対象物により反射されることによる反射光を受光する受光部と、前記受光部の受光結果に基づいて前記対象物の位置情報を検出する検出部とを含み、前記照射部は、第1の発光素子〜第n(nは2以上の整数)の発光素子と、第1の電流調整部〜第nの電流調整部とを有し、前記第1の電流調整部〜前記第nの電流調整部のうちの第i(iは1≦i≦nである整数)の電流調整部は、第1の照射光強度分布を形成する第1の期間では、前記第1の発光素子〜前記第nの発光素子のうちの第iの発光素子に流れる電流を第1期間用第iの電流値に設定し、第2の照射光強度分布を形成する第2の期間では、前記第iの発光素子に流れる電流を前記第1期間用第iの電流値とは異なる第2期間用第iの電流値に設定する光学式検出装置に関係する。
【0007】
本発明の一態様によれば、照射部は、各発光素子に流れる電流を第1の期間と第2の期間とで異なる電流値に設定することができるから、強度分布が異なる第1、第2の照射光強度分布を形成することができる。また、第1期間用の発光素子と第2期間用の発光素子とを別々に設ける必要がないから、発光素子の個数を低減することができる。その結果、照射部の構成を小型にすることなどが可能になる。さらに第1の期間の照射光と第2の期間の照射光とが同一の発光素子から出射されるから、例えば第1の期間と第2の期間とで対象物が検出できるエリアが異なるなどの問題を解消できる。その結果、対象物の検出精度をより高くすることなどが可能になる。
【0008】
また本発明の一態様では、前記第iの電流調整部は、第1期間用第1の電流調整素子〜第1期間用第nの電流調整素子のうちの第1期間用第iの電流調整素子と、第2期間用第1の電流調整素子〜第2期間用第nの電流調整素子のうちの第2期間用第iの電流調整素子と、第1のスイッチ回路〜第nのスイッチ回路のうちの第iのスイッチ回路とを有し、前記第iのスイッチ回路は、前記第1の期間では、前記第iの発光素子に流れる電流として、前記第1期間用第iの電流調整素子に流れる電流を選択し、前記第2の期間では、前記第iの発光素子に流れる電流として、前記第2期間用第iの電流調整素子に流れる電流を選択してもよい。
【0009】
このようにすれば、照射部は、第iの発光素子に流れる電流について、第1の期間では第1期間用第iの電流調整素子により電流値を設定し、第2の期間では第2期間用第iの電流調整素子により電流値を設定することができる。
【0010】
また本発明の一態様では、前記第1期間用第1の電流調整素子〜前記第1期間用第nの電流調整素子及び前記第2期間用第1の電流調整素子〜前記第2期間用第nの電流調整素子は、抵抗素子であってもよい。
【0011】
このようにすれば、各電流調整素子の抵抗値を設定することにより、対応する発光素子の第1の期間及び第2の期間での電流値を所望の値に設定することができる。
【0012】
また本発明の一態様では、前記第1期間用第1の電流調整素子〜前記第1期間用第nの電流調整素子のうちの第1期間用第j(jは1≦j≦n−1である整数)の電流調整素子の抵抗値をRAjとし、第1期間用第j+1の電流調整素子の抵抗値をRAj+1とした場合に、RAj<RAj+1であり、前記第2期間用第1の電流調整素子〜前記第2期間用第nの電流調整素子のうちの第2期間用第jの電流調整素子の抵抗値をRBjとし、第2期間用第j+1の電流調整素子の抵抗値をRBj+1とした場合に、RBj>RBj+1であってもよい。
【0013】
このようにすれば、第1の期間では、第1の発光素子から第nの発光素子に向かうにつれて発光素子に流れる電流値を徐々に減少させることができる。また、第2の期間では、第1の発光素子から第nの発光素子に向かうにつれて発光素子に流れる電流値を徐々に増加させることができる。その結果、照射部は、第1の期間では、照射部の一端から他端に向かうにつれて照射光の強度が低くなる第1の照射光強度分布を形成し、第2の期間では、照射部の一端から他端に向かうにつれて照射光の強度が高くなる第2の照射光強度分布を形成することができる。
【0014】
また本発明の一態様では、前記照射部は、第1の入力端子及び第2の入力端子を有し、前記第1の入力端子に前記第1の期間と前記第2の期間とを切り換える切換信号が入力され、前記第2の入力端子に前記切換信号の高電位レベルよりも低い基準電圧が入力されるコンパレーターを含み、前記スイッチ回路は、前記コンパレーターから出力される信号に基づいて制御されてもよい。
【0015】
このようにすれば、切換信号の電圧レベルを、例えば第1の期間では基準電位より高い電圧に設定し、第2の期間では基準電圧より低い電圧に設定することで、強度分布の異なる第1、第2の照射光強度分布を交互に形成することができる。
【0016】
また本発明の一態様では、前記照射部は、前記第1の期間では、前記照射部の一端から他端に向かうにつれて前記照射光の強度が低くなる前記第1の照射光強度分布を形成し、前記第2の期間では、前記照射部の一端から他端に向かうにつれて前記照射光の強度が高くなる前記第2の照射光強度分布を形成してもよい。
【0017】
このようにすれば、第1の期間の受光結果と第2の期間の受光結果とを比較することで、環境光などの影響を低減することができるから、対象物の検出精度を高くすることなどが可能になる。
【0018】
また本発明の一態様では、前記第1の発光素子〜前記第nの発光素子は、前記照射部の一端と他端との間の曲線に沿って配置され、前記照射部は、前記第1の発光素子〜前記第nの発光素子から出射される第1の光源光〜第nの光源光に基づいて、前記照射光を出射してもよい。
【0019】
このようにすれば、照射部の一端と他端との間の曲線を含む面、例えば凸面又は凹面に配置されるn個の発光素子から出射される光源光に基づいて、照射光を出射することができる。その結果、コンパクトな構成の照射部で、広いエリアに照射光を出射することができるから、小型な構成で対象物の位置情報を検出することなどが可能になる。
【0020】
また本発明の一態様では、前記第1の発光素子〜前記第nの発光素子は、前記第1の期間では、前記曲線の一端から他端に向かうにつれて各発光素子の光量が低くなる第1期間用第1の光源光〜第1期間用第nの光源光を出射し、前記第2の期間では、前記曲線の一端から他端に向かうにつれて各発光素子の光量が高くなる第2期間用第1の光源光〜第2期間用第nの光源光を出射し、前記照射部は、前記第1の期間では、前記第1期間用第1の光源光〜前記第1期間用第nの光源光に基づいて、前記照射部の一端から他端に向かうにつれて前記照射光の強度が低くなる前記第1の照射光強度分布を形成し、前記第2の期間では、前記第2期間用第1の光源光〜前記第2期間用第nの光源光に基づいて、前記照射部の一端から他端に向かうにつれて前記照射光の強度が高くなる前記第2の照射光強度分布を形成してもよい。
【0021】
このようにすれば、照射部は、第1〜第nの発光素子が出射する第1〜第nの光源光に基づいて、強度分布が異なる第1、第2の照射光強度分布を形成することができるから、コンパクトな構成で精度の高い位置情報検出などが可能になる。
【0022】
本発明の他の態様は、上記いずれかに記載の光学式検出装置と、画像を表示する表示装置とを含む表示システムに関係する。
【0023】
本発明の他の態様は、上記いずれかに記載の光学式検出装置と、前記光学式検出装置からの検出情報に基づいて処理を行う情報処理装置と、前記情報処理装置からの画像データに基づいて画像を表示する表示装置とを含む情報処理システムに関係する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1(A)、図1(B)は、光学式検出装置の基本的な構成例。
【図2】図2(A)、図2(B)は、照射部の第1の構成例。
【図3】図3(A)、図3(B)は、照射部の第1の構成例による照射光を説明する図。
【図4】照射部の第2の構成例。
【図5】図5(A)、図5(B)は、照射部の第2の構成例による照射光を説明する図。
【図6】図6(A)、図6(B)は、第1〜第nの電流調整部及びコンパレーターの構成例と信号波形の一例。
【図7】図7(A)、図7(B)は、第1〜第nの電流調整部及びコンパレーターの変形例と信号波形の一例。
【図8】図8(A)、図8(B)は、照射部の比較例。
【図9】図9(A)、図9(B)は、照射部の比較例における回路と信号波形の一例。
【図10】図10(A)、図10(B)は、光学式検出装置による位置情報を検出する手法を説明する図。
【図11】図11(A)、図11(B)は、表示システム及び情報処理システムの構成例。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0026】
1.光学式検出装置
図1(A)、図1(B)に、本実施形態の光学式検出装置100の基本的な構成例を示す。光学式検出装置100は、照射部EU、受光部RU、検出部110及び制御部120を含む。なお、本実施形態の光学式検出装置は図1(A)、図1(B)の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0027】
本実施形態の光学式検出装置100は、図1(A)に示すようにスクリーン20(表示部)の前方側(Z軸方向側)に設定された検出エリアRDETにおいて、ユーザーの指やタッチペンなどの対象物OBを光学的に検出する。このために照射部EUは、対象物OBを検出するための第1期間用及び第2期間用照射光LT1、LT2を出射する。具体的には、照射方向に応じて強度が異なる照射光を放射状に出射する。これにより検出エリアRDETには、照射方向に応じて強度が異なる第1、第2の照射光強度分布LID1、LID2が形成される。
【0028】
ここでX−Y平面とは、例えば表示部20によって規定される対象面(表示面)に沿った平面である。対象面とは、検出エリアRDETの設定対象となる面であって、例えば情報処理装置のディスプレイの表示面、或いは投射型表示装置(プロジェクター)の投影面、或いはデジタルサイネージにおけるディスプレイ面などである。
【0029】
検出エリアRDETとは、対象物OBが検出されるエリア(領域)であって、具体的には、例えば照射光が対象物OBに反射されることによる反射光を、受光部RUが受光して、対象物OBを検出することができるエリアである。より具体的には、受光部RUが反射光を受光して対象物OBを検出することが可能であって、かつ、その検出精度について、許容できる範囲の精度が確保できるエリアである。
【0030】
照射部EUは、第1〜第n(nは2以上の整数)の発光素子LD1〜LDnを含み、対象物OBを検出するための照射光LTを出射する。具体的には、照射部EUは、第1の期間では第1期間用照射光LT1を出射し、第2の期間では第2期間用照射光LT2を出射する。第1期間用照射光LT1と第2期間用照射光LT2とは、照射光の強度分布が異なる。
【0031】
具体的には、照射部EUは、第1の期間では、照射部EUの一端から他端に向かうにつれて照射光(第1期間用照射光)LT1の強度が低くなる第1の照射光強度分布を形成する。また第2の期間では、照射部EUの一端から他端に向かうにつれて照射光(第2期間用照射光)LT2の強度が高くなる第2の照射光強度分布を形成する。第1の期間と第2の期間とは、交互に設けられる。
【0032】
照射部EUは、第1〜第nの発光素子LD1〜LDnが配置される面に対する平面視において、例えば半円形状を有してもよい。
【0033】
照射部EUの形状は、中心角が180度である半円形状に限定されるものではなく、中心角が180度より小さい扇形形状であってもよい。また、半円又は扇形の曲線部分(弧の部分)は、円弧(真円の一部)でなくてもよい。例えば楕円等の一部であってもよい。
【0034】
受光部RUは、照射部EUから出射した照射光LTが検出エリアRDETに存在する対象物OBにより反射されることによる反射光を受光する。受光部RUは、照射部EUの半円形状の中心に配置されてもよい。この受光部RUは、例えばフォトダイオードやフォトトランジスターなどの受光素子により実現できる。この受光部RUには検出部110が例えば電気的に接続されている。
【0035】
検出部110は、照射光LTが対象物OBにより反射することによる反射光の受光結果に基づいて、対象物OBの位置情報を検出する。この検出部110の機能は、アナログ回路等を有する集積回路装置や、マイクロコンピューター上で動作するソフトウェア(プログラム)などにより実現できる。例えば検出部110は、受光部RUの受光素子が対象物からの反射光を受光することで発生した検出電流を、検出電圧に変換し、受光結果である検出電圧に基づいて、対象物の位置情報を検出する。
【0036】
ここで対象物の位置情報(位置特定情報)とは、対象物の位置を特定する情報であればよく、対象物の位置座標には限定されず、例えば対象物の位置を特定するための角度等であってもよい。
【0037】
制御部120は、光学式検出装置100の各種の制御処理を行う。具体的には照射部EUが有する発光素子の発光制御などを行う。この制御部120は照射部EU、検出部110に電気的に接続されている。制御部120の機能は、集積回路装置やマイクロコンピューター上で動作するソフトウェアなどにより実現できる。
【0038】
図2(A)、図2(B)に、本実施形態の照射部EUの第1の構成例を示す。本実施形態の照射部EUは、照射部EUの一端と他端との間の曲線CURに沿って配置される第1〜第n(nは2以上の整数)の発光素子LD1〜LDnを含む。なお、本実施形態の照射部EUは図2(A)、図2(B)の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0039】
図2(A)に示すように、照射部EUの第1の構成例では、第1〜第nの発光素子LD1〜LDnは、照射部EUの一端と他端との間の曲線CURに沿って配置される。具体的には、照射部EUは、例えば凸面を有する支持部SUPと、支持部SUPの凸面に配置され配置位置の凸面の法線方向に照射光を照射する第1〜第nの発光素子LD1〜LDnとを含む。照射部EUの一端に第1の発光素子LD1が配置され、照射部EUの他端に第nの発光素子LDnが配置される。なお、曲線CURは円弧線であってもよいし、曲率半径が変化する曲線であってもよい。また、照射部EUの一端或いは他端は、照射部EUの厳密な端でなくてもよい。
【0040】
第1〜第nの発光素子LD1〜LDnは、例えば赤外光(可視光領域に近い近赤外線)を出射するLED(発光ダイオード)等であって、第1〜第nの光源光LS1〜LSnを出射する。照射部EUは、第1〜第nの発光素子LD1〜LDnから出射される第1〜第nの光源光LS1〜LSnに基づいて、照射光LTを出射する。
【0041】
以下の説明のために、図2(A)に示すように、第1、第2、第3の方向D1、D2、D3を定義する。すなわち、曲線CURの他端から一端へ向かう方向を第2の方向D2とし、第2の方向D2に垂直で曲線CURの内側から外側に向かう方向を第1の方向D1とする。そして第1、第2の方向D1、D2に垂直な方向を第3の方向D3とする。
【0042】
図示していないが、本実施形態の照射部EUは、発光素子LD1〜LDnに流れる電流を設定する第1〜第nの電流調整部AJ1〜AJn及び第1の期間と第2の期間とを切り換えるための信号を生成するコンパレーターCMPを含む。これらの詳細については、後述する。
【0043】
図2(B)は、照射部EUの第1の構成例を第2の方向D2から見た図である。第1〜第nの発光素子LD1〜LDnは、照射基準面SLに沿って光源光をそれぞれ出射する。照射基準面SLは、照射部EUが照射光を出射する方向を規定するための仮想的な面であって、照射基準面SLに沿って照射光が出射される。
【0044】
但し、各発光素子からの光源光は一定の角度で広がりを持つから、その光源光に基づいて出射される照射光も、照射基準面SLの面内に限定されず、照射基準面SLを基準として第3の方向D3及びその反対方向に一定の広がりを持つ。
【0045】
図3(A)、図3(B)は、照射部EUの第1の構成例により出射される照射光を説明する図である。図3(A)、図3(B)では、例えば発光素子LD1〜LDnとして第1〜第13の発光素子LD1〜LD13を含む構成例について示す。
【0046】
図3(A)に示すように、第1の期間では、発光素子LD1〜LD13は、曲線CURの一端から他端に向かうにつれて、各発光素子の光量が低くなる第1期間用第1〜第13の光源光LS1−1〜LS13−1を出射する。例えば、LD1は光源光LS1−1を出射し、次のLD2はLD1よりも光量が低い光源光LS2−1を出射し、次のLD3はLD2よりも光量が低い光源光LS3−1を出射する。そして最後のLD13はLD12よりも光量の低い光源光LS13−1を出射する。すなわち、曲線CURの一端からは最も光量の高い光源光が出射され、一端から他端に向かって徐々に光量が減少し、他端からは最も光量の低い光源光が出射される。
【0047】
このようにして、第1の期間では第1期間用光源光LS1−1〜LS13−1が出射され、これに基づいて曲線CURの一端から他端に向かうにつれて、照射光の強度が低くなる第1期間用照射光LT1が出射される。第1期間用照射光LT1は、各発光素子から出射された第1期間用の光源光LS1−1〜LS13−1が合成された光である。
【0048】
即ち第1の期間では、照射部EUは、第1期間用第1〜第1期間用第nの光源光LS1−1〜LSn−1に基づいて、照射部EUの一端から他端に向かうにつれて照射光の強度が低くなる第1の照射光強度分布LID1を形成する。
【0049】
第2の期間では、発光素子LD1〜LD13は、曲線CURの一端から他端に向かうにつれて、各発光素子の光量が高くなる第2期間用第1〜第13の光源光LS1−2〜LS13−2を出射する。例えば、LD1は光源光LS1−2を出射し、次のLD2はLD1よりも光量が高い光源光LS2−2を出射し、次のLD3はLD2よりも光量が高い光源光LS3−2を出射する。そして最後のLD13はLD12よりも光量の高い光源光LS13−2を出射する。すなわち、曲線CURの一端からは最も光量の低い光源光が出射され、一端から他端に向かって徐々に光量が増加し、他端からは最も光量の高い光源光が出射される。
【0050】
このようにして、第2の期間では第2期間用光源光LS1−2〜LS13−2が出射され、これに基づいて曲線CURの一端から他端に向かうにつれて、照射光の強度が高くなる第2期間用照射光LT2が出射される。第2期間用照射光LT2は、各発光素子から出射された第2期間用光源光LS1−2〜LS13−2が合成された光である。
【0051】
即ち第2の期間では、照射部EUは、第2期間用第1〜第2期間用第nの光源光LS1−2〜LSn−2に基づいて、照射部EUの一端から他端に向かうにつれて照射光の強度が高くなる第2の照射光強度分布LID2を形成する。
【0052】
図3(B)に示すように、第1、第2期間用照射光LT1、LT2は、照射基準面SLに沿って照射されるが、上述したように、照射光LT1、LT2が照射される範囲は照射基準面SLの面内に限定されず、照射基準面SLを基準として第3の方向D3及びその反対方向に一定の広がりを持つ。
【0053】
本実施形態の光学式検出装置100では、第1の期間と第2の期間とが交互に設けられ、第1の期間では第1の照射光強度分布LID1を形成し、第2の期間では第2の照射光強度分布LID2を形成することができる。こうすることで、環境光などの外乱光の影響を最小限に抑えた、より精度の高い対象物の検出が可能になる。
【0054】
図4に、本実施形態の照射部EUの第2の構成例を示す。第2の構成例では、照射部EUは、照射部EUの一端と他端との間の曲線CURに沿って配置される第1〜第n(nは2以上の整数)の発光素子LD1〜LDnを含む。具体的には、照射部EUは、凹面を有する湾曲した支持部SUPと、支持部SUPの凹面に配置され、配置位置の凹面の法線方向に照射光を照射する第1〜第nの発光素子LD1〜LDnとを含む。例えば図4では、照射部EUは、第1〜第7の発光素子LD1〜LD7(広義には第1〜第nの発光素子)を含む。曲線CURは円弧線であってもよいし、曲率半径が変化する曲線であってもよい。また、照射部EUの一端或いは他端は、照射部EUの厳密な端でなくてもよい。なお、本実施形態の照射部EUは図4の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0055】
第1〜第nの発光素子LD1〜LDnは、例えば赤外光(可視光領域に近い近赤外線)を出射するLED(発光ダイオード)等であって、第1〜第nの光源光LS1〜LSnを出射する。照射部EUは、第1〜第nの発光素子LD1〜LDnから出射される第1〜第nの光源光LS1〜LSnに基づいて、照射光LTを出射する。
【0056】
図示していないが、本実施形態の照射部EUは、発光素子LD1〜LDnに流れる電流を設定する第1〜第nの電流調整部AJ1〜AJn及び第1の期間と第2の期間とを切り換えるための信号を生成するコンパレーターCMPを含む。これらの詳細については、後述する。
【0057】
図5(A)、図5(B)は、照射部EUの第2の構成例により出射される照射光を説明する図である。
【0058】
図5(A)には、第1の期間に出射される第1期間用照射光LT1の照射方向及び照射光強度を示す。第1の期間では、発光素子LD1〜LD7は、照射部EUの一端から他端に向かうにつれて、各発光素子の光量が低くなる第1〜第7の光源光LS1〜LS7を出射する。
【0059】
具体的には、例えば第1の光源光LS1が照射部EUの一端から検出エリアRDETに対して出射され、第7の光源光LS7が照射部EUの他端から検出エリアRDETに対して出射され、第4の光源光LS4が照射部EUの一端と他端との中間部から検出エリアRDETに対して出射される。そして第1、第4、第7の光源光LS1、LS4、LS7は、それぞれに交差し、且つ、それぞれの強度が異なる。例えば、図5(A)では、LS1の強度が最も高く、LS7の強度が最も低く、LS4の強度は両者の中間である。
【0060】
第1の光源光LS1と第4の光源光LS4とは、照射部EUと検出エリアRDETとの間の基準点PEにおいて交差する。例えば、図5(A)に示すように、LS1とLS4とが基準点PEにおいて交差し、さらにLS4とLS7とが基準点PEにおいて交差してもよい。また、さらに他の発光素子から出射される光源光が基準点PEにおいて交差するようにしてもよい。
【0061】
ここで各光源光が基準点PEで交差するとは、光源光の強度分布が基準点PEの1点に集中することを意味するのではなく、各光源光の強度のピークが基準点PEで交差する、即ち、基準点PEを通るという意味である。発光素子から出射される光源光の強度は、強度のピークを持つ方向を中心として強度分布の広がりを持つからである。
【0062】
LD1は最も光量の高い光源光LS1を出射し、次のLD2はLS1よりも光量が低い光源光LS2を出射し、次のLD3はLS2よりも光量が低い光源光LS3を出射する。そして最後のLD7はLS6よりも光量の低い光源光LS7を出射する。すなわち、照射部EUの一端からは最も光量の高い光源光が出射され、一端から他端に向かって徐々に光量が減少し、他端からは最も光量の低い光源光が出射される。
【0063】
このようにして、第1の期間では第1〜第7の光源光LS1〜LS7が出射され、これに基づいて照射部EUの一端から他端に向かうにつれて、照射光の強度が低くなる第1期間用照射光LT1が出射される。即ち、照射部EUの一端から他端に向かうにつれて、照射光の強度が低くなる第1の照射光強度分布LID1が形成される。第1期間用照射光LT1は、各発光素子から出射された第1〜第7の光源光LS1〜LS7が合成された光である。
【0064】
発光素子LD1〜LD7の光量は、各発光素子を流れる電流(発光電流)に比例するから、この電流を制御することで、各発光素子の光量を上記のように設定することができる。発光電流は、例えば発光素子と直列に接続された抵抗素子の抵抗値により設定することができる。
【0065】
図5(B)には、第2の期間に出射される第2期間用照射光LT2の照射方向及び照射光強度を示す。第2の期間では、発光素子LD1〜LD7は、照射部EUの一端から他端に向かうにつれて、各発光素子の光量が高くなる第1〜第7の光源光LS1〜LS7を出射する。
【0066】
具体的には、例えば第1の光源光LS1が照射部EUの一端から検出エリアRDETに対して出射され、第7の光源光LS7が照射部EUの他端から検出エリアRDETに対して出射され、第4の光源光LS4が照射部EUの一端と他端との中間部から検出エリアRDETに対して出射される。そして第1、第4、第7の光源光LS1、LS4、LS7は、それぞれに交差し、且つ、それぞれの強度が異なる。例えば、図5(B)では、LS1の強度が最も低く、LS7の強度が最も高く、LS4の強度は両者の中間である。
【0067】
第1の光源光LS1と第4の光源光LS4とは、照射部EUと検出エリアRDETとの間の基準点PEにおいて交差する。例えば、図5(B)に示すように、LS1とLS4とが基準点PEにおいて交差し、さらにLS4とLS7とが基準点PEにおいて交差してもよい。また、さらに他の発光素子から出射される光源光が基準点PEにおいて交差するようにしてもよい。
【0068】
LD1は最も光量の低い光源光LS1を出射し、次のLD2はLS1よりも光量が高い光源光LS2を出射し、次のLD3はLS2よりも光量が高い光源光LS3を出射する。そして最後のLD7はLS6よりも光量の高い光源光LS7を出射する。すなわち、照射部EUの一端からは最も光量の低い光源光が出射され、一端から他端に向かって徐々に光量が増加し、他端からは最も光量の高い光源光が出射される。
【0069】
このようにして、第2の期間では第1〜第7の光源光LS1〜LS7が出射され、これに基づいて照射部EUの一端から他端に向かうにつれて、照射光の強度が高くなる第2期間用照射光LT2が出射される。即ち、照射部EUの一端から他端に向かうにつれて、照射光の強度が高くなる第2の照射光強度分布LID2が形成される。第2期間用照射光LT2は、各発光素子から出射された第1〜第7の光源光LS1〜LS7が合成された光である。
【0070】
図6(A)に、本実施形態の照射部EUに含まれる第1〜第nの電流調整部AJ1〜AJn及びコンパレーターCMPの構成例を示す。なお、本実施形態の電流調整部AJ1〜AJn及びコンパレーターCMPは図6(A)の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0071】
第1〜第nの電流調整部AJ1〜AJnのうちの第i(iは1≦i≦nである整数)の電流調整部AJiは、第1の照射光強度分布LID1を形成する第1の期間T1では、第1〜第nの発光素子LD1〜LDnのうちの第iの発光素子LDiに流れる電流を第1期間用第iの電流値IAiに設定する。また、第2の照射光強度分布LID2を形成する第2の期間T2では、第iの発光素子LDiに流れる電流を第1期間用第iの電流値IAiとは異なる第2期間用第iの電流値IBiに設定する。
【0072】
電流調整部AJiは、第1期間用第1〜第nの電流調整素子EA1〜EAnのうちの第1期間用第iの電流調整素子EAiと、第2期間用第1〜第nの電流調整素子EB1〜EBnのうちの第2期間用第iの電流調整素子EBiと、第1〜第nのスイッチ回路SW1〜SWnのうちの第iのスイッチ回路SWiとを含む。
【0073】
電流調整素子EA1〜EAn、EB1〜EBnは、第1の期間及び第2の期間における発光素子LD1〜LDnに流れる電流を調整する素子であって、例えば抵抗素子であってもよいし、電流制限用ダイオードであってもよい。
【0074】
第iのスイッチ回路SWiは、第1の期間では、第iの発光素子LDiに流れる電流として、第1期間用第iの電流調整素子EAiに流れる電流を選択する。また第2の期間では、第iの発光素子LDiに流れる電流として、第2期間用第iの電流調整素子EBiに流れる電流を選択する。
【0075】
電流調整素子EA1〜EAn、EB1〜EBnが抵抗素子である場合には、以下のように各抵抗素子の抵抗値が設定される。
【0076】
第1期間用第1〜第nの電流調整素子EA1〜EAnのうちの第1期間用第j(jは1≦j≦n−1である整数)の電流調整素子EAjの抵抗値をRAjとし、第1期間用第j+1の電流調整素子EAj+1の抵抗値をRAj+1とした場合に、RAj<RAj+1である。また第2期間用第1〜第nの電流調整素子EB1〜EBnのうちの第2期間用第jの電流調整素子EBjの抵抗値をRBjとし、第2期間用第j+1の電流調整素子EBj+1の抵抗値をRBj+1とした場合に、RBj>RBj+1である。
【0077】
このように抵抗値を設定することで、例えば図3(A)に示したように、第1の期間では、発光素子LD1〜LD13は、曲線CURの一端から他端に向かうにつれて、各発光素子の光量が低くなる第1期間用の第1〜第13の光源光LS1−1〜LS13−1を出射する。一方、第2の期間では、発光素子LD1〜LD13は、曲線CURの一端から他端に向かうにつれて、各発光素子の光量が高くなる第2期間用の第1〜第13の光源光LS1−2〜LS13−2を出射する。
【0078】
コンパレーターCMPは、第1、第2の入力端子A、Bを有し、第1の入力端子Aに第1の期間と第2の期間とを切り換える切換信号VSCが入力され、第2の入力端子Bに切換信号VSCの高電位レベル(Hレベル)よりも低い基準電圧VREFが入力される。そしてスイッチ回路SW1〜SWnは、コンパレーターCMPから出力される信号VCPに基づいて制御される。切換信号VSC及び基準電圧VREFは、制御部120から供給される。
【0079】
図6(B)に、コンパレーターCMPの入出力信号波形及び発光素子LD1、LDnに流れる電流ILD1、ILDnの波形の一例を示す。
【0080】
切換信号VSCの信号レベルは、第1の期間T1では基準電圧VREFより高い電圧レベルに設定され、第2の期間T2では基準電圧VREFより低い電圧レベルに設定される。従って、コンパレーターCMPの出力信号VCPは、第1の期間T1では高電位レベル(Hレベル、VDDレベル)に設定され、第2の期間T2では低電位レベル(Lレベル、VSSレベル)に設定される。
【0081】
スイッチ回路SW1〜SWnは、出力信号VCPがHレベルである期間には第1期間用電流調整素子EA1〜EAnをそれぞれ選択し、出力信号VCPがLレベルである期間には第2期間用電流調整素子EB1〜EBnをそれぞれ選択する。このようにすることで、例えば図6(B)に示すように、LD1に流れる電流ILD1は、第1の期間T1では電流値IA1に設定され、第2の期間T2では電流値IB1に設定される。また、LDnに流れる電流ILDnは、第1の期間T1では電流値IAnに設定され、第2の期間T2では電流値IBnに設定される。
【0082】
図示していないが、第1の期間においてLD1〜LDnに流れる電流の電流値をIA1〜IAnとした場合に、IA1>IA2>IA3>・・・>IAnとなる。また、第2の期間においてLD1〜LDnに流れる電流の電流値をIB1〜IBnとした場合に、IB1<IB2<IB3<・・・<IBnとなる。
【0083】
図7(A)に、第1〜第nの電流調整部AJ1〜AJn及びコンパレーターCMPの変形例を示す。この変形例では、発光素子LD1〜LDnの駆動用電源として、コンパレーターCMPに入力される切換信号VSCを用いる。即ち発光素子LD1〜LDnに流れる電流は、高電位電源VDDからではなく、切換信号VSCから供給される。コンパレーターCMP及び電流調整部AJ1〜AJnの構成は、図6(A)に示したものと同じである。但し、第2の期間T2では、発光素子を駆動する電圧が第1の期間T1よりも低くなるから、所望の電流値を得るためには、例えば第2期間用電流調整素子EB1〜EBnの各抵抗値を図6(A)の場合より低く設定する必要がある。
【0084】
図7(B)に、コンパレーターCMPの入出力信号波形及び発光素子LD1、LDnに流れる電流ILD1、ILDnの波形の一例を示す。
【0085】
切換信号VSCの信号レベルは、図6(B)と同様に、第1の期間T1では基準電圧VREFより高い電圧レベルに設定され、第2の期間T2では基準電圧VREFより低い電圧レベルに設定される。但し、この変形例では切換信号VSCを発光素子の駆動用電源としても利用するから、第2の期間T2でも所望の電流値が得られるような電圧レベルに設定することが必要である。
【0086】
スイッチ回路SW1〜SWnは、出力信号VCPがHレベルである期間には第1期間用電流調整素子EA1〜EAnをそれぞれ選択し、出力信号VCPがLレベルである期間には第2期間用電流調整素子EB1〜EBnをそれぞれ選択する。このようにすることで、例えば図7(B)に示すように、LD1に流れる電流ILD1は、第1の期間T1では電流値IA1に設定され、第2の期間T2では電流値IB1に設定される。また、LDnに流れる電流ILDnは、第1の期間T1では電流値IAnに設定され、第2の期間T2では電流値IBnに設定される。
【0087】
図示していないが、第1の期間においてLD1〜LDnに流れる電流の電流値をIA1〜IAnとした場合に、IA1>IA2>IA3>・・・>IAnとなる。また、第2の期間においてLD1〜LDnに流れる電流の電流値をIB1〜IBnとした場合に、IB1<IB2<IB3<・・・<IBnとなる。
【0088】
図8(A)、図8(B)に、照射部EUの比較例を示す。この比較例は、第1の発光素子群LD1〜LDm(mは1<m<nである整数)及び第2の発光素子群LDm+1〜LDnを含み、第1の期間では第1の発光素子群LD1〜LDmが第1期間用照射光LT1を出射し、第2の期間では第2の発光素子群LDm+1〜LDnが第2期間用照射光LT2を出射する。第1の発光素子群LD1〜LDmと第2の発光素子群LDm+1〜LDnとは、第3の方向D3において分離して配置される。
【0089】
図9(A)は、比較例における発光素子を含む回路の一例である。第1の発光素子群LD1〜LDmは、第1の駆動信号VAにより駆動され、電流調整素子EA1〜EAmにより各発光素子の電流値が設定される。第2の発光素子群LDm+1〜LDnは、第2の駆動信号VBにより駆動され、電流調整素子EBm+1〜EBnにより各発光素子の電流値が設定される。
【0090】
図9(B)は、比較例における信号波形の一例である。第1の期間T1では、第1の駆動信号VAが所望の駆動電圧に設定され、第1の発光素子群LD1〜LDmに電流が流れる。例えばLD1には電流値IA1、LDmには電流値IAmの電流が流れる。また、第2の期間T2では、第2の駆動信号VBが所望の駆動電圧に設定され、第2の発光素子群LDm+1〜LDnに電流が流れる。例えばLDm+1には電流値IBm+1、LDnには電流値IBnの電流が流れる。
【0091】
第1の期間に第1の発光素子群LD1〜LDmの各発光素子に流れる電流の電流値をIA1〜IAmとした場合に、IA1>IA2>IA3>・・・>IAmとなる。また、第2の期間に第2の発光素子群LDm+1〜LDnの各発光素子に流れる電流の電流値をIBm+1〜IBnとした場合に、IBm+1<IBm+2<IBm+3<・・・<IBnとなる。
【0092】
この比較例では、第1、第2期間用照射光LT1、LT2が同一の発光素子群から出射されず、配置位置が異なる2つの発光素子群から出射されるために、LT1に対応する検出エリアとLT2に対応する検出エリアとが同一のエリアにならなくなるおそれがある。例えば図1(B)において、2つの検出エリアがZ方向にずれるおそれがある。その結果、対象物の検出精度が低下するなどの問題が生じる。
【0093】
本実施形態の照射部EUによれば、上述したように、第1、第2の照射光強度分布LID1、LID2を共に同一の発光素子群LD1〜LDnにより形成することができるから、LT1に対応する検出エリアとLT2に対応する検出エリアとは同一のエリアになる。その結果、対象物の検出精度をより高くすることなどが可能になる。
【0094】
以上説明したように、本実施形態の照射部EUによれば、コンパレーター及びスイッチ回路を含む電流調整部を設けることで、1個の発光素子を、第1の期間と第2の期間とで異なる電流値の電流で発光させることができる。このようにすることで、異なる照射光強度分布をもつ第1、第2の照射光強度分布を形成することができる。また、第1期間用の発光素子群と第2期間用の発光素子群とを別々に設ける必要がないから、発光素子の個数を半分に減らすことができる。その結果、照射部の構成を小型にすることなどが可能になる。さらに第1期間用照射光LT1と第2期間用照射光LT2とが同一の発光素子群から出射されるから、LT1に対応する検出エリアとLT2に対応する検出エリアとがずれた位置に形成されるなどの問題がなくなる。その結果、対象物の検出精度をより高くすることなどが可能になる。
【0095】
2.位置情報検出の手法
図10(A)、図10(B)は、本実施形態の光学式検出装置による位置情報を検出する手法を説明する図である。
【0096】
図10(A)のE1は、第1の照射光強度分布LID1において、第1期間用照射光LT1の照射方向の角度と、その角度での照射光LT1の強度(光度、放射強度)との関係を示す図である。図10(A)のE1では、照射方向が図10(B)のDD1の方向(左方向)である場合に強度が最も低くなる。一方、DD3の方向(右方向)である場合に強度が最も高くなり、DD2の方向ではその中間の強度になる。具体的には方向DD1から方向DD3への角度変化に対して照射光の強度は単調増加しており、例えばリニアー(直線的)に変化している。
【0097】
また図10(A)のE2は、第2の照射光強度分布LID2において、第2期間用照射光LT2の照射方向の角度と、その角度での照射光LT2の強度との関係を示す図である。図10(A)のE2では、照射方向が図10(B)のDD1の方向である場合に強度が最も高くなる。一方、DD3の方向である場合に強度が最も低くなり、DD2の方向ではその中間の強度になる。具体的には方向DD1から方向DD3への角度変化に対して照射光の強度は単調減少しており、例えばリニアーに変化している。なお図10(A)では照射方向の角度と強度の関係はリニアーな関係になっているが、本実施形態はこれに限定されず、例えば双曲線の関係等であってもよい。
【0098】
そして図10(B)に示すように、角度θの方向DDBに対象物OBが存在したとする。すると、第1の期間において第1の照射光強度分布LID1を形成した場合(E1の場合)には、図10(A)に示すように、DDB(角度θ)の方向に存在する対象物OBの位置での強度はINTaになる。一方、第2の期間において第2の照射光強度分布LID2を形成した場合(E2の場合)には、DDBの方向に存在する対象物OBの位置での強度はINTbになる。従って、これらの強度INTa、INTbの関係を求めることで、対象物OBの位置する方向DDB(角度θ)を特定できる。
【0099】
このような強度INTa、INTbの関係を求めるために、本実施形態では、受光部RUが、照射光強度分布LID1を形成した際の対象物OBの反射光(第1の反射光)を受光する。この時の反射光の検出受光量をGaとした場合に、このGaが強度INTaに対応するようになる。また受光部RUが、照射光強度分布LID2を形成した際の対象物OBの反射光(第2の反射光)を受光する。この時の反射光の検出受光量をGbとした場合に、このGbが強度INTbに対応するようになる。従って、検出受光量GaとGbの関係が求まれば、強度INTa、INTbの関係が求まり、対象物OBの位置する方向DDBを求めることができる。
【0100】
例えば発光素子LD1〜LDnの第1の期間での制御量(例えば各発光素子を流れる電流値の総和)、変換係数、放出光量を、各々、Ia、k、Eaとする。また発光素子LD1〜LDnの第2の期間での制御量(例えば各発光素子を流れる電流値の総和)、変換係数、放出光量を、各々、Ib、k、Ebとする。すると下式(1)、(2)が成立する。
【0101】
Ea=k・Ia (1)
Eb=k・Ib (2)
また第1期間用照射光LT1の減衰係数をfaとし、この照射光に対応する反射光(第1の反射光)の検出受光量をGaとする。また第2期間用照射光LT2の減衰係数をfbとし、この照射光に対応する反射光(第2の反射光)の検出受光量をGbとする。すると下式(3)、(4)が成立する。
【0102】
Ga=fa・Ea=fa・k・Ia (3)
Gb=fb・Eb=fb・k・Ib (4)
従って、検出受光量Ga、Gbの比は下式(5)のように表せる。
【0103】
Ga/Gb=(fa/fb)・(Ia/Ib) (5)
ここでGa/Gbは、受光部RUでの受光結果から特定することができ、Ia/Ibは、照射部EUの制御量から特定することができる。そして図10(A)の強度INTa、INTbと減衰係数fa、fbとは一意の関係にある。例えば減衰係数fa、fbが小さな値となり、減衰量が大きい場合は、強度INTa、INTbが小さいことを意味する。一方、減衰係数fa、fbが大きな値となり、減衰量が小さい場合は、強度INTa、INTbが大きいことを意味する。従って、上式(5)から減衰率の比fa/fbを求めることで、対象物の方向、位置等を求めることが可能になる。
【0104】
より具体的には、一方の制御量IaをImに固定し、検出受光量の比Ga/Gbが1になるように、他方の制御量Ibを制御する。例えば第1期間用照射光LT1と第2期間用照射光LT2を交互に出射する制御を行い、検出受光量の波形を解析し、検出波形が観測されなくなるように(Ga/Gb=1になるように)、他方の制御量Ibを制御する。そして、この時の他方の制御量Ib=Im・(fa/fb)から、減衰係数の比fa/fbを求めて、対象物の方向、位置等を求める。
【0105】
また下式(6)、(7)のように、Ga/Gb=1になると共に制御量IaとIbの和が一定になるように制御してもよい。
【0106】
Ga/Gb=1 (6)
Im=Ia+Ib (7)
上式(6)、(7)を上式(5)に代入すると下式(8)が成立する。
【0107】
Ga/Gb=1=(fa/fb)・(Ia/Ib)
=(fa/fb)・{(Im−Ib)/Ib} (8)
上式(8)より、Ibは下式(9)のように表される。
【0108】
Ib={fa/(fa+fb)}・Im (9)
ここでα=fa/(fa+fb)とおくと、上式(9)は下式(10)のように表され、減衰係数の比fa/fbは、αを用いて下式(11)のように表される。
【0109】
Ib=α・Im (10)
fa/fb=α/(1−α) (11)
従って、Ga/Gb=1になると共にIaとIbの和が一定値Imになるように制御すれば、そのときのIb、Imから下式(10)によりαを求め、求められたαを上式(11)に代入することで、減衰係数の比fa/fbを求めることができる。これにより、対象物の方向、位置等を求めることが可能になる。そしてGa/Gb=1になると共にIaとIbの和が一定になるように制御することで、外乱光の影響等を相殺することが可能になり、検出精度の向上を図れる。
【0110】
3.表示システム及び情報処理システム
図11(A)、図11(B)に、本実施形態の表示システム及び情報処理システムの構成例を示す。図11(A)に示す表示システムの構成例は、光学式検出装置100及び表示装置10を含む。また、図11(A)に示す情報処理システムの構成例は、光学式検出装置100、表示装置10及び情報処理装置200を含む。
【0111】
情報処理装置200は、例えばパーソナルコンピューター(PC)などであって、光学式検出装置100からの検出情報に基づいて処理を行う。光学式検出装置100と情報処理装置200とは、USBケーブルUSBCを介して電気的に接続される。表示装置10は、例えば投射型表示装置(プロジェクター)などであって、情報処理装置200からの画像データに基づいて、表示部(スクリーン)20に画像を表示する。ユーザーは、表示部20に表示された画像を参照しながら、表示画像のアイコン等をポインティングすることで、情報処理装置200に対して必要な情報を入力することができる。
【0112】
なお、図11(A)では、光学式検出装置100が表示部20に取り付けられているが、他の場所に取り付けることもできる。例えば、光学式検出装置100を表示装置10に取り付けてもよいし、天井や壁などに取り付けてもよい。また、表示装置10としては、投射型表示装置(プロジェクター)に限定されるものではなく、例えばデジタルサイネージ用表示装置であってもよい。
【0113】
図11(B)に示す情報処理システムの構成例では、表示装置10として情報処理装置200(PC)に内蔵されたディスプレイ220が用いられる。光学式検出装置100はディスプレイ220に着脱可能であって、USBケーブルUSBCを介して情報処理装置200と電気的に接続される。
【0114】
上述したように、本実施形態の光学式検出装置100によれば、照射部EUにコンパレーター及びスイッチ回路を含む電流調整部を設けることで、1個の発光素子を、第1の期間と第2の期間とで異なる電流値の電流で発光させることができる。このようにすることで、第1期間用の発光素子群と第2期間用の発光素子群とを別々に設ける必要がなくなるから、発光素子の個数を半分に減らすことができる。その結果、照射部の構成を小型にすることができるから、表示装置等への取り付けに関する制約を緩和することなどが可能になる。さらに第1期間用照射光LT1と第2期間用照射光LT2とが同一の発光素子群から出射されるから、LT1に対応する検出エリアとLT2に対応する検出エリアとがずれた位置に形成されるなどの問題がなくなる。その結果、対象物の検出精度をより高くすることなどが可能になる。
【0115】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は全て本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また光学式検出装置、表示システム及び情報処理システムの構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0116】
EU 照射部、RU 受光部、LT 照射光、
LT1、LT2 第1、第2期間用照射光、LR 反射光、PE 基準点、
SL 照射基準面、CUR 曲線、
LD1〜LDn 第1〜第nの発光素子、LS1〜LSn 第1〜第nの光源光、
LID1、LID2 第1、第2の照射光強度分布、RDET 検出エリア、
OB 対象物、AJ1〜AJn 電流調整部、
EA1〜EAn 第1期間用電流調整素子、EB1〜EBn 第2期間用電流調整素子、CMP コンパレーター、SW1〜SWn スイッチ回路、
10 表示装置、20 表示部、100 光学式検出装置、110 検出部、
120 制御部、200 情報処理装置、220 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射光を出射する照射部と、
前記照射光が対象物により反射されることによる反射光を受光する受光部と、
前記受光部の受光結果に基づいて前記対象物の位置情報を検出する検出部とを含み、
前記照射部は、
第1の発光素子〜第n(nは2以上の整数)の発光素子と、
第1の電流調整部〜第nの電流調整部とを有し、
前記第1の電流調整部〜前記第nの電流調整部のうちの第i(iは1≦i≦nである整数)の電流調整部は、
第1の照射光強度分布を形成する第1の期間では、前記第1の発光素子〜前記第nの発光素子のうちの第iの発光素子に流れる電流を第1期間用第iの電流値に設定し、
第2の照射光強度分布を形成する第2の期間では、前記第iの発光素子に流れる電流を前記第1期間用第iの電流値とは異なる第2期間用第iの電流値に設定することを特徴とする光学式検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第iの電流調整部は、
第1期間用第1の電流調整素子〜第1期間用第nの電流調整素子のうちの第1期間用第iの電流調整素子と、
第2期間用第1の電流調整素子〜第2期間用第nの電流調整素子のうちの第2期間用第iの電流調整素子と、
第1のスイッチ回路〜第nのスイッチ回路のうちの第iのスイッチ回路とを有し、
前記第iのスイッチ回路は、
前記第1の期間では、前記第iの発光素子に流れる電流として、前記第1期間用第iの電流調整素子に流れる電流を選択し、
前記第2の期間では、前記第iの発光素子に流れる電流として、前記第2期間用第iの電流調整素子に流れる電流を選択することを特徴とする光学式検出装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1期間用第1の電流調整素子〜前記第1期間用第nの電流調整素子及び前記第2期間用第1の電流調整素子〜前記第2期間用第nの電流調整素子は、抵抗素子であることを特徴とする光学式検出装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1期間用第1の電流調整素子〜前記第1期間用第nの電流調整素子のうちの第1期間用第j(jは1≦j≦n−1である整数)の電流調整素子の抵抗値をRAjとし、第1期間用第j+1の電流調整素子の抵抗値をRAj+1とした場合に、RAj<RAj+1であり、
前記第2期間用第1の電流調整素子〜前記第2期間用第nの電流調整素子のうちの第2期間用第jの電流調整素子の抵抗値をRBjとし、第2期間用第j+1の電流調整素子の抵抗値をRBj+1とした場合に、RBj>RBj+1であることを特徴とする光学式検出装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかにおいて、
前記照射部は、
第1の入力端子及び第2の入力端子を有し、前記第1の入力端子に前記第1の期間と前記第2の期間とを切り換える切換信号が入力され、前記第2の入力端子に前記切換信号の高電位レベルよりも低い基準電圧が入力されるコンパレーターを含み、
前記スイッチ回路は、前記コンパレーターから出力される信号に基づいて制御されることを特徴とする光学式検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記照射部は、
前記第1の期間では、
前記照射部の一端から他端に向かうにつれて前記照射光の強度が低くなる前記第1の照射光強度分布を形成し、
前記第2の期間では、
前記照射部の一端から他端に向かうにつれて前記照射光の強度が高くなる前記第2の照射光強度分布を形成することを特徴とする光学式検出装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記第1の発光素子〜前記第nの発光素子は、前記照射部の一端と他端との間の曲線に沿って配置され、
前記照射部は、前記第1の発光素子〜前記第nの発光素子から出射される第1の光源光〜第nの光源光に基づいて、前記照射光を出射することを特徴とする光学式検出装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記第1の発光素子〜前記第nの発光素子は、
前記第1の期間では、
前記曲線の一端から他端に向かうにつれて各発光素子の光量が低くなる第1期間用第1の光源光〜第1期間用第nの光源光を出射し、
前記第2の期間では、
前記曲線の一端から他端に向かうにつれて各発光素子の光量が高くなる第2期間用第1の光源光〜第2期間用第nの光源光を出射し、
前記照射部は、
前記第1の期間では、
前記第1期間用第1の光源光〜前記第1期間用第nの光源光に基づいて、前記照射部の一端から他端に向かうにつれて前記照射光の強度が低くなる前記第1の照射光強度分布を形成し、
前記第2の期間では、
前記第2期間用第1の光源光〜前記第2期間用第nの光源光に基づいて、前記照射部の一端から他端に向かうにつれて前記照射光の強度が高くなる前記第2の照射光強度分布を形成することを特徴とする光学式検出装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の光学式検出装置と、
画像を表示する表示装置とを含むことを特徴とする表示システム。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の光学式検出装置と、
前記光学式検出装置からの検出情報に基づいて処理を行う情報処理装置と、
前記情報処理装置からの画像データに基づいて画像を表示する表示装置とを含むことを特徴とする情報処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−221080(P2012−221080A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84237(P2011−84237)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】