説明

光学式穀物選別機

【課題】モニター画面に表示されるCCDラインセンサーによる穀粒の画像に基づき不良粒を判定するための感度調整を行う際に、不良粒を判別しやすくする。
【解決手段】CCDラインセンサーで得た穀粒画像を二値化処理して穀粒の外形画像、穀粒における不良部分の画像を得、これを操作パネル30のモニター画面33上に表示する。外形画像と不良部分画像とは重ねて表示し、同時に、制御装置12の強調表示回路で生成させた囲み枠を、不良部分を有する外形画像に重ねて表示することで不良粒を強調表示する。不良粒は、薄焼粒、着色粒であり、着色粒には、一部着色粒、石などの異物を含むものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は穀物の光学式穀物選別機に関し、より詳しくは、CCDセンサーによって撮像されている穀物粒の画像を操作パネル上のモニターに表示させ、この表示を見て不良粒(異物粒を含む)の判定感度を調整できるようにした光学式の色彩選別機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光学式穀物選別機においてバックグランド又は感度調整を行う場合は、センサー信号をオシロスコープやタッチパネル上にモニター表示させ、その信号を見て調整していた。具体的には、薄焼粒、着色粒(一部着色粒を含む)の不良粒に対する薄焼感度、着色感度の感度調整は、バックグランドの信号レベルを100%として、どの程度信号レベルが落ち込んだものを不良粒として判断するかを、実際の選別状態を見ながら調整していた。図1にその概念図を示す。同図は、バックグランド信号を100%とした場合に、その75%の落ち込みを超える感度のものを薄焼き不良粒、落ち込みが50%を超える感度ものを着色不良粒として判定する場合を示すものである。
【0003】
特許文献1の粒状物色彩選別機は、CCDセンサー等の撮像手段によって撮像された粒状物の画像(粒状物の外形に関する外形二値データ、薄焼粒状物に関する第1不良画素二値データ、着色粒状物に関する第2不良二値データ)を操作パネルのモニターに表示して、不良粒を識別し、その識別結果をもとにして実際の選別結果が適正に行われているかを判断できるようにしたものである。
【0004】
これにより、従来、不良粒を判定するための感度調整(しきい値の調整)をオシロスコープなどに表示させたセンサー信号を見て調整していた手探り状態が改善され、操作者は、色彩選別機によって実際に把握されている粒状物の外形や不良部分を把握した上で選別結果を判断できるようになり、操作者による感度調整の能率と精度が向上した。
【0005】
【特許文献1】特開2005−74412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、色彩選別機によって把握されている粒状物の実際の画像をモニター上で見て感度調整を行える点ですぐれているが、画像表示技術上の問題から、不良部分の表示が判別しにくいとの難点がある。つまり、同一のモニター画面に多数の粒形(外形二値データによる)が表示されると共に、それに重ねて不良部分が表示されるので、薄焼による不良部分(第1不良画素二値データによる)や着色による不良部分(第2不良画素二値データによる)を判別し難く、見落とすことがある。特に、着色による不良部分は小さくても必ず選別する必要があり、見落としは作業成果に影響が大きい。
また、特許文献1の技術は、不良部分を有する粒状物に対して噴風ノズルが正しく対応しているのかなど、不良部分を有する粒状物と噴風ノズルとの対応関係が不明である。
【0007】
そこで、本発明の課題は、光学式穀物選別機に関し、モニター上で穀粒の不良部分を明確に判別できるようにすること、薄い着色部分を一定面積以上有する不良粒(薄焼粒)と薄焼粒よりも濃い着色部分を有する不良粒(着色粒)とを個別に、かつ、明確に判別できるようにすること、及び多数準備されている噴風ノズルから不良粒を除去すべき噴風ノズルが、装置において正しく選択されていることを明示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の光学式穀物選別機は、すだれ状に落下させる粒状物を撮像し、その画像信号に基づき不良粒を噴風で除去する光学式穀物選別機であって、モニター上に装置が認識している穀粒の輪郭形状と不良部分とを合成表示し、かつ、不良部分を操作者が一目で認識できるよう強調表示する構成とする。
【0009】
不良部分は、薄くて大きい着色の不良部分を有する不良粒(薄焼粒)と濃い着色の不良部分を有する不良粒(一部着色粒、石などの異物を含む)とし、これらの存在を異なる色彩や異なる標識などの、異なる強調表示で表示することがある。囲み枠などの標識は強調手段として好ましい。
さらに、装置が不良粒に対応する噴風ノズルを正しく認識していることを示すために対応して作動する噴風ノズルの位置をバーなどの表示によってモニター上に示すことも好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光学式穀物選別機によれば、設定した判定感度(しきい値)によって不良と判定された不良粒をモニター上で簡単確実に確認することができるので、しきい値を設定するためのシミュレーションを行いやすく、不良粒を判定するための感度調整をより正確に、かつ、能率よく行うことができる。
また、不良粒を除去する噴風ノズルが不良粒に対応して表示されるので、不良粒の判定と噴風ノズルの作動との関係が明示され、操作者は装置が正確に作動していることを確認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図2は実施形態としての光学式穀物選別機の一例であり、光学式穀物選別機1としてその主要部と内部構造を簡略化して示している。光学式穀物選別機1は、その上部位置に、タンク2と振動フィーダ3とからなる穀粒供給部4を有する。穀粒供給部4から供給された穀粒(この実施例においては、精米粒)は、穀粒が横方向に間隔を置いて並んで流下すること(すだれ状に流下)が可能な所定幅を有した傾斜状シュート5へ連続状に自然流下した後、その下端部からすだれ状の落下軌跡に沿って空中に放出される。なお、傾斜状シュート5はシュート面が図3(イ)のように平らになっている。ただし、同(ロ)のように穀粒の幅wに相応した幅の流下溝6を多数設けておくと穀粒の落下姿勢が整いやすく、好ましい。
【0012】
すだれ状の落下軌跡の周囲には、この実施例において、この落下軌跡を中心にして、ほぼ対称的に、少なくとも一対の光学検出装置7a,7bが配設される。光学検出装置7aは、カメラ中のCCDラインセンサー8a,9a、ランプ10a、背景板11aなどから構成される。もう一方の光学検出装置7bは、カメラ中のCCDラインセンサー8b,9b、ランプ10b、背景板11bなどで構成される。光学検出装置7a,7bのCCDラインセンサー8a,9a,8b,9bは、落下軌跡の検出位置Oに到達した穀粒の像を撮像し、その画像信号を後に詳述する制御装置12に送る。
【0013】
制御装置12は、CCDラインセンサーからの画像信号に基づき、後に構成と共に詳述するが、各粒状物の外形の特定、不良粒の判別を行う。制御装置12が不良粒を判定すると、排除信号が、噴風ノズル13を含む排除装置14の開閉バルブに向けて制御装置12から送られる。排除装置14は、制御装置12から送られてくる排除信号に基づき、噴風ノズル13からの噴風によりすだれ状の落下軌跡から不良粒のみを噴き飛ばし、そして不良粒排出口15から機外に排出する。排除装置14が作動することなくすだれ状の落下軌跡をそのまま通過してきた正常な粒状物は、良品排出口16から回収される。
【0014】
制御装置12(図4)は、中央処理装置(CPU)17を中心として構成され、CPU17のバスに原画像メモリ18、外形コンパレーター19、第1コンパレーター20、第2コンパレーター21、画像処理回路22、第1強調表示回路23、作動ノズル表示回路24、第2強調表示回路25、解析画像メモリ26、入出力回路27及びRAM28とROM29を備える。入出力回路27には操作パネル30と選別手段31が外部装置として接続されている。操作パネル30はしきい値設定ボタン32とモニター画面33を備える。選別手段31は前記の噴風ノズル13とこれを駆動するためのバルブ開閉回路を備える。
【0015】
CPU17は、ROM29に格納した所定のプログラムにしたがってこれらの構成部品(回路)を有機的に結合し、コントロールする。その概要を図5に示している。
RAM28は、CPU17がデータを処理する上で必要となる一時メモリである。
原画像メモリ18はRAMであり、モニター画面33を形成するために必要なメモリ容量を有し、CCDラインセンサー8a,8b,9a,9bからの画像信号を制御装置12に定めた所定クロックごとに取り入れ、その画像データは先入れ・先出し方式で常時更新されている。
【0016】
外形コンパレーター19は、原画像メモリ18から読み出した画像データを穀粒の外形を判別するための外形しきい値と比較することにより、穀粒の外形画像を解析し、穀粒の輪郭形状を表わす外形二値データを出力する。このデータに基づいて、画像処理回路22において外形画像が生成される。外形画像は解析画像メモリ26の外形領域に各穀粒のモニター画面上での位置を指示するアドレスと共に記憶される。
【0017】
第1コンパレーター20は、原画像メモリ18から読み出した画像データを不良部分として現れる第1の濃さに対応してあらかじめ定めた第1しきい値と比較することにより、穀粒の不良部分を解析し、第1不良画素二値データを出力する。このデータに基づいて、画像処理回路22において第1の不良部分画像が生成される。第1の不良部分画像は解析画像メモリ26の薄焼け粒領域に、モニター画面上での位置を指示するアドレスと共に記憶される。
【0018】
第2コンパレーター21は、原画像メモリ18から読み出した画像データを不良部分として現れる第2の濃さに対応してあらかじめ定めた第2しきい値と比較することにより、穀粒の不良部分を解析し、第2不良画素二値データとして出力する。このデータに基づき、画像処理回路22において第2の不良部分画像が生成される。第2の不良部分画像は、解析画像メモリ26の着色粒領域に、モニター画面上での位置を指示するアドレスと共に記憶される。
【0019】
第1コンパレーター20が判別する第1の濃さは、この実施例において薄焼けした穀粒の濃さ(暗さ)であり、第2コンパレーター21が判別する着色粒の濃さよりも薄く設定してある(例えば、背景板11a,11bの明るさを100のレベルとして第1は75のレベル、第2は50のレベルを識別する)。ただし、第1の濃さに対してはその部分が穀粒の外形画像に対して設定した面積以上を有することを画像処理回路22においてあわせて判定する。第2の濃さに対してはその存在だけを判定する程度にする。
【0020】
第1強調表示回路23は、モニター画面33において第1の不良部分画像の位置を操作者に明示するための手段であり、この実施例では、第1の不良部分に重ねて表示する枠囲み(四角マーク)である。強調表示の方法としては、他に、第1の不良部分を明るい色など目立つ色に着色するとか矢印などで指示する、あるいは不良部分を点滅させるなどがある。
この回路はCPU17からの指示があったとき枠データを生成し、これをモニター上に、第1コンパレーター20から獲得したアドレスに基づいて表示する。実施例において、枠囲みは、穀粒の外形に接する枠形としている。
【0021】
第2強調表示回路25も同様であって、第2の不良部分に強調表示を行う。第1の強調表示と第2の強調表示は同じでなくてもよい。例えば、第1の場合は四角枠、第2の場合は三角枠にする、色の異なる枠などとすることができる。
【0022】
作動ノズル表示回路24は、不良部分を有する穀粒を除去するための噴風ノズル13が光学式穀物選別機1に正しく認識されていることを操作者へ明確に伝達するための手段である。表示の方法として、たとえば、不良部分を有する穀粒の外形上に重ねて表示する赤色などの目立つバーとする。作動ノズル表示回路24は、CPU17からの指令があったとき、バーデータを生成し、これをモニター上に、第1コンパレーター20及び第2コンパレーター21から獲得したアドレスに基づいて表示する。すなわち、作動ノズルを示す赤色のバーは不良粒の像に重ねて表示される。
【0023】
操作パネル30の判定状況ボタン34(図10)を押すと、入出力回路27を通じてモニター画面33への画像出力コマンドがCPU17に伝達される。すると、CPU17は、ROM29に格納したプログラムにより、解析画像メモリ26の画像データと第1、第2の強調表示回路23,25のデータ及び作動ノズル表示回路24のデータを画像処理回路22に送って合成画像を作り、入出力回路27を通じてモニター画面33に画像を表示する。モニター画面33には穀粒の外形画像とこれに重ねて第1の不良部分、第2の不良部分の画像が表示されると共に、第1の不良部分と第2の不良部分には、囲み枠が重ねて表示される。さらに、第1、第2の不良部分を有する穀粒の外形画像に、これらの穀粒が属する流下溝6と対応した噴風ノズルが赤い横方向のバーとして穀粒の外形画像を横断する格好で表示される。
【0024】
操作パネル30のしきい値設定ボタン32は、入出力回路27を通じてRAM28に設定している第1、第2のコンパレーター20,21のしきい値に関するパラメーター値を増減することができる。
選別手段31のバルブ開閉回路には、穀粒がCCDラインセンサーの位置を通過してから、噴風ノズル13の位置までの距離と落下速度から定まる時間だけ遅延させて、CPU17から、バルブ開信号が不良粒と対応した噴風ノズル13にだけ出される。このタイミングや噴風ノズル13の選択は、ROM29に格納したプログラム及び設定値による。
【0025】
図6、7は、穀粒の外形及び不良部分がどのように検出されるかを説明するものである。図6に対して図7は模式化して示している。図7(a)は、穀粒が例えばCCDラインセンサー8aの走査線を横切って通過したときの信号レベルを表わしており、制御装置12内の外形コンパレーター19、第1コンパレーター20及び第2コンパレーター21によって二値データ化される。
先ず、穀粒の外形は、最も低いレベルに設定された外形しきい値を基準として検知され、その検出信号は、図7(b)の穀粒の輪郭形状を表わす外形二値データとして後続の解析画像メモリ26に送られる。
【0026】
面積の異なる比較的薄い第1の濃さの着色部分(不良部分)F1,F2を2箇所有する粒状物は、図7(a)の信号レベルに、第1の濃さに対応した第1しきい値を超える信号がF1,F2部分に対応して2箇所現れることになる。着色部分の面積は画素数に対応するものであり、進行方向最初の薄い着色部分F1の画素数は4、2番目の着色部分F2の画素数は3であることが分かる。この実施例では、第1コンパレーター20から出力される信号は、薄い着色部分の画素数が4以上のもののみが不良粒を表わすものとして設定されている。この設定により、図7(c)の第1しきい値を超える不良部分を表わす第1不良画素二値データには、着色部分F1に相当する部分のみが現れ、後続の解析画像メモリ26に送られる。薄い着色はあるものの、その面積が比較的小さい、例えばF2部分のみを有するような粒状物は良品として本願発明では扱われるため、選別作用の歩留まりを上げることができる。
【0027】
次に、第1の濃さより濃い第2の濃さに対応した着色部分F3(不良部分)を有した粒状物は、図7(a)の信号レベルにおいて、第2の濃さに対応した第2しきい値を超える信号がF3部分に対応して現れる。濃い着色部分であるので、この場合、着色部分の面積の大小に関係なく不良粒とし、その検出信号は、図7(d)の第2しきい値を超える不良部分を表わす第2不良画素二値データとして解析画像メモリ26に送られる。
【0028】
上記説明では、一つの穀粒に、面積の異なる薄い着色部分が2箇所と濃い着色部分が1箇所あるものとして説明したが、実際の穀粒での着色箇所の数は様々である。もし、着色部分が、比較的面積が狭く、薄いものである上記説明のF2に相当する部分だけである場合には、製品品質にあまり影響を与えないものとして、正常な穀粒であると判定される。
【0029】
図8は、操作者が定常運転に先立って行う感度調整作業の流れを説明したものであり、光学式穀物選別機1を稼動して、まず原料(選別前の穀粒)をタンク2に供給する(ステップS1)。傾斜状シュート5をすだれ状に広がって落下する穀粒(図9)は落下軌跡の検出位置Oの箇所でCCDラインセンサー8a,9a、及び同8b、9bによって撮像され、得られた画像が前記のように制御装置12で処理されて、操作パネル30のモニター画面33に表示される(図10)。図9において、G0は正常粒、G1は第1の不良部分を有する穀粒(不良粒)、G2は第2の不良部分を有する穀粒(不良粒)及びG3は石などの異物をあらわしている。
【0030】
画面(図10)には、穀粒の外形画像F0、第1の不良部分画像F1あるいはF2、第2の不良部分画像F3及び第1の強調表示(囲い枠と着色)D1、第2の強調表示D2(囲い枠と着色)及び作動ノズル表示バーD3(実際は赤色)が表示される。D4はノズル口対応線で固定表示である。ノズル口対応線D4の線間が噴風ノズル13の口幅であり、また、傾斜状シュート5における流下溝6の幅でもある。そこで、不良粒がノズル口対応線D4を横断する位置を落下し、前記対応線D4の両側の噴風ノズル13,13が作動するときは、そのことを示すために、モニター画面33上で、そのノズル口対応線D4を横断させて両側のノズル口対応線D4、D4間に渡る長い作動ノズル表示バーD3を表示する。なお、不良粒がノズル口対応線D4を越える量がわずか(例えば、モニター画面33上で2〜3ピクセル程度)の場合は、主たる噴風ノズル13側のノズル口対応線D4間だけに作動ノズル表示バーD3を表示する。両側の噴風ノズルを作動させる場合の程度やバーの表示をノズル口対応線D4間に収めるか否かは、設定ないし選択できるようにしておくと良い。
第1の強調表示D1と第2の強調表示D2の枠は、大きさや枠の色を変えたり、形態を変えてより区別しやすくすることもできる。
【0031】
このようにして、操作者は、光学式穀物選別機における不良粒(異物を含む)の判定状況を明確に把握することができる。そして、モニター画面33から把握できる判定状況と実際の選別結果とを対比して、現在のしきい値が適切であるかを判断し(ステップS3)、調整が必要である場合には、操作パネル30に備わったしきい値設定ボタン32を操作して調整し(ステップS4)、ステップS1に戻って同じ作業を繰り返して調整を継続し、調整不要となるまで繰り返す。
【0032】
しきい値を調整するとき(ステップS4)、しきい値の変更で増減する不良粒の程度をモニター画面上でシミュレーションできるので目的とするしきい値へ到達しやすい。
なお、表示した画像データの過去数回分をその時の各しきい値と共に解析画像メモリに保存し、操作パネル30に過去分を呼び出す手段を設ければ、前記のシミュレーション効果はより高くなる。その時の表示は、今回分と過去分とを画面上で分割して同時に表示するなど便利な構成とすることができる。
調整が完了すれば、以後、定常運転を行う。
【0033】
また、同時に不良粒に重ねて作動ノズル表示バーD3が表示されるので、操作者は不良粒を除去する噴風ノズル13が光学式穀物選別機1において認識されていることを確認できる。また、この確認に基づいて実際に作動している噴風ノズル13の位置を調査することで、噴風ノズル側のトラブルも発見しやすい。
【0034】
この実施例において、しきい値の調整は外形画像(外形)、第1の不良部分(薄い青色)、第2の不良部分(濃い青色)に分けて個別に調整できるようにされている。
調整されたしきい値はそれぞれに入出力回路27を介して制御装置12に伝達され、RAM28に設定されているしきい値に関するパラメーターが変更され、主としてモニター画面33上の不良部分に関する画像の表示数が変化する。
【0035】
以上、穀粒を精白米とする実施例について説明した。穀粒は、しきい値など必要事項を調整することで、麦や大豆などその他の穀粒に適用可能である。
この実施例では、光学検出装置7a,7bを穀粒落下軌跡の両側に配置して、穀粒の表裏からの反射光により穀粒の原画像を得ているが、光学検出装置は、穀粒落下軌跡の片側だけに配置しても良い。
【0036】
ガラスや石などの異物は光の反射程度から第2の不良部分として判別されるが、可視光による判定では、白いプラスチック片などが異物として判別されないことがある。これを解決するには、可視光に加え近赤外線を利用する。近赤外線の反射は穀粒とプラスチックとで大きく異なるので、穀粒とプラスチックを区別することができる。前記実施例の構成において、第1、第2のコンパレーター20,21に加え、さらに近赤外線反射を対比する第3のコンパレーターとこれに関連する構成を付加することになる。
【0037】
不良粒の選別精度は、原料(選別前の穀粒)の流量によっても影響を受けることがあるので、操作パネル30またはモニター画面33に、原料の現在流量値を表示すると便利である。傾斜状シュート5を流下している原料の現在量を測定するには、モニター画面33の全面積とそこに占める外形画像の割合から割り出す手段がある。単純に流下溝6の一つ一つに配置した光電センサーの所定時間内のヒット数(カウント数)の総数から割り出すこともできる。
【0038】
なお、モニター画面33は、静止画像、動画像いずれの表示でもよい。動画像の場合は第1、第2の強調表示もアドレスの進行と共に不良部分と共に移動する。すなわち、原画像メモリ18にはCCDラインセンサーから画像データが順次取り込まれると共にCPU17の制御下で、原画像メモリ18から1モニター画面33に相当する量(1フレーム)ずつが、先入れ・先だし方式でRAMのフレーム保存領域に取り込まれ、これに基づき外形、第1、第2のコンパレーター19,20,21を経て外形画像と二種の不良部分画像が生成され、これらは解析画像メモリ26に蓄積される。そして、モニター画面33に表示される。一方、第1、第2のコンパレーターからは不良部分のアドレスがCPU17に伝達され、第1、第2の強調表示回路23,25で生成された囲み枠などの表示と赤色バーがモニター画面33に表示される。このフレーム表示を順次、短時間に繰り返すことで動画とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】着色粒選別の概念を説明するための図。
【図2】光学式穀物選別機の概要を説明するための側面図。
【図3】(イ),(ロ)は、傾斜状シュートの横断面図。
【図4】制御装置の要点を示すブロック図。
【図5】制御装置内部での処理の概要を示す図。
【図6】判定の手法を説明するための図。
【図7】判定の手法を説明するための図。
【図8】操作者の作業の手順を示した図。
【図9】穀粒の流下状態を示す正面図。
【図10】モニター画面の一例を示す図。
【符号の説明】
【0040】
1 光学式穀物選別機
2 タンク
3 振動フィーダ
4 穀粒供給部
5 傾斜状シュート
6 流下溝
7a,7b 光学検出装置
8a,8b CCDラインセンサー
9a,9b CCDラインセンサー
10a,10b ランプ
11a,11b 背景板
12 制御装置
13 噴風ノズル
14 排除装置
15 不良粒排出口
16 良品排出口
17 CPU
18 原画像メモリ
19 外形コンパレーター
20 第1コンパレーター
21 第2コンパレーター
22 画像処理回路
23 第1強調表示回路
24 作動ノズル表示回路
25 第2強調表示回路
26 解析画像メモリ
27 入出力回路
28 RAM
29 ROM
30 操作パネル
31 選別手段
32 しきい値設定ボタン
33 モニター画面
34 判定状況ボタン
G0 正常粒
G1 第1の不良部分を有する穀粒(不良粒)
G2 第2の不良部分を有する穀粒(不良粒)
G3 石などの異物
F0 外形画像
F1,F2 第1の不良部分画像
F3 第2の不良部分画像
D1 第1の強調表示
D2 第2の強調表示
D3 作動ノズル表示バー
D4 ノズル口対応線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物をすだれ状に連続して移送する移送手段と、
すだれ状となる粒状物落下軌跡の各々に対応して配置された噴風ノズルを有する不良粒除去手段と、粒状物を検出位置において撮像する撮像手段と、
撮像手段の画像信号と外形しきい値との比較に基づき粒状物の輪郭形状を外形二値データとして出力する外形処理手段と、
撮像手段の画像信号を設定した濃さに対応したしきい値と比較して、このしきい値を超える部分が設定した面積以上となる不良部分を不良画素二値データとして出力する不良部分判定手段と、
外形処理手段からの外形二値データに、不良判定手段からの不良画素二値データを合成してモニターに表示する粒状物表示手段と、
粒状物の輪郭形状中に不良部分を有する粒状物を除去すべきものとして不良粒除去手段に伝達する不良粒判定手段を備え、
さらに、不良部分判定手段からの不良画素二値データをモニター上で強調表示する不良部分強調表示手段と、
しきい値調整手段と、
を具備することを特徴とする光学式穀物選別機。
【請求項2】
外形二値データ及び不良画素二値データを記憶するための画像メモリを更に具備することを特徴とする請求項1に記載の光学式穀物選別機。
【請求項3】
不良部分判定手段は、第1の濃さに対応した第1しきい値を超える部分が設定面積以上となる第1の不良部分を第1不良画素二値データとして出力する第1不良部分判定手段と、第1の濃さよりも更に濃い第2の濃さに対応した第2しきい値を超える第2の不良部分を第2不良画素二値データとして出力する第2不良部分判定手段とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の光学式穀物選別機。
【請求項4】
第1不良画素二値データが薄くて大きい着色部(薄焼粒)を、第2不良画素二値データが濃い着色部(一部着色を含む着色粒)をそれぞれ表わすことを特徴とする請求項2に記載の光学式穀物選別機。
【請求項5】
不良部分強調手段は、第1の不良部分と第2の不良部分とを異なる強調表示で表示することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光学式穀物選別機。
【請求項6】
強調表示の一つして囲み枠を利用することを特徴とした請求項5に記載の光学式穀物選別機。
【請求項7】
不良部分を有する粒状物に対応して作動する噴風ノズルの位置を示す作動ノズル表示手段を更に備えることを特徴とした請求項1〜6のいずれか一つに記載の光学式穀物選別機。
【請求項8】
作動ノズルの表示は、噴風ノズルの幅に相当した長さのバーであって不良粒に重ねて表示されることを特徴とした請求項7に記載の光学式穀物選別機。
【請求項9】
判定された不良部分が2つの噴風ノズルにかかるとき、かかる割合の大きい方の噴風ノズルを作動させるか、あるいは、隣接した2つの噴風ノズルの双方を作動させるかの選択手段を備えていることを特徴とした請求項1〜8のいずれか一つに記載の光学式穀物選別機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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