説明

光学指紋入力装置

【課題】 本発明は、外部光源と指紋接触面に残った指紋残像による認識誤りが防止できる光学指紋入力装置を提供するためのものである。
【解決手段】 本発明は、光学指紋入力装置に関するものであって、プリズムの一側面に外部の光源から入射される光により反射されてレンズに入射できる識別表示をすることで、プリズムの指紋接触面に残っている水や汗または脂などによる指紋残像による指紋の誤り認識を防止して保安性を向上させることができるようにした。また、前記プリズムの一側面に広告や広報用のロゴを利用して識別表示をする場合、視覚的な広告や広報効果が付随して得られるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学指紋入力装置に関し、より詳しくは、指紋認識後に指紋接触面に残した指紋残像による自然的な誤り認識と、指紋残像を人為的に利用することにより発生する誤り認識を防止して、保安性を高めることができる光学指紋入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光学指紋入力装置は、手に汗や脂が付いた状態で指紋を捺すことになれば指紋接触面に残像が残すことになり、この残像は、次の指紋を捺す時にノイズとして作用することになる。
【0003】
また、この残像は、外部光源または内部光源により指を接触しなくても接触したことと認識されることもある。これを防止するための方案として、本出願人は、2001年2月2日付で大韓民国特許出願第2001−0005036号の光学指紋入力装置を出願して、2004年3月5日付で大韓民国特許第453255号にて登録受けたことがある。
【0004】
前記本出願人の特許は、図1のように、光源1、プリズム2、レンズ3及びイメージセンサー4を含んで構成され、プリズム2の指紋部位が接触する面(2a)からこれに垂直方向に位置する稜2−1に繋がる垂線(PL)とプリズム2からレンズ3及びイメージセンサー4までの光の入射経路(以下、“光軸”という)(OA)との間に設定角度(α)だけ傾きを与えた。
【0005】
この場合、指紋接触面に汗(水)や脂などが付いている場合も実際の指紋イメージのみを受け入れるので、残像と実際指紋との重なりによる誤り認識を防止することができる。
【0006】
これに対する作用原理を簡略に説明すれば、次の通りである。
【0007】
光が入射される媒質の屈折率が透過する媒質の屈折率より大きい場合、図2において、光経路(1)に沿って屈折して進む。しかしながら、入射角(θ)が任意の角の以後は媒質の外に屈折して透過する光がなくなる。
【0008】
この現象を内部全反射されたとし、この時の角度を臨界角とし、境界面をなす両媒質の屈折率により決まる。
【0009】
臨界角は屈折角であるθ=90゜の時の入射角θiをいい、下記の数1式に示すようなスネルの法則(Snell's law)による公式を適用することができる。
【0010】
【数1】

【0011】
上記の数1式において、nは入射される媒質の屈折率、nは透過する媒質の屈折率、θiは入射角、そしてθは透過角(または、屈折角という)である。即ち、屈折率の異なる媒質内で光の進行はスネルの法則によりその最大角度が決まる。
【0012】
図3の(a)のように、指紋接触媒質5に汗や脂(M)が付いた指(F)を接触する際、指紋の溝(V)部分では光が反射がなくて、隆線(R)では反射されて光経路(3)に沿って指紋情報が進行する。しかしながら、指(F)の汗または脂(M)で反射された光は、前記したスネルの法則により光経路(2)に進行し、この際、光経路(2)より大きい角度には進行できない。したがって、光経路(3)に沿う指紋情報のみを受け入れれば、汗または脂による残像が除去できるものである。
【0013】
即ち、図3の(b)に示すように、プリズム2に傾きがなければ、指紋の隆線(R)から出る指紋情報(3)と汗または脂から出る残像(2)が重なってレンズ3及びイメージセンサー4に入射することになる。
【0014】
しかしながら、図3の(c)のように、プリズム2の指紋部位が接触する面2aから、これに垂直方向に位置する稜(2−1)に繋がる垂線(PL)とプリズム2からレンズ3及びイメージセンサー4までの光軸(OA)との間に設定角度(α)だけ傾きを与えれば、隆線(R)による指紋情報(3)はレンズ3に入射するが、汗または脂による残像(2)はレンズ3に入ることができない。
【0015】
したがって、指紋接触面に汗や脂などの残像が残っていても、前記のような理由により実際の指紋情報のみレンズ3を通じてイメージセンサー4に入射することになるので、残像指紋と実際指紋とが重なることにより生じる誤り認識を防止することができる。
【0016】
ところが、前記した本出願人の特許は、指紋入力装置の内部光源のみ利用される場合、即ち、プリズムの指紋接触面を通じて外部の光が入射されない状態では有効であるが、プリズムの指紋接触面に外部光源(例えば、懐中電灯等)の光が入射される場合は、プリズムの指紋接触面に残っている指の指紋残像(汗や水、脂気などにより生成される)に対するイメージがプリズムとレンズを介してイメージセンサーに入射されて指紋認識に誤りを発生させる問題点があった。
【0017】
例えば、プリズムの指紋接触面に正常な認証使用者の指の指紋残像が鮮明に残っている状態で、指紋入力装置が設けられている場所の照明灯から発生される光がプリズムの指紋接触面に適切な角度で入射される場合や、不法侵入を試みる人が人為的にプリズムの指紋接触面に懐中電灯のような外部光源を適切な角度で照らす場合に、指紋接触面に残っている定常の認証使用者の指の指紋残像がイメージセンサーに入射されながら定常使用者の指紋が接触したことと認識する誤りが発生することになる。
【特許文献1】大韓民国特許第453255号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、前記したような従来の問題点を解消するために案出したものであって、外部光源と指紋接触面に残った指紋残像による認識誤りが防止できる光学指紋入力装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記の目的を達成するための本発明の好ましい実施形態に係る光学指紋入力装置は、三角形のプリズムとレンズ及びイメージセンサーと、前記プリズムの3面中、指紋部位が接触する面に対して指紋の底面を照らすことができる方向に光を放射する光源と、前記プリズムの指紋部位が接触しない残りの2面中、前記レンズと反対側に位置する面の識別表示と、を含んでなることを特徴とする。
【0020】
そして、本発明は、前記識別表示が前記レンズと反対側に位置するプリズムの面に付着され、光が透過できる材質のフィルム上に記入されることを他の特徴とする。
【0021】
また、本発明は、前記光源の光と前記フィルムの識別表示の色相は相互間に補色関係を有するように設定されることを更に他の特徴とする。
【0022】
また、本発明は、前記イメージセンサーに入力されるイメージを分析して入力イメージに前記フィルムの識別表示イメージが含まれているか否かを判別し、判別結果、識別表示イメージが含まれた場合は、該当入力イメージを残像として識別してエラーコードを発生する演算制御部を更に含むことを更に他の特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
前述したように、本発明は、プリズムの一側面に外部の光源から入射される光により反射されてレンズに入射できる識別表示をすることで、プリズムの指紋接触面に残っている水や汗または脂などによる指紋残像による指紋の誤り認識を防止して、保安性を向上させることができる効果が得られる。
【0024】
また、前記プリズムの一側面に広告や広報用のロゴを利用して識別表示をする場合、時間的な広告や広報効果を得ることができる付随的な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0026】
図4及び図5は、本発明の好ましい実施形態に係る光学指紋入力装置を示す概略図であって、同図面から分かるように、本発明に係る光学指紋入力装置は、光源11、プリズム12、レンズ13、イメージセンサー14、フィルム20、信号処理部30及び制御演算部40を含んで構成される。
【0027】
前記光源11は、プリズム12の3面中、指紋部位が接触する面(以下、“指紋接触面”という)12aに対して垂直方向に位置する稜(12−1)に向かって光を放射するように配置される。
【0028】
ここで、光源11は、a)常に点灯しているように設定されたり、b)制御演算部40や別途の光源制御用制御装置により選択的に点灯されたり、c)プリズム12の指紋接触面12aに対する指の接触を感知する通常の接触感知手段(接触感知センサーや近接センサー等)により指の接触が感知される場合に点灯するように構成される等、通常の光学指紋入力装置に内蔵される光源のように点灯制御される。
【0029】
前記プリズム12は、光の入射、反射及び透過など、光学的に利用される3個の面を有する(光学的に利用されない側面は除外)三角形のプリズムであって、指紋接触面12aに接触する指(F)の指紋部位から反射されて入射する光を透過及び屈折させてレンズ13に伝達する。
【0030】
ここで、プリズム12は指紋接触面12aからこれに垂直方向に位置する稜(12−1)に繋がる垂線(PL)とプリズム12からレンズ13及びイメージセンサー14を連結する光軸(OA)との間に傾き角度(α)が、指紋接触面12aに接触する指(F)の指紋に付いた水や脂などの異質物に対するイメージ入力が防止できる実験値により求められる特定の角度で設定することが好ましい。
【0031】
これは、内部の光源11を使用する場合に、プリズム12の指紋接触面12aに汗(水)や脂などが付いている場合も実際の指紋イメージのみを受け入れて残像と実際指紋の重なりによる誤り認識が防止できるためである。
【0032】
前記レンズ13は、プリズム12から透過及び屈折して出る光を結像し、前記イメージセンサー14はレンズ13により結像された光によりイメージを受け入れて、それに相応する電気的な信号を発生する。
【0033】
前記フィルム20は、光が透過できる材質であって、プリズム12の指紋接触面12aを除外した残りの2面中、レンズ13と反対側に位置する面に付着され、ロゴ(Logo)のような特定の識別表示がされている。
【0034】
この際、フィルム20の識別表示色は、光源11の色相と補色関係を有するように設定することが好ましい。これは、指紋入力装置の外部から入射される光でない、内部の光源11から発生する光がフィルム20の識別表示部分で反射して、指紋イメージと重なった状態でイメージセンサー14に入射する可能性を最小化させることができるためである。
【0035】
参考に、フィルム20の識別表示色相と光源11の色相と補色関係を有する場合、光源11の光に対するフィルム20の識別表示部分の光吸収率は高まり、反射率は最小化する。
【0036】
また、前記したフィルム20の識別表示は、プリズム12の指紋接触面12aを通じて肉眼に見えるので、フィルム20の識別表示部分に広告用のロゴなどを記入する場合、広告や広報用にも利用されることができる。
【0037】
前記信号処理部30は、イメージセンサー14から出力される信号をイメージプロセシングに適した形態で信号処理して制御演算部40に入力する。
【0038】
前記制御演算部40は、イメージセンサー14から信号処理部30に入力される信号によりイメージプロセシングを遂行して、指紋映像を獲得及び認識して、その認識結果を出力し、かつ、入力された指紋映像を分析してフィルム20の識別表示イメージが含まれているか否かを判別して、判別結果、フィルム20の識別表示イメージが含まれている場合は、認識された指紋を残像として識別してエラーコードを発生して出力する。
【0039】
ここに、上記のように構成された本発明の作用効果を説明すれば、次の通りである。
【0040】
まず、プリズム12の指紋接触面12aに実際の指(F)は接触しなくて、水や汗または脂などによる指紋残像50が残っている場合、図4に示すように、光源11から放射される光は、多くはプリズム12の指紋接触面12aを通じて外部に透過し、一部の指紋残像50により反射される光はその量が微少であり、プリズム12の傾き角度(α)によりレンズ13に結像されない。
【0041】
しかしながら、外部の光源(例えば、指紋入力装置が設けられた場所の照明灯、懐中電灯等)からプリズム12の指紋接触面12aに光が適切な角度で入射される場合、指紋残像50のイメージがレンズ13を介してイメージセンサー14に入射されることになる。
【0042】
この際、外部の光源からプリズム12の指紋接触面12aに入射される光の一部がフィルム20の識別表示部分に反射されて光軸(OA)に沿って進行するので、フィルム20の識別表示イメージが指紋残像50のイメージと重なった状態でレンズ13を介してイメージセンサー14に入射される。
【0043】
ここに、制御演算部40は、イメージセンサー14から信号処理部30に入力される信号によりイメージプロセシングを遂行して指紋映像を獲得及び認識し、かつ、認識された指紋映像に識別表示イメージが含まれていることと分析されれば、指紋に対する認証を拒否してエラーコードを発生する。
【0044】
一方、プリズム12の指紋接触面12aに実際の指(F)が接触する場合は、この指(F)により外部の光源が遮断されるので、図5に示すように、純粋に内部の光源11から放射されて指(F)の指紋部位の中、隆線(R)部分で反射される光のみレンズ13を介してイメージセンサー14に入射されるので、制御演算部40を通じて実際の指(F)の指紋映像のみ得られることになる。
【0045】
前記において、本発明は、特定の実施形態を例示して説明するが、本発明が前記実施形態に限るのではない。当業者は本発明に対する多様な変形及び修正を容易にさせることができ、このような変形または修正が本発明の特徴を利用する限り、本発明の範囲に含まれるはずである。
【0046】
特に、前記した本発明の実施形態では、プリズムの一面に識別表示をするために、フィルムを付着する場合のみを例として説明したが、これは、好ましい一例に過ぎないのであり、プリズムの一面にプリンティングや塗布または陰刻/陽刻などの方法により直接識別表示を記入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来の光学指紋入力装置を示す概略図である。
【図2】媒質境界面での光の屈折現状を説明するための図である。
【図3】図1において、プリズムの傾き角度によって指の指紋部位に付いた水分(汗、水等)、または脂の映像が区分される原理を説明するための図である。
【図4】本発明の好ましい実施形態に係る光学指紋入力装置を示す概略図である。
【図5】本発明の好ましい実施形態に係る光学指紋入力装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0048】
11 光源
12 プリズム
12a 指紋接触面
13 レンズ
14 イメージセンサー
20 フィルム
30 信号処理部
40 制御演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三角形のプリズムとレンズ及びイメージセンサーを含んで構成された光学指紋入力装置であって、
前記プリズムの3面中、指紋部位が接触する面に対して指紋の底面を照らすことができる方向に光を放射する光源と、
前記プリズムの指紋部位が接触しない残りの2面中、前記レンズと反対側に位置する面の識別表示と、
を含んでなることを特徴とする光学指紋入力装置。
【請求項2】
前記識別表示は、前記レンズと反対側に位置するプリズムの面に付着され、光が透過できる材質のフィルム上に記入されることを特徴とする請求項1に記載の光学指紋入力装置。
【請求項3】
前記光源の光と前記フィルムの識別表示の色相は相互間に補色関係を有するように設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の光学指紋入力装置。
【請求項4】
前記イメージセンサーに入力されるイメージを分析して、入力イメージに前記フィルムの識別表示イメージが含まれているか否かを判別し、判別結果、識別表示イメージが含まれた場合は、該当入力イメージを残像として識別してエラーコードを発生する演算制御部を更に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の光学指紋入力装置。
【請求項5】
前記プリズムは、指紋部位が接触する面からこれに垂直方向に位置する稜に繋がる垂線(PL)と前記プリズムから前記レンズ及び前記イメージセンサーを連結する光軸(OA)との間の角度が、前記指紋部位が接触する面に接触する指紋に付いた水や脂などの異質物に対するイメージ入力が防止できる実験値により求められる特定の角度で設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の光学指紋入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−527070(P2007−527070A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501701(P2007−501701)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002328
【国際公開番号】WO2005/093639
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(506300888)セキュトロニクス インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】