説明

光学材料用組成物

【課題】 重合硬化前の段階で、重合硬化後における黄色発生の有無の予測、良否の判断を可能にする、ポリチオールを含む光学材料用組成物等を提供すること。
【解決手段】 鉄、クロムおよびニッケルの合計含有量5.0ppm以下のポリチオール化合物と、とポリイソ(チオ)シアナート化合物とからなる光学材料用組成物により本課題を解決した。すなわち、鉄、クロム、ニッケルの合計含有量についての上述の条件を満たすポリチオールを含む光学材料用組成物から製造される光学材料においては、黄色発生が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学材料用組成物等に関し、特に、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録基盤、フィルター等の光学材料、中でもプラスチックレンズに好適である光学材料用組成物等に関する。ポリチオール化合物とポリイソ(チオ)シアナート化合物からなる重合性組成物を重合することにより、良好な光学物性を有するポリウレタン系樹脂製光学材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の光学材料は、無機材料からなる光学材料に比べ軽量で割れ難く、染色が可能である。したがって、近年、例えば眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学材料に急速に普及してきている。
【0003】
光学材料用樹脂には、さらなる高性能化が要求されてきている。具体的には、高屈折率化、高アッベ数化、低比重化、高耐熱性化等が求められてきた。その様な要求に応じて、これまでに様々な光学材料用樹脂が開発され、使用されている。
【0004】
その中でも、ポリウレタン系樹脂に関する提案が盛んに行われてきている。ポリウレタン系樹脂の中でも、最も代表的な樹脂として、ポリチオール化合物とポリイソ(チオ)シアナート化合物とを反応させて得られる樹脂が挙げられる(特許文献1、2参照)。この樹脂は、無色透明で、衝撃性、染色性、加工性等の特性に優れている。中でも樹脂の透明性は、レンズとして必要不可欠な性質である。
【0005】
しかしながら、光学材料用樹脂を製造する際に、重合して得られた樹脂や光学材料が黄色に変色する場合があった。光光学材料用途であるため、硬化後に変色するとすべて不良となり膨大な損失が生じることになる。したがって、硬化前の段階において、硬化後の黄色の変色発生の有無を予測し、良否の判断を可能にする手法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−252207号公報
【特許文献2】特開平9−110956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、重合硬化前の段階で硬化後の黄色の変色発生の有無を予測、判別し、良否の判断が可能なポリチオールを含む光学材料用組成物等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、このような状況に鑑み鋭意研究を重ねた結果、鉄、クロム、ニッケルの合計含有量が5.0ppm以下であるポリチオールとポリイソ(チオ)シアナート化合物とからなる光学材料用組成物により本課題を解決し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
<1> 鉄、クロム、ニッケルの合計含有量が5.0ppm以下であるポリチオール化合物と、ポリイソ(チオ)シアナート化合物とからなる光学材料用組成物。
<2> ポリチオール化合物が、1,2− ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、および1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である上記<1>に記載の光学材料用組成物。
<3> ポリイソ(チオ)シアナート化合物が、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼンおよびα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアナートからなる群より選ばれた少なくとも1 種の化合物である上記<1>に記載の光学材料用組成物。
<4> 上記<1>記載の光学材料用組成物を重合することにより得られた光学材料。
<5> 光学材料用組成物の重合後にアニール処理が施されている、上記<4>に記載の光学材料。
<6> 鉄、クロムおよびニッケルの合計含有量が5.0ppm以下であるポリチオール化合物と、とポリイソ(チオ)シアナート化合物とを混合する工程を含むことを特徴とする光学材料用組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、従来技術では困難であった、重合硬化前の段階で硬化後の黄色の変色発生の有無を予測、判別し、良否の判断を可能にする、ポリチオール化合物を含む光学材料用組成物等を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に用いるポリチオール化合物は、特に制限されず、1分子中に2個以上のチオール基を有する化合物であれば良い。
【0012】
ポリチオール化合物の具体例としては、メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1, 1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2 , 2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3− ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス( メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート 、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラキス(メルカプトメチル)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;
【0013】
1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン− 2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン等の芳香族ポリチオール化合物;
【0014】
1,2−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン等、及びこれらの核アルキル化物等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する芳香族ポリチオール化合物;
【0015】
ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−ビス(3−メルカプトプロピル)エタン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル) チオ]−3−メルカプトプロパン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11 − ウンデカンジチオール、テトラキス( メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、ビス(1,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)ジスルフィド等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する脂肪族ポリチオール化合物、及びこれらのチオグリコール酸及びメルカプトプロピオン酸のエステル;
【0016】
ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート) 、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート 、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−チオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル) 、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−ジチオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル) 、ジチオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル) 等のその他のメルカプト基以外に硫黄原子とエステル結合を含有する脂肪族ポリチオール化合物;
【0017】
3,4−チオフェンジチオール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する複素環化合物;
【0018】
2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グリセリンジ(メルカプトアセテート)、1−ヒドロキシ−4−メルカプトシクロヘキサン、2,4−ジメルカプトフェノール、2−メルカプトハイドロキノン、4−メルカプトフェノール、3,4−ジメルカプト−2−プロパノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,2−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチル−トリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、1−ヒドロキシエチルチオ−3−メルカプトエチルチオベンゼン等のメルカプト基以外にヒドロキシ基を含有する化合物;
【0019】
1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアシクロヘキサン、1,1,5,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−3−チアペンタン、1,1,6,6−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−3,4−ジチアヘキサン、2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタンチオール、2−(4,5−ジメルカプト−2−チアペンチル)−1,3−ジチアシクロペンタン、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−ジチアシクロペンタン、2,5−ビス(4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアブチル)−1,4−ジチアン、2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−プロパンジチオール、3−メルカプトメチルチオ−1,7−ジメルカプト−2,6−ジチアヘプタン、3,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、3−メルカプトメチルチオ−1,6−ジメルカプト−2,5−ジチアヘキサン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン、1,1,9,9−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−5−(3,3−ビス(メルカプトメチルチオ)−1−チアプロピル)3,7−ジチアノナン、トリス(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)メタン、トリス(4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアブチル)メタン、テトラキス(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)メタン、テトラキス(4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアブチル)メタン、3,5,9,11−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−1,13−ジメルカプト−2,6,8,12−テトラチアトリデカン、3,5,9,11,15,17−ヘキサキス( メルカプトメチルチオ)−1,19−ジメルカプト−2,6,8,12,14,18−ヘキサチアノナデカン、9−( 2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−3,5,13,15−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−1,17−ジメルカプト− 2,6,8,10,12,16−ヘキサチアヘプタデカン、3,4,8,9−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−1,11−ジメルカプト−2,5,7,10−テトラチアウンデカン、3,4,8,9,13,14−ヘキサキス(メルカプトメチルチオ)−1,16−ジメルカプト−2,5,7,10,12,15−ヘキサチアヘキサデカン、8−{ビス(メルカプトメチルチオ)メチル}−3,4,12,13−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−1,15−ジメルカプト−2,5,7,9,11,14−ヘキサチアペンタデカン、4,6−ビス{3,5−ビス(メルカプトメチルチオ)−7−メルカプト−2,6−ジチアヘプチルチオ}−1,3−ジチアン、4−{3,5−ビス(メルカプトメチルチオ)−7−メルカプト−2,6−ジチアヘプチルチオ}−6−メルカプトメチルチオ−1,3−ジチアン、1,1−ビス{4−(6−メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアニルチオ}−3,3 ビス( メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス{4−(6− メルカプトメチルチオ)−1,3 −ジチアニルチオ}−1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1−{4−(6−メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアニルチオ}−3−{2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル}−7,9−ビス(メルカプトメチルチオ)−2,4,6,10−テトラチアウンデカン、1−{ 4−(6− メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアニルチオ}−3−{ 2 −(1,3−ジチエタニル)}メチル−7,9−ビス(メルカプトメチルチオ)−2,4,6,10−テトラチアウンデカン、1,5−ビス{4−(6−メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアニルチオ}−3−{2−(1,3−ジチエタニル)}メチル−2,4−ジチアペンタン、4,6−ビス[3−{2−(1,3−ジチエタニル)}メチル−5− メルカプト−2,4−ジチアペンチルチオ]−1,3−ジチアン、4,6−ビス{4−(6−メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアニルチオ}−1,3−ジチアン、4−{4−(6− メルカプトメチルチオ) −1,3−ジチアニルチオ}−6−{4−(6−メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアニルチオ}−1,3−ジチアン、3−{2−(1,3−ジチエタニル)}メチル−7,9−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,11−ジメルカプト−2,4,6,10−テトラチアウンデカン、9−{2−(1,3−ジチエタニル)}メチル−3,5,13,15−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−1,17−ジメルカプト−2,6,8,10,12,16−ヘキサチアヘプタデカン、3−{2−(1,3−ジチエタニル)}メチル−7,9,13,15−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−1,17−ジメルカプト−2,4,6,10,12,16−ヘキサチアヘプタデカン、3,7−ビス{2−(1,3−ジチエタニル)}メチル−1,9−ジメルカプト−2,4,6,8−テトラチアノナン、4−{3,4,8,9−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−11−メルカプト−2,5,7,10−テトラチアウンデシル}−5−メルカプトメチルチオ−1,3−ジチオラン、4,5−ビス{3,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−6−メルカプト−2,5−ジチアヘキシルチオ}−1,3−ジチオラン、4−{3,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−6−メルカプト−2,5−ジチアヘキシルチオ}−5−メルカプトメチルチオ−1,3−ジチオラン、4−{3−ビス(メルカプトメチルチオ)メチル−5,6−ビス( メルカプトメチルチオ)−8−メルカプト−2,4,7−トリチアオクチル}−5−メルカプトメチルチオ−1,3−ジチオラン、2−[ビス{3,4− ビス( メルカプトメチルチオ)−6−メルカプト−2,5−ジチアヘキシルチオ}メチル]−1,3−ジチエタン、2−{3,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−6−メルカプト−2,5−ジチアヘキシルチオ}メルカプトメチルチオメチル−1,3−ジチエタン、2−{3,4,8,9−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−11− メルカプト−2,5,7,10− テトラチアウンデシルチオ}メルカプトメチルチオメチル−1,3−ジチエタン、2−{3−ビス(メルカプトメチルチオ)メチル−5,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−8−メルカプト−2,4,7−トリチアオクチル}メルカプトメチルチオメチル−1,3−ジチエタン、4,5−ビス[1−{2−(1,3−ジチエタニル)}−3−メルカプト−2−チアプロピルチオ]−1,3−ジチオラン、4−[1−{2−(1,3−ジチエタニル)}−3−メルカプト−2−チアプロピルチオ]−5−{1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)−4−メルカプト−3−チアブチルチオ}−1,3−ジチオラン、2−[ビス{4−(5−メルカプトメチルチオ−1,3−ジチオラニル)チオ}]メチル−1,3−ジチエタン、4−{4−(5−メルカプトメチルチオ−1,3−ジチオラニル)チオ}−5−[1−{2−(1,3−ジチエタニル)}−3−メルカプト−2−チアプロピルチオ]−1,3−ジチオラン、更にこれらのオリゴマー等のジチオアセタールもしくはジチオケタール骨格を有する化合物;
【0020】
トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン、1,1,5,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−2,4−ジチアペンタン、ビス(4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアブチル( メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアブチル)メタン、2,4,6−トリス(メルカプトメチルチオ)−1,3,5−トリチアシクロヘキサン、2,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3,5−トリチアシクロヘキサン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−2−チアプロパン、ビス(メルカプトメチル)メチルチオ−1,3,5−トリチアシクロヘキサン、トリス((4−メルカプトメチル−2,5−ジチアシクロヘキシル−1−イル)メチルチオ)メタン、2,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、2−メルカプトエチルチオ−4−メルカプトメチル−1,3−ジチアシクロペンタン、2−(2,3−ジメルカプトプロピルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、4−メルカプトメチル−2−(2,3−ジメルカプトプロピルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、4−メルカプトメチル−2−(1,3−ジメルカプト−2−プロピルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、トリス(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)−1−チアエチル)メタン、トリス(3,3− ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアプロピル)メタン、トリス(4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−3−チアブチル)メタン、2,4,6−トリス(3,3−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアプロピル)−1,3,5−トリチアシクロヘキサン、テトラキス(3,3−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアプロピル) メタン等、さらにこれらのオリゴマー等のオルトトリチオ蟻酸エステル骨格を有する化合物;
【0021】
3,3'−ジ(メルカプトメチルチオ)−1,5−ジメルカプト−2,4−ジチアペンタン、2,2'−ジ(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、2,7−ジ(メルカプトメチル)−1,4,5,9−テトラチアスピロ[4.4]ノナン、3,9−ジメルカプト−1,5,7,11−テトラチアスピロ[5.5 ]ウンデカン、更にこれらのオリゴマー等のオルトテトラチオ炭酸エステル骨格を有する化合物等が挙げられる。
【0022】
ただし、ポリチオール化合物は、以上の各例示化合物に限定されるものではない。また以上の各例示化合物は、単独でも用いても良いし、2 種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
以上の例示化合物の中で好ましい化合物は、1,2− ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンである。
【0024】
ポリチオール中の鉄、クロム、ニッケルの合計含有量は、鉄、クロム、ニッケルの合計の含有量を測定できるのであればどのような測定方法でも構わないが、好ましくはICP発光分析装置を用いて測定する。測定は定法に従い、ポリチオールを硫酸や硝酸等の酸で前処理したのち行う。これら測定を行い、鉄、クロム、ニッケルの合計含有量が5.0ppm以下であるポリチオールが用いられる。好ましくは2.0ppm以下、より好ましくは1.0ppm以下、さらに好ましくは0.5ppm以下、最も好ましくは0.3ppm以下である。
【0025】
鉄、クロム、ニッケルの合計含有量が5.0ppmを超えた場合、これらポリチオールを含む組成物は、重合硬化した際に黄色に変色して使用不可となる。したがって、鉄、クロム、ニッケルの合計含有量を測定することで、重合硬化せずに黄色に変色発生の有無を予測、判別し、ポリチオールの品質の良否の判断が可能となる。
【0026】
鉄、クロム、ニッケルの合計含有量が5.0ppmを超えた場合、精製工程を経て5.0ppm以下とすることは有効な手法である。更に精製をかけて好ましい、より好ましい、さらに好ましくい、最も好ましい状態とすることも有効な手法である。精製の手法としては水洗、蒸留、カラム分離操作、吸着剤処理、イオン交換樹脂処理等が挙げられるが、水洗、蒸留が好ましい。
【0027】
水洗は、溶媒を使用してもしなくてもよいが、通常は使用する。溶媒としては該ポリチオールを溶解するのであればどのような溶媒を用いても構わないが、好ましくは水と分離しやすいエーテル、トルエン、ベンゼン、好ましくはトルエンを用いる。したがって水洗は、通常トルエンに溶解した状態で行い、終了後にトルエンを除去する。
【0028】
蒸留は、使用するポリチオールにより条件が異なるが、該ポリチオールが蒸留出来るのであればどのような条件でも構わない。好ましくは減圧下であり、より好ましくは0.01〜100Torrである。蒸留温度は分解しない温度であればよいが、好ましくは20〜200℃、より好ましくは50℃〜150℃である。
【0029】
本発明においては、ポリチオール化合物とポリイソ(チオ)シアナート化合物からなる重合性組成物を重合することによって、光学材料用ポリウレタン系樹脂を製造する。
【0030】
本発明に用いるポリイソ(チオ)シアナート化合物は、特に制限されず、1分子中に2個以上のイソ(チオ)シアナート基を有する化合物であれば良い。なお、「イソ(チオ)シアナート」とは、「イソシアナート又はイソチオシアナート」を意味する。
【0031】
ポリイソ(チオ)シアナート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、ブテンジイソシアナート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,6,11−ウンデカントリイソシアナート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアナート、1,8−ジイソシアナート−4−イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート化合物;
【0032】
2,5−ビス(イソシアナトメチル)− ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート等の脂環族ポリイソシアナート化合物;
【0033】
1,2−ジイソシアナトベンゼン、1,3−ジイソシアナトベンゼン、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、エチルフェニレンジイソシアナート、イソプロピルフェニレンジイソシアナート、ジメチルフェニレンジイソシアナート、ジエチルフェニレンジイソシアナート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアナート、トリメチルベンゼントリイソシアナート、ベンゼントリイソシアナート、ビフェニルジイソシアナート、トルイジンジイソシアナート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアナート)、4,4’−メチレンビス(2−メチルフェニルイソシアナート)、ビベンジル−4,4’−ジイソシアナート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、1,2−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、1,2−ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、ビス(イソシアナトメチルフェニル)エーテル、ビス(イソシアナトエチル)フタレート、2,6−ジ(イソシアナトメチル)フラン等の芳香環化合物を有するポリイソシアナート化合物;
【0034】
ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)スルフィド、ビス(イソシアナトヘキシル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)スルホン、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、1,5−ジイソシアナト−2−イソシアナトメチル−3−チアペンタン、1,2,3−トリス(イソシアナトメチルチオ)プロパン、1, 2,3−トリス(イソシアナトエチルチオ)プロパン、3,5−ジチア−1,2,6,7−ヘプタンテトライソシアナート、2,6−ジイソシアナトメチル−3,5−ジチア−1,7−ヘプタンジイソシアナート、2,5−ジイソシアナートメチルチオフェン、イソシアナトエチルチオ−2,6−ジチア−1,8−オクタンジイソシアナート等の含硫脂肪族ポリイソシアナート化合物;
【0035】
2−イソシアナトフェニル−4−イソシアナトフェニルスルフィド、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルフィド、ビス(4−イソシアナトメチルフェニル)スルフィドなどの芳香族スルフィド系ポリイソシアナート化合物;
【0036】
ビス(4−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(2−メチル−5−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3−メチル−5−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3−メチル−6−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチル−5−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシ−3−イソシアナトフェニル)ジスルフィド等の芳香族ジスルフィド系ポリイソシアナート化合物;
【0037】
2,5−ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアナトメチルテトラヒドロチオフェン、3,4−ジイソシナトメチルテトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ジイソシアナトメチル−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,3−ジチオラン、4,5−ジイソシアナトメチル−2−メチル−1,3−ジチオラン等の含硫脂環族ポリイソシアナート化合物;
【0038】
1,2−ジイソチオシアナトエタン、1,6−ジイソチオシアナトヘキサン等の脂肪族ポリイソチオシアナート化合物; シクロヘキサンジイソチオシアナート等の脂環族ポリイソチオシアナート化合物; 1,2−ジイソチオシアナトベンゼン、1,3−ジイソチオシアナトベンゼン、1,4−ジイソチオシアナトベンゼン、2,4−ジイソチオシアナトトルエン、2,5−ジイソチオシアナト−m−キシレン、4,4’−メチレンビス(フェニルイソチオシアナート) 、4,4’−メチレンビス(2−メチルフェニルイソチオシアナート)、4,4’−メチレンビス(3−メチルフェニルイソチオシアナート)、4,4’−ジイソチオシアナトベンゾフェノン、4,4’−ジイソチオシアナト−3,3’−ジメチルベンゾフェノン、ビス(4−イソチオシアナトフェニル)エーテル等の芳香族ポリイソチオシアナート化合物;
【0039】
さらには、1,3−ベンゼンジカルボニルジイソチオシアナート、1,4−ベンゼンジカルボニルジイソチオシアナート、(2,2−ピリジン)−4,4−ジカルボニルジイソチオシアナート等のカルボニルポリイソチオシアナート化合物; チオビス(3−イソチオシアナトプロパン)、チオビス(2−イソチオシアナトエタン)、ジチオビス(2−イソチオシアナトエタン)等の含硫脂肪族ポリイソチオシアナート化合物;
【0040】
1−イソチオシアナト−4−[(2−イソチオシアナト)スルホニル]ベンゼン、チオビス(4−イソチオシアナトベンゼン)、スルホニル(4−イソチオシアナトベンゼン)、ジチオビス(4−イソチオシアナトベンゼン) 等の含硫芳香族ポリイソチオシアナート化合物; 2, 5−ジイソチオシアナトチオフェン、2,5−ジイソチオシアナト−1,4−ジチアン等の含硫脂環族ポリイソチオシアナート化合物;
【0041】
1−イソシアナト−6−イソチオシアナトヘキサン、1−イソシアナト−4−イソチオシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−4−イソチオシアナトベンゼン、4−メチル−3−イソシアナト−1− イソチオシアナトベンゼン、2−イソシアナト−4,6−ジイソチオシアナト−1,3,5−トリアジン、4−イソシアナトフェニル−4−イソチオシアナトフェニルスルフィド、2−イソシアナトエチル−2−イソチオシアナトエチルジスルフィド等のイソシアナト基とイソチオシアナト基を有するポリイソ( チオ) シアナート化合物が挙げられる。
【0042】
さらに、これらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等も使用できる。
【0043】
ただし、ポリイソ( チオ)シアナート化合物は、以上の各例示化合物に限定されるものではない。また、以上の各例示化合物は、単独でも用いても良いし、2 種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
以上の例示化合物の中で好ましい化合物は、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアナートである。
【0045】
ポリチオール化合物とポリイソ(チオ)シアナート化合物の使用割合は、通常、SH基/NCO(NCS)基=0.5〜3.0、好ましくは0.6〜2.0、さらに好ましくは0.8〜1.3の範囲内である。
【0046】
本発明の光学材料用組成物は、ポリチオール化合物とポリイソ(チオ)シアナート化合物を主成分とする組成物である。この他に、必要に応じて、触媒、内部離型剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤などの任意成分を加えて、得られる材料の実用性をより向上せしめることはもちろん可能である。
例えば、ポリウレタン系レンズは、ポリチオール化合物、ポリイソ(チオ)シアネート化合物および必要に応じて任意成分をレンズ用の型へ注入し、重合することで製造できる。
【0047】
本発明の光学材料用組成物を重合硬化する触媒としては、公知のウレタン化触媒が用いられる。重合触媒の添加量は、組成物の成分、混合比および重合硬化方法によって変化するため一概には決められないが、通常は光学材料用組成物全量に対して0.001wt%以上5wt%以下、好ましくは、0.01wt%以上1wt%以下、最も好ましくは、0.01wt%以上0.5wt%以下使用する。重合触媒の添加量が5wt%より多いと硬化物の屈折率、耐熱性が低下し、着色する場合がある。また、0.001wt%より少ないと十分に硬化せず耐熱性が不十分となる場合がある。
【0048】
紫外線防止剤の好ましい例としては、ベンゾトリアゾール系化合物が挙げられる。中でも好ましい化合物の具体例は、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−2Hベンゾトリアゾールである。ブルーイング剤の好ましい例としてはアントラキノン系化合物が挙げられる。
【0049】
また、本発明の光学材料用組成物が重合後に型から剥がれにくい場合は、公知の外部および/または内部離型剤を使用または添加して、得られる硬化物の型からの離型性を向上せしめることも可能である。離型剤とは、フッ素系ノニオン界面活性剤、シリコン系ノニオン界面活性剤、燐酸エステル、酸性燐酸エステル、オキシアルキレン型酸性燐酸エステル、酸性燐酸エステルのアルカリ金属塩、オキシアルキレン型酸性燐酸エステルのアルカリ金属塩、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、高級脂肪酸エステル、パラフィン、ワックス、高級脂肪族アミド、高級脂肪族アルコール、ポリシロキサン類、脂肪族アミンエチレンオキシド付加物などがあげられ、これらは単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。添加量は通常、光学材料用組成物全量に対して0.0001〜5wt%である。
【0050】
さらにポリウレタン系樹脂の諸物性、操作性、及び重合反応性等を改良する目的で、ウレタン樹脂を形成するポリチオール化合物とイソ( チオ)シアナート化合物の他に、アミン等に代表される活性水素化合物、エポキシ化合物、オレフィン化合物、カーボネート化合物、エステル化合物等のウレタン形成原料以外の1種以上の化合物を加えても良い。
【0051】
ポリウレタン系樹脂からなる光学材料は、通常、注型重合により製造される。具体的には、ポリチオール化合物と、ポリイソ(チオ)シアナート化合物を混合する。この混合液(重合性組成物)を必要に応じて適当な方法で脱泡を行った後、光学材料用モールド型中に注入し、通常、低温から高温へ徐々に加熱し重合させる。その後、脱型することにより光学材料が得られる。
【0052】
本発明では、光学材料用組成物に対し、あらかじめ脱気処理を行うことが好ましい。脱気処理は、組成成分の一部もしくは全部と反応可能な化合物、重合触媒、添加剤の混合前、混合時あるいは混合後に、減圧下で行う。好ましくは、混合時あるいは混合後に、減圧下で行う。処理条件は、0.001〜50torrの減圧下、1分間〜24時間、0℃〜100℃で行う。減圧度は、好ましくは0.005〜25torrであり、より好ましくは0.01〜10torrであり、これらの範囲で減圧度を可変しても構わない。脱気時間は、好ましくは5分間〜18時間であり、より好ましくは10分間〜12時間である。脱気の際の温度は、好ましくは5℃〜80℃であり、より好ましくは10℃〜60℃であり、これらの範囲で温度を可変しても構わない。脱気処理の際に、撹拌、気体の吹き込み、超音波などによる振動などによって、樹脂用組成物の界面を更新することは、脱気効果を高める上で好ましい操作である。
【0053】
さらには、これらの光学材料用組成物および/または混合前の各原料を0.05〜10μm程度の孔径を有するフィルターで不純物等を濾過し精製することは、本発明の光学材料の品質をさらに高める上からも好ましい。
【0054】
上述の反応、処理がなされた光学材料用組成物は、ガラスや金属製の型に注入され、加熱や紫外線などの活性エネルギー線の照射によって重合硬化反応が進められた後、型から外される。このようにして、光学材料が製造される。光学材料用組成物は、好ましくは加熱によって重合硬化され、光学材料が製造される。この場合、硬化時間は0.1〜200時間、通常1〜100時間であり、硬化温度は−10〜160℃、通常−10〜140℃である。重合は、所定の重合温度で所定時間のホールド、0.1℃〜100℃/時間の昇温、0.1℃〜100℃/時間の降温およびこれらの組み合わせで行うことができる。また、本発明の光学材料の製造方法において、重合終了後に、硬化物に対して50〜150℃の温度で10分〜5時間程度アニール処理を施すことは、光学材料の歪を除くために好ましい処理である。
【0055】
本発明の方法により製造されるポリウレタン系樹脂は、軽量で耐衝撃性に優れた特徴を有し、さらには色相が良好である。したがって、この樹脂はレンズやプリズム等の光学材料の用途に適している。特に、眼鏡レンズ、カメラレンズ等のレンズの用途に非常に好適である。
【0056】
また、光学材料は、必要に応じ反射防止、高硬度付与、耐磨耗性向上、耐薬品性向上、防雲性付与、あるいはファッション性付与等の改良を目的として、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理、調光処理等の物理的、化学的処理を施す事ができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、評価は以下の方法で行った。
鉄、クロム、ニッケルの合計含有量:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製 ICP発光分析装置 SPS5520 を用い、ポリチオールの鉄、クロム、ニッケルの合計含有量を測定した。
黄色の測定:下記の重合方法A〜Dにより厚さ5mmの平板を作製し、カラーテクノ社製 色彩計 JS555 を用い、YI値を測定した。
鉄、クロム、ニッケルの合計含有量が検出限界(0.1ppm)以下のポリチオールを用いて作成した平板とのYI値を比較し、差(ΔYI)が0.1以下を◎、0.1〜0.3を○、0.3〜0.5を△、0.5以上を×とした。△以上のものが合格である。
【0058】
(ブランクの作成)
鉄、クロム、ニッケルの合計含有量が検出限界(0.1ppm)以下であった1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン(以下、化合物Aとする)、ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア− 1,11−ウンデカンジチオール(以下、化合物Bとする)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトプロピオネート)(以下、化合物Cとする)を用いて、下記の製造1〜4に従って厚さ5mmの平板を作製した。
【0059】
実施例1〜3
表1に示す鉄、クロム、ニッケルの合計含有量の1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン(化合物A)を用いて、下記の製法1に従って、本発明の光学材料用組成物および光学材料を作製し、ブランクと比較しΔYIを求めた。結果を表1にまとめた。
【0060】
実施例4〜6
表1に示す鉄、クロム、ニッケルの合計含有量のビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア− 1,11−ウンデカンジチオール(化合物B)を用いて、下記の製法2に従って、本発明の光学材料用組成物および光学材料を作製し、ブランクと比較しΔYIを求めた。結果を表1にまとめた。
【0061】
実施例7〜9
表1に示す鉄、クロム、ニッケルの合計含有量の1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン(化合物A)、及び表1に示す鉄、クロム、ニッケル含有量のペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトプロピオネート)(化合物C)を用いて、下記の製法3に従って、本発明の光学材料用組成物および光学材料を作製し、ブランクと比較しΔYIを求めた。結果を表1にまとめた。
【0062】
実施例10〜12
表1に示す鉄、クロム、ニッケルの合計含有量のビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア− 1,11−ウンデカンジチオール(化合物B)、及び表1に示す鉄、クロム、ニッケル含有量のペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトプロピオネート)(化合物C)を用いて、下記の製法4に従って、本発明の光学材料用組成物および光学材料を作製し、ブランクと比較しΔYIを求めた。結果を表1にまとめた。
【0063】
比較例1
表1に示す鉄、クロム、ニッケルの合計含有量の1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン(化合物A)を用いて、下記の製法1に従って、本発明の光学材料用組成物および光学材料を作製し、ブランクと比較しΔYIを求めた。結果を表1にまとめた。
【0064】
比較例2
表1に示す鉄、クロム、ニッケルの合計含有量のビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア− 1,11−ウンデカンジチオール(化合物B)を用いて、下記の製法2に従って、本発明の光学材料用組成物および光学材料を作製し、ブランクと比較しΔYIを求めた。結果を表1にまとめた。
【0065】
比較例3
表1に示す鉄、クロム、ニッケルの合計含有量の1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン(化合物A)、及び表1に示す鉄、クロム、ニッケル含有量のペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトプロピオネート)(化合物C)を用いて、下記の製法3に従って、本発明の光学材料用組成物および光学材料を作製しΔYIを求めた。結果を表1にまとめた。
【0066】
比較例4
表1に示す鉄、クロム、ニッケルの合計含有量のビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア− 1,11−ウンデカンジチオール(化合物B)、及び表1に示す鉄、クロム、ニッケル含有量のペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトプロピオネート)(化合物C)を用いて、下記の製法4に従って、本発明の光学材料用組成物および光学材料を作製しΔYIを求めた。結果を表1にまとめた。
【0067】
なお、上記実施例および比較例で用いた製法の詳細は、以下のとおりである。
製法1
1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(以下、化合物Xとする)52重量部に、硬化触媒としてジブチル錫ジクロライド0.05重量部、リン酸ジオクチル0.10重量部を、10〜15℃ にて混合溶解させた。さらに、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン(化合物A)48重量部を混合し、均一液とした。この混合均一液を600Paにて1時間脱泡を行った後、1μmのPTFEフィルターにて濾過を行い、直径70 mm 、+5Dのモールドへ注入し、40℃ から130℃まで24時間かけて重合させた。その後脱型し、光学材料を得た。
【0068】
製法2
1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン5(化合物X)1重量部に、硬化触媒としてジブチル錫ジクロライド0.05重量部、リン酸ジオクチル0.10重量部を、10〜15℃ にて混合溶解させた。さらに、ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア− 1,11−ウンデカンジチオール(化合物B)49重量部を混合し、均一液とした。この混合均一液を600Paにて1時間脱泡を行った後、1μmのPTFEフィルターにて濾過を行い、直径70 mm 、+5Dのモールドへ注入し、40℃ から130℃まで24時間かけて重合させた。その後脱型し、光学材料を得た。
【0069】
製法3
2,5−ビス(イソシアナトメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの混合物(以下、化合物Yとする)50.6重量部に、硬化触媒としてジブチル錫ジクロライド0.06重量部、リン酸ジオクチル0.12重量部を、10〜15℃ にて混合溶解させた。さらに、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン(化合物A)25.5重量部とペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトプロピオネート)(化合物C)23.9重量部を混合し、均一液とした。この混合均一液を600Paにて1時間脱泡を行った後、1μmのPTFEフィルターにて濾過を行い、直径70 mm 、+5Dのモールドへ注入し、40℃ から130℃まで24時間かけて重合させた。その後脱型し、光学材料を得た。
【0070】
製法4
2,5−ビス(イソシアナトメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの混合物(化合物Y)50.6重量部に、硬化触媒としてジブチル錫ジクロライド0.06重量部、リン酸ジオクチル0.12重量部を、10〜15℃ にて混合溶解させた。さらに、ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア− 1,11−ウンデカンジチオール(化合物B)を25.5重量部とペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトプロピオネート)(化合物C)23.9重量部を混合し、均一液とした。この混合均一液を600Paにて1時間脱泡を行った後、1μmのPTFEフィルターにて濾過を行い、直径70 mm 、+5Dのモールドへ注入し、40℃ から130℃まで24時間かけて重合させた。その後脱型し、光学材料を得た。
【0071】
【表1】

【0072】
上述の実施例においては、鉄、クロム、ニッケルの合計含有量が0.5ppm以下であるという条件を満たすポリチオールを用いた光学材料用組成物を重合させることにより、硬化後の黄色を防止することができた。従って本発明によれば、重合反応の前に、予め、重合硬化後における黄色発生の有無の予測、良否を判断し、良好な性状の光学材料のみを選択的に製造できる。このため、光学材料用組成物の有効活用と、優れた光学材料の製造とがいずれも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄、クロムおよびニッケルの合計含有量が5.0ppm以下であるポリチオール化合物と、ポリイソ(チオ)シアナート化合物とからなる光学材料用組成物。
【請求項2】
ポリチオール化合物が、1,2− ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、および1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項1記載の光学材料用組成物。
【請求項3】
ポリイソ(チオ)シアナート化合物が、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、およびα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアナートからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項1記載の光学材料用組成物。
【請求項4】
請求項1記載の光学材料用組成物を重合することにより得られた光学材料。
【請求項5】
光学材料用組成物の重合後にアニール処理が施されている、請求項4記載の光学材料。
【請求項6】
鉄、クロムおよびニッケルの合計含有量が5.0ppm以下であるポリチオール化合物と、とポリイソ(チオ)シアナート化合物とを混合する工程を含むことを特徴とする光学材料用組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−167197(P2012−167197A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29536(P2011−29536)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】