説明

光学機器の部材固定構造

【課題】受光素子を保持する保持部材を把持して位置調整を行う際に接着部が変形しにくいようにして、接着状態の安定化と位置調整の精度向上を図る。
【解決手段】第2の保持部材12は、ベース部15と、該ベース部15に設けられる接着部12aと、ベース部15から延設された把持部12bとを有する。測光センサ10を保持する第2の保持部材12は、測光レンズ9a、9bを保持する第1の保持部材11に対して、相対的位置が調整された状態で第1の保持部材11に充填接着固定される。相対的位置が調整される段階において、第2の保持部材12は、光軸C2を中心とした外側からの付勢力によってR形状部12dを把持位置として把持され、付勢力によって、受光面10aに平行な平面内で、把持部12bがのR形状部12dが光軸C2の方向に撓むことで弾性的に把持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学機器において光学素子と受光素子との相対的位置を調整してそれぞれの保持部材を充填接着固定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学素子を保持する保持部材と受光素子を保持する保持部材との相対的位置を調整して両者を充填接着固定する光学機器の部材固定構造が知られている。
【0003】
例えば、光学機器であるカメラ、ファクシミリ、スキャナ装置等の内部には、受光素子を用い、光学素子を介して対象物の光学像を読み取る装置が搭載されている。この装置において、光学素子の光軸と受光素子の光軸の位置を合わせ、なおかつ光学的特性(ピント、倍率)を要求精度内に収める必要がある。そのため、光学素子の結像位置や受光素子の相対位置を調整した状態で、両者の保持部材同士を接着固定する構造が一般に採用されている。
【0004】
上記のような接着剤による固定には、大きく分けて2つの構造があり、一方は両保持部材の接着箇所同士が当接している構造であり、もう一方は接着箇所に隙間がある構造である。前者は密着接着構造、後者は充填接着構造と呼ばれている。
【0005】
前者の密着接着構造では、調整機構の中に可動部を多く設ける必要があるため接着箇所が多くなり、接着による位置ずれが多くなるという欠点がある。後者の充填接着構造においては、接着箇所の隙間の設定が難しい。隙間が広いと接着剤の垂れや漏れによる硬化残りが発生し、隙間を狭くすると調整代を確保できず接着剤が流れ込んでいかない等の問題がある。
【0006】
下記特許文献1は、上記問題を解決するための充填接着構造を開示している。具体的には、第1のワークに突起部を設けると共に、第2のワークに上記突起部に遊合する穴部を設け、突起部と穴部との間に、両者の相対的な位置を調整可能で接着剤の漏れ防止手段としても機能する環状体を介在させている。位置調整後には、突起部と穴部の間を環状体と一緒に接着することで、隙間から接着剤が漏れることなく、接着剤の塗布及び硬化を容易に行うことが可能となっている。
【0007】
また、密着接着構造と異なり充填接着構造では接着箇所同士が当接せず隙間があるため、3次元のどの方向に対しても調整が可能であり、一度の調整で光学素子と受光素子の中心位置及びピント方向の調整が可能である。
【0008】
一方、近年、カメラの露出制御を行う測光装置において、被写界の明るさを測定するためだけでなく、被写界の輝度情報を元に被写体(例えば人や車等)の位置を検出して焦点検出の補助やシーン認識を行う機能が知られている。この測光装置においては、ピント方向にも所定の要求精度が求められ、測光用の光学素子と測光用の受光素子の相対位置調整も厳密に行うことが必要となってきている。とりわけ小型化、すなわち省スペース化が求められる一眼レフカメラの測光装置においては、上述した密着接着構造では複雑なメカ構成やスペースが必要となるため、充填接着構造が適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3434103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、充填接着構造をカメラの測光装置のように小型化が必要な機器に採用するにはいくつかの弊害がある。例えば小型化することにより受光素子保持部材の剛性が低くなる。そのため、受光素子保持部材を調整工具で左右からクランプ把持して光学素子保持部材に対する位置を調整する場合、クランプ把持により受光素子保持部材が変形する。その際、受光素子保持部材は、その形状によっては光軸方向にも撓み、非クランプ時に対して接着箇所近傍の光軸方向の位置が変化したり光軸に対する傾きを有した状態になったりする可能性がある。
【0011】
仮にそのような状態で位置を調整し、接着固定した後に工具によるクランプ把持を解除したとすると、撓み変形が解除されることで、接着箇所の光軸方向における距離や角度が調整時とずれるおそれがある。この場合、安定した接着や調整ができないという問題が生じる。
【0012】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、受光素子を保持する保持部材を把持して位置調整を行う際に接着部が変形しにくいようにして、接着状態の安定化と位置調整の精度向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、光学素子を保持する第1の保持部材に対して、前記光学素子からの光を受光する受光素子を保持する第2の保持部材の相対的位置が調整された状態で、前記第2の保持部材が前記第1の保持部材に充填接着固定される光学機器の部材固定構造であって、前記第2の保持部材は、前記受光素子が固定されるベース部と、該ベース部に設けられ前記第1の保持部材に対して充填接着される接着部と、前記ベース部に固定された状態の前記受光素子の受光面に平行な平面内で前記ベース部から延設された把持部とを有し、前記ベース部に前記受光素子が固定された状態で前記第2の保持部材が前記第1の保持部材に充填接着固定されるために前記第1の保持部材に対する前記第2の保持部材の相対的位置が調整される段階において、前記第2の保持部材は、前記受光素子の光軸を中心とした外側からの付勢力によって把持される際、前記付勢力によって前記把持部が前記受光素子の前記受光面に平行な平面内で撓むことで弾性的に把持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、受光素子を保持する保持部材を把持して位置調整を行う際に接着部が変形しにくいようにして、接着状態の安定化と位置調整の精度向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る部材固定構造が適用される光学機器の一例を示す模式的な断面図である。
【図2】測光ユニットの分解斜視図である。
【図3】測光ユニットのx軸及びz軸に沿う断面図である。
【図4】第2の保持部材のz軸方向から見た図、図4(a)のA−A線に沿う断面図、把持部の延設方向に垂直な断面図である。
【図5】調整工具で第2の保持部材を把持している状態を示す斜視図、同状態の受光面と同一平面方向の断面図、同状態の光軸に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係る部材固定構造が適用される光学機器の一例を示す模式的な断面図である。光学機器として一眼レフカメラを例にとるが、これに限定されない。
【0018】
このカメラは、カメラ本体1及び撮影レンズ2を備える。撮影レンズ2は、便宜上2枚のレンズとして示されるが、実際にはさらに多数のレンズから構成されている。カメラ本体1は、シャッタ4や撮像素子5等の撮影に必要な各種の部品を有している。カメラ本体1において、まず、観察状態と撮影状態に応じて撮影光路に斜設あるいは退避される主ミラー3が設けられる。撮像素子5は、感光部材として配設されるCCDやCMOS型等の撮像素子であるが、銀塩フィルムであってもよい。
【0019】
撮影レンズ2の予定結像面にフォーカシングスクリーン6が配置され、撮影レンズ2からの撮影光が主ミラー3で反射してフォーカシングスクリーン6上に一次結像される。また、ファインダ光路変更用のペンタプリズム7が設けられる。撮影者は被写界像をペンタプリズム7、接眼レンズ8を通じて見ることができ、いわゆるTTL方式の光学ファインダ構成となっている。
【0020】
また、測光用の光学素子である測光レンズ9a、9bが設けられる。測光レンズ9a、9bは、フォーカシングスクリーン6上に一次結像された像を、ペンタプリズム7を介して、測光用の受光素子である測光センサ10に二次結像させる。本実施の形態では、測光レンズ9a、9bは2枚で構成され、フォーカシングスクリーン6上に1次結像された像を測光レンズ9aで上側に光変換し、測光レンズ9bによって測光センサ10に結像させる測光光学系となっている。これにより測光光学系周りのメカ構成の小型化が可能となっている。
【0021】
測光センサ10は、例えばCCDやCMOS等の受光素子であり、測光レンズ9a、9bによって結像された像の情報から、被写界輝度や被写体の位置等を検出し、その結果からカメラの露出制御や焦点検出の補助等が行われる。測光レンズ9a、9b及び測光センサ10とこれらを保持する保持部材からなる構成が測光ユニットとなる。
【0022】
図2は、測光ユニットの分解斜視図である。図3は、測光ユニットのx軸及びz軸に沿う断面図である。
【0023】
図2、図3に示すように、測光レンズ9a、9bの光軸をC1、測光センサ10の光軸をC2とする。測光レンズ9a、9bは第1の保持部材11に保持される。また、測光センサ10は第2の保持部材12に保持される。第2の保持部材12は、第1の保持部材11と接着される部分である接着部12aと、後述する把持部12bとを、それぞれ一対有している。把持部12bと接着部12aはそれぞれ、測光センサ10の光軸C2を中心とした対称形状をしている。
【0024】
図2に示すように、光軸C1、C2に沿う方向の軸をz軸とする。z軸に垂直で且つ、光軸C2を挟んで第2の保持部材12の2つの接着部12aを結ぶ方向の軸をx軸とする。z軸に垂直で且つx軸に垂直な方向の軸をy軸とする。x軸、y軸、z軸それぞれの周りの回転方向をそれぞれθx、θy、θzとする。
【0025】
図2、図3に示すように、z軸に沿って第1の保持部材11に第2の保持部材12が積層載置され、両者が接着剤13で充填接着固定される。接着固定された状態では、光軸C1、C2はz軸に平行で互いに一致する。充填接着固定の前段階で第1の保持部材11と第2の保持部材12との相対的な位置決めがなされるが、それについては後述する。
【0026】
測光レンズ9a、9bは、第1の保持部材11に位置決め穴と外径嵌合等で位置決めされ、接着固定される。また、測光レンズ9a、9bが接着された第1の保持部材11は、不図示のペンタプリズム保持部材等に固定される。また、第1の保持部材11には、弧状のリブ11aが、z軸に沿う第2の保持部材12の側に突設形成されている。リブ11aが、第2の保持部材12の2つの接着部12aに対して接着される箇所となる。測光センサ10は第2の保持部材12に接着固定され一体のユニットとなっている。
【0027】
次に、第2の保持部材12の構成を説明する。図4(a)は、第2の保持部材12のz軸方向から見た図である。図4(b)は、図4(a)のA−A線に沿う断面図である。
【0028】
第2の保持部材12は、例えば樹脂で一体に形成される。第2の保持部材12は、概略板状に形成される。第2の保持部材12は、測光センサ10を保持し且つ第1の保持部材11に固定された状態では、z軸及び光軸C2を中心とし、x軸及びy軸に沿う平面方向に水平となる。測光センサ10の受光面10a(図3)もx軸及びy軸に沿う平面と平行となる。
【0029】
図4(a)、(b)に示すように、第2の保持部材12は、z軸の方向視において概ね矩形のベース部15と、ベース部15から延設形成される2つの把持部12bとを有する。すなわち、ベース部15におけるy軸方向の端部で且つx軸方向の端部(4箇所の角部)である接続部16から把持部12bが延設される。2つの把持部12bは光軸C2を挟んで対称であるので、図4(a)の右側のものを代表して説明する。把持部12bは、x軸を挟んで対称でもある。把持部12bは一方の接続部16と他方の接続部16とでベース部15に接続されており、z軸の方向視においてく字型のアーチ形状を呈している。把持部12bは、光軸C2から遠い側に凸のR形状部12dを有する。
【0030】
ベース部15において、光軸C2を通るx軸上に接着部12aが形成されている。接着部12aは、光軸C2を挟んで対称に一対配設され、光軸C2から遠い側に凸となる形状に形成される。把持部12bも、接着部12aに対応して光軸C2を挟んで対称に一対配設される。従って、把持部12bは、接着部12aを、光軸C2を中心とした外側から覆うように(取り囲むように)形成される。把持部12bがブリッジ型で接着部12aも凸型であるので、把持部12bのアーチ形状とベース部15との間にアーチ型の隙間S1が形成される。そして、この隙間S1内に接着部12aが位置することになる。
【0031】
図4(c)は、把持部12bの延設方向に垂直な断面図であり、例えば、x軸及びz軸に平行な断面を示す。図4(b)、(c)を参照して、把持部12bの形状を説明する。
【0032】
把持部12bのz軸方向の厚みは一様でA、z軸に垂直な方向(例えばx軸やy軸方向)の厚みは一様でBである(図4(b)参照)。ここで大小関係は、厚みA>厚みBとなっている。
【0033】
断面2次モーメントで表現すると次のようになっている。図4(c)に示すように、把持部12bを光軸C2の方向に曲げる場合の中立軸を通り、測光センサ10の受光面10a(図3)に平行な軸線をX0とする。また、把持部12bを光軸C2に直交する方向に曲げる場合の中立軸を通り、受光面10aに垂直な軸線をZ0とする。近似的に把持部12bを長方形として見なせば、軸線X0は、把持部12bの断面のz軸方向における中間位置を通りz軸に垂直な軸線でもある。軸線Z0は、把持部12bの断面の受光面10aに平行な方向における中間位置を通りz軸に平行な軸線でもある。
【0034】
把持部12bの、軸線X0の周りの断面2次モーメントをIX、軸線Z0の周りの断面2次モーメントをIZとすると、IZ<IXとなっている。これにより、把持部12bは、形状的な特性として、光軸C2(z軸)方向よりも、光軸C2に垂直な方向(受光面10aに平行な平面方向)に撓みやすくなっている。
【0035】
ところで、図4(b)、(c)に示すように、各把持部12bの、光軸C2方向における2つの端面を第1の端面12b1、第2の端面12b2とし、光軸C2から遠い側の面を外面12b3とする。第1の端面12b1と外面12b3、第2の端面12b2と外面12b3との間(稜線部)には、それぞれR形状のR面取り12eが形成されている。R面取り12eは各把持部12bの全長に亘って形成されている。一対の把持部12bのうち一方の把持部12bのR面取り12eと他方の把持部12bのR面取り12eとは、光軸C2上のある点に対して点対称に形成されている。
【0036】
次に、図5を用いて、測光レンズ9a、9bと測光センサ10との相対位置を調整する作業及び態様を説明する。測光センサ10が配設された第2の保持部材12を測光レンズ9a、9bが配設された第1の保持部材11に対して位置決めする際には、第2の保持部材12が調整工具で把持される。ところで、測光センサ10は、測光センサ10が得た電気信号を不図示の信号処理回路に転送するためのフレキシブルプリント基板に半田付け等で実装されている。第2の保持部材12を第1の保持部材11に対して位置調整する前段階で、上記不図示の信号処理回路に接続された状態とされる。
【0037】
図5(a)、(b)、(c)は、調整工具で第2の保持部材12を把持している状態を示す斜視図、同状態の受光面10aと同一平面方向の断面図、同状態の光軸C2に沿う断面図である。調整工具は、一対のクランプ部14を有し、図5(a)の矢印方向に両クランプ部14が互いに近寄ることで、第2の保持部材12を挟持する。第2の保持部材12を挟持する際の把持位置は、各把持部12bのR形状部12dの先端である。
【0038】
また、クランプ部14には、光軸C2から遠い側に窪んだ凹部が形成される(図5(b))。従って、当該凹部は、光軸C2を挟んだy軸方向の対称の2箇所で把持部12bに当接する。しかも、当該凹部の断面は、y軸方向から見ても光軸C2から遠い側に窪んでいる(図5(c)参照)。従って、当該凹部は、第1の端面12b1に連接するR面取り12e、第2の端面12b2に連接するR面取り12eの双方に当接する。その結果、各クランプ部14は、厳密には4箇所でR面取り12eに当接し、2つのクランプ部14で計8箇所の点接触により把持されることになる。これらにより、第2の保持部材12は、z軸方向に垂直な平面方向だけでなく、回転方向θx、θy、θzのセンタリングが容易となる。
【0039】
調整工具のクランプ部14からの把持力がかかると、把持部12bは、測光センサ10の受光面10aと同一平面方向に撓み変形し、具体的にはR形状部12dが光軸C2の方向に撓む。特に、把持部12bは、ベース部15に対して接続部16から両持ち梁状に延設された形態であるので、把持部12bが主に梁として弾性変形することで把持力のほとんどを吸収し、ベース部15には把持力の影響がほとんど及ばない。厚みA>厚みBとなっていることで(図4参照)、その性質が強まっている。その結果、ベース部15は変形せず、接着部12a及びその近傍も変形がない。特に光軸C2方向の撓み変形が抑えられる。
【0040】
クランプ部14により、把持部12bが受光面10aと同一平面方向に変形した状態で把持され、この状態にて位置調整がなされる。すなわち、測光センサ10の電気信号を読み取りながら、測光レンズ9a、9bの光軸C1と測光センサ10の光軸C2との位置を合わせ、ピント、倍率等、光学性能が所定の要求精度に収まるようにする。その際、第2の保持部材12をx軸、y軸、z軸、θx、θy、θzの6軸に対して移動させる。そして、位置調整が完了すると、第1の保持部材11のリブ11aと第2の保持部材12の接着部12aとの間に光(紫外線)硬化型等の接着剤13を充填し、接着固定を行う(図3)。位置調整をする前に接着剤13の塗布を行い、その後、位置調整して接着剤を硬化させてもよい。接着剤13は、充填接着に適していればよく、種類は問わない。
【0041】
位置調整及び接着固定が完了し、クランプ部14による把持を解除すると、第2の保持部材12の変形が解除される。その際、接着部12aは弾性変形していないため、調整完了時に対して、測光センサ10の光軸C2方向にも、受光面10aと同一平面方向にも動くことがない。すなわち、測光センサ10と測光レンズ9a、9bとの相対位置、ピントや倍率は、調整が完了した状態から動くことなく、センサ把持部12bの、受光面10aと同一平面方向の変形のみが解消され、安定した調整接着固定が可能となる。接着完了後も、接着部12aに応力が残留しないので、経時的な変形も抑制される。
【0042】
本実施の形態によれば、充填接着固定のために、第1の保持部材11に対する第2の保持部材12の相対的位置が調整される段階において、第2の保持部材12は、光軸C2を中心とした外側からの付勢力によって把持される。その際、第2の保持部材12は、付勢力によって把持部12bが受光面10aに平行な平面内で撓むことで弾性的に把持される。
【0043】
特に、把持部12bの、軸線X0の周りの断面2次モーメントをIXが軸線Z0の周りの断面2次モーメントIZより大きい(あるいは厚みA>厚みBである)ので、把持部12bが光軸C2方向に撓みにくく受光面10aに平行な平面内で撓みやすい。これにより、調整工具による把持力の方向に多少の誤差やバラツキがあっても、把持部12bはほとんど受光面10aに平行な平面内で撓むことができる。
【0044】
これにより、測光センサ10を保持する第2の保持部材12を把持して位置調整を行う際に接着部12aが変形しにくいようにして、接着状態の安定化と位置調整の精度向上を図ることができる。
【0045】
また、把持部12bが光軸C2を中心とした外側から接着部12aを覆い囲むようにアーチ型に形成され、ベース部15に2箇所で接続されるので、把持部12bの撓みの影響が接着部12aに及びにくく、一層変形しにくい。
【0046】
しかも、接着部12a、把持部12bはそれぞれ、光軸C2を挟んで対称に一対配設されるので、調整工具による把持時においてセンタリングが容易である。また、把持と把持解除時とで光軸C2の変位自体も小さいので、位置決めがしやすくなる。把持部12bには、R形状部12dと、さらにR面取り12eを設けたので、両クランプ部14で8箇所の点接触により把持される。これにより、センタリングが行いやすくなる。
【0047】
ところで、本実施の形態では、把持部12b及び接着部12aは、それぞれ光軸C2に対して対称に一対設けたが、これに限定されない。接着部12aに変形を生じさせないという観点からは、これらは一対の形状となっていなくてもよい。また、撓むように構成される把持部12bは片側のみとしてもよい。あるいは、把持部12bは両持ち梁でなく片持ち梁とすることも排除されるものではない。あるいは、把持部12b及び接着部12aは、光軸C2を中心とした3以上の方向に設けてもよい。
【0048】
また、把持部12bを受光面10aに平行な平面内で撓み得るように構成する上では、梁のような形態にすることも必須でなく、把持部12bを第2の保持部材12と一体に形成する必要もない。例えば、別体の弾性部材やバネ等で把持部に撓みが生じるよう構成してもよい。
【0049】
本発明の部材固定構造が適用される光学機器としては、カメラのほか、ファクシミリ、スキャナ装置等が考えられる。光学素子と受光素子との相対的位置を調整してそれぞれの保持部材を充填接着固定する機器に広く適用可能である。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
9a、9b 測光レンズ
10 測光センサ
10a 受光面
11 第1の保持部材
12 第2の保持部材
12a 接着部
12b 把持部
12d R形状部
15 ベース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を保持する第1の保持部材に対して、前記光学素子からの光を受光する受光素子を保持する第2の保持部材の相対的位置が調整された状態で、前記第2の保持部材が前記第1の保持部材に充填接着固定される光学機器の部材固定構造であって、
前記第2の保持部材は、前記受光素子が固定されるベース部と、該ベース部に設けられ前記第1の保持部材に対して充填接着される接着部と、前記ベース部に固定された状態の前記受光素子の受光面に平行な平面内で前記ベース部から延設された把持部とを有し、
前記ベース部に前記受光素子が固定された状態で前記第2の保持部材が前記第1の保持部材に充填接着固定されるために前記第1の保持部材に対する前記第2の保持部材の相対的位置が調整される段階において、前記第2の保持部材は、前記受光素子の光軸を中心とした外側からの付勢力によって把持される際、前記付勢力によって前記把持部が前記受光素子の前記受光面に平行な平面内で撓むことで弾性的に把持されることを特徴とする光学機器の部材固定構造。
【請求項2】
前記把持部は、前記接着部を前記受光素子の光軸を中心とした外側から覆うように形成されることを特徴とする請求項1記載の光学機器の部材固定構造。
【請求項3】
前記把持部は、前記ベース部に2箇所で接続されてアーチ形状に形成され、該アーチ形状と前記ベース部との間に形成される隙間に前記接着部が位置することを特徴とする請求項2記載の光学機器の部材固定構造。
【請求項4】
前記接着部は、前記受光素子の光軸を挟んで対称に一対配設され、前記把持部は、前記接着部に対応して前記受光素子の光軸を挟んで対称に一対配設されることを特徴とする請求項2または3記載の光学機器の部材固定構造。
【請求項5】
前記一対の把持部は各々、前記受光素子の光軸から遠い側に凸のR形状部を有することを特徴とする請求項4記載の光学機器の部材固定構造。
【請求項6】
前記一対の把持部の各々の、前記受光素子の光軸の方向における2つの端面と前記受光素子の光軸から遠い側の面との間には、それぞれR形状の面取りが形成されており、前記一対の把持部のうち一方の把持部のR形状の面取りと他方の把持部のR形状の面取りとは、前記受光素子の光軸に対して点対称に形成されていることを特徴とする請求項5記載の光学機器の部材固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−208201(P2012−208201A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72034(P2011−72034)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】