説明

光学機器

【課題】撮像装置を有する光学機器の光学ローパス効果の有無を制御して、高解像度の画像を得ることを可能とすることを目的とする。
【解決手段】光学ローパスフィルタを構成する3枚の複屈折板のうち少なくとも2枚の複屈折板の光学軸の方向を変更可能なように構成することにより、光学ローパス効果の有無を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学機器に関し、光学ローパスフィルタを有したデジタルスチルカメラで、特に光学ローパスフィルタ効果を電気的に制御可能なデジタルスチルカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラは撮影光を電気的な信号に変換する撮像装置を有し、撮像装置より出力される光電変換信号を画像処理することにより被写体像を再現している。撮像装置の光電変換部を構成する画素は規則的に配列しているため、撮像面上での被写体像に撮像装置の画素の配列周期で決まる空間周波数(ナイキスト周波数)より高い空間周波数の画像が含まれていると、再現された被写体像にはモアレや偽色が発生する。そのため、一般的にデジタルスチルカメラには撮影光路中に水晶やニオブ酸リチウム等の複屈折板からなる光学ローパスフィルタを配置して、撮影光束を分離して撮像装置に導くことによりモアレや偽色の発生を防止している。
【0003】
図16は、デジタルスチルカメラに用いられる光学ローパスフィルタの説明図である。不図示の撮影レンズと撮像装置10との間に光学ローパスフィルタ4が配置されている。図中Z軸は撮影レンズの光軸(1点鎖線にて図示)である。光学ローパスフィルタ4は水晶等の3枚の複屈折板41、42及び43から構成されている。図中各複屈折板にしるした矢印は光学軸の方向を便宜的に示したものである。複屈折板41の光学軸は図中Y−Z平面内にあり、通常Z−X平面に対して45度の角度を有している。同様に、複屈折板43の光学軸は図中Z−X平面内にあり、通常X−Y平面に対して45度の角度を有している。また、複屈折板41と複屈折板43との間に配置された複屈折板42の光学軸はX−Y平面内にあり、複屈折板41及び複屈折板43の光学軸のX−Y平面への射影に対して45度の傾きを有している。
【0004】
図17は、図16に示した構成の光学ローパスフィルタ4の光線分離説明図である。
【0005】
図17(a)は図中Y方向の光線の様子を示したものである。光学ローパスフィルタ4の第1の複屈折板41に入射した光線の内、Y方向と直交する偏光面を有した偏光は複屈折板41を直進し、Y方向と平行の偏光面を有した偏光は複屈折板41にて屈折し、それぞれ複屈折板41から出射する。そのため、1本の光線はY方向の2本の直線偏光に分離される。
【0006】
第1の複屈折板41から出射した2本の直線偏光は、第2の複屈折板42に入射する。第2の複屈折板42の光学軸と2本の直線偏光は45度の角度を有しており、第2の複屈折板42に所定の厚さを与えることによって第2の複屈折板42から出射する2本の光線は円偏光となる。
【0007】
第2の複屈折板42から出射した2本の円偏光は、第3の複屈折板43に入射する。第3の複屈折板43の光学軸のX−Y平面への射影はY方向と直交するため、2本の円偏光はY方向には屈折せずに第3の複屈折板43を出射する。
【0008】
一方、図17(b)は図中X方向の光線の様子を示したものである。第1の複屈折板41の光学軸のX−Y平面への射影はX方向と直交するため、第1の複屈折板41に入射した光線はX方向には屈折せずに第1の複屈折板41を出射する。但し、上述のように複屈折板41では2本の直線偏光がY方向に分離して出射している。
【0009】
第1の複屈折板41から出射した2本の直線偏光は、第2の複屈折板42に入射する。第2の複屈折板42の光学軸と2本の直線偏光は45度の角度を有しており、第2の複屈折板42に所定の厚さを与えることによって第2の複屈折板42から出射する2本の光線は円偏光となる。
【0010】
第2の複屈折板42から出射した2本の円偏光の内、X方向と直交する偏光面を有した偏光は複屈折板43を直進し、X方向と平行の偏光面を有した偏光は複屈折板43にて屈折し、それぞれ複屈折板43から出射する。そのため、2本の光線はそれぞれX方向に2本の直線偏光に分離される。
【0011】
その結果、光学ローパスフィルタ4に入射した1本の光線は撮像装置10に4本の直線偏光に分離して入射することになる。
【0012】
図18は水晶を用いた光学ローパスフィルタのMTF特性を示したもので、撮像装置の画素周期で決まるナイキスト周波数のMTFがほぼ0になるようになっている。
【0013】
ところが、水晶等の光学ローパスフィルタをデジタルスチルカメラの撮影光路中に配置すると、撮像装置に入射する光線は複数に分離するため本来の被写体像に対して像がぼけてしまい解像度が低下してしまう。
【0014】
そこで特許文献1では、光学ローパスフィルタを複数の複屈折板で構成し、複数の複屈折板の内少なくとも1枚の複屈折板を光軸を中心に回転させることによって、光学ローパス効果の度合いを制御可能な撮像装置を開示している。
【特許文献1】特開平7−245762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1の撮像装置では光学ローパス効果の有無を制御するために、従来の光学ローパスフィルタに対して新たに2枚の複屈折板を追加しているため、コストが上がってしまうという問題点があった。
【0016】
また特許文献1の撮像装置では、従来の光学ローパスフィルタに対して追加した2枚の複屈折板を180度回転させることにより光学ローパス効果の有無を制御しているため、2枚の複屈折板の回転機構が大がかりとなるとともに光学ローパス効果の有無の切り換えのための時間がかかってしまうという問題点があった。
【0017】
さらには、光学ローパス効果の有無を撮影者が撮影毎に選択するように装置を構成すると、操作が煩雑となり操作性を悪くしてしまうという問題点があった。
【0018】
本発明は、以上の点に着目して成されたもので、撮像装置を有する光学機器の光学ローパス効果の有無を制御して、高解像度の画像を得ることを可能とする光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、撮影レンズと撮像装置と該撮影レンズと撮像装置との間に配置された光学ローパスフィルタとを有する光学機器において、前記光学ローパスフィルタを撮影レンズの光軸に対して光学軸の方向が異なる3枚の複屈折板にて構成し、3枚の複屈折板の内、少なくとも2枚の複屈折板はその光学軸をそれぞれ異なる方向に変更可能なようにすることによって、光学ローパス効果の有無を制御可能として、高い空間周波数成分をもたない被写体に対しては高解像度の撮影が可能な光学機器を提供することを特徴する。
【0020】
また、光学機器を構成する光学ローパスフィルタを、第1、第2及び第3の複屈折板から構成し、第1及び第3の複屈折板に挟まれた第2の複屈折板に対して第1及び第3の複屈折板が相対的に45度回転するように少なくとも2枚の複屈折板を回転することによって、光学ローパス効果の有無を制御可能な光学機器を提供するとともに、複屈折板の回転機構を単純化して、光学機器の小型化とコストダウンを図っていることを特徴とする。
【0021】
さらには、撮影レンズと撮像装置と該撮影レンズと撮像装置との間に配置された光学ローパスフィルタと該光学ローパスフィルタを構成する3枚の複屈折板の内、少なくとも2枚の複屈折板を撮影レンズの光軸と直交する面内で異なる角度で回転させる回転機構とを有する光学機器において、複屈折板を回転させるか否かを判定する判定手段を設けることによって、光学ローパス効果の必要性の有無を光学機器が自動的に判定し複屈折板の回転を実行するため、撮影者の操作性を向上させていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、撮影レンズと撮像装置と該撮影レンズと撮像装置との間に配置された光学ローパスフィルタとを有する光学機器において、前記光学ローパスフィルタを撮影レンズの光軸に対して光学軸の方向が異なる3枚の複屈折板にて構成し、3枚の複屈折板の内少なくとも2枚の複屈折板はその光学軸をそれぞれ異なる方向に変更可能なようにすることによって、光学ローパス効果の有無を制御可能として、高い空間周波数成分をもたない被写体に対しては高解像度の撮影が可能な光学機器を提供することが可能となった。
【0023】
また、光学機器を構成する光学ローパスフィルタを、第1、第2及び第3の複屈折板から構成し、第1及び第3の複屈折板に挟まれた第2の複屈折板に対して第1及び第3の複屈折板が相対的に45度回転するように少なくとも2枚の複屈折板を回転することによって、光学ローパス効果の有無を制御可能な光学機器を提供するとともに、複屈折板の回転機構を単純化して、光学機器の小型化とコストダウンを図ることが可能となった。
【0024】
さらには、撮影レンズと撮像装置と該撮影レンズと撮像装置との間に配置された光学ローパスフィルタと該光学ローパスフィルタを構成する3枚の複屈折板の内少なくとも2枚の複屈折板を撮影レンズの光軸と直交する面内で異なる角度で回転させる回転機構とを有する光学機器において、複屈折板を回転させるか否かを判定する判定手段を設けることによって、光学ローパス効果の必要性の有無を光学機器が自動的に判定し複屈折板の回転を実行するため、撮影者の操作性を向上させることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例1】
【0026】
[第1の実施例]
図1〜図8は本発明の第1の実施例で、図1は本発明の光学機器であるカメラの構成図、図2はカメラの電気回路ブロック図、図3はカメラ動作のフローチャート、図4は撮像動作のフローチャート、図5はモードダイヤル説明図、図6は光学ローパスフィルタの配置説明図、図7は光学ローパスフィルタの光線分離説明図、図8は複屈折板回転機構説明図である。
【0027】
図1のカメラの構成図において、10は撮像装置で、デジタルスチルカメラ1の交換可能な撮影レンズ5の予定結像面に配置されている。撮像装置10の近傍の撮影光路中に光学ローパスフィルタ4が配置されている。2はフォーカルプレーンシャッターである。9は液晶表示素子で、撮像装置10にて得られた被写体像が観察可能となっている。
【0028】
カメラ1の本体と撮影レンズ5はレンズマウント50にて連結されている。撮影レンズ5は便宜上2枚のレンズ5a、5bで図示しているが実際は多数枚のレンズで構成されている。
【0029】
通常、被写体光は撮影レンズ5を透過し、跳ね上げミラー6にて反射してピント板7に収斂する。さらにピント板7にて拡散した被写体光はペンタダハプリズム8で光路変換され接眼レンズ3から出射する。撮影者は接眼レンズ3を介して被写体像を観察可能となっている。
【0030】
また、34は焦点検出ユニットで、ハーフミラーである跳ね上げミラー6を透過した光を受光して、撮影レンズ5の焦点状態を検出する。
【0031】
40は光学ローパスフィルタ4を構成する複屈折板の回転機構で詳細は後述する。
【0032】
図2のカメラの電気回路ブロック図に示すように、カメラ1は、カメラ全体を制御する制御手段であるところのCPU20、シャッター2を制御するシャッター制御回路28、光学ローパスフィルタ4を構成する複屈折板を回転させるための複屈折板駆動機構40を制御するための複屈折板駆動制御回路27、撮像装置10を駆動制御する撮像装置制御回路21、撮像装置10にて撮像した画像信号を画像処理する画像処理回路24、液晶表示素子9を駆動する液晶表示素子駆動回路25、撮像装置10にて撮像された画像を記録するメモリー回路22、画像処理回路24にて画像処理された画像をカメラ外部に出力するためのインターフェイス回路23、各種スイッチの設定状態を確認する信号入力回路29、撮影レンズ5の焦点状態を検出する焦点検出ユニット34とそれを制御する焦点検出回路33とから構成されている。
【0033】
CPU20は、光学ローパスフィルタ効果を発現させるか否かを判定する判定手段を兼ねている。
【0034】
また、撮影レンズ5のレンズCPU30はカメラ1本体と電気接点31を介して結線されている。CPU30はレンズ駆動回路26を介して撮影レンズ5を駆動し、また絞り制御回路32を介して絞り51を制御している。
【0035】
以下、図3のフローチャートを用いてカメラの動作を説明する。
【0036】
撮影者が、図1には不図示のカメラ1のメインスイッチをONすると(s101)、カメラ1は待機状態から復帰する。制御手段であるCPU20は信号入力回路29を介して不図示のシャッターレリーズスイッチの第1ストロークSW−1が押されているかどうかを確認する(s102)。撮影者が不図示のシャッターレリーズスイッチの第1ストロークSW−1をONしたことを信号入力回路29を介して検知すると(s102)、CPU20は撮影レンズ5の焦点検出を実行する(s103)。
【0037】
本実施例のカメラ1は公知の瞳分割位相差方式焦点検出方法で撮影レンズ5の焦点状態を検出する。瞳分割位相差方式の焦点検出を行うために、焦点検出ユニット34にはフィールドレンズ、2次結像レンズ、絞り、撮像装置等が含まれている。焦点検出手段を兼ねたCPU20は、焦点検出回路33に焦点検出信号を送って焦点検出ユニット34の撮像装置を用いて焦点検出用の瞳分割画像を撮像する。検出された2つの瞳分割画像の相対的な位置ずれ量より、撮影レンズ5のデフォーカス量が算出される。このとき、CPU20は焦点検出用の瞳分割画像のコントラスト、検出された2つの瞳分割画像の相対的な位置ずれ量等より、焦点検出の評価量(AF評価値)も算出する。
【0038】
撮影レンズ5が合焦状態ではないと判定されたら(s104)、CPU20はレンズCPU30を介してレンズ駆動回路26にレンズ駆動信号を送って撮影レンズ5をデフォーカス量に対応した量を駆動する(s109)。
【0039】
一方、撮影レンズ5は合焦状態と判定されたら(s104)、CPU20は信号入力回路29を介してシャッターレリーズスイッチの第2ストロークSW−2が押されたかどうかを確認する。スイッチSW−2がONされていれば(s105)、画像記憶手段であるメモリー回路22に本画像を記憶するための撮像を行う(s106)。
【0040】
次に、図4のフローチャートを用いて本発明の光学機器であるカメラ1の本画像の撮像動作を説明する。
【0041】
制御手段であるCPU20は信号入力回路29を介して撮影モードを選択するためのモードダイヤルの設定状態を確認する。モードダイヤルはカメラ1に付随している。
【0042】
図5のモードダイヤル説明図に示すようにモードダイヤル19は、光学ローパスフィルタ4にて光学ローパス効果を発現させる「on」モードと、光学ローパス効果を発現させず解像度の高い画像を得るための「off」モードと、光学ローパス効果を発現させる/発現させない、をカメラ1が自動的に選択する「auto」モードが設定可能となっている。撮影者は被写体に応じて光学ローパスフィルタ4の光学ローパス効果をon/offを任意に設定可能であるとともに、カメラ1まかせの自動選択モードに設定することが可能となっている。
【0043】
撮影者が撮影モードを選択するためのモードダイヤル19を「on」の光学ローパス効果撮影モードに設定していれば(s121)、制御手段であるCPU20は撮像装置制御回路21に撮像信号を送って撮像装置10にて撮像を開始する(s124)。
【0044】
カメラ1の通常状態では、光学ローパスフィルタ4は図16の光学ローパスフィルタ説明図に示すような構成で複屈折板は配置していて光学ローパス効果を発現するようになっている。
【0045】
撮像装置制御回路21は撮像装置10に撮像制御信号を送って撮像装置10を制御する。次に、CPU20はシャッター制御回路28にシャッターレリーズ信号を送ってフォーカルプレーンシャッター2のレリーズスイッチを開放する(s125)。
【0046】
撮影レンズ5と光学ローパスフィルタ4との間にはフォーカスプレーンシャッター2が配設されている。フォーカスプレーンシャッター2は複数の遮光板で構成され、シャッターレリーズ信号に基づいて図中Y方向に走行するようになっている。また、遮光板と遮光板との間にスリットを設け、そのスリット間隔を制御して撮像装置10の露光時間を決定している。
【0047】
図17の光学ローパスフィルタの光線分離説明図で示すように、光学ローパスフィルタ4を透過した光線は4本の光線に分離して撮像装置10に入射する。その結果、撮像装置10の画素の配列周期で決まる所定の空間周波数より細かな空間周波数成分を含む被写体の場合に生じていたモアレや偽色の発生を防止するため、品位の高い画像を得ることが可能となる。
【0048】
フォーカルプレーンシャッター2の走行終了にあわせてCPU20は撮像装置制御回路21に撮像終了信号を送信して撮像装置10による撮像動作を終了する(s126)。
【0049】
一方、撮影者が撮影モードを選択するためのモードダイヤル19を「off」の高解像撮影モードに設定していれば(s121)、制御手段であるCPU20は光学ローパスフィルタ4の複屈折板を回転させて光学ローパス効果を発現しない高解像撮影モードで撮像動作を行う。
【0050】
CPU20は複屈折板駆動制御回路27に信号を送って、光学ローパスフィルタ4を構成する2枚の複屈折板を回転させる(s122)。
【0051】
図6は、高解像撮影モードにおける光学ローパスフィルタを構成する複屈折板の光学軸方向の説明図である。不図示の撮影レンズと撮像装置10との間に光学ローパスフィルタ4が配置されている。図中Z軸は撮影レンズの光軸(1点鎖線にて図示)である。光学ローパスフィルタ4は水晶等の3枚の複屈折板41、42及び43から構成されている。図中各複屈折板にしるした矢印は光学軸の方向を便宜的に示したものである。
【0052】
第1の複屈折板41は、図16の光学ローパスフィルタ説明図に示した通常の光学ローパス効果を有する配置状態に対して、撮影レンズの光軸(Z軸)に直交する面(X−Y平面)内で撮影レンズの光軸を中心に反時計回りに45度回転している。X軸、Y軸を撮影レンズの光軸を中心に反時計回りに45度回転させたときの座標系をX′軸、Y′軸とすると、複屈折板41の光学軸はY′−Z平面内にあり、ベクトル表示すると(x、y、z)=(−1、1、1)となっている。
【0053】
また、第3の複屈折板43は、図16の光学ローパスフィルタ説明図に示した通常の光学ローパス効果を有する配置状態に対して、撮影レンズの光軸(Z軸)に直交する面(X−Y平面)内で撮影レンズの光軸を中心に時計回りに45度回転している。その光学軸は同様にY′−Z平面内にあり、ベクトル表示すると(x、y、z)=(1、−1、1)となっている。
【0054】
また、複屈折板41と複屈折板43との間に配置された第2の複屈折板42は通常と同一の配置状態にあり、その光学軸はX−Y平面内にあり、複屈折板41及び複屈折板43の光学軸のX−Y平面への射影に対して90度の傾きを有している。第2の複屈折板42の光学軸をベクトル表示すると(x、y、z)=(1、1、0)となっている。
【0055】
図8の複屈折板回転機構説明図にて複屈折板の回転方法を説明する。図8(a)は複屈折板回転機構の正面図、図8(b)複屈折板回転機構の側面図である。
【0056】
40は複屈折板駆動機構で、平歯車45、46、47及び不図示のモータにて構成されている。モータは複屈折板駆動制御回路27からの制御信号により駆動制御される。
【0057】
第1の複屈折板41の外周には歯車が形成され平歯車46と噛み合っている。同様に、第3の複屈折板43の外周には歯車が形成され平歯車47と噛み合っている。さらに、平歯車46と47も噛み合っている。平歯車45は不図示のモータからの回転を伝達するように構成され、平歯車47と噛み合うことによって複屈折板43と複屈折板41を45度回転させる。このとき、複屈折板43と複屈折板41は撮影レンズの光軸を回転中心としてそれぞれ逆方向に回転する。
【0058】
図7は、図6に示した構成の光学ローパスフィルタ4の光線分離説明図である。同図は、図6のX−Y座標系をZ軸を中心に反時計方向に45度回転したX′−Y′座標系にて図示している。
【0059】
図7(a)は図中Y′方向の光線の様子を示したものである。光学ローパスフィルタ4の第1の複屈折板41の光学軸のX′−Y′平面への射影はY′方向と平行なため、第1の複屈折板41に入射した光線の内、Y′方向と直交する偏光面を有した

は複屈折板41を直進し、Y′方向と平行の偏光面を有した

は複屈折板41にて図中(+)Y′方向に屈折し、それぞれ複屈折板41から出射する。そのため、1本の光線はY′方向の2本の直線偏光に分離される。
【0060】
第1の複屈折板41から出射した2本の直線偏光は、第2の複屈折板42に入射する。第2の複屈折板42の光学軸と2本の直線偏光は

の角度を有しているため、第2の複屈折板42から出射する2本の光線の偏光状態は保存される。
【0061】
第2の複屈折板42から出射した2本の直線偏光は、第3の複屈折板43に入射する。第3の複屈折板43の光学軸のX′−Y′平面への射影はY′方向と平行なため、第3の複屈折板43に入射した光線の内、Y′方向と直交する偏光面を有した

はそのまま複屈折板43を直進する。
【0062】
一方、Y′方向と平行の偏光面を有した

は複屈折板43にて図中(−)Y′方向に屈折し複屈折板43から出射する。一般的に第1の複屈折板41と第3の複屈折板43とは同一の像分離性能を有しているため、複屈折板41にて(+)Y′方向に屈折した光線の分離幅と複屈折板43にて(−)Y′方向に屈折した光線の分離幅とは一致する。
【0063】
その結果、光学ローパスフィルタ4に入射した光線はY′方向には分離せずに出射する。
【0064】
一方、図7(b)は図中X′方向に光線が分離しない様子を示したものである。第1の複屈折板41の光学軸のX′−Y′平面への射影はX′方向と直交するため、第1の複屈折板41に入射した光線はX′方向には屈折せずに第1の複屈折板41を出射する。但し、上述のように複屈折板41では2本の直線偏光がY′方向に分離して出射している。
【0065】
第1の複屈折板41から出射した2本の直線偏光は、第2の複屈折板42に入射する。第2の複屈折板42の光学軸と2本の直線偏光は0度及び90度の角度を有しているため、第2の複屈折板42から出射する2本の光線の偏光状態は保存される。
【0066】
第3の複屈折板43の光学軸のX′−Y′平面への射影はX′方向と直交するため、第2の複屈折板42から出射した直線偏光はX′方向には屈折せずに第3の複屈折板43を出射する。
【0067】
その結果、光学ローパスフィルタ4に入射した1本の光線は分離することなく撮像装置10に入射することになる。
【0068】
このように本発明の光学機器であるカメラは、光学ローパスフィルタを構成する第2の複屈折板42に対して、第1の複屈折板41と第3の複屈折板43を相対的に45度回転させることにより、第1の複屈折板にて分離した光線を第3の複屈折板で元に戻すように構成しているため、通常の光学ローパスフィルタの複屈折板の構成枚数で光学ローパス効果のon/offを制御可能としている。さらに各複屈折板の回転角を45度にしているため、光学ローパス効果のon/offのための切り換え時間が短くなるとともに、複屈折板駆動機構40の小型化を可能としている。
【0069】
図4の撮像動作フローチャートにおいて、光学ローパスフィルタ4を構成する複屈折板の内の2枚の複屈折板を回転させると(s122)、制御手段であるCPU20は撮像装置10での撮像を行う(s124)。このとき光学ローパスフィルタ4は透明基板と等価に作用するため像分離は発生しない。フォーカルプレーンシャッター2を制御して(s125)、その走行終了にあわせてCPU20は撮像装置制御回路21に撮像終了信号を送信して、撮像装置10による撮像動作を終了する(s126)。このように、光学ローパスフィルタ4を構成する複屈折板の内の2枚を所定の角度で回転させることにより、撮像装置10の画素数に対応した高解像度の画像を得ることが可能となる。
【0070】
撮像装置10による撮像が終了すると(s126)、制御手段であるCPU20は複屈折板駆動制御回路27に制御信号を送って、光学ローパスフィルタ4の複屈折板を初期の位置に復帰させ、光学ローパス効果を発現させる状態に設定する(s127)。
【0071】
また、カメラ1の撮影者が撮影モードを選択するためのモードダイヤル19を「auto」の自動選択モードに設定していれば(s120)、CPU20は直前に焦点検出手段にて検出されたAF評価値を参照する(s123)。ここで、CPU20は光学ローパスフィルタ4を構成する複屈折板を回転させるか否かを判定する判定手段を兼ねている。判定手段であるCPU20は、AF評価値が低い場合は焦点調節精度が低いか像のコントラストが低いと認識し、AF評価値が高い場合は焦点調節精度が高く像のコントラストも高いと認識する。
【0072】
判定手段であるCPU20によりAF評価値が所定値より低く、今回撮像される画像のコントラストが低くなると判定されたら(s123)、CPU20は光学ローパスフィルタ4の複屈折板を回転させて(s122)、高解像度の画像が得られる高解像撮影モードで撮像動作を行う。光学ローパスフィルタ4の複屈折板を回転させる高解像撮影モードでの撮影動作は上述の通りである。
【0073】
一方、AF評価値が所定値より高く、今回撮像される画像のコントラストが高くなると判定されたら(s123)、CPU20は、光学ローパス効果が得られる通常の撮影モードで撮像動作を行う。
【0074】
このように、光学ローパス効果のon/offを自動的に選択するモードを設定することにより、撮影者のカメラの操作の煩雑性を軽減している。
【0075】
図3のカメラ動作のフローチャートにおいて、本画像の撮影動作が終了すると(s128)、撮像装置10にて撮像された画像信号は、撮像装置制御回路21にてA/D変換された後に画像処理回路24にて画像処理が行われる。このとき、撮像装置10からの出力信号に基づいて色再現のために所定の画像処理が行われる。画像処理が行われた画像信号はCPU20を介して液晶表示素子駆動回路25に送られ液晶表示素子9に表示される(s107)。撮影者は撮像された被写体像を液晶表示素子9を介して観察することが可能となる。
【0076】
同時に、CPU20は撮像された画像信号をそのままカメラ1の画像記憶手段であるメモリー回路22に記憶する(s108)。
【0077】
撮影動作が終了し、撮影者がメインスイッチをOFFすると(s101)カメラの電源が落ちて待機状態となる(s110)。
【0078】
本実施例において、光学ローパスフィルタ4はシャッター2と撮像装置10との間に配置された例を示したが、跳ね上げミラー6とシャッター2との間や、レンズマウント50と跳ね上げミラー6との間に配置してもかまわない。
【0079】
また本実施例では、複屈折板の外周に歯車を設けそれにモータと連結された歯車と噛み合わせることにより複屈折板を回転させる例を示したが、複屈折板の外周にピンを設けカム等により回転するように構成してもかまわない。
【0080】
[第2の実施形態]
図9〜図15は本発明の第2の実施例で、図9は本発明の光学機器であるカメラの構成図、図10はカメラの電気回路ブロック図、図11はカメラ動作のフローチャート、図12は撮像動作のフローチャート、図13は光学ローパスフィルタの配置説明図、図14は光学ローパスフィルタの光線分離説明図、図15は複屈折板回転機構説明図である。ここで、第1の実施例と同一の部材には同一の番号が付番されている。
【0081】
図9のカメラの構成図において、10はCCD等のイメージセンサ(撮像装置)で、デジタルスチルカメラ1の撮影レンズ5の予定結像面に配置されている。撮像装置10の近傍の撮影光路中に光学ローパスフィルタ4が配置されている。2は絞りを兼ねたシャッターである。9は液晶表示素子で、撮像装置10にて得られた被写体像が接眼レンズ3を介して観察可能となっている。撮影レンズ5は便宜上2枚のレンズ5a、5bで図示しているが実際は多数枚のレンズで構成されている。
【0082】
図10のカメラの電気回路ブロック図に示すように、カメラ1は、カメラ全体を制御する制御手段であるところのCPU20、撮影レンズ5を駆動するレンズ駆動回路26、シャッター2を制御するシャッター制御回路28、光学ローパスフィルタ4の光学ローパス効果を制御するための複屈折板駆動制御回路27、撮像装置10を駆動制御する撮像装置制御回路21、撮像装置10にて撮像した画像信号を画像処理する画像処理回路24、液晶表示素子9を駆動する液晶表示素子駆動回路25、撮像装置10にて撮像された画像を記録するメモリー回路22、画像処理回路24にて画像処理された画像をカメラ外部に出力するためのインターフェイス回路23、各種スイッチの設定状態を確認する信号入力回路29とから構成されている。
【0083】
本実施例のカメラは、光学ローパスフィルタ4は通常状態において光学ローパス効果が発現しないように設定され、高解像度の画像が得られるようになっている。
【0084】
以下、図11のフローチャートを用いてカメラの動作を説明する。
【0085】
撮影者が、図9には不図示のカメラ1のメインスイッチをONすると(s201)、カメラ1は待機状態から復帰する。制御手段であるCPU20はまず撮像装置制御回路21に撮像信号を送って、撮像装置10にて電子ビューファインダ(EVF)用の画像の撮像を行わせる(s202)。
【0086】
撮像装置10は全画素に対して所定の比率で間引いた画素数の画像が出力されるように撮像装置制御回路21によって制御される。このとき、複屈折板駆動制御回路27から複屈折板駆動機構40に駆動信号は送られないため、光学ローパスフィルタ4は透明基板として作用しその結果撮像装置10において高解像度の画像が得られる。このときの光学ローパスフィルタ4の作用について図13及び図14を用いて説明する。
【0087】
図13は、高解像度で撮影を行う場合の光学ローパスフィルタ4を構成する複屈折板の光学軸方向の説明図である。不図示の撮影レンズと撮像装置10との間に光学ローパスフィルタ4が配置されている。図中Z軸は撮影レンズの光軸(1点鎖線にて図示)である。光学ローパスフィルタ4は水晶等の3枚の複屈折板41、42及び43から構成されている。図中各複屈折板にしるした矢印は光学軸の方向を便宜的に示したものである。
【0088】
第1の複屈折板41は、図16の光学ローパスフィルタ説明図に示した光学ローパス効果を有する配置状態に対して、撮影レンズの光軸(Z軸)に直交する面(X−Y平面)内で撮影レンズの光軸を中心に反時計回りに90度回転している。複屈折板41の光学軸はZ−X平面内にあり、ベクトル表示すると(x、y、z)=(−1、0、1)となっている。
【0089】
また、第2の複屈折板42は、図16の光学ローパスフィルタ説明図に示した光学ローパス効果を有する配置状態に対して、撮影レンズの光軸(Z軸)に直交する面(X−Y平面)内で撮影レンズの光軸を中心に時計回りに45度回転している。その光学軸はX−Y平面内にあり、ベクトル表示すると(x、y、z)=(0、1、0)となっている。
【0090】
また、撮像装置10の直前におかれた第3の複屈折板43は、図16の光学ローパスフィルタ説明図に示した光学ローパス効果を有する配置状態と同一の配置状態にあり、その光学軸はZ−X平面内にあり、その光学軸をベクトル表示すると(x、y、z)=(1、0、1)となっている。
【0091】
そして第2の複屈折板42の光学軸は、複屈折板41及び複屈折板43の光学軸のX−Y平面への射影に対して90度の傾きを有している。
【0092】
図13に示した構成の光学ローパスフィルタ4の光線分離を説明したのが図14である。
【0093】
図14(a)は図中Y方向の光線の様子を示したものである。第1の複屈折板41の光学軸のX−Y平面への射影はX方向と平行なため、X方向と平行の偏光面を有した

はY方向には屈折せずに第1の複屈折板41を出射する。また、X方向と直交する偏光面を有した

もY方向には屈折せずに第1の複屈折板41を出射する。
【0094】
第1の複屈折板41から出射した直線偏光は、第2の複屈折板42に入射する。第2の複屈折板42の光学軸はY方向と平行で各直線偏光とは0度及び90度の角度を有しているため、第2の複屈折板42から出射する光線の偏光状態は保存される。
【0095】
第3の複屈折板43の光学軸のX−Y平面への射影はX方向と平行なため、第2の複屈折板42から出射した直線偏光はY方向には屈折せずに第3の複屈折板43を出射する。
【0096】
その結果、光学ローパスフィルタ4に入射した光線はY方向には分離せずに出射する。
【0097】
一方、図14(b)は図中X方向の光線の様子を示したものである。
【0098】
光学ローパスフィルタ4の第1の複屈折板41の光学軸のX−Y平面への射影はX方向と平行なため、第1の複屈折板41に入射した光線の内、X方向と直交する偏光面を有した

は複屈折板41を直進し、X方向と平行の偏光面を有した

は複屈折板41にて図中(−)X方向に屈折し、それぞれ複屈折板41から出射する。そのため、1本の光線はY方向の2本の直線偏光に分離される。
【0099】
第1の複屈折板41から出射した2本の直線偏光は、第2の複屈折板42に入射する。第2の複屈折板42の光学軸はY方向と平行で、2本の直線偏光の偏光面はY方向に対して

の角度を有しているため、第2の複屈折板42から出射する2本の光線の偏光状態は保存される。
【0100】
第2の複屈折板42から出射した2本の直線偏光は、第3の複屈折板43に入射する。第3の複屈折板43の光学軸のX−Y平面への射影はX方向と平行なため、第3の複屈折板43に入射した光線の内、X方向と直交する偏光面を有した

はそのまま複屈折板43を直進する。
【0101】
一方、X方向と平行の偏光面を有した

は複屈折板43にて図中(+)X方向に屈折し複屈折板43から出射する。一般的に第1の複屈折板41と第3の複屈折板43とは同一の像分離性能を有しているため、複屈折板41にて(−)X方向に屈折した光線の分離幅と複屈折板43にて(+)X方向に屈折した光線の分離幅とは一致する。
【0102】
その結果、光学ローパスフィルタ4に入射した1本の光線は分離することなく撮像装置10に入射することになる。
【0103】
このように本発明の光学機器であるカメラは、光学ローパスフィルタを構成する第2の複屈折板42に対して第1の複屈折板41と第3の複屈折板43が相対的に45度回転するように第1の複屈折板41と第2の複屈折板42を回転させることにより、第1の複屈折板にて分離した光線を第3の複屈折板で元に戻すように構成しているため、通常の光学ローパスフィルタの複屈折板の構成枚数で光学ローパス効果のon/offを制御可能としている。
【0104】
ところで本実施例では、説明上第3の複屈折板43と撮像装置10が空間的に離れた構成で図示されているが、実際は第3の複屈折板43と撮像装置10とは接着されている。
【0105】
図11のカメラ動作のフローチャートにおいて、光学ローパスフィルタ4が透明基板として作用した状態で撮像装置10において高解像度の画像が撮像されると(s202)、撮像装置10から出力された画像は、画像処理回路24によってEVF用画像に処理されて液晶表示素子駆動回路25に送られる。CPU20を介して画像信号を受けた液晶表示素子駆動回路25は、液晶表示素子9を駆動し撮影画像を表示する(s203)。
【0106】
撮影者が不図示のシャッターレリーズスイッチの第1ストロークSW−1をONしたことを信号入力回路29を介して検知すると(s204)、カメラ1のCPU20は焦点検出を実行する(s205)。本実施例のカメラ1は、コントラスト方式の焦点検出を実行する。撮影レンズ5の焦点状態を検出する焦点検出手段を兼ねた制御手段であるCPU20は、先に撮像装置10にて撮像された画像のコントラストをAF評価値として算出する。画像のコントラストが低くAF評価値が所定のAF判定レベルより小さい場合は、CPU20は撮影レンズ5は合焦状態ではないと判定して(s206)、レンズ駆動回路26にレンズ駆動信号を送って撮影レンズ5を所定量駆動する(s211)。
【0107】
一方、撮像装置10にて得られた画像のコントラストが高くAF評価値が所定のAF判定レベルより大きい場合は、CPU20は撮影レンズ5は合焦状態と判定して(s206)、信号入力回路29を介してシャッターレリーズスイッチの第2ストロークSW−2が押されたかどうかを確認する。スイッチSW−2がONされていれば(s207)、画像記憶手段であるメモリー回路22に本画像を記憶するための撮像を行う(s208)。
【0108】
次に、図12のフローチャートを用いて本発明のカメラ1の本画像の撮像動作を説明する。
【0109】
制御手段であるCPU20は信号入力回路29を介して撮影モードを選択するためのモードダイヤルの設定状態を確認する。モードダイヤルはカメラ1に付随している。モードダイヤルの構成は第1の実施例と同様で、光学ローパスフィルタ4にて光学ローパス効果を発現させる「on」モードと、光学ローパス効果を発現させず解像度の高い画像を得るための「off」モードと、光学ローパス効果を発現させる/発現させない、をカメラ1が自動的に選択する「auto」モードが設定可能となっている。撮影者は被写体に応じて光学ローパスフィルタ4の光学ローパス効果をon/offを任意に設定可能であるとともに、カメラ1まかせの自動選択モードに設定することが可能となっている。
【0110】
撮影者が撮影モードを選択するためのモードダイヤルを「off」の高解像撮影モードに設定していれば(s221)、制御手段であるCPU20は光学ローパスフィルタ4の複屈折板の回転は行わず、光学ローパスフィルタ4は透明基板として作用する。
【0111】
制御手段であるCPU20は撮像装置制御回路21に撮像信号を送って撮像装置10にて撮像を開始する(s224)。撮像装置制御回路21は撮像装置10に撮像制御信号を送って撮像装置10を制御する。次に、CPU20はシャッター制御回路28に露出情報を送ってシャッター2を開ける(s225)。シャッター制御回路28はシャッター2にシャッター制御信号を送ってシャッター2の動作を制御する。このとき、シャッター2は絞りも兼ねているので、シャッター開時は被写体輝度に対応した所定の開口径で制御される。撮像装置10への露光が行われシャッター2開後所定時間経過すると、CPU20はシャッター制御回路28にシャッター閉信号を送ってシャッター2を閉じさせる(s226)。さらにCPU20は撮像装置制御回路21に撮像終了信号を送信して、撮像装置10による撮像動作を終了する(s227)。このように、光学ローパスフィルタ4に表面弾性波を発生させなければ、撮像装置10の画素数に対応した高解像度の画像を得ることが可能となる。
【0112】
一方、撮影者が撮影モードを選択するためのモードダイヤルを「on」の光学ローパス効果撮影モードに設定していれば(s221)、制御手段であるCPU20は光学ローパスフィルタ4の複屈折板を回転させて光学ローパス効果を発現するモードで撮像動作を行う。光学ローパス効果を発現させる際の複屈折板の光学軸方向は、図16の光学ローパスフィルタ説明図と同様である。
【0113】
CPU20は複屈折板駆動制御回路27に信号を送って、光学ローパスフィルタ4を構成する2枚の複屈折板を回転させる(s222)。複屈折板駆動制御回路27から駆動信号を受けた複屈折板駆動機構40は、図13に示した通常状態の光学ローパスフィルタの配置状態から、第1の複屈折板41及び第2の複屈折板42をそれぞれ回転させる。
【0114】
図15の複屈折板回転機構説明図にて複屈折板の回転方法を説明する。図15(a)は複屈折板回転機構の正面図、図15(b)複屈折板回転機構の側面図である。
【0115】
40は複屈折板駆動機構で、平歯車45、46、47及び不図示のモータにて構成されている。モータは複屈折板駆動制御回路27からの制御信号により駆動制御される。
【0116】
第1の複屈折板41の外周には歯車が形成され平歯車46と噛み合っている。同様に、第2の複屈折板42の外周には歯車が形成され平歯車47と噛み合っている。また、平歯車45は不図示のモータからの回転を伝達するように構成され、平歯車46及び平歯車47と噛み合うことによって複屈折板41と複屈折板42を撮影レンズの光軸を回転中心に同一方向に回転させる。このとき、平歯車46の歯数は平歯車47歯数の半分となっているため、複屈折板41は複屈折板42に対して2倍の角度で回転する。複屈折板駆動制御回路27は、第1の複屈折板41が90度、第2の複屈折板42が45度回転するように不図示のモータの駆動量を制御する。
【0117】
ところで本実施例の光学ローパスフィルタ4は、第1の複屈折板41の回転角を90度、第2の複屈折板42の回転角を45度と小さい回転角にしているため、光学ローパス効果のon/offのための切り換え時間が短くなるとともに、複屈折板駆動機構40の小型化を可能としている。
【0118】
図12の撮像動作フローチャートにおいて、複屈折板駆動機構40によって光学ローパスフィルタ4が光学ローパス効果を発現する配置状態に設定されると(s222)、制御手段であるCPU20は撮像装置制御回路21に撮像信号を送って撮像装置10にて撮像を開始する(s224)。撮像装置制御回路21は撮像装置10に撮像制御信号を送って撮像装置10を制御する。次に、CPU20はシャッター制御回路28に露出情報を送ってシャッター2を開ける(s225)。シャッター制御回路28はシャッター2にシャッター制御信号を送ってシャッター2の動作を制御する。シャッター2開後所定時間経過すると、CPU20はシャッター制御回路28にシャッター閉信号を送ってシャッター2を閉じさせる(s226)。さらにCPU20は撮像装置制御回路21に撮像終了信号を送信して、撮像装置10による撮像動作を終了する(s227)。
【0119】
このとき、光学ローパスフィルタ4は光学ローパス効果を発現しているため、撮像装置10の画素の配列周期で決まる所定の空間周波数より細かな空間周波数成分を含む被写体の場合に生じていたモアレや偽色の発生を防止した、品位の高い画像を得ることが可能となる。
【0120】
撮影動作が終了すると(s227)、CPU20は複屈折板駆動制御回路27に制御信号を送って、図13の光学ローパスフィルタ説明図に示した通常状態の複屈折板配置状態に、第1の複屈折板41及び第2の複屈折板42を回転し復帰させる(s228)。
【0121】
また、カメラ1の撮影者が撮影モードを選択するためのモードダイヤル19を「auto」の自動選択モードに設定していれば(s220)、CPU20は既に撮像されたEVF画像から算出された被写体画像のコントラストに基づいて光学ローパス効果を発現させるかどうかを判定する。CPU20は光学ローパス効果を発現させるかどうかを判定する判定手段を兼ねている。
【0122】
そして、被写体画像のコントラストが低い場合光学ローパス効果を発現させる必要がない、と判定するための光学ローパス効果判定レベルが予め設定されている。
【0123】
被写体画像のコントラストが光学ローパス効果判定レベルより小さい場合は(s223)、判定手段であるCPU20は光学ローパスフィルタ4の複屈折板を回転させずに高解像度の画像が得られる撮影モードで撮像動作を行う。
【0124】
一方、被写体画像のコントラストが光学ローパス効果判定レベルより大きい場合は(s223)、CPU20は光学ローパスフィルタ4の複屈折板を回転させて(s222)、光学ローパス効果が得られる撮影モードで撮像動作を行う。光学ローパスフィルタ4の複屈折板を回転させて光学ローパス効果を得る撮像動作は上述の通りである。
【0125】
このように、光学ローパス効果のon/offを自動的に選択するモードを設定することにより、撮影者のカメラの操作の煩雑性を軽減している。
【0126】
図11のカメラ動作フローチャートにおいて、本画像の撮影動作が終了すると(s208)、撮像装置10にて撮像された画像信号は、撮像装置制御回路21にてA/D変換された後に画像処理回路24にて画像処理が行われる。このとき、撮像装置10からの出力信号に基づいて色再現のために所定の画像処理が行われる。画像処理が行われた画像信号はCPU20を介して液晶表示素子駆動回路25に送られ液晶表示素子9に表示される(s209)。撮影者は接眼レンズ3を通して液晶表示素子9に表示された被写体像を観察することが可能となる。
【0127】
同時に、CPU20は撮像された画像信号をそのままカメラ1の画像記憶手段であるメモリ回路22に記憶する(s210)。
【0128】
撮影動作が終了し、撮影者がメインスイッチをOFFすると(s201)カメラの電源が落ちて待機状態となる(s212)。
【0129】
本実施例では、光学ローパスフィルタを構成する少なくとも2枚の複屈折板を回転させて複屈折板の光学軸を変更することによって、光学ローパス効果をなくす例を示したが、複屈折板を電気光学効果を有するニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等で構成し各複屈折板に電界を印加することにより光学軸を変更するように構成するのも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】カメラの構成図
【図2】カメラの電気回路ブロック図
【図3】カメラ動作フローチャート
【図4】撮像動作のフローチャート
【図5】モードダイヤル説明図
【図6】光学ローパスフィルタの配置説明図
【図7】光線分離説明図
【図8】複屈折板回転機構説明図
【図9】カメラの構成図
【図10】カメラの電気回路ブロック図
【図11】カメラ動作フローチャート
【図12】撮像動作のフローチャート
【図13】光学ローパスフィルタの配置説明図
【図14】光線分離説明図
【図15】複屈折板回転機構説明図
【図16】光学ローパスフィルタの配置説明図
【図17】光線分離説明図
【図18】光学ローパスフィルタのMTF特性図
【符号の説明】
【0131】
1 カメラ
2 シャッター
3 接眼レンズ
4 光学ローパスフィルタ
5 撮影レンズ
9 液晶表示素子
10 撮像装置
20 CPU
21 撮像装置制御回路
22 メモリー回路
23 インターフェイス回路
24 画像処理回路
25 液晶表示素子駆動回路
26 レンズ駆動機構
27 複屈折板駆動制御回路
28 シャッター制御回路
29 信号入力回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズと撮像装置と該撮影レンズと撮像装置との間に配置された光学ローパスフィルタとを有する光学機器において、前記光学ローパスフィルタは撮影レンズの光軸に対して光学軸の方向が異なる3枚の複屈折板からなり、3枚の複屈折板の内、少なくとも2枚の複屈折板はその光学軸をそれぞれ異なる方向に変更可能なように構成されていることを特徴とする光学機器。
【請求項2】
前記光学ローパスフィルタは第1、第2及び第3の複屈折板から構成され、第1及び第3の複屈折板に挟まれた第2の複屈折板に対して第1及び第3の複屈折板が相対的に45度回転することにより、複屈折板の光学軸の方向を変更していることを特徴とする請求項1に記載の光学機器。
【請求項3】
撮影レンズと撮像装置と該撮影レンズと撮像装置との間に配置された光学ローパスフィルタと該光学ローパスフィルタを構成する3枚の複屈折板の内、少なくとも2枚の複屈折板の光学軸をそれぞれ異なる方向に変更する変更手段とを有する光学機器において、前記複屈折板の光学軸を変更するか否かを判定する判定手段を有することを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図18】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−142952(P2007−142952A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−335930(P2005−335930)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】