光学機器
【課題】良好な精度で絞り駆動を行う。
【解決手段】光学機器200は、複数の絞り羽根261により絞り開口262を形成し、アクチュエータ250により複数の絞り羽根を移動させて絞り開口の大きさを変化させる絞り装置204と、絞り開口の大きさを指示する情報に基づいてアクチュエータの駆動を制御するとともに、アクチュエータの駆動速度を制御する制御手段206とを有する。制御手段は、アクチュエータを、該情報により指示された絞り開口の大きさに対応した第1の駆動量に補正駆動量を付加した第2の駆動量だけ駆動するように制御する。制御手段は、アクチュエータの駆動速度が遅いほど補正駆動量を大きくする。
【解決手段】光学機器200は、複数の絞り羽根261により絞り開口262を形成し、アクチュエータ250により複数の絞り羽根を移動させて絞り開口の大きさを変化させる絞り装置204と、絞り開口の大きさを指示する情報に基づいてアクチュエータの駆動を制御するとともに、アクチュエータの駆動速度を制御する制御手段206とを有する。制御手段は、アクチュエータを、該情報により指示された絞り開口の大きさに対応した第1の駆動量に補正駆動量を付加した第2の駆動量だけ駆動するように制御する。制御手段は、アクチュエータの駆動速度が遅いほど補正駆動量を大きくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り装置を備えた光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラや交換レンズに備えられた絞り装置では、複数の絞り羽根の一部同士が互いに重なり合って光通過開口としての絞り開口を形成する。そして、ステッピングモータ等の絞りアクチュエータにより複数の絞り羽根を移動(回動)させることで、絞り開口の大きさ(絞り値)を変化させ、該絞り開口を通過する光量を調節する。
【0003】
図11(a)には、絞りアクチュエータとしてのステッピングモータの駆動ステップ数(横軸)と、絞り値(縦軸)との関係を示している。点線は目標絞り値を示し、駆動ステップ数が多いほど絞り値は大きく(絞り開口の大きさは小さく)なる。実線は目標絞り値に対応する駆動ステップ数だけステッピングモータを駆動した場合において、ステッピングモータの駆動速度が速いときと遅いときに実際に得られる絞り値(実絞り値)を示している。また、図11(b)には、ステッピングモータの駆動ステップ数(横軸)と、目標絞り値に対する実絞り値のエラー量(段数)(縦軸)との関係を示している。
【0004】
絞り開口の大きさが小さくなるほど互いに重なり合った複数の絞り羽根間の接触力が大きくなるため、該複数の絞り羽根を移動させるために必要な駆動力が大きくなる。したがって、エラー量は、絞り開口の大きさが小さくなるほど、またステッピングモータの駆動速度が速いほど(駆動力が小さいほど)大きくなる。また、ステッピングモータを加速した後に減速する場合において、減速率が小さい(緩やかに減速する)ほどエラー量が大きくなる。
【0005】
特許文献1には、各目標絞り値に対する実絞り値の差を示す誤差情報を記憶し、目標絞り値に応じた誤差情報を用いて絞り羽根の駆動位置を補正するようにした光学機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−65592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1にて開示された光学機器では、絞り羽根を移動させるアクチュエータの駆動速度や減速率に応じて目標絞り値と実絞り値との差が変化することを考慮していない。すなわち、アクチュエータの駆動速度や減速率に応じた実絞り値の補正を行うものではない。
【0008】
本発明は、絞り羽根を移動させるアクチュエータの駆動速度や減速率に応じて変化する目標絞り値と実絞り値との差を、いずれの駆動速度や減速率においても小さくすることができるようにした光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としての光学機器は、複数の絞り羽根により絞り開口を形成し、アクチュエータにより複数の絞り羽根を移動させて絞り開口の大きさを変化させる絞り装置と、絞り開口の大きさを指示する情報に基づいてアクチュエータの駆動を制御するとともに、アクチュエータの駆動速度を可変設定する制御手段とを有する。制御手段は、アクチュエータを、該情報により指示された絞り開口の大きさに対応した第1の駆動量に補正駆動量を付加した第2の駆動量だけ駆動するように制御する。そして、制御手段は、アクチュエータの駆動速度が遅いほど補正駆動量を大きくすることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の一側面としての光学機器は、複数の絞り羽根により絞り開口を形成し、アクチュエータにより複数の絞り羽根を移動させて絞り開口の大きさを変化させる絞り装置と、絞り開口の大きさを指示する情報に基づいてアクチュエータの駆動を制御するとともに、アクチュエータの駆動速度を制御する制御手段とを有する。制御手段は、アクチュエータを、該情報により指示された絞り開口の大きさに対応した第1の駆動量に補正駆動量を付加した第2の駆動量だけ駆動するように制御する。また、制御手段は、アクチュエータの加速制御を行った後に停止に向かって減速制御を行う駆動モードとして、減速制御を第1の減速率で行う第1の駆動モードと、減速制御を第1の減速率よりも小さい第2の減速率で行う第2の駆動モードとを有する。そして、制御手段は、第2の駆動モードでの減速制御において、第1の駆動モードでの減速制御よりも、補正駆動量を大きくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、絞り羽根を移動させるアクチュエータの駆動速度や減速率に応じて変化する目標絞り値(情報により指示された絞り開口)と実絞り値との差を、いずれの駆動速度や減速率においても小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1である交換レンズとカメラとを含むカメラシステムの構成を示すブロック図。
【図2】実施例1の交換レンズに搭載された絞りユニットの構成を示す斜視図。
【図3】上記絞りユニットを駆動するステッピングモータ(絞り駆動アクチュエータ)の電磁回路を示す図。
【図4】上記絞りユニットの正面図。
【図5】上記ステッピングモータの1−2相励磁方式での駆動電圧と駆動電流を示す波形図。
【図6】図1のカメラにおける測光処理を示すフローチャート。
【図7】実施例1の交換レンズにおける絞り駆動処理を示すフローチャート。
【図8】実施例1による絞り値のエラー量の減少効果を説明する図。
【図9】本発明の実施例2である交換レンズでの絞りユニットの駆動モードを説明する図。
【図10】実施例2の交換レンズにおける絞り駆動処理を示すフローチャート。
【図11】従来の絞り装置の特性図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0014】
図1には、本発明の実施例である光学機器としての交換レンズ200、および該交換レンズ200が着脱可能に装着される一眼レフデジタルカメラ100により構成されたカメラシステムの構成を示している。
【0015】
カメラ100は、後述する撮影光学系により形成された被写体像を光電変換するCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子14と、該撮像素子14からの出力信号から映像信号を生成する画像処理回路20とを有する。また、カメラ100は、映像信号を用いて映像の明るさ(被写体輝度)を測定する測光回路7や、映像信号のコントラスト状態に基づいて撮影光学系の焦点状態を検出する焦点検出部8を有する。さらに、カメラ100は、映像信号を表示する表示部28と、映像信号を半導体メモリ等の記録媒体に記録する記録部30と、上記各部の動作を制御するCPU等により構成されるカメラマイクロコンピュータ(以下、カメラマイコン)50とを有する。
【0016】
交換レンズ200は、光軸方向に移動して焦点調節を行うフォーカスレンズ201と、光軸方向に移動して変倍を行う変倍レンズ202と、光量を調整する絞りユニット204とを含む撮影光学系を有する。211はフォーカスレンズ201を光軸方向に移動させるフォーカス駆動アクチュエータであり、212は変倍レンズ202を光軸方向に移動させるズーム駆動アクチュエータである。また、250は絞りユニット204を動作させる絞り駆動アクチュエータである。206はレンズマイクロコンピュータ(以下、レンズマイコンという)であり、カメラマイコン50と通信を行いながら、フォーカス駆動アクチュエータ211、ズーム駆動アクチュエータ212および絞り駆動アクチュエータ250の駆動を制御する。
【0017】
次に、図2、図3および図4を用いて、絞りユニット204および絞り駆動アクチュエータ250の構成について説明する。絞りユニット204および絞り駆動アクチュエータ250により絞り装置が構成される。
【0018】
図2に示すように、絞りユニット204は、ベース部材としてのカム板254と、押え板255と、絞り開放検出スイッチ256と、遮光板257が形成された不図示の回動環とを有する。また、絞りユニット204は、図4に示すように複数の絞り羽根261を有する。複数の絞り羽根261は、互いに一部同士が重なり合うように、絞りユニット204の周方向に所定間隔で配置され、それらの中心部に絞り開口262を形成する。複数の絞り羽根261が不図示の軸周りで回動されることにより、絞り開口262の大きさである絞り開口径(絞り値)が変化し、該絞り開口262を通過する光量が調整される。このような絞りユニット204は、いわゆる虹彩型の絞りユニットとも称される。
【0019】
詳しくは後述するが、制御手段としてのレンズマイコン206は、カメラマイコン50から送信されてくる指示情報としての絞り指令信号によって指示される絞り値(指示絞り値)が得られるように、絞り駆動アクチュエータ250の駆動を制御する。また、レンズマイコン206は、絞り指令信号により指示される絞り速度に応じて、絞り駆動アクチュエータ250の駆動速度を可変設定することもできる。
【0020】
上述した回動環は、絞り駆動アクチュエータ250からの駆動力によって回転され、カム板254に形成された不図示のカムを介して複数の絞り羽根を開閉方向に移動(回動)させる。
【0021】
絞り開放検出スイッチ256は、フォトインタラプタにより構成され、遮光板257がフォトインタラプタの発光部と受光部との間に入り込むことによって、絞り羽根が開放位置にあることを示す信号(開放検出信号)を出力する。
【0022】
絞りユニット204は、押え板255に形成された穴部258を利用して交換レンズ200の鏡筒本体(図示せず)に固定されたり、変倍レンズ202を保持する保持枠に取り付けられたりする。
【0023】
絞り駆動アクチュエータ250は、ステッピングモータにより構成され、マグネットロータ251と、ステータ252(252a,252b)と、コイル253(253a,253b)とを有する。
【0024】
図3において、252aはA相ステータであり、253aはA相ステータ252aに巻かれたA相コイルである。252bはB相ステータであり、253bはB相ステータ252bに巻かれたB相コイルである。マグネットロータ251には、その回転方向にN極とS極が交互に着磁されている。
【0025】
A相コイル253aおよびB相コイル253bへの通電状態の切り替えによって、マグネットロータ251に対向するA相ステータ252aおよびB相ステータ252bの磁極が切り替えられ、この結果、マグネットロータ251が回転する。
【0026】
図5には、1−2相励磁方式でのA相コイル253aおよびB相コイル253bに印加される(a)駆動電圧と(b)駆動電流の変化(つまりは励磁パターンの切り替え)を示している。図4の(a)において、AおよびNAはA相コイル253aの端子電圧を、BおよびNBはB相コイル253bの端子電圧を示している。
【0027】
ステッピングモータとしての絞り駆動アクチュエータ250では、絞り羽根が開放位置にあるときの励磁パターンが、図4に示された励磁パターン中の特定励磁パターンと一致するように設定されている。また、絞り駆動アクチュエータ250は、1−2相励磁方式での1ステップの駆動による絞り値の変化量が、1/8段となるように設定されている。さらに、励磁パターンの切り替え時間間隔を変更することにより、絞り駆動アクチュエータ250の駆動速度(つまりは絞り羽根の移動速度)を変更することができる。
【0028】
なお、1−2相励磁方式では、マグネットロータ251をA相ステータ252aとB相ステータ252bの間の位置にて停止させることができる。
【0029】
本実施例にて用いられる絞りユニット204では、カム板254に形成された固定開口の内径によって開放絞り開口径(開放絞り値)を決定する。そして、固定開口の内径側に複数の絞り羽根を突出させることにより、開放絞り開口径より小さい絞り開口径(開放絞り値より大きい絞り値)を得る。
【0030】
絞り駆動アクチュエータ250(つまりは絞り羽根261)の初期位置は、絞り羽根261が固定開口の内周縁よりも外径側に配置される(内径側にはみ出さない)位置に設定されている。本実施例では、この初期位置と、絞り羽根261のうち最も内径側の縁部が固定開口の内周縁にちょうど重なる位置との間の駆動区間を助走区間と定義する。助走区間は、1−2相励磁方式での4ステップの駆動量に相当する。
【0031】
このため、絞りユニット204を開放絞り値から2段だけ絞る場合は、まず絞り駆動アクチュエータ250に対して前述した特定励磁パターンに対応する通電を行う。その後、励磁パターンを切り替えながら、助走区間に相当する駆動量(4ステップ)と2段の絞り込みに相当する駆動量(16ステップ)とを合わせた20ステップだけ絞り駆動アクチュエータ250を駆動する。
【0032】
次に、カメラマイコン50の動作のうち測光に関する処理について、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0033】
ステップS101では、カメラマイコン50は、ユーザによる不図示のシャッタボタンが第1ストローク操作(半押し操作)されたことに応じて、測光回路7を用いた測光動作を行う。具体的には、画像処理回路20から得られる映像信号のうち輝度信号を抽出し、該輝度信号のレベルを検出する。そして、ステップS102では、カメラマイコン50は、検出した輝度信号のレベルに基づいて、絞りユニット204にて設定すべき絞り値(開放絞り値やそれ以外の絞り値)を決定する。この際、絞りユニット204を、設定すべき絞り値に動作させる速度(絞り速度)も決定する。また、カメラマイコン50は、輝度信号のレベルに基づいて、撮像素子14の露光時間(シャッタ時間)も決定する。
【0034】
次に、ステップS103において、カメラマイコン50は、決定した絞り値を指示絞り値として含む絞り指令信号(指示情報)を、レンズマイコン206に対して送信する。絞り指令信号の送信は、ユーザによるシャッタボタンの第2ストローク操作(全押し操作)に応じて行ってもよい。こうして、図6の処理を終了する。
【0035】
次に、カメラマイコン50から絞り指令信号を受信したレンズマイコン206による絞り駆動アクチュエータ250の駆動の制御(絞り駆動処理)について、図7のフローチャートを用いて説明する。
【0036】
ステップS301では、レンズマイコン206は、カメラマイコン50から受信した絞り指令信号に含まれる指示絞り値を判定する。指示絞り値が開放絞り値である場合はステップS302に進み、開放絞り値以外の絞り値(小絞り側の絞り値)である場合はステップS304に進む。
【0037】
ステップS302では、レンズマイコン206は、絞り開放検出スイッチ256から開放検出信号が出力されているか否か、すなわち絞り羽根261が開放位置にあるか否かを検出する。開放位置にある場合は、絞り駆動アクチュエータ250を駆動する必要がないため、図7の処理を終了する。一方、開放位置にない場合は、ステップS303に進む。
【0038】
ステップS303では、レンズマイコン206は、絞り開放検出スイッチ256から開放検出信号が出力されるまで、絞り指令信号にて指示された絞り速度に対応する駆動速度で絞り駆動アクチュエータ250を開放側に駆動する。こうして、絞り羽根261を開放位置まで移動させた後、図7の処理を終了する。
【0039】
ステップS304では、レンズマイコン206は、ステップS302と同様に、絞り羽根261が開放位置にあるか否かを検出する。開放位置にある場合はステップS307に進み、開放位置にない場合(絞り込まれている場合)はステップS305に進む。
【0040】
ステップS305では、レンズマイコン206は、現在の絞り値から指示絞り値までの絞り羽根261の移動量に相当する絞り駆動アクチュエータ250の目標駆動量を、絞り駆動アクチュエータ250の駆動量として設定する。現在の絞り値は、絞り開放検出スイッチ256から開放検出信号が出力されることにより0にリセットされたレンズマイコン206内のカウンタによって、励磁パターンの切り替え回数をカウントすることで検出することができる。そして、ステップS306に進む。
【0041】
ステップS306では、レンズマイコン206は、絞り駆動アクチュエータ250を、ステップS305で設定した駆動量だけ、カメラマイコン50からの絞り指令信号に含まれる指示絞り速度に対応する駆動速度で小絞り側に駆動する。こうして、実際の絞り値が指示絞り値に等しくなると、図7の処理を終了する。なお、小絞り側への駆動中に、絞り羽根261が、これを移動させることが可能な最小絞り位置に達した場合は、絞り駆動アクチュエータ250を初期位置まで駆動し、処理を終了する。
【0042】
ステップS307で、レンズマイコン206は、カメラマイコン50からの絞り指令信号に含まれる指示絞り速度(つまりはこれに対応する絞り駆動アクチュエータ250の駆動速度)が所定速度より速いか否かを判定する。速い場合はステップS308に進み、そうでない場合はステップS309に進む。
【0043】
ステップS308では、レンズマイコン206は、現在の絞り値(開放絞り値)から指示絞り値までの絞り羽根261の移動量に相当する絞り駆動アクチュエータ250の目標駆動量(第1の駆動量)に補正駆動量Aを加算(付加)する。そして、目標駆動量に補正駆動量Aを付加した駆動量(第2の駆動量)を、絞り駆動アクチュエータ250の駆動量として設定する。補正駆動量Aは、図11(b)にて説明した、モータの駆動ステップ数(駆動量)と速い駆動速度に応じた、目標絞り値に対する実絞り値のエラー量を、実測して設定することが好ましい。
【0044】
この後、レンズマイコン206は、ステップS306に進み、絞り駆動アクチュエータ250を、ステップS308で設定した駆動量(第2の駆動量)だけ、指示絞り速度に対応する速い駆動速度で小絞り側に駆動する。こうして、目標絞り値に対する実絞り値のエラー量を無くして(少なくして)、指示絞り値に一致またはごく近い実絞り値を得ると、図7の処理を終了する。
【0045】
ステップS309では、レンズマイコン206は、現在の絞り値(開放絞り値)から指示絞り値までの絞り羽根261の移動量に相当する絞り駆動アクチュエータ250の目標駆動量(第1の駆動量)に補正駆動量Bを加算(付加)する。そして、目標駆動量に補正駆動量Bを付加した駆動量(第2の駆動量)を、絞り駆動アクチュエータ250の駆動量として設定する。補正駆動量Bは、図11(b)にて説明した、モータの駆動ステップ数(駆動量)と遅い駆動速度に応じた、目標絞り値に対する実絞り値のエラー量を、実測して設定することが好ましい。補正駆動量Bは、補正駆動量Aに対して大きい値となる。
【0046】
この後、レンズマイコン206は、ステップS306に進み、絞り駆動アクチュエータ250を、ステップS309で設定した駆動量(第2の駆動量)だけ、指示絞り速度に対応する遅い駆動速度で小絞り側に駆動する。こうして、目標絞り値に対する実絞り値のエラー量を無くして(少なくして)、指示絞り値に一致またはごく近い実絞り値を得ると、図7の処理を終了する。
【0047】
図8には、ステップS308,S309において、補正駆動量Aを4とし、補正駆動量Bを6とした場合の目標絞り値と実絞り値との関係(エラー量)を実線で示している。また、補正駆動量Bを補正駆動量Aと同じ4とした場合のエラー量を点線で示している。
【0048】
図8から分かるように、本実施例では、絞りユニット204を開放絞り値から小絞り側の絞り値に絞り込む際に、絞り駆動アクチュエータ250の駆動速度が遅い場合の補正駆動量Bを速い場合の補正駆動量Aに対して大きくする。これにより、駆動速度が遅い場合のエラー量を少なくすることができる。言い換えれば、絞り駆動アクチュエータ250の駆動速度に応じて補正駆動量を変更することで、該駆動速度にかかわらず、目標絞り値の実絞り値に対するエラー量を少なくすることができ、良好な精度で絞り制御を行うことができる。
【実施例2】
【0049】
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例におけるカメラシステムの構成は、実施例1と同じである。このため、実施例1と共通する構成要素には、実施例1と同符号を付す。
【0050】
実施例1では、絞り駆動アクチュエータ250の駆動速度に応じて補正駆動量を変更する場合について説明した。しかし、目標絞り値に対する実絞り値のエラー量は、絞り駆動アクチュエータ250を加速制御した後に停止に向かって減速制御する場合に、停止時におけるイナーシャの差、言い換えれば減速率の差によっても異なる。特に、絞りユニット204を開放側から小絞り側に絞り込む際において、減速率が小さいほどエラー量が大きくなる。このため、本実施例では、絞り駆動アクチュエータ250の減速率に応じて補正駆動量を変更する例について説明する。
【0051】
図9には、本実施例において設定可能な絞り駆動アクチュエータ250の2つの駆動モードを示す。図9において、横軸は絞り駆動アクチュエータ250の駆動ステップ数(駆動量)を、縦軸は絞り駆動アクチュエータ250の駆動速度を示す。
【0052】
第1の駆動モードは、高速モードであり、絞り駆動アクチュエータ250を第1の加速率で加速制御した後、第1の速度(高速度)で定速駆動制御し、その後、第1の減速率で停止に向けて減速制御するモードである。
【0053】
第2の駆動モードは、絞り駆動アクチュエータ250の駆動に伴って発生する騒音の低減等を目的として設けられた低速モード(低騒音モード)である。カメラが静止画撮影と動画撮影が可能である場合において、動画撮影では、被写体輝度の変化に応じて絞りユニット204の絞り値を変化させ続ける(絞り駆動アクチュエータ250を駆動し続ける)場合が多く、かつ音声も記録する。このため、動画撮影では、低速モードで絞り駆動アクチュエータ250を駆動することで、絞り駆動アクチュエータ250の駆動により発生する騒音をできるだけ少なくする必要がある。低速モードでは、絞り駆動アクチュエータ250を第1の加速率より低い第2の加速率で加速制御した後、第1の速度より低い速度で定速駆動制御し、その後、第1の減速率より低い第2の減速率で停止に向けて減速制御する。
【0054】
以下、高速モードおよび低速モードによって絞りユニット204を開放側から小絞り側に駆動する際に、これらモードでの減速制御における減速率の差に応じて補正駆動量を変更する場合の絞り駆動処理について、図10のフローチャートを用いて説明する。
【0055】
ステップS301〜ステップS305は、実施例1(図7)におけるステップS301〜ステップS305と同じである。
【0056】
ステップS304において、絞り羽根261が開放位置にあると判定した場合は、ステップS310に進み、開放位置にないと判定した場合はステップS305に進む。
【0057】
ステップS310では、レンズマイコン206は、絞り駆動アクチュエータ250の駆動モードが高速モードか低速モードかを判定する。このとき、カメラの撮影モードが、静止画撮影モードか動画撮影モードかを判定してもよい。高速モード(静止画撮影モード)の場合はステップS311に進み、低速モード(動画撮影モード)の場合はステップ312に進む。
【0058】
ステップS311では、レンズマイコン206は、現在の絞り値(開放絞り値)から指示絞り値までの絞り羽根261の移動量に相当する絞り駆動アクチュエータ250の目標駆動量(第1の駆動量)に補正駆動量Aを加算(付加)する。そして、目標駆動量に補正駆動量Aを付加した駆動量(第2の駆動量)を、絞り駆動アクチュエータ250の駆動量として設定する。補正駆動量Aは、絞りユニット204を開放絞り値から各絞り値に絞り込む際に絞り駆動アクチュエータ250を高速モードで駆動したときの減速率(第1の減速率)に応じたエラー量を、実測して設定することが好ましい。
【0059】
この後、レンズマイコン206は、ステップS306に進み、絞り駆動アクチュエータ250を、ステップS311で設定した駆動量(第2の駆動量)だけ、高速モードで開放側から小絞り側に駆動する。こうして、目標絞り値に対する実絞り値のエラー量を無くして(少なくして)、指示絞り値に一致またはごく近い実絞り値を得ると、図10の処理を終了する。
【0060】
ステップS312では、レンズマイコン206は、現在の絞り値(開放絞り値)から指示絞り値までの絞り羽根261の移動量に相当する絞り駆動アクチュエータ250の目標駆動量(第1の駆動量)に補正駆動量Bを加算(付加)する。そして、目標駆動量に補正駆動量Bを付加した駆動量(第2の駆動量)を、絞り駆動アクチュエータ250の駆動量として設定する。補正駆動量Bは、絞りユニット204を開放絞り値から各絞り値に絞り込む際に絞り駆動アクチュエータ250を低速モードで駆動したときの減速率(第2の減速率)に応じたエラー量を、実測して設定することが好ましい。補正駆動量Bは、補正駆動量Aに対して大きい値となる。
【0061】
この後、レンズマイコン206は、ステップS306に進み、絞り駆動アクチュエータ250を、ステップS312で設定した駆動量(第2の駆動量)だけ、低速モードで開放側から小絞り側に駆動する。こうして、目標絞り値に対する実絞り値のエラー量を無くして(少なくして)、指示絞り値に一致またはごく近い実絞り値を得ると、図10の処理を終了する。
【0062】
このように、本実施例によれば、絞り駆動アクチュエータ250の減速率に応じて補正駆動量を変更することで、該減速率にかかわらず、目標絞り値の実絞り値に対するエラー量を少なくすることができ、良好な精度で絞り制御を行うことができる。
【0063】
なお、上記各実施例では、絞りユニットが搭載された交換レンズについて説明したが、本発明は、絞りユニットを含む撮影光学系が一体に設けられたデジタルスチルカメラやビデオカメラ等の多の光学機器にも適用することができる。
【0064】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
良好な精度で絞り制御が行えるカメラや交換レンズ等の光学機器を提供できる。
【符号の説明】
【0066】
100 カメラ
200 交換レンズ
204 絞りユニット
206 レンズマイクロコンピュータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り装置を備えた光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラや交換レンズに備えられた絞り装置では、複数の絞り羽根の一部同士が互いに重なり合って光通過開口としての絞り開口を形成する。そして、ステッピングモータ等の絞りアクチュエータにより複数の絞り羽根を移動(回動)させることで、絞り開口の大きさ(絞り値)を変化させ、該絞り開口を通過する光量を調節する。
【0003】
図11(a)には、絞りアクチュエータとしてのステッピングモータの駆動ステップ数(横軸)と、絞り値(縦軸)との関係を示している。点線は目標絞り値を示し、駆動ステップ数が多いほど絞り値は大きく(絞り開口の大きさは小さく)なる。実線は目標絞り値に対応する駆動ステップ数だけステッピングモータを駆動した場合において、ステッピングモータの駆動速度が速いときと遅いときに実際に得られる絞り値(実絞り値)を示している。また、図11(b)には、ステッピングモータの駆動ステップ数(横軸)と、目標絞り値に対する実絞り値のエラー量(段数)(縦軸)との関係を示している。
【0004】
絞り開口の大きさが小さくなるほど互いに重なり合った複数の絞り羽根間の接触力が大きくなるため、該複数の絞り羽根を移動させるために必要な駆動力が大きくなる。したがって、エラー量は、絞り開口の大きさが小さくなるほど、またステッピングモータの駆動速度が速いほど(駆動力が小さいほど)大きくなる。また、ステッピングモータを加速した後に減速する場合において、減速率が小さい(緩やかに減速する)ほどエラー量が大きくなる。
【0005】
特許文献1には、各目標絞り値に対する実絞り値の差を示す誤差情報を記憶し、目標絞り値に応じた誤差情報を用いて絞り羽根の駆動位置を補正するようにした光学機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−65592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1にて開示された光学機器では、絞り羽根を移動させるアクチュエータの駆動速度や減速率に応じて目標絞り値と実絞り値との差が変化することを考慮していない。すなわち、アクチュエータの駆動速度や減速率に応じた実絞り値の補正を行うものではない。
【0008】
本発明は、絞り羽根を移動させるアクチュエータの駆動速度や減速率に応じて変化する目標絞り値と実絞り値との差を、いずれの駆動速度や減速率においても小さくすることができるようにした光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としての光学機器は、複数の絞り羽根により絞り開口を形成し、アクチュエータにより複数の絞り羽根を移動させて絞り開口の大きさを変化させる絞り装置と、絞り開口の大きさを指示する情報に基づいてアクチュエータの駆動を制御するとともに、アクチュエータの駆動速度を可変設定する制御手段とを有する。制御手段は、アクチュエータを、該情報により指示された絞り開口の大きさに対応した第1の駆動量に補正駆動量を付加した第2の駆動量だけ駆動するように制御する。そして、制御手段は、アクチュエータの駆動速度が遅いほど補正駆動量を大きくすることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の一側面としての光学機器は、複数の絞り羽根により絞り開口を形成し、アクチュエータにより複数の絞り羽根を移動させて絞り開口の大きさを変化させる絞り装置と、絞り開口の大きさを指示する情報に基づいてアクチュエータの駆動を制御するとともに、アクチュエータの駆動速度を制御する制御手段とを有する。制御手段は、アクチュエータを、該情報により指示された絞り開口の大きさに対応した第1の駆動量に補正駆動量を付加した第2の駆動量だけ駆動するように制御する。また、制御手段は、アクチュエータの加速制御を行った後に停止に向かって減速制御を行う駆動モードとして、減速制御を第1の減速率で行う第1の駆動モードと、減速制御を第1の減速率よりも小さい第2の減速率で行う第2の駆動モードとを有する。そして、制御手段は、第2の駆動モードでの減速制御において、第1の駆動モードでの減速制御よりも、補正駆動量を大きくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、絞り羽根を移動させるアクチュエータの駆動速度や減速率に応じて変化する目標絞り値(情報により指示された絞り開口)と実絞り値との差を、いずれの駆動速度や減速率においても小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1である交換レンズとカメラとを含むカメラシステムの構成を示すブロック図。
【図2】実施例1の交換レンズに搭載された絞りユニットの構成を示す斜視図。
【図3】上記絞りユニットを駆動するステッピングモータ(絞り駆動アクチュエータ)の電磁回路を示す図。
【図4】上記絞りユニットの正面図。
【図5】上記ステッピングモータの1−2相励磁方式での駆動電圧と駆動電流を示す波形図。
【図6】図1のカメラにおける測光処理を示すフローチャート。
【図7】実施例1の交換レンズにおける絞り駆動処理を示すフローチャート。
【図8】実施例1による絞り値のエラー量の減少効果を説明する図。
【図9】本発明の実施例2である交換レンズでの絞りユニットの駆動モードを説明する図。
【図10】実施例2の交換レンズにおける絞り駆動処理を示すフローチャート。
【図11】従来の絞り装置の特性図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0014】
図1には、本発明の実施例である光学機器としての交換レンズ200、および該交換レンズ200が着脱可能に装着される一眼レフデジタルカメラ100により構成されたカメラシステムの構成を示している。
【0015】
カメラ100は、後述する撮影光学系により形成された被写体像を光電変換するCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子14と、該撮像素子14からの出力信号から映像信号を生成する画像処理回路20とを有する。また、カメラ100は、映像信号を用いて映像の明るさ(被写体輝度)を測定する測光回路7や、映像信号のコントラスト状態に基づいて撮影光学系の焦点状態を検出する焦点検出部8を有する。さらに、カメラ100は、映像信号を表示する表示部28と、映像信号を半導体メモリ等の記録媒体に記録する記録部30と、上記各部の動作を制御するCPU等により構成されるカメラマイクロコンピュータ(以下、カメラマイコン)50とを有する。
【0016】
交換レンズ200は、光軸方向に移動して焦点調節を行うフォーカスレンズ201と、光軸方向に移動して変倍を行う変倍レンズ202と、光量を調整する絞りユニット204とを含む撮影光学系を有する。211はフォーカスレンズ201を光軸方向に移動させるフォーカス駆動アクチュエータであり、212は変倍レンズ202を光軸方向に移動させるズーム駆動アクチュエータである。また、250は絞りユニット204を動作させる絞り駆動アクチュエータである。206はレンズマイクロコンピュータ(以下、レンズマイコンという)であり、カメラマイコン50と通信を行いながら、フォーカス駆動アクチュエータ211、ズーム駆動アクチュエータ212および絞り駆動アクチュエータ250の駆動を制御する。
【0017】
次に、図2、図3および図4を用いて、絞りユニット204および絞り駆動アクチュエータ250の構成について説明する。絞りユニット204および絞り駆動アクチュエータ250により絞り装置が構成される。
【0018】
図2に示すように、絞りユニット204は、ベース部材としてのカム板254と、押え板255と、絞り開放検出スイッチ256と、遮光板257が形成された不図示の回動環とを有する。また、絞りユニット204は、図4に示すように複数の絞り羽根261を有する。複数の絞り羽根261は、互いに一部同士が重なり合うように、絞りユニット204の周方向に所定間隔で配置され、それらの中心部に絞り開口262を形成する。複数の絞り羽根261が不図示の軸周りで回動されることにより、絞り開口262の大きさである絞り開口径(絞り値)が変化し、該絞り開口262を通過する光量が調整される。このような絞りユニット204は、いわゆる虹彩型の絞りユニットとも称される。
【0019】
詳しくは後述するが、制御手段としてのレンズマイコン206は、カメラマイコン50から送信されてくる指示情報としての絞り指令信号によって指示される絞り値(指示絞り値)が得られるように、絞り駆動アクチュエータ250の駆動を制御する。また、レンズマイコン206は、絞り指令信号により指示される絞り速度に応じて、絞り駆動アクチュエータ250の駆動速度を可変設定することもできる。
【0020】
上述した回動環は、絞り駆動アクチュエータ250からの駆動力によって回転され、カム板254に形成された不図示のカムを介して複数の絞り羽根を開閉方向に移動(回動)させる。
【0021】
絞り開放検出スイッチ256は、フォトインタラプタにより構成され、遮光板257がフォトインタラプタの発光部と受光部との間に入り込むことによって、絞り羽根が開放位置にあることを示す信号(開放検出信号)を出力する。
【0022】
絞りユニット204は、押え板255に形成された穴部258を利用して交換レンズ200の鏡筒本体(図示せず)に固定されたり、変倍レンズ202を保持する保持枠に取り付けられたりする。
【0023】
絞り駆動アクチュエータ250は、ステッピングモータにより構成され、マグネットロータ251と、ステータ252(252a,252b)と、コイル253(253a,253b)とを有する。
【0024】
図3において、252aはA相ステータであり、253aはA相ステータ252aに巻かれたA相コイルである。252bはB相ステータであり、253bはB相ステータ252bに巻かれたB相コイルである。マグネットロータ251には、その回転方向にN極とS極が交互に着磁されている。
【0025】
A相コイル253aおよびB相コイル253bへの通電状態の切り替えによって、マグネットロータ251に対向するA相ステータ252aおよびB相ステータ252bの磁極が切り替えられ、この結果、マグネットロータ251が回転する。
【0026】
図5には、1−2相励磁方式でのA相コイル253aおよびB相コイル253bに印加される(a)駆動電圧と(b)駆動電流の変化(つまりは励磁パターンの切り替え)を示している。図4の(a)において、AおよびNAはA相コイル253aの端子電圧を、BおよびNBはB相コイル253bの端子電圧を示している。
【0027】
ステッピングモータとしての絞り駆動アクチュエータ250では、絞り羽根が開放位置にあるときの励磁パターンが、図4に示された励磁パターン中の特定励磁パターンと一致するように設定されている。また、絞り駆動アクチュエータ250は、1−2相励磁方式での1ステップの駆動による絞り値の変化量が、1/8段となるように設定されている。さらに、励磁パターンの切り替え時間間隔を変更することにより、絞り駆動アクチュエータ250の駆動速度(つまりは絞り羽根の移動速度)を変更することができる。
【0028】
なお、1−2相励磁方式では、マグネットロータ251をA相ステータ252aとB相ステータ252bの間の位置にて停止させることができる。
【0029】
本実施例にて用いられる絞りユニット204では、カム板254に形成された固定開口の内径によって開放絞り開口径(開放絞り値)を決定する。そして、固定開口の内径側に複数の絞り羽根を突出させることにより、開放絞り開口径より小さい絞り開口径(開放絞り値より大きい絞り値)を得る。
【0030】
絞り駆動アクチュエータ250(つまりは絞り羽根261)の初期位置は、絞り羽根261が固定開口の内周縁よりも外径側に配置される(内径側にはみ出さない)位置に設定されている。本実施例では、この初期位置と、絞り羽根261のうち最も内径側の縁部が固定開口の内周縁にちょうど重なる位置との間の駆動区間を助走区間と定義する。助走区間は、1−2相励磁方式での4ステップの駆動量に相当する。
【0031】
このため、絞りユニット204を開放絞り値から2段だけ絞る場合は、まず絞り駆動アクチュエータ250に対して前述した特定励磁パターンに対応する通電を行う。その後、励磁パターンを切り替えながら、助走区間に相当する駆動量(4ステップ)と2段の絞り込みに相当する駆動量(16ステップ)とを合わせた20ステップだけ絞り駆動アクチュエータ250を駆動する。
【0032】
次に、カメラマイコン50の動作のうち測光に関する処理について、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0033】
ステップS101では、カメラマイコン50は、ユーザによる不図示のシャッタボタンが第1ストローク操作(半押し操作)されたことに応じて、測光回路7を用いた測光動作を行う。具体的には、画像処理回路20から得られる映像信号のうち輝度信号を抽出し、該輝度信号のレベルを検出する。そして、ステップS102では、カメラマイコン50は、検出した輝度信号のレベルに基づいて、絞りユニット204にて設定すべき絞り値(開放絞り値やそれ以外の絞り値)を決定する。この際、絞りユニット204を、設定すべき絞り値に動作させる速度(絞り速度)も決定する。また、カメラマイコン50は、輝度信号のレベルに基づいて、撮像素子14の露光時間(シャッタ時間)も決定する。
【0034】
次に、ステップS103において、カメラマイコン50は、決定した絞り値を指示絞り値として含む絞り指令信号(指示情報)を、レンズマイコン206に対して送信する。絞り指令信号の送信は、ユーザによるシャッタボタンの第2ストローク操作(全押し操作)に応じて行ってもよい。こうして、図6の処理を終了する。
【0035】
次に、カメラマイコン50から絞り指令信号を受信したレンズマイコン206による絞り駆動アクチュエータ250の駆動の制御(絞り駆動処理)について、図7のフローチャートを用いて説明する。
【0036】
ステップS301では、レンズマイコン206は、カメラマイコン50から受信した絞り指令信号に含まれる指示絞り値を判定する。指示絞り値が開放絞り値である場合はステップS302に進み、開放絞り値以外の絞り値(小絞り側の絞り値)である場合はステップS304に進む。
【0037】
ステップS302では、レンズマイコン206は、絞り開放検出スイッチ256から開放検出信号が出力されているか否か、すなわち絞り羽根261が開放位置にあるか否かを検出する。開放位置にある場合は、絞り駆動アクチュエータ250を駆動する必要がないため、図7の処理を終了する。一方、開放位置にない場合は、ステップS303に進む。
【0038】
ステップS303では、レンズマイコン206は、絞り開放検出スイッチ256から開放検出信号が出力されるまで、絞り指令信号にて指示された絞り速度に対応する駆動速度で絞り駆動アクチュエータ250を開放側に駆動する。こうして、絞り羽根261を開放位置まで移動させた後、図7の処理を終了する。
【0039】
ステップS304では、レンズマイコン206は、ステップS302と同様に、絞り羽根261が開放位置にあるか否かを検出する。開放位置にある場合はステップS307に進み、開放位置にない場合(絞り込まれている場合)はステップS305に進む。
【0040】
ステップS305では、レンズマイコン206は、現在の絞り値から指示絞り値までの絞り羽根261の移動量に相当する絞り駆動アクチュエータ250の目標駆動量を、絞り駆動アクチュエータ250の駆動量として設定する。現在の絞り値は、絞り開放検出スイッチ256から開放検出信号が出力されることにより0にリセットされたレンズマイコン206内のカウンタによって、励磁パターンの切り替え回数をカウントすることで検出することができる。そして、ステップS306に進む。
【0041】
ステップS306では、レンズマイコン206は、絞り駆動アクチュエータ250を、ステップS305で設定した駆動量だけ、カメラマイコン50からの絞り指令信号に含まれる指示絞り速度に対応する駆動速度で小絞り側に駆動する。こうして、実際の絞り値が指示絞り値に等しくなると、図7の処理を終了する。なお、小絞り側への駆動中に、絞り羽根261が、これを移動させることが可能な最小絞り位置に達した場合は、絞り駆動アクチュエータ250を初期位置まで駆動し、処理を終了する。
【0042】
ステップS307で、レンズマイコン206は、カメラマイコン50からの絞り指令信号に含まれる指示絞り速度(つまりはこれに対応する絞り駆動アクチュエータ250の駆動速度)が所定速度より速いか否かを判定する。速い場合はステップS308に進み、そうでない場合はステップS309に進む。
【0043】
ステップS308では、レンズマイコン206は、現在の絞り値(開放絞り値)から指示絞り値までの絞り羽根261の移動量に相当する絞り駆動アクチュエータ250の目標駆動量(第1の駆動量)に補正駆動量Aを加算(付加)する。そして、目標駆動量に補正駆動量Aを付加した駆動量(第2の駆動量)を、絞り駆動アクチュエータ250の駆動量として設定する。補正駆動量Aは、図11(b)にて説明した、モータの駆動ステップ数(駆動量)と速い駆動速度に応じた、目標絞り値に対する実絞り値のエラー量を、実測して設定することが好ましい。
【0044】
この後、レンズマイコン206は、ステップS306に進み、絞り駆動アクチュエータ250を、ステップS308で設定した駆動量(第2の駆動量)だけ、指示絞り速度に対応する速い駆動速度で小絞り側に駆動する。こうして、目標絞り値に対する実絞り値のエラー量を無くして(少なくして)、指示絞り値に一致またはごく近い実絞り値を得ると、図7の処理を終了する。
【0045】
ステップS309では、レンズマイコン206は、現在の絞り値(開放絞り値)から指示絞り値までの絞り羽根261の移動量に相当する絞り駆動アクチュエータ250の目標駆動量(第1の駆動量)に補正駆動量Bを加算(付加)する。そして、目標駆動量に補正駆動量Bを付加した駆動量(第2の駆動量)を、絞り駆動アクチュエータ250の駆動量として設定する。補正駆動量Bは、図11(b)にて説明した、モータの駆動ステップ数(駆動量)と遅い駆動速度に応じた、目標絞り値に対する実絞り値のエラー量を、実測して設定することが好ましい。補正駆動量Bは、補正駆動量Aに対して大きい値となる。
【0046】
この後、レンズマイコン206は、ステップS306に進み、絞り駆動アクチュエータ250を、ステップS309で設定した駆動量(第2の駆動量)だけ、指示絞り速度に対応する遅い駆動速度で小絞り側に駆動する。こうして、目標絞り値に対する実絞り値のエラー量を無くして(少なくして)、指示絞り値に一致またはごく近い実絞り値を得ると、図7の処理を終了する。
【0047】
図8には、ステップS308,S309において、補正駆動量Aを4とし、補正駆動量Bを6とした場合の目標絞り値と実絞り値との関係(エラー量)を実線で示している。また、補正駆動量Bを補正駆動量Aと同じ4とした場合のエラー量を点線で示している。
【0048】
図8から分かるように、本実施例では、絞りユニット204を開放絞り値から小絞り側の絞り値に絞り込む際に、絞り駆動アクチュエータ250の駆動速度が遅い場合の補正駆動量Bを速い場合の補正駆動量Aに対して大きくする。これにより、駆動速度が遅い場合のエラー量を少なくすることができる。言い換えれば、絞り駆動アクチュエータ250の駆動速度に応じて補正駆動量を変更することで、該駆動速度にかかわらず、目標絞り値の実絞り値に対するエラー量を少なくすることができ、良好な精度で絞り制御を行うことができる。
【実施例2】
【0049】
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例におけるカメラシステムの構成は、実施例1と同じである。このため、実施例1と共通する構成要素には、実施例1と同符号を付す。
【0050】
実施例1では、絞り駆動アクチュエータ250の駆動速度に応じて補正駆動量を変更する場合について説明した。しかし、目標絞り値に対する実絞り値のエラー量は、絞り駆動アクチュエータ250を加速制御した後に停止に向かって減速制御する場合に、停止時におけるイナーシャの差、言い換えれば減速率の差によっても異なる。特に、絞りユニット204を開放側から小絞り側に絞り込む際において、減速率が小さいほどエラー量が大きくなる。このため、本実施例では、絞り駆動アクチュエータ250の減速率に応じて補正駆動量を変更する例について説明する。
【0051】
図9には、本実施例において設定可能な絞り駆動アクチュエータ250の2つの駆動モードを示す。図9において、横軸は絞り駆動アクチュエータ250の駆動ステップ数(駆動量)を、縦軸は絞り駆動アクチュエータ250の駆動速度を示す。
【0052】
第1の駆動モードは、高速モードであり、絞り駆動アクチュエータ250を第1の加速率で加速制御した後、第1の速度(高速度)で定速駆動制御し、その後、第1の減速率で停止に向けて減速制御するモードである。
【0053】
第2の駆動モードは、絞り駆動アクチュエータ250の駆動に伴って発生する騒音の低減等を目的として設けられた低速モード(低騒音モード)である。カメラが静止画撮影と動画撮影が可能である場合において、動画撮影では、被写体輝度の変化に応じて絞りユニット204の絞り値を変化させ続ける(絞り駆動アクチュエータ250を駆動し続ける)場合が多く、かつ音声も記録する。このため、動画撮影では、低速モードで絞り駆動アクチュエータ250を駆動することで、絞り駆動アクチュエータ250の駆動により発生する騒音をできるだけ少なくする必要がある。低速モードでは、絞り駆動アクチュエータ250を第1の加速率より低い第2の加速率で加速制御した後、第1の速度より低い速度で定速駆動制御し、その後、第1の減速率より低い第2の減速率で停止に向けて減速制御する。
【0054】
以下、高速モードおよび低速モードによって絞りユニット204を開放側から小絞り側に駆動する際に、これらモードでの減速制御における減速率の差に応じて補正駆動量を変更する場合の絞り駆動処理について、図10のフローチャートを用いて説明する。
【0055】
ステップS301〜ステップS305は、実施例1(図7)におけるステップS301〜ステップS305と同じである。
【0056】
ステップS304において、絞り羽根261が開放位置にあると判定した場合は、ステップS310に進み、開放位置にないと判定した場合はステップS305に進む。
【0057】
ステップS310では、レンズマイコン206は、絞り駆動アクチュエータ250の駆動モードが高速モードか低速モードかを判定する。このとき、カメラの撮影モードが、静止画撮影モードか動画撮影モードかを判定してもよい。高速モード(静止画撮影モード)の場合はステップS311に進み、低速モード(動画撮影モード)の場合はステップ312に進む。
【0058】
ステップS311では、レンズマイコン206は、現在の絞り値(開放絞り値)から指示絞り値までの絞り羽根261の移動量に相当する絞り駆動アクチュエータ250の目標駆動量(第1の駆動量)に補正駆動量Aを加算(付加)する。そして、目標駆動量に補正駆動量Aを付加した駆動量(第2の駆動量)を、絞り駆動アクチュエータ250の駆動量として設定する。補正駆動量Aは、絞りユニット204を開放絞り値から各絞り値に絞り込む際に絞り駆動アクチュエータ250を高速モードで駆動したときの減速率(第1の減速率)に応じたエラー量を、実測して設定することが好ましい。
【0059】
この後、レンズマイコン206は、ステップS306に進み、絞り駆動アクチュエータ250を、ステップS311で設定した駆動量(第2の駆動量)だけ、高速モードで開放側から小絞り側に駆動する。こうして、目標絞り値に対する実絞り値のエラー量を無くして(少なくして)、指示絞り値に一致またはごく近い実絞り値を得ると、図10の処理を終了する。
【0060】
ステップS312では、レンズマイコン206は、現在の絞り値(開放絞り値)から指示絞り値までの絞り羽根261の移動量に相当する絞り駆動アクチュエータ250の目標駆動量(第1の駆動量)に補正駆動量Bを加算(付加)する。そして、目標駆動量に補正駆動量Bを付加した駆動量(第2の駆動量)を、絞り駆動アクチュエータ250の駆動量として設定する。補正駆動量Bは、絞りユニット204を開放絞り値から各絞り値に絞り込む際に絞り駆動アクチュエータ250を低速モードで駆動したときの減速率(第2の減速率)に応じたエラー量を、実測して設定することが好ましい。補正駆動量Bは、補正駆動量Aに対して大きい値となる。
【0061】
この後、レンズマイコン206は、ステップS306に進み、絞り駆動アクチュエータ250を、ステップS312で設定した駆動量(第2の駆動量)だけ、低速モードで開放側から小絞り側に駆動する。こうして、目標絞り値に対する実絞り値のエラー量を無くして(少なくして)、指示絞り値に一致またはごく近い実絞り値を得ると、図10の処理を終了する。
【0062】
このように、本実施例によれば、絞り駆動アクチュエータ250の減速率に応じて補正駆動量を変更することで、該減速率にかかわらず、目標絞り値の実絞り値に対するエラー量を少なくすることができ、良好な精度で絞り制御を行うことができる。
【0063】
なお、上記各実施例では、絞りユニットが搭載された交換レンズについて説明したが、本発明は、絞りユニットを含む撮影光学系が一体に設けられたデジタルスチルカメラやビデオカメラ等の多の光学機器にも適用することができる。
【0064】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
良好な精度で絞り制御が行えるカメラや交換レンズ等の光学機器を提供できる。
【符号の説明】
【0066】
100 カメラ
200 交換レンズ
204 絞りユニット
206 レンズマイクロコンピュータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絞り羽根により絞り開口を形成し、アクチュエータにより前記複数の絞り羽根を移動させて前記絞り開口の大きさを変化させる絞り装置と、
前記絞り開口の大きさを指示する情報に基づいて前記アクチュエータの駆動を制御するとともに、前記アクチュエータの駆動速度を可変設定する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記アクチュエータを、前記情報により指示された前記絞り開口の大きさに対応した第1の駆動量に補正駆動量を付加した第2の駆動量だけ駆動するように制御し、
前記制御手段は、前記アクチュエータの駆動速度が遅いほど前記補正駆動量を大きくすることを特徴とする光学機器。
【請求項2】
複数の絞り羽根により絞り開口を形成し、アクチュエータにより前記複数の絞り羽根を移動させて前記絞り開口の大きさを変化させる絞り装置と、
前記絞り開口の大きさを指示する情報に基づいて前記アクチュエータの駆動を制御するとともに、前記アクチュエータの駆動速度を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記アクチュエータを、前記情報により指示された前記絞り開口の大きさに対応した第1の駆動量に補正駆動量を付加した第2の駆動量だけ駆動するように制御し、
前記制御手段は、前記アクチュエータの加速制御を行った後に停止に向かって減速制御を行う駆動モードとして、前記減速制御を第1の減速率で行う第1の駆動モードと、前記減速制御を前記第1の減速率よりも小さい第2の減速率で行う第2の駆動モードとを有し、
前記制御手段は、前記第2の駆動モードでの前記減速制御において、前記第1の駆動モードでの前記減速制御よりも、前記補正駆動量を大きくすることを特徴とする光学機器。
【請求項1】
複数の絞り羽根により絞り開口を形成し、アクチュエータにより前記複数の絞り羽根を移動させて前記絞り開口の大きさを変化させる絞り装置と、
前記絞り開口の大きさを指示する情報に基づいて前記アクチュエータの駆動を制御するとともに、前記アクチュエータの駆動速度を可変設定する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記アクチュエータを、前記情報により指示された前記絞り開口の大きさに対応した第1の駆動量に補正駆動量を付加した第2の駆動量だけ駆動するように制御し、
前記制御手段は、前記アクチュエータの駆動速度が遅いほど前記補正駆動量を大きくすることを特徴とする光学機器。
【請求項2】
複数の絞り羽根により絞り開口を形成し、アクチュエータにより前記複数の絞り羽根を移動させて前記絞り開口の大きさを変化させる絞り装置と、
前記絞り開口の大きさを指示する情報に基づいて前記アクチュエータの駆動を制御するとともに、前記アクチュエータの駆動速度を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記アクチュエータを、前記情報により指示された前記絞り開口の大きさに対応した第1の駆動量に補正駆動量を付加した第2の駆動量だけ駆動するように制御し、
前記制御手段は、前記アクチュエータの加速制御を行った後に停止に向かって減速制御を行う駆動モードとして、前記減速制御を第1の減速率で行う第1の駆動モードと、前記減速制御を前記第1の減速率よりも小さい第2の減速率で行う第2の駆動モードとを有し、
前記制御手段は、前記第2の駆動モードでの前記減速制御において、前記第1の駆動モードでの前記減速制御よりも、前記補正駆動量を大きくすることを特徴とする光学機器。
【図2】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−13896(P2012−13896A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149526(P2010−149526)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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