説明

光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体の製造方法

【課題】医薬の重要中間体である光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体の効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】トリフルオロメチルケトン誘導体を触媒量の光学活性含窒素多座配位子の存在下にアルキル亜鉛試薬と反応させることにより光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体を製造する。本発明の製造方法は、選択性が高く分離の難しい不純物を殆ど副生しないため、光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体を効率的に製造するための極めて有用な方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の重要中間体である光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明で対象とする光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体はトリフルオロメチル基を有する光学活性な第三級アルコールであり、本発明で対象とする製造方法はトリフルオロメチルケトン基に対する炭素求核剤のエナンチオ選択的な付加反応に分類される。その代表的な従来技術として以下の三つを挙げることができる。1)不斉配位子として糖誘導体を2分子有するシクロペンタジエニルアリルチタン試薬によるトリフルオロメチルケトン誘導体への不斉アリル化反応(特許文献1)、2)不斉配位子としてエフェドリン誘導体の存在下、リチウムアセチリド誘導体によるトリフルオロメチルケトン誘導体への不斉アセチリド付加反応(非特許文献1)と、3)不斉配位子としてキナアルカロイドの存在下、アリルインジウム試薬によるトリフルオロメチルケトン誘導体への不斉アリル化反応(非特許文献2)が開示されている。
【特許文献1】特開昭63−035593号公報
【非特許文献1】Tetrahedron Letters(英国),1995年,第36巻,p.8937−8940
【非特許文献2】Tetrahedron Letters(英国),1999年,第40巻,p.9333−9336
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、医薬の重要中間体である光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体の効率的な製造方法を提供することにある。
【0004】
特許文献1の製造方法では、不斉配位子として糖誘導体を2分子有するシクロペンタジエニルアリルチタン試薬の調製が煩雑で、さらに該不斉試薬を量論的に使用する必要があった。またトリフルオロメチルケトン誘導体に対して適用された炭素求核剤としては、アリル基のみが開示されていた。本手法の様に糖誘導体を不斉配位子として使用する不斉反応では、非天然型の糖誘導体を容易に入手することができず、目的とする生成物の両鏡像体を得ることが困難であった。非特許文献1の製造方法でも、不斉配位子としてエフェドリン誘導体をトリフルオロメチルケトン誘導体に対して量論的に使用する必要があった。さらに非特許文献2の製造方法でも、不斉配位子としてキナアルカロイドを量論的に使用する必要があり、また高価なインジウムも量論的に使用する必要があった。また本手法では環境的に使用が制限されている塩化メチレンを好適な反応溶媒として使用していた。
【0005】
この様に、不斉配位子を量論的に使用して不斉アリル化や不斉アセチリド付加反応を行う手法は既に開示されているが、本発明で対象とする不斉配位子を触媒的に使用する不斉アルキル化は未だ開示されておらず、炭素求核剤のエナンチオ選択的な付加反応による光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体の効率的な製造方法が強く望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、トリフルオロメチルケトン誘導体を、触媒量の光学活性含窒素多座配位子の存在下に、アルキル亜鉛試薬と反応させることにより光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体が製造できることを明らかにした。本製造方法の特徴は、触媒量の光学活性含窒素多座配位子の存在下に、アルキル亜鉛試薬で不斉アルキル化を行うというもので、特に光学活性ビス2−オキサゾリン型配位子とジアルキル亜鉛の組み合わせが好適であることを見出した。
【0007】
本発明の基質であるトリフルオロメチルケトン誘導体に対して、該不斉配位子とアルキル化剤の組み合わせが好適であることを見出した過程について、参考例1から参考例9の結果を基に説明すると、トリフルオロメチルケトン誘導体とアルキル亜鉛試薬を混ぜるだけでは目的とする付加体は全く得られず、反応温度を上げた場合には還元体が収率良く得られるだけであった(参考例1から参考例3)。そこで添加剤の効果について詳細に検討したところ、触媒量にも拘わらずN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを添加した場合にのみ、特異的に付加体が収率良く得られることを見出した(参考例4から参考例9)。さらにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンと構造的に類似する光学活性含窒素多座配位子を触媒的に添加したところ不斉誘起が良好に観察され、本発明に繋がった。
【0008】
すなわち、本発明は、一般式[1]
【0009】
【化5】

[式中、Rは芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す]で示されるトリフルオロメチルケトン誘導体を、触媒量の光学活性含窒素多座配位子の存在下に、アルキル亜鉛試薬と反応させることにより、一般式[2]
【0010】
【化6】

[式中、Rは芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表し、R1は炭素数1から6のアルキル基を表し、*は不斉炭素を表す]で示される光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体を製造する方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、一般式[3]
【0012】
【化7】

[式中、R2は芳香族炭化水素基を表す]で示されるトリフルオロメチルケトン誘導体を、触媒量の光学活性ビス2−オキサゾリン型配位子の存在下に、ジアルキル亜鉛と反応させることにより、一般式[4]
【0013】
【化8】

[式中、R2は芳香族炭化水素基を表し、R3は炭素数1から4のアルキル基を表し、*は不斉炭素を表す]で示される光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体を製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法は、現在までに公知文献で開示されている光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体の製造方法の中で最も効率的に実施できる手段である。本発明の製造方法が従来の技術に比べて有利な点は、触媒量の不斉配位子の存在下に不斉アルキル化が行えるということである。また本発明の製造方法では、予め不斉試薬を調製する必要がなく、さらに使用する光学活性含窒素多座配位子、特に光学活性ビス2−オキサゾリン型配位子は両鏡像体が容易に入手できるため、目的とする生成物の両鏡像体を同様にして得ることができる。またインジウムの様な高価な金属を使用する必要がなく、比較的安価に市販されている種々のジアルキル亜鉛を利用することができ、さらに環境的に使用が制限されている反応溶媒を好適な反応溶媒として敢えて使用する必要もない。さらに本発明では不斉アルキル化を新たに開示しており、炭素求核剤の適用範囲を格段に広げ、種々の光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体が製造できるようになった。
【0015】
本発明の製造方法は、選択性が高く分離の難しい不純物を殆ど副生しないため、光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体を効率的に製造するための極めて有用な方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体の製造方法について詳細に説明する。
【0017】
本製造方法は、一般式[1]で示されるトリフルオロメチルケトン誘導体を触媒量の光学活性含窒素多座配位子の存在下にアルキル亜鉛試薬と反応させることによりなる。
【0018】
一般式[1]で示されるトリフルオロメチルケトン誘導体のRとしては、フェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジル基等の芳香族複素環基が挙げられる。また芳香族炭化水素基または芳香族複素環基は炭素数1から6の直鎖または分枝のアルキル基、炭素数1から6の直鎖または分枝のアルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、炭素数1から6の直鎖または分枝のハロアルキル基(ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)等が任意の置換位置に一つまたは任意の組み合わせで複数置換することもできる。
【0019】
一般式[1]で示されるトリフルオロメチルケトン誘導体は、Journal of Organic Chemistry(米国),1987年,第52巻,p.5026−5030を参考にして同様に製造することができる。また実施例で使用したトリフルオロメチルフェニルケトンは市販品を利用した。
【0020】
光学活性含窒素多座配位子としては、1)光学活性ビス2−オキサゾリン型配位子、2)光学活性ビスキナアルカロイド型配位子、3)その他の光学活性ジアミン型配位子等が挙げられる(図1〜図3)。その中でも光学活性ビス2−オキサゾリン型配位子および光学活性ビスキナアルカロイド型配位子が好ましく、特に光学活性ビス2−オキサゾリン型配位子がより好ましい。これらの光学活性含窒素多座配位子はCATALYTIC ASYMMETRIC SYNTHESIS,Second Edition,2000,John Wiley & Sons,Inc.のAppendix List of Chiral Ligandsに記載されており、対応する文献に従い製造することができる。また実施例で使用した2,2’−イソプロピリデンビス[(4S)−4−t−ブチル−2−オキサゾリン]および(DHQD)2PHALは市販品を利用した。
【0021】
【化9】

【0022】
【化10】

【0023】
【化11】

光学活性含窒素多座配位子の立体化学としては、それぞれの不斉炭素または軸不斉に対して任意にR配置またはS配置を採ることができ、目的とする一般式[2]で示される光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体の絶対配置に応じて適宜使い分ければよい。
【0024】
光学活性含窒素多座配位子のエナンチオマー過剰率(%ee)としては、特に制限はないが、90%ee以上のものを使用すればよく、通常は95%ee以上が好ましく、特に97%ee以上がより好ましい。
【0025】
触媒量の光学活性含窒素多座配位子の“触媒量”とは、一般式[1]で示されるトリフルオロメチルケトン誘導体1モルに対して1モル未満の使用量と定義する。
【0026】
光学活性含窒素多座配位子の使用量としては、特に制限はないが、一般式[1]で示されるトリフルオロメチルケトン誘導体1モルに対して1モル未満を使用すればよく、通常は0.0001〜0.7モルが好ましく、特に0.001〜0.5モルがより好ましい。上記の様に、本発明の不斉アルキル化は触媒量の光学活性含窒素多座配位子の存在下で良好に進行することが重要な特徴であり、この利点を生かすためには光学活性含窒素多座配位子の使用量としては、トリフルオロメチルケトン誘導体1モルに対して0.3モル以下がさらに好ましい。
【0027】
アルキル亜鉛試薬としては、ジアルキル亜鉛、ハロゲン化アルキル亜鉛(ハロゲン原子としては塩素、臭素またはヨウ素が挙げられる)、アルキル亜鉛アルコキシド(アルコキシ基としては炭素数1から4の直鎖または分枝のものが挙げられる)等が挙げられる。その中でも特にジアルキル亜鉛がより好ましい。
【0028】
アルキル亜鉛試薬のアルキル基としては、炭素数1から6の直鎖、分枝または環式のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、cyclo−ペンチル基、n−ヘキシル基、cyclo−ヘキシル基等が挙げられる。
【0029】
これらのアルキル亜鉛試薬は、日本化学会 編 第4版 実験化学講座 18 有機金属錯体、1991年、丸善株式会社の第11章 12族有機金属錯体の合成(亜鉛、カドミウム、水銀)を参考にして同様に製造することができる。また実施例で使用したジエチル亜鉛の1モル/L(リットル)n−ヘキサン溶液は市販品を利用した。
【0030】
アルキル亜鉛試薬の使用量としては、特に制限はないが、一般式[1]で示されるトリフルオロメチルケトン誘導体1モルに対して0.5モル以上を使用すればよく、通常は0.6〜5モルが好ましく、特に0.7〜3モルがより好ましい。
【0031】
反応溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、cyclo−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル等のエーテル系、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。その中でもn−ヘキサン、トルエン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリルおよびプロピオニトリルが好ましく、特にn−ヘキサン、トルエン、塩化メチレンおよびアセトニトリルがより好ましい。これらの反応溶媒は単独または組み合わせて使用することができる。
【0032】
反応溶媒の使用量としては、特に制限はないが、一般式[1]で示されるトリフルオロメチルケトン誘導体1モルに対して0.1L以上を使用すればよく、通常は0.2〜20Lが好ましく、特に0.3〜10Lがより好ましい。
【0033】
温度条件としては、−90〜+90℃であり、通常は−80〜+80℃が好ましく、特に−70〜+70℃がより好ましい。
【0034】
反応時間としては、0.1〜48時間であるが、基質および反応条件により異なるため、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR等の分析手段により反応の進行状況を追跡して原料が殆ど消失した時点を終点とすることが好ましい。
【0035】
後処理としては、特に制限はないが、通常は反応終了液に無機酸(例えば、塩化水素、臭化水素、硝酸または硫酸等)の水溶液を加え、有機溶媒(例えば、塩化メチレン、トルエン、ジエチルエーテル、酢酸エチル等)で抽出することにより、粗生成物を得ることができる。必要に応じて蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の精製操作を行うことにより、目的生成物である一般式[2]で示される光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体を高い化学純度で得ることができる。また不斉配位子として使用した光学活性含窒素多座配位子は、上記の無機酸の水溶液から中和抽出により容易に回収することができ、再使用することもできる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例と参考例により本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[参考例1〜参考例9]
代表例として参考例8の実験操作を下に示す。他の参考例は表1に示した通り、添加剤の有無、添加剤の種類、反応溶媒、温度条件または反応時間等を替えて参考例8を参考にして同様に実施した。参考例1から参考例9の結果を表1に纏めた。
【0037】
参考例8
テトラヒドロフラン3.00mlにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン0.01g(0.09mmol、0.10eq)を加え、室温で1モル/Lジエチル亜鉛n−ヘキサン溶液1.29ml(1.29mmol、1.50eq)を加え、同温度で15分間攪拌した。反応混合液を−50℃に冷却し、下記式
【0038】
【化12】

で示されるトリフルオロメチルケトン誘導体0.15g(0.86mmol、1.00eq)を加え、同温度で20時間攪拌した。反応終了液に2N塩酸を加え、塩化メチレンで抽出し、回収有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下濃縮し、真空乾燥し、下記式
【0039】
【化13】

で示されるラセミのトリフルオロメチルカルビノール誘導体の粗生成物を得た。粗生成物はカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、塩化メチレン:n−ヘキサン=1:1)により精製し0.14gの精製品を得た。収率は78%であった。
【0040】
【化14】

[実施例1]
n−ヘキサン3.00mlに、下記式
【0041】
【化15】

で示される光学活性含窒素多座配位子0.03g(0.09mmol、0.10eq)を加え、室温で1モル/Lジエチル亜鉛n−ヘキサン溶液1.29ml(1.29mmol、1.50eq)を加え、同温度で15分間攪拌した。反応混合液を−50℃に冷却し、下記式
【0042】
【化16】

で示されるトリフルオロメチルケトン誘導体0.15g(0.86mmol、1.00eq)を加え、同温度で20時間攪拌した。反応終了液に2N塩酸を加え、塩化メチレンで抽出し、回収有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下濃縮し、真空乾燥し、下記式
【0043】
【化17】

で示される光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体の粗生成物を得た。粗生成物はカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、塩化メチレン:n−ヘキサン=1:1)により精製し0.14gの精製品を得た。収率は82%であった。光学純度はキラル液体クロマトグラフィー(ダイセル CHIRALPAK OD−H、n−ヘキサン:i−プロパノール=100:2)により決定し、60%eeであった。比旋光度は[α]28D−19.3°(c=1.26,CHCl3)であった。1H−NMRスペクトルと13C−NMRスペクトルを下に示す。
1H−NMR[基準物質:(CH34Si、重溶媒:CDCl3]、δ ppm:0.75(t,7.3Hz,3H),2.02(dq,14.5Hz,7.3Hz,1H),2.21(dq,14.5Hz,7.3Hz,1H),2.85(br,1H),7.26−7.37(Ar−H,m,3H),7.54(Ar−H,d,7.5Hz,2H).
13C−NMR[基準物質:(CH34Si、重溶媒:CDCl3]、δ ppm:
6.25,27.91,77.75(q,27.8Hz),125.90(q,285.6Hz),126.42,128.23,128.28,136.16.
[実施例2]
塩化メチレン3.00mlに、下記式
【0044】
【化18】

で示される光学活性含窒素多座配位子0.07g(0.09mmol、0.10eq)を加え、室温で1モル/Lジエチル亜鉛n−ヘキサン溶液1.29ml(1.29mmol、1.50eq)を加え、同温度で15分間攪拌した。反応混合液を−50℃に冷却し、下記式
【0045】
【化19】

で示されるトリフルオロメチルケトン誘導体0.15g(0.86mmol、1.00eq)を加え、同温度で20時間攪拌した。反応終了液に2N塩酸を加え、塩化メチレンで抽出し、回収有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下濃縮し、真空乾燥し、下記式
【0046】
【化20】

で示される光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体の粗生成物を得た。粗生成物はカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、塩化メチレン:n−ヘキサン=1:1)により精製し0.04gの精製品を得た。収率は20%であった。光学純度はキラル液体クロマトグラフィー(ダイセル CHIRALPAK OD−H、n−ヘキサン:i−プロパノール=100:2)により決定し、80%eeであった。旋光度は+を示した。1H−NMRスペクトルと13C−NMRスペクトルは実施例1で得られたものと同様であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[1]
【化1】

[式中、Rは芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す]で示されるトリフルオロメチルケトン誘導体を、触媒量の光学活性含窒素多座配位子の存在下に、アルキル亜鉛試薬と反応させることにより、一般式[2]
【化2】

[式中、Rは芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表し、R1は炭素数1から6のアルキル基を表し、*は不斉炭素を表す]で示される光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体を製造する方法。
【請求項2】
一般式[3]
【化3】

[式中、R2は芳香族炭化水素基を表す]で示されるトリフルオロメチルケトン誘導体を、触媒量の光学活性ビス2−オキサゾリン型配位子の存在下に、ジアルキル亜鉛と反応させることにより、一般式[4]
【化4】

[式中、R2は芳香族炭化水素基を表し、R3は炭素数1から4のアルキル基を表し、*は不斉炭素を表す]で示される光学活性トリフルオロメチルカルビノール誘導体を製造する方法。


【公開番号】特開2006−96692(P2006−96692A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283198(P2004−283198)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】