説明

光学活性リン化合物の製造方法

【課題】容易に入手可能であり、取り扱い易い原料を用いる、種々の光学活性なリンハライド類の一般的な合成法を提供する。
【解決手段】以下の一般式に示す化合物1と塩化銅CuCl2を反応させ化合物3を、あるいは、以下の一般式に示す化合物2と塩化銅CuCl2を反応させ化合物4を合成することを特徴とする、光学活性リン化合物の製造法。
一般式
【化1】


(式中のR1とR2は、同じでも異なってもよい炭化水素置換基である;リン原子上の絶対配置はR又はSである)
当該方法により、塩素やSO2Cl2, NCSなど毒性の高い試薬を用いることなく、容易に入手可能であり、取り扱い易い原料を用いて、種々の光学活性なリンハライド類を合成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性リンハライド化合物の製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学活性なリン化合物は、不斉触媒の配位子として又は医薬品合成中間体として有用である。これらの化合物は、光学活性なリンハライド化合物を用いて合成可能であるが、これまで、光学純度の高い光学活性リンハライド化合物の合成法が開発されてこなかった。
【0003】
すなわち、これまで比較的純度の高い光学活性なものとしては、(MeO)(EtO)P(O)Cl, t-BuPhP(O)Br, (Me2N)(MeO)P(O)Clなど10数個しか合成されておらず、これらの化合物の一般的な合成手法は、開発されていない。また、上記化合物の合成にいずれも、塩素やSO2Cl2, NCSなど毒性の高い試薬を用いなければならない(非特許文献1〜6)。
【0004】
したがって、より環境負荷の少なく、一般的な合成法の開発が望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Tetraherdon Letters, 1982, 999
【非特許文献2】Tetraherdon Letters, 2001, 453
【非特許文献3】J. Chem. Soc. 1979, 1104
【非特許文献4】J. Chem. Soc. 1979, 1646
【非特許文献5】J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 1991, 229
【非特許文献6】J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 1977, 1969
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、容易に入手可能であり、取り扱い易い原料を用いる、種々の光学活性なリンハライド類の一般的な合成法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、これまで光学活性なリン水素化合物の一般的な製造法を開発してきた。これらの化合物の変換法を研究する過程で、光学活性なリン水素化合物と塩化銅をもちいれば、効率よく光学活性リンハライド類が得られることを発見し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の一般式に示す化合物1と塩化銅CuCl2を反応させ化合物3を、あるいは、以下の一般式に示す化合物2と塩化銅CuCl2を反応させ化合物4を合成することを特徴とする、光学活性リン化合物の製造法に関するものである。
【0009】
一般式
【化1】

(式中のR1とR2は、同じでも異なってもよい炭化水素置換基である;リン原子上の絶対配置はR又はSである)
【0010】
上記反応は化合物1(又は化合物2)を適当な有機溶媒に展開される塩化銅CuCl2に加えて行う。溶媒はヘキサンなどのパラフィン溶媒、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、さらにエーテルやTHFなどのエーテル系溶媒がいずれも使用可能である。また反応温度は、−50℃から150℃までの間の温度で行える。化合物1(化合物2)と塩化銅のモル比は、10〜0.1の間の任意の数値でよい。化合物の単離は、蒸留、再結晶又はクロマトグラフィー法により容易に行える。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、塩素やSO2Cl2, NCSなど毒性の高い試薬を用いることなく、容易に入手可能であり、取り扱い易い原料を用いて、種々の光学活性なリンハライド類を合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例3で得られた化合物のX-線結晶解析 ORTEP図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
次に実施例により本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0014】
実施例1.
光学活性な(-)メンチルフェニルホスフィナート(リン上の絶対立体配置はR)(1mmol)を窒素雰囲気下乾燥したTHF(5mL)に溶かした無水塩化銅CuCl2(2mmol)に0℃で加えた後、室温で1時間攪拌した。乾燥雰囲気下で濾過し、溶媒を除去したところ、光学活性な(-)MenO(Ph)P(O)Cl(リン上の絶対立体は保持)が98%の収率で得られた。
【0015】
実施例2.および3.
実施例1と同様な操作で、以下の表1に示す原料をもちいて、実施例2と3を行った。
【0016】
実施例1〜3の結果を、以下の表1に示す。
【表1】

【0017】
生成物の絶対立体配置の確認
実施例3で得られた化合物のX-線結晶解析をおこない、絶対立体配置を決定した。化合物の立体配置図(ORTEP図)を図1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式に示す化合物1と塩化銅CuCl2を反応させ化合物3を、あるいは、以下の一般式に示す化合物2と塩化銅CuCl2を反応させ化合物4を合成することを特徴とする、光学活性リン化合物の製造法。
一般式
【化1】

(式中のR1とR2は、同じでも異なってもよい炭化水素置換基である;リン原子上の絶対配置はR又はSである)

【図1】
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【公開番号】特開2011−162485(P2011−162485A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27804(P2010−27804)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】